説明

標識装置

【課題】通常の標識にするか又は逆光線による視認不良防止対策を施した標識にするかを選択可能とし、製造コストを抑え、生産性が低下しない標識装置を提供する。
【解決手段】筒形状の筐体2内に配設された光源3により、筐体2の正面となる表示面の裏側を照射し、表示面の表側を発光表示する標識装置1において、筐体2の正面に配設され、文字及び/又は図形が印刷された透光性を有するシートが張設されてなり、正面開口を閉じる正面部11と、筐体2の背面に配設され、背面開口を閉じる背面部21とを具備するとともに、筐体2の背面部21は取り付け・取り外し自在に設けられており、背面部21として透光性を有するシート又は透光性を有しないプレートからいずれかを選択可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に高速道路に設置される標識装置に係り、特に朝夕などにおける逆光線による視認不良防止対策を施した標識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、道路の直上にはその先の道路情報などを知らせる標識が設置されている。このような標識の中には夜間や遠方からでも良好な視認性が得られる内照式標識がある。内照式標識は、筐体の正面が透光性を有する表示面となり、筐体内に蛍光灯などの光源が配設され、光源により表示面の裏側を照射してその表側を発光表示するものである。
【0003】
ところが、筐体の背面が金属板などの透光性を有しない(すなわち、遮光性を有する)背面板により閉じられているため、朝夕に太陽の逆光線があたると背面板の影で表示面が暗くなり、ドライバーはその表示が明瞭に見えないことがあった。
【0004】
そのため、標識には以前から逆光線による視認不良防止対策が施されている。このような標識として、例えば下記特許文献1に開示されるように、透明強化プラスチック板に反射材が接着されて表示面を形成し、透明強化プラスチック板の背後に光線が分散しながら透過する半透明乳白色強化プラスチック板を設け、これら透明強化プラスチック板と透明乳白色強化プラスチック板を所定間隔をあけて枠に配置し、逆光線を利用して視認不良を防止するものがある。この標識によれば、表示面の背後に光線が分散透過する半透明乳白色プラスチック板を設けることにより、光線の有効な分散と伝達が可能となり、ドライバーは逆光線の影響をほとんど受けずに表示面を視認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3468506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の(上記特許文献1の)標識は、筐体の正面(表示面)に透明強化プラスチック板を配置し、背面に透明乳白色強化プラスチック板を配置しており、製品としてこれらが筐体に対して一体不可分に構成されているため、その構造上、設置場所が逆光線の影響を受ける場所に限定されるものであった。ところが、当然ながら標識は逆光線の影響を受けない場所にも設けなければならないため、生産者側としては通常の標識と逆光線による視認不良防止対策が施された標識の二つのパターンを製造しなければならない。したがって、通常の標識と逆光線による視認不良防止対策が施された標識のそれぞれの生産ラインを備える必要があり、これにより、製造コストが嵩んでいた。あるいはそれを避けるためにどちらを製造するかによって生産ラインを変更するなどすれば、今度は生産性が低下してしまうという問題が生じてしまう。
【0007】
そこで本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、筐体の背面部を交換可能に設けることにより、通常の標識にするか又は逆光線による視認不良防止対策を施した標識にするかを任意に選択可能な構成とし、これにより、製造コストを抑えるとともに、生産性が低下しない標識装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明に係る請求項1記載の標識装置は、筒形状の筐体2内に配設された光源3により、前記筐体2の正面となる表示面の裏側を照射し、該表示面の表側を発光表示する標識装置1において、
前記筐体2の正面に配設され、文字及び/又は図形が描かれた透光性を有するシート12が張設されてなり、前記正面開口を閉じる正面部11と、
前記筐体2の背面に配設され、前記背面開口を閉じる背面部21と、を具備するとともに、
前記筐体2の前記背面部21は取り付け・取り外し自在に設けられており、該背面部21として透光性を有するシート22又は透光性を有しないプレート27からいずれかを選択可能としたことを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、筐体2に対して取り付け・取り外し自在に設けられた背面部21は、透光性を有するシート22又は透光性を有しないプレート27のどちらかを任意に選択することができる。これにより、透光性を有するシート22を選択して逆光線による視認不良防止対策を施した標識とするか、透光性を有しないプレート27を選択して通常の標識とするかを適宜決めることができる。
