説明

構成部材取り付け装置

【課題】インサート3によって構成部材1を補強し、ボルトによって構成部材1を取り付けるとき、簡単な構造で確実にインサート3をまわり止めし、容易にインサート3を交換することができるようにする。
【解決手段】第1みぞが構成部材1に形成され、第2みぞがインサート3に形成され、インサート3がねじ孔2にねじ込まれたとき、第2みぞが第1みぞと整合し、第2みぞによって第1みぞが補完され、ピン孔9が形成される。さらに、ピン10がピン孔9に打ち込まれ、ピン10によってインサート3がまわり止めされ、ボルトがインサート3にねじ込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボルトによって構成部材を取り付ける構成部材取り付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、プラスチック袋を製造する製袋機では、ヒートシールバーによってプラスチックフィルムがヒートシールされる。普通、ヒートシールバーはアルミニウム製であり、軟質である。したがって、ボルトによってヒートシールバーを取り付けるとき、インサートによってヒートシールバーを補強する必要がある。特許文献2,3に記載されているように、インサートは円筒状のもので、外ねじおよび内ねじを有する。したがって、ねじ孔をヒートシールバーに形成し、インサートをねじ孔にねじ込むことができ、ボルトをインサートにねじ込み、ボルトによってヒートシールバーを取り付けることができる。
【0003】
ところで、ボルトをインサートにねじ込むとき、何らかの手段でインサートをまわり止めする必要があることは当然である。したがって、簡単な構造で確実にインサートをまわり止めすることが要望されている。
【0004】
さらに、ヒートシールバーの場合、それが一旦取り外され、再度取り付けられることが多い。さらに、製袋機が運転されているとき、ヒートシールバーがヒートシール温度まで加熱され、製袋機が停止しているとき、ヒートシールバーが常温まで冷却され、これが交互に繰り返される。このため、インサートがヒートショックを受け、ヒートショックによってインサートが破損することがあり、その都度これを交換する必要がある。したがって、容易にインサートを交換することができるようにすることも要望されている。
【0005】
製袋機のヒートシールバーに限らず、他の構成部材において、インサートによって構成部材が補強され、ボルトによって構成部材が取り付けられることも多い。
【0006】
したがって、この発明は、インサートによって構成部材を補強し、ボルトによって構成部材を取り付けるとき、簡単な構造で確実にインサートをまわり止めすること、および容易にインサートを交換することができるようにすることを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−310398号公報
【特許文献2】実公昭36−6915号公報
【特許文献3】特開2002−130255号公報
【発明の概要】
【0008】
この発明によれば、ねじ孔が構成部材に形成され、インサートがねじ孔にねじ込まれる。インサートは円筒状のもので、外ねじおよび内ねじを有する。さらに、ねじ孔の所定の角度位置において、第1みぞが構成部材に形成される。第1みぞは断面円弧状のもので、ねじ孔の長さ方向にのびる。さらに、第2みぞがインサートに形成される。第2みぞは断面円弧状のもので、インサートの長さ方向にのびる。そして、インサートがねじ孔にねじ込まれたとき、第2みぞが第1みぞと整合し、第2みぞによって第1みぞが補完され、ピン孔が形成される。さらに、ピンがピン孔に打ち込まれ、ピンによってインサートがまわり止めされ、ボルトがインサートにねじ込まれる。
【0009】
好ましい実施例では、構成部材は製袋機のヒートシールバーである。
【0010】
さらに、ねじ孔の複数の角度位置において、それぞれピン孔が形成され、ピンが打ち込まれる。
【0011】
ピンは中空ピンであり、円筒状のもので、中心孔を有する。
【0012】
ピンはアルミニウム、真鍮、SPCCまたは耐熱樹脂製である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施例を示す断面図である。
【図2】Aは図1のヒートシールバーの断面図、Bはその平面図である。
【図3】Aは図1のインサートの側面図、Bはその平面図である。
【図4】図1のピンの斜視図である。
【図5】図1のピンを抜き取った状態の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施例を説明する。
【0015】
図1はこの発明にかかる装置を示す。この装置は構成部材を取り付ける構成部材取り付け装置であり、構成部材は製袋機のヒートシールバー1である。ヒートシールバー1はアルミニウム製であり、軟質である。そして、ねじ孔2がヒートシールバー1に形成され、インサート3がねじ孔2にねじ込まれる。図3に示すように、インサート3は円筒状のもので、外ねじ4、内ねじ5およびマイナスみぞ6を有する。インサート3は真鍮製のものである。
【0016】
さらに、図2に示すように、ねじ孔2の所定の角度位置において、第1みぞ7がヒートシールバー1に形成されている。第1みぞ7は断面円弧状のもので、ねじ孔2の長さ方向にのび、その内周面に開口する。さらに、第2みぞ8がインサート3に形成されている。第2みぞ8は断面円弧状のもので、インサート3の長さ方向にのび、その外周面に開口する。そして、インサート3がねじ孔2にねじ込まれたとき、第2みぞ8が第1みぞ7と整合し、第2みぞ8によって第1みぞ7が補完され、ピン孔9が形成される。この実施例では、第1みぞ7として4つのみぞが形成され、ねじ孔2のまわりにおいて、各みぞ7が90°の角度間隔を置いて形成されている。さらに、第2みぞ8として2つのみぞが形成され、インサート3のまわりにおいて、各みぞ8が180°の角度間隔を置いて形成されている。したがって、各みぞ8が各みぞ7のうち、2つのみぞ7と整合し、ねじ孔2の2つの角度位置において、それぞれピン孔9が形成される。
