説明

構造物形成装置

【課題】蒸発源で形成した超微粒子を効率的にノズルへと搬送することができる構造物形成装置を提供する。
【解決手段】金属材料またはセラミックス材料を含む蒸発源となるターゲット107と、前記ターゲット表面から放出粒子を放出させるためのレーザー光線112と、前記放出粒子にガスを導入するためのガス噴射手段と、前記ターゲットの前記表面近傍において、前記放出粒子と前記ガスとを混合し冷却して混合相を形成するナノ粒子発生室103と、室内を大気圧未満に減圧するための減圧手段117と、構造物形成用の基板115が配置される成膜室105と、前記混合相を前記基板に向けて噴射するノズル10と、を備え、前記ナノ粒子発生室103と前記成膜室105との圧力差により、前記ナノ粒子を前記ノズル10より前記基板115に向けて高速で噴射して前記基板115上に構造物を形成する構造物形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料にエネルギーを与えて材料表面から蒸発させたガスで冷却したナノ粒子とガスの混合物を基材に向けて噴射して、基材上に膜状の構造物を形成させる構造物形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来金属材料などを加熱して蒸発させ、ガスで冷却してナノ粒子を含む超微粒子を形成させて、これをガス流に乗せて搬送し、構造物形成室内の基板に向けてノズルからガスの差圧を利用して噴射して該基材に衝突させ、基材上に微粒子の圧粉体や、膜状の構造物を形成させるガスデポジション法が知られている。
【0003】
ガスデポジション法で構造物形成速度を高めるための一手段として、形成した超微粒子のノズルへの搬送効率を向上させることが知られている。特許文献1では、蒸発源の周囲に環状にガス噴出口を設け、蒸発源の下方から上方に向けてガスを導入することで超微粒子の流れを乱すことなく搬送管に搬送させることが記載されている。
【0004】
また、特許文献2にはガスの導入方向や導入口の位置を調整することで形成した超微粒子のノズルへの搬送効率を向上させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−152582
【特許文献2】特開2001−355063
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガスデポジション法では、基材上に構造物を形成するためにノズルからの微粒子の噴射速度を高速にする必要があり、構造物形成室と蒸発雰囲気との差圧を設ける必要があり、一般的には蒸発雰囲気よりも構造物形成室の圧力を低く設定される。したがって、蒸発雰囲気の気圧は比較的高く設定されている。
【0007】
このために、蒸発源から発生した材料蒸気は、たとえ蒸発源からほぼ上方に立ちあがったとしても、形成された超微粒子は周囲のガスの影響を受けて空間中に拡散してしまい、結果としてノズルに搬送される割合が減少してしまっていた。
【0008】
従って、本発明は、蒸発源で形成した超微粒子を効率的にノズルへと搬送することができる構造物形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、上記課題を解決すべく、ナノ粒子生成部と構造物形成室との圧力差を利用して、ナノ粒子生成部で生成されたナノ粒子を構造物形成室内に導き、構造物形成室内に配置された基材上に構造物を形成する構造物形成装置であって、金属材料またはセラミックス材料を含む蒸発源となるターゲットと、金属材料または前記セラミックス材料を、前記ターゲット表面から放出粒子として放出させるエネルギー付与手段と、前記放出粒子にガスを導入するための第一のガス噴射手段を備えたガス導入機構と、前記ターゲットの前記表面近傍において、前記放出粒子と前記ガスとを混合し冷却してナノ粒子を生成させて前記ガスと前記ナノ粒子の混合相を形成するナノ粒子生成部と、室内を大気圧未満に減圧するための減圧手段を備えるとともに、前記室内に構造物形成用の基板が配置される構造物形成室と、前記ナノ粒子生成部で生成された前記混合相を前記構造物形成室内に配置された前記基板に向けて噴射するノズルであって、前記ナノ粒子生成部の前記ターゲット表面側を上流とした際に下流側に配置され、前記ナノ粒子生成部で生成された前記混合相を導入するノズル導入口を一端に、前記構造物形成室内に配置され、前記混合相を噴射するノズル噴射口を他端に有するとともに、内部に前記混合相が通過する空間を備えたノズルと、を備え、前記ナノ粒子を前記ナノ粒子生成部と前記構造物形成室との圧力差により加速し、前記ノズルの前記ノズル噴射口より前記基板に向けて高速で噴射して前記ナノ粒子を前記基板に衝突させて前記基板上に前記ナノ粒子を構成材料とする構造物を形成する構造物形成装置において、前記エネルギー付与手段はレーザー光線によってエネルギーを付与するものであり、さらに、前記ターゲットにレーザー光線を照射することで形成される前記放出粒子を含むプルームの長軸方向の延長線上にノズル導入口が位置するようにレーザー光線を照射するものであり、さらに、前記第一のガス噴射手段は前記プルームの長軸方向と垂直な方向に前記放出粒子が拡散することを抑制するように前記プルームに向けてガスを吹付けるものであって、前記第一のガス噴射手段から噴射されたガスは前記プルームの長軸に向かって噴射され、さらに、前記プルームの長軸に対して突入方向の異なる2以上の流れを有し、前記異なる2以上の流れが前記プルームの長軸上で衝突して形成される合成されたガスの流れが前記ノズル導入口に向かうようにガスが噴射されることを特徴とする構造物形成装置を提供する。
