構造物被覆用板状積層体及びその装着方法
【課題】構造物表面に、耐熱・耐水・遮水性被覆を短時間に施すための板状積層体及び装着方法の提供。
【解決手段】耐熱樹脂、ゴム、コンクリートなどの1種以上を含む耐熱材料層の少なくとも1部分上に、熱溶融可能な重合体を含む合成繊維を含む有機繊維層を積層し、有機繊維層の片側部分を、耐熱材料層中に取り込み、板状に一体化する。有機繊維層を、耐熱材料層の1以上の領域部分上に形成し、他の領域部分に、無機繊維を含む有機繊維層を形成してもよい。
【解決手段】耐熱樹脂、ゴム、コンクリートなどの1種以上を含む耐熱材料層の少なくとも1部分上に、熱溶融可能な重合体を含む合成繊維を含む有機繊維層を積層し、有機繊維層の片側部分を、耐熱材料層中に取り込み、板状に一体化する。有機繊維層を、耐熱材料層の1以上の領域部分上に形成し、他の領域部分に、無機繊維を含む有機繊維層を形成してもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物被覆用板状積層体及びその装着方法に関するものである。更に詳しく述べるならば、本発明は、例えば土木工事、建設工事及び防水・遮水工事などにおいて、防水又は遮水被覆されるべき構造物の表面上に、耐熱性被覆を短時間内に極めて強固に被覆固定することができる構造物被覆層板状積層体及びその装着方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば土木工事、建設工事及び防水・遮水工事などにおいて、防水又は遮水するために、表面を被覆すべき構造物の耐火性、耐磨耗性、耐候性、剛性、平滑性及び汚れ落ち性などの特性を向上させるために、構造物表面に、熱硬化性樹脂を包含する樹脂系材料及び/又はセメント系塗布材料を包含する無機系材料を塗装し、或は、上記材料により形成された板状材料を、接着剤により接合して被覆することが、従来から知られていた。前記構造物が既設体であるとき、これに上記塗装又は板状材料を貼着するには、この構造物の表面を清掃して、構造物表面を健全な状態まで修復した後に、前記塗装又は貼着を施さなければならない。このような清掃及び修復は、構造物と、塗膜又は板状材料との固着を確実なものにするためには不可欠である。また、新規構造物に対して、塗装又は被覆を施す場合であっても、構造物表面に存在する水分の量を十分な乾燥状態に管理しなければ、構造物と、塗膜又は板状材料との固着を確実にすることができない。さらに構造物が、屋外にあるときは、塗装又は被覆を実施するときの気象状況に応じて、塗装又は被覆の工法及び条件を十分に選択しなければならない。また、塗装による被覆においては、塗装表面に微細な凹凸が発生し、その凹部に汚れ物質が付着して残留するので、このように付着した汚れ物質の除去が容易ではないことがある。
【0003】
また、構造物に前記板状材料を被覆固定するためには、従来から、前記板状材料に、アンカーボルト用孔を穿ち、これにアンカーボルトを通して構造物に板状材料を取り付ける工法又は板状材料を、構造物表面に、接着材及び/又は粘着材を介して固定する工法、或は、構造物及び板状材料のそれぞれに、予じめ取り付け部材を取り付けておき、これらを結合し固定する工法などが用いられている。
【0004】
前記アンカーボルトを用いる工法においては、板状材料の表面上にアンカーボルトの頭部が露出し、これを、被覆する処理を施すと、その処理痕が残り、被覆表面に凹凸が形成される。また被覆面の凹凸形成を回避するには板状材料の厚さを十分に大きく設計し、アンカーボルトの頭部を収容する凹部を形成し、この凹部に収容されたアンカーボルト頭部と、凹部内壁面との間の隙間に例えば樹脂を充填することが必要になる。
しかしながら、板状材料の取り付け後の被覆表面に凹凸があると、水利上の問題として、この被覆表面上を水が流れたとき、前記凹凸は流れの移動に抵抗を発生させることになり、流量の低下などの、水利上の障害を生ずることがある。また、板状材料に、アンカーボルト頭部を収容するための凹みを形成することは、板状材料の厚さ及び重量が増大し、或は、その機械的強度が低下するなどの問題点を生ずる。
【0005】
また、前記接着材及び/又は粘着材を用いる工法においては、構造物の表面を清掃し、この構造物表面を十分に修復することが不可欠となり、或は、接着材又は粘着材の効果を確実にするためには構造物表面の乾燥状態を、十分にコントロールすることが必要となる。また、構造物が屋外に露出しているときは、気象状態に応じて、工法及び条件の適切な選択・設定が必要となる。さらに、接着材を用いる場合、接着材が固化するのに長時間を要することがあり、この場合には、施工現場において、被覆材料に仮止め処置を施すことが必要になることがある。さらにまた、構造物の被覆されるべき表面が曲面をなしている場合、この曲面に整合する曲面を有する板状材料を使用することが必要となり、板状材料に、予じめ選別又は曲面加工を施すことが必要となるなどの問題点を生ずる。
【0006】
前記取り付け部材を用いる工法においては、取り付け部材を構造物及び板状材料に正確かつ適切に取り付け、かつこれらを結合させるためには、作業員の高度な熟練度が必要になり、この要件を満たすためには、高い費用と、長時間を要するという問題点を生ずる。
【0007】
さらに、被覆すべき構造物が、例えば、馬蹄形の隧道(ずいどう)である場合、その被覆すべき表面が曲面をなしているので、これを被覆する板状材料の曲げ弾性率は適切な範囲内にあることを必要とする。板状材料の曲げ弾性率が過度に高く、硬い場合、板状材料を構造物の曲面に整合するように変形させることが困難になり、この変形により板状材料が破壊することがある。また、板状材料の曲げ弾性率が過度に低く、柔軟な場合、板状材料の自立が困難になり、特に構造物の天井曲面を被覆するとき、板状材料が、その固定部分の中間で自重により変形して、垂れ下がることがあり、この欠点を防止するために、固定点の数を増大し、その間隔を小さくすることが必要になり、このために、板状材料の固定に要する手間、費用、時間が増大するという問題点が発生する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は被覆を要する構造物の表面に、高い耐熱性を有する防水・遮水被覆を、短時間内に、強固に形成することのできる構造物被覆用板状積層体及びその装着方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の構造物被覆用板状積層体は、耐熱熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、補強繊維含有耐熱熱可塑性樹脂、補強繊維含有熱硬化性樹脂、耐熱ゴム、補強繊維含有耐熱ゴム、補強繊維含有コンクリート、補強繊維含有ポリマーコンクリート、及び無機酸化物から選ばれた少なくとも1種を含む耐熱材料層と、
前記耐熱材料層の一面の少なくとも一部分上に積層され、かつ熱溶融可能な重合体を含む合成繊維を含む有機繊維層と
を含み、
前記有機繊維層の、前記耐熱材料層に対向している片側部分が、前記耐熱材料層中に取り込まれて、前記有機繊維層と前記耐熱材料層とが板状に一体化している
ことを特徴とするものである。
本発明の構造物被覆用板状積層体において、前記耐熱材料層の表面が、前記無機酸化物により形成され、かつこの表面の初期視感反射率が65%以上であることが好ましい。
本発明の構造物被覆用板状積層体において、前記有機繊維層の、前記耐熱材料層中に取り込まれていない反対片側部分中の合成繊維の少なくとも一部分が、溶融して、前記合成繊維が互に融着するか、或はフィルム状化していることが好ましい。
本発明の構造物被覆用板状積層体において、前記有機繊維層に含まれる合成繊維の少なくとも一部分が、芯鞘構造を有するコンジュゲート繊維であって、その鞘部を構成する重合体が、その芯部を構成する重合体よりも低い溶融温度を有することが好ましい。
本発明の構造物被覆用板状積層体において、前記有機繊維層が、互に溶融温度の異なる2種以上の合成繊維を含むことが好ましい。
本発明の構造物被覆用板状積層体において、前記有機繊維層の少なくとも一部分において、前記合成繊維が立体編織物中に含まれていることが好ましい。
本発明の構造物被覆用板状積層体において、前記板状積層体の曲げ弾性率が1〜104MPaの範囲内にあることが好ましい。
本発明の構造物被覆用板状積層体において、前記有機繊維層が、前記溶融可能な合成繊維に加えて、ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維及びスラグ繊維から選ばれた少なくとも1種の無機繊維を含んでいてもよい。
本発明の構造物被覆用板状積層体において、前記有機繊維層が、前記耐熱材料層の一面の一部分に積層され、前記耐熱材料層の一面の他の部分に、ガラス繊維、金属繊維、金属線材、スラグ繊維及び炭素繊維から選ばれた少なくとも1種の無機繊維からなる無機繊維層が積層され、前記有機及び無機繊維層の、前記耐熱材料層に対向している片側部分が、前記耐熱材料層に取り込まれていて、前記有機及び無機繊維層と、前記耐熱材料層とが板状に一体化されていてもよい。
本発明の構造物被覆用板状積層体の装着方法は、構造物の表面上に、請求項1〜7のいずれか1項に記載の構造物被覆用板状積層体を、その前記有機繊維層側が、前記構造物表面に対向するように載置し、このとき前記有機繊維層と、前記構造物の表面との間に、高周波誘導発熱性を有する金属からなるメッシュを介在させ、前記金属メッシュを高周波誘導発熱させて、前記有機繊維層を溶融し、前記構造物表面上に前記有機繊維層を溶融接着させることを特徴とするものである。
本発明の構造物被覆用板状積層体の装着方法において、構造物の表面上に、請求項8に記載の構造物被覆用板状積層体を、その前記有機繊維層及び無機繊維層が、前記構造物表面に対向するように載置し、前記無機繊維層と、これに対向する前記構造物表面とを、無機系接着剤により接着し、かつ、前記合成繊維含有繊維層と、それに対向する前記構造物表面との間に、高周波誘導発熱性を有する金属からなるメッシュを介在させ、前記金属メッシュを高周波誘導発熱させて、前記有機繊維層中の合成繊維を溶融し、前記構造物表面上に前記有機繊維層を溶融接着させてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の構造物被覆用板状積層体は、耐熱材料層と、熱溶融可能な合成繊維を含み、前記耐熱材料層に強固に接合一体化している有機繊維層とを含み、本発明の板状積層体装着方法により、前記有機繊維層は、それと、構造物表面との間に配置された金属メッシュを高周波誘導発熱させることによって、構造物表面に、短時間内に強固に溶融接着することができ、その外側に耐熱材料層により、耐熱性防水・遮水層を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の構造物被覆用板状積層体において、板状積層体により被覆される構造物とは土構造物のように、土壌からなる表面を有し、従って、この土壌表面部分は多数の気孔を有する軟弱なものであってよく、或はコンクリート構造物、金属構造物、木造構造物、及びこれらが混在する構造物であってもよい。
【0012】
本発明の構造物被覆用板状積層体は、被覆の外側を形成する耐熱材料層と、使用時に構造物に対向して、これに固着される有機繊維層とを含むものである。
すなわち、耐熱材料層は、耐熱熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、補強繊維含有耐熱熱可塑性樹脂、補強繊維含有熱硬化性樹脂、耐熱ゴム、補強繊維含有耐熱ゴム、補強繊維含有コンクリート、補強繊維含有ポリマーコンクリート及び無機酸化物から選ばれた少なくとも1種を含むものであり、有機繊維層は熱溶融可能な重合体を含む合成繊維を含み、前記耐熱材料層の一面の少なくとも一部分(すなわち1以上の部分、又は全面)上に積層されている。前記有機繊維層の、前記耐熱材料層に対向している片側部分は、前記耐熱材料の、前記有機繊維層に対向している部分層中に取り込まれていて、(換言すれば、前記耐熱材料層中に伸び出していて、(有機繊維層の押し込まれた部分の繊維間空隙には耐熱材料が浸入して、)前記有機繊維層と前記耐熱材料層とが板状に一体化されている。板状積層体の厚さは1.0〜10.0mmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは1.5〜5.0mmである。
