説明

構造体

【課題】耐水性が良く、熱膨張による突き上げのない床材、壁材、天井材、建具類等の建築材料や車両内装材、電気機械器具の部品や筐体等の各種用途に好適な合成樹脂押出成形体を提供すること。
【解決手段】下向きの凹部が設けられている一方の側面において、クッション材が、凹部の幅と深さのいずれも超えない範囲で凹部の内側より端側に向けて延長されて設けられてなり、前記凹部の幅は、前記凸部の幅とクッション材の厚みの合計よりも狭く、前記凸部の幅とクッション材を押圧して薄くしたときの厚みの合計よりも広いことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下地材の表面に複数枚並べてそれぞれを本実結合してなる床材、壁材、天井材、建具表面材などの建築材料や、電気機械器具の部品や筐体等の各種用途に好適な構造体に関し、特に耐水性がよく、気温や室温の変化による熱膨張の影響を抑えた合成樹脂性の押出成型体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、キッチンや洗面まわり、脱衣場などの住宅内の水廻りは常に湿潤な環境にさらされ、更には水しぶきなどがかかるため、木質系床材ではフクレやシミ、カビなどが発生しやすく、木質系床材は使用しにくい環境であった。この為、多くの住宅では水廻りにはクッションフロアー(裏打ちに不織布やビニル層を使用し、中間に印刷した模様の発泡層、表面に透明ビニルを積層し凹凸をつけて意匠を施して仕上げたシート状の床材)が使用されている。
【0003】
しかし近年の内装に対する消費者の意識の高まりや、キッチンと一体化したダイニングの登場により、水廻りにもフローリングが要求される傾向にある。この為、フローリングにも耐水性が要求されるようになり、合板の上に樹脂系の化粧シートを貼着した耐水性床材が実用化されている。
【0004】
しかし、上記耐水性床材は、通常フローリングと比べ表面や木口からの吸水によるフクレ、シミは発生しにくいが、後加工によってできた溝や嵌合部分は合板が表面にでており、耐水性は十分とは言えなかった。
【0005】
そこで、基材に木紛を含有したポリプロピレン樹脂を使い、熱可塑性樹脂製化粧シートを積層した樹脂系床材が用いられるようになった。
【0006】
ところで、これら床材用基材はその一方の端部に他方に端部を嵌めこむことで敷設されるが、嵌合される構造にはさまざまな工夫がされたものが知られているものの、ある程度の隙間が無いと、気温や室温の変化による熱膨張の影響で突き上げ等を起こす可能性がった。しかし嵌合部に隙間を設けると水がしみ込んで床材の下にある下張りの木質基材や根太を腐らせる可能性があるという問題があった。
【0007】
また、断面形状が円形や矩形等の単純な形状であれば余り大きな問題はないが、幅と比較して厚みの薄い薄板状や、表面に複雑な凹凸を有する形状であったりすると、基材成型の際、発泡樹脂材料の断面積との対比において、冷却サイジング金型の内面との接触面積が相対的に増す結果、摩擦力の影響が強く出て、前記した様な種々の成形不良事故が発生する場合がある。この様な事情により、発泡押出成形法によって良好な形状及び寸法精度を維持しつつ製造可能な合成樹脂押出成形体の発泡倍率や、使用する熱可塑性樹脂の性状、成形体の断面形状等には種々の制約があり、近年益々強まりつつある軽量化、高断熱化、価格低減、高機能化、用途拡大などの市場の要求に十分に応えることができていないのが現状である。
【特許文献1】特開2003−112354号公報
【特許文献2】特開2001−323639号公報
【特許文献3】実公平06−24521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の技術における上記した様な問題点を解決すべくなされたものであり、その課題とするところは、下面にクッション材を積層した一方の端部に下方向き凹部をもち、対向するもう一方の端部に上向きに凸部をもつ合成樹脂押出成形体の関するものであり、特に、耐水性が良く、熱膨張による突き上げのない床材、壁材、天井材、建具類等の建築材料や車両内装材、電気機械器具の部品や筐体等の各種用途に好適な合成樹脂押出成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はこの課題を解決するためになされたものであり、すなわちその請求項1記載の発明は、略矩形平面部材の下面にクッション材が設けられ、前記略矩形平面部材の相対する側面の一方に下面側が切除され外端部に下向きの凸部を有する下向きの凹部が設けられ、もう一方の側面に、前記下向きの凹部と嵌合可能な、表面側が切除され外端部に上向きの凸部を有する上向きの凹部が設けられてなる構造体であり、前記下向きの凹部が設けられている一方の側面において、前記クッション材が、凹部の幅と深さのいずれも超えない範囲で凹部の内側より端側に向けて延長されて設けられてなり、前記凹部の幅は、前記凸部の幅とクッション材の厚みの合計よりも狭く、前記凸部の幅とクッション材を押圧して薄くしたときの厚みの合計よりも広いことを特徴とする構造体である。
