説明

構造変形による椎間板ヘルニアの治療方法及び治療用組成物

本願発明は、組織の細胞外マトリクスへカチオン水溶液を注射することを含む治療方法及び組成物を提供する。好ましい実施形態において、ポリリジン水溶液をヘルニア状椎間板中心部へ経皮(皮膚を通して施行される)注射し、椎間板内圧を軽減することが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願発明は、米国特許庁に2006年5月2日出願された仮出願第60/796,719号、発明者Brian E.Pfisterの利益を主張して米国特許庁に2007年5月1日出願されたシリアル番号を有する特許出願に基づく優先権の利益を主張する。両出願の全内容は参照により全体として本願明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本願発明は、軟骨疾患の治療及び予防、並びに罹患したもしくは負傷した椎間板の修復及び/又は再生に用いる方法及び組成物に関連する。
【0003】
背景技術
腰痛は、40歳以下の個人で起こる障害の主な原因である。人口のうち生涯における腰痛の有病率は、約70−85%で、そのうち約10−20%が慢性腰痛を経験している(Andersson,G.B.、慢性腰痛の疫学的特徴(Epidemiological features of chronic low−back pain)、Lancet、354:581−5ページ、1999年)。当該慢性腰痛は、本質的に全世界で医学的、社会的、及び経済的組織において重大な重荷となっている。米国における背痛の治療のための費用は、年間500億ドルと見積もられている。
【0004】
慢性腰痛を患う多くの患者では、症候性の膨隆(bulging)、椎間板ヘルニアが見られる。これらの容態に用いられる治療は症状の緩和に制限され、治療の有効性が度々疑問視される。従来の治療方法は、薬物投与、ステロイド注射、理学療法、及び外科手術を含む。外科的治療は、患者の症状及び病理解剖学に合わせて、単純な外来患者用の微小な椎間板切除又は融合等の大規模な外科的処置が行われ得る。内視鏡椎間板切除、経皮椎間板切除、及び化学的髄核融解等の椎間板(intervertebral disc、IVD)ヘルニアの最小限の侵襲性治療が同様に可能である。しかし、これらの処置の臨床学的結果は、一様に満足されるものではなく、これらの処置は、椎間板構造の損傷、及び運動分節の不安定化に結局はつながる可能性がある。生体内融合又は他の融合処置は、しばしば脊髄運動分節の安定化のため行われる。しかし、これら処置は、周術期罹患率の増加に関連し、脊髄の運動性の減少及び隣接分節の変性を結果として起こし得る。
【0005】
発明の概要
本願明細書の発明に係る1つの実施形態において、軟骨疾患の治療に用いられる薬剤組成物、当該疾患の治療に有効な量のカチオン化合物を含む組成物、及び薬学的に許容される塩又は緩衝液が提供される。関連する実施形態において、当該化合物は、カチオンモノマーから成るポリマーである。
【0006】
例えば、当該化合物は、アミノ酸のポリマーであり、当該アミノ酸は、D−リジン、L−リジン、D−アルギニン、L−アルギニン、D−ヒスチジン、及びL−ヒスチジンから成る群より選ばれる少なくとも1のアミノ酸である。
【0007】
様々な実施形態において、当該化合物は、デキストラン、アラビノガラクタン、プルラン、セルロース、イヌリン、キトサン、オルニチンポリマー、スペルミンポリマー、スペルミジンポリマー、及びポリエチレンイミンから成る群より選ばれる少なくとも1の化合物である。例えば、前記デキストランは、分枝したポリ−α−D−グルコシドである。或いは、前記アラビノガラクタンは、D−ガラクトース及びL−アラビノースから成り、植物、真菌、又はバクテリアにより前記アラビノガラクタンは生産される。或いは、前記プルランは、マルトトリオースから成り、オーレオバシジウム・プルラン(Aureobasidium pullulans)により生産される。或いは、前記イヌリンは、フルクトシルオリゴ糖から成る。或いは、前記キトサンは、真菌、節足動物、又は海洋無脊椎動物から成る群より選ばれる少なくとも1つにより生産される。
【0008】
所定の実施形態において、前記ポリマーは、平均サイズで少なくとも約2kDaである。例えば、前記ポリマーは、サイズで少なくとも約300kDaである。典型的なポリマーは、例えば、D−リジン及びL−リジンモノマーの少なくとも1つを含むポリリジンである。従って、前記ポリマー、例えば前記ポリリジンは、サイズで約100kDaから約300kDaである。一般的に前記ポリマーは、複数のプロテオグリカン分子と結合するのに十分なサイズである。所定の実施形態において、当該組成物は、多様な分子量により選択される複数のポリカチオン化合物を含み、当該化合物の軟骨での半減期は、分子量と相関する。
【0009】
追加的な実施形態において、当該組成物は、成長因子又はマトリクス・メタロプロテナーゼ阻害剤等の酵素阻害剤を含む。例えば、前記成長因子は、:BMP−2及びBMP−7等の骨形態形成タンパク質、インシュリン様成長因子(insulin like growth factor、IGF)、形質転換成長因子(transforming growth factor、TGF)、GDF−5等の成長分化因子(grouth differentiation factor、GDF)、及び血小板由来成長因子(platelet−derived growth factor、PDGF)の群から選択される少なくとも1の成長因子である。関連する実施形態において、前記成長因子又は酵素阻害剤は、当該化合物に共有結合する。
【0010】
さらに本願明細書では、患者の軟骨疾患を治療する方法が提供され、当該方法は、次の工程を有する。すなわち、カチオン化合物を含む組成物と軟骨とを接触する工程、及び軟骨疾患の治療を観察する工程である。一般的に、前記軟骨は、椎間板を言う。所定の実施形態において、当該組成物は、デキストラン、アラビノガラクタン、プルラン、セルロース、イヌリン、キトサン、オルニチンポリマー、スペルミンポリマー、スペルミジンポリマー、及びポリエチレンイミンから成る群の少なくとも1つを含む。例えば、前記椎間板は、ヘルニア状にあるものを言う。一般的に、前記軟骨との接触は、当該組成物水溶液を注入すること、例えば、推間等の経皮注入である。当該方法に関連する様々な実施形態の治療により、椎間板高、背痛、坐骨神経痛、突起神経(pinched nerve)、押出(extrusion)、ヘルニア、下垂足、及びアキレス腱反射の欠失の少なくとも1つで軽減が見られる。所定の実施形態において当該治療は、椎間板再生の観察を含む。当該方法に関連する様々な実施形態において化合物は、ポリリジン、例えば、L−リジン、D−リジンを含むポリリジンであるか、ポリリジンがD−ヘテロポリマー及びL−ヘテロポリマーである。
【0011】
さらに他の実施形態において、本願発明は、椎間板ヘルニアの治療に用いられるキットを提供し、当該キットはカチオン化合物、容器、及び椎間板ヘルニア治療の用法のための取扱説明書を有する。前記キットは、当該化合物を皮下脊椎内注射による投与に用いられる単位用量で有することができる。
【0012】
発明の詳細な説明
脊椎は、「脊椎骨」と呼ばれる一連の連結された骨により作られる。椎間板は、脊椎骨の1つと隣接する他の脊椎骨とを保持する強い結合組織の組み合わせで、脊椎骨との間のクッションとして機能する。IVDは、独自の構造を有し、外部に繊維状の線維輪(annulus fibrosus、AF)及び内部にゼラチン状の髄核(nucleus pulposus、NP)を有する。AFは、コラーゲン繊維が豊富な同心層板(concentric lamellae)から成り、NPは、プロテオグリカン(proteoglycan、PG)が豊富なゼラチン状の内部クッションである。AF及びNPは、上方及び下方の脊椎骨端板と共に、通常の機能に必要とされる柔軟性及び弾力性をもたらす。IVDは、大きく、無血管かつ無神経な構造で、拡散により前記端板を通り、主な栄養素を受けている。(Urban,J.P.他、椎間板の栄養素(Nutrition of the intervertebral disk)、溶質移送のin vivo研究(An in vivo study of solute transport)、Clin Orthop、101−14ページ、1977年)。