【0013】
図1に示されている構造物被覆用板状積層体の断面説明図において、板状積層体1は、耐熱材料層2と、それに積層された有機繊維層3を含み、有機繊維層3の耐熱材料層2に対向している片側部分3aは、耐熱材料層2中に取り込まれていて(或は、伸び出ていて)、それによって、耐熱材料層2と有機繊維層3とは、強固に結合一体している。このため、耐熱材料層の下面(境界面4)の外側に有機繊維層3の耐熱材料層の外にある部分3bが配置されている。
【0014】
前記有機繊維層には、熱溶融可能な、好ましくは90〜260℃の温度範囲内において熱溶融可能な重合体を含む合成繊維が含まれている。このため、有機繊維層の耐熱材料層の外に位置する部分3b中の合成繊維の一部分を熱溶融して、合成繊維を互に結着させることができるし、或は、合成繊維の大部分又は全部を熱溶融して、有機繊維層の外側部分3bをフィルム状化することもできる。有機繊維層中の合成繊維の熱溶融可能な重合体は、高周波誘導発熱可能な金属を高周波誘導発熱させることにより溶融することができるものであって、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアクリルなどが用いられ、これらは単一種で用いられてもよく、或は2種以上を混合して用いてもよい。
【0015】
本発明の板状積層体の有機繊維層に含まれる合成繊維は、前記熱溶融可能な重合体の1種以上からなる繊維、例えば、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリウレタン繊維、ポリアミド繊維、ポリアクリル繊維などが単一種で用いられている繊維、或はその2種以上が混合されている繊維であってもよい。
【0016】
さらに、本発明の板状積層体の有機繊維層において、溶融可能な重合体を含む合成繊維は、互に溶融温度の異なる2種の重合体からなり、かつサイド−バイ−サイド型、又は芯/鞘型構造を有するコンジュゲート繊維であってもよく、例えばポリエチレン/ポリプロピレンを含むサイド−バイ−サイド型コンジュゲート繊維、或はポリプロピレンからなる芯と、ポリエチレンからなる鞘とから構成される芯/鞘型コンジュゲート繊維などが用いられる。一般に芯/鞘型コンジュゲート繊維を形成する2種の重合体は、溶融温度の高い方の重合体により芯を形成し、溶融温度の低い方の重合体により鞘部を構成する。
【0017】
本発明の板状積層体の有機繊維層において、それを構成する溶融可能な合成繊維を含む繊維は、編織物(例えばパイル編織物)及び不織布(フエルト状布帛を包含する)、及びウエブ状シートのいずれであってもよく、それぞれの組織、密度などに格別の制限はないが、50〜1000g/m2の目付、及び2〜10mmの厚さを有することが好ましく、より好ましい目付は100〜200g/m2であり、より好ましい厚さは3〜5mmである。有機繊維層は、フエルト状合成繊維シートから形成されていることが好ましい。
【0018】
本発明の板状積層体の耐熱材料層に含まれるマトリックスは、耐熱熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、耐熱ゴム、コンクリート、ポリマーコンクリート及び無機酸化物から選ばれる。前記耐熱熱可塑性樹脂は、150℃以上の溶融温度を有する熱可塑性樹脂、例えばポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等から選ぶことができる。
また、熱硬化性樹脂は、例えばフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、尿素樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、キシレン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等から選ぶことができる。さらに、耐熱ゴムは、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体ゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、クロルスルホン化ポリエチレンゴム、エチレン−プロピレンゴム等から選ぶことができる。さらに、マトリックス用コンクリートとしては、ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、及びアルミナセメントなどを用いることができる。また、ポリマーコンクリートとしては、結合材成分として、セメントを含み、ポリマー成分として、ゴムラテックス、樹脂エマルジョン、混合樹脂分散液、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル−ビニルバーサテート共重合体樹脂、ポリアクリル酸エステル、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸カルシウム、エポキシ樹脂、及び不飽和ポリエステル樹脂などを用いることができる。さらに、耐熱材料層用無機酸化物としては、例えば、酸化珪素、フェライト、酸化チタンなどの不燃性無機酸化物を用いることができる。前記酸化チタンは光触媒機能を有するものであってもよい。
前記耐熱材料層の表面が、無機酸化物により形成されるとき、得られる耐熱材料層表面の初期視感反射率は、65%以上であることが好ましく、より好ましくは75%以上である。前記初期視感反射率とは、耐熱材料層が形成された直後の視感反射率を意味し、この視感反射率はJIS K 5665の測定方法により測定することができる。
【0019】
本発明の板状積層体の耐熱材料層には、そのマトリックスが補強用繊維により補強されていてもよく、補強用繊維としては、例えばガラス繊維、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、炭素繊維、フェノール系架橋繊維、ポリプロピレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、天然繊維、スラグ繊維、金属繊維又は金属線材などを用いることができる。耐熱材料層中の補強用繊維の含有量には格別の制限はないが、一般にマトリックスの量に対し、1.5〜80体積%であることが好ましい。補強用繊維の使用形態にも格別の制限はなく、ステーブルファイバー状、フィラメント状、フィラメントヤーン又は紡績糸などの糸条状、編織物状、不織布状、粉砕繊維状のいずれであってもよい。
さらに、耐熱材料層中には、充填材(例えば窒化珪素ウイスカー、グラファイト、ガラスパウダー、硫酸バリウム、シリカなど)、耐熱性向上剤(例えば、遷移金属化合物など)、難燃性付与剤(例えば、テトラブロモビスフェノールA、TCEPなど)TCPP、メラミン、膨張性グラファイトなど)、顔料(例えば、酸化クロム、ベンガラ、チタンイエロー、及びコバルトブルーなど)、耐候性向上剤(例えば2−ヒドロキシベンゾフェノン、サリシレート、ベンゾエート、及びトリアゾール化合物など)、及び抗酸化剤(例えば4−4′−ブチリデンビス−(3−メチル−6−第3ブチルフェノールなどのフェノール化合物、及びフェニル−α−ナフチルアミンなどのアミン系化合物)が適量含有されていてもよい。
さらに耐熱材料層の外側表面が、メラミン樹脂含有化粧紙などのように熱硬化性樹脂を含浸して製造された紙材、又は繊維布帛材により装飾が施されていてもよい。
【0020】
図1に示されている本発明の板状積層体の一例において、板状積層体1は耐熱材料層2と、有機繊維層3との積層体であって、有機繊維層3の、境界面4の上の片側部分3aは、耐熱材料層2中に取り込まれていて(又は押し込まれていて)、境界面4の下の他の片側部分5は、この部分5内の合成繊維が、部分的に溶融して、合成繊維を互に融着させていてもよいし、或は合成繊維を溶融して、フィルム状化されていてもよい。この場合においても有機繊維層3の片側部分3a中の合成繊維は、繊維状のまゝ、耐熱材料層中に伸び出て、これと結合一体化されている。
【0021】
図2に示された板状積層体の一例において、例えば、有機繊維層を形成する合成繊維は、ポリプロピレン(融点:176℃)からなる芯部と、ポリエチレン(融点:110℃)からなる鞘部とが、芯/鞘質量比:40:60〜60:40の芯/鞘構造を形成しているコンジュゲート短繊維であってもよく、その繊度は10〜120dtex、繊維長が35〜200mmであることが好ましい。前記芯/鞘型コンジュゲート短繊維の、坪量は80〜350g/m2であることが好ましく、例えば150g/m2、のフエルト状不織布を形成していてもよい。
【0022】
また、図2の板状積層体1の耐熱材料層の一例として、フェノール樹脂をマトリックスとして含み、ガラス繊維織布及び/又はガラス繊維不織布により補強されたものをあげることができる。補強繊維の含有量は耐熱材料層の質量の40〜60%であることが好ましく、例えば、55質量%である。
図2に示された板状積層体を製造するには、例えば厚さ2〜4mmの耐熱材料層を、マトリックス材料と、必要により、補強用繊維とから形成し、その上に、例えば厚さ2〜4mmの有機繊維層を重ね合わせ、この重ね合わせ体に、その有機繊維層側から熱プレスを施して、有機繊維層の耐熱材料層に対向している片側部分を、耐熱材料層中に取り込み、例えば厚さ2.5〜3.5mmの板状積層体に形成する。このとき、熱プレス温度を、ポリエチレン鞘部の融点より高く、ポリプロピレン鞘部の融点より低い温度に設定すれば、有機繊維層の熱プレスに接触している片側部分5中の芯/鞘型コンジュゲート繊維のポリエチレン(鞘部は、溶融し、その中にポリプロピレン芯部繊維が分散しているフィルム状体5が形成される。
【0023】
図3に示されている本発明の板状積層体の一例において、有機繊維層6は、立体編織物構造を有し、この編織物構造を有する有機繊維層6の耐熱材料層2に対向している片側部分6aは、耐熱材料層2中に取り込まれているが、残りの反対片型側部分6bは、耐熱材料層2の裏側に伸び出している。
【0024】
図3に示されている板状積層体1において、例えば編織物構造を有する有機繊維層6は経パイル織物構造を有し、この経パイル織物の地経糸及び地緯糸は、ポリエステル繊維糸条からなる平織構造を構成し、パイルを形成するパイル経糸は、ポリプロピレンを芯材とし、かつポリエチレンを鞘材とする芯/鞘構造を有するコンジュゲート繊維により構成されるものである。例えば、このような経パイル織物は、3〜6mmの厚さ、例えば5mmの厚さと、150〜400g/m2の目付、例えば250g/m2の目付を有するものであることが好ましい。上記のような経パイル織物によって有機繊維層6が形成される場合、経パイル織物のパイル層部分が、片側部分6aとして、耐熱材料層2中に取り込まれ、それと接合して、一体化されることが好ましい。この場合耐熱材料層を構成する耐熱材料に格別の制限はないが、例えば、熱硬化型ポリウレタン樹脂を、シートモールディングコンパウンド法により板状に成形したものを用いることができ、その厚さは3〜8mmであることが好ましく、より好ましくは4〜5mmである。
【0025】
図4に例示されている板状積層体1において、有機繊維層3の、合成繊維が互に融着している、或はフィルム状化している片側部分3b上に、熱可塑性樹脂からなるシート又はフィルム7が、形成或は接合されている。