【0010】
またその請求項2記載の発明は前記側面の一方に設けられた外端部の下向きの凸部に、その凸部先端部に内側への凸部が設けられ、前記もう一方の側面に設けられた外端部の上向きの凸部に、前記外端部の下向きの凸部と嵌合可能な、内側への凸部が設けられてなることを特徴とする、請求項1記載の構造体である。
【0011】
またその請求項3記載の発明は、前記構造体は床材であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか記載の構造体である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、その請求項1記載の発明により、成形精度が荒くても適度な嵌め合い強度が得られる。また、耐水性を良くするための精密な成形精度がいらない。嵌合部に挟み込んだクッション材が水を遮断するため耐水性が良くなる効果がある。また、嵌合部に挟み込んだクッション材が合成樹脂押出成形体の熱膨張による基材の突き上げを防止する効果もある。
【0013】
またその請求項2記載の発明により、構造体の嵌合をより強固にすることが可能となり、かつ耐水性の向上が図れるものとなるという効果を奏するものである。
【0014】
またその請求項3記載の発明により、特に構造体の略矩形平面部材の製造において、微小の形状の狂いがあったとしてもクッション材のクッション性により強固な嵌合が得られ、耐水性がえられるものとなるという効果を奏するものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1に本発明の構造体の一実施例の断面の構造を示す。略矩形平面部材1の下面にクッション材2が設けられており、嵌合部分の構造は、外端部に下向きの凸部を有する下向きの凹部3、外端部に上向きの凸部を有する上向きの凹部4からなり、それぞれの凸部先端部の内側への凸部31、41を有するものとなっている。これら3,31、4,41は略点対称の形状となっている。そして、外端部に下向きの凸部を有する下向きの凹部3において、クッション材が延長して設けた部分を有しており、これが前記外端部に下向きの凸部を有する下向きの凹部3と外端部に上向きの凸部を有する上向きの凹部4が嵌合された際に、前記下向きの凹部に入りこんで嵌合可能となるものとなる。
【0016】
図2に従来の構造体の一例を示す。外端部に下向きの凸部を有する下向きの凹部3、外端部に上向きの凸部を有する上向きの凹部4からなり、凸部先端部へ内側への凸部31、41を有するものとなっているが、クッション材5は延長されていない。凸部先端部へ内側への凸部31の突起の長さを10とすると、凹部3の幅は凸部先端部41を嵌合した状態で空隙9が設けられることでこの突起部分の嵌合が可能となり、また熱による膨張があったとしても突き上げといったことが発生しないものである。しかしながら、このような空隙により構造体の耐水性が劣るものとなっている。
【0017】
そこで本発明は図3に示すように、外端部に下向きの凸部を有する下向きの凹部3の下部に設けたクッション材5を延長して設けてなり、その延長した長さ51が、前記凹部3の幅61と深さ71のいずれも超えない範囲とし、前記凹部の幅61は、クッション材の幅8の厚みと嵌合したときの上向きの凹部4の外端部の凸部の幅の合計より狭く、クッション材を押圧して薄くしたときの厚みと嵌合したときの上向きの凹部4の外端部の凸部の幅の合計より厚いものであることを特徴とする。これにより外端部に下向きの凸部を有する下向きの凹部3の下方より、外端部に上向きの凸部を有する上向きの凹部4を嵌め合わせるようにすることだけで、図1に示すようにクッション材が従来の空隙部分に入り込んで隙間を埋めて耐水性が良いものとし、かつクッション材のクッション性により熱による膨張があったとしても突き上げが発生することがないという優れた効果を発現することが可能となる。
【0018】
