説明

模様入り結晶化ガラス物品及びその製造方法

【課題】反り変形等を起こさず、機械的強度、化学的及び熱的耐久性を有し、従来よりも色彩による意匠表現の自由度が広く、かつ外観として高級感及び透光性を向上させた模様入り結晶化ガラス物品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】模様入り結晶化ガラス物品の装飾ガラスレンガ10は、3層のガラス層が融着一体化され、中間層が結晶化ガラス層11よりなり、意匠面となる外層が、非晶質ガラス層12、13よりなり、非晶質ガラス層12、13は、結晶化ガラス層11との線膨張係数の差が15×10−7/K以下であって、厚さtが1mm〜10mmである。製造方法は、耐火性容器内の一面側から第一非晶質ガラス材料、結晶性ガラス小体、第二非晶質ガラス材料を順に配置し、軟化点以上で熱処理して融着一体化させると共に、結晶性ガラス小体を結晶化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の外装材や内装材及び装飾材としての使用に適する模様入り結晶化ガラス物品及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築用のガラスレンガ等は、通常の焼成レンガに比べて、透光性、化学的耐久性に優れており、透光性を利用したデザインで各種の提案がなされている。
【0003】
また、結晶化ガラス物品は、化学的耐久性、機械的強度等の特性に優れており、また石材、人工石材の人研、陶板、タイル、着色ガラス等とは異なる独特の外観を呈するため、新規なデザインを追及する各種の提案がなされている。
【0004】
この種のガラス物品として、特許文献1〜5には、結晶化するガラス及び非晶質のままでいる性質のガラスを用いて熱処理を行うことにより、結晶化ガラスの部位と、非晶質ガラスの部位とを有する模様入りガラス物品が開示されている。
【0005】
例えば、特許文献1には表面に透明なガラス層を有し、透明なガラス層の下にそれと融着した不透明な又は模様を持つガラス層を形成したガラス物品が開示されている。このガラス物品は表面層が透明なガラス層であるため透明感があり、下層のガラス面の模様に深みを持たせたものである。また、特許文献2には不透明部と透明部とを混合し拡散させて混在させることで、模様を形成した模様付ガラスの製造方法が開示されている。
【0006】
さらに、特許文献3にはソーダ石灰ガラスの粒子の融解ならびに結晶化によって製造される結晶化ガラス板において、一方の表面を形成する層と他方の表面を形成する層とこの両層の中間にある中間層とからなり、この中間層が両表面層の線膨張係数の中間の線膨張係数を持つものである結晶化ガラス材が開示されている。この結晶化ガラス材は、廃棄物ガラスを利用しながら美観を維持しつつ、熱膨張や熱収縮による歪に起因する割れや剥離を起こり難くしたものである。
【0007】
また、特許文献4には、結晶化度が50%以下の結晶化ガラスよりなる基板部分と非晶質ガラス及び無機顔料とで構成される表面部分が融着してなり、表面部分の非晶質ガラスが基板部分の結晶化ガラスより小さい比重を有している建材用結晶化ガラス物品が開示されている。この結晶化ガラス物品は、結晶化ガラス層の表面に着色を目的とした200μm以下のインク層を有するものである。
【0008】
また、特許文献5には、結晶析出量が5〜50質量%の結晶化ガラスの焼結体と、結晶化ガラスと非晶質ガラスとが反応して焼結体の一面の実質的に全表面を覆う反応層と、その表面積の20〜80%を分散して覆う非晶質ガラス層による透光面部とが模様を形成してなる表層を有する建築用装飾ガラス物品が開示されている。
【0009】
また、特許文献6には、異なる膨張係数を有する2種のガラスをそれぞれに用いた3層のガラス層が積層され互いに融着されており、3層のガラス層の中間に位置する中間層が、その両側の外層よりも高い膨張係数を有し、異種ガラス間の膨張係数差により応力を発生させて機械的強度を高めた建築用ガラス物品が開示されている。
【特許文献1】特開平4−50126号公報
【特許文献2】特開平4−42827号公報
【特許文献3】特開平7−172865号公報
【特許文献4】特開平8−225343号公報
【特許文献5】特開2007−186401号公報
【特許文献6】特開2006−8476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで近年、建築の多様化に伴って種々の外観を呈する建築材料が開発され、結晶化ガラスよりなる建築材料だけではなく、前記の特許文献1〜4に示した各種の模様入りガラス物品も開発されている。しかしながら、機械的強度、化学的耐久性、熱的耐久性を維持した上で、更に従来にない新規な外観デザインを呈するものが要求されている。
【0011】
また、特許文献5の建築用装飾ガラス物品は、意匠面の一面側のみに透明なガラス層を有しているので、反りの問題を避けるために結晶化ガラスとガラス層との線膨張係数の差を小さくする必要があり構成材料の選択が厳しく制限される問題がある。また、意匠面のみに透明なガラス層を有しているので、裏面の表情が単調であり、物品自体の透光性は小さく、透過光を使用する場合には装飾効果に劣る。
【0012】