熱可塑性樹脂シート又はフィルムは、それが、取り付け金具及び構造物表面に、高周波誘導加熱法により溶融接着可能である限りそれを構成する樹脂の種類に格別の制限はなく、またフィルム又はシートの構成、組織についても格別の制限はなく、例えば、熱可塑性樹脂のフィルム又はシート、及び1種以上の熱可塑性重合体からなる繊維(芯鞘型合成繊維を包含する)の編織物又は不織布であってもよい。例えば、図4において、有機繊維層3は、ポリプロピレンを芯材とし、ポリエチレンを鞘材とする芯鞘型コンジュゲート繊維から構成され、目付150g/m2のフエルト状シートからなり、熱可塑性シート7は、0.5mmの厚さを有する低密度ポリエチレンからなるシートから構成される。この場合、耐熱材料層2は、その質量の55%の、ガラス繊維織布及びガラス繊維不織布とを補強材として含み、耐熱材料層2のマトリックスとしては、例えばフェノール樹脂が用いられる。板状積層体の形成において、前記耐熱材料層2用ガラス繊維強化フェノール樹脂板の上に、前記有機繊維層3用芯鞘型コンジュゲート繊維製フエルトを重ね、その上に低密度ポリエチレンシートを重ね、低密度ポリエチレンシート側から150℃の温度、2Mpaの圧力下に、40分間の熱プレスを施す。すると、有機繊維層用フエルトの、耐熱材料層に対向する片側部分は、耐熱材料層中に取り込まれ、その低密度ポリエチレンシートと、フエルトの反対片側部分中の芯鞘型コンジュゲート繊維の鞘部(ポリエチレン)が溶融し、ポリプロピレン芯繊維を含むポリエチレンフィルム層が形成され、その上に低密度ポリエチレンシート層が溶融一体化する。得られる板状積層体の厚さは、2.5〜4.0mm、例えば3mmであることが好ましい。
【0026】
図1に示された構成を有する板状積層体において、例えば有機繊維層3を、ポリプロピレンを芯材として、ポリエチレンを鞘材として構成される芯鞘型コンジュゲート繊維から形成され、好ましくは目付:80〜350g/m2、例えば150g/m2を有するフエルトにより構成し、耐熱材料層をその質量の3%のポリビニルアルコール繊維(直径:20〜200μm、繊維長:5〜30mm、例えば直径:40μm、繊維長:12mm)を補強材として含み、マトリックスとして、セメントモルタルを含む耐熱セメント材料により構成してもよい。この場合、強化繊維含有セメントモルタル層上に、フエルトを重ね、これに押圧を施しながら、養生してセメントを硬化させる。このような板状積層体は好ましくは4〜10mm、例えば、5mmの厚さを有することが好ましい。
【0027】
本発明の板状積層体は、1〜104MPaの曲げ弾性率を有していることが好ましく、より好ましい曲げ弾性率は、1〜100MPaである。曲げ弾性率が1〜104MPaの範囲内にあるとき、当該板状積層体は、構造物の被覆すべき曲面に追随させて変形し、被覆固定することができる。曲げ弾性率が、1MPa未満であると、この板状積層体が、例えば構造物の凹曲面をなす天井に取りつけられたとき、板状積層体が、それに付加される重力により、垂れ下がり変形することがある。また、曲げ弾性率が1×104MPaを超えて高いときは、この板状積層体を、構造物の被覆すべき表面に沿って変形することが困難になることがあり、このような場合には、板状積層体の厚さを極度に薄くするか、或は多数の取り付け金具を用いて変形固定することが必要になり、被覆取り付けに要する費用及び手間が過大になることがある。
【0028】
本発明の板状積層体において、前記有機繊維層が、溶融可能な合成繊維に加えて、ガラス繊維、金属繊維(例えば、ステンレススチール繊維など)、炭素繊維及びスラグ繊維から選ばれた少なくとも1種からなる無機繊維を含んでいてもよい。有機繊維層中の無機繊維の、含有量については、必要に応じて適宜設定することができるが、有機繊維層の体積に対して、30〜70体積%の範囲内にあることが好ましい。前記無機繊維は、高い耐熱性又は難燃性を有し、それによって、有機繊維層の耐熱性、難燃性を高めることができるが、有機繊維層中の無機繊維の含有率が85質量%をこえると、相対的に有機繊維層中の有機繊維、特に溶融可能な合成繊維の含有率が低くなり、高周波誘導加熱による有機繊維層の溶融接着性が不十分になることがある。また、前記含有率が20質量%未満になると、無機繊維の使用による有機繊維層の耐熱性の向上効果が不十分になることがある。
【0029】
本発明の板状積層体において、有機繊維層は、耐熱材料層の一面の少なくとも一部分上に積層される。すなわち、耐熱材料層の一面の全面に有機繊維層が積層されていてもよく、或は耐熱材料層の一面の1個以上の領域部分上のみ、有機繊維層が積層され他の領域部分は、有機繊維層により被覆されることなく露出していてもよい。或は耐熱材料層の一面の1個以上の領域部分上のみに、有機繊維層が積層されていて、他の領域部分上には、ガラス繊維、金属繊維、金属線材、スラグ繊維及び炭素繊維から選ばれた少なくとも1種からなる無機繊維層が積層されていてもよい。この場合、有機及び無機樹脂層は、それぞれ、その前記耐熱材料層に対向している片側部分は、前記耐熱材料層中に取り込まれていて、有機及び無機繊維層の繊維間隙中に、耐熱材料層中のマトリックス成分が、侵入充填しており、それによって、耐熱材料層に、有機及び無機樹脂層が、一体に結合している。
【0030】
無機繊維層に含まれる無機繊維は、ガラス繊維、バサルト(玄武岩)繊維、金属繊維(例えばステンレススチール繊維など)、金属線材(例えば、太さ0.03〜0.10mmのステンレススチール線材又は硬鋼線材など)、スラグ繊維及び炭素繊維から選ばれた少なくとも1種からなるものである。無機繊維層は、無機系コンクリート用接着剤(樹脂入りポルトランドセメント、及び石こうボンドなど)により、構造物表面に、接着固定することができ、火炎などに対し、高い耐熱性及び難燃性を示すことができる。このため、火炎などにより、構造物表面と、有機繊維層との取り付け部材を介する溶融接着が失われた場合においても、無機繊維層と、構造物表面とのコンクリートボンドを介する接着が、維持され、構造物表面における板状積層体の固定を安定に維持することができる。すなわち、無機繊維層と構造物とを、無機系コンクリート用接着剤などにより接着したとき、無機繊維層の繊維間隙中に、接着剤が、浸入して充填し、無機繊維層と構造物とを強固に接合することができる。
【0031】
前記無機繊維層において、無機繊維は、編織物、不織布(フエルト状体を包含する)、ネット状体、線材の束状体などのいずれであってもよいが、無機繊維層と、耐熱材料層とを一体化するとき、無機繊維層の耐熱材料層に対向している片側部分が、耐熱材料層中に押し込まれ、耐熱材料が、無機繊維の間隙に浸入し、これを充填して、無機繊維層と、耐熱材料層とが一体に結合し得ることが必要である。
【0032】
図5は、本発明の板状積層体1を、コンクリート構造物のように、表面に多数の気孔9を含む多孔質構造物8に、溶融固定する場合、板状積層体1の有機樹脂層3と、構造物8の表面との中間に、高周波誘導発熱が可能な金属からなるメッシュシート11を配置し、板状積層体1を、構造物表面に押しつけながら、金属メッシュシートを、その1個以上の部分において高周波誘導発生させると、有機繊維層中の合成繊維の溶融可能な重合体が溶融し、メッシュシートの開口部を通って、構造物の表面部に分布している細孔に入り込み、それによって、板状積層体を、その1ヶ所以上の部分において、構造物表面に固定することができる。
【0033】
また、図6に示されているように、多孔質構造物8の被覆表面には、熱溶融可能な熱可塑性樹脂による熱可塑性樹脂塗料による塗膜12が形成されていてもよい。このようにして、有機繊維層3と、熱可塑性樹脂塗膜12との間に高周波誘導発熱する金属メッシュシート11を配置し、これらを押圧しながら金属メッシュシート11の所望の部分に、高周波誘導発熱を行わせることにより、有機繊維層中の合成繊維の溶融可能な重合体、及び、熱可塑性樹脂塗膜とを溶融し、これらを、金属メッシュシートの開口部を介して溶融接着させることにより、板状積層体を多孔質構造物8上に固定することができる。メッシュシートの開口率は、メッシュシートの全表面積に対し、25〜95%であることが好ましく、より好ましくは50〜85%である。
有機繊維層中の、溶融可能な重合体と、熱可塑性樹脂塗膜を構成する重合体とは、互に同種であってもよく、異種であってもよいが、異種の場合には、互に親和性を有するものであることが好ましい。
本発明の板状積層体において、前記有機繊維層中に、高周波誘導により発熱する無機繊維が添加されていると、前記金属メッシュシートが配置されていなくても、前記無機繊維を、高周波誘導発熱させることによって、金属メッシュシートを配置したときと同様の溶融固定を実現することができる。
【0034】
図7に示されている本発明の板状積層体と、構造物14との接着において、熱可塑性樹脂により表面被覆されている取りつけ金具14と、取りつけ金具固定用アンカー15が用いられる。
図7において、構造物表面の所定位置にアンカー15付き取りつけ金具14を、打ち込み、取りつけ金具14上に、高周波誘導発熱用金属メッシュシート11を介して、本発明の板状積層体1を配置する。図8に示されているように、板状積層体1を、取りつけ金具14に向って押圧しながら、メッシュシート11に高周波誘導発熱させる。すると、メッシュシート11は急速に発熱して、それに接している有機繊維層5中の溶融可能な重合体、及び取りつけ金具14を被覆している熱可塑性樹脂被覆層を溶融する。溶融した樹脂、重合体は、メッシュシート11の開口部を介して、互に接合結着し、高周波誘導発熱処理を中止すると、メッシュシート11は急速に冷却し、重合体/樹脂接着体も急速に冷却固化する。すると、板状積層体1は、構造物13に、取りつけ金具14及びアンカー15を介して、強固に固定することができる。取りつけ金具14と、板状積層体1とはメッシュシート11の開口部を通って、互に溶融接着した。有機繊維層3の溶融した重合体と、取りつけ金具14の被覆樹脂により、安定に接着されている。
図8において、板状積層体の有機繊維層の非接合部と、構造物13の非接合部との間の空隙には、必要により充填剤、又は接着剤16を充填してもよい。前記充填剤又は接着剤16は、セメントミルク、モルタルミルクなどの無機系材料、或は不飽和ポリエステル樹脂及びエポキシ樹脂などの有機系材料などから適宜に選択することができる。
【0035】
図7及び図8に示された、取りつけ金具14及びアンカー15の形状、寸法には格別の制限はなく、板状積層体及び構造物に応じて適宜に選択したものを用いればよい。
【0036】
構造物が土構造物17であって、その表面が斜面をなしている場合、例えば、図9に示されているように、土構造物17に、その斜面にほゞ直角をなすように、複数本の杭18を打ち込み、熱可塑性樹脂により表面被覆された取りつけ金具14を、アンカーボルト15により杭17の露出面に固定する。本発明の板状積層体1を、その有機繊維層(図示されていない)を、高周波誘導発熱可能な金属メッシュシート(図示されていない)を介して、取りつけ金具14の頭部に押しつけ、金属メッシュシートを高周波誘導発熱させて、図8の場合と同様にして、有機繊維層と、取りつけ金具頭部とを溶融接着して固定する。
【0037】
また、図10に示されているように構造物が土構造物17であって、その表面が斜面をなしている場合、この土構造物の斜面に、法面安定用プレート19を載置し、これを、グランドアンカー20により固定する。法面安定用プレート19上に、熱可塑性樹脂により被覆された取りつけ金具14を、アンカーボルト(図示されていない)により固定し、その上に、高周波誘導発熱する金属メッシュシート(図示されていない)を介して、板状積層体1を、その有機繊維層(図示されていない)が、取りつけ金具14の頭部に接するように配置して、押しつけ、金属メッシュシートを、高周波誘導発熱させて、図8の場合と同様にして、板状積層体を、取りつけ金具14を介して、法面安定用プレート19上に固定する。
【0038】
前記高周波誘導発熱には、市販の装置、例えばSMART CORPORATION社製、商標:EASY WELDER(周波数 20kHz、出力 500W)を用いることができる。
【0039】
図11−(A)及び(B)において、本発明の板状積層体1の耐熱材料層2の一面の1個以上の領域部分(図11においては1領域部分)上に、その幅方向に伸びる1個の有機繊維層3が形成されている。この板状積層体の有機繊維層により被覆されていない領域部分においては、耐熱材料層2が露出している。板状積層体1は、領域部分に形成されている有機繊維層3内の1以上の接合部(図示されていない)において、構造物(図示されていない)に接着固定される。
【0040】
図12−(A)及び(B)において、本発明の板状積層体1の耐熱材料層2の、その長手方向に平行に伸びる3個の縞状部に、有機繊維層3が形成されている。図12−(A),(B)において、3個の有機繊維層3が、耐熱材料層2の両側縁部と、中央部に形成されている例が示されているが、任意の領域部分に形成された1個以上の有機樹脂層3を有していてもよく、耐熱材料層2の有機繊維層3により被覆されていない領域部分は露出している。板状積層体1はその有機繊維層3が積層されている領域部分において、構造体に固定される。