【0013】
NPの細胞外マトリクス(extracellular matrix、ECM)は、関節軟骨で見られるものと同様に合成され、比較的少量の細胞により成人期の間、維持される(Jahnke,M.R.&McDevitt,C A.ヒト椎間板のプロテオグリカン(Proteoglycans of the human intervertebral disc)、髄核のプロテオグリカンの凝集による電気泳動の不均一性(Electrophoretic heterogeneity of the aggregating proteoglycans of the nucleus pulposus)、Biochem J、251:347−56ページ、1988年)。ほとんどのNP細胞(>75%)は、特に成人期前において、軟骨細胞様であると共に、有意な数の巨大脊索細胞が存在する(Maldonado,B.A.他、微小球にカプセル化された椎間板細胞の代謝初期特性(Initial characterization of the metabolism of intervertebral disc cells encapsulated in microspheres)、J Orthop Res、10:677−90ページ、1992年)。両方のNP細胞のタイプが、組織で最も数の多い分子を構成し、アグリカンと呼ばれる分子量の大きい親水性PGを合成するかどうかは不明である(Aguiar,D.J.他、髄核細胞と相互作用する脊索細胞、プロテオグリカン合成の制御(Notochordal cells interact with nucleus pulposus cells:regulation of proteoglycan synthesis)、Exp Cells Res、246:129−37ページ、1999年)。関節軟骨であるような、これらアグリカン分子は細胞外で長直鎖ヒアルロン酸(hyaluronan、HA)と相互作用し、主にタイプIIコラーゲンで作られた繊維ネットワークに巻き込まれる凝集物を形成する(Thonar,E.J.他、変形性関節症における軟骨体液マーカーの変化(Body fluid markers of cartilage changes in osteoarthritis)、Rheum Dis Clin North Am、19:635−57ページ、1993年を参照)。膨張、流動性及びイオン交換能、さらにコラーゲン−アグリカン固体マトリクスの内在性力学的性質は、NPの変形挙動を支配する。コラーゲンネットワークにより組織抗張力が与えられ、圧縮剛性を与え組織の可逆的変形を可能とする粘弾性の水和されたアグリカン分子の膨張が抑止される。
【0014】
AFは、軟骨様細胞の比較的均質集団を含み(Maldonado,B.A.他、微小球にカプセル化された椎間板細胞の代謝初期特性、J Orthop Res、10:677−90ページ、1992年)、NPからの細胞よりもコラーゲンを多く含み、PGを少なく含むマトリクスを合成する。重要なことに、前記細胞のいくつかは、通常軟骨において有意量で見られないPG及びコラーゲン分子を合成する(Thonar,E.J.他、変形性関節症における軟骨体液マーカーの変化、Rheum Dis Clin North Am、19:635−57ページ、1993年で参照されるMayne,R.他編集、関節軟骨分解(Joint Cartilage degradation)、81−108ページ、ニューヨーク州:マーセル・デッカー社(Marcel Dekker,Inc.)、1993年;Wu,J.J.他、椎間板のタイプVIコラーゲン(Type VI collagen of the intervertebral disc)、ネイティブタンパク質の生物学的特性及び電子顕微鏡特性(Biochemical and electron−microscopic characterization of the native protein.)、Biochem J、248:373−81ページ、1987年)。従って、AFは通常、線維軟骨として分類される。当該AFは可逆的な変形よりもむしろ強度を保つために形成される。当該線維輪は、均質でなく、線維輪内でプロテオグリカン対コラーゲンの割合が、中心部から離れて移動するように次第に減少する。従って、いずれの特定の作用理論又はメカニズムに限定されることなく、カチオン分子もまた線維輪の内部で作用していることが想定される。
【0015】
NPは、その流圧を維持し、マイナスに荷電した豊富なPGからIVDに掛かる高い外部負荷とバランスを取ることができる。コラーゲンネットワークで取り込まれたこのPGの分子網細工は、圧縮剛性及び抗張力の両方においてIVDに寄与する。椎間板変性又は外傷のいずれかを原因として、椎間板は、脊柱管に押し出される可能性があり、これはヘルニア、椎間板ヘルニア、突起神経、又は膨隆椎間板として知られる。椎間板での弱点は、神経根の直下にあり、この領域の椎間板ヘルニアは、神経に直接圧力を与え、同様に痛み、しびれ、うずき又は「坐骨神経痛」と呼ばれる脚部の脱力を引き起こす。
【0016】
椎間板ヘルニアはさらに背痛を引き起こすが、背痛単独(脚部の痛みなしに)では、椎間板ヘルニア以外の他の多くの原因を有する可能性がある。椎間板ヘルニアのおよそ90%は、L4/L5(腰椎分節4及び5)又はL5神経又はS1神経にそれぞれ痛みを引き起こすL5/S1(腰椎分節5及び仙骨分節1)で起こる。椎間板ヘルニアによるL5神経侵害は、足の親指の延長線上及び潜在的に足首(下垂足)の脱力を引き起こす。しびれ及び痛みは、足の頂部で感じられ、痛みはさらに後方へ放射状に広がり得る。椎間板ヘルニアによるS1神経侵害は、アキレス腱反射の欠失を引き起こす、及び/または足首の脱力が始まる(例えば、患者はつま先立ちができない)。しびれ及び痛みは、足の裏へ下がる又は足の外側へと放射状に広がり得る。
【0017】
プロテオグリカンは、マクロ分子であり、体内のほぼ全域に分散している。そのサイズ及び構造は、極めて多様性に富んでいる。プロテオグリカンの基本構造は、コアタンパク質及び少なくとも1の炭水化物鎖、又は、より頻繁に1以上(10又は100以下)の炭水化物鎖を含み、従って、グリコサミノグリカン(glycosaminoglycan、GAG)と呼ばれる。プロテオグリカンの当該タンパク質成分は、プロテオグリカンの生合成を異なる分子構成及び機能に導くコアタンパク質である。今までのところ、20を超える遺伝的に異なる種類のコアタンパク質が同定されている。
【0018】
GAG成分は、反復二糖単位から構成される長い非分枝の多糖鎖を含み、二つの糖のうち一つは、必ず例えばN−アセチルグルコサミン(GlcNac)等のアミノ糖であることからGAGと呼ばれている。GAGは、糖残渣に硫酸及びカルボキシル基又はその両方が多く存在することで、高いマイナス値に荷電している。二糖の成分は、コンドロイチン硫酸及びデルマンタン硫酸中のグルクロン酸/イズロン酸−N−アセチルグルコサミン、ヘパラン硫酸及びヘパリン中のグルクロン酸/イズロン酸−N−アセチルグルコサミン、及びケラタン硫酸中のガラクトース−N−アセチルグルコサミンである。コンドロイチン硫酸鎖中のグリコサミノグリカンの硫酸化は通常、規則的に鎖を通して二糖当たり一硫酸であるが、一方ヘパラン硫酸鎖において、硫酸化は幾分不規則的であり、単一グリコサミノグリカン鎖上に強く硫酸化された領域及びわずかに硫酸化された領域が結果として生じる。グリコサミノグリカンに加えて、プロテオグリカンは通常、他のグルコシル化タンパク質中で見られるように、O連鎖及びN連鎖オリゴ糖を含む他の糖質単位を有する。
