説明

標本観察装置

【課題】超解像成分の視認性が高い超解像画像を高い時間分解能で生成する技術を提供する。
【解決手段】蛍光顕微鏡1は、光源2からの励起光の空間強度分布をスキャンマスク4で変調することによって、標本Sで生じる観察光の周波数成分のうち結像光学系3のカットオフ周波数fcを上回る高周波成分をカットオフ周波数fc以下の周波数にシフトさせて、結像光学系3により中間像位置に伝達する。そして、蛍光顕微鏡1は、スキャンマスク4で中間像の空間強度分布を変調することによって、カットオフ周波数fc以下の周波数にシフトした成分を元の高周波成分に復調して、撮像レンズ6により撮像面に伝達し、撮像素子7により超解像成分を含むデジタル画像データに変換する。さらに、蛍光顕微鏡1は、計算機8で高周波強調処理を実施してデジタル画像データの超解像成分を可視化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標本観察装置に関し、特に、光学系の解像限界を超える超解像の標本画像が得られる標本観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、結像光学系の解像限界を超える解像度(以降、超解像)の標本画像を得る技術が開発され、実用化されている。そのような超解像技術の一つとして、構造化照明法 (SIM:Structured Illumination Microscopy)と呼ばれる顕微鏡法が知られている。SIMについては、例えば、特許文献1で開示されている。
【0003】
一般的な広視野観察においては、照明光はできるかぎり均一に標本に照射されるが、SIMでは、照明光を変調し、主に縞模様の照明光を標本に照射する。これにより、結像に寄与する観察光の周波数をシフトさせることが可能であり、このような現象を利用することで、結像光学系の解像限界を超えた超解像の標本画像を生成することができる。
【0004】
以下、SIMにより超解像の標本画像を生成する方法について説明する。
図11A及び図11Bは、結像光学系の結像特性について説明するための図である。図11Aに例示されるように、顕微鏡等の標本観察装置に用いられる結像光学系による結像では、標本上の1点からの発光は、結像面上の1点に投影されず、結像光学系固有の関数である点像分布関数(Point Spread Function)で示される分布で投影される。即ち、図11Bに例示されるように、標本上の各点からの発光は、結像面上に、それぞれ点像分布関数で示される分布で投影されることになる。
【0005】
このため、蛍光標本を一様な励起光で照明する広視野観察で得られる標本画像の光強度分布IWF(x,y)は、標本の蛍光色素の分布関数をObj(x,y)とし、結像光学系の点像分布関数をPSF(x,y)とすると、以下の式(1)で表されるように、PSF(x,y)とObj(x,y)のコンボリューションで与えられる。なお、点像分布関数PSFの空間座標系と蛍光色素の分布関数Objの空間座標系は、結像光学系の倍率Mを用いて規格化されている。
【0006】
【数1】

【0007】
さらに、式(1)をフーリエ変換して周波数特性を示す式に変形すると、式(2)が導出される。なお、チルダ(~)は、それが付された関数がフーリエ変換された関数であることを示している。即ち、式(1)は標本画像の空間強度分布を示し、式(2)は標本画像の周波数特性を示している。
【0008】
【数2】

【0009】
図12Aは、蛍光色素の分布関数と結像光学系の点像分布関数それぞれの周波数特性について例示した図である。図12Bは、図12Aで示される特性を有する蛍光標本及び結像光学系により得られる標本画像の周波数特性を例示した図である。
【0010】
図12Aに例示されるように、蛍光色素の分布関数Objの周波数特性は広い周波数帯域に分布している。これに対して、点像分布関数PSFの周波数特性は周波数±fcまでの範囲内でしか強度を持たない。これは結像光学系が周波数±fcまでの範囲内の周波数成分しか結像面へ伝達できないことを示している。従って、点像分布関数PSFの周波数特性はまた、結像光学系の伝達関数とも呼ばれる。以降、周波数fcを、結像光学系のカットオフ周波数と記す。
【0011】
従って、式(2)を用いて算出される標本画像の光強度分布IWFの周波数特性は、図12Bに例示されるように、カットオフ周波数±fcまでの周波数範囲内に制限されることになる。このように、標本面を一様に照明する従来の広視野観察では、結像光学系のカットオフ周波数により標本画像の解像度が制限され、結像光学系の解像限界以上の解像度を有する標本画像を生成できない。
【0012】
これに対して、SIMでは、例えば、以下の式(3)で示される正弦波状のパターンで標本面を照明する。ここで、Illi(x)は標本面での照明光の光強度分布、f0は照明パターンの周波数、φiはx=0の原点における照明パターンの位相である。なお、以降では、説明を簡素化するため、1次元モデルを例に説明する。
【0013】
【数3】

【0014】
式(3)をフーリエ変換して周波数特性を示す式に変形すると、式(4)が導出される。
【0015】
【数4】

【0016】
照明光の光強度分布を考慮した一般化された結像面上での標本画像の光強度分布Ii(x)は、式(5)で示され、式(5)をフーリエ変換して周波数特性を示す式に変形すると、式(6)が導出される。
【0017】
【数5】

【0018】
従って、SIMで得られる結像面上での光強度分布Iiは、式(7)で示される。ここで、P0、P+、P-は、それぞれ、結像面上での光強度分布の0次回折光成分、+1次回折光成分、−1次回折光成分を示している。
【0019】
【数6】

【0020】
式(7)で示されるように、正弦波状のパターンで標本面を照明することで、結像面上での標本画像の光強度分布Iiには、0次回折光成分に加えて、±1次回折光成分が含まれることになる。
【0021】
図13Aは、正弦波状の照明パターンにより生じる標本面上での各次数の回折光成分と結像光学系の点像分布関数それぞれの周波数特性について例示した図である。図13Bは、結像面上での各次数の回折光成分の周波数特性を例示した図である。
【0022】
図13Aで例示されるように、標本面上での+1次回折光成分の周波数特性と−1次回折光成分の周波数特性は、標本面上での0次回折光成分の周波数特性に対して、それぞれ照明パターンの周波数f0、-f0だけシフトして分布している。しかしながら、結像面上での光強度分布の周波数特性は、式(7)で示されるように、標本面上での各次数の回折光成分の周波数特性と結像光学系のPSFの周波数特性の積の総和であるため、標本画像の光強度分布の周波数特性は、図13Bに例示されるように、均一に照明した場合と同様に、結像光学系のカットオフ周波数±fcまでの範囲内の周波数帯域に制限される。
【0023】
そこで、SIMでは、図13Bで例示される結像面上での各次数の回折光成分を個別に算出し、それらを用いて、カットオフ周波数fcを超える周波数を含む超解像画像を生成する。なお、以降では、SIMにより得られる超解像画像を特にSIM回復画像と記す。
【0024】
具体的には、まず、初期位相φiの異なる状態で撮像した複数の標本画像を用いて、結像面上での各次数の回折光成分P0、P+、P-を変数とする連立一次方程式を解くことにより、結像面上での各次数の回折光成分を算出する。
【0025】
次に、算出された結像面上での各次数の回折光成分P0、P+、P-のうち±1次回折光成分P+、P-について、0次回折光成分に対する周波数のシフト(以降、原点シフトと記す)を修正する。具体的には、式(8)及ぶ式(9)で示されるように、周波数-f0、f0だけシフトさせる。図14は、原点シフト後の各次数の回折光成分を例示した図である。ここで、P’+、P’-は、原点シフト後の結像面での光強度分布の±1次回折光成分を示している。
【0026】
【数7】

【0027】
その上で、算出された0次回折光成分と原点シフト後の±1次回折光成分に重みwを掛けたものとを足し合わせて、画像処理によりSIM回復画像を生成する。
式(10)は、SIM回復画像の周波数特性を示している。ここで、ISIMは、SIM回復画像の強度分布を、PSFSIMは、SIM回復画像の点像分布関数を示している。
【0028】
【数8】

【0029】
図15に例示されるように、SIM回復画像の点像分布関数PSFSIMの周波数特性は、結像光学系のカットオフ周波数fcに照明パターンの周波数f0を加えた周波数帯域±(fc+f0)の範囲まで強度を持っている。即ち、SIM回復画像のカットオフ周波数はfc+f0であり、結像光学系のカットオフ周波数fcを超える周波数帯域を伝達することができる。
【0030】
このように、SIMによれば、結像光学系のカットオフ周波数を超える周波数帯域を伝達することが可能であり、結像光学系の解像限界を超えた超解像の標本画像を生成することができる。また、重みwを変更することで、結像光学系のカットオフ周波数を超える超解像成分の視認性を調整することができる。
また、特許文献2には、構造化照明を生成する空間変調素子を中間像位置に配置し、標本の中間像をその空間変調素子を通して復調し撮像する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【特許文献1】国際公開2007/043382号パンフレット
【特許文献2】国際公開2007/043314号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
上述したように、SIMにより超解像画像(SIM回復画像)を生成するためには、照明パターンの初期位相φiの異なる状態で複数回、標本を撮像する必要がある。原理的には、連立方程式を解くために、少なくとも3枚の画像(以降、原画像と記す。)が必要である。実際には、投影縞の方位の影響やノイズ等による劣化を抑制するために、照明によって生じる投影縞の方位及び位置を変えて、9枚から25枚程度の原画像を取得する必要がある。
【0033】
従って、SIMは、比較的速く動く標本の画像化には不向きである。原画像を取得する間に標本の状態が変化してしまうからである。また、9枚から25枚程度の原画像を取得して原画像の各々に対してフーリエ変換及び逆フーリエ変換を行う必要がある。このため、画像取得に加えて計算にも時間がかかるため、1枚の超解像画像の生成に要する時間が長くなる。
【0034】
従って、SIMでは、標本をリアルタイムで観察することができず、標本中の観察対象部位を特定する作業などを行いにくい。
以上のような実情を踏まえ、本発明では、超解像画像を高い時間分解能で生成する技術を提供することを課題とする。
また、構造化照明を生成する空間変調素子を用いて中間像を復調する特許文献2の方法においては、後述の通り超解像成分がほとんど視認されない。
従って、本発明では、超解像成分の視認性が高い超解像画像を生成する技術を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0035】
本発明の第1の態様は、標本を励起するための励起光を生成する励起光生成手段と、励起光を標本に投影すると共に、標本に励起光が照射されて生じた観察光から標本の中間像を中間像位置に形成する中間像形成手段と、中間像位置で励起光および中間像の空間強度分布を変調する共焦点変調手段と、共焦点変調手段が有する変調パターンを中間像に対して相対的に移動させる変調駆動手段と、空間強度分布が変調された中間像を撮像面上にリレーする像リレー手段と、撮像面上にリレーされた中間像の空間強度分布をデジタル画像データに変換する撮像手段と、デジタル画像データに対して画像処理を行う画像処理手段と、を含み、像リレー手段のカットオフ周波数は、中間像形成手段のカットオフ周波数を上回り、撮像手段のナイキスト周波数は、中間像形成手段のカットオフ周波数を上回り、画像処理手段は、デジタル画像データに対して、中間像形成手段のカットオフ周波数を上回る高周波成分を強調する高周波強調処理を行う標本観察装置を提供する。
【0036】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の標本観察装置において、変調パターンは、周期的なパターンであり、撮像素子による1枚の画像取得の露出時間が、変調パターンが中間像に対して変調パターンの1周期分移動する時間以上である標本観察装置を提供する。
【0037】
本発明の第3の態様は、第1の態様に記載の標本観察装置において、変調パターンは、周期的なパターンであり、撮像素子による1枚の画像取得の露出時間が、変調パターンが中間像に対して変調パターンの1周期分移動する時間の整数倍である標本観察装置を提供する。
【0038】
本発明の第4の態様は、第2の態様または第3の態様に記載の標本観察装置において、変調駆動手段が、撮像素子による1枚の画像取得の露出時間に応じて、変調パターンの移動速度を調節する標本観察装置を提供する。
【0039】
本発明の第5の態様は、第1の態様乃至第4の態様のいずれか1つに記載の標本観察装置において、像リレー手段のカットオフ周波数が、中間像形成手段のカットオフ周波数の約1.5倍以上である標本観察装置を提供する。
【0040】
本発明の第6の態様は、第1の態様乃至第5の態様のいずれか1つに記載の標本観察装置において、撮像手段のナイキスト周波数が、中間像形成手段のカットオフ周波数の約1.5倍以上である標本観察装置を提供する。
【0041】
本発明の第7の態様は、第6の態様に記載の標本観察装置において、撮像手段のナイキスト周波数が、中間像形成手段のカットオフ周波数の約4倍以下である標本観察装置を提供する。
【0042】
本発明の第8の態様は、第1の態様乃至第7の態様のいずれか1つに記載の標本観察装置において、共焦点変調手段は、周期的に配列されたスリット状の開口を有するマスクである標本観察装置を提供する。
【0043】
本発明の第9の態様は、第8の態様に記載の標本観察装置において、スリット状の開口の幅は、中間像形成手段のカットオフ周波数により規定される周期の半分以上である標本観察装置を提供する。
【0044】
本発明の第10の態様は、第8の態様に記載の標本観察装置において、周期的に配列されたスリット状の開口の周期は、中間像形成手段のカットオフ周波数により規定される周期よりも長い標本観察装置を提供する。
【0045】
本発明の第11の態様は、第10の態様に記載の標本観察装置において、スリット状の開口の周期は、スリット状の開口の幅の10倍以上である標本観察装置を提供する。
本発明の第12の態様は、第8の態様乃至第11の態様のいずれか1つに記載の標本観察装置において、さらに、励起光生成手段と共焦点変調手段の間に、スリット状の開口に集光位置を一致させたシリンドリカルレンズアレイを含み、変調駆動手段は、シリンドリカルレンズアレイとマスクを、シリンドリカルレンズアレイとマスクの相対的な位置関係を変えずに、移動させる標本観察装置を提供する。
【0046】
本発明の第13の態様は、第8の態様乃至第12の態様のいずれか1つに記載の標本観察装置において、マスクは、位相シフト膜を含む標本観察装置を提供する。
本発明の第14の態様は、第1の態様乃至第10の態様のいずれか1つに記載の標本観察装置において、さらに、標本を励起光で輪帯照明する輪帯照明手段を含み、輪帯照明手段は、中間像形成手段に含まれる対物レンズの瞳位置と共役な位置近傍に配置される標本観察装置を提供する。
【0047】
本発明の第15の態様は、第14の態様に記載の標本観察装置において、さらに、標本と中間像形成手段の間に、標本の周りの媒質の屈折率より高い屈折率を有する透明物体を含み、輪帯照明手段は、標本と透明物体との界面に入射した励起光の90パーセント以上が全反射するような角度で励起光が界面に入射するように、励起光の一部を遮断する標本観察装置を提供する。
【0048】
本発明の第16の態様は、第1の態様乃至第8の態様のいずれか1つに記載の標本観察装置において、共焦点変調手段は、周期的に配列されたピンホール状の開口を有するマスクである標本観察装置を提供する。
【0049】
本発明の第17の態様は、第16の態様に記載の標本観察装置において、ピンホール状の開口の径は、中間像形成手段のカットオフ周波数により規定される周期の半分以上である標本観察装置を提供する。
【0050】
本発明の第18の態様は、第16の態様に記載の標本観察装置において、周期的に配列されたピンホール状の開口の周期は、中間像形成手段のカットオフ周波数により規定される周期よりも長い標本観察装置を提供する。
【0051】
本発明の第19の態様は、第18の態様に記載の標本観察装置において、ピンホール状の開口の周期は、ピンホール状の開口の径の3倍以上である標本観察装置を提供する。
本発明の第20の態様は、第16の態様乃至第19の態様のいずれか1つに記載の標本観察装置において、さらに、励起光生成手段と共焦点変調手段の間に、ピンホール状の開口に集光位置を一致させたマイクロレンズアレイを含み、変調駆動手段は、マイクロレンズアレイとマスクを、マイクロレンズアレイとマスクの相対的な位置関係を変えずに、移動させる標本観察装置を提供する。
【0052】
本発明の第21の態様は、第16の態様乃至第18の態様のいずれか1つに記載の標本観察装置において、さらに、標本を励起光で輪帯照明する輪帯照明手段を含み、輪帯照明手段は、中間像形成手段に含まれる対物レンズの瞳位置と共役な位置近傍に配置される標本観察装置を提供する。
【0053】
本発明の第22の態様は、第21の態様に記載の標本観察装置において、さらに、標本と中間像形成手段の間に、標本の周りの媒質の屈折率より高い屈折率を有する透明物体を含み、輪帯照明手段は、標本と透明物体との界面に入射した励起光の90パーセント以上が全反射するような角度で励起光が界面に入射するように、励起光の一部を遮断する標本観察装置を提供する。
【0054】
本発明の第23の態様は、第1の態様乃至第22の態様のいずれか1つに記載の標本観察装置において、共焦点変調手段は、周期的なパターンを有する回転ディスクであり、変調駆動手段は、回転ディスクを回転させるモータである標本観察装置を提供する。
【0055】
本発明の第24の態様は、第1の態様乃至第22の態様のいずれか1つに記載の標本観察装置において、共焦点変調手段は、周期的なパターンを有するプレートであり、変調駆動手段は、プレートを振動させる振動子である標本観察装置を提供する。
【0056】
本発明の第25の態様は、第1の態様乃至第22の態様のいずれか1つに記載の標本観察装置において、共焦点変調手段は、周期的なパターンを有する回転ドラムであり、変調駆動手段は、ドラムを回転させるモータである標本観察装置を提供する。
【0057】
本発明の第26の態様は、第1の態様乃至第25の態様のいずれか1つに記載の標本観察装置において、変調パターンの異なる複数の共焦点変調手段を含み、複数の共焦点変調手段から任意の共焦点変調手段を選択して光路上に挿入する標本観察装置を提供する。
【0058】
本発明の第27の態様は、第1の態様乃至第22の態様のいずれか1つに記載の標本観察装置において、共焦点変調手段は、空間光変調器であり、変調駆動手段は、空間光変調器を駆動する駆動回路である標本観察装置を提供する。
【0059】
本発明の第28の態様は、第27の態様に記載の標本観察装置において、空間光変調器は、DMDである標本観察装置を提供する。
本発明の第29の態様は、第27の態様に記載の標本観察装置において、空間光変調器は、LCOSである標本観察装置を提供する。
【0060】
本発明の第30の態様は、第1の態様乃至第29の態様のいずれか1つに記載の標本観察装置において、中間像形成手段は、投影倍率が可変である標本観察装置を提供する。
本発明の第31の態様は、第1の態様乃至第30の態様のいずれか1つに記載の標本観察装置において、像リレー手段は、リレー倍率が可変である標本観察装置を提供する。
【0061】
本発明の第32の態様は、第1の態様乃至第31の態様のいずれか1つに記載の標本観察装置において、高周波強調処理は、デジタル画像データ自体から、デジタル画像データにローパスフィルタを作用させた擬似広視野画像を差し引く処理である標本観察装置を提供する。
【0062】
本発明の第33の態様は、第32の態様に記載の標本観察装置において、擬似広視野画像は、核行列を用いたコンボリューション処理により生成される標本観察装置を提供する。
【0063】
本発明の第34の態様は、第32の態様に記載の標本観察装置において、高周波強調処理は、核行列を用いたコンボリューション処理である標本観察装置を提供する。
本発明の第35の態様は、第33の態様または第34の態様に記載の標本観察装置において、コンボリューション処理は、GPUを用いて行われる標本観察装置を提供する。
【0064】
本発明の第36の態様は、第33の態様または第34の態様に記載の標本観察装置において、コンボリューション処理は、FPDAを用いて行われる標本観察装置を提供する。
本発明の第37の態様は、第1の態様乃至第31の態様のいずれか1つに記載の標本観察装置において、高周波強調処理は、デジタル画像データから、共焦点変調手段を作用させずに撮像した標本の広視野画像を差し引く処理である標本観察装置を提供する。
【発明の効果】
【0065】
本発明によれば、超解像成分の視認性が高い超解像画像を、高い時間分解能で生成する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の各実施例に係る標本撮像装置の基本構成を例示した図である。
【図2A】図1に例示される標本撮像装置に含まれる共焦点変調手段による変調後の中間像の点像分布関数の周波数特性を例示した図である。
【図2B】図1に例示される標本撮像装置に含まれる画像処理手段による高周波強調処理について説明するための図である。
【図3A】図1に例示される標本撮像装置に含まれる共焦点変調手段の変調パターンの構成を例示した図である。
【図3B】図3Aに例示される変調パターンの周波数特性を例示した図である。
【図3C】図3Aに例示される変調パターンの周波数特性と結像光学系の点像分布関数の周波数特性の関係を例示した図である。
【図4A】図1に例示される標本撮像装置に含まれる共焦点変調手段の変調パターンの他の構成を例示した図である。
【図4B】図4Aに例示される変調パターンの周波数特性とコヒーレント照明に対する結像光学系の伝達関数を例示した図である。
【図5】図1に例示される標本撮像装置に含まれる共焦点変調手段の変調パターンのさらに他の構成を例示した図である。
【図6A】実施例1に係る蛍光顕微鏡の構成を例示した図である。
【図6B】図6Aに例示される蛍光顕微鏡に含まれるマスクのマスクパターンについて説明するための図である。
【図6C】図6Bに例示されるマスクのマスクパターンの詳細について説明するための図である。
【図7】図6Aに例示される蛍光顕微鏡に含まれるマスクのマスクパターンの変形例について説明するための図である。
【図8A】実施例2に係る全反射蛍光顕微鏡の構成を例示した図である。
【図8B】図8Aに例示される全反射蛍光顕微鏡に含まれる同心円ダイクロイックフィルタの構成について説明するための図である。
【図9A】実施例3に係る蛍光顕微鏡の構成を例示した図である。
【図9B】図9Aに例示される蛍光顕微鏡に含まれる共焦点マスクのマスクパターンについて説明するための図である。
【図10A】実施例4に係る蛍光顕微鏡の構成を例示した図である
【図10B】図10Aに例示される蛍光顕微鏡に含まれるマスクのマスクパターンについて説明するための図である。
【図11A】結像光学系の結像特性について説明するための図である。
【図11B】結像光学系の結像特性について説明するための図である。
【図12A】蛍光色素の分布関数と点像分布関数の周波数特性について例示した図である。
【図12B】図12Aで示される特性を有する蛍光標本及び結像光学系により得られる標本画像の周波数特性を例示した図である。
【図13A】正弦波状の照明パターンにより生じる標本面上での各次数の回折光成分と点像分布関数の周波数特性について例示した図である。
【図13B】正弦波状の照明パターンにより生じる結像面上での各次数の回折光成分の周波数特性を例示した図である。
【図14】原点シフト後の各次数の回折光成分の周波数特性を例示した図である
【図15】SIM回復画像の点像分布関数の周波数特性を例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
図1は、本発明の各実施例に係る標本撮像装置の基本構成を例示した図である。まず、図1を参照しながら、本発明の各実施例に係る標本撮像装置の基本構成について説明する。
【0068】
図1に例示される標本観察装置は、蛍光標本である標本Sを観察するための蛍光顕微鏡1である。蛍光顕微鏡1は、標本Sを励起するための励起光を生成する励起光生成手段である光源2と、励起光を標本Sに投影すると共に、標本Sに励起光が照射されて生じた観察光から標本Sの中間像を中間像位置に形成する中間像形成手段である結像光学系3と、中間像位置で励起光および中間像の空間強度分布を変調する共焦点変調手段であるスキャンマスク4と、スキャンマスク4が有する変調パターンを中間像に対して相対的に移動させる変調駆動手段であるモータ5と、その空間強度分布が変調された中間像を撮像面上にリレーする像リレー手段である撮像レンズ6と、撮像面上にリレーされた中間像の空間強度分布をデジタル画像データに変換する撮像手段である撮像素子7と、デジタル画像データに対して画像処理を行う画像処理手段である計算機8と、を含んでいる。
【0069】
結像光学系3は、対物レンズOBと結像レンズTLを含んでいる。スキャンマスク4は、モータ5により回転する回転ディスクとして形成されている。計算機8は、内部にGPU8aまたはFPGA8bを含んでいる。照明光路と観察光路が交差する位置には、ハーフミラーHMが配置されている。光源2とハーフミラーHMの間には、照明レンズ9が配置されている。なお、結像光学系3と撮像レンズ6は、それぞれ投影倍率、リレー倍率が可変であってもよい。
【0070】
スキャンマスク4が有する変調パターンは、周期的なパターンである。スキャンマスク4がモータ5の駆動により回転することで、スキャンマスク4が有する変調パターンは、中間像位置に対して相対的に移動する。
【0071】
撮像レンズ6のカットオフ周波数は、結像光学系3のカットオフ周波数fcを上回り、撮像素子7のナイキスト周波数は、結像光学系3のカットオフ周波数fcを上回っている。なお、本明細書における結像光学系3のカットオフ周波数、撮像レンズ6のカットオフ周波数、撮像素子7のナイキスト周波数の比較は、標本Sの中間像位置への投影倍率と標本Sの撮像面への投影倍率を考慮して規格化された周波数により行われる点に留意する。
【0072】
計算機8は、撮像素子7で取得されるデジタル画像データに対して、結像光学系3のカットオフ周波数fcを上回る高周波成分を強調する処理(以降、高周波強調処理と記す。)を行うように構成されている。
【0073】
このように構成された蛍光顕微鏡1によれば、撮像素子7で取得されるデジタル画像データ(以降、原画像と記す。)に超解像成分を記録することができる。これは、共焦点変調手段であるスキャンマスク4が、回転により変調パターンを時々刻々と変化させながら、励起光の空間強度分布を変調することに加えて、標本Sから生じる観察光(中間像)の空間強度分布を復調することによって実現される。
【0074】
具体的には、まず、スキャンマスク4が励起光の空間強度分布を変調することによって、広視野観察において標本Sで生じる観察光の周波数成分のうち結像光学系3のカットオフ周波数fcを上回る高周波成分の一部が、カットオフ周波数fc以下の周波数にシフトして、結像光学系3により中間像位置に伝達される。その後、スキャンマスク4が中間像の空間強度分布を復調することにより、カットオフ周波数fc以下の周波数にシフトした成分が元の高周波成分に復元されて、撮像レンズ6により撮像面に伝達されて、撮像素子7によりデジタル画像データに変換される。このため、超解像成分を原画像に記録することができる。
【0075】
また、蛍光顕微鏡1によれば、計算機8で高周波強調処理を実施して原画像の超解像成分を強調することにより、広視野観察ではデジタル画像データに反映されることのなかった超解像成分が可視化された超解像画像を生成することができる。
【0076】
なお、蛍光顕微鏡1では、超解像画像を生成するために、撮像素子7で複数枚の原画像を取得する必要はない。また、後述するように、計算機8で行われる高周波強調処理は、要求される計算量が少ないため、高速な画像処理が可能である。
【0077】
従って、蛍光顕微鏡1は、超解像画像を高い時間分解能で生成することができる。このため、標本をリアルタイムで観察することができる。また、比較的速く動く標本を観察する場合であっても、画質が劣化することないため、好適である。
【0078】
原画像に超解像成分を記録することができることについて、数式を用いて、詳細に説明する。
まず、スキャンマスク4が、周期的パターンを形成し得る式(11)で示される透過率分布Mを有する場合を考える。ここで、fn = n/pは変調パターンの固有周波数であり、pは変調パターンのピッチであり、nは周波数展開の次数であり、x0は変調パターンの原点座標である。
【0079】
【数9】