【0041】
図13に示されている本発明の板状積層体1の1例において、耐熱材料層2中に、その長手方向及び幅方向のそれぞれに互に間隔をおいて離間した複数個の領域部分に有機繊維層3が積層固定されていて、この有機繊維層3の間に、耐熱材料層が格子状をなして露出している。
図13に示された板状積層体1は、その有機繊維層3が形成されている領域部分内において、構造物に接着固定される。
【0042】
図11〜13に示されている本発明の板状積層体の態様において、有機繊維層3は、他から離間した領域部分中に配置されている。本発明の板状積層体が構造物に接着固定されたとき、この固定部分が、例えば火災などにより加熱されると、固定部分の溶融可能な重合体は溶融するから、板状積層体は構造物から剥離することがある。このような場合、有機繊維層中の接着固定部分が、互に離間した領域部分内にあると、板状積層体の一部分が、火焔に接触しても、有機繊維層の延焼による板状積層体の剥離の続発を、防止乃至遅延させることが可能になる。
【0043】
図14において、構造物の凹形曲面に、図11−(A)及び(B)に例示した有機繊維層配置を有する板状積層体を、被覆固定した例が示されている。図14において、構造物の凹形曲面に、3極の板状積層体が、その有機繊維層3が積層されている領域部分において、取りつけ金具14及びアンカーボルト15を用いて、接着固定されている。この場合、図14には図示されていないが、有機繊維層3中の合成繊維の溶融可能な重合体、及び取りつけ金具14を被覆している熱可塑性樹脂とは、その中間に配置された金属メッシュシート(図示されていない)の高周波誘導発熱により加熱されて溶融し、メッシュシートの開口部を介して互に溶融接着している。図14において、3枚の板状積層体は、構造物の凹形曲面に沿って配置され、その互に対向する縁端部分は互に離間しており、この縁端部分は、無機接着剤21(例えば樹脂入りモルタル)により、構造物の凹形曲面に接着されている。板状積層体1の互に離間している縁端部の間隔は、無機充填材又は無機接着剤により充填されていてもよい。
また、板状積層体の耐熱材料層の露出表面と、構造物の表面との間の間隙は、必要により無機充填材又は無機接着剤(図示されていない)により充填されていない。
【0044】
図15−(A)及び(B)に示されている板状積層体1aにおいて、耐熱材料層2の長手方向に直角をなす幅方向に縞状をなす領域部分に有機繊維層3が形成され、その他の縞状領域部分に無機繊維層22が形成されている。
【0045】
図16−(A)及び(B)に示されている板状積層体1aにおいて、耐熱材料層2の長手方向に沿って、互に離間した3本の縞状に有機繊維層3が形成され、それらの間に2本の縞状に無機繊維層22が形成されている。
【0046】
図17に示された板状積層体1aにおいて、耐熱材料層の一面の、互に離間する複数個の領域部分に有機繊維層3が形成され、その他の領域部分に無機繊維層22が形成されている。図4,5において、無機繊維層22は、互に離間している複数の有機繊維層3の間に連続格子状に形成されている。有機繊維層3は、板状積層体を、構造物の所望表面に、強固に固定するに必要な領域部分に形成される。無機繊維層は、有機繊維層が形成されていない領域部分の全面に形成されていてもよいし、或はその一部分のみに形成されていてもよい。
【0047】
図18において、構造物の凹形曲面に、図15−(A),(B)に示されたように有機及び無機繊維層が配置されている板状積層体1a3枚を、被覆固定した例が示されている。板状積層体1aの中央部に有機繊維層3が形成され、その他の部分には無機繊維層22が形成されている。有機繊維層3の領域内において板状積層体1aは取りつけ金具14、アンカーボルト15及び金属メッシュシート(図示されていない)を介して、構造物13の凹形曲面に固定されている。その接合固定は、図14に示された板状積層体の有機繊維層3の場合と同様に行われる。相隣る板状積層体1aの縁端部は、無機接着剤21により結合され、かつ構造体曲面に接着されている。板状積層体1aの相隣る縁端部間の間隙は、無機充填材又は無機接着剤により充填されていてもよい。
また、無機繊維層と構造体の曲面とは、必要により、無機接着剤により全面的に、又はその一部において接着されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の構造物被覆用板状積層体及びその装着方法は、耐熱材料層に強固に接合一体化され、溶融可能な重合体を含む合成繊維を含む有機繊維層を利用して、これを高周波誘導発熱法により、構造物に容易、かつ短時間内に強固に被覆固定することができる。
従って、本発明の構造物被覆用板状積層体及びその装着方法は、構造物表面の耐熱、防水、遮水、防蝕、及び平滑化工事に、実用上有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の構造物被覆用板状積層体の一例の断面説明図。
【図2】本発明の構造物被覆用板状積層体の他の例の断面説明図。
【図3】本発明の構造物被覆用板状積層体の他の例の断面説明図。
【図4】本発明の構造物被覆用板状積層体の他の例の断面説明図。
【図5】本発明の構造物被覆用板状積層体を構造物に装着する本発明の装着方法の一例を示す断面説明図。
【図6】本発明の構造物被覆用板状積層体を構造物に装着する本発明の装着方法の他の例を示す断面説明図。
【図7】本発明の構造物被覆用板状積層体を構造物に装着する本発明の装着方法の他の例の材料配置を示す断面説明図。
【図8】本発明の構造物被覆用板状積層体を構造物に装着する本発明の装着方法の他の例による装着状態を示す断面説明図。
【図9】本発明の構造物被覆用積層体を土構造物に装着する本発明の装着方法の一例を示す断面説明図。
【図10】本発明の構造物被覆用積層体を土構造物に装着する本発明の装着方法の他の例を示す断面説明図。
【図11】図11−Aは本発明の構造物被覆用板状積層体の他の実施態様の一例を示す断面説明図であり、図11−Bは図11−Aの板状積層体の裏面説明図。
【図12】図12−Aは本発明の構造物被覆用板状積層体の他の実施態様の他の例を示す断面説明図であり、図12−Bは、図12−Aの板状積層体の裏面説明図。
【図13】本発明の構造物被覆用板状積層体の他の実施態様の他の例の裏面説明図。
【図14】本発明の構造物被覆用板状積層体の他の実施態様の一例を用いる本発明の装着方法を示す断面説明図。
【図15】図15−Aは、本発明の構造物被覆用板状積層体の他の実施態様の一例を示す断面説明図であり、図15−Bは図15−Aの板状積層体の裏面説明図。
【図16】図16−Aは本発明の構造物被覆用板状積層体の他の実施態様の他の例の断面説明図であり、図16−Bは、図16−Aの板状積層体の裏面説明図。
【図17】図17−Aは、本発明の構造物被覆用板状積層体の他の実施態様の他の例の裏面説明図。
【図18】本発明の構造物被覆用板状積層体を構造物の凹曲面上に装着する方法の一例を示す断面説明図。
【符号の説明】
【0050】
1,1a 構造物被覆用板状積層体
2 耐熱材料層
3 有機繊維層
3a 有機繊維層の、耐熱材料層中に取り込まれて一体化している部分
3b 有機繊維層の、耐熱材料層外にある部分
4 耐熱材料層と、有機繊維層の耐熱材料層外にある部分との境界面
5 合成繊維が互に融着しているか、或はフィルム状化している有機繊維層の耐熱材料層外にある部分
6 立体編織物構造を有する有機材料層
7 熱可塑性樹脂シート層
8 多孔質構造物
9 気孔
11 高周波誘導発熱する金属メッシュ
12 熱可塑性樹脂塗膜
13 構造物
14 熱可塑性樹脂により被覆された取付金具
15 取付金具固定用アンカー
16 充填材
17 土構造物
18 杭
19 法面安定用プレート
20 グランドアンカー
21 無機系接着剤
22 無機繊維層
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物被覆用板状積層体及びその装着方法に関するものである。更に詳しく述べるならば、本発明は、例えば土木工事、建設工事及び防水・遮水工事などにおいて、防水又は遮水被覆されるべき構造物の表面上に、耐熱性被覆を短時間内に極めて強固に被覆固定することができる構造物被覆層板状積層体及びその装着方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば土木工事、建設工事及び防水・遮水工事などにおいて、防水又は遮水するために、表面を被覆すべき構造物の耐火性、耐磨耗性、耐候性、剛性、平滑性及び汚れ落ち性などの特性を向上させるために、構造物表面に、熱硬化性樹脂を包含する樹脂系材料及び/又はセメント系塗布材料を包含する無機系材料を塗装し、或は、上記材料により形成された板状材料を、接着剤により接合して被覆することが、従来から知られていた。前記構造物が既設体であるとき、これに上記塗装又は板状材料を貼着するには、この構造物の表面を清掃して、構造物表面を健全な状態まで修復した後に、前記塗装又は貼着を施さなければならない。このような清掃及び修復は、構造物と、塗膜又は板状材料との固着を確実なものにするためには不可欠である。また、新規構造物に対して、塗装又は被覆を施す場合であっても、構造物表面に存在する水分の量を十分な乾燥状態に管理しなければ、構造物と、塗膜又は板状材料との固着を確実にすることができない。さらに構造物が、屋外にあるときは、塗装又は被覆を実施するときの気象状況に応じて、塗装又は被覆の工法及び条件を十分に選択しなければならない。また、塗装による被覆においては、塗装表面に微細な凹凸が発生し、その凹部に汚れ物質が付着して残留するので、このように付着した汚れ物質の除去が容易ではないことがある。
【0003】
また、構造物に前記板状材料を被覆固定するためには、従来から、前記板状材料に、アンカーボルト用孔を穿ち、これにアンカーボルトを通して構造物に板状材料を取り付ける工法又は板状材料を、構造物表面に、接着材及び/又は粘着材を介して固定する工法、或は、構造物及び板状材料のそれぞれに、予じめ取り付け部材を取り付けておき、これらを結合し固定する工法などが用いられている。
【0004】
前記アンカーボルトを用いる工法においては、板状材料の表面上にアンカーボルトの頭部が露出し、これを、被覆する処理を施すと、その処理痕が残り、被覆表面に凹凸が形成される。また被覆面の凹凸形成を回避するには板状材料の厚さを十分に大きく設計し、アンカーボルトの頭部を収容する凹部を形成し、この凹部に収容されたアンカーボルト頭部と、凹部内壁面との間の隙間に例えば樹脂を充填することが必要になる。
しかしながら、板状材料の取り付け後の被覆表面に凹凸があると、水利上の問題として、この被覆表面上を水が流れたとき、前記凹凸は流れの移動に抵抗を発生させることになり、流量の低下などの、水利上の障害を生ずることがある。また、板状材料に、アンカーボルト頭部を収容するための凹みを形成することは、板状材料の厚さ及び重量が増大し、或は、その機械的強度が低下するなどの問題点を生ずる。
【0005】
また、前記接着材及び/又は粘着材を用いる工法においては、構造物の表面を清掃し、この構造物表面を十分に修復することが不可欠となり、或は、接着材又は粘着材の効果を確実にするためには構造物表面の乾燥状態を、十分にコントロールすることが必要となる。また、構造物が屋外に露出しているときは、気象状態に応じて、工法及び条件の適切な選択・設定が必要となる。さらに、接着材を用いる場合、接着材が固化するのに長時間を要することがあり、この場合には、施工現場において、被覆材料に仮止め処置を施すことが必要になることがある。さらにまた、構造物の被覆されるべき表面が曲面をなしている場合、この曲面に整合する曲面を有する板状材料を使用することが必要となり、板状材料に、予じめ選別又は曲面加工を施すことが必要となるなどの問題点を生ずる。
【0006】
前記取り付け部材を用いる工法においては、取り付け部材を構造物及び板状材料に正確かつ適切に取り付け、かつこれらを結合させるためには、作業員の高度な熟練度が必要になり、この要件を満たすためには、高い費用と、長時間を要するという問題点を生ずる。