また、特許文献6の建築用装飾ガラス物品は、非晶質のガラスのみを使用しているので、外観は、従来からの合わせガラスと同様なものであり、建材としてその意匠には目新しいさがないものである。
【0013】
本発明は、上記の事情に着目し、反り変形等の問題がなく、機械的強度、化学的耐久性、熱的耐久性を維持し、従来の建築用装飾ガラス物品よりも色彩による意匠表現の自由度が広く、さらに透光性向上させた外観として高級感がある模様入り結晶化ガラス物品及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る模様入り結晶化ガラス物品は、3層のガラス層が融着一体化され、中間層が結晶化ガラス層よりなり、意匠面となる外層が非晶質ガラス層よりなり、非晶質ガラス層は、結晶化ガラス層との線膨張係数の差が15×10−7/K以下であって、厚さが1mm〜10mmであることを特徴とする。
【0015】
本発明の模様入り結晶化ガラス物品で、3層のガラス層の中間層の結晶化ガラス層としては、例えば、結晶性ガラスよりなるガラス小体の一種に、軟化点より高い温度で熱処理を施すことにより、軟化変形しながら表面から内部に向かって針状の結晶が析出し、結晶析出量が5〜50質量%の大理石様の外観を呈する焼結体が適している。結晶化ガラス層の結晶析出量が5質量%未満ではガラス質が多いために、焼成時の粘性が低くなり過ぎて表面に多くの発泡が発生するだけではなく機械的強度も極度に低下する。一方、結晶析出量が50質量%を超えると、ガラス質が少なくなり焼成時の粘性が高くなり過ぎて、表面の平滑性が得られ難くなり、さらに所望の反応層が形成されず非晶質ガラス層との融着性が不十分になる。また、結晶析出量が50質量%を超えると、化学的耐久性、熱的耐火性、機械的強度が劣化し、所望の好適な模様が得に難くなる。結晶化ガラス層の結晶析出量としては、発泡の抑制及び表面の平滑性、更に強度特性を維持する上で10〜40質量%のものがさらに好ましい。
【0016】
また、本発明で3層のガラス層の外層を構成する非晶質ガラス層としては、耐候性に優れる硼珪酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス等の透明又は半透明な非晶質ガラスからなり、結晶化ガラス層に対して線膨張係数の差が15×10−7/K以下であって、厚さが1mm〜10mmであり、光沢面又は艶消し面等の意匠面として結晶化ガラス層に融着一体化されているものである。本発明は、例えば、結晶性ガラス小体が熱処理された焼結体からなる結晶化ガラス層の凹凸面を、外層として厚さ1mm〜10mmのガラス光沢を有する透光性の非晶質ガラス層が覆うことで、耐候性と従来にない高級感のある奥行きを伴う独特の模様を呈することを見出したものである。また、結晶化ガラス層の両面に厚さが1mm〜10mmの非晶質ガラス層を形成することで、模様入り結晶化ガラス物品の反り変形をほぼ完全に抑制することが可能となり、そればかりでなく模様入り結晶化ガラス物品の透光性が向上し、従来にない透過光及び反射光の演出が可能となる。非晶質ガラス層の厚さが1mm未満であると、意匠面の奥行きが殆ど感じられなくなる。一方、非晶質ガラス層の厚さが10mmを超えると結晶化ガラス層に対して非晶質ガラス層の割合が大きくなり、全体が結晶化ガラスである物品に比べて強度の点、及び破損時に散乱するガラス片が多く発生する点で劣る。
【0017】
また、本発明の模様入り結晶化ガラス物品は、結晶化ガラス層と非晶質ガラス層との線膨張係数の差が15×10−7/K以下であると、結晶化ガラス層と非晶質ガラス層との間に大きい熱応力が生じず、耐温度衝撃性、耐熱サイクル性に安定した性能を発揮するものとなる。一方、結晶化ガラス層と非晶質ガラス層との線膨張係数の差が15×10−7/Kを超えると、非晶質ガラス層が融着された後に、線膨張係数差に起因して生じる応力が大きくなり、割れが生じる虞がある。また、模様入り結晶化ガラス物品の寸法が大きくなるほど発生する応力も大きくなり、さらに割れが生じやすくなる。
【0018】
また、本発明の模様入り結晶化ガラス物品は、意匠面が光沢面又は艶消し面であることを特徴とする。
【0019】
本発明で意匠面が光沢面であるとは、非晶質ガラス層の表面が自由表面の火造り面に仕上げられてガラス光沢を有することを意味している。透明度の高い非晶質ガラス層の場合には、結晶化ガラス層の表面が容易に観察される状態になる。また、意匠面が艶消し面であるとは、非晶質ガラス層の表面が耐火物等に接触して艶消し状の火造り面に仕上げられて、結晶化ガラス層の表面が曇りガラス越しに観察される状態であることを意味している。この艶消し面は、種々の耐火物等に接触させることで、所望の平面や凹凸模様面に仕上げることも容易である。さらに艶消し面が、位置決めの基準となる平面を部分的又は全面的に有するものであることが施工性を向上させる点で好ましい。さらに、模様入り結晶化ガラス物品の一方の意匠面が光沢面であり、裏面は表面が艶消し状の平面形状であると、結晶化ガラス焼結体に非晶質ガラス層が融着一体化される際に、火造りによる光沢面となる意匠面に対して、裏面が艶消し状で判別が容易であり、かつ平面形状であることで施工も容易になる。また、模様入り結晶化ガラス物品の意匠面は、表裏両面とも光沢面又は艶消し面であってもよい。