【0019】
プロテオグリカンの生物学的機能は、主にそのグリコサミノグリカン及び当該分子のタンパク質成分に由来する。グリコサミノグリカンは、多くの硫酸化に基づく強い親水性により水溶液中に拡張された構造が想定され、この結果はそれらの分子が共有結合的にコアタンパク質へ連鎖することでさらに拡張される(典型的な例としてアグリカンが挙げられる)。それらは、分子ドメイン中に多数の水分分子を保持し、結果として水溶液中に広大な水力学的空間を占めることになる。
【0020】
最も研究され、プロトタイプのプロテオグリカンは、アグリカンであり、関節軟骨と同様に椎間板のNPで主成分を構成し、動物体内のプロテオグリカンの中で断然他より多い質量を占める。アグリカンの分子質量は、約2500kDaであり、軟骨組織で優先的に発現する単一遺伝子によりコードされる高分子量(〜210−250kDa)のコアタンパク質を構造的に有するプロテオグリカンである。アグリカンは、90重量%以下の糖質により高度にグルコシル化され、主にコンドロイチン硫酸及びケラタン硫酸の2タイプのグリコサミノグリカン鎖の形をとる。当該コアタンパク質は、アミノ末端の近くにヒアルロン酸結合ドメインを有し、ヒアルロン酸及び(「連結タンパク質」と呼ばれる)別のタンパク質と共に巨大な超分子構造を形成する。アグリカンの主な役割は、浸透膨潤が可能な物理的側面として現れ、軟骨組織の細胞外マトリクスで高レベルの水和を維持する。細胞外マトリクスは、原繊維状コラーゲン、アグリカン及び多数の他の重要な分子から成る。前記原繊維コラーゲンは、非常に高い抗張力を有し、アグリカン分子を包括するネットワークを形成する。非常に多数のコンドロイチン硫酸鎖におけるアグリカンの存在により、浸透膨潤圧が発生する。これにより、高いパーセンテージの組織湿重量が水分で構成される。
【0021】
座った状態や読書時等の静止時において、浸透膨潤は最大であり、コラーゲンネットワークのみによって包み込まれる。しかし、立ったり、歩いたり等の負荷時において、体重は、長骨の軟骨末端により支えられる。この状態では、体重により軟骨が圧縮され、文字通り水分が押し出される。この状態は、支える体重により生じる圧縮力と同等の力を浸透膨潤が生じるまで継続される。再び座る等して負荷が除かれた場合、圧縮力は除去され、軟骨は完全に膨張する。アグリカンコアタンパク質と付着したグリコサミノグリカン鎖は、この浸透膨潤を引き起こす。いずれの特定の作用理論又はメカニズムに限定されることなく、グリコサミノグリカン鎖の浸透膨潤効果を与える性能に危険を及ぼす因子は、組織の機能性に重大な影響を与えることが本願明細書で想定される。
【0022】
ポリリジンは、リジンポリペプチド又はリジンのホモポリマーである。いずれか又は両方のポリリジン光学異性体は、本願明細書で提供される当該方法、組成物及びキットで使用されることが出来る。D異性体は、細胞プロテアーゼに対する長期間の抵抗を保持する利点を有する。L異性体は、患者からより迅速に除去される利点を有する。D異性体及びL異性体の合成コポリマーは、本願明細書で提供される当該方法、組成物及びキットで使用されることが出来る。pHの生理学的値において、ポリリジンは、正に荷電する。前記ポリリジンは、細胞培養の用途における細胞接着の促進及び食品添加物としてのコーティング製剤として一般的に使用される。ポリリジン等のカチオン分子は、抗微生物特性を有する。前記カチオン分子は、細菌膜の透過率上昇及び自己分解システムの活性化を誘発することでこれらの抗微生物特性を発揮すると考えられている。
【化1】

【0023】
ポリリジンは、細胞標的部分への運搬物質及び特定の細胞に共輸送されるMRIコントラスト製剤用として使用されてきた。Kayyem他の米国特許第6,232,295号B1を参照にされたい。ポリリジン複合体は、自己免疫型疾患及び神経変性疾患等の障害の治療に用いられる薬物製剤として使用される。Geffardの米国特許第6,114,388号を参照にされたい。これらの製剤は、例えば静脈内、筋内又は皮下投与、又は皮下多量投与を可能にするインプラントシステムを用いる等して経口的又は非経口的に投与される。Thonar他は、ポリリジンを軟骨外植片の培養におけるプロテオグリカン損失を防ぐために使用している。J.Surg.Res.、56:302−308ページ、1994年及びJ.Bone Joint Surg.のOrthopedic Trans、13(2):301ページ、1989年を参照にされたい。
【0024】
本願発明は、所定の実施形態において、椎間板ヘルニアの治療が必要とされる患者の組織における細胞外マトリクスへカチオン水溶液を注射することを含む。本願明細書で提供される方法において、ポリリジン水溶液のヘルニア状椎間板中心部への(皮膚を通して施行される)経皮注射は、椎間板内圧の軽減に使用される。当該椎間板内圧の軽減は、ポリカチオン(すなわち、ポリリジン)と細胞外マトリクスの陰イオン成分(すなわち、プロテオグリカンのグリコサミノグリカン成分)との非共有結合に起因する。前記ポリカチオンは、陰イオン結合部位を求めて水分と効果的に競合する。椎間板中心部での水分、プロテオグリカン、及びコラーゲン間の相互作用は、浸透圧の維持に関与する。当該浸透圧は、負荷時での変形に対する抵抗を椎間板に与えるコラーゲンネットワークの変化に同調する。ポリカチオンの結合は、組織中の水分とプロテオグリカン成分との相互作用を防ぎ、それにより、水和不足の(underhydrated)組織又はより少ない空間を占める「圧潰された(collapsed)」組織を生成するだろう。椎間板中心部におけるプロテオグリカン成分の「圧潰」により、浸透圧の縮減、ヘルニア形成の縮減及び椎間板ヘルニアに起因する痛みの減少を引き起こす。
【0025】
本願明細書で提供される当該方法の別の実施形態において、1以上の成長因子が、カチオン分子と共有結合し、経皮的に椎間板へ再び注入されることで、椎間板の修復及び/又は罹患した又は負傷した椎間板の再生に効果を生じる。本願明細書で提供される方法による椎間板修復及び/又は再生の治療は、上述したカチオン水溶液を用いた椎間板ヘルニアの治療と同時に又は別に様々な実施形態において行われることが出来る。
【0026】
モノマーのカチオン水溶液の使用により望ましい成果が得られると同時に、オリゴペプチド又はポリペプチドもまた供給される。前記ポリカチオン、ポリリジン、及び他の荷電するポリカチオンを使用することが出来る。有益な他のポリマーカチオンはまた、次から成ることが出来る。すなわち、アルギニン又はヒスチジン等の基本アミノ酸、デキストラン(分枝したポリ−α−D−グルコシド)、アラビノガラクタン(植物、菌類及び細菌で幅広く見られる水溶性多糖であり、当該多糖は、D−ガラクトース及びL−アラビノース残基から成る)、プルラン(オーレオバシジウム・プルランによる澱粉から生成されたマルトトリオースから作られた細胞外細菌直鎖多糖)、セルロース、イヌリン(天然由来のフルクトース含有オリゴ糖のグループ)、キトサン(菌類、節足動物及び海洋無脊椎動物で見られる多糖ポリマー)、オルニチン(アミノ酸アルギニン由来)、スペルミジン及びスペルミン(オルニチン由来ポリアミン)、及びポリエチレンイミン(PEI)である。リゾチーム等の正に荷電したタンパク質もまた、望ましい成果の達成に有益と成り得る。注入可能な物質の重要な特徴は、正味の正電荷を含むことである。しかし、別の実施形態において、カチオン化合物は、陰イオン物質と複合され、従って、活性カチオン化合物は、投与後徐々に放出され、長時間にわたり効果が持続する。
【0027】
リジンは、146.19ダルトンの分子量を有する。リジンのポリマーは、ポリマー形成のための任意数のリジンペプチドのカップリングに由来する。当該ポリマーは通常、2から300kDaより大きいサイズの範囲で提供される。本願発明の様々な実施形態において、ポリリジンは、単一又は多数の分子量ポリペプチド鎖を含む水溶液として投与される、直鎖又は分枝のいずれかのポリペプチドとすることが出来る。ポリ−リジン、ポリ−アルギニン、又はポリ−ヒスチジン等のポリアミノ酸が使用される場合、好ましいサイズは約100から300kDaの範囲である。使用されるポリカチオンは、1より多いプロテオグリカン分子と結合するのに十分なサイズとすべきである。