本発明における略矩形平面部材は、合成樹脂押出成形体を加熱発泡させたものが好ましい。基材を発泡させる場合は、発泡剤、充填剤、各種添加剤等を適宜添加した熱可塑性樹脂を、押出機内にて加熱可塑化しつつ混練し、こうして得られた加熱可塑化状態の合成樹脂押出成形体は、押出機の先端に装着された押出金型から押出され、冷却サイジング金型に導入される。この冷却サイジング金型(キャリブレーター金型、ガイド金型などとも言う)は、その内壁面の断面形状が、製造すべき成形体の断面形状通りに精密に製作されており、この内壁面に合成樹脂押出成形体が、自らの発泡圧により押し付けられつつ冷却固化することにより、該冷却サイジング金型の内壁面の断面形状を正確に写し取った、設計通りの断面形状を有する合成樹脂押出成形体が、安定して製造される訳である。基材を発泡させない場合は、発泡剤を除けば前記発泡させた場合を同様に製造可能である。
【0019】
ここで、前記製造方法においては、合成樹脂押出成形体が冷却サイジング金型に導入さ、冷却サイジング金型内において、自重で変形することのない程度に冷却固化された合成樹脂押出成形体は、引取機の作用力によって冷却サイジング金型から引取られ(脱型され)、水槽などの冷却槽内を通過することで十分に冷却された後、切断台に送られ、切断刃7により所定の寸法に切断される。こうして、目的物である合成樹脂押出成形体が得られる。次に、コロナ処理等を行うことで、合成樹脂押出成形体の表面の少なくとも一部に、固体のシート状体である化粧シートを積層する場合にしっかり接着することができる。また、裏面にクッション材を積層するときの接着力が良くなる。
【0020】
熱可塑性樹脂の発泡押出成形法には、大別して2種類が知られている。その一方は、製造すべき成形体の寸法より小さ目の内壁面寸法を有する押出金型を用い、該押出金型から押出された加熱可塑化状態の合成樹脂押出成形体が、押出機内の高圧により発泡が抑えられていた状態から、大気圧状態に減圧されることにより、急激に発泡する現象を利用して、製造すべき成形体の外形寸法にほぼ近い寸法にまで発泡させてから、冷却サイジング金型に導入する方法である。この方法は、従来最も一般的な方法であったことから通常法と称され、また、合成樹脂押出成形体が大気圧下で金型等による束縛を受けることなく自由な状態で発泡することからフリー法(フリープロセス、フリーフォーミングプロセス)とも称されている。
【0021】
前記合成樹脂押出成形体の主成分として用いられる熱可塑性樹脂の種類には特に制限はなく、目的物である構造体の用途に応じて任意の熱可塑性樹脂を選択すればよい。具体的には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体金属中和物(いわゆるアイオノマー樹脂)等のオレフィン系共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール等のポリビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン−テトラフロロエチレン共重合体、テトラフロロエチレン−パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂等、或いはそれらの複数種の混合物、共重合体等であっても良い。また、多層押出法等により同種又は異種の熱可塑性樹脂からなる複数層の積層体によって発泡層を構成することもできる。
【0022】
本発明において、上記熱可塑性樹脂を発泡させる場合は、添加される発泡剤の種類にも特に制限はなく、従来公知の発泡剤から適宜選択すればよい。具体的には、従来公知の熱可塑性樹脂の発泡法としては、一般的には、熱分解や化学反応によってガスを発生する性質を有する化学物質(化学発泡剤)を利用する化学発泡法と、低沸点の液体又は高圧下で液化した気体(物理発泡剤)が熱の作用により気化する現象を利用する物理発泡法とに分類することができる。前者に用いられる化学発泡剤としては、例えば重炭酸ナトリウム(重曹)、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、ホウ化水素ナトリウム、軽金属(アルミニウム、マグネシウム等)、アジド化合物(アジ化ナトリウム等)等の無機発泡剤や、アゾ系(アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等)、ニトロソ系(ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ジメチルジニトロソテレフタルアミド等)、ヒドラジド系(p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、p−トルエンスルホニルヒドラジド等)等の有機発泡剤などを、それぞれ単独若しくは任意の複数種の組み合わせで使用することができる。また、特に発泡倍率が2倍を超える高発泡化を必要とする場合には、物理発泡法が好適であり、その際、ペンタンヘキサン、ヘプタン等)、クロロフルオロカーボン類(いわゆるフロンガス)等の不活性気体が主に用いられている。また、物理発泡法による発泡押出成形に際しても、発泡体のセル形状を整えるため等の目的で、化学発泡剤を併用することもできる。