【0010】
このように構成された本発明において、エネルギー付与手段はレーザー光線によってエネルギーを付与するものであるため、ターゲット表面においてレーザー光線が照射されるレーザー照射面から垂直にプルームが形成される。つまり放出粒子は放出源から垂直に放出されるため指向性がよい。
さらに、前記ターゲットにレーザー光線を照射することで形成される前記放出粒子を含むプルームの長軸方向の延長線上にノズル導入口が位置するようにレーザー光線を照射するため、ノズル導入口への搬送効率を上げることができる。
また、前記プルームの長軸方向と垂直な方向に前記放出粒子が拡散することを抑制するように前記プルームに向けてガスを吹付ける第一のガス噴射手段を備えているので、プルームの長軸方向と垂直な方向に前記放出粒子が拡散することを抑制することができる。一方で、一対の第1のガス噴出口からはプルームにガスを吹き付けているため、原子状態の放出粒子を積極的にナノ粒子化することができるとともに、ナノ粒子の粒径を制御することができる。さらに、第一のガス噴射手段から噴射されたガスは前記プルームの長軸に向かって噴射され、さらに、前記プルームの長軸に対して突入方向の異なる2以上の流れを有し、前記異なる2以上の流れが前記プルームの長軸上で衝突して形成される合成されたガスの流れが前記ノズル導入口に向かうようにガスが噴射されるため、衝突したガス流が逸れることなくノズル導入口に向かうため、搬送効率をさらに上げることができる。
【0011】
ここで、放出粒子とは、金属やセラミックスなどのナノ粒子供給源にエネルギーを付与して、その表面から放出される原子、分子、電子、クラスターなどの粒子などを含むものであり、一部ナノ粒子がもとから含まれている場合もある。
【0012】
レーザーを使用することで、レーザー照射スポットすなわち放出粒子の発生ポイントを直径10mm以下の小さな面積に限定することが容易であり、より放出粒子の制御性が高まり、収率高くナノ粒子を活用することができる。すなわちレーザー照射手段はナノ粒子発生に対して高い優位性を有する好適な手段である。レーザー照射スポットの好適な直径は1mmから10mmである。
【0013】
本発明において、好ましくは、さらに、前記異なる2以上の流れが前記プルームの長軸に対して対称に吹付けられる構造物形成装置を提供する。
【0014】
このように構成された本発明において、前記異なる2以上の流れが前記プルームの長軸に対して対称に吹付けられるので、前記放出粒子がプルームの長軸方向と垂直な方向に拡散する前に収束させることができ、ノズル導入口への搬送効率をさらに上げることができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、さらに、前記第一のガス噴射手段は環状ガスを噴射するものであり、前記プルームの長軸周方向から均等に前記プルームの長軸に向かってガスを吹付ける構造物形成装置を提供する。
【0016】
第一のガス噴射手段は環状にガスを噴射するため、ノズル導入口への搬送効率をさらに上げることができる。
【0017】
本発明において、好ましくは、さらに、前記異なる2以上の流れは前記ターゲットの表面近傍で衝突するように構成された構造物形成装置を提供する。
【0018】
合流部が放出源近傍に設けられたことで合流部からノズル導入口の距離によっては再びナノ粒子が拡散する恐れもあるが、このように構成された本発明において、異なる2以上の流れは前記ターゲットの表面近傍で衝突するように構成されているので、合流部よりも下流側でナノ粒子が再びプルームの長軸方向と垂直な方向に拡散するのを抑制でき、ノズル導入口への搬送効率をさらに上げることができる。
【0019】
本発明において、好ましくは、さらに、前記異なる2以上の流れが衝突する衝突部の下流側にさらに、前記プルームの長軸方向と垂直な方向に前記ナノ粒子が拡散することを抑制するようにナノ粒子拡散防止手段を備えている構造物形成装置を提供する。
【0020】
異なる2以上の流れが衝突する衝突部がターゲット近傍なので、ナノ粒子がノズル導入口に到達するまでの距離が長くなり、衝突部の下流側でさらにナノ粒子が拡散する恐れがある。衝突部下流側でナノ粒子の拡散を防止するようにすることで、ノズル導入口への搬送効率をさらに上げることができる。
【0021】
本発明において、好ましくは、さらに、前記ナノ粒子拡散防止手段は、前記異なる2以上の流れが衝突する衝突部の下流側にガスを吹付ける第二のガス噴射手段である構造物形成装置を提供する。
【0022】
ガスで拡散を防止しているため、粒子の付着が起こらずノズル導入口への搬送効率をさらに上げることができる。
【0023】
本発明において、好ましくは、さらに、ナノ粒子拡散防止手段は、前記異なる2以上の流れが衝突する衝突部の下流側で前記ノズル導入口に向けて流路を狭めるように構成された壁である構造物形成装置を提供する。
【0024】
簡単な構成で確実に粒子の拡散を抑制することができ好ましい。
【0025】
本発明において、好ましくは、さらに、前記壁が円錐形状である構造物形成装置を提供する。