【0028】
カチオン製剤が効果的に機能した時点、例えば、組織が圧潰された時点で、前記構造上のカチオンの効果は、必ずしも永続する必要はない。長い期間をかけて、水分は徐々に陰イオン結合部位を求めて置換又は競合し、組織を再水和する。望ましい効果の半減期の延長を助ける本願発明に係るいくつかの特徴がある。注射後にポリリジンの回転が始まると同時に、一方向の再水和、すなわち、外側から内側への再水和が起きる。最終結果として、治療部位の最外側の領域で膨張が生じる。この膨張は、より高い正味浸透圧により組織を通してポリリジンが移動しなくてはならないので、結合したポリリジンの追加的な放出に関して負の効果を有する。本願明細書の実施例における中間結果により、椎間板高指数(Disc Height Index、DHI、椎間板の高さの計測値)における縮減が治療後少なくとも6月間持続されることが示された。異なる分子量のポリリジンは、注射後に異なる半減期を有することが出来た。これは、効果の持続の予測を可能とする利点となる本願発明に係る重要な特徴である。
【0029】
椎間板ヘルニアの症状からの解放が必要とされると同時に、NP及びAFの安定性及び修復を増進する必要もある。本願明細書で提供される本願発明に係る別の実施形態において、1以上の成長因子はカチオン分子と共有結合でき、それらは椎間板へ経皮的に注入され、椎間板の修復及び/又は病的もしくは負傷した椎間板の再生に効果を生じる。椎間板修復及び/又は再生の治療は、上述したカチオン水溶液を用いた椎間板ヘルニアの治療と同時に又は別に行われることが出来る。
【0030】
細胞生物学の技術分野でよく知られ、1以上共有結合した成長因子は、骨形態形成タンパク質BMP−2及びBMP−7、インシュリン様成長因子(IGF)、形質転換成長因子(TGF)、成長分化因子GDF−5、及び血小板由来成長因子(PDGF)を含めるがそれらに限定されない。また様々な実施形態において、当該成長因子は本願明細書に係るポリカチオン化合物治療薬と同時に投与されるか、又は当該ポリカチオン化合物と共有結合し、マトリクス合成及び/又は分解の変化に効果を生じる。
【0031】
加えて、例えば隆起組織等の酵素分解は、本願明細書に係る当該治療方法及び組成物との組み合わせで使用されることが出来る。コンドロイチナーゼA、又はコンドロイチナーゼB、又はコンドロイチナーゼC、又はコンドロイチナーゼABCのようなコンドロイチナーゼ等のグルコシダーゼを用いた化学的髄核融解術等の本願明細書で提供される方法及び組成物との組み合わせに適した方法及び組成物は、Masuda他の米国特許出願第2004/0033221号A1に記載される。
【0032】
反対に、本願明細書に係る組成物及び方法は、マトリクス分解阻害剤と組み合わせることが出来る。例えば、マトリクス・メタロプロテナーゼ阻害剤も疾患の進行を防ぐのに有用と成り得る。1以上のこれらの分子は、1以上のカチオン分子を用いた椎間板の細胞外マトリクスを標的としている。その利点は、浸透圧の縮減、及び前記分子の標的特定の両者を含む。カチオン(ポリリジン)及びプロテオグリカンとの間で形成された非共有結合を通る同化因子及び異化因子の特定標的は、成長因子又はメタロプロテナーゼ阻害剤の濃度の減少を可能とさせ、さらに臨床的に有意な結果をもたらす。例えば、これらの因子は、in vivoにおけるこれらの標的分子の半減期を増長させることも可能である。
【0033】
本願明細書の発明に係る治療方法は、当該治療方法を必要とする状態にあるマウス、ラット、ウサギ、犬、馬等の哺乳類、又はサル、チンパンジー又はヒト等の霊長類である患者の治療に使用される。
【0034】
本願発明に係る方法及びキットに有用な化合物は、薬剤組成物として配合されることが出来る。当該組成物は、その後非経口的に投与されることができ、例えば、従来の無毒性で薬学的に許容される担体及び賦形剤を要望通りに含む投与量配合剤で投与されることができる。本願明細書で非経口として用いられる語は、脊椎骨内注射、又は局部注入法を含む。薬剤の配合は、例えば、Hoover,John E.編集のレミングトンの薬剤科学(Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版)、マック出版社(Mack Publishing Co.)、イーストン、ペンシルベニア州、1990年及びLiberman,H.A.及びLachman,L.編集の薬学的投薬形態(Pharmaceutical Dosage Forms)、マーセル・ベッカー社、ニューヨーク、ニューヨーク州、1980年に記載される。本願明細書の他の箇所で記載されるように、カチオンポリマーの単独投与又は成長因子等の別の製剤との組み合わせによる投与は通常、直接局部注射又は脊椎骨内の椎間腔への局部注入による。
【0035】
注入可能な調製液、例えば、無菌的に注入可能な水性又は油性懸濁液は、適した分散製剤又は湿潤製剤及び懸濁剤を使用した公知技術に従って配合されることが出来る。無菌的に注入可能な調製液は、例えば、1,3−ブタンジオールの溶液等の無毒性で非経口的に許容される希釈剤又は溶媒で無菌的に注入可能な水溶液又は懸濁液とすることも可能である。当該懸濁液は、遅延放出配合剤を提供する。許容される賦形剤及び溶媒のうちで使用可能なものは、水分、リンゲル水溶液、及び等張塩化ナトリウム水溶液である。加えて、無菌的な固定油は、従来から溶媒又は懸濁溶剤として使用される。この目的において、任意の無菌性の固定油は、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含めて使用される。加えて、オレイン酸等の脂肪酸は、注入可能溶液の調製に使用される。ジメチルアセトアミド、イオン性及び非イオン性洗浄剤を含む界面活性剤、ポリエチレングリコールも使用され得る。上述された溶媒及び湿潤製剤等の混合液も有用である。
【0036】
治療目的において、投与に用いられる配合剤は、水性又は非水性等張無菌性注射水溶液又は懸濁液状とすることが出来る。これらの水溶液及び懸濁液は、当該技術分野で知られるように、経口投与に用いられる配合剤で使用される1以上の担体又は希釈剤を有する無菌性の粉末又は顆粒から調製されることが可能である。当該化合物は、水分、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、コーン油、綿実油、ピーナッツ油、ゴマ油、ベンジルアルコール、塩化ナトリウム、及び/又は様々な緩衝液に溶解されることが出来る。投与に用いられる他の補助剤及び方法は、薬剤技術分野で周知である。
【0037】
本願発明で有用な化合物は、Hoover,John E.編集のレミングトンの薬剤科学(第18版上巻)、マック出版社、イーストン、ペンシルベニア州、1990年、1691ページで論じられるようにリポソームに配合されることが可能である。リポソームは、水性溶剤中でリン脂質を分散することにより形成される。水溶性基質又は脂質溶解性基質は、リポソーム中の水性領域又はリポソームの脂質二重層にそれぞれ包括されることが出来る。従って、成長因子は、リポソームに形成されることができ、当該技術分野で公知の技術を用いて本願発明に係る方法の用途に使用されることが可能である。
【0038】
上述したように、有効成分の量は、担体材料と組み合わされ、治療される哺乳類患者に依存した様々な単一投与形態、及び薬学における当業者に知られるような特定の投与方法を産出することが出来る。
【0039】
本願発明は、別の実施形態において、ポリリジン等のカチオンポリマーから成るキットを含む。当該キットは、前記ポリマーを単独で含むか、任意に成長因子等の追加的な製剤又は酵素又は酵素阻害剤と共に薬剤緩衝液中でポリマーを含む。前記キットは、当該技術分野で知られる従来の方法で包装される。