【0007】
さらに、被覆すべき構造物が、例えば、馬蹄形の隧道(ずいどう)である場合、その被覆すべき表面が曲面をなしているので、これを被覆する板状材料の曲げ弾性率は適切な範囲内にあることを必要とする。板状材料の曲げ弾性率が過度に高く、硬い場合、板状材料を構造物の曲面に整合するように変形させることが困難になり、この変形により板状材料が破壊することがある。また、板状材料の曲げ弾性率が過度に低く、柔軟な場合、板状材料の自立が困難になり、特に構造物の天井曲面を被覆するとき、板状材料が、その固定部分の中間で自重により変形して、垂れ下がることがあり、この欠点を防止するために、固定点の数を増大し、その間隔を小さくすることが必要になり、このために、板状材料の固定に要する手間、費用、時間が増大するという問題点が発生する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は被覆を要する構造物の表面に、高い耐熱性を有する防水・遮水被覆を、短時間内に、強固に形成することのできる構造物被覆用板状積層体及びその装着方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の構造物被覆用板状積層体は、耐熱熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、補強繊維含有耐熱熱可塑性樹脂、補強繊維含有熱硬化性樹脂、耐熱ゴム、補強繊維含有耐熱ゴム、補強繊維含有コンクリート、補強繊維含有ポリマーコンクリート、及び無機酸化物から選ばれた少なくとも1種を含む耐熱材料層と、
前記耐熱材料層の一面の少なくとも一部分上に積層され、かつ熱溶融可能な重合体を含む合成繊維を含む有機繊維層と
を含み、
前記有機繊維層の、前記耐熱材料層に対向している片側部分が、前記耐熱材料層中に取り込まれて、前記有機繊維層と前記耐熱材料層とが板状に一体化している
ことを特徴とするものである。
本発明の構造物被覆用板状積層体において、前記耐熱材料層の表面が、前記無機酸化物により形成され、かつこの表面の初期視感反射率が65%以上であることが好ましい。
本発明の構造物被覆用板状積層体において、前記有機繊維層の、前記耐熱材料層中に取り込まれていない反対片側部分中の合成繊維の少なくとも一部分が、溶融して、前記合成繊維が互に融着するか、或はフィルム状化していることが好ましい。
本発明の構造物被覆用板状積層体において、前記有機繊維層に含まれる合成繊維の少なくとも一部分が、芯鞘構造を有するコンジュゲート繊維であって、その鞘部を構成する重合体が、その芯部を構成する重合体よりも低い溶融温度を有することが好ましい。
本発明の構造物被覆用板状積層体において、前記有機繊維層が、互に溶融温度の異なる2種以上の合成繊維を含むことが好ましい。
本発明の構造物被覆用板状積層体において、前記有機繊維層の少なくとも一部分において、前記合成繊維が立体編織物中に含まれていることが好ましい。
本発明の構造物被覆用板状積層体において、前記板状積層体の曲げ弾性率が1〜104MPaの範囲内にあることが好ましい。
本発明の構造物被覆用板状積層体において、前記有機繊維層が、前記溶融可能な合成繊維に加えて、ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維及びスラグ繊維から選ばれた少なくとも1種の無機繊維を含んでいてもよい。
本発明の構造物被覆用板状積層体において、前記有機繊維層が、前記耐熱材料層の一面の一部分に積層され、前記耐熱材料層の一面の他の部分に、ガラス繊維、金属繊維、金属線材、スラグ繊維及び炭素繊維から選ばれた少なくとも1種の無機繊維からなる無機繊維層が積層され、前記有機及び無機繊維層の、前記耐熱材料層に対向している片側部分が、前記耐熱材料層に取り込まれていて、前記有機及び無機繊維層と、前記耐熱材料層とが板状に一体化されていてもよい。
本発明の構造物被覆用板状積層体の装着方法は、構造物の表面上に、請求項1〜7のいずれか1項に記載の構造物被覆用板状積層体を、その前記有機繊維層側が、前記構造物表面に対向するように載置し、このとき前記有機繊維層と、前記構造物の表面との間に、高周波誘導発熱性を有する金属からなるメッシュを介在させ、前記金属メッシュを高周波誘導発熱させて、前記有機繊維層を溶融し、前記構造物表面上に前記有機繊維層を溶融接着させることを特徴とするものである。
本発明の構造物被覆用板状積層体の装着方法において、構造物の表面上に、請求項8に記載の構造物被覆用板状積層体を、その前記有機繊維層及び無機繊維層が、前記構造物表面に対向するように載置し、前記無機繊維層と、これに対向する前記構造物表面とを、無機系接着剤により接着し、かつ、前記合成繊維含有繊維層と、それに対向する前記構造物表面との間に、高周波誘導発熱性を有する金属からなるメッシュを介在させ、前記金属メッシュを高周波誘導発熱させて、前記有機繊維層中の合成繊維を溶融し、前記構造物表面上に前記有機繊維層を溶融接着させてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の構造物被覆用板状積層体は、耐熱材料層と、熱溶融可能な合成繊維を含み、前記耐熱材料層に強固に接合一体化している有機繊維層とを含み、本発明の板状積層体装着方法により、前記有機繊維層は、それと、構造物表面との間に配置された金属メッシュを高周波誘導発熱させることによって、構造物表面に、短時間内に強固に溶融接着することができ、その外側に耐熱材料層により、耐熱性防水・遮水層を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の構造物被覆用板状積層体において、板状積層体により被覆される構造物とは土構造物のように、土壌からなる表面を有し、従って、この土壌表面部分は多数の気孔を有する軟弱なものであってよく、或はコンクリート構造物、金属構造物、木造構造物、及びこれらが混在する構造物であってもよい。
【0012】
本発明の構造物被覆用板状積層体は、被覆の外側を形成する耐熱材料層と、使用時に構造物に対向して、これに固着される有機繊維層とを含むものである。
すなわち、耐熱材料層は、耐熱熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、補強繊維含有耐熱熱可塑性樹脂、補強繊維含有熱硬化性樹脂、耐熱ゴム、補強繊維含有耐熱ゴム、補強繊維含有コンクリート、補強繊維含有ポリマーコンクリート及び無機酸化物から選ばれた少なくとも1種を含むものであり、有機繊維層は熱溶融可能な重合体を含む合成繊維を含み、前記耐熱材料層の一面の少なくとも一部分(すなわち1以上の部分、又は全面)上に積層されている。前記有機繊維層の、前記耐熱材料層に対向している片側部分は、前記耐熱材料の、前記有機繊維層に対向している部分層中に取り込まれていて、(換言すれば、前記耐熱材料層中に伸び出していて、(有機繊維層の押し込まれた部分の繊維間空隙には耐熱材料が浸入して、)前記有機繊維層と前記耐熱材料層とが板状に一体化されている。板状積層体の厚さは1.0〜10.0mmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは1.5〜5.0mmである。
【0013】
図1に示されている構造物被覆用板状積層体の断面説明図において、板状積層体1は、耐熱材料層2と、それに積層された有機繊維層3を含み、有機繊維層3の耐熱材料層2に対向している片側部分3aは、耐熱材料層2中に取り込まれていて(或は、伸び出ていて)、それによって、耐熱材料層2と有機繊維層3とは、強固に結合一体している。このため、耐熱材料層の下面(境界面4)の外側に有機繊維層3の耐熱材料層の外にある部分3bが配置されている。
【0014】
前記有機繊維層には、熱溶融可能な、好ましくは90〜260℃の温度範囲内において熱溶融可能な重合体を含む合成繊維が含まれている。このため、有機繊維層の耐熱材料層の外に位置する部分3b中の合成繊維の一部分を熱溶融して、合成繊維を互に結着させることができるし、或は、合成繊維の大部分又は全部を熱溶融して、有機繊維層の外側部分3bをフィルム状化することもできる。有機繊維層中の合成繊維の熱溶融可能な重合体は、高周波誘導発熱可能な金属を高周波誘導発熱させることにより溶融することができるものであって、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアクリルなどが用いられ、これらは単一種で用いられてもよく、或は2種以上を混合して用いてもよい。
【0015】
本発明の板状積層体の有機繊維層に含まれる合成繊維は、前記熱溶融可能な重合体の1種以上からなる繊維、例えば、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリウレタン繊維、ポリアミド繊維、ポリアクリル繊維などが単一種で用いられている繊維、或はその2種以上が混合されている繊維であってもよい。
【0016】
さらに、本発明の板状積層体の有機繊維層において、溶融可能な重合体を含む合成繊維は、互に溶融温度の異なる2種の重合体からなり、かつサイド−バイ−サイド型、又は芯/鞘型構造を有するコンジュゲート繊維であってもよく、例えばポリエチレン/ポリプロピレンを含むサイド−バイ−サイド型コンジュゲート繊維、或はポリプロピレンからなる芯と、ポリエチレンからなる鞘とから構成される芯/鞘型コンジュゲート繊維などが用いられる。一般に芯/鞘型コンジュゲート繊維を形成する2種の重合体は、溶融温度の高い方の重合体により芯を形成し、溶融温度の低い方の重合体により鞘部を構成する。
【0017】
本発明の板状積層体の有機繊維層において、それを構成する溶融可能な合成繊維を含む繊維は、編織物(例えばパイル編織物)及び不織布(フエルト状布帛を包含する)、及びウエブ状シートのいずれであってもよく、それぞれの組織、密度などに格別の制限はないが、50〜1000g/m2の目付、及び2〜10mmの厚さを有することが好ましく、より好ましい目付は100〜200g/m2であり、より好ましい厚さは3〜5mmである。有機繊維層は、フエルト状合成繊維シートから形成されていることが好ましい。
【0018】
本発明の板状積層体の耐熱材料層に含まれるマトリックスは、耐熱熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、耐熱ゴム、コンクリート、ポリマーコンクリート及び無機酸化物から選ばれる。前記耐熱熱可塑性樹脂は、150℃以上の溶融温度を有する熱可塑性樹脂、例えばポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等から選ぶことができる。
また、熱硬化性樹脂は、例えばフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、尿素樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、キシレン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等から選ぶことができる。さらに、耐熱ゴムは、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体ゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、クロルスルホン化ポリエチレンゴム、エチレン−プロピレンゴム等から選ぶことができる。さらに、マトリックス用コンクリートとしては、ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、及びアルミナセメントなどを用いることができる。また、ポリマーコンクリートとしては、結合材成分として、セメントを含み、ポリマー成分として、ゴムラテックス、樹脂エマルジョン、混合樹脂分散液、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル−ビニルバーサテート共重合体樹脂、ポリアクリル酸エステル、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸カルシウム、エポキシ樹脂、及び不飽和ポリエステル樹脂などを用いることができる。さらに、耐熱材料層用無機酸化物としては、例えば、酸化珪素、フェライト、酸化チタンなどの不燃性無機酸化物を用いることができる。前記酸化チタンは光触媒機能を有するものであってもよい。