【0026】
このように構成された本発明において、前記壁が円錐形状であるので、ノズル導入口への搬送効率を上げることができ好ましい。
【0027】
本発明において、好ましくは、さらに、ナノ粒子拡散防止手段はさらに、前記ノズル導入口に向けて前記壁に平行な方向にガスを導入する第三のガス噴射手段を備えている構造物形成装置を提供する。
【0028】
このように構成された本発明において、壁へのナノ粒子の付着を防ぐことができ、ノズル導入口への搬送効率を上げることができる。
【0029】
本発明において、好ましくは、さらに、前記壁が前記エネルギー付与手段から照射されるレーザー光線を遮らないように構成された構造物形成装置を提供する。
【0030】
このように構成された本発明において、壁は前記レーザー照射部から前記放出源への照射を妨げない位置に設けられたので、放出源へのレーザー光照射が遮られることがなく好ましい。
【0031】
本発明において、好ましくは、さらに、前記壁にレーザー光線が透過可能な窓を設けた構造物形成装置を提供する。
【0032】
このように構成された本発明において、壁にレーザー光線が透過可能な窓を設けたため、放出源へのレーザー光照射が壁で遮られることがなく好ましい。
【0033】
本発明において、好ましくは、さらに、ノズル導入口に前記ナノ粒子が付着することを抑制するように前記ノズル導入口に向けてガスを噴射する第四のガス噴射手段を備えている構造物形成装置を提供する。
【0034】
このように構成された本発明において、ノズル噴出口へのナノ粒子の付着を防ぐことができノズル導入口への搬送効率をさらに上げることができる。また、ノズル噴出口直前でもナノ粒子の拡散を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の構造物形成装置によれば、放出源から放出させて形成したナノ粒子のノズル導入口への搬送効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の構造物形成装置であるレーザーアブレーション成膜装置の一実施態様を示す模式図
【図2】本発明の構造物形成装置に含まれるナノ粒子発生室の一実施態様を示す模式図
【図3】本発明の構造物形成装置に含まれる超音速ノズルの一実施態様を示す模式図
【図4】本発明の構造物形成装置であるレーザーアブレーション成膜装置で形成したナノ粒子の走査型電子顕微鏡観察像
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明はレーザーアブレーションなどのエネルギー付与手段を用いてナノ粒子を形成させ、基材に衝突させて構造物を形成させる手法である。特にセラミックスの構造物を形成させるのに好適な手法である。
【0038】
ここで、ナノ粒子とは、ノズルより噴出した微粒子において、その一次粒子径が10nm以上の微粒子を言う。この算定には走査型電子顕微鏡観察あるいはこれが困難な場合は透過型電子顕微鏡観察で観察される任意に選択した50ヶ以上の超微粒子の径を測定することにより確認する。観察像中のナノ粒子の長軸と短軸を測定し、その平均を算出して一次粒子径とするといよい。ナノ粒子の最大一次粒子径は100nm未満であることが好ましいが、特に50nm未満の粒子を多く含むことがより好ましい。ナノ粒子の粒径が10nm未満となる場合、質量が小さい、すなわち運動エネルギーが小さくなってしまうとともに、慣性も小さいためにノズルから噴射して基材に衝突する際に、ガス流が基材に衝突する部位において形成されるガス圧の高い域へ進入する際に大きく減速するか、あるいは進入できずにガス流とともに基材に衝突しないという不具合が生じる。減速する場合は基材上で圧粉体を形成するにとどまる。衝突しない場合は、蒸発した材料の利用効率を減じることとなる。また粒子径が100nmを超えたものを多く含むようになると基材に跳ね返されるなどして構造物となる粒子の利用率が低下する。
【0039】
ナノ粒子はノズルから噴出した粒子を柔らかな基材にごく少量衝突させて捕捉させて顕微鏡観察を行うことが有効である。レーザーアブレーションにより形成したナノ粒子は基本的にはほぼ球形の一次粒子から構成される。捕捉させて観察する場合は、一次粒子が単分散した状態が好ましいが、捕捉量が多い場合は、一次粒子同士が物理的引力などで軽く結合した圧粉体状態や凝集状態で得られるため、観察像に見られるもっとも基本的な単位としてのほぼ球形をした粒子をもってナノ粒子とし、その最大径と最小径を一粒ずつ計測し、その平均寸法を測定することでこれを粒子径とすることができる。パルスレーザーを用いる場合は、ワンパルスのレーザー照射によりナノ粒子の発生量を制限できるため、この観察が容易に実行できる。
【0040】
ナノ粒子の発生量を確認するには、成膜法実施に際して、レーザー照射により粒子をほうしゅつしたナノ粒子供給源の質量減の計測値、および基材上に形成された構造物やナノ粒子堆積物の質量の計測値を用いて算出することができる。ナノ粒子供給源の減量と、ノズルから噴射して基材に衝突したナノ粒子の量との割合あるいは構造物の量との割合より材料利用効率を算出する。例えばナノ粒子供給源に金属を、構造物にその金属の酸化物を形成する場合は、その組成を分析するとともに、それぞれの元素の原子量および緻密な材料の理論密度などを利用して化合を考慮して材料利用効率を算出する。