【0080】
スキャンマスク4の標本面への投影により、照明縞の各周波数成分がcn倍に減衰すると仮定すると、標本面上での照明光の光強度分布Illは、式(12)で示され、式(12)をフーリエ変換して周波数特性を示す式に変形すると、式(13)が導出される。なお、ここで、インコヒーレント照明では、おおよそ

の関係が成り立つ。
【0081】
【数10】

【0082】
従って、結像光学系3により形成される中間像の光強度分布Iは、式(6)と式(13)を用いて、式(14)のように導出される。
【0083】
【数11】

【0084】
さらに、スキャンマスク4を通過したスキャンマスク4による変調後の中間像の光強度分布I’は、変調前の中間像の光強度分布Iとスキャンマスク4の透過率分布Mの積で表されるので、以下の式(15)で示される。
【0085】
【数12】

【0086】
撮像素子による1枚の画像取得のための露出時間の間に、スキャンマスク4が有する変調パターンが中間像に対して変調パターンの1周期pだけ移動すると、その期間に得られる変調後の中間像の光強度分布IIntは、式(15)を1周期pで積分することで算出される。
【0087】
積分すると、

、つまりn = -n'の関係を満たす成分のみが残るため、変調後の中間像の光強度分布IIntは、式(16)で示され、式(16)をフーリエ変換して周波数特性を示す式に変形すると、式(17)が導出される。
【0088】
【数13】