【0040】
本願発明に係る好ましい前記キットは、カチオンポリマーを含む容器及び成長因子等の別の製剤を含む容器から成る。このような容器は、ガラスバイアル又はコンテナ、プラスチックバイアル又はコンテナ、又は当該技術分野で知られる他の適した容器とすることが出来る。別の好ましい実施形態において、前記キットは、カチオンポリマー及び成長因子を含む容器から成る。このようなキットは特に、本願発明に係る方法に従ったポリマー単独又は成長因子等の別の製剤との組み合わせの同時投与に適している。
【0041】
上述のいずれのキットも、任意に前記ポリマーの用法に関する取扱説明書を含む。例えば取扱説明書は、本願発明に係る方法における当該キットの内容の使用法について詳細が示される。
【0042】
薬剤組成物
別の側面において、本願発明は、例えば薬学的に許容される担体と共に形成された本願発明に係るカチオン化合物、又はそれらのポリマーの単独又はそれらの組み合わせを含む薬剤組成物等の組成物を提供する。このような組成物は、(例えば2以上の異なる)カチオン、又はポリリジン等のそれらのポリマーの単独又はそれらの組み合わせを含むことが出来る。例えば、本願発明に係る薬剤組成物は、異なる長さのポリ−L−リジン及びポリ−D−リジン、又はポリ−L−リジン化合物等のカチオンの組み合わせから成ることが可能である。
【0043】
本願発明に係る薬剤組成物は、本願明細書における方法の様々な実施形態において、組み合わせ治療、すなわち、他の製剤と組み合わされて投与されることが出来る。例えば、前記組み合わせ治療は、少なくとも1の抗炎症製剤又は抗微生物製剤と組み合わせた本願発明に係るカチオン化合物を含むことが出来る。組み合わせ治療で使用され得る治療薬の例は、本願発明に係る当該組成物の使用についての下記の項で、より詳細に記載される。
【0044】
本願明細書で使用される「薬学的に許容される担体」は、任意の及び全ての溶媒、分散溶剤、コーティング剤、抗細菌製剤及び抗菌製剤、等張及び吸収遅延製剤、及び生理学的に相溶可能なその他の製剤を含む。前記担体は、静脈内、脊椎内等の脊髄、又は筋内、皮下、非経口、又は表皮(例えば、注射又は注入による)投与に適しているべきである。投与経路に依存して、有効化合物、すなわち、カチオン化合物又はポリマーは、コーティング剤により被覆され、酸作用及び当該化合物を不活化し得る他の自然条件から化合物を保護することが出来る。
【0045】
本願発明に係る薬剤化合物は、1以上の薬学的に許容される塩を含むことが出来る。「薬学的に許容される塩」は、親化合物の所望の生物学的活性を保有し、所望されないいずれの毒性効果も与えない塩を示す(Berge,S.M.他の1977年、J.Pharm.Sci.、66:1−19ページ等を参照にされたい)。これらの塩の例は、酸付加塩及び塩基付加塩を含む。酸付加塩は、塩化水素、窒素、リン、硫黄、臭化水素酸、ヨウ素水素、亜リン等の無毒性無機酸の他、脂肪族モノカルボン酸及びジカルボン酸、フェニル基−置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族及び芳香族スルホン酸等の無毒性有機酸に由来する塩を含む。塩基付加塩は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属の他、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N−メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカイン等の無毒性有機アミンに由来する塩を含む。
【0046】
本願発明に係る薬剤組成物は、薬学的に許容される抗酸化剤も含む。薬学的に許容される抗酸化剤の例は、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等の水溶性抗酸化剤、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(butylated hydroxyanisole、BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(butylated hydroxytoluene、BHT)、レシチン、プロピルガラート、アルファ・トコフェロール等の油溶性抗酸化剤、及びクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(ethylenediamine tetraacetic acid、EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等の金属キレート製剤を含む。
【0047】
本願発明に係る薬剤組成物で使用され得る適した水性及び非水性担体の例は、水分、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、及び適したそれらの混合物、オリーブ油等の植物油、及びオレイン酸エチル等の注入可能な有機エステルを含む。適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティング物質の使用、分散薬で必要とされる粒径の整備、及び界面活性剤の使用により維持されることが出来る。
【0048】
当該組成物は、防腐剤、湿潤製剤、乳化製剤及び分散製剤等の補助剤も含むことが出来る。微生物の存在の予防は、上述の殺菌処置、及び、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸等の様々な抗細菌及び抗菌製剤の包含の両方により確実とされ得る。糖類、塩化ナトリウム等の等張製剤を当該組成物に含むことも望ましい。加えて、注入可能な薬剤形態の持続的吸収は、アルミニウムモノステアリン酸塩及びゼラチン等の吸収を遅らせる製剤の包含により引き起こされ得る。
【0049】
薬学的に許容される担体は、無菌性水性水溶液又は分散液及び無菌的に注入可能な水溶液又は分散液の即時調製に用いられる無菌性粉末を含む。これらの溶剤の使用及び薬剤活性基質に用いられる製剤は、当該技術分野で知られる。従来の任意の溶剤又は製剤が活性化合物と相溶的でない場合を除き、これらの溶剤又は製剤を本願発明に係る薬剤組成物に使用されることが意図される。補助活性化合物も、当該組成物と組み合わせ得る。
【0050】
治療組成物は典型的に、無菌的であり、製造及び貯蔵の条件下で安定でなければならない。当該組成物は、水溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、又は高薬物濃度に適した他の所望の構造として配合されることが出来る。前記担体は、例えば、水分、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、及びそれらの適した混合物等を含む溶媒又は分散溶剤とすることが出来る。適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティング物質の使用、分散薬で必要とされる粒径の整備、及び界面活性剤の使用により維持されることが出来る。多くの場合において、例えば、糖類、マンニトールのようなポリアルコール、ソルビトール、又は塩化ナトリウム等の等張製剤が当該組成物に含まれることが出来る。一般的に急速な吸収が投与の好ましい結果として意図される一方で、注入可能な組成物の持続的吸収が、例えばモノステアリン酸塩及び/又はゼラチン等の吸収を遅らせる製剤を当該組成物に含むことでもたらされ得る。
【0051】
無菌的に注入可能な水溶液は、すでに列挙された、必要な含有物の単独又はそれらの組み合わせと共に適当な溶媒に必要な量の活性化合物を組み込み、その後殺菌精密ろ過することで調製が可能である。一般的に、分散薬は、基本的分散溶剤及びすでに列挙した含有物から必要とされる他の含有物を含む無菌性賦形剤に当該活性化合物を組み込むことで調製される。無菌的に注入可能な水溶液の調製に用いられる無菌性粉末の場合、当該調製の方法は、真空乾燥及びフリーズドライ(凍結乾燥)であり、これにより有効成分の粉末が得られる。さらに、追加的な望ましい成分が、事前に無菌ろ過されたそれらの水溶液から得られる。