【0041】
本技術は特にセラミックス構造物を形成する際に好適な技術である。硬度の高いセラミックスであっても、その粒子径が100nm未満の小さな粒子においては、脆性的なふるまいよりも、延性的な変形が支配的になる。セラミックス粒子を基材に衝突させる場合、その粒子径がおおよそ1μmを超えてくると、微粒子の衝突は基材をブラストしたり、微粒子自体が衝突により破砕したりなどの現象を起こす。あるいはその速度が遅い場合には、端に基材に跳ね返されるのみである。一方サブミクロン粒子径となると、適当な速度を選択した場合、微粒子が破砕・変形をおこして構造物を形成する。しかしその場合でも、構造物となる微粒子の材料利用効率が低く、5%を超えない。これはこの粒径範囲では上述したブラスト効果や反射効果が残存しており、破砕・変形を伴う構造物形成効果と合わせた結果として材料利用効率が決まるからである。一方、粒子径が100nm未満となってくると、微粒子は衝突してももはや破砕やブラストはほとんど生じず、衝撃による変形が主となる。また表面積が大きいことも相まって活性となっているため、微粒子同士が付着しやすく、従って衝突後基材上にとどまりやすくなる。これらの効果により、材料利用効率が圧倒的に向上し、適当な速度で衝突させれば、衝撃により微粒子は基材に接合するとともに変形してお互いに接合し構造物となる。このナノ粒子径の微粒子を損失なくノズルへと導くことで、その材料利用効率は80%を超える。
【0042】
本発明に係る構造物形成装置であるレーザーアブレーション成膜装置(レーザーアブレーションパーティクルインパクトデポジション(LASER Ablation Particle Impact Deposition)装置)の一実施態様を図1に示す。レーザーアブレーション成膜装置1は、ヘリウムやアルゴン、窒素、酸素、乾燥空気、アセチレン、アンモニアなどの各種不活性、反応性のガスのガス源101が、ガス搬送管102を介してナノ粒子発生室103に接続され、ナノ粒子発生室103には、混合相搬送管104を介して構造物形成室である成膜室105内に設置されたノズルヘッド106が接続される。なお、ノズル10は混合相搬送管104及びノズルヘッド106で構成されている。ナノ粒子発生室103内には、蒸発源であるターゲット107がターゲット保持具108に設置されて配置され、ターゲット保持具108は回転モータや直線導入端子、あるいはXYアクチュエータなどの位置移動手段109に位置移動可能な状態に接続される。またナノ粒子発生室103内のターゲット近傍には、ナノ粒子発生部110aが、またナノ粒子発生室103内の下流側にナノ粒子発生部110bが配置される。ナノ粒子発生部110の下流側は円管状の混合相導出口となっている。ナノ粒子発生室103の外側にNd:YAGレーザーや炭酸ガスレーザー、エキシマレーザー、半導体レーザー、Ti:Sレーザーなどの連続発振あるいはパルス発振型レーザーであるレーザー発振装置111が配置され、ここから発振されるレーザー光線112が、石英ガラス他のウインドウ113を通して、ナノ粒子発生室103へと導入されて、ターゲット107に照射されるように配置される。レーザーの波長はターゲット107の材料により蒸発速度、ナノ粒子の形態などの必要品質を考慮して、適当なものを選択することができる。例えばNd:YAGレーザーの532nm、355nm、266nmなどが用いられる。ノズルヘッド106には加熱用ヒータ114が接続されている。ノズルヘッド106の噴射開口の近傍には基材115の位置移動が行えるアクチュエータ116に取り付けられ、配置される。成膜室105には、真空ポンプ117が接続されている。ガス搬送管102はいくつかに分岐され、流量コントローラ118a、118b、118cにより、ナノ粒子発生室103やナノ粒子発生部110a、110bへと流量制御されるように接続される。なお、これらの接続のパターンにおいて、ガス源101がガスの種類を変えて複数接続されていてもよい。
【0043】
図1に基づくレーザーアブレーション成膜装置の作用と効果について述べる。成膜室105及びナノ粒子発生室103は真空ポンプ117により減圧状態とされる。そこで、ガス源1を作動させて、例えば流量コントローラ118bを作動させてナノ粒子発生室103内にガスを導入させる。これらの操作によるガス差圧により、ナノ粒子発生室103と成膜室105との間に高速気流が発生し、またノズルヘッド106の作用により、マッハ数1を越えるガス速度でガス噴射が行われる。よりよくはマッハ数2以上のガス速度で噴射される。ナノ粒子発生室103内の気圧は例えば20〜100kPaであり、成膜室105内の気圧は例えば5〜300Paである。
【0044】
ノズルヘッド106は加熱をしなくてもよいが、加熱用ヒータ114により、100〜1000℃、望ましくは基材への温度影響を考慮して100〜600℃の範囲で加熱してガス速度を向上させてもよい。ノズルより上流側の搬送管を加熱して混合相の温度を高くして後にノズルに導くことも好適である。
【0045】
続いて、レーザー発振装置111を作動させてターゲット107に照射して、ターゲット107の材料を蒸散させる。このとき、蒸散物質などによって発生するプルームの状態を安定させるために、レーザーをパルス状に制御して照射し、断続的蒸散をさせる工夫が好適に働く。またターゲット107を位置移動手段109によりレーザー照射部に対して相対的に位置移動させることで、レーザー照射部を経時的に変化させ、プルームの発生状態やプルームの立つ方向を制御したり、ターゲットを有効利用して大面積成膜時に対応させたりすることが好適である。