【0020】
また、本発明の模様入り結晶化ガラス物品では、結晶化ガラス層は、質量百分率表示でSiO 45〜75%、Al 1〜25%、CaO 2〜25%、ZnO 0〜18%、BaO 0〜20%、MgO 0〜1.5%、SrO 0〜1.5%、NaO 1〜25%、KO 0〜7%、LiO 0〜5%、B 0〜1.5%、CeO 0〜0.5%、SO 0〜0.5、As 0〜1%、Sb 0〜1%、着色酸化物 0〜3%の組成を含有し、軟化点よりも高い温度の熱処理により主結晶としてβ−ウオラストナイト(CaO・SiO)を析出してなるものであることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の模様入り結晶化ガラス物品では、結晶化ガラス層は、成分としてLiO及びBaOを必須成分とし、成分の質量比でZnO/(BaO+MgO+SrO)が0.6以下、CaO/SiOが0.1〜0.5、(BaO+MgO+SrO)/CaOが0.3〜2.0、(LiO+NaO+KO)/CaOが0.1〜0.8の組成を含有し、結晶量が5質量%以上50質量%以下であることが、亜鉛華等の高価なZnO原料の使用を抑制して模様入り結晶化ガラス物品を安価に製造する上で好ましい。
【0022】
さらに、本発明の模様入り結晶化ガラス物品では、結晶化ガラス層が、酸化物換算の質量百分率表示でSiO 59〜63%、Al 6〜7%、CaO 14〜18%、ZnO 0〜4%、BaO 4〜5%、NaO 3〜4%、KO 2〜3%、LiO 0〜5%、B 0.3〜1.0、Sb 0.2〜0.4%の組成を含有するものであると、強度及び経済性等の点で好適となる。
【0023】
また、本発明の模様入り結晶化ガラス物品では、結晶化ガラス層は、屈伏点Tfが680℃以下であることが熱加工の自由度を広げる上で好ましい。屈伏点Tfが680℃を超えると、曲げ加工において曲率半径Rが300mm以下の場合に曲率精度の低下を生じる。曲げ加工においては金属製の型材が通常高温下での金属型材の利用は、型材の劣化及び変形を促進することになり好ましくない。
【0024】
本発明において、結晶化ガラスの各成分の含有量を限定した理由を以下に述べる。
【0025】
SiOはβ−ウォラストナイトの成分であり、その含有量が75%より多いとガラスの溶融温度が高くなるとともに、粘度が増大して熱処理時の流動性が悪くなる。一方、45%より少ないと成型時の失透性が強くなる。また、本発明ではSiOの含有量は59〜63%が好適である。
【0026】
Alは失透を抑制する成分であり、その含有量が25%より多いとガラスの溶解性が悪くなるとともに異種結晶(アノーサイト)が析出し熱処理時の流動性が悪くなる。一方、1%より少ないと失透性が強くなり化学的耐久性も低下する。また、本発明ではAlの含有量は6〜7%が好適である。
【0027】
CaOはβ−ウォラストナイトの成分であり、その含有量が25%よりも多いと失透性が強くなり成形が困難となり、又β−ウォラストナイトの析出量が多くなり過ぎて所望の表面平滑性が得難くなる。一方、2%より少ないとβ−ウォラストナイトの析出量が少なくなり過ぎて機械的強度が低下する。また、本発明ではCaOの含有量は14〜18%が好適である。
【0028】
ZnOは結晶化時のガラスの流動性を促進するために添加する成分であり、その含有量が18%より多いと、β−ウォラストナイトが析出し難くなって所望の特性が得られなくなる。また、本発明ではZnOを使用する場合には、その含有量は5〜7%が好適である。さらに、ZnOは高価な原料でもあるので、バッチ費用の低減を図るためには、含有量を1.8%以下の範囲内に抑制することが好ましい。
【0029】
BaOも結晶化時のガラスの流動促進するために添加する成分であり、含有量が20%より多いとβ−ウォラストナイトの析出量が少なくなる。また、本発明ではBaOの含有量は4〜5%が好適である。
【0030】
MgOはガラスの溶解性や流動性を促進させる成分であるが、3%より多くなると異種結晶を析出するため、流動性を阻害し、特性上も好ましくない。
【0031】
SrOはガラスの溶解性や流動性を促進させる成分であり、5%より多くなると異種結晶を析出するため、流動性を阻害し、特性上も好ましくない。
【0032】
NaOは溶融ガラスの粘性を低下させるアルカリ成分であり、その含有量が25%よりも多いと化学的耐久性が悪くなり、膨張係数が高くなるために建材として好ましくない。一方、1%より少ないとガラスの粘性が増大して溶解性や流動性が悪くなる。また、本発明ではNaOの含有量は3〜4%が好適である。
【0033】
Oは溶融ガラスの粘性を低下させるアルカリ成分であり、その含有量が7%より多いと化学的耐久性が低下する。また、本発明ではKOの含有量は2〜3%が好適である。
【0034】
LiOは結晶化速度を速める効果と流動性を促進する効果がある成分であり、その含有量が5%より多いと、線膨張係数が大きくなり、化学的耐久性が低下し、粘性も低下する。ZnOを使用しない場合には、LiO粘性の低下は熱処理工程において発泡を生じやすくなる。本発明ではLiOを使用する場合には、その含有量は0.1〜3%が好適である。
【0035】