【0010】
請求項2記載の標識装置は、請求項1記載の標識装置1において、前記筐体2の背面には、前記透光性を有するシート22を取り付けるための固定手段10aと、前記透光性を有しないプレート27を取り付けるための固定手段10bとが別個に設けられたことを特徴としている。
【0011】
このような構成によれば、筐体2の形状を一定として、各固定手段10a,10bを透光性を有するシート22と透光性を有しないプレート27のそれぞれに最適となるように設けることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の標識装置によれば、筐体に対して取り付け・取り外し自在に設けられた背面部は、透光性を有するシート又は透光性を有しないプレートのどちらかを任意に選択することができる。これにより、透光性を有するシートを選択して逆光線による視認不良防止対策を施した標識とするか、透光性を有しないプレートを選択して通常の標識とするかを適宜決めることができる。
【0013】
また、筐体形状一定として背面部を交換すれば、通常の標識と逆光線による視認不良防止対策を施した標識のどちらかが得られることから、生産ラインを増やす必要がなくなるため、製造コストを抑えることができる。さらに、通常の標識と逆光線による視認不良防止対策を施した標識のどちらを製造するかによる生産ライン変更の必要がないため、生産性が低下しない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)本発明の実施の形態を示す平面図である。 (b)同正面図である。 (c)同側面図である。
【図2】同実施の形態を逆光線による視認不良防止対策を施した標識とした場合の図1(b)におけるA−A線断面図(上部のみ)である。
【図3】同実施の形態を通常の標識とした場合の図1(b)におけるA−A線断面図(上部のみ)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して具体的に説明する。
この実施の形態は、主に高速道路において、支柱に取り付けられ、この支柱に支持される形で道路の直上に設置される標識装置である。各図に示すように、標識装置1は、筐体2と、筐体2の正面を形成する正面部11と、筐体2の背面を形成する背面部21とを備えている。
【0016】
図1に示すように、筐体2は、アルミ合金などの軽金属からなり、扁平な略矩形の筒形状に形成されている。また、(b)に示すように、筐体2内にはこの標識装置1の光源となる複数本の蛍光灯3が配設され、筐体2内の背面側には形状保持のための補強フレーム4が配設されている。この標識装置1は、いわゆる内照式標識であり、蛍光灯3により、筐体2の正面、すなわち、道路情報などが表示された表示面の裏側を照射して表示面の表側を発光表示するものである。これにより、ドライバーからの視認性を高めている。
【0017】
図1(a)及び(b)に示すように、筐体2の平面(上面)にはその中央部と両端部に筐体2内の点検などを行うための点検口が設けられている。これらの点検口は、通常は扉5により閉じられている。なお、扉5の閉塞にはキャッチクリップ6が使用されている。また、筐体2上面には設置時などにこの筐体2を吊り上げるためにロープを掛けるための二つのSUS製のアイボルト7が設けられている。
【0018】
筐体2は、正面側と背面側の二つのパーツを連結させて構成されている。図2又は3に示すように、正面側を構成するフレーム部材8は、筐体2を組み立てたときに額縁状になるように略L字形の断面に形成されており、背面側を構成するフレーム部材9は、所定の厚さを有して中空状に形成されている。なお、図2及び3には筐体2の上面だけを示しているが、筐体2の底面(下面)及び左右の側面においても上面と同様の構成である。
【0019】
また、筐体2の背面、すなわち、背面側フレーム部材9の背面には、後述する背面部21を取り付けるための固定手段10(10a,10b)が設けられている。
【0020】
図2又は3に示すように、筐体2の正面は正面部11が配設されることで形成されている。正面部11は、図1(a)に示すような道路情報を表した文字や図形が印刷によって描かれた、透光性を有する不燃繊維シート12(以下、単にシートと呼ぶ)が張設されてなり、筐体2の正面開口を閉塞している。シート12は、正面側フレーム部材8に設けられた引張機構13により上下左右の端部が引っ張られて平坦面となり、標識装置1の表示面を形成している。
【0021】
引張機構13は、シート12を張設するための支点となる支持部材14と、支持部材14の外側からシート12を引っ張るための引張部材15とからなる。支持部材14は、筐体2の正面側フレーム部材8の上下左右の各端縁に設けられている。支持部材14は、略三角形の断面となる金属部材からなり、正面側フレーム部材8の各端縁に沿ってレール状に延びている。また、支持部材14の突出した角(凸部16)はシート12の張設のための支点となる。この凸部16は、シート12のそれぞれの引張方向に対して直交する方向に曲面を有する形状に形成されている。さらに、引張部材15は、筐体2の各端縁に並んで設けられており、シート12の端部を挟み込んだまま所定の引張力を付与することにより、筐体2に配置されたシート12を上下左右に引っ張ることができる。