【0046】
ターゲット107から蒸散した蒸散物質はプルームとしてターゲット107表面上に展開されるが、このとき、プルーム中には、ターゲット材料からの原子、イオン、分子、クラスター、ナノサイズ以上の超微粒子などの蒸散物質、また電子、光子などが含まれている。ここでナノ粒子発生部110aにおいて、導入されたガスをプルーム中に吹き付けて蒸散物質と混合させ、あるいは攪拌し、冷却させることで、蒸散物質からナノサイズ以上の超微粒子リッチな状態に変換させる。このとき、ターゲット107からやや離れて下流側に設置したナノ粒子発生部110bを利用してナノ粒子を形成させてもよい。
【0047】
ターゲット107の材料としては、金属、セラミックス、有機物などの固体材料が利用できる。またガスとして反応性のものを利用することで、例えばターゲット107に金属を、ガスにヘリウムと酸素の混合物や酸素単体、あるいは酸素と窒素の混合ガス、あるいは乾燥空気などを利用すれば、ナノ粒子は金属酸化物とすることができる。ターゲット107に酸化物セラミックスを利用する場合でも、蒸散時には原子、イオン状などに分解されているため、一部酸素ガスを導入させてこれらと結合させ、安定した酸化物のナノ粒子に再構成させることが有効である。ターゲット107に窒化物を利用する場合は、酸素導入により、酸窒化物や酸化物のナノ粒子を形成させることが容易となる。
【0048】
ここで重要なのは、ナノ粒子発生部110a、110bを有効に作用させて、蒸散物質から安定なナノ粒子を形成させることであり、すなわちガス分子に対して十分に重たいナノサイズ以上、望ましくは粒径10nm以上の粒子が蒸散した物質の質量中の大部分、例えば50%以上、望ましくは80%以上を占めるナノ粒子リッチな状態に蒸散物質から成長させることである。そのために、ガスをプルーム中に吹き付けて攪拌させて原子やイオン、分子同士を衝突させたり、冷却させて凝集させたり、酸化させて安定化させたりなどの操作を行う。その際ガス圧力は通常のレーザーアブレーション法よりも高い1kPa以上、望ましくは20〜100kPaの範囲でナノ粒子発生部110a、110bを制御することが好適である。
【0049】
ナノ粒子発生部110a、110bで形成されたナノ粒子はガスとの混合相として混合相搬送管104中を搬送され、ノズルヘッド106に導入され、ここで急加速されて超音速の高速度で噴射する。そして基材に衝突し、衝突面においてナノ粒子は衝突の衝撃エネルギーを受けて変形し、基材に密着力よく接合する。続いて次々と衝突してくるナノ粒子がさらに接合、変形し、これの繰り返しにより、基材上に膜状構造物として堆積される。
【0050】
ナノ粒子発生部110a、110bにおいて、混合相中にはガス分子に対して十分に重たく慣性をもつナノ粒子が多く存在しており、かつノズルヘッド106から、高速度で噴射されるため、例え基板近傍のガス衝突部位で圧力の高い層が形成されても、ナノ粒子は高い運動エネルギーをもって基材に衝突できる。この二つの装置要素を兼ね備えることにより、品質の高い構造物が得られる。なお、基材115の表面の垂線に対して、ノズル106の噴射角度を傾けると、ガスの基材上での流れを傾斜角度に応じて制御し、ナノ粒子の衝突状態を制御できるため、角度を0°以上45°までで必要に応じて傾けることが好適である。
【0051】
本発明係るレーザーアブレーション成膜装置に利用できるナノ粒子発生部を含むナノ粒子発生室20の一実施態様を図2に示す。図2は断面図であり、垂直の中心軸対称の形状をしている。ナノ粒子発生室20は、気密性の容器201に図示しないガス源からガスが導入されるガス導入口202a、202b、202cと、図示しない超音速ノズルへ接続される混合相導出口203が設けられたものであり、その内部に金属や、セラミックス、あるいは樹脂からなるナノ粒子供給源であるターゲット204がターゲット保持具205にセットされ、ターゲット保持具205は、位置移動手段206に接続されている。レーザー光線207がターゲット204に照射されるように、ウインドウ208が容器201に設けられている。ターゲット204の周囲には、ガス噴射口209を持つガス噴射具210が配置されており、また容器201の内周面に沿ってガスが流れるようにガス流口211が設けられている。容器201は円筒状であり、かつ導出口203に向かって円筒半径がすぼまる漏斗型の先端部を有しており、その先は円管状となって導出口203につながっている。この装置構成要素部分がナノ粒子形成部212である。また円管状部には、ガス噴入口213を有するナノ粒子形成部214が設けられている。容器201には真空計215が接続されている。なお図中の複数の矢印は、ガスの流れを模式的に表したものである。
【0052】
このナノ粒子発生室20の作用の一例とその効果を述べる。ガス導入口202a、202bからヘリウムガスあるいはヘリウムと酸素ガスの混合ガス、あるいは酸素ガスなどが導入される。このガスの種類と流量は、ターゲット材料からの反応生成物の必要性に応じて、また後段の超音速ノズルからの噴射速度の要求に応じて選択することができる。例えば20℃1気圧に換算したときの体積流量として0.2〜10L/minなどが選択できる。あるいは真空計215の指示圧力を1kPa以上、望ましくは20〜100kPaの範囲とする流量が選択できる。