はガラスの線膨張係数を変化させずに溶融ガラスの粘性を低下させる成分であり、その含有量が1.5%より多いと異種結晶が析出し、所望の特性が得られなくなる。また、本発明ではBの含有量は0.3〜1.0%が好適である。
【0036】
CeOは清澄剤としてのAs又はSbの添加が環境上好ましくないことから、As又はSbの何れかあるいはそれらの合量としての含有量が0.1%以下の場合における結晶化ガラスの白色度の急減を抑制するために使用する成分であり、CeOの含有量は0〜0.5%、好ましくは0.05〜0.3%である。さらにCeOは、還元雰囲気溶融において不純物として含有するFeによるFe2+の発色を抑制し、特にSO(三酸化硫黄)と共存する場合には発色抑制効果が顕著に現れる。CeOが0.5%より多いとCe4+による褐色の着色が強く現れるようになる。
【0037】
SOは清澄剤として機能する成分であり、その含有量は0〜0.5%、好ましくは0.02〜0.3%である。SOが0.5%より多いと異種結晶が析出する。
【0038】
Sb及びAsは清澄剤として機能する成分であるが、SbまたはAsを使用する場合、0.1%未満では清澄効果が低下するので、0.2〜0.4%が適量ではあるが、1%を超える使用は環境上好ましくない。
【0039】
本発明において、LiO及びBaOを必須成分とし、ZnO原料の添加量を削減することが、原料バッチ費用の低減を図り、かつ熱処理温度の上昇を抑制する上で好ましい。また、成分の質量比でZnO/(BaO+MgO+SrO)が0.6以下であるとBaO、MgO、SrOの何れかを一定量含有するため、結晶化工程により得られる天然大理石様結晶化ガラス物品の意匠面に所定の平滑性を確保することが可能となる。また、BaO+MgO+SrOの含有量に対してZnOの含有量が0.6以下であると、従来のようにZnOを多く含有させなくても、結晶化工程の熱処理温度の上昇を抑制することができる。また、ZnOを本質的に含有させない場合、製造工程等から不純物として混入する1000ppm以下のZnOは含有してもよい。
【0040】
本発明において、成分の質量比でCaO/SiOが0.1〜0.5の組成を含有するため、天然大理石様結晶化ガラス物品に適切なβ−ウォラストナイトの析出量を得ることが可能となる。すなわち、CaO/SiOが0.1未満であると結晶の析出量が不足して、建築材料に要求される機械的強度が不足して実用に耐えなくなる。一方、CaO/SiOが0.5を超えると結晶が過剰に析出して、結晶化工程において所定の平滑性を得ることができなくなる。熱処理温度の最適化と結晶化ガラスの機械的強度及び結晶化工程における結晶化ガラスの平滑性とのバランスを考慮すると、CaO/SiOが0.15〜0.3%であることが好ましい。
【0041】
また、成分の質量比で(BaO+MgO+SrO)/CaOが0.3〜2.0の組成を含有するため、天然大理石様結晶化ガラス物品の結晶量とガラス相の粘性とのバランスをとることが可能となる。すなわち、(BaO+MgO+SrO)/CaOが0.3未満であると非晶質ガラス相の粘性が上がるため、結晶化工程において天然大理石様結晶化ガラス物品の意匠面に所定の平滑性を得ることができなくなる。一方、質量比が2.0を超えるとガラス相の粘性が下がるため、結晶化工程において発泡して、表面に無数の発泡が現れる。また、熱処理温度の最適化と結晶化工程における天然大理石様結晶化ガラス物品の平滑性及び泡などの表面欠陥ない状況とのバランスを考慮すると、(BaO+MgO+SrO)/CaOが0.4〜1.6%であることが好ましい。
【0042】
さらに、成分の質量比で(LiO+NaO+KO)/CaOが0.1〜0.8の組成を含有するため、析出する結晶量と非晶質ガラス相の粘性とのバランスをとることが可能となる。(LiO+NaO+KO)/CaOが0.1未満であると、ガラス相の粘性が上がるため、結晶化工程において天然大理石様結晶化ガラス物品の意匠面に所定の平滑性を得ることができなくなる。一方、0.8を超えると結晶物の熱膨張係数が大きくなり、天然大理石様結晶化ガラス物品が建築材料として実用に耐えなくなる。天然大理石様結晶化ガラス物品の意匠面の平滑性と熱膨張係数のバランスを考慮すると、(LiO+NaO+KO)/CaOが0.3〜0.6%であることが好ましい。
【0043】
また、本発明では、LiOとBaOの合量が4.1〜18%であることが、ZnOを4%以下としたときに天然大理石様結晶化ガラスの屈伏点Tfの上昇を抑制することができるため好ましい。LiOとBaOの合量が4.1%未満であると、屈伏点Tfが上昇するので、それにともない結晶化工程の熱処理温度も上昇する。一方、18%を超えるとβ−ウォラストナイトの析出量が少なくなる。安定した意匠面の平滑性及び針状β−ウォラストナイトの好適な析出量を実現する上で、LiOとBaOの合量のより好ましい範囲は、7%を超え、14%以下である。
【0044】
また、本発明の模様入り結晶化ガラス物品は、非晶質ガラス層が、酸化物換算の質量百分率表示でSiO 70〜73%、Al 5〜7%、B 11〜14%、CaO 0.5〜1%、BaO 1〜2%、NaO 5〜7%、KO 1〜3%、Sb 0〜0.05%の組成を有する硼珪酸ガラスよりなると、高い化学的耐久性を実現することができるので好ましい。さらに上記の結晶化ガラスとの膨張係数差を調整するにも好ましく、軟化したガラスの粘性的にも調整しやすいために所望の模様も得やすい。