【0052】
担体材料と結合し、単一投与剤形を形成し得る有効成分の量は、治療される患者及び投与の所定の方法に依存して変化する。担体材料と結合し、単一投与剤形を生成し得る有効成分の量は一般的に、治療効果を生じる当該組成物の量となる。一般的に、百パーセントを除き、当該量は、約0.01パーセントから約99パーセントの有効成分、薬学的に許容される担体と組み合わされた約0.1パーセントから約70パーセント又は約1パーセントから約30パーセントの有効成分の範囲となる。
【0053】
用法・用量は、最適で望ましい反応(例えば、急速で、かつ背痛の即時軽減さえもたらし得る治療反応等)を供与するため調節される。例えば、単一ボーラスが投与され、いくつかの分割量が、長期間投与されるか、当該量は、治療状況の必要性に従って比較的に減少されるか、増加されることが出来る。特に、簡易投与及び投与量の一貫性のため、単位投与剤形で脊椎内組成物を配合することが有効である。本願明細書で使用される単位投与剤形は、治療される患者に用いる単位投与量又は単一投与量として適した物質的に分離した単位を示す。各単位は、必要な薬物担体と併用して、望ましい治療効果を生じるために計算され、あらかじめ決められた量の活性化合物を含む。本願発明に係る単位投与剤形の規格は、活性化合物の独自の特性、達成すべき所定の治療効果、及び大部分の個人患者が占める範囲の症状に対する治療用の活性化合物の合成技術分野に付きものの制限により、決定され、かつこれに直接的に依存する。
【0054】
カチオン化合物の投与において、投与量は、患者の体重で約0.0001から100mg/kg、及びより一般的に0.01から5mg/kgの範囲である。例えば投与量は、体重当たり、0.3mg/kg、1mg/kg、3mg/kg、5mg/kg又は10mg/kg又は1−10mg/kgの範囲内とすることが出来る。治療投与計画の例として、1週間に1回、2週間毎に1回、3週間毎に1回、4週間毎に1回、1ヶ月に1回、3ヶ月毎に1回又は3ヶ月から6ヶ月毎に1回の投与を伴う。本願発明に係るカチオン化合物の用法・用量は、体重当たり、約1mg/kg又は約3mg/kgの脊椎内投与を含み、カチオン化合物は次の投与計画のいずれかを用いて投与される。すなわち、4週間毎に6回の投与後3ヶ月毎に投与、3週間毎に投与、体重当たり約3mg/kgの1回の投与後体重当たり約1mg/kgを3週間毎に投与の、いずれかである。
【0055】
いくつかの方法において、投与された各化合物の投与量が指示された範囲に収まる場合、異なる浸透率及び/又はクリアランス速度を有する2以上のカチオン化合物は、プロトコール又は投与計画で同時に又は連続して投与される。カチオン化合物は通常、複数時に投与されるが、特定の個人に対しては、一回処置でも容態を完治することが可能である。単位投与の間隔は、例えば、1週間毎、1月間毎、3ヶ月毎又は1年毎である。間隔は、脊椎内高の測定、又は単に患者の症状に応じて不定期とすることが出来る。いくつかの方法において、投与量は、痛みを治療する条件に達成させるために調整される。
【0056】
或いは、当該カチオン化合物は、それ程頻繁な投与が必要とされない場合に、持続性放出配合剤として投与されることが出来る。投与量及び投与頻度は、患者の椎間板で当該化合物が存在する滞留時間又は半減期に依存して変化する。一般的に、より長いポリマー程、最も長い半減期を示し、中間の長さのポリマーがそれに続く。当該投与量及び投与頻度は、当該処置が予防か治療かによって変化し得る。予防の用途において、比較的少ない投与量が、比較的低頻度の間隔で長期間投与される。若干の患者は、延命を目的として治療を受け続ける。治療の用途において、当該疾患の進行が減速するもしくは停止するか、疾患の症状が部分的にもしくは完全に改善されるまで、比較的短い間隔で比較的多い投与量が指示される。その後患者は、予防体制で投与されることが出来る。
【0057】
本願発明に係る薬剤組成物中の有効成分の実際の投与量レベルは、特定の患者、組成物、及び投与方法に用いる望ましい治療反応を達成するために効果的な有効成分の量を得るよう変化され得る。選択される前記投与量レベルは、本願発明で使用される特定の組成物、エステル、塩又はそれらのアミド等の活性を含む薬物動態因子、投与経路、投与時間、使用される特定の化合物が椎間板からクリアされる速度、治療の持続期間、他の薬物との併用、使用される特定の組成物と組み合わせて併用される化合物及び/又は物質、年齢、性別、体重、容態、総合的な健康及び治療される患者の既病歴、及び当該医療分野で公知のその他の要因の、多様性に依存する。
【0058】
本願発明に係るカチオン化合物の「治療上効果的な投与量」は、疾患症状の重症度の減少、疾患症状のない期間の頻度及び持続時間の増加、又は当該疾患の苦痛による精神障害又は身体障害の予防を結果として得ることが可能である。
【0059】
本願発明に係る組成物は、1以上の様々な当該技術分野で知られる方法を用いて1以上の投与経路により投与され得る。当業者に理解されるように、投与経路及び/又は投与方法は、望ましい結果を得ることに依存して変化する。本願発明に係るカチオン化合物の適した投与経路は脊椎内であるが、例えば注射又は注入等による静脈内、筋内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄及び他の非経口投与経路も本願発明の範囲内である。本願明細書で使用される「非経口投与」の語は、経腸及び点眼(topical administration)以外の投与方法を意味し、通常注射、及び脊椎内、静脈内、筋内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜内、くも膜下、脊髄内、硬膜外及び基質内注射及び注入による方法を含むが制限されることなく、特に、脊椎の結合部に直接注射又は注入することを含む。
【0060】
当該活性化合物は、インプラント、及びマイクロカプセル化したデリバリーシステムを含む放出制御配合剤等の、急速な放出に対して化合物を保護する担体と共に調製されることが出来る。エチレンビニル酢酸塩、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸等の生分解性、生体適合性ポリマーが使用され得る。これらの配合剤の調製に用いられる多くの方法は、特許されているか、又は一般的に当業者に知られている。例えば、持続性及び制御放出ドラッグデリバリーシステム(Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems)、J.R.Robinson編集、マーセル・デッカー社、ニューヨーク州、1978年を参照されたい。
【0061】
治療組成物は、当該技術分野で知られる医療器具を用いて投与され得る。例えば、1つの実施形態において、本願発明に係る治療組成物は、米国特許第5,399,163号、第5,383,851号、第5,312,335号、第5,064,413号、第4,941,880号、第4,790,824号又は第4,596,556号で示される器具等の無針皮下注射器で投与され得る。本願発明で有用な公知のインプラント及びモジュールの例は、米国特許第4,487,603号、第4,486,194号、第4,447,233号、第4,447,224号、第4,439,196号、及び第4,475、196号を含む。前記米国特許第4,487,603号は、制御された割合で薬物投与を施行する移植可能なマクロインフュージョンポンプについて示す。前記米国特許第4,486,194号は、皮膚を通して薬剤を投与する治療器具について示す。米国特許第4,447,233号は、精密な注入割合で薬剤を供給する薬剤インフュージョンポンプについて示す。米国特許第4,447,224号は、連続的な薬物送達に用いられる流量可変で移植可能な注入器具について示す。米国特許第4,439,196号は、マルチチャンバー部分を有する浸透性ドラッグデリバリーシステムについて示す。米国特許第4,475、196号は、浸透性ドラッグデリバリーシステムについて示す。これにより、これらの特許及び他の引用参考文献は、参照により本願明細書に組み込まれる。これら以外のインプラント、デリバリーシステム、及びモジュールの多くは、当業者に公知である。