前記耐熱材料層の表面が、無機酸化物により形成されるとき、得られる耐熱材料層表面の初期視感反射率は、65%以上であることが好ましく、より好ましくは75%以上である。前記初期視感反射率とは、耐熱材料層が形成された直後の視感反射率を意味し、この視感反射率はJIS K 5665の測定方法により測定することができる。
【0019】
本発明の板状積層体の耐熱材料層には、そのマトリックスが補強用繊維により補強されていてもよく、補強用繊維としては、例えばガラス繊維、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、炭素繊維、フェノール系架橋繊維、ポリプロピレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、天然繊維、スラグ繊維、金属繊維又は金属線材などを用いることができる。耐熱材料層中の補強用繊維の含有量には格別の制限はないが、一般にマトリックスの量に対し、1.5〜80体積%であることが好ましい。補強用繊維の使用形態にも格別の制限はなく、ステーブルファイバー状、フィラメント状、フィラメントヤーン又は紡績糸などの糸条状、編織物状、不織布状、粉砕繊維状のいずれであってもよい。
さらに、耐熱材料層中には、充填材(例えば窒化珪素ウイスカー、グラファイト、ガラスパウダー、硫酸バリウム、シリカなど)、耐熱性向上剤(例えば、遷移金属化合物など)、難燃性付与剤(例えば、テトラブロモビスフェノールA、TCEPなど)TCPP、メラミン、膨張性グラファイトなど)、顔料(例えば、酸化クロム、ベンガラ、チタンイエロー、及びコバルトブルーなど)、耐候性向上剤(例えば2−ヒドロキシベンゾフェノン、サリシレート、ベンゾエート、及びトリアゾール化合物など)、及び抗酸化剤(例えば4−4′−ブチリデンビス−(3−メチル−6−第3ブチルフェノールなどのフェノール化合物、及びフェニル−α−ナフチルアミンなどのアミン系化合物)が適量含有されていてもよい。
さらに耐熱材料層の外側表面が、メラミン樹脂含有化粧紙などのように熱硬化性樹脂を含浸して製造された紙材、又は繊維布帛材により装飾が施されていてもよい。
【0020】
図1に示されている本発明の板状積層体の一例において、板状積層体1は耐熱材料層2と、有機繊維層3との積層体であって、有機繊維層3の、境界面4の上の片側部分3aは、耐熱材料層2中に取り込まれていて(又は押し込まれていて)、境界面4の下の他の片側部分5は、この部分5内の合成繊維が、部分的に溶融して、合成繊維を互に融着させていてもよいし、或は合成繊維を溶融して、フィルム状化されていてもよい。この場合においても有機繊維層3の片側部分3a中の合成繊維は、繊維状のまゝ、耐熱材料層中に伸び出て、これと結合一体化されている。
【0021】
図2に示された板状積層体の一例において、例えば、有機繊維層を形成する合成繊維は、ポリプロピレン(融点:176℃)からなる芯部と、ポリエチレン(融点:110℃)からなる鞘部とが、芯/鞘質量比:40:60〜60:40の芯/鞘構造を形成しているコンジュゲート短繊維であってもよく、その繊度は10〜120dtex、繊維長が35〜200mmであることが好ましい。前記芯/鞘型コンジュゲート短繊維の、坪量は80〜350g/m2であることが好ましく、例えば150g/m2、のフエルト状不織布を形成していてもよい。
【0022】
また、図2の板状積層体1の耐熱材料層の一例として、フェノール樹脂をマトリックスとして含み、ガラス繊維織布及び/又はガラス繊維不織布により補強されたものをあげることができる。補強繊維の含有量は耐熱材料層の質量の40〜60%であることが好ましく、例えば、55質量%である。
図2に示された板状積層体を製造するには、例えば厚さ2〜4mmの耐熱材料層を、マトリックス材料と、必要により、補強用繊維とから形成し、その上に、例えば厚さ2〜4mmの有機繊維層を重ね合わせ、この重ね合わせ体に、その有機繊維層側から熱プレスを施して、有機繊維層の耐熱材料層に対向している片側部分を、耐熱材料層中に取り込み、例えば厚さ2.5〜3.5mmの板状積層体に形成する。このとき、熱プレス温度を、ポリエチレン鞘部の融点より高く、ポリプロピレン鞘部の融点より低い温度に設定すれば、有機繊維層の熱プレスに接触している片側部分5中の芯/鞘型コンジュゲート繊維のポリエチレン(鞘部は、溶融し、その中にポリプロピレン芯部繊維が分散しているフィルム状体5が形成される。
【0023】
図3に示されている本発明の板状積層体の一例において、有機繊維層6は、立体編織物構造を有し、この編織物構造を有する有機繊維層6の耐熱材料層2に対向している片側部分6aは、耐熱材料層2中に取り込まれているが、残りの反対片型側部分6bは、耐熱材料層2の裏側に伸び出している。
【0024】
図3に示されている板状積層体1において、例えば編織物構造を有する有機繊維層6は経パイル織物構造を有し、この経パイル織物の地経糸及び地緯糸は、ポリエステル繊維糸条からなる平織構造を構成し、パイルを形成するパイル経糸は、ポリプロピレンを芯材とし、かつポリエチレンを鞘材とする芯/鞘構造を有するコンジュゲート繊維により構成されるものである。例えば、このような経パイル織物は、3〜6mmの厚さ、例えば5mmの厚さと、150〜400g/m2の目付、例えば250g/m2の目付を有するものであることが好ましい。上記のような経パイル織物によって有機繊維層6が形成される場合、経パイル織物のパイル層部分が、片側部分6aとして、耐熱材料層2中に取り込まれ、それと接合して、一体化されることが好ましい。この場合耐熱材料層を構成する耐熱材料に格別の制限はないが、例えば、熱硬化型ポリウレタン樹脂を、シートモールディングコンパウンド法により板状に成形したものを用いることができ、その厚さは3〜8mmであることが好ましく、より好ましくは4〜5mmである。
【0025】
図4に例示されている板状積層体1において、有機繊維層3の、合成繊維が互に融着している、或はフィルム状化している片側部分3b上に、熱可塑性樹脂からなるシート又はフィルム7が、形成或は接合されている。
熱可塑性樹脂シート又はフィルムは、それが、取り付け金具及び構造物表面に、高周波誘導加熱法により溶融接着可能である限りそれを構成する樹脂の種類に格別の制限はなく、またフィルム又はシートの構成、組織についても格別の制限はなく、例えば、熱可塑性樹脂のフィルム又はシート、及び1種以上の熱可塑性重合体からなる繊維(芯鞘型合成繊維を包含する)の編織物又は不織布であってもよい。例えば、図4において、有機繊維層3は、ポリプロピレンを芯材とし、ポリエチレンを鞘材とする芯鞘型コンジュゲート繊維から構成され、目付150g/m2のフエルト状シートからなり、熱可塑性シート7は、0.5mmの厚さを有する低密度ポリエチレンからなるシートから構成される。この場合、耐熱材料層2は、その質量の55%の、ガラス繊維織布及びガラス繊維不織布とを補強材として含み、耐熱材料層2のマトリックスとしては、例えばフェノール樹脂が用いられる。板状積層体の形成において、前記耐熱材料層2用ガラス繊維強化フェノール樹脂板の上に、前記有機繊維層3用芯鞘型コンジュゲート繊維製フエルトを重ね、その上に低密度ポリエチレンシートを重ね、低密度ポリエチレンシート側から150℃の温度、2Mpaの圧力下に、40分間の熱プレスを施す。すると、有機繊維層用フエルトの、耐熱材料層に対向する片側部分は、耐熱材料層中に取り込まれ、その低密度ポリエチレンシートと、フエルトの反対片側部分中の芯鞘型コンジュゲート繊維の鞘部(ポリエチレン)が溶融し、ポリプロピレン芯繊維を含むポリエチレンフィルム層が形成され、その上に低密度ポリエチレンシート層が溶融一体化する。得られる板状積層体の厚さは、2.5〜4.0mm、例えば3mmであることが好ましい。
【0026】
図1に示された構成を有する板状積層体において、例えば有機繊維層3を、ポリプロピレンを芯材として、ポリエチレンを鞘材として構成される芯鞘型コンジュゲート繊維から形成され、好ましくは目付:80〜350g/m2、例えば150g/m2を有するフエルトにより構成し、耐熱材料層をその質量の3%のポリビニルアルコール繊維(直径:20〜200μm、繊維長:5〜30mm、例えば直径:40μm、繊維長:12mm)を補強材として含み、マトリックスとして、セメントモルタルを含む耐熱セメント材料により構成してもよい。この場合、強化繊維含有セメントモルタル層上に、フエルトを重ね、これに押圧を施しながら、養生してセメントを硬化させる。このような板状積層体は好ましくは4〜10mm、例えば、5mmの厚さを有することが好ましい。
【0027】
本発明の板状積層体は、1〜104MPaの曲げ弾性率を有していることが好ましく、より好ましい曲げ弾性率は、1〜100MPaである。曲げ弾性率が1〜104MPaの範囲内にあるとき、当該板状積層体は、構造物の被覆すべき曲面に追随させて変形し、被覆固定することができる。曲げ弾性率が、1MPa未満であると、この板状積層体が、例えば構造物の凹曲面をなす天井に取りつけられたとき、板状積層体が、それに付加される重力により、垂れ下がり変形することがある。また、曲げ弾性率が1×104MPaを超えて高いときは、この板状積層体を、構造物の被覆すべき表面に沿って変形することが困難になることがあり、このような場合には、板状積層体の厚さを極度に薄くするか、或は多数の取り付け金具を用いて変形固定することが必要になり、被覆取り付けに要する費用及び手間が過大になることがある。
【0028】
本発明の板状積層体において、前記有機繊維層が、溶融可能な合成繊維に加えて、ガラス繊維、金属繊維(例えば、ステンレススチール繊維など)、炭素繊維及びスラグ繊維から選ばれた少なくとも1種からなる無機繊維を含んでいてもよい。有機繊維層中の無機繊維の、含有量については、必要に応じて適宜設定することができるが、有機繊維層の体積に対して、30〜70体積%の範囲内にあることが好ましい。前記無機繊維は、高い耐熱性又は難燃性を有し、それによって、有機繊維層の耐熱性、難燃性を高めることができるが、有機繊維層中の無機繊維の含有率が85質量%をこえると、相対的に有機繊維層中の有機繊維、特に溶融可能な合成繊維の含有率が低くなり、高周波誘導加熱による有機繊維層の溶融接着性が不十分になることがある。また、前記含有率が20質量%未満になると、無機繊維の使用による有機繊維層の耐熱性の向上効果が不十分になることがある。
【0029】
本発明の板状積層体において、有機繊維層は、耐熱材料層の一面の少なくとも一部分上に積層される。すなわち、耐熱材料層の一面の全面に有機繊維層が積層されていてもよく、或は耐熱材料層の一面の1個以上の領域部分上のみ、有機繊維層が積層され他の領域部分は、有機繊維層により被覆されることなく露出していてもよい。或は耐熱材料層の一面の1個以上の領域部分上のみに、有機繊維層が積層されていて、他の領域部分上には、ガラス繊維、金属繊維、金属線材、スラグ繊維及び炭素繊維から選ばれた少なくとも1種からなる無機繊維層が積層されていてもよい。この場合、有機及び無機樹脂層は、それぞれ、その前記耐熱材料層に対向している片側部分は、前記耐熱材料層中に取り込まれていて、有機及び無機繊維層の繊維間隙中に、耐熱材料層中のマトリックス成分が、侵入充填しており、それによって、耐熱材料層に、有機及び無機樹脂層が、一体に結合している。
【0030】
無機繊維層に含まれる無機繊維は、ガラス繊維、バサルト(玄武岩)繊維、金属繊維(例えばステンレススチール繊維など)、金属線材(例えば、太さ0.03〜0.10mmのステンレススチール線材又は硬鋼線材など)、スラグ繊維及び炭素繊維から選ばれた少なくとも1種からなるものである。無機繊維層は、無機系コンクリート用接着剤(樹脂入りポルトランドセメント、及び石こうボンドなど)により、構造物表面に、接着固定することができ、火炎などに対し、高い耐熱性及び難燃性を示すことができる。このため、火炎などにより、構造物表面と、有機繊維層との取り付け部材を介する溶融接着が失われた場合においても、無機繊維層と、構造物表面とのコンクリートボンドを介する接着が、維持され、構造物表面における板状積層体の固定を安定に維持することができる。すなわち、無機繊維層と構造物とを、無機系コンクリート用接着剤などにより接着したとき、無機繊維層の繊維間隙中に、接着剤が、浸入して充填し、無機繊維層と構造物とを強固に接合することができる。