【0045】
本発明において、非晶質ガラスの各成分の含有量を限定した理由を以下に述べる。
【0046】
SiOはガラスのネットワークを形成する成分であり、その含有量が80%より多いとガラスの溶融温度が高くなるとともに、粘度が増大して熱処理時の流動性が悪くなる。一方、65%より少ないとアルカリ溶出量が多くなるとともに、耐薬品性や耐熱性が低くなって耐熱性が悪化する。本発明ではSiOの含有量は70〜73%が好適である。
【0047】
Alはガラスの耐熱性、耐失透性を高める成分であり、その含有量が8%より多いとガラスの溶解性が悪くなる。一方、2%より少ないと失透温度が著しく上昇して溶融ガラス中に失透が生じ易くなり、またガラスのアルカリ溶出量が多くなり化学的耐久性も低下する。本発明ではAlの含有量は5〜7%が好適である。
【0048】
はガラスの線膨張係数を変化させずに溶融ガラスの粘性を低下させる成分であり、その含有量が15%より多いと耐酸性や耐熱性が悪化する。一方、10%より少ないと融剤としての効果が不十分となる。本発明ではBの含有量は11〜14%が好適である。
【0049】
CaO、BaO及びZnOはともに高温域の粘度を下げてガラスの溶融を容易にする成分であり、CaOが3%、BaOが5%、ZnOが2%よりも多いと高温粘度が低下しすぎて相対的に液相粘度が低くなるため結晶が析出し易くなり、成型温度が著しく制限される。本発明ではCaOの含有量は0.5〜1%、BaO及びZnOは1〜2%が好適である。
【0050】
NaOは溶融ガラスの粘性を低下させるアルカリ成分であり、その含有量が7%よりも多いと化学的耐久性が悪くなり、線膨張係数が高くなる傾向になるために建材として好ましくない。一方、5%より少ないと溶融ガラスの粘性が増大して溶解性や流動性が悪くなる。本発明ではNaOの含有量は5〜7%が好適である。
【0051】
Oは溶融ガラスの粘性を低下させるアルカリ成分であり、その含有量が3%より多いとガラスのアルカリ溶出量が多くなり化学的耐久性が低下する傾向になる。一方、1%より少ないとガラスの溶融性が悪くなる。本発明ではKOの含有量は1〜3%が好適である。
【0052】
Sbは清澄剤として機能する成分であり、Sbを使用する場合、0.01%未満では清澄効果が低下するので、0.01〜0.05%が適量である。また、1%を超える使用は環境上好ましくない。
【0053】
また、本発明の模様入り結晶化ガラス物品は、結晶化ガラス層が、2種類以上の着色剤を含んでいることを特徴とする。
【0054】
本発明で、例えば、結晶化ガラス層を形成する結晶性ガラス小体に付着させる着色酸化物としては、ベージュ色を呈するNiO、ブルー色を呈するCoO、グレー色を呈するNiO−CoO等が使用可能であり、天然大理石模様の観点からNiO等が好適である。
【0055】
また、本発明の模様入り結晶化ガラス物品では、非晶質ガラス層に、ZrSiO、Co、MoO、Er、CeO、NiO、TiO、FeO及びFeの群のうち1種以上の着色剤を含んでいると、非晶質ガラス層に所望する幅広い範囲で任意の色調を得ることができ、良好な発色が得られる点で好ましい。
【0056】
使用する着色剤はガラスに溶解する、ZrSiO、Co、MoO、Er、CeO、NiO、TiO、FeO及びFeの群のうち1以上を含む着色剤により、着色されたものであることが、ガラスの流動性を阻害しない点で好ましいが、ZrSiOなどのピグメントでも1質量%までならば着色剤として使用することができる。この着色剤がZrSiOの場合、乳白色を呈し、Coの場合、青色を呈し、MoOの場合、乳白色を呈し、Erの場合、桃色を呈し、CeOの場合、桃色を呈し、NiOの場合、黄土色を呈し、TiOの場合、黄色を呈し、FeOの場合、黒色を呈し、Feの場合、赤褐色を呈するものになる。また、これらの着色剤を組み合わせることで、様々な色を呈する建築用ガラスレンガを得ることができる。さらに、他の酸化物着色剤と組み合わせて用いると、多くの彩色が可能となる。
【0057】
また、本発明の模様入り結晶化ガラス物品は、非晶質ガラス層に、発光剤を非晶質ガラス層の質量に対して1〜5質量%含んでいると、夜間、暗所で従来にない奥行き感を備えた発光模様の外観を有する意匠性に優れた新規な模様入り結晶化ガラス物品を提供することが可能となる。
【0058】
本発明で発光剤としては、例えば、1000℃を超える焼成温度でも発光性を失わなければ使用可能であり、SrAlにEu2+、Dy3+をドープした蓄光剤や、ZnSにCu、Al3+をドープした蛍光材等が適している。
【0059】
また、本発明の模様入り結晶化ガラス物品は、発光剤が、蓄光剤を含むものであると、光源がなくても光る点、光の演出の自由度が広がる点及び発光効率の点で優れた建築用ガラスレンガとなる。また、発光剤が、蛍光材を含むものであると、僅かな光で蛍光を発する点、パステル調で明るい印象を与える蛍光色による演出が可能となる点及び発光効率の点で優れた模様入り結晶化ガラス物品となる。
【0060】
本発明に係る模様入り結晶化ガラス物品の製造方法は、耐火性容器内の一面側から第一非晶質ガラス材料を配置し、次いで結晶性ガラス小体を配置し、次いで第二非晶質ガラス材料を配置する収容工程と、該耐火性容器内の前記各ガラス材料及び結晶性ガラス小体を、それらの軟化点以上の温度で熱処理することによって融着一体化すると共に、前記結晶性ガラス小体を結晶化させる熱処理工程とを有することを特徴とする。