【0023】
合成樹脂押出成形体には上記した熱可塑性樹脂と発泡剤の他、必要に応じて例えば熱安定剤、酸中和剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤(染料、顔料等)、充填剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤、難燃剤、ブロッキング防止剤、半透明化のための光散乱剤、艶調整剤等の各種添加剤を適宜添加することもできる。これらの添加剤のうち、熱安定剤としてはヒンダードフェノール系、硫黄系、リン系等、酸中和剤としてはステアリン酸金属塩、ハイドロタルサイト等、紫外線吸収剤としてはベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等、光安定剤としてはヒンダードアミン系等、難燃剤としてはハロゲン系、リン系、塩素系等、充填剤としては無機系(炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、アルミナタルク、クレー、珪酸マグネシウム、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化鉄、カーボンブラック、金属粉、炭素繊維、ガラス繊維等)又は有機系(ナイロン系、ポリカーボネート系、ポリウレタン系、アクリル系、木毛、木粉、紙粉等)等、滑剤としては炭化水素系、脂肪酸系、高級アルコール系、脂肪酸アマイド系、金属石鹸系、エステル系等、造核剤としてはカルボン酸金属塩系、ソルビトール系、リン酸エステル金属塩系等、顔料としては縮合アゾ系、不溶性アゾ系、キナクリドン系、イソインドリノン系、アンスラキノン系、イミダゾロン系、フタロシアニン系、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄系、コバルトブルー、パール顔料(酸化チタン被覆雲母等)等があり、これらの各種の添加剤を任意の組み合わせで用いることができる。
【0024】
具体例を挙げれば、住宅等の建築物における壁材、床材、天井材等の建築材料として使用する場合には、その優れた強度や物理化学的安定性、経済性、成形加工性などの面で、合成樹脂押出成形体8を、ポリプロピレン系樹脂を主体として構成することが望ましい。ここで用いられるポリプロピレン系樹脂としては、一般のホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体等を主体としつつ、必要に応じてポリブテン、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体やそれらの酸変性物、アイオノマー樹脂等から選ばれる1種又は2種以上を適宜添加混合した樹脂組成物などを使用することができる。但し、複数種の樹脂を混合して使用する場合には、リサイクル後の物性を確保するために、出来るだけ相溶性の良い樹脂の組合せを選択するか、若しくは相溶化剤を添加しておく等の配慮が求められる。
【0025】
前記した建築材料の用途には、例えば鋸や錐、鑿等による切削性、釘打ち性や螺子止め性等、従来最も一般的な建築材料である木材と同等の加工性が求められる場合が多い。係る性能をポリプロピレン系樹脂に付与するためには、該樹脂に木質系充填剤を添加することが最も望ましい。なお、上記目的からは木質系充填剤は主として合成樹脂押出成形体に添加しておけば足り、合成樹脂押出成形体の木質系充填剤の添加には、製造された化粧シート付発泡樹脂成形体の切断面が木質様の外観を呈することにより、切断面が露出した状態で使用されても外観上の違和感が少ないことや、発泡と相俟って熱伝導率が低下することから、木材に近似した暖かみのある触感が得られること等の利点もある。
【0026】