【0062】
リポソームの製造方法には、例えば、米国特許第4,522,811号、第5,374,548号、及び第5,399,331号を参照されたい。前記リポソームは、特定の細胞又は椎間板等の組織へ選択的に移送される1以上の部分から成ることができ、従って標的に向けた薬物送達を促進する(例えば、V.V.Ranade、1989年、J.Cline Pharmacol.、29:685ページを参照にされたい)。例示的な標的への送達を担当する成分は、葉酸又はビオチン(例えば、Low他の米国特許第5,416,016号を参照にされたい)、マンノシド(梅沢他、1988年、Biochem.Biophys.Res.Commun.、153:1038ページ)、抗体(P.G.Bloeman他、1995年、FEBS Lett.、357:140ページ、M.Owais他、1995年、Antimicrob.Agents Chernother.、39:180ページ)、界面活性剤タンパク質Aレセプター(Briscoe他、1995年、Am.J.Physiol.、l233:134ページ)、p120(Schreier他、1994年、J.Biol.Chem.、269:9090ページ)を含み、また、K.Keinanen、M.L.Laukkanen、1994年、FEBS Lett.346:123ページ、J.J.Killion、I.J.Fidler、1994年、Immunomethods、4:273ページも参照されたい。
【0063】
本願発明の用途及び方法
本願明細書に使用される「患者」の語は、ヒト及びヒト以外の動物を含むことを意味する。ヒト以外の動物は、全ての脊椎動物、例えばヒト以外の霊長類、羊、犬、猫、牛、馬、鶏等の哺乳類及び非哺乳類、鳥等の他の温血脊椎動物、さらに両生類及び爬虫類等の冷血脊椎動物を含む。当該方法は、特に、異常な椎間板形態に関連した疾患を有するヒト患者の治療に適している。カチオン化合物が別の製剤と併用し投与される場合、両者は、順々又は同時のいずれかで投与され得る。
【0064】
本願発明に係る当該組成物(例えば、カチオン化合物及びそれらのポリマー)及び用法に関する取扱説明書を含むキットも本願発明の範囲内である。当該キットは、さらに少なくとも1の追加的な製剤、又は1以上の追加的な本願発明に係るカチオン化合物(例えば、より長く続く活性に用いられる長さ又は成分のモノマーから成るポリマー組成物を有する化合物等)を含むことが出来る。キットは通常、キットの成分及び成分の使用目的を示すラベルを含む。ラベルの語は、キット上の、もしくはキットに添付され、又はそれ以外にも、用法の取扱説明書等のキットに付随される、いずれの文書又は記録物質をも含む。
【0065】
本願発明は、これまでで十分に記載されてきたと同時に、次の実施例及び請求項でさらに具体化されるが、これらは、ただの実施例であって、これらに限定することを意図しない。日常的な実験を超えるような複雑な実験を行うことなしに、本願明細書で記載される所定の処置に相当する多くを当業者は、理解するか解明できる。これらの相当する処置は、本願発明及び請求項の範囲内である。公報された特許及び公開された特許出願を含む本願を通して引用された全参照文献の内容は、参照により、ここに組み込まれる。
【0066】
次の実施例は、本願発明をさらに具体化するが、限定することを目的とせずに提供される。
【0067】
実施例
物質及び方法
細胞培養:椎間板(IVD)を、安楽死の後、無菌的にニュージーランド白ウサギの脊椎から分析した。NP及びAFを、必要に応じて鈍的切開で分離し、別々に集めた。
【0068】
統計分析:統計分析を元配置ANOVAを用いて行い、posthoc試験としてフィッシャーのPLSD試験を行った。
【0069】
実施例1.椎間板高におけるポリリジンの効果
ウサギ(6体)の椎間板L4/5及びL2/3に、30−70kDaポリリジンを注入した。コントロールとして、各々の個体の椎間板L3/4は、未処理にした。
【0070】
椎間板高を、注射後それぞれ2、4及び6週間に測定し、観察された初期椎間板高の標準パーセンテージを図1で示した。椎間板高は、治療により初期値の約80%にまで減少し、当該20%の減少は、観察期間の全6週間で維持された。当該データを、表1で示した。
【0071】
これらのデータにより、ポリリジンが椎間板を、ヘルニアに近い容態よりも修復及び再生された可能性が高い容態にしたことが示された。
【表1】

【0072】
実施例2.ポリリジンの軟骨への分布速度
図2で示されるようにフルオレセインイソチオシアネート(FITC)で標識されたポリリジンポリマーを用いたインキュベーション中に、ポリリジンが、軟骨の移植片組織に入ることが観察された。図2で示されるように、組織の移植片を、ポリリジンの水溶液中に沈めインキュベートした。所定時間後、組織を洗浄、凍結し、クリオスタットを用いて10ミクロンの切片を作成した。
【0073】
30分間のインキュベーションの後、当該ポリリジンが移植片の端に浸透しているのが見られた(図2、ポリリジンのないコントロールのパネルAと比較されるパネルF及びK)。1時間後、蛍光発光は、さらに移植片内に見られるようになり(図2、ポリリジンのないコントロールのパネルBと比較したパネルG及びL)、3時間後には、より多くの蛍光発光が浸透していた(図2、ポリリジンのないコントロールのパネルCと比較したパネルH及びM)。
【0074】
これらのデータは、椎間板ヘルニアに関連した痛みがポリリジンを用いた椎間板の継続的な処置により、潜在的に、急速に取り除かれたことを示す。
【0075】
実施例3.ポリマーの長さによる浸透の制御
図2、パネルK、L、M、N、及びOで示されるより長い鎖長(30−70kDa、約479モノマー以下)を有するポリリジンを用いた治療と比較して、図2、パネルF、G、H、I、及びJで示されるように、軟骨への浸透の速度は、より短い鎖長を有するポリリジンを用いた治療により促進できた(15−30kDa、約102−204リジンモノマー)。
【0076】
7−12時間内で浸透が最大限のレベルに達する、すなわち浸透が完了する、より長いポリマー(図2、パネルI及びJと比較したパネルN及びO)と比べ、より短いカチオンポリマーを用いることで、浸透が3−7時間内で最大限のレベルに達していることが観察された(図2、パネルMと比較したパネルH)。
【0077】
軟骨圧縮及び椎間距離の減少により押出物質をもとに戻すことから、より急速な浸透率を有するポリマーは、坐骨神経痛等の椎間板ヘルニアに関連した急性な痛みの治療に用いられる有力な治療薬として有効である。
【0078】
加えて、より長いポリマーは、より長期に作用する治療薬の可能性を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、腰椎(lumbar)2/3及び4/5にそれぞれ30−70kDaポリリジンが注入されたウサギの椎間板高とコントロールの未処理椎間板3/4(100%)の高さとの比較を示す棒グラフ群である。椎間板高は、2週間(図1、パネルA)、4週間(図1、パネルB)、及び6週間(図1、パネルC)後でそれぞれ測定された。当該データは、表1で示される。この研究で6週間に及び、およそ20%のDHIの減少が維持された。