【0031】
前記無機繊維層において、無機繊維は、編織物、不織布(フエルト状体を包含する)、ネット状体、線材の束状体などのいずれであってもよいが、無機繊維層と、耐熱材料層とを一体化するとき、無機繊維層の耐熱材料層に対向している片側部分が、耐熱材料層中に押し込まれ、耐熱材料が、無機繊維の間隙に浸入し、これを充填して、無機繊維層と、耐熱材料層とが一体に結合し得ることが必要である。
【0032】
図5は、本発明の板状積層体1を、コンクリート構造物のように、表面に多数の気孔9を含む多孔質構造物8に、溶融固定する場合、板状積層体1の有機樹脂層3と、構造物8の表面との中間に、高周波誘導発熱が可能な金属からなるメッシュシート11を配置し、板状積層体1を、構造物表面に押しつけながら、金属メッシュシートを、その1個以上の部分において高周波誘導発生させると、有機繊維層中の合成繊維の溶融可能な重合体が溶融し、メッシュシートの開口部を通って、構造物の表面部に分布している細孔に入り込み、それによって、板状積層体を、その1ヶ所以上の部分において、構造物表面に固定することができる。
【0033】
また、図6に示されているように、多孔質構造物8の被覆表面には、熱溶融可能な熱可塑性樹脂による熱可塑性樹脂塗料による塗膜12が形成されていてもよい。このようにして、有機繊維層3と、熱可塑性樹脂塗膜12との間に高周波誘導発熱する金属メッシュシート11を配置し、これらを押圧しながら金属メッシュシート11の所望の部分に、高周波誘導発熱を行わせることにより、有機繊維層中の合成繊維の溶融可能な重合体、及び、熱可塑性樹脂塗膜とを溶融し、これらを、金属メッシュシートの開口部を介して溶融接着させることにより、板状積層体を多孔質構造物8上に固定することができる。メッシュシートの開口率は、メッシュシートの全表面積に対し、25〜95%であることが好ましく、より好ましくは50〜85%である。
有機繊維層中の、溶融可能な重合体と、熱可塑性樹脂塗膜を構成する重合体とは、互に同種であってもよく、異種であってもよいが、異種の場合には、互に親和性を有するものであることが好ましい。
本発明の板状積層体において、前記有機繊維層中に、高周波誘導により発熱する無機繊維が添加されていると、前記金属メッシュシートが配置されていなくても、前記無機繊維を、高周波誘導発熱させることによって、金属メッシュシートを配置したときと同様の溶融固定を実現することができる。
【0034】
図7に示されている本発明の板状積層体と、構造物14との接着において、熱可塑性樹脂により表面被覆されている取りつけ金具14と、取りつけ金具固定用アンカー15が用いられる。
図7において、構造物表面の所定位置にアンカー15付き取りつけ金具14を、打ち込み、取りつけ金具14上に、高周波誘導発熱用金属メッシュシート11を介して、本発明の板状積層体1を配置する。図8に示されているように、板状積層体1を、取りつけ金具14に向って押圧しながら、メッシュシート11に高周波誘導発熱させる。すると、メッシュシート11は急速に発熱して、それに接している有機繊維層5中の溶融可能な重合体、及び取りつけ金具14を被覆している熱可塑性樹脂被覆層を溶融する。溶融した樹脂、重合体は、メッシュシート11の開口部を介して、互に接合結着し、高周波誘導発熱処理を中止すると、メッシュシート11は急速に冷却し、重合体/樹脂接着体も急速に冷却固化する。すると、板状積層体1は、構造物13に、取りつけ金具14及びアンカー15を介して、強固に固定することができる。取りつけ金具14と、板状積層体1とはメッシュシート11の開口部を通って、互に溶融接着した。有機繊維層3の溶融した重合体と、取りつけ金具14の被覆樹脂により、安定に接着されている。
図8において、板状積層体の有機繊維層の非接合部と、構造物13の非接合部との間の空隙には、必要により充填剤、又は接着剤16を充填してもよい。前記充填剤又は接着剤16は、セメントミルク、モルタルミルクなどの無機系材料、或は不飽和ポリエステル樹脂及びエポキシ樹脂などの有機系材料などから適宜に選択することができる。
【0035】
図7及び図8に示された、取りつけ金具14及びアンカー15の形状、寸法には格別の制限はなく、板状積層体及び構造物に応じて適宜に選択したものを用いればよい。
【0036】
構造物が土構造物17であって、その表面が斜面をなしている場合、例えば、図9に示されているように、土構造物17に、その斜面にほゞ直角をなすように、複数本の杭18を打ち込み、熱可塑性樹脂により表面被覆された取りつけ金具14を、アンカーボルト15により杭17の露出面に固定する。本発明の板状積層体1を、その有機繊維層(図示されていない)を、高周波誘導発熱可能な金属メッシュシート(図示されていない)を介して、取りつけ金具14の頭部に押しつけ、金属メッシュシートを高周波誘導発熱させて、図8の場合と同様にして、有機繊維層と、取りつけ金具頭部とを溶融接着して固定する。
【0037】
また、図10に示されているように構造物が土構造物17であって、その表面が斜面をなしている場合、この土構造物の斜面に、法面安定用プレート19を載置し、これを、グランドアンカー20により固定する。法面安定用プレート19上に、熱可塑性樹脂により被覆された取りつけ金具14を、アンカーボルト(図示されていない)により固定し、その上に、高周波誘導発熱する金属メッシュシート(図示されていない)を介して、板状積層体1を、その有機繊維層(図示されていない)が、取りつけ金具14の頭部に接するように配置して、押しつけ、金属メッシュシートを、高周波誘導発熱させて、図8の場合と同様にして、板状積層体を、取りつけ金具14を介して、法面安定用プレート19上に固定する。
【0038】
前記高周波誘導発熱には、市販の装置、例えばSMART CORPORATION社製、商標:EASY WELDER(周波数 20kHz、出力 500W)を用いることができる。
【0039】
図11−(A)及び(B)において、本発明の板状積層体1の耐熱材料層2の一面の1個以上の領域部分(図11においては1領域部分)上に、その幅方向に伸びる1個の有機繊維層3が形成されている。この板状積層体の有機繊維層により被覆されていない領域部分においては、耐熱材料層2が露出している。板状積層体1は、領域部分に形成されている有機繊維層3内の1以上の接合部(図示されていない)において、構造物(図示されていない)に接着固定される。
【0040】
図12−(A)及び(B)において、本発明の板状積層体1の耐熱材料層2の、その長手方向に平行に伸びる3個の縞状部に、有機繊維層3が形成されている。図12−(A),(B)において、3個の有機繊維層3が、耐熱材料層2の両側縁部と、中央部に形成されている例が示されているが、任意の領域部分に形成された1個以上の有機樹脂層3を有していてもよく、耐熱材料層2の有機繊維層3により被覆されていない領域部分は露出している。板状積層体1はその有機繊維層3が積層されている領域部分において、構造体に固定される。
【0041】
図13に示されている本発明の板状積層体1の1例において、耐熱材料層2中に、その長手方向及び幅方向のそれぞれに互に間隔をおいて離間した複数個の領域部分に有機繊維層3が積層固定されていて、この有機繊維層3の間に、耐熱材料層が格子状をなして露出している。
図13に示された板状積層体1は、その有機繊維層3が形成されている領域部分内において、構造物に接着固定される。
【0042】
図11〜13に示されている本発明の板状積層体の態様において、有機繊維層3は、他から離間した領域部分中に配置されている。本発明の板状積層体が構造物に接着固定されたとき、この固定部分が、例えば火災などにより加熱されると、固定部分の溶融可能な重合体は溶融するから、板状積層体は構造物から剥離することがある。このような場合、有機繊維層中の接着固定部分が、互に離間した領域部分内にあると、板状積層体の一部分が、火焔に接触しても、有機繊維層の延焼による板状積層体の剥離の続発を、防止乃至遅延させることが可能になる。
【0043】
図14において、構造物の凹形曲面に、図11−(A)及び(B)に例示した有機繊維層配置を有する板状積層体を、被覆固定した例が示されている。図14において、構造物の凹形曲面に、3極の板状積層体が、その有機繊維層3が積層されている領域部分において、取りつけ金具14及びアンカーボルト15を用いて、接着固定されている。この場合、図14には図示されていないが、有機繊維層3中の合成繊維の溶融可能な重合体、及び取りつけ金具14を被覆している熱可塑性樹脂とは、その中間に配置された金属メッシュシート(図示されていない)の高周波誘導発熱により加熱されて溶融し、メッシュシートの開口部を介して互に溶融接着している。図14において、3枚の板状積層体は、構造物の凹形曲面に沿って配置され、その互に対向する縁端部分は互に離間しており、この縁端部分は、無機接着剤21(例えば樹脂入りモルタル)により、構造物の凹形曲面に接着されている。板状積層体1の互に離間している縁端部の間隔は、無機充填材又は無機接着剤により充填されていてもよい。
また、板状積層体の耐熱材料層の露出表面と、構造物の表面との間の間隙は、必要により無機充填材又は無機接着剤(図示されていない)により充填されていない。
【0044】
図15−(A)及び(B)に示されている板状積層体1aにおいて、耐熱材料層2の長手方向に直角をなす幅方向に縞状をなす領域部分に有機繊維層3が形成され、その他の縞状領域部分に無機繊維層22が形成されている。
【0045】
図16−(A)及び(B)に示されている板状積層体1aにおいて、耐熱材料層2の長手方向に沿って、互に離間した3本の縞状に有機繊維層3が形成され、それらの間に2本の縞状に無機繊維層22が形成されている。
【0046】
図17に示された板状積層体1aにおいて、耐熱材料層の一面の、互に離間する複数個の領域部分に有機繊維層3が形成され、その他の領域部分に無機繊維層22が形成されている。図4,5において、無機繊維層22は、互に離間している複数の有機繊維層3の間に連続格子状に形成されている。有機繊維層3は、板状積層体を、構造物の所望表面に、強固に固定するに必要な領域部分に形成される。無機繊維層は、有機繊維層が形成されていない領域部分の全面に形成されていてもよいし、或はその一部分のみに形成されていてもよい。
【0047】
図18において、構造物の凹形曲面に、図15−(A),(B)に示されたように有機及び無機繊維層が配置されている板状積層体1a3枚を、被覆固定した例が示されている。板状積層体1aの中央部に有機繊維層3が形成され、その他の部分には無機繊維層22が形成されている。有機繊維層3の領域内において板状積層体1aは取りつけ金具14、アンカーボルト15及び金属メッシュシート(図示されていない)を介して、構造物13の凹形曲面に固定されている。その接合固定は、図14に示された板状積層体の有機繊維層3の場合と同様に行われる。相隣る板状積層体1aの縁端部は、無機接着剤21により結合され、かつ構造体曲面に接着されている。板状積層体1aの相隣る縁端部間の間隙は、無機充填材又は無機接着剤により充填されていてもよい。
また、無機繊維層と構造体の曲面とは、必要により、無機接着剤により全面的に、又はその一部において接着されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の構造物被覆用板状積層体及びその装着方法は、耐熱材料層に強固に接合一体化され、溶融可能な重合体を含む合成繊維を含む有機繊維層を利用して、これを高周波誘導発熱法により、構造物に容易、かつ短時間内に強固に被覆固定することができる。
従って、本発明の構造物被覆用板状積層体及びその装着方法は、構造物表面の耐熱、防水、遮水、防蝕、及び平滑化工事に、実用上有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の構造物被覆用板状積層体の一例の断面説明図。