【0017】
さらに、ピン10がピン孔9に打ち込まれ、ピン10によってインサート3がまわり止めされる。この実施例では、ねじ孔2の2つの角度位置において、それぞれピン10が打ち込まれ、ピン10によってインサート3がまわり止めされる。
【0018】
図4に示すように、ピン10は中空ピンであり、円筒状のもので、中心孔11を有する。ピン10はアルミニウム、真鍮、SPCCまたは耐熱樹脂製である。ピン10の一端または両端外周縁を面取り加工してもよい。
【0019】
したがって、ボルトをインサート3にねじ込み、ボルトによってヒートシールバー1を取り付けることができる。インサート3は真鍮製であり、ボルトをインサート3にねじ込んでも、それによってインサート3が焼け付くことはない。ボルトをインサート3から抜き取り、これによってヒートシールバー1を取り外すこともできる。
【0020】
この装置の場合、ピン10をピン孔9に打ち込むだけでよく、簡単な構造で確実にインサート3をまわり止めすることができる。
【0021】
さらに、インサート3が破損したとき、これを交換するには、まず、ピン10をピン孔9から抜き取る。その後、ドライバをマイナスみぞ6に係合させ、ドライバによってインサート3を回転させ、これをねじ孔2から抜き取る。そして、インサート3として新しいものを使用し、これをねじ孔2にねじ込み、第1および第2みぞ7,8によってピン孔9を形成し、ピン10をピン孔9に打ち込めばよい。
【0022】
さらに、ピン10をピン孔9から抜き取るとき、たとえば、ピン10の中心孔11において、ドリルをピン10に係合させ、ドリルによってピン10を抉り、くり抜き、その内径を拡大させ、肉厚を減少させ、剛性を低下させる。その後、ドリルによってピン10を引っ張り、抜き取ればよい。
【0023】
ピン10はアルミニウム、真鍮、SPCCまたは耐熱樹脂製であり、軟質である。したがって、容易にピン10を抉り、くり抜くことができる。さらに、ピン10は円筒状である。この関係上、ピン10の中心孔11において、ドリルをピン10に係合させ、ドリルによってピン10を抉り、くり抜くと、ピン10の周方向において、均一に内径を拡大させ、肉厚を減少させ、剛性を低下させることができる。したがって、その後、ドリルによってピン10を引っ張ると、それによってピン10が変形し、容易にピン10を抜き取ることができる。実際にピン10を抜き取ることができるのは図5の写真のとおりである。仮に、抜き取れなくても、剛性の低下後、プライヤでピン10を変形させ、引っ張り、抜き取ることができる。
【0024】
インサート3がねじ孔2から抜き取れない場合、ドリルによってインサート3を抉り、その剛性を低下させ、変形させ、抜き取ることもできる。したがって、容易にインサート3を交換することができる。
【0025】
この装置の場合、第1みぞ7をヒートシールバー1に形成することも容易である。たとえば、ねじ孔2をヒートシールバー1に形成する前、まず、ヒートシールバー1の第1みぞ7の位置において、ボール盤で丸孔を形成する。丸孔はピン孔9と同一の径のものである。その後、ねじ孔2の位置において、ボール盤で基孔を形成し、基孔を丸孔と交差させ、これによって第1みぞ7を形成する。その後、ねじ工具で基孔をねじ加工し、ねじ孔2を形成すればよい。
【0026】
なお、この実施例では、ねじ孔2の2つの角度位置において、それぞれピン孔9を形成し、ピン10を打ち込むようにしたものを形成したが、3つまたはそれ以上の角度位置において、それぞれピン孔9を形成し、ピン10を打ち込むようにしてもよい。
【0027】
この装置を製袋機のヒートシールバー1ではなく、他の構成部材に使用し、ボルトによって構成部材を取り付けることもできる。
【符号の説明】
【0028】
1 ヒートシールバー
2 ねじ孔
3 インサート
4 外ねじ
5 内ねじ
7 第1みぞ
8 第2みぞ
9 ピン孔
10 ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルトによって構成部材を取り付ける構成部材取り付け装置であって、
前記構成部材に形成されたねじ孔と、
外ねじおよび内ねじを有し、前記ねじ孔にねじ込まれる円筒状のインサートと、
前記ねじ孔の所定の角度位置において、前記構成部材に形成され、前記ねじ孔の長さ方向にのびる断面円弧状の第1みぞと、
前記インサートに形成され、その長さ方向にのび、前記インサートが前記ねじ孔にねじ込まれたとき、前記第1みぞと整合し、前記第1みぞを補完し、ピン孔を形成する断面円弧状の第2みぞと、
前記ピン孔に打ち込まれ、前記インサートをまわり止めするピンとからなり、
前記ボルトを前記インサートにねじ込むようにしたことを特徴とする構成部材取り付け装置。
【請求項2】
前記構成部材は製袋機のヒートシールバーである請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ねじ孔の複数の角度位置において、それぞれ前記ピン孔が形成され、前記ピンが打ち込まれる請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ピンは中空ピンであり、円筒状のもので、中心孔を有する請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記ピンはアルミニウム、真鍮、SPCCまたは耐熱樹脂製である請求項1に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−21584(P2012−21584A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159495(P2010−159495)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000110192)トタニ技研工業株式会社 (31)
【Fターム(参考)】