【図2】図2は、FITC−標識ポリリジン(15−30kDaサイズ、パネルF、G、H、I、及びJ;及び30−70kDaサイズ、パネルK、L、M、N、及びO)とインキュベートされたウシ軟骨移植片又はコントロール未処理軟骨(図2、パネルA、B、C、D、及びE)の写真群である。写真は、0.5時間(図2、パネルA、F、及びK)、1.0時間(図2、パネルB、G、及びL)、3時間(図2、パネルC、H、及びM)、7時間(図2、パネルD、I、及びN)及び12時間(図2、パネルE、J、及びO)のそれぞれの時点で撮影された。
【図1A】

【図1B】

【図1C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟骨疾患の治療のための薬剤組成物であって、椎間板高、背痛、坐骨神経痛、突起神経、押出、ヘルニア、下垂足、及びアキレス腱反射の欠失の少なくとも1で軽減をもたらし、それにより当該疾患を改善するのに効果的な量のカチオン化合物及び薬学的に許容される塩又は緩衝液を含む前記組成物。
【請求項2】
前記組成物が、カチオンモノマーから成るポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記カチオンモノマーが、アミノ酸である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記アミノ酸が、D−リジン、L−リジン、D−アルギニン、L−アルギニン、D−ヒスチジン、及びL−ヒスチジンから成る群より選ばれる少なくとも1である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記化合物が、デキストラン、アラビノガラクタン、プルラン、セルロース、イヌリン、キトサン、オルニチンポリマー、スペルミンポリマー、スペルミジンポリマー、及びポリエチレンイミンから成る群より選ばれる少なくとも1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記デキストランが、分枝したポリ−α−D−グルコシドである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記アラビノガラクタンが、D−ガラクトース及びL−アラビノースから成る、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記アラビノガラクタンが、植物、真菌、又はバクテリアにより生産される、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
前記プルランが、マルトトリオースから成る、請求項5に記載の組成物。
【請求項10】
前記プルランが、オーレオバシジウム・プルランにより生産される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記イヌリンが、フルクトシルオリゴ糖から成る、請求項5に記載の組成物。
【請求項12】
前記キトサンが、真菌、節足動物、又は海洋無脊椎動物から成る群より選ばれる少なくとも1により生産される、請求項5に記載の組成物。
【請求項13】
前記カチオン化合物が、タンパク質である、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記タンパク質が、リゾチームである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記ポリマーが、平均サイズで少なくとも約2kDaである、請求項3に記載の組成物。
【請求項16】
前記ポリマーが、サイズで少なくとも約300kDaである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記ポリマーがポリリジンであり、前記ポリリジンがサイズで約100kDaから約300kDaである、請求項3に記載の組成物。
【請求項18】
前記ポリマーが、複数のプロテオグリカン分子と結合するのに十分なサイズである、請求項3に記載の組成物。
【請求項19】
各種分子量によって選択される複数のポリカチオン化合物を含み、軟骨での前記化合物の半減期が、分子量と相関する、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
成長因子又はマトリクス・メタロプロテナーゼ阻害剤等の酵素阻害剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
前記成長因子が、BMP−2及びBMP−7等の骨形態形成タンパク質、インシュリン様成長因子(IGF)、形質転換成長因子(TGF)、GDF−5等の成長分化因子(GDF)、及び血小板由来成長因子(PDGF)の群から選択される少なくとも1である、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記成長因子又は酵素阻害剤が、前記化合物と共有結合する、請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
患者の軟骨疾患を治療する方法であって、前記方法が、軟骨とカチオン化合物を含む組成物とを接触し、前記接触が軟骨量の減少を引き起こす工程、及び椎間板高、背痛、坐骨神経痛、突起神経、押出、ヘルニア、下垂足、及びアキレス腱反射の欠失の少なくとも1の軽減を観察し、それにより個体の当該軟骨疾患を改善する工程を含む。
【請求項24】
前記軟骨が、椎間板である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記椎間板が、ヘルニア状である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記軟骨との接触が、前記組成物の水溶液を注入することである、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記注入が、経皮である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記治療が、椎間板の再生である、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記化合物が、ポリリジンである、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
前記ポリリジンが、L−リジンから成る、請求項30に記載の方法。
【請求項31】
前記ポリリジンが、D−ヘテロポリマー及びL−ヘテロポリマーである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記化合物が、デキストラン、アラビノガラクタン、プルラン、セルロース、イヌリン、キトサン、アルギン酸塩、オルニチンポリマー、スペルミンポリマー、スペルミジンポリマー、及びポリエチレンイミンから成る群より選ばれる少なくとも1である、請求項24に記載の方法。
【請求項33】
カチオン化合物、容器、及び椎間板ヘルニア治療の用法のための取扱説明書を含む、椎間板ヘルニアの治療に用いられるキット。
【請求項34】
前記化合物が、皮下脊椎内注射による投与のための単位用量で存在する、請求項34に記載のキット。

【図2】
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【公表番号】特表2009−535406(P2009−535406A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509676(P2009−509676)
【出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/010588
【国際公開番号】WO2007/130430
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(504419829)アーティキュラー・エンジニアリング・エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】