【図2】本発明の構造物被覆用板状積層体の他の例の断面説明図。
【図3】本発明の構造物被覆用板状積層体の他の例の断面説明図。
【図4】本発明の構造物被覆用板状積層体の他の例の断面説明図。
【図5】本発明の構造物被覆用板状積層体を構造物に装着する本発明の装着方法の一例を示す断面説明図。
【図6】本発明の構造物被覆用板状積層体を構造物に装着する本発明の装着方法の他の例を示す断面説明図。
【図7】本発明の構造物被覆用板状積層体を構造物に装着する本発明の装着方法の他の例の材料配置を示す断面説明図。
【図8】本発明の構造物被覆用板状積層体を構造物に装着する本発明の装着方法の他の例による装着状態を示す断面説明図。
【図9】本発明の構造物被覆用積層体を土構造物に装着する本発明の装着方法の一例を示す断面説明図。
【図10】本発明の構造物被覆用積層体を土構造物に装着する本発明の装着方法の他の例を示す断面説明図。
【図11】図11−Aは本発明の構造物被覆用板状積層体の他の実施態様の一例を示す断面説明図であり、図11−Bは図11−Aの板状積層体の裏面説明図。
【図12】図12−Aは本発明の構造物被覆用板状積層体の他の実施態様の他の例を示す断面説明図であり、図12−Bは、図12−Aの板状積層体の裏面説明図。
【図13】本発明の構造物被覆用板状積層体の他の実施態様の他の例の裏面説明図。
【図14】本発明の構造物被覆用板状積層体の他の実施態様の一例を用いる本発明の装着方法を示す断面説明図。
【図15】図15−Aは、本発明の構造物被覆用板状積層体の他の実施態様の一例を示す断面説明図であり、図15−Bは図15−Aの板状積層体の裏面説明図。
【図16】図16−Aは本発明の構造物被覆用板状積層体の他の実施態様の他の例の断面説明図であり、図16−Bは、図16−Aの板状積層体の裏面説明図。
【図17】図17−Aは、本発明の構造物被覆用板状積層体の他の実施態様の他の例の裏面説明図。
【図18】本発明の構造物被覆用板状積層体を構造物の凹曲面上に装着する方法の一例を示す断面説明図。
【符号の説明】
【0050】
1,1a 構造物被覆用板状積層体
2 耐熱材料層
3 有機繊維層
3a 有機繊維層の、耐熱材料層中に取り込まれて一体化している部分
3b 有機繊維層の、耐熱材料層外にある部分
4 耐熱材料層と、有機繊維層の耐熱材料層外にある部分との境界面
5 合成繊維が互に融着しているか、或はフィルム状化している有機繊維層の耐熱材料層外にある部分
6 立体編織物構造を有する有機材料層
7 熱可塑性樹脂シート層
8 多孔質構造物
9 気孔
11 高周波誘導発熱する金属メッシュ
12 熱可塑性樹脂塗膜
13 構造物
14 熱可塑性樹脂により被覆された取付金具
15 取付金具固定用アンカー
16 充填材
17 土構造物
18 杭
19 法面安定用プレート
20 グランドアンカー
21 無機系接着剤
22 無機繊維層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、補強繊維含有耐熱熱可塑性樹脂、補強繊維含有熱硬化性樹脂、耐熱ゴム、補強繊維含有耐熱ゴム、補強繊維含有コンクリート、及び補強繊維含有ポリマーコンクリート、及び無機酸化物から選ばれた少なくとも1種を含む耐熱材料層と、
前記耐熱材料層の一面の少なくとも一部分上に積層され、かつ熱溶融可能な重合体を含む合成繊維を含む有機繊維層と
を含み、
前記有機繊維層の、前記耐熱材料層に対向している片側部分が、前記耐熱材料層中に取り込まれて、前記有機繊維層と前記耐熱材料層とが板状に一体化している
ことを特徴とする構造物被覆用板状積層体。
【請求項2】
前記耐熱材料層の表面が、前記無機酸化物により形成され、かつこの表面の初期視感反射率が65%以上である、請求項1に記載の構造物被覆用板状積層体。
【請求項3】
前記有機繊維層において、前記耐熱材料層中に取り込まれていない反対片側部分中の合成繊維の少なくとも一部分が溶融しており、それによって、前記合成繊維が互に融着するか、或はフィルム状化している、請求項1に記載の構造物被覆用板状積層体。
【請求項4】
前記有機繊維層に含まれる合成繊維の少なくとも一部分が、芯鞘構造を有するコンジュゲート繊維であって、その鞘部を構成する重合体が、その芯部を構成する重合体よりも低い溶融温度を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の構造物被覆用板状積層体。
【請求項5】
前記有機繊維層が、互に溶融温度の異なる2種以上の合成繊維を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の構造物被覆用板状積層体。
【請求項6】
前記有機繊維層の少なくとも一部分において、前記合成繊維が立体編織物中に含まれている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の構造物被覆用板状積層体。
【請求項7】
前記板状積層体の曲げ弾性率が1〜104MPaの範囲内にある、請求項1〜3のいずれか1項に記載の構造物被覆用板状積層体。
【請求項8】
前記有機繊維層が、前記溶融可能な合成繊維に加えて、ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維及びスラグ繊維から選ばれた少なくとも1種の無機繊維を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の構造物被覆用板状積層体。
【請求項9】
前記有機繊維層が、前記耐熱材料層の一面の一部分に積層され、前記耐熱材料層の一面の他の部分に、ガラス繊維、金属繊維、金属線材、スラグ繊維及び炭素繊維から選ばれた少なくとも1種の無機繊維からなる無機繊維層が積層され、前記有機及び無機繊維層の、前記耐熱材料層に対向している片側部分が、前記耐熱材料層に取り込まれていて、前記有機及び無機繊維層と、前記耐熱材料層とが板状に一体化されている、請求項1〜3及び8のいずれか1項に記載の構造物被覆用板状積層体。
【請求項10】
構造物の表面上に、請求項1〜8のいずれか1項に記載の構造物被覆用板状積層体を、その前記有機繊維層側が、前記構造物表面に対向するように載置し、このとき前記有機繊維層と、前記構造物の表面との間に、高周波誘導発熱性を有する金属からなるメッシュを介在させ、前記金属メッシュを高周波誘導発熱させて、前記有機繊維層を溶融し、前記構造物表面上に前記有機繊維層を溶融接着させる、構造物被覆用板状積層体の装着方法。
【請求項11】
構造物の表面上に、請求項9に記載の構造物被覆用板状積層体を、その前記有機繊維層及び無機繊維層が、前記構造物表面に対向するように載置し、前記無機繊維層と、これに対向する前記構造物表面とを、無機系接着剤により接着し、かつ、前記合成繊維含有繊維層と、それに対向する前記構造物表面との間に、高周波誘導発熱性を有する金属からなるメッシュを介在させ、前記金属メッシュを高周波誘導発熱させて、前記有機繊維層中の合成繊維を溶融し、前記構造物表面上に前記有機繊維層を溶融接着させる、構造物被覆用板状積層体の装着方法。
【請求項1】
耐熱熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、補強繊維含有耐熱熱可塑性樹脂、補強繊維含有熱硬化性樹脂、耐熱ゴム、補強繊維含有耐熱ゴム、補強繊維含有コンクリート、及び補強繊維含有ポリマーコンクリート、及び無機酸化物から選ばれた少なくとも1種を含む耐熱材料層と、
前記耐熱材料層の一面の少なくとも一部分上に積層され、かつ熱溶融可能な重合体を含む合成繊維を含む有機繊維層と
を含み、
前記有機繊維層の、前記耐熱材料層に対向している片側部分が、前記耐熱材料層中に取り込まれて、前記有機繊維層と前記耐熱材料層とが板状に一体化している
ことを特徴とする構造物被覆用板状積層体。
【請求項2】
前記耐熱材料層の表面が、前記無機酸化物により形成され、かつこの表面の初期視感反射率が65%以上である、請求項1に記載の構造物被覆用板状積層体。
【請求項3】
前記有機繊維層において、前記耐熱材料層中に取り込まれていない反対片側部分中の合成繊維の少なくとも一部分が溶融しており、それによって、前記合成繊維が互に融着するか、或はフィルム状化している、請求項1に記載の構造物被覆用板状積層体。
【請求項4】
前記有機繊維層に含まれる合成繊維の少なくとも一部分が、芯鞘構造を有するコンジュゲート繊維であって、その鞘部を構成する重合体が、その芯部を構成する重合体よりも低い溶融温度を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の構造物被覆用板状積層体。
【請求項5】
前記有機繊維層が、互に溶融温度の異なる2種以上の合成繊維を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の構造物被覆用板状積層体。
【請求項6】
前記有機繊維層の少なくとも一部分において、前記合成繊維が立体編織物中に含まれている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の構造物被覆用板状積層体。
【請求項7】
前記板状積層体の曲げ弾性率が1〜104MPaの範囲内にある、請求項1〜3のいずれか1項に記載の構造物被覆用板状積層体。
【請求項8】
前記有機繊維層が、前記溶融可能な合成繊維に加えて、ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維及びスラグ繊維から選ばれた少なくとも1種の無機繊維を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の構造物被覆用板状積層体。
【請求項9】
前記有機繊維層が、前記耐熱材料層の一面の一部分に積層され、前記耐熱材料層の一面の他の部分に、ガラス繊維、金属繊維、金属線材、スラグ繊維及び炭素繊維から選ばれた少なくとも1種の無機繊維からなる無機繊維層が積層され、前記有機及び無機繊維層の、前記耐熱材料層に対向している片側部分が、前記耐熱材料層に取り込まれていて、前記有機及び無機繊維層と、前記耐熱材料層とが板状に一体化されている、請求項1〜3及び8のいずれか1項に記載の構造物被覆用板状積層体。
【請求項10】
構造物の表面上に、請求項1〜8のいずれか1項に記載の構造物被覆用板状積層体を、その前記有機繊維層側が、前記構造物表面に対向するように載置し、このとき前記有機繊維層と、前記構造物の表面との間に、高周波誘導発熱性を有する金属からなるメッシュを介在させ、前記金属メッシュを高周波誘導発熱させて、前記有機繊維層を溶融し、前記構造物表面上に前記有機繊維層を溶融接着させる、構造物被覆用板状積層体の装着方法。
【請求項11】
構造物の表面上に、請求項9に記載の構造物被覆用板状積層体を、その前記有機繊維層及び無機繊維層が、前記構造物表面に対向するように載置し、前記無機繊維層と、これに対向する前記構造物表面とを、無機系接着剤により接着し、かつ、前記合成繊維含有繊維層と、それに対向する前記構造物表面との間に、高周波誘導発熱性を有する金属からなるメッシュを介在させ、前記金属メッシュを高周波誘導発熱させて、前記有機繊維層中の合成繊維を溶融し、前記構造物表面上に前記有機繊維層を溶融接着させる、構造物被覆用板状積層体の装着方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2007−270531(P2007−270531A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−98083(P2006−98083)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000107044)ショーボンド建設株式会社 (71)
【出願人】(000239862)平岡織染株式会社 (81)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000107044)ショーボンド建設株式会社 (71)
【出願人】(000239862)平岡織染株式会社 (81)
【Fターム(参考)】
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