【0089】
式(17)に示されるように、変調後の中間像の光強度分布IIntは、蛍光色素の分布関数Objを有する標本Sを、点像分布関数PSFIntを有する仮想的な光学系を用いて、結像した場合に得られる光強度分布としてみなすことができる。即ち、変調後の中間像の点像分布関数は、点像分布関数PSFIntである。
【0090】
図2Aは、共焦点変調手段による変調後の中間像の点像分布関数を例示した図である。
図2Aに例示されるように、変調後の中間像の点像分布関数PSFIntを構成する各成分

の周波数は、それぞれ結像光学系の点像分布関数PSFの周波数に対して周波数fnだけシフトして分布している。このため、各成分の総和である点像分布関数PSFIntは、結像光学系の点像分布関数PSFより広い周波数帯域を有すことになる。従って、変調後の中間像のカットオフ周波数は、結像光学系のカットオフ周波数fcよりも高くなる。このため、蛍光顕微鏡1によれば、原画像に結像光学系のカットオフ周波数fcを超える周波数の超解像成分を記録することができる。
【0091】
なお、スキャンマスク4による変調後の中間像は、さらに、撮像レンズ6により撮像面にリレーされて撮像素子7により撮像される。このため、原画像が超解像成分を有するか否かは、実際には、撮像レンズ6のカットオフ周波数と撮像素子7のナイキスト周波数が関係する。
【0092】
蛍光顕微鏡1では、上述したように、撮像レンズ6のカットオフ周波数及び撮像素子7のナイキスト周波数が結像光学系3のカットオフ周波数fcを上回っている。このため、撮像レンズ6及び撮像素子7はカットオフ周波数fcを上回る超解像成分を伝達することが可能であり、原画像に結像光学系のカットオフ周波数fcを超える周波数の超解像成分を記録することができる。
【0093】
撮像レンズ6のカットオフ周波数は、結像光学系3のカットオフ周波数fcの約1.5倍以上であることが望ましい。これにより、撮像面上に結像光学系のカットオフ周波数fcの約1.5倍以上の周波数の超解像成分を結像することができるからである。また、撮像素子7のナイキスト周波数は、結像光学系3のカットオフ周波数fcの約1.5倍以上であることが望ましい。これにより、原画像に結像光学系3のカットオフ周波数fcの約1.5倍以上の周波数の超解像成分を記録することができるからである。さらに、撮像素子7のナイキスト周波数は、結像光学系3のカットオフ周波数fcの約4倍以下であることがより望ましい。ナイキスト周波数を大きくすると画素サイズが低下するため、一般に、光量損失やノイズが大きくなる。超解像成分の上限周波数は理論上カットオフ周波数fcの2倍であるので、ナイキスト周波数をその2倍(計4倍)以下にすることで、無駄な光量損失やノイズを抑えることができるからである。
【0094】
また、以上では、撮像素子による1枚の画像取得のための露出時間が、変調パターンが中間像に対して1周期pだけ移動する時間である場合を例示したが、特にこれに限られない。撮像素子による1枚の画像取得のための露出時間が、変調パターンが中間像に対して1周期p以上移動する時間であれば、原画像において変調パターンの透過率分布に起因する明るさムラが目立たなくなる。また、撮像素子による1枚の画像取得のための露出時間が、変調パターンが中間像に対して1周期p移動する時間の整数倍であれば、原画像において変調パターンの透過率分布に起因する明るさムラを完全に排除できる。また、変調駆動手段であるモータ5は、露出時間をある程度自由に設定することを可能とするために、撮像素子7による1枚の画像取得のための露出時間に応じて、変調パターンの移動速度を調整してもよい。
【0095】
次に、原画像から超解像成分が可視化し得る超解像画像を生成する方法について、詳細に説明する。以降では、説明を簡略化するため、スキャンマスク4による変調後の中間像の点像分布関数PSFIntを原画像の点像分布関数とみなして説明する。
【0096】
上述したように、蛍光顕微鏡1によれば、原画像に結像光学系のカットオフ周波数fcを超える周波数の超解像成分を記録することができる。つまり、蛍光顕微鏡1では、SIMにおいて画像処理として行われる各回折光成分を算出して原点シフトを行う復調処理が、蛍光顕微鏡1の光学系により自動的に行われる。しかしながら、原画像の点像分布関数は、図2Aに例示されるように、結像光学系のカットオフ周波数fcよりも高い周波数を弱いコントラストでしか伝達できない。従って、そのままでは原画像に記録される超解像成分を十分に視認することができない。
【0097】
そこで、蛍光顕微鏡1では、計算機8により高周波強調処理を行う。具体的には、図2Bに例示されるように、結像光学系のカットオフ周波数fcを上回る高周波成分を低周波成分に対して相対的に強調する。これにより、超解像成分を可視化し得る超解像画像を生成することができる。
【0098】
高周波強調処理の具体例について説明する。
以下の行列A,Bは、それぞれ3x3、5x5のシャープフィルタを例示している。
【0099】
【数14】

【0100】
高周波成分を強調するシャープフィルタは、画像処理の分野において、広く一般的に用いられているものである。高周波強調処理は、行列A,Bで示されるようなシャープフィルタを核行列として用いたコンボリューション処理であってもよい。
【0101】
以下の行列Cは、3x3のローパスフィルタを例示している。
【数15】

【0102】
原画像から低周波画像を差し引くことによっても、相対的に高周波成分が強調される。このため、高周波強調処理は、原画像から、原画像に行列Cで示されるようなローパスフィルタを作用させた画像(以降、擬似広視野画像)を差し引く処理であってもよい。また、擬似広視野画像は、ローパスフィルタを核行列として用いたコンボリューション処理により生成されてもよい。また、擬似広視野画像を生成して原画像から差し引く処理を、所定の核行列を用いた1回のコンボリューション処理として実施してもよい。
【0103】
なお、上記のコンボリューション処理は、高速に処理するために、計算機8に含まれるGPU8aまたはFPGA8bを用いて行われることが望ましい。これにより、超解像画像をリアルタイムでモニタ等に表示することが可能となる。
【0104】
また、高周波強調処理は、擬似広視野画像の代わりに、広視野画像を原画像から差し引く処理であってもよい。広視野画像は、スキャンマスク4による変調を励起光と観察光のいずれに対しても行うことなく取得された画像、即ち、スキャンマスク4を作用させずに撮像した画像であり、結像光学系3のカットオフ周波数fc以上の周波数の情報は、広視野画像には含まれない。このため、広視野画像に適当な係数を乗じて原画像から差し引くことにより、相対的に高周波成分を強調することができる。さらに、デフォーカス成分が減衰するように係数を設定することで、光学セクショニング像を得ることも可能である。
【0105】
高周波強調処理の代表的な例としては、上述したような、シャープフィルタを用いる処理、ローパスフィルタを作用させた画像を原画像から指し引く処理、さらに、広視野画像を原画像から差し引く処理などがあるが、特にこれらに限られない。他の方法により、高周波成分が強調されてもよい。
【0106】
次に、スキャンマスク4のマスクパターンの具体例について説明する。なお、マスクパターンは、スキャンマスク4が共焦点変調手段として機能する場合、スキャンマスク4が有する変調パターンとして機能する。
【0107】
図3Aは、図1に例示される標本撮像装置に含まれる共焦点変調手段の変調パターンの構成を例示した図である。図3Bは、図3Aに例示される変調パターンの周波数特性を例示した図である。図3Cは、図3Aに例示される変調パターンの周波数特性と結像光学系の点像分布関数の周波数特性の関係を例示した図である。
【0108】
共焦点変調手段であるスキャンマスク4は、図3Aに例示されるような、遮蔽部10aと周期的に配列されたスリット状の開口部10bを有するマスク10であってもよく、いわゆる、ラインアンドスペース構造を有するマスクパターンを有してもよい。これにより、スリットの短手方向に超解像性を与えることが可能となる。なお、スリットの短手方向はマスク10の回転により任意の方向に変化するため、露出時間内のスキャンマスクの回転量を調整することで任意の方向に超解像性を与えることができる。
【0109】
図3Aに例示されるように、遮蔽部10a間に形成される開口幅wの開口部10bが開口周期pで周期的に形成されている場合、マスク10のマスクパターンM(x)は、以下の式(18)で示される。マスク10のマスクパターンの周波数特性は、図3Bに例示されていて、式(18)をフーリエ変換した式(19)で表される。ここで、rect(x)は、式(20)で定義され、フーリエ変換すると式(21)で表される。また、Δp(x)は、式(22)で定義され、フーリエ変換すると式(23)で表される。
【0110】
【数16】