上記木質系充填剤の素材としては特に制限されることなく選択が可能であるが、一般的には木材をカッターミルなどによって破断し、これをボールミルやインペラーミルなどにより粉砕して微粉状にしたもの(木粉)などを用いる。また、配合量が熱可塑性樹脂100重量部に対して100重量部を超えるような高配合とする場合には、特に樹脂中での分散性が重要で、比較的繊毛の少ない粒状の木質系充填剤を利用することが好ましい。繊毛の少ない木質系充填剤としては、主にパーティクルボードなどを研磨して得る研磨粉などが用いられる。また、木質系充填剤の配合量については適宜選択が可能であり、化粧材の用途に応じて最適な配合量が異なるが、一般的には熱可塑性樹脂100重量部に対して20〜400重量部程度の範囲で設計される。
【0027】
合成樹脂押出成形体を構成する熱可塑性樹脂に木質系充填剤を添加する際の、熱可塑性樹脂と木質系充填剤との混練方法は特に問わないが、ヘンシェルミキサーによって混練し、ペレタイザーでペレット化する方法や、2軸押出混練機によって混合、ペレット化する方法などが一般的である。また、本発明の製造方法によって製造した成形体をリサイクルする場合には、破砕した成形体に必要に応じて木質系充填剤、熱可塑性樹脂、各種添加剤などを添加して利用することもできる。その際の混練方法やペレット化方法も上記と同様であり、特に問わない。
【0028】
発泡成形体を任意の寸法へ切断した後は、40℃から90℃で20時間から72時間程度のエージングを行うと発泡成形体の寸法安定性が良くなる。また、合成樹脂押出成形体8の接着面に、例えばコロナ放電処理又はオゾン処理等の表面活性化処理を施したりすることで対処する必要がある。
【0029】
本発明におけるクッション材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンビニルアセテート、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリウレタン、クロロプレン等のゴムなどが一般的であり、用途に合わせて適宜選択すればよい。さらに気泡を構成材料の中に持つことが望ましく、特に独立気泡を設けた構成が好ましいが無気泡のゴム状弾性体でも圧縮硬さによっては使用できる。クッション材の圧縮硬さ(JIS−K6767による)は0.02Mpa以上1Mpa未満のものが良く、0.02Mpa未満では柔らかすぎて嵌合強度が得られなかったり、十分な耐水性を得る事ができず、1Mpa以上だと嵌合強度が高くなり適度な嵌合強度を得るために精度の高い成形が必要となるため、本発明の趣旨から外れてしまう。
【0030】
クッション材の厚み設定は、嵌め合う凹部と凸部の隙間に関係する。床材の嵌め合う凹部と凸部の隙間は床材に使用する材料の熱膨張によって設計し、使用温度範囲での、膨張量の半分と等しいか1.5倍程度で設定すれば実用上問題ない。その設定隙間に合わせてクッション材の厚み、硬さを設計すれば良く、おおよそ柔らかい場合はその隙間の2から3倍程度、硬い場合は隙間の1.5倍程度にクッション材の厚みを設計すれば適度な嵌め合い強度と耐水性を得る事ができる。
【0031】
また、本発明の構造体にはその他の層構成として表面の化粧シートを貼り合わせたり、さらに表面保護層を設けたりして、本発明の目的を損なわない範囲であれば意匠性の向上を目的として適宜設けることが可能である。
【実施例1】
【0032】
ランダムポリプロピレン樹脂に酸化鉄、酸化チタン等の顔料を配合して製膜した厚さ100μmの着色ポリプロピレン樹脂シートの表面に、ウレタン系印刷インキを使用して木目印刷を施し、該印刷面上に、透明なホモポリプロピレン樹脂をエクストルージョンラミネート法により厚さ100μmに積層し、その表面に2液硬化型ウレタン系樹脂によるトップコートを施して化粧シートを作製した。
【0033】
一方、溶融温度160℃の市販のホモポリプロピレン樹脂((株)プライムポリマー製:「E−105GM」)70重量部、マレイン酸変性したホモポリプロピレン樹脂30重量部、木質系充填剤(木材をカッターミルで破断し、これをボールミルにより粉砕して微粉状にした平均粒径約20μmの木粉)400重量部を、2軸押出混練機によって220℃で混練、ペレット化した。こうして得たペレット100重量部に対し、重曹クエン酸系の化学発泡剤を45重量%含有するホモポリプロピレン樹脂系マスターバッチ3重量部を混合して押出機に投入し230℃で押し出し、断面形状が中心部に高さ50mm×幅295mmの中空部を有する押出金型から押出速度1m/分にて射出し、次に、断面形状が中心部に高さ2.5mm×幅295mmの中空部を有する高さ5mm×幅300mmの長方形である長尺状に押出し、これを内壁面の断面形状が高さ5.2mm×幅300mmの長方形である冷却サイジング金型に導入すると同時に、冷却、引取後、長さ1800mmに切断した。次に80℃の加熱炉にてエージングを8時間行った。次に、コロナ処理として、出力1kW、電極間と合成樹脂押出成形体の距離3mmでコロナ処理を行ない、表面張力を45mN/mにする処理をした。