【0053】
ガスを流すのと同時に、ターゲット204を位置移動手段206により移動させつつ、レーザー光線207をターゲット204に照射し、その表面から放出粒子群を発生させてプルーム216を形成させる。位置移動手段206により、ターゲットは回転運動、上下運動、縦横往復運動などを行い、レーザー光線207の照射されるターゲット206表面位置を刻々と変化させる。
【0054】
ガス噴射口209はプルーム216の周囲をリング状に取り囲むスリット状となっており、ここから導入されたガスは、プルーム216の外周からこれに向かって吹き付けられ、ガスがプルーム中に導入されて、ガスとプルーム216中の放出粒子群は混合され、あるいは攪拌され、冷却されることによって、プルーム216中の原子、イオン、分子、クラスター、電子などが寄り集まり、あるはガス成分と反応して、ナノ粒子を形成する。ガス圧力が高いために、粒子同士の干渉度合いが大きく、ナノ粒子形成効果は高い。
【0055】
ガス噴射口209のスリット幅は、プルーム216の吹きつけ威力を考慮して決めることができ、またその吹きつけ角度、吹きつけ位置も任意である。例えばスリット幅は0.05mmから2mmなどが選択でき、吹きつけ角度はターゲットの平面に対して0から80°などが選択できる。ガス噴射口209の形状もこれに限らず、単一あるいは複数の円管でもよい。吹きつけ方は、連続でもよいし、レーザー照射の周期に合わせたパルス状でもよい。プルーム216を包み込むようにガスを流すことも考えられる。
【0056】
ナノ粒子形成部212の空間体積、高さについては、ナノ粒子の形成効果をもとに大きくも小さくも設定することができるが、ガス吹きつけのための一定の体積を確保させることが有効である。
【0057】
ガス導入口202bからのガスは、容器201の内周面を沿って流れる傾向にあり、容器下流部の漏斗状の部位を沿いながら導出口203に向かう。このことで、容器内面にガスバリア効果が発揮され、ナノ粒子が容器内面に付着することなく導出口203に向かう。従って放出粒子群の量に対するナノ粒子の利用効率が高まる効果を持つ。この202bからのガス導入は必要に応じて利用でき、場合によっては利用を行わないでもよい。あるいは単独で利用することも考えられる。
【0058】
形成されたナノ粒子はガスとの混合相となって、導出口203から超音速ノズルに向かって導出される。
【0059】
ここで、ナノ粒子形成部214の作用と効果の一例について述べる。ターゲット204を金属材料とした場合、ガス導入口202aやガス導入口202bから不活性ガスを導入することで、ナノ粒子形成部212では、金属のナノ粒子が形成される。これをナノ粒子形成部212から導出し、ガス導入口202cから酸素などの反応性ガスを導入し、ガス噴入口213からナノ粒子に向けて噴射させることで、このポイントでナノ粒子を反応させ、例えば酸化物ナノ粒子とさせたり、あるいはナノ粒子の表面を酸素と化合させた粒子を形成させる。原子状では爆発的に反応性ガスと反応して制御しにくい材料や、化合後にはナノ粒子が形成されにくいような材料、あるいは酸素雰囲気中では表面から酸化されやすい金属材料をターゲットとする場合に有効な手法である。
【0060】
本発明係る構造物形成装置であるレーザーアブレーション成膜装置に利用できるノズル3の一実施態様を図3に示す。ノズル3はノズルヘッド30及び混合相搬送管302で構成される。ノズル3は、混合相導入開口部(ノズル導入部)301aと、内部空間301bと、混合相噴射開口部(ノズル噴出口)301cからなり、ノズルヘッド30は図示しないナノ粒子発生室と混合相搬送管302で連結されている。混合相導入開口部301aと混合相噴射開口301cは例えばその開口面は円形であり、内部空間301bの混合相流れ軸に対する断面も円形である。また内部空間301bの断面の断面積は混合相噴射開口部301cの開口面の断面積よりも小さくできており、いわゆるラバルノズル形状であり、使用するガスの種類、温度、流量と、真空ポンプによる吸引力などの条件を調整し、ガス差圧を適切にすることで、混合相噴射開口部301cの開口面におけるガス流速を超音速に制御できる。なお、混合相導入開口部301aの断面積は内部空間301bの断面積以上であればよい。
【0061】
なお、混合相導入開口部301a、内部空間301bの断面、混合相噴射開口301cの形状は円形のみならず、長円、楕円、矩形、六角形などの形を取ることができる。
【0062】
ノズルヘッド30には、加熱用ヒータ304が取り付けられており、また混合相噴射開口部301cの先には、図示しないアクチュエータに保持された基材303が配置されている。その間隔は5mmから50mmとされている。
【0063】