【0111】
式(19)及び図3Bで示されるように、マスクパターンの周波数特性は、0次回折光成分に対して±n/pだけシフトした周波数に±n次の回折光成分を含んでいる。このため、照明光が結像光学系3のカットオフ周波数fc近傍で強い回折光成分を含むためには、開口幅wと結像光学系3のカットオフ周波数fcはw<<1/fcの関係を満たすことが望ましい。しかしながら、開口幅wが結像光学系3のカットオフ周波数fcにより規定される周期の半分1/(2fc)より小さくなると、共焦点効果による光量損失が著しく増加するため、S/N比が劣化してしまう。従って、開口幅wは、結像光学系3のカットオフ周波数fcにより規定される周期の半分1/(2fc)以上であることが望ましく、特に、周期1/(2fc)程度であることが望ましい。
【0112】
また、図3Cに例示されるように、±1次回折光成分が結像光学系3により伝達されて、標本S上に縞パターン(マスクパターン)が形成されるためには、開口周期pと結像光学系3のカットオフ周波数fcはp>1/fcの関係を満たす必要がある。換言すると、開口周期pは結像光学系3のカットオフ周波数fcにより規定される周期1/fcよりも長いことが必要である。しかしながら、開口周期pはマスクパターンの開口効率に反比例するため、開口周期pを大きくしすぎると照明効率が低下することになり、好ましくない。従って、照明効率を重視するアプリケーションでは、開口周期pは結像光学系3のカットオフ周波数fcにより規定される周期1/fcの2倍弱程度であることが望ましい。一方、p>>1/fcの関係を満たすと、光学セクショニング効果が加わるため、光学セクショニング効果が要求される特定のアプリケーションでは、開口周期pは結像光学系3のカットオフ周波数fcにより規定される周期1/fcの10倍以上であることが望ましい。また、開口周期pは結像光学系3のカットオフ周波数fcにより規定される周期1/fcの10倍以上であり20倍以下であることがさらに望ましい。
【0113】
なお、図3Aに例示されるような遮蔽部10aを含むマスク10を共焦点変調手段として用いる場合には、光源2とマスク10(スキャンマスク4)の間に、開口部10bに集光位置を一致させたシリンドリカルレンズを含むことが望ましい。また、モータ5は、シリンドリカルレンズとマスク10を、それらの相対的な位置関係を変化させることなく、移動させるように構成されていることが望ましい。これにより、遮蔽部10aに入射することにより生じる励起光の光量損失を抑制し、標本Sにより多くの励起光を照射することができる。
【0114】
図4Aは、図1に例示される標本撮像装置に含まれる共焦点変調手段の変調パターンの他の構成を例示した図である。図4Bは、図4Aに例示される変調パターンの周波数特性とコヒーレント照明に対する結像光学系の伝達関数を例示した図である。
【0115】
図4Aに例示されるマスク11は、遮蔽部10aの代わりに位相シフト膜部11aを含む点が図3Aに例示されるマスク10と異なっている。位相シフト膜部11aは、強度透過率が6%程度で開口部11bとの透過位相差が使用波長の1/2程度となる蒸着膜を、マスク基板に形成したものである。
【0116】
位相シフト膜部11aを含むマスク11を共焦点変調手段として用いる場合、レーザなどのコヒーレント性の高い光源を用いることにより、または、マスク11を照明する開口数を小さくすることにより、位相シフト膜部11aを透過した光と開口部11bを透過した光を互いに干渉させることができる。これにより、図4Bに例示されるように、マスクパターンで発生した各回折光成分において、0次回折光成分の強度を弱め、結像光学系3のカットオフ周波数fc近傍の周波数成分の強度を相対的に高くして、標本S上に形成される縞パターンのコントラストを高くすることができる。
【0117】
一方、コヒーレント照明に対して結像光学系3が示すカットオフ周波数は、インコヒーレント照明に対して結像光学系3が示すカットオフ周波数fcの半分(fc/2)となるが、標本の励起強度の空間周波数に換算するとその2倍の周波数fcに等しい。また、コヒーレント照明に対する結像光学系3の点像分布関数は、カットオフ周波数(fc/2)以下の周波数成分を、コントラスト1で伝達する特性を有している。従って、コヒーレント照明によれば、強度に換算してインコヒーレント照明に比べて、高いコントラストで標本S上に縞パターンを投影することができる。
【0118】
特に、開口周期pと開口幅wがp=2wの関係を満たすマスク11では、開口周期pとカットオフ周波数fcが1/p>fc/2の関係を満たす場合には、図4Bに例示されるように、±1次回折光成分が結像光学系3によりほぼ100%標本上に伝達される。このため、高いコントラストで標本S上に縞パターンを投影することができる。従って、中間像の形成に寄与する高周波成分の割合が増加するため、計算機8による高周波成分の強調の程度を小さくすることが可能となり、画像処理によるノイズの発生を抑制することができる。
【0119】
図5は、図1に例示される標本撮像装置に含まれる共焦点変調手段の変調パターンのさらに他の構成を例示した図である。
図5に例示されるように、共焦点変調手段であるスキャンマスク4は、遮蔽部12aと周期的に配列されたピンホール状の開口部12bを有するマスク12であってもよく、いわゆる、2次元格子構造を有するマスクパターンを有してもよい。これにより、図5に例示されるXY平面上で等方的に超解像性を与えることが可能となる。より具体的には、図5に例示されるように、X方向に隣り合う開口部12bのY方向の位置を異ならせることによって、マスク12をX方向にのみ移動させるだけで、XY平面上で等方的に超解像性を与えることが可能となる。
【0120】
また、図5に例示される2次元格子構造を有するマスクパターンでは、開口部12bのX方向の開口幅wxとX方向の開口周期pxの関係、及び、Y方向の開口幅wyとY方向の開口周期pyの関係は、それぞれ図3Aに例示されるラインアンドスペース構造を有するマスクパターンの開口部10bの開口幅wと開口周期pの関係と同様である。従って、マスク10の場合と同様の理由から、開口部12bの径(開口幅wx及び開口幅wy)は、結像光学系3のカットオフ周波数により規定される周期の半分1/(2fc)以上であることが望ましく、特に、周期1/(2fc)程度であることが望ましい。また、同じく、マスク10の場合と同様の理由から、開口周期px及び開口周期pyは結像光学系3のカットオフ周波数により規定される周期1/fcよりも長いことが必要であり、照明効率を重視するアプリケーションでは、開口周期px及び開口周期pyはカットオフ周波数fcにより規定される周期1/fcの2倍弱程度であることが望ましい。ただし、光学セクショニング効果が要求される特定のアプリケーションでは、開口周期px及び開口周期pyはカットオフ周波数fcにより規定される周期1/fcの3倍以上であることが望ましい。
【0121】
なお、図5では、開口部12bの形状として、正方形を例示したが、特にこれに限られない。例えば、開口部12bの形状は円形であってもよい。また、マスク12は、遮蔽部12aの代わりに、図4Aに例示されるような位相シフト膜部を含んでもよい。また、光源2とマスク12の間に、開口部12bに集光位置を一致させたマイクロレンズアレイを含んでもよく、モータ5は、マイクロレンズアレイとマスク12を、それらの相対的な位置関係を変化させることなく、移動させるように構成されていてもよい。
【0122】
図1では、共焦点変調手段として機能するマスクが、回転ディスクに形成される例を示したが、特にこれに限らない。例えば、共焦点変調手段として機能するマスクは、回転ディスクの代わりに回転ドラムに形成されてもよい。また、モータの代わりに振動子を配置し、マスクを振動子により振動するプレートに形成してもよい。
【0123】
一般に、モータにより回転する回転ディスクまたは回転ドラムにマスクを形成する場合、変調パターンの周期pの移動に要する時間が短時間で済むため、撮像素子7による原画像の生成を高速に行うことができる点で好ましい。一方、振動子により振動するプレートにマスクを形成する場合、共焦点変調手段と変調駆動手段をコンパクトに構成できる点で好ましい。
【0124】
さらに、蛍光顕微鏡1は、予め変調パターンの異なる複数のマスクを含み、複数のマスクから任意のマスクを選択して光路上に挿入し得るように構成されてもよい。例えば、マスクが回転ディスク等の上に交換可能に配置されてもよい。これにより、励起光の波長や中間像位置への投影倍率などの変更による結像光学系3のカットオフ周波数の変化に合わせて、超解像性を最適化することができる。
【0125】
また、共焦点変調手段として、マスクの代わりに空間光変調器を用いても良い。この場合、変調駆動手段としては、モータの代わりに、空間光変調器を駆動する駆動回路が用いられる。空間光変調器を共焦点変調手段として用いることで、任意の変調パターンを形成することができるため、励起光の波長や中間像位置への投影倍率などの変更などに合わせて変調パターンを最適化することができる。なお、空間光変調器は、DMDであっても、LCOSであってもよい。空間光変調器がDMDであれば、変調パターンをより高速に変更することができる。一方、空間光変調器がLCOSであれば、励起光を位相変調することも可能となる。
【0126】
以下、各実施例について、具体的に説明する。
【実施例1】
【0127】
図6Aは、本実施例に係る蛍光顕微鏡の構成を例示した図である。図6Bは、図6Aに例示される蛍光顕微鏡に含まれるマスクのマスクパターンについて説明するための図である。図6Cは、図6Bに例示されるマスクのマスクパターンの詳細について説明するための図である。
【0128】
図6Aに例示される蛍光顕微鏡20は、標本観察装置であり、標本Sを励起するための励起光を生成する水銀ランプ21と、励起光を標本Sに投影すると共に、標本Sに励起光が照射されて生じた観察光から標本Sの中間像を中間像位置に形成する結像光学系22と、中間像位置で励起光および中間像の空間強度分布を変調する、回転ディスクとして形成されたマスク23と、マスク23が有する変調パターンを中間像に対して相対的に移動させるモータ24と、空間強度分布が変調された中間像を撮像面上にリレーする撮像レンズ25と、撮像面上にリレーされた中間像の空間強度分布をデジタル画像データに変換する冷却CCD26と、デジタル画像データに対して画像処理を行う計算機27と、を含んでいる。
【0129】
回転ディスクは、溶融石英または透明ガラスでできており、その片方の面には、図6Bに例示されるように、周期的なパターンを有している。これにより、回転ディスクは、空間強度分布を変調するマスク23として機能する。マスク23は、図6Cに例示されるように、回転ディスク上の低反射クロムコートをエッチングすることによって形成された、遮蔽部34と開口幅wの開口部35からなる開口周期pのラインアンドスペースパターンを有する。但し、そのライン方向が回転ディスクの回転方向に一致しない様に、マスク23は、図6Bに例示されるように、ライン方向の異なる第1の領域32と第2の領域33を含んでいる。
【0130】
蛍光顕微鏡20は、さらに、照明レンズ28と、励起フィルタ29、阻止フィルタ30、及びダイクロイックミラーDMからなる蛍光キューブと、を含んでいる。また、結像光学系22は、対物レンズOBと結像レンズTLを含んでいる。
【0131】
結像光学系22の分解能は、対物レンズOBの開口数をNAとし、結像に関与する波長をλとすると、λ/(2NA)である。従って、冷却CCD26上での結像光学系22のカットオフ周波数fcは、結像光学系22の投影倍率をMとし、撮像レンズ25の投影倍率βとすると、fc=2NA/(λMβ)である。
【0132】
ここでは、撮像レンズ25の投影倍率βは、冷却CCD26の画素ピッチΔで決まるナイキスト周波数1/(2Δ)が結像光学系22のカットオフ周波数fcの2倍程度となるように設定されている。冷却CCD26の投影倍率βは、冷却CCD26のナイキスト周波数が結像光学系22のカットオフ周波数fcを上回るように設定されていればよく、より好ましくは、カットオフ周波数fcの1.5倍以上、4倍未満であることが望ましい。
【0133】
また、撮像レンズ25のカットオフ周波数も、結像光学系22のカットオフ周波数を上回っている。
また、開口部35の開口幅wは、およそ2Δ/βとなるように設定されている。蛍光顕微鏡20では、1/(2Δ)=2fcの関係が成り立っているので、開口部35の開口幅wは、およそ1/(2fcβ)である。すなわち、中間像位置での結像光学系22のカットオフ周波数f’c(=fcβ)により規定される周期の半分程度であり、好ましい。
【0134】
また、パターン周波数(1/p)は、中間像位置での励起光波長に対する結像光学系22のカットオフ周波数f’cよりも小さくなるように設定されている。即ち、パターンの周期pは中間像位置での励起光波長に対する結像光学系22のカットオフ周波数f’cにより規定される周期1/f’cよりも長い。従って、マスクパターンに起因する空間強度分布を持った励起光を標本上に投影することが可能であり、好ましい。
【0135】
なお、結像レンズTLは、対物レンズOBや蛍光波長の変更に合わせて投影倍率Mを変更できるように、変倍光学系またはズーム光学系であることが望ましい。撮像レンズ25も、対物レンズOBや蛍光波長の変更に合わせて投影倍率βを変更できるように、変倍光学系またはズーム光学系であることが望ましい。また、変調パターンの異なるマスクが、回転ディスクの上に交換可能に配置されてもよい。変調パターンの異なるマスクが形成された回転ディスク自体が交換可能に配置されてもよい。
【0136】
蛍光顕微鏡20では、モータ24のより回転ディスクを回転させながら、冷却CCD26により回転ディスクとして形成されたマスク23のパターンを透過した標本Sの中間像を撮像する。露出時間は少なくともマスク23のパターンがその周期pだけ移動する時間が必要であり、好ましくはマスク23として機能する回転ディスクの1/2回転に要する時間以上である。露出時間は周期pだけ移動する時間の整数倍であってもよい。また、モータ24は、回転速度が変更可能であることが望ましい。
【0137】
冷却CCD26で撮像した原画像は、計算機8にデジタル画像データとして送られ、そこで、高周波数強調のためのデジタル処理を受ける。具体的には、計算機27は、冷却CCD26で生成されたデジタル画像データに対して、結像光学系22のカットオフ周波数を上回る高周波成分を強調する。このデジタル処理には、好ましくはコンボリューションフィルタ、さらに好ましくは3x3以上の核を持つシャープフィルタ、更に好ましくは5x5以上の核を持つシャープフィルタが用いられる。なお、その他の方法で、高周波成分を強調してもよい。
【0138】
本実施例に係る蛍光顕微鏡20によれば、超解像画像を高い時間分解能で生成することが可能であるため、リアルタイムに標本Sを観察することができる。
図7は、図6Aに例示される蛍光顕微鏡に含まれるマスクのマスクパターンの変形例について説明するための図である。
【0139】
図7に例示されるマスク36は、マスク23の第1の領域32または第2の領域33に相当するラインパターン領域37に加えて、遮蔽領域38と開口領域39を含む点が、マスク23と異なっている。
【0140】
マスク23の代わりにマスク36を含む点のみが蛍光顕微鏡20と異なる本変形例に係る蛍光顕微鏡では、光軸AX上にラインパターン領域37があるときには、超解像成分を含む原画像(以降、共焦点画像と記す。)が取得され、光軸AX上に開口領域39があるときには、広視野画像が取得される。光軸AX上に遮蔽領域38があるときには、画像は取得されない。遮蔽領域38は、共焦点画像が生成される期間と広視野画像が生成される期間を明確に区別するために設けられている。そして、計算機27では、高周波数強調のためのデジタル処理として、取得された共焦点画像から広視野画像を差し引く処理が実施される。
【0141】
本変形例に係る蛍光顕微鏡によっても、本実施例に係る蛍光顕微鏡20と同様に、超解像画像を高い時間分解能で生成することが可能であるため、リアルタイムに標本Sを観察することができる。
【0142】
また、本変形例に係る蛍光顕微鏡では、デフォーカス画像の強度がほぼゼロになるように、取得される共焦点画像と広視野画像の強度比を調整することで、光学的セクショニング効果も得られる。
また、本変形例に係る蛍光顕微鏡では、広視野画像と原画像が同じ冷却CCD26で取得されるため、画像間の位置合わせを行うことなく、高い精度で画像間の位置が一致した画像を取得することができる。また、広視野画像が取得される時刻と原画像が取得される時刻の時間差も極僅かであり、標本の移動に伴うアーティファクトの発生を抑えられる点において好適である。
【0143】
なお、中間像位置に変調手段を有する技術は、共焦点顕微鏡などで用いられていて、例えば、特表2002−535716などで開示されている。しかしながら、本願の蛍光顕微鏡は、超解像成分を取得するために変調手段を用いる点で、共焦点効果を得るために変調手段を用いる従来の共焦点顕微鏡と大きく異なっている。
【実施例2】
【0144】
図8Aは、本実施例に係る全反射蛍光(TIRF)顕微鏡の構成を例示した図である。図8Bは、図8Aに例示される全反射蛍光顕微鏡に含まれる同心円ダイクロイックフィルタの構成について説明するための図である。
【0145】
図8Aに例示される全反射蛍光顕微鏡40は、標本観察装置であり、標本Sを励起するための励起光を生成するレーザ41と、励起光を標本Sに投影すると共に、標本Sに励起光が照射されて生じた観察光から標本Sの中間像を中間像位置に形成する結像光学系42と、中間像位置で励起光および中間像の空間強度分布を変調する、回転ディスクとして形成されたマスク44と、マスク44が有する変調パターンを中間像に対して相対的に移動させるモータ45と、空間強度分布が変調された中間像を撮像面上にリレーする撮像レンズ46と、撮像面上にリレーされた中間像の空間強度分布をデジタル画像データに変換するEM−CCD47と、デジタル画像データに対して画像処理を行う計算機48と、を含んでいる。なお、マスク44は、周期的なパターンを有する回折格子である。
【0146】
全反射蛍光顕微鏡40は、また、ビームエキスパンダ49と、ダイクロイックミラーDMと、阻止フィルタ50を含んでいる。結像光学系42は、対物レンズOBと、ミラーMRと、対物レンズOBの瞳をリレーする瞳リレー光学系43と、結像レンズTLとを含んでいる。
【0147】
全反射蛍光顕微鏡40は、さらに、対物レンズOBの瞳位置と共役な位置近傍に、標本Sを励起光で輪帯照明する輪帯照明手段である同心円ダイクロイックフィルタ51を含んでいる。同心円ダイクロイックフィルタ51は、図8Bに例示されるように、励起光を遮蔽し、蛍光を透過する励起光阻止領域51aと、励起光及び蛍光を透過する透過領域51bを含んでいる。励起光阻止領域51aは、瞳共役位置の中心部分を占めていて、透過領域51bは、瞳共役位置の周辺部分を占めている。このため、対物レンズOBの瞳位置の中心部分に入射する励起光は、励起光阻止領域51aにより遮蔽されるのに対して、対物レンズOBの瞳位置の周辺部分に入射する励起光は、透過領域51bを透過する。これにより、同心円ダイクロイックフィルタ51により、輪帯照明が実現される。
【0148】
また、対物レンズOBは液浸対物レンズであり、標本Sを支持するスライドガラスGと対物レンズOBとの間は、イマージョンオイルIMで満たされている。スライドガラスG及びイマージョンオイルIMは、標本Sの周りの媒質の屈折率より高い屈折率を有している。即ち、標本Sと結像光学系42の間には、標本Sの周りの媒質の屈折率より高い屈折率を有する透明物体が含まれている。ここで、標本Sの周りの媒質としては、標本Sが培養細胞の場合であれば、例えば、水などが挙げられる。また、標本Sが固定標本の場合であれば、例えば、パラフィンなどが挙げられる。
【0149】
輪帯照明手段である同心円ダイクロイックフィルタ51は、標本SとイマージョンオイルIMとの界面に入射した励起光の90パーセント以上が全反射するような角度で励起光が界面に入射するように、励起光の一部を遮断する。即ち、励起光阻止領域51aと透過領域51bの径が調整されている。これにより、同心円ダイクロイックフィルタ51によりTIRF照明が実現される。
【0150】
なお、その他の点については、実施例1に係る蛍光顕微鏡20と同様である。例えば、結像光学系42のカットオフ周波数、撮像レンズ46のカットオフ周波数、EM−CCD47のナイキスト周波数、マスク44からなる回折格子のパターンの開口幅w及び開口周期pは、実施例1に係る蛍光顕微鏡20と同様の特徴を有している。
【0151】
全反射蛍光顕微鏡40では、レーザ41が生成した励起光は、ビームエキスパンダ49によりビーム径が拡大された後、マスク44からなる回折格子により、複数の回折光成分に分割される。対物レンズOBの瞳共役位置近傍に配置された同心円ダイクロイックフィルタ51により、スライドガラスGと標本Sの界面に入射する励起光の角度が制限されるため、標本Sに照射される励起光は、スライドガラスGと標本Sの界面で励起光の90パーセント以上が全反射するTIRF照明光となる。このため、全反射蛍光顕微鏡40では、スライドガラスG近傍のエバネッセント領域にある標本が励起される。
【0152】
蛍光は、同心円ダイクロイックフィルタ51で遮蔽されないため、実施例1に係る蛍光顕微鏡20と同様に、共焦点変調手段(マスク44)により復調されて、超解像成分を含む原画像がEM−CCD47で取得される。さらに、計算機48では、高周波強調処理が実施される。
【0153】
従って、本実施例に係る蛍光顕微鏡40によれば、実施例1に係る蛍光顕微鏡20と同様に、超解像画像を高い時間分解能で生成することが可能であるため、リアルタイムに標本Sを観察することができる。
【0154】
なお、全反射蛍光顕微鏡40では、同心円ダイクロイックフィルタ51により輪帯照明が実現されるため、マスク44からなる回折格子により生成される縞パターンを高いコントラストで標本Sに投影することができる。縞パターンのコントラストが改善されることで、原画像に含まれる超解像成分のS/N比が向上するため、全反射蛍光顕微鏡40によれば、蛍光顕微鏡20よりも、超解像画像の画質を改善することができる。
【0155】
また、全反射蛍光顕微鏡40は、TIRF照明により、スライドガラスGの極近傍から生じる蛍光のみを検出することができるため、一分子蛍光の検出に、特に有効である。
また、全反射蛍光顕微鏡40では、蛍光顕微鏡20ト同様に、レーザ41の代わりに、水銀ランプなどの白色光源を用いることもできる。その場合、照明光路上に励起フィルタを含むことが望ましい。
【実施例3】
【0156】
図9Aは、本実施例に係る蛍光顕微鏡の構成を例示した図である。図9Bは、図9Aに例示される蛍光顕微鏡に含まれる共焦点マスクのマスクパターンについて説明するための図である。
【0157】