【0061】
本発明の製造方法の収容工程としては、セラミック製耐火物等の耐火性容器内の一面側、即ち、底面側や、一方の内側壁面側等から順に、第一非晶質ガラス材料、結晶性ガラス小体、第二非晶質ガラス材料を配置するものである。第一非晶質ガラス材料と第二非晶質ガラス材料は、異なるガラス組成を有するものであってもよいが、同一のガラス組成を有するものであると、厚さを揃えることで反り変形を容易に抑制することが可能となり好ましい。また、第一、第二の非晶質ガラス材料の形態としては、板状でも使用可能であるが、粒状、フレーク状等であると多様な形状に対応することが容易である。さらに、第一、第二の非晶質ガラス材料の量は、熱処理後の厚さが1mm〜10mmになる量であればよく、意匠面に結晶化ガラス層が露出しないように充填配置することが、肝要である。
【0062】
また、本発明の製造方法の熱処理工程としては、耐火性容器内の各ガラス材料及び結晶性ガラス小体を、それらの軟化点以上の温度で熱処理することによって融着一体化すると共に、結晶性ガラス小体を結晶化させるとは、各ガラス材料のうち、最も高温の軟化点以上の温度で熱処理することを意味しており、各ガラス材料を相互に融着一体化するものである。また、結晶性ガラス小体として、高温の軟化点以上の温度で熱処理すると表面から針状結晶として、例えば、β−ウォラストナイト等を析出するものを使用することを意味している。また、結晶性ガラス小体として、表面から内部に向かって針状結晶を析出するものを使用することが、大理石様の模様を呈するものとなり意匠性に優れるので好ましい。
【0063】
また、本発明の模様入り結晶化ガラス物品の製造方法は、上記本発明の3層のガラス層が融着一体化され、中間層が結晶化ガラス層よりなり、意匠面となる外層が非晶質ガラス層よりなり、非晶質ガラス層は、結晶化ガラス層との線膨張係数の差が15×10−7/K以下であって、厚さが1mm〜10mmである模様入り結晶化ガラス物品を製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0064】
上記本発明の模様入り結晶化ガラス物品は、3層のガラス層が融着一体化され、中間層が結晶化ガラス層よりなり、意匠面となる外層が非晶質ガラス層よりなり、非晶質ガラス層は、結晶化ガラス層との線膨張係数の差が15×10−7/K以下であって、厚さが1mm〜10mmであるので、結晶化ガラスの焼結体と非晶質ガラス層との間に大きい熱応力が生じず、耐温度衝撃性、耐熱サイクル性に安定した性能を有し、製造時及び使用時の反り変形を抑制することが可能となる。
【0065】
また、本発明の模様入り結晶化ガラス物品は、意匠面が光沢面又は艶消し面であることで、意匠面の設計時の自由度が広くなる。さらに、意匠面の少なくとも一面が艶消し状平面であると、平面形状であることで施工が容易になるので好ましい。また、意匠面が光沢面又は艶消し面の非晶質ガラス層を任意に着色することで、従来の模様入り結晶化ガラス物品よりも色彩による意匠表現の自由度が広くなる。さらに、光沢面は外観として結晶化ガラス層の大理石様表面が透明ガラス層で被覆された奥行きを伴う独特の模様を呈する高級感があり、さらに光沢面と、その裏面側にも艶消し状の平面等を有する透明な非晶質ガラス層を形成して透光性を向上させた模様入り結晶化ガラス物品を提供することができる。
【0066】
本発明の模様入り結晶化ガラス物品の製造方法は、耐火性容器内の一面側から第一非晶質ガラス材料を配置し、次いで結晶性ガラス小体を配置し、次いで第二非晶質ガラス材料を配置する収容工程と、該耐火性容器内の前記各ガラス材料及び結晶性ガラス小体を、それらの軟化点以上の温度で熱処理することによって融着一体化すると共に、前記結晶性ガラス小体を結晶化させる熱処理工程とを有するので、結晶化ガラス層の大理石様等の表面が透明ガラス層で被覆された新規な外観を有し、かつ反り変形が抑制された上記本発明の模様入り結晶化ガラス物品を効率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0067】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明の実施形態を説明する。
【実施例1】
【0068】
建材用の模様入り結晶化ガラス物品として、図1(A)に装飾ガラスレンガ10の光沢面10aの写真を、図1(B)に光沢面10aの裏面側の艶消し状平面10bの写真を示し、また、図2(A)に装飾ガラスレンガ10の斜視スケッチ及び図2(B)に断面図を示す。本実施例1の装飾ガラスレンガ10は、概略寸法が縦197mm、横約97mm、厚さが約20mmで、結晶析出量が5〜50質量%の結晶化ガラス層11と、透光性の非晶質ガラス層12、13とが融着一体化されて光沢面10a及び艶消し状平面10bを形成してなるものである。この装飾ガラスレンガ10は、非晶質ガラス層12、13との界面部で凹凸を形成している白色の結晶化ガラス層11と、結晶化ガラス層11の凹凸を覆い、僅かに青みがかった色を呈して光沢面10aを有する透光性の非晶質ガラス層12とが相まって、意匠面に奥行き感のある模様を呈する新規な意匠を有するものとなった。