ノズルヘッド30の作用と効果について述べる。図示しない成膜室に設置されたノズルヘッド30は図示しない真空ポンプの作動と、図示しないガス源からのガス導入による圧力差を受けて、ナノ粒子形成部で形成された混合相が混合相導入開口部301aから導入される。ここで、ノズルヘッド30の内部形状と、ガス圧力差、ガス種、環境温度などのパラメータに従って混合相はノズルヘッド30内で加速され、特に内部空間301bの絞り部分から下流側で一気に超音速まで加速される。そして混合相噴射開口部301cから混合相が噴射され、基材303に衝突する。このうちガスは周囲に拡散し、真空ポンプにて系外に排出される。ナノ粒子は高速度で基材303に衝突し、基材303に付着して接合する。つぎつぎに衝突してくるナノ粒子は、その衝突の衝撃を受けて変形しつつ、互いに接合し、緻密な構造物として基材303上で構造化される。基材303は図示しないアクチュエータによりノズルに対して相対的に移動し、その衝突面を連続的に変化させることで、基材303表面の所望の位置、面積に、構造物を膜状に形成させる。
【0064】
ナノ粒子はガス分子に対して十分に重いために、本発明の超音速ノズルを用いれば、比較的緻密な構造物を形成させるに十分な運動エネルギーを持ったまま基材に衝突させることができる。
【0065】
内部空間301bにおいて、混合相導入開口部301aの中心から混合相噴射開口部301cの中心を結んだ中心軸に対して垂直に切り取った面に沿った最も小さな断面積に対する、混合相噴射開口部301cの開口面積との比は、1より小さいことが望ましいが、好ましくは0.592以下であり、この場合様々なガスを用いて、その混合相導入開口部301aの上流におけるガス圧力と、混合相噴射開口部301cより下流の図示しない成膜室の内部ガス圧力との比を適当に調整することで高いガス噴射速度を達成でき、緻密な構造物を形成させるのに好適である。さらに好ましくは0.236以下であり、さらに好ましくは0.040以下である。
【0066】
また混合相の噴射方向に対して、基材303の衝突角度は図3のような直角ばかりでなく、例えば0°を越え45°までとすることで、ガスの拡散方向を制御でき、基材上のガス圧によるナノ粒子の運動エネルギーの低下を抑制することができ、好適である。この場合、超音速ノズルの開口をスリット状にすることで、その効果は格段に向上する。
【0067】
ガス加熱は超音速ノズルノズル30の絞り位置より上流側から行うことが、ガス速度向上に対して好適である。またノズルヘッド30を加熱するような場合には、ノズルヘッド30からの熱の輻射が基材303に到達することを防ぐために、金属板305の配置が有効であり、これにより基材303は必要以上に昇温しない。従って成膜に際する熱膨張の影響が小さく、また熱により変質しやすい材料を基材115に選択することが可能となる。混合相は金属板305に設けられた穴を通して基材に到達するため、成膜に対する障害はない。穴の径はノズルヘッド30の導出開口の径以上に設けるとよい。金属板305は基材303の大きさ設置面積より大きな面積を有することが好適である。
【実施例】
【0068】
図1に示したレーザーアブレーション成膜装置において、図2のナノ粒子発生室を採用した装置を用いて、ターゲット204をアルミナおよびイットリアを採用し、レーザー発振装置111にNd:YAGレーザー(波長:355nm)を使用し、レーザー出力130mJ、レーザー光径0.8mmφとしてそれぞれのターゲットに照射し、ガス導入口202bより25℃1気圧換算でヘリウムガス0.45L/min、乾燥空気0.2L/minの合計0.65L/minの混合ガスを導入し、ターゲットから放出した放出粒子群を冷却することでアルミナあるいはイットリアのナノ粒子を形成させるとともに超音速ノズルへと搬送させた。基材115にはガラスを用いた。成膜室105の内気圧は100Pa未満であった。
【0069】
これらの操作前後のターゲットの重量減と、基材上のナノ粒子の付着重量増を小数点以下4桁の電子天秤を用いて測定した。この結果、材料利用効率は、アルミナの場合ほぼ100%、イットリアの場合、88%及び91%の、極めて高い値を得た。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、基材上にセラミックス、金属、樹脂などの構造物を形成させた複合構造物への利用が可能であり、例えば、絶縁膜、導電膜、透明膜、耐磨耗膜、誘電体膜、圧電体膜、焦電体膜、耐食膜、光触媒膜、熱線反射膜などへの適用ができ、具体的には、静電チャック・静電モータの絶縁膜、電子デバイス用放熱基板、回路基板、層間絶縁膜、真空装置用放熱基板、半導体・フラットパネル・MEMS製造装置用耐プラズマ膜、金型などの耐磨耗コート、人工骨、人工歯根、コンデンサ、圧電アクチュエータなどの圧電デバイス、酸素センサ、酸素ポンプ、その他ガスセンサ、ガス分離膜、複写ドラムの表面コート、多結晶太陽電池、色素増感型太陽電池、半導体素子、ディスプレイの絶縁コート、反射防止膜、UV吸収膜、撥水コート、親水コート、エンジンやタービンなどの耐熱膜、傾斜組成耐熱膜などへの適用が考えられる。
【符号の説明】
【0071】