【0034】
次に、合成樹脂押出成形体の下面に上記厚み2mmの独立発砲ポリエチレン樹脂製の5倍発泡のクッション材(JSP社製「ミラマット #210」)を図1,図3に示すように一部延長して設けて、2液ウレタン樹脂接着剤にて接着した。以上のようにして本発明の構造体を得た。
【0035】
<比較例1>
実施例1のクッション材を嵌合部で嵌合させないで、嵌合部の隙間を空けた他は、実施例1と同じ方法で製造した。
【0036】
<比較例2>
比較例1の嵌合部の隙間を無くした他は、実施例1と同じ方法で製造した。
【0037】
<性能評価1>
耐水性を評価するために、合成樹脂押出成形体の嵌合部の上に底を切り抜いた200mlのデスカップ(テラオカ株式会社製)置き、バスコーク白(セメダイン株式会社製)にてシーリングして1昼夜放置して硬化させた。次に、水道水を50mlいれて水の減り具合を観察した。その結果、実施例は水が外観観察では減らなかったが、比較例1、2は約2時間で水が基材下まで漏れてデスカップ上から無くなった。
【0038】
<性能評価2>
突き上げ防止性を評価する為に、0℃の雰囲気中で、厚み20mmの合板に両面テープにて隙間を空けないで付き付け施工した後、雰囲気温度を60℃に上げて24時間放置した結果、実施例1、比較例1は突き上げは起こらなかったが、比較例2は突き上げが起こった。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の構造体は耐水性に優れた床材として、水廻りのフローリングとして利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の構造体の一実施例の断面の構造を示す説明図である。
【図2】従来の構造体の断面の構造を示す説明図である。
【図3】本発明の構造体の一実施例の嵌合部に延長したクッション材を設けた状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0041】
1…略矩形平面部材
2…クッション材
3…外端部に下向きの凸部を有する下向きの凹部
31…凸部先端部の内側への凸部
4…外端部に上向きの凸部を有する上向きの凹部
41…凸部先端部の内側への凸部
5…クッション材が延長して設けた部分
51…クッション材を延長して設けた長さ
61…凹部3の幅
71…凹部3の深さ
8…クッション材の幅
9…空隙
10…凸部先端部へ内側への凸部31の突起の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略矩形平面部材の下面にクッション材が設けられ、前記略矩形平面部材の相対する側面の一方に下面側が切除され外端部に下向きの凸部を有する下向きの凹部が設けられ、もう一方の側面に、前記下向きの凹部と嵌合可能な、表面側が切除され外端部に上向きの凸部を有する上向きの凹部が設けられてなる構造体であり、前記下向きの凹部が設けられている一方の側面において、前記クッション材が、凹部の幅と深さのいずれも超えない範囲で凹部の内側より端側に向けて延長されて設けられてなり、前記凹部の幅は、前記凸部の幅とクッション材の厚みの合計よりも狭く、前記凸部の幅とクッション材を押圧して薄くしたときの厚みの合計よりも広いことを特徴とする構造体。
【請求項2】
前記側面の一方に設けられた外端部の下向きの凸部に、その凸部先端部に内側への凸部が設けられ、前記もう一方の側面に設けられた外端部の上向きの凸部に、前記外端部の下向きの凸部と嵌合可能な、内側への凸部が設けられてなることを特徴とする、請求項1記載の構造体。
【請求項3】
前記略矩形平面部材は合成樹脂の押出成形体からなることを特徴とする、請求項1または2のいずれか記載の構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−31704(P2008−31704A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−205196(P2006−205196)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】