また、非晶質ガラス層13が平面形状に形成された艶消し状平面10bも、過去にない意匠性を有するものであり、意匠面として装飾ガラスレンガ10の光沢面10aと艶消し状平面10bとを必要に応じて使い分けることで、新たな意匠表現の壁面を実現することができるものである。さらに、装飾ガラスレンガ10の外層として、高い耐候性を発揮する硼珪酸ガラスよりなる非晶質ガラス層12、13が被覆しているので、目地材を用いて壁面を構築した場合には結晶化ガラスよりなる結晶化ガラス層11が全く露出することが無く、新たな意匠表現のみならず高い耐候性をも発揮する壁面を実現することができるものである。また、装飾ガラスレンガ10の意匠面である光沢面10aと艶消し状平面10bが平面形状であるので、平面状の下地等に容易に施工することができるものである。
【0069】
また、装飾ガラスレンガ10は、結晶化ガラス層11の30℃〜380℃の温度範囲における平均線膨張係数が66×10−7/Kで、非晶質ガラス層12、13の同温度範囲における平均線膨張係数が52×10−7/Kであり、線膨張係数の差が15×10−7/K以下の14×10−7/Kである。さらに、透明な非晶質ガラス層12、13の厚さtは約2mmで、非晶質ガラス層12、13合計の厚さは、装飾ガラスレンガ10の厚さ20mmに対して約10%であり、装飾ガラスレンガ10の表裏方向の厚さ20mmに対して平均可視光透過率は0.32%であり、殆ど透光性を有しない従来の結晶化ガラスを使用した建築材に比べると非常に高い光透過率を有するものであった。このような透光性により、反射光による意匠表現に加えて、独特の柔らかな透過光による意匠表現が加わり、過去にない新たな外観を有するガラス建材を実現することができた。
【0070】
次に、実施例1の装飾ガラスレンガ10の製造方法について説明する。
【0071】
まず、質量百分率表示でSiO 73%、Al 6%、B 11%、CaO 1%、BaO 1%、NaO 6%、KO 2%の組成を含有するように調合したガラス原料を溶融し、この溶融ガラスをロールにて約1.5mmの厚みの薄板状品を成形した。その後、サイズが30mm以下のフレーク状になるようにクラッシャにて粗粉砕した。このようにして得た非晶質ガラス小体21を実施例に用いた。
【0072】
次に質量%でSiO 61.4%、Al 6.3%、CaO 16.2%、BaO 9.7%、B 0.4%、LiO 0.5%、NaO 3.2%、KO 1.9%、Sb 0.4%、すなわちCaO/SiOが0.26、(BaO+MgO+SrO)/CaOが0.60、(LiO+NaO+KO)/CaOが0.35の組成を含有するように調合したガラス原料を溶融し、この溶融ガラスを水中に投入して水砕し、結晶性ガラス小体22とした。
【0073】
次に、図3(A)に示すように、ムライト・コージエライト製の内寸が97mm×197mm、深さが150mmの耐火物製の型枠Vの内部に厚さ1mmのアルミナペーパーSをセットする。
【0074】
次いで、型枠Vの中に、最大30mmの薄片状のガラス小体21を装飾ガラスレンガ10の重量(2500g)の約5〜7%(125〜175g)を充填する。着色する場合には、青色の着色剤としてCoを0.005質量%、乳白色の着色剤として珪酸ジルコン(ZrSiO)を0.05質量%など、各々に所望する色調により添加するとよい。
【0075】
型枠V中のガラス小体21上に、最大10mmのザラメ状の結晶性ガラス小体22を装飾ガラスレンガ10の重量の約93〜95%(2325〜2375g)を充填する。着色する場合には、ベージュ色を呈するNiO、ブルー色を呈するCoO、グレー色を呈するNiO−CoO等、2種類以上の着色剤を所望する色調により添加するとよい。
【0076】
最後に、型枠V中の結晶性ガラス小体22上に、前記と同じ組成を有する最大30mmの薄片状のガラス小体21を装飾ガラスレンガ10の重量の約5〜7%を充填し、積層体20を形成する。
【0077】
焼成炉(シャトルキルンなど)に、内部に積層体20を有する耐火物型枠Vをセットし、最高温度950℃〜1100℃で、2〜4時間保持した後、徐々に温度を下げて冷却する。
【0078】
得られた装飾ガラスレンガ10は、母体の結晶化ガラス層11とガラス小体21が十分に流動した光沢面10aを有する透光性の硼珪酸ガラスよりなる非晶質ガラス層12及び艶消し状平面10bを有する非晶質ガラス層13とを融着一体化しているため、表裏両面に光を透過する層が形成されて、意匠面である光沢面10a及び艶消し状平面10bが過去にない深みのある表情となる。結晶化ガラス層11は、X線回折の結果、結晶析出量は約33質量%であり、β−ウォラストナイトを主結晶として析出していることが確認できた。この結晶化ガラス層11の線膨張係数を測定したところ66×10−7/Kであった。また、また、この装飾ガラスレンガ10は結晶化ガラス層11の表裏が硼珪酸ガラスで覆われて光沢面10a及び艶消し状平面10bとなっているため耐薬品性等の化学的耐久性にも優れている。
【0079】
上記の平均線膨張係数はブルカー・エイエックスエス株式会社製ディラトメータにて測定した。波長380〜780nmの範囲における平均透過率は、光学研磨された20×20×5mmの試料を作製し、株式会社島津製作所製分光光度計 UV2500PCで測定した。結晶析出量は、株式会社リガク製薄膜X線回折装置を用いて3回積算測定によるX線回折強度によって決定した。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明によれば、反り変形等の問題がなく、機械的強度、化学的耐久性、熱的耐久性を維持し、従来の装飾ガラスレンガ等よりも色彩のバリエーションに富み、かつ外観として高級感のある新規な模様入り結晶化ガラス物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の模様入り結晶化ガラス物品の写真であって、(A)は意匠面の写真 、(B)は裏面の写真。
【図2】本発明の模様入り結晶化ガラス物品の説明図であって、(A)は模様入り結晶化ガラス物品をスケッチした模式的な斜視図、(B)は(A)の断面図。
【図3】本発明の模様入り結晶化ガラス物品を製造する方法の説明図であって、(A)は耐火物製の型枠の断面図、(B)は裏面側の非晶質ガラス層を形成する作業の断面説明図、(C)は結晶化ガラスよりなる焼結体を形成する作業の断面説明図、(D)は意匠面側の非晶質ガラス層を形成する作業の断面説明図、(E)は焼成後の断面図。
【符号の説明】
【0082】
10 装飾ガラスレンガ(模様入り結晶化ガラス物品)
10a 光沢面
10b 艶消し状平面
10c 側面
11 結晶化ガラス層
12、13 非晶質ガラス層
20 積層体
21 非晶質ガラス小体
22 結晶性ガラス小体
t 非晶質ガラス層の厚さ
S アルミナシート
V 耐火物製の型枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3層のガラス層が融着一体化され、中間層が結晶化ガラス層よりなり、意匠面となる外層が非晶質ガラス層よりなり、非晶質ガラス層は、結晶化ガラス層との線膨張係数の差が15×10−7/K以下であって、厚さが1mm〜10mmであることを特徴とする模様入り結晶化ガラス物品。
【請求項2】
意匠面が、光沢面又は艶消し面であることを特徴とする請求項1に記載の模様入り結晶化ガラス物品。
【請求項3】
結晶化ガラス層は、質量百分率表示でSiO 45〜75%、Al 1〜25%、CaO 2〜25%、ZnO 0〜18%、BaO 0〜20%、MgO 0〜1.5%、SrO 0〜1.5%、NaO 1〜25%、KO 0〜7%、LiO 0〜5%、B 0〜1.5%、CeO 0〜0.5%、SO 0〜0.5、As 0〜1%、Sb 0〜1%、着色酸化物 0〜3%の組成を含有し、主結晶としてβ−ウォラストナイトを析出してなるものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の模様入り結晶化ガラス物品。
【請求項4】
非晶質ガラス層は、質量百分率表示でSiO 65〜80%、Al 2〜8%、B 10〜15%、CaO 0〜3%、BaO 0〜5%、ZnO 0〜2%、NaO 0〜7%、KO 0〜3%の組成を含有する硼珪酸ガラスよりなることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の模様入り結晶化ガラス物品。
【請求項5】
結晶化ガラス層に、2種類以上の着色剤を含んでいることを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の模様入り結晶化ガラス物品。
【請求項6】
非晶質ガラス層に、ZrSiO、Co、MoO、Er、CeO、NiO、TiO、FeO及びFeの群のうち1種以上の着色剤を含んでいることを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の模様入り結晶化ガラス物品。
【請求項7】
非晶質ガラス層に、発光剤を非晶質ガラス層の質量に対して1〜5質量%含んでいることを特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載の模様入り結晶化ガラス物品。
【請求項8】
発光剤が、蓄光剤を含むものであることを特徴とする請求項7に記載の模様入り結晶化ガラス物品。
【請求項9】
耐火性容器内の一面側から第一非晶質ガラス材料を配置し、次いで結晶性ガラス小体を配置し、次いで第二非晶質ガラス材料を配置する収容工程と、該耐火性容器内の前記各ガラス材料及び結晶性ガラス小体を、それらの軟化点以上の温度で熱処理することによって融着一体化すると共に、前記結晶性ガラス小体を結晶化させる熱処理工程とを有することを特徴とする模様入り結晶化ガラス物品の製造方法。
【請求項10】
請求項1から請求項8の何れかに記載の模様入り結晶化ガラス物品を製造することを特徴とする請求項9に記載の模様入り結晶化ガラス物品の製造方法。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−173526(P2009−173526A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281111(P2008−281111)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】