1…レーザーアブレーション成膜装置、10…ノズル、101…ガス源、102…ガス搬送管、103…ナノ粒子発生室、104…混合相搬送管、105…成膜室、106…ノズルヘッド、107…ターゲット、108…ターゲット保持具、109…位置移動手段、110…ナノ粒子発生部、111…レーザー発振装置、112…レーザー光線、113…ウインドウ、114…加熱用ヒータ、115…基材、116…アクチュエータ、117…真空ポンプ、118…流量コントローラ、20…ナノ粒子発生室、201…容器、202…ガス導入口、203…導出口、204…ターゲット、205…ターゲット保持具、206…位置移動手段、207…レーザー光線、208…ウインドウ、209…噴射口、210…ガス噴射具、211…ガス流口、212…ナノ粒子形成部、213…ガス噴入口、214…ナノ粒子形成部、215…真空計、216…プルーム、3…ノズル、30…ノズルヘッド、301a…混合相導入開口部(ノズル導入口)、301b…内部空間、301c…混合相噴射開口部(ノズル噴出口)、302…混合相搬送管、303…基材、304…加熱用ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子生成部と構造物形成室との圧力差を利用して、ナノ粒子生成部で生成されたナノ粒子を構造物形成室内に導き、前記構造物形成室内に配置された基材上に構造物を形成する構造物形成装置であって、
金属材料またはセラミックス材料を含む蒸発源となるターゲットと、
前記金属材料または前記セラミックス材料を、前記ターゲット表面から放出粒子として放出させるエネルギー付与手段と、
前記放出粒子にガスを導入するための第一のガス噴射手段を備えたガス導入機構と、
前記ターゲットの前記表面近傍において、前記放出粒子と前記ガスとを混合し冷却してナノ粒子を生成させて前記ガスと前記ナノ粒子の混合相を形成するナノ粒子生成部と、
室内を大気圧未満に減圧するための減圧手段を備えるとともに、前記室内に構造物形成用の基板が配置される構造物形成室と、
前記ナノ粒子生成部で生成された前記混合相を前記構造物形成室内に配置された前記基板に向けて噴射するノズルであって、
前記ナノ粒子生成部の前記ターゲット表面側を上流とした際に下流側に配置され、前記ナノ粒子生成部で生成された前記混合相を導入するノズル導入口を一端に、 前記構造物形成室内に配置され、前記混合相を噴射するノズル噴射口を他端に有するとともに、内部に前記混合相が通過する空間を備えたノズルと、を備え、
前記ナノ粒子を前記ナノ粒子生成部と前記構造物形成室との圧力差により加速し、前記ノズルの前記ノズル噴射口より前記基板に向けて高速で噴射して前記ナノ粒子を前記基板に衝突させて前記基板上に前記ナノ粒子を構成材料とする構造物を形成する構造物形成装置において、
前記エネルギー付与手段はレーザー光線によってエネルギーを付与するものであり、
さらに、前記ターゲットにレーザー光線を照射することで形成される前記放出粒子を含むプルームの長軸方向の延長線上にノズル導入口が位置するようにレーザー光線を照射するものであり、
さらに、前記第一のガス噴射手段は前記プルームの長軸方向と垂直な方向に前記放出粒子が拡散することを抑制するように前記プルームに向けてガスを吹付けるものであって、
前記第一のガス噴射手段から噴射されたガスは前記プルームの長軸に向かって噴射され、さらに、前記プルームの長軸に対して突入方向の異なる2以上の流れを有し、前記異なる2以上の流れが前記プルームの長軸上で衝突して形成される合成されたガスの流れが前記ノズル導入口に向かうようにガスが噴射されることを特徴とする構造物形成装置。
【請求項2】
前記異なる2以上の流れが前記プルームの長軸に対して対称に吹付けられることを特徴とする請求項1に記載の構造物形成装置。
【請求項3】
前記第一のガス噴射手段は環状ガスを噴射するものであり、前記プルームの長軸周方向から均等に前記プルームの長軸に向かってガスを吹付けることを特徴とする請求項2に記載の構造物形成装置。
【請求項4】
前記異なる2以上の流れは前記ターゲットの表面近傍で衝突するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の構造物形成装置。
【請求項5】
前記異なる2以上の流れが衝突する衝突部の下流側にさらに、前記プルームの長軸方向と垂直な方向に前記ナノ粒子が拡散することを抑制するようにナノ粒子拡散防止手段を備えていることを特徴とする請求項4に記載の構造物形成装置。
【請求項6】
前記ナノ粒子拡散防止手段は、前記異なる2以上の流れが衝突する衝突部の下流側にガスを吹付ける第二のガス噴射手段であることを特徴とする請求項5に記載の構造物形成装置。
【請求項7】
前記ナノ粒子拡散防止手段は、前記異なる2以上の流れが衝突する衝突部の下流側で前記ノズル導入口に向けて流路を狭めるように構成された壁であることを特徴とする請求項5に記載の構造物形成装置。
【請求項8】
前記壁が円錐形状であることを特徴とする請求項7に記載の構造物形成装置。
【請求項9】
前記ナノ粒子拡散防止手段はさらに、前記ノズル導入口に向けて前記壁に平行な方向にガスを導入する第三のガス噴射手段を備えていることを特徴とする請求項7に記載の構造物形成装置。
【請求項10】
前記壁が前記エネルギー付与手段から照射されるレーザー光線を遮らないように構成されたことを特徴とする請求項7に記載の構造物形成装置。
【請求項11】
前記壁にレーザー光線が透過可能な窓を設けたことを特徴とする請求項7に記載の構造物形成装置。
【請求項12】
前記ノズル導入口に前記ナノ粒子が付着することを抑制するように前記ノズル導入口に向けてガスを噴射する第四のガス噴射手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の構造物形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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