図9Aに例示される蛍光顕微鏡60は、標本観察装置であり、標本Sを励起するための励起光を生成する水銀ランプ61と、励起光を標本Sに投影すると共に、標本Sに励起光が照射されて生じた観察光から標本Sの中間像を中間像位置に形成する結像光学系62と、中間像位置で励起光および中間像の空間強度分布を変調する、プレートとして形成された共焦点マスク63と、共焦点マスク63が有する変調パターンを中間像に対して相対的に移動させる駆動装置64と、空間強度分布が変調された中間像を撮像面上にリレーする撮像レンズ65と、撮像面上にリレーされた中間像の空間強度分布をデジタル画像データに変換するEM−CCD66と、デジタル画像データに対して画像処理を行う計算機67及び画像処理ボード68と、を含んでいる。
【0158】
蛍光顕微鏡60は、さらに、照明レンズ71と、励起フィルタ72、阻止フィルタ73及びダイクロイックミラーDMからなる蛍光フィルタキューブと、記憶媒体69と、モニタ70と、を含んでいる。結像光学系62は、対物レンズOBと結像レンズTLとを含んでいる。
【0159】
図9Bに例示されるように、プレートとして形成される共焦点マスク63は、周期的なパターンを有している。共焦点マスク63は、遮蔽部75と開口幅wの正方形の複数の開口部76を含み、複数の開口部76は、縦横共に開口周期pで整列している。なお、横方向に隣り合う開口部76の縦方向の位置が異なるように、開口部76は整列されている。このため、駆動装置64がプレート(共焦点マスク63)を一方向に振動させるだけで、等方的な超解像画像を得ることができる。従って、駆動装置64としては、例えば、振動子を用いることができる。
【0160】
その他、結像光学系62のカットオフ周波数、撮像レンズ65のカットオフ周波数、EM−CCD66のナイキスト周波数、開口部76の開口幅w及び周期pは、実施例1に係る蛍光顕微鏡20と同様の特徴を有している。
【0161】
蛍光顕微鏡60では、駆動装置64によりプレートを振動させながら、EM−CCD66によりプレートとして形成された共焦点マスク63のパターンを透過した標本Sの中間像を撮像する。駆動装置64によりプレートの振動の振幅は、振動方向の開口部76の開口周期p以上に設定されている。より好ましくは、振幅は開口周期pの整数倍である。EM−CCD66の露出時間は、駆動装置64によるプレートの振動周期よりも長く設定されている。振幅が開口周期pの整数倍であれば、EM−CCD66の露出時間は、プレートの振動周期の整数倍の時間に設定されていることが望ましい。
【0162】
EM−CCD66で撮像した原画像は、画像処理ボード68にデジタル画像データとして送られ、画像処理ボード68は、デジタル画像データに対して、結像光学系62のカットオフ周波数を上回る高周波成分を強調する。具体的には、3x3の核行列によるコンボリューション処理がリアルタイムで施される。その後、高周波成分が強調された超解像画像がモニタ70に表示されると同時に計算機67を介して記憶媒体69に記憶される。
【0163】
従って、本実施例に係る蛍光顕微鏡60によれば、実施例1に係る蛍光顕微鏡20と同様に、超解像画像を高い時間分解能で生成することが可能であるため、リアルタイムに標本Sを観察することができる。
【実施例4】
【0164】
図10Aは、本実施例に係る蛍光顕微鏡の構成を例示した図である。図10Bは、図9Aに例示される蛍光顕微鏡に含まれるマスクのマスクパターンについて説明するための図である。
【0165】
図10Aに例示される蛍光顕微鏡80は、標本観察装置であり、標本Sを励起するための励起光を生成するレーザ81と、励起光を標本Sに投影すると共に、標本Sに励起光が照射されて生じた観察光から標本Sの中間像を中間像位置に形成する結像光学系82と、中間像位置で励起光および中間像の空間強度分布を変調する、回転ディスクとして形成されたマスク83と、マスク83が有する変調パターンを中間像に対して相対的に移動させるモータ84と、空間強度分布が変調された中間像を撮像面上にリレーする撮像レンズ85と、撮像面上にリレーされた中間像の空間強度分布をデジタル画像データに変換するEM−CCD86と、デジタル画像データに対して画像処理を行う計算機87及び画像処理ボード88と、を含んでいる。
【0166】
蛍光顕微鏡80は、さらに、シングルモード光ファイバー91と、ビームエキスパンダ92、ダイクロイックミラーDMと、阻止フィルタ94と、記憶媒体89と、モニタ90と、を含んでいる。結像光学系82は、対物レンズOBと結像レンズTLとを含んでいる。
【0167】
図10Bに例示されるように、回転ディスクとして形成されるマスク83は、周期的なパターンを有している。マスク83は、遮蔽部96と開口直径wのピンホール状の複数の開口部97を含み、複数の開口部97は、縦横共に開口周期pで整列している。即ち、マスク83として機能する回転ディスクは、ピンホール状の開口部97を有する、いわゆるニポーディスクである。
【0168】
蛍光顕微鏡80は、レーザ81とマスク83の間に、ピンホール状の開口部に集光位置を一致させたマイクロレンズアレイ93を含んでいる。また、モータ84は、マイクロレンズアレイ93とマスク83を、マイクロレンズアレイ93とマスク83の相対的な位置関係を変えずに、回転させる。これにより、遮蔽部96に入射することにより生じる励起光の光量損失を抑制し、標本Sにより多くの励起光を照射することができる。
【0169】
なお、図10A及び10Bでは、マイクロレンズアレイ93とニポーディスクが例示されているが、特にこれに限られない。例えば、ニポーディスクの代わりに、実施例1で例示されるような、ラインアンドスペース構造を有するマスクが形成された回転ディスクが用いられても良い。その場合、マイクロレンズアレイ93の代わりに、ライン状の開口部に集光位置を一致させたシリンドリカルレンズを含んでもよい。また、蛍光顕微鏡80は、実施例2で例示されるようなTIRF照明を実現する構成に変形してもよい。
【0170】
その他、マスク83において開口周期pは、開口直径wの3倍程度に設定されている。このため、蛍光顕微鏡80では、ニポーディスクによるセクショニング効果が生じる。また、結像光学系82のカットオフ周波数、撮像レンズ85のカットオフ周波数、EM−CCD86のナイキスト周波数、開口部97の開口直径wは、実施例1に係る蛍光顕微鏡20と同様の特徴を有している。
【0171】
本実施例に係る蛍光顕微鏡80では、モータ84によりマスク83及びマイクロレンズアレイ93を回転させながら、レーザ81から射出されたレーザ光(励起光)により標本Sを励起し、蛍光を回転するマスク83を介してEM−CCD86で検出することで、超解像成分を含む原画像を高速に取得することができる。さらに、計算機87及び画像処理ボード88で超解像成分を強調する高周波成分強調処理を実施することで、超解像成分が可視化された超解像画像を高速に生成することができる。
【0172】
従って、本実施例に係る蛍光顕微鏡80によれば、実施例1に係る蛍光顕微鏡20と同様に、超解像成分の視認性が高い超解像画像を高い時間分解能で生成することが可能であるため、リアルタイムに標本Sを観察することができる。
【符号の説明】
【0173】
1、20、60、80・・・蛍光顕微鏡、40・・・全反射蛍光顕微鏡、2・・・光源3、22、42、62、82・・・結像光学系、4・・・スキャンマスク、5、24、45、84・・・モータ、6、25、46、65、85・・・撮像レンズ、7・・・撮像素子、8、27、48、67、87・・・計算機、8a・・・GPU、8b・・・FPGA、9、28、71・・・照明レンズ、10、11、12、23、36、44、83・・・マスク、10a、11a、12a、34、75、96・・・遮蔽部、10b、11b、12b、35、76、97・・・開口部、21、61・・・水銀ランプ、26・・・冷却CCD、47、66、86・・・EM−CCD、29、72・・・励起フィルタ、30、50、73、94・・・阻止フィルタ、32・・・第1の領域、33・・・第2の領域、37・・・ラインパターン領域、38・・・遮蔽領域、39・・・開口領域、41、81・・・レーザ、43・・・瞳リレー光学系、49、92・・・ビームエキスパンダ、51・・・同心円ダイクロイックフィルタ、51a・・・励起光阻止領域、51b・・・透過領域、IM・・・イマージョンオイル、63・・・共焦点マスク、64・・・駆動装置、68、88・・・画像処理ボード、69、89・・・記憶媒体、70、90・・・モニタ、91・・・シングルモード光ファイバー、93・・・マイクロレンズアレイ、S・・・標本、G・・・スライドガラス、OB・・・対物レンズ、TL・・・結像レンズ、HM・・・ハーフミラー、DM・・・ダイクロイックミラー、MR・・・ミラー、AX・・・光軸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
標本を励起するための励起光を生成する励起光生成手段と、
前記励起光を前記標本に投影すると共に、前記標本に前記励起光が照射されて生じた観察光から前記標本の中間像を中間像位置に形成する中間像形成手段と、
前記中間像位置で前記励起光および前記中間像の空間強度分布を変調する共焦点変調手段と、
前記共焦点変調手段が有する変調パターンを前記中間像に対して相対的に移動させる変調駆動手段と、
空間強度分布が変調された前記中間像を撮像面上にリレーする像リレー手段と、
前記撮像面上にリレーされた前記中間像の空間強度分布をデジタル画像データに変換する撮像手段と、
前記デジタル画像データに対して画像処理を行う画像処理手段と、を含み、
前記像リレー手段のカットオフ周波数は、前記中間像形成手段のカットオフ周波数を上回り、
前記撮像手段のナイキスト周波数は、前記中間像形成手段のカットオフ周波数を上回り、
前記画像処理手段は、前記デジタル画像データに対して、前記中間像形成手段のカットオフ周波数を上回る高周波成分を強調する高周波強調処理を行う
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項2】
請求項1に記載の標本観察装置において、
前記変調パターンは、周期的なパターンであり、
前記撮像素子による1枚の画像取得の露出時間が、前記変調パターンが前記中間像に対して前記変調パターンの1周期分移動する時間以上である
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項3】
請求項1に記載の標本観察装置において、
前記変調パターンは、周期的なパターンであり、
前記撮像素子による1枚の画像取得の露出時間が、前記変調パターンが前記中間像に対して前記変調パターンの1周期分移動する時間の整数倍である
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の標本観察装置において、
前記変調駆動手段が、前記撮像素子による1枚の画像取得の露出時間に応じて、前記変調パターンの移動速度を調節する
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の標本観察装置において、
前記像リレー手段のカットオフ周波数が、前記中間像形成手段のカットオフ周波数の約1.5倍以上であること
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の標本観察装置において、
前記撮像手段のナイキスト周波数が、前記中間像形成手段のカットオフ周波数の約1.5倍以上であること
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項7】
請求項6に記載の標本観察装置において、
前記撮像手段のナイキスト周波数が、前記中間像形成手段のカットオフ周波数の約4倍以下であること
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の標本観察装置において、
前記共焦点変調手段は、周期的に配列されたスリット状の開口を有するマスクである
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項9】
請求項8に記載の標本観察装置において、
前記スリット状の開口の幅は、前記中間像形成手段のカットオフ周波数により規定される周期の半分以上である
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項10】
請求項8に記載の標本観察装置において、
前記周期的に配列されたスリット状の開口の周期は、前記中間像形成手段のカットオフ周波数により規定される周期よりも長い
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項11】
請求項10に記載の標本観察装置において、
前記スリット状の開口の周期は、前記スリット状の開口の幅の10倍以上である
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項12】
請求項8乃至請求項11のいずれか1項に記載の標本観察装置において、さらに、
前記励起光生成手段と前記共焦点変調手段の間に、前記スリット状の開口に集光位置を一致させたシリンドリカルレンズアレイを含み、
前記変調駆動手段は、前記シリンドリカルレンズアレイと前記マスクを、前記シリンドリカルレンズアレイと前記マスクの相対的な位置関係を変えずに、移動させる
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項13】
請求項8乃至請求項12のいずれか1項に記載の標本観察装置において、
前記マスクは、位相シフト膜を含む
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項14】
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の標本観察装置において、さらに、
前記標本を前記励起光で輪帯照明する輪帯照明手段を含み、
前記輪帯照明手段は、前記中間像形成手段に含まれる対物レンズの瞳位置と共役な位置近傍に配置される
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項15】
請求項14に記載の標本観察装置において、さらに、
前記標本と前記中間像形成手段の間に、前記標本及び前記標本の周りの媒質の屈折率より高い屈折率を有する透明物体を含み、
前記輪帯照明手段は、前記標本と前記透明物体との界面に入射した前記励起光の90パーセント以上が全反射するような角度で前記励起光が前記界面に入射するように、前記励起光の一部を遮断する
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項16】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の標本観察装置において、
前記共焦点変調手段は、周期的に配列されたピンホール状の開口を有するマスクである
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項17】
請求項16に記載の標本観察装置において、
前記ピンホール状の開口の径は、前記中間像形成手段のカットオフ周波数により規定される周期の半分以上である
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項18】
請求項16に記載の標本観察装置において、
前記周期的に配列されたピンホール状の開口の周期は、前記中間像形成手段のカットオフ周波数により規定される周期よりも長い
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項19】
請求項18に記載の標本観察装置において、
前記ピンホール状の開口の周期は、前記ピンホール状の開口の径の3倍以上である
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項20】
請求項16乃至請求項19のいずれか1項に記載の標本観察装置において、さらに、
前記励起光生成手段と前記共焦点変調手段の間に、前記ピンホール状の開口に集光位置を一致させたマイクロレンズアレイを含み、
前記変調駆動手段は、前記マイクロレンズアレイと前記マスクを、前記マイクロレンズアレイと前記マスクの相対的な位置関係を変えずに、移動させる
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項21】
請求項16乃至請求項18のいずれか1項に記載の標本観察装置において、さらに、
前記標本を前記励起光で輪帯照明する輪帯照明手段を含み、
前記輪帯照明手段は、前記中間像形成手段に含まれる対物レンズの瞳位置と共役な位置近傍に配置される
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項22】
請求項21に記載の標本観察装置において、さらに、
前記標本と前記中間像形成手段の間に、前記標本及び前記標本の周りの媒質の屈折率より高い屈折率を有する透明物体を含み、
前記輪帯照明手段は、前記標本と前記透明物体との界面に入射した前記励起光の90パーセント以上が全反射するような角度で前記励起光が前記界面に入射するように、前記励起光の一部を遮断する
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項23】
請求項1乃至請求項22のいずれか1項に記載の標本観察装置において、
前記共焦点変調手段は、周期的なパターンを有する回転ディスクであり、
前記変調駆動手段は、前記回転ディスクを回転させるモータである
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項24】
請求項1乃至請求項22のいずれか1項に記載の標本観察装置において、
前記共焦点変調手段は、周期的なパターンを有するプレートであり、
前記変調駆動手段は、前記プレートを振動させる振動子である
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項25】
請求項1乃至請求項22のいずれか1項に記載の標本観察装置において、
前記共焦点変調手段は、周期的なパターンを有する回転ドラムであり、
前記変調駆動手段は、前記ドラムを回転させるモータである
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項26】
請求項1乃至請求項25のいずれか1項に記載の標本観察装置において、
前記変調パターンの異なる複数の前記共焦点変調手段を含み、
前記複数の共焦点変調手段から任意の共焦点変調手段を選択して光路上に挿入する
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項27】
請求項1乃至請求項22のいずれか1項に記載の標本観察装置において、
前記共焦点変調手段は、空間光変調器であり、
前記変調駆動手段は、前記空間光変調器を駆動する駆動回路である
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項28】
請求項27に記載の標本観察装置において、
前記空間光変調器は、DMDである
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項29】
請求項27に記載の標本観察装置において、
前記空間光変調器は、LCOSである
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項30】
請求項1乃至請求項29のいずれか1項に記載の標本観察装置において、
前記中間像形成手段は、投影倍率が可変である
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項31】
請求項1乃至請求項30のいずれか1項に記載の標本観察装置において、
前記像リレー手段は、リレー倍率が可変である
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項32】
請求項1乃至請求項31のいずれか1項に記載の標本観察装置において、
前記高周波強調処理は、前記デジタル画像データ自体から、前記デジタル画像データにローパスフィルタを作用させた擬似広視野画像を差し引く処理である
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項33】
請求項32に記載の標本観察装置において、
前記擬似広視野画像は、核行列を用いたコンボリューション処理により生成される
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項34】
請求項32に記載の標本観察装置において、
前記高周波強調処理は、核行列を用いたコンボリューション処理である
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項35】
請求項33または請求項34に記載の標本観察装置において、
前記コンボリューション処理は、GPUを用いて行われる
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項36】
請求項33または請求項34に記載の標本観察装置において、
前記コンボリューション処理は、FPDAを用いて行われる
ことを特徴とする標本観察装置。
【請求項37】
請求項1乃至請求項31のいずれか1項に記載の標本観察装置において、
前記高周波強調処理は、前記デジタル画像データから、前記共焦点変調手段を作用させずに撮像した前記標本の広視野画像を差し引く処理である
ことを特徴とする標本観察装置。


【図1】
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【図3A】
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【図4A】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図10A】
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【図10B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4B】
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【図5】
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【図6C】
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【図9B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−78408(P2012−78408A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220946(P2010−220946)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】