【0022】
図2又は3に示すように、筐体2の背面は前述した背面部21が配設されることで形成されている。背面部21は、筐体2に対して取り付け・取り外し自在に設けられている。また、背面部21は、標識装置1を逆光線による視認不良防止対策を施した標識とする場合と通常の標識とする場合とで構成が異なる。なお、図2には逆光線による視認不良防止対策を施した標識の例を示しており、図3には通常の標識の例を示している。
【0023】
図2に示すように、標識装置1を逆光線による視認不良防止対策を施した標識とする場合の背面部21は、透光性を有する不燃繊維シート(以下、シートと呼ぶ)22が張設されてなり、筐体2の背面開口を閉塞している。前述したように、背面側フレーム部材9の背面にはシート22の固定手段10(10a)が設けられている。シート固定手段10aは、筐体2の外形に沿って設けられた略矩形断面の凹部23と、凹部23の底面に所定間隔をあけて設けられた複数のねじ孔24aと、凹部23内に嵌入可能な略矩形断面のシート係止部材25と、凹部23よりも外側、すなわち、背面側に突出した角部26と、凹部23内にシート22の端部を配置した後にシート係止部材25を嵌入させた状態でこれらを介してねじ孔24aに取り付けられるねじ24bとにより構成されている。ねじ24bを締めると、シート22は、上下左右に引っ張られ、さらに、角部26が支点となって張設され、平坦面となる。
【0024】
図3に示すように、標識装置1を通常の標識とする場合の背面部21は、透光性を有しない、アルミ合金などのプレート27からなり、筐体2の背面開口を閉塞している。また、前述したように、背面側フレーム部材9の背面にはプレート27の固定手段10(10b)が設けられている。プレート固定手段10bは、筐体2の外形に沿って設けられ、一辺が開口して略コ字形断面となるプレート保持部28と、同様に筐体2の外形に沿って所定間隔をあけて設けられた複数のねじ孔29aと、プレート保持部28にプレート27の端部が挿入されて位置決めされた後にプレート27を介してねじ孔29aに取り付けられるねじ29bとにより構成されている。
【0025】
上述した実施の形態によれば、筐体2に対して取り付け・取り外し自在に設けられた背面部21として、シート22又はプレート27のどちらかを任意に選択することができる。すなわち、逆光線による視認不良防止対策を施した標識としたい場合にはシート22を選択し、通常の標識を選択したい場合にはプレート27を選択する。これにより、背面部21を交換すれば、通常の標識と逆光線による視認不良防止対策を施した標識のどちらかが得られることから、生産ラインを増やす必要がなくなるため、製造コストを抑えることができる。さらに、通常の標識と逆光線による視認不良防止対策を施した標識のどちらを製造するかによる生産ライン変更の必要がないため、生産性が低下しない。
【0026】
また、背面側フレーム部材9に、シート固定手段10aとプレート固定手段10bが別個に設けられたことにより、筐体2の形状を一定として、各固定手段10a,10bをシート22とプレート27のそれぞれに最適となるように設けることができる。
【符号の説明】
【0027】
1…標識装置
2…筐体
3…光源としての蛍光灯
10a…シート固定手段
10b…プレート固定手段
11…正面部
12…透光性を有するシート(不燃繊維シート)
21…背面部
22…透光性を有するシート
27…透光性を有しないプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒形状の筐体(2)内に配設された光源(3)により、前記筐体の正面となる表示面の裏側を照射し、該表示面の表側を発光表示する標識装置(1)において、
前記筐体の正面に配設され、文字及び/又は図形が描かれた透光性を有するシート(12)が張設されてなり、前記正面開口を閉じる正面部(11)と、
前記筐体の背面に配設され、前記背面開口を閉じる背面部(21)と、を具備するとともに、
前記筐体の前記背面部は取り付け・取り外し自在に設けられており、該背面部として透光性を有するシート(22)又は透光性を有しないプレート(27)からいずれかを選択可能としたことを特徴とする標識装置。
【請求項2】
前記筐体の背面には、前記透光性を有するシート(22)を取り付けるための固定手段(10a)と、前記透光性を有しないプレート(27)を取り付けるための固定手段(10b)とが別個に設けられたことを特徴とする請求項1記載の標識装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−72171(P2013−72171A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209488(P2011−209488)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(390028185)株式会社エダキン (5)
【出願人】(595015258)野原産業株式会社 (18)
【Fターム(参考)】