説明

模様塗膜を有する壁パネルとその塗装方法

【課題】自然で立体感のある意匠性を有した壁パネルを提供することを目的とする。
【解決手段】溝加工された壁パネルにおいて、溝部上に幅0.5〜5mmの自然ゆらぎ調形状の模様塗膜又は、溝部ないし溝部周辺に幅15〜300mmの溝ぼかし模様塗膜が形成されていることを特徴とする壁パネルとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁パネルおよび壁パネルの塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、タイル柄のような凹凸模様を有する建築板に対しては、立体感を持たせるために、溝部と意匠部の凸部にそれぞれ色の異なる塗料で塗装を施し、色の差によって立体感を出す等の工夫がなされている。その場合の一般的な塗装方法としては、例えば、初めにスプレー法により、建築板表面に溝部の色となる塗料を全面に塗装し乾燥させた後、ロールコート法により凸部塗装が施される。
また、凹凸部が形成されている基材に対して塗料を吐出するスプレーガンで斑点状の模様を付ける塗装方法によって、凹部の色と凸部の色を変化させるようにした塗装方法(特許文献1:特公平6−98338号公報)が開示されている。
【0003】
また、コンベア上を走行するタイル状の凹凸模様を有する建築板に対してコンベアを一旦停止させて四方からスプレーノズルによって暗色系の塗料を吹き付けて、そしてコンベアを連続走行させながら凸部の上面のみをロールコータによって明彩色の塗料を塗布するようにした建築用板の塗装方法(特許文献2:特開昭63−35471号公報)が開示されている。
しかし上記各従来技術では、凹凸を有する基材上にスプレーガンやロールコータにより塗料を塗布していくだけであるので、凹部(又は目地部)の傾斜面に塗布される色は凹部の最底部に施される色と同じになってしまい、結果的に凸部と凹部の各部の塗装色がはっきりと塗り分けられてしまうこととなり、自然な立体感が得られない、という問題があった。
【0004】
また、セメント板基材の意匠面の全面にスプレー法によって下塗り層を形成し、加熱乾燥させた後に、溝部に対してインクジェット印刷を施してインクジェット層を形成し、凸部に対してインクジェットフルカラー印刷を施してインクジェット塗装層を形成し、最後に意匠面の全面にスプレー法によってクリア塗装を施してクリア塗装層を形成する方法(特許文献3:特開2004−60241号公報)が開示されているが、インクジェット印刷により塗装層を形成させる方法は、生産性が低い、溝部の塗装層が直線的であり、自然な形状を有する溝部を表現する場合には適さない、等の課題を抱えている。
【特許文献1】特公平6−98338号公報
【特許文献2】特開昭63−35471号公報
【特許文献3】特開2004−60241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の課題を解決する為に創案されたもので、自然で立体感のある壁パネルおよびその塗装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は上記の課題を達成したものであり、それは次の通りである。
(1)溝加工された壁パネルにおいて、該壁パネルの溝部に意匠部と色調の異なる塗膜が形成され、かつ、該溝部上の塗膜は端面が、幅0.5〜5mmの自然ゆらぎ調形状の模様塗膜で形成されていることを特徴とする壁パネル。
(2)溝加工された壁パネルにおいて、該壁パネルの溝部ないし溝部周辺に意匠部と色調の異なる塗膜が形成され、かつ、該溝部上ないし溝部周辺の塗膜は、幅15〜300mmの溝ぼかし模様塗膜で形成されていることを特徴とする壁パネル。
(3)(2)記載の壁パネルにおいて、さらに、溝部に色調の異なる塗膜が形成され、かつ、該溝部上の塗膜は端面が、幅0.5〜5mmの自然ゆらぎ調形状の模様塗膜で形成されていることを特徴とする壁パネル。
【0007】
(4)溝加工された壁パネルの塗装方法において、溝部、意匠部全体が塗装された壁パネルの溝部に対して、口径0.3〜3.0mm、アトマイズエアー圧力0.02〜0.3mPaの微細噴霧ノズルで、粘度2,000〜30,000mPa・sに調整した色調の異なる塗料を所定の高さから噴霧することにより、該溝部上に端面が、幅0.5〜5mmの自然ゆらぎ調形状の模様塗膜を形成させることを特徴とした、(1)記載の壁パネルの塗装方法。
(5)溝加工された壁パネルの塗装方法において、溝部、意匠部全体が塗装された壁パネルの溝部に対して、口径0.3〜3.0mm、アトマイズエアー圧力0.02〜0.3mPaの微細噴霧ノズルで、粘度2,000〜30,000mPa・sに調整した色調の異なる塗料を所定の高さから噴霧することにより、溝部ないし溝部周辺に幅15〜300mmの溝ぼかし模様塗膜を形成させることを特徴とした、(2)記載の壁パネルの塗装方法。
【0008】
(6)溝加工された壁パネルの塗装方法において、溝部、意匠部全体が塗装された壁パネルの溝部に対して、口径0.3〜3.0mm、アトマイズエアー圧力0.02〜0.3mPaの微細噴霧ノズルで、粘度2,000〜30,000mPa・sに調整した色調の異なる塗料を所定の高さから噴霧することにより、溝部ないし溝部周辺に幅15〜300mmの溝ぼかし模様塗膜を形成させ、ついで色調の異なる塗料を同じように噴霧することにより、該溝部上に端面が、幅0.5〜5mmの自然ゆらぎ調形状の模様塗膜を形成させることを特徴とした、(3)記載の壁パネルの塗装方法。
以下、本発明について図1〜図17を参照して詳細に説明する。
【0009】
本発明の下地に用いる壁パネルとは、溝加工され、タイル調、レンガ調、古レンガ調、砂岩調、岩肌調、等の意匠性を有したセメント板、ALCパネル等からなり、その表面に、下塗り塗膜を形成させたもの、又は、該下塗り塗膜の上に中塗り塗膜まで形成させたもの、等をいう。
また本発明に用いる下塗り塗料、中塗り塗料とは、例えば、アクリル樹脂、スチレン・アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル・シリコーン樹脂、等の塗料用バインダーを、水に分散してエマルションとした樹脂溶液に、二酸化チタン、黒色酸化鉄、ベンガラ、クロムグリーン、カーボンブラック、銅フタロシアニン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、クレー、等の無機もしくは有機顔料、及び分散剤、消泡剤、レベリング剤、増粘剤、成膜助剤、防カビ剤、等の添加剤を必要量添加し、混合及び分散させたものをいう。
【0010】
セメント板、ALCパネルに下塗り塗膜を形成させる場合は、一般的な塗装方法を採用することができる。例えば、刷毛塗り、スプレー塗装、ローラー塗装、ロールコータによる塗装等が挙げられ、該パネルの防水性能を十分確保できるように、パネルの全面に塗装するのが良い。
本発明の塗装に用いる塗料とは、例えば、アクリル樹脂、スチレン・アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル・シリコーン樹脂、等の塗料用バインダーを、水に分散してエマルションとした樹脂溶液に、二酸化チタン、黒色酸化鉄、ベンガラ、クロムグリーン、カーボンブラック、銅フタロシアニン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、クレー、等の無機もしくは有機顔料、及び分散剤、消泡剤、レべリング剤、増粘剤、成膜助剤、防カビ剤、等の添加剤を必要量添加し、混合及び分散させたものをいう。
【0011】
本発明でいう「自然ゆらぎ調形状」とは、後述された塗装方法で、溝部上に塗料を塗布することによって得られる形状であり、図2、図3で示されるように模様塗膜3の端面は山部と谷部で構成される。該自然ゆらぎ調形状の幅4とは、図4に示すように、該模様塗膜3の端面の山部と谷部の距離をいい、0.5〜5mmの範囲が一般的であるが、使用する壁パネルの柄、得ようとする意匠性等によって選択することが出来る。
また本発明でいう「溝ぼかし模様」とは、後述された塗装方法で、溝部上と溝部周辺に塗料を塗布することによって得られる形状であり、図5、図6で示されるように溝部上の塗着量が最も多く、該溝部から遠ざかるにつれて徐々に塗着量が減少しているため、溝部をぼかしたように見える。溝ぼかし模様の幅5とは、図7に示すように、塗装範囲の幅をいい、15〜300mmの範囲が一般的であるが、使用する壁パネルの柄、得ようとする意匠性等によって選択することが出来る。
【0012】
次に、本発明の塗装方法について図14〜図17を参照して説明する。
本発明に用いる微細噴霧ノズル11とは、スプレーパターンを構成する個々のスプレー粒子のサイズ(スプレー粒子径)が小さく、液体を均一散布出来るものであれば良く、一般的には、スプレー注入、巻き取り紙へのスプレー、加湿及び給湿、離型剤噴霧、等に使われているものであれば良い。
該微細噴霧ノズル11のスプレーパターンは、フルコーン、フラットスプレー等が良く、フルコーンの場合は、円形、楕円形、四角形、等があるが、基材溝部の形状及び溝部の寸法に合わせたものを選択して使用するのが良い。
【0013】
該微細噴霧ノズル11の口径は、0.3〜3.0mmの範囲であれば良いが、得ようとする溝模様塗膜3の形状によって選択するのが良い。「自然ゆらぎ調形状の模様」の場合は0.5〜2.0mmが好ましく、「溝ぼかし模様」の場合は1.0〜3.0mmが好ましい。口径が0.5mm未満の場合は、ノズル先端部で塗料が固化しノズル穴が閉塞し易くなる、塗料12に含まれる原材料の粒子がノズル穴に詰まり易くなる、等の問題がある。また、「自然ゆらぎ調形状の模様」の場合、ノズル口径が2.0mmを超えると、スプレーパターンが大き過ぎて溝部8の寸法に合わなくなる、噴霧時の抵抗が小さ過ぎて均一なスプレーパターンが得られ難い、等の問題がある。「溝ぼかし模様」の場合、ノズル口径が3.0mmを超えると、スプレーパターンが大き過ぎて適正な溝ぼかし模様が得られなくなる、噴霧時の抵抗が小さ過ぎて均一なスプレーパターンが得られ難い、等の問題がある。
【0014】
該微細噴霧ノズルに供給するアトマイズエアーの圧力は、0.02〜0.3mPaの範囲であれば良いが、好ましくは0.03〜0.1mPaが良い。該エアー圧力は、塗料粘度、塗料流量、溝部への塗装面積、溝部底面からノズル先端部までの距離、等により決定される。該エアー圧力は、0.03mPa未満だと圧力が低過ぎて均一なスプレーパターンは得られ難く、0.1mPaを超えると、スプレーパターンの幅が広すぎて、「自然ゆらぎ調形状の模様」、「溝ぼかし模様」を得るには適さなくなる。
本発明の塗装方法において、溝部底面10から該ノズル11の先端部までの距離(以下、hと呼ぶ)は、3〜600mmの範囲であれば良いが、得ようとする模様塗膜の種類によってhを決める。
【0015】
「自然ゆらぎ調形状の模様」は、塗料12をスプレー状態で溝部底面10、溝部斜面9に衝突させながら塗装することによって得られる。これは、塗料12が溝部8の中で拡散や跳ね返りを起こしながら塗布されるためであり、hの大きさが該自然ゆらぎ形状に影響する。hは5〜50mmの範囲が好ましい。
「溝ぼかし模様」は、塗料12をスプレー状態で溝部8、溝部周辺に塗布することによって得られる。hの大きさにより、塗装範囲が変化するため、壁パネルの柄、溝ピッチに合わせて設定するのが良く、50〜300mmの範囲が好ましい。
スプレーパターンの特性から、一般的には、hを小さくすると細い模様塗膜3が得られ、hを大きくすると太い模様塗膜が得られる。hが3mm未満の場合、ノズル先端部と基材表面が接触する危険性があるため実用的ではなく、また、hが600mmを超えると、模様塗膜が太くなり過ぎて適正な形状が得られなくなる、等の問題が発生するためである。
【0016】
該微細噴霧ノズル11の塗料シャットオフニードル20、エアー駆動シリンダー21は、該ニードル20がノズル内で動作することによって、塗料12の噴霧を開始させたり、停止させたりするためのものである。壁パネルの場合、タイル柄やレンガ柄等の意匠性を表現したものが多いため、長辺方向の溝部8又は短辺方向の溝部8は、必ずしも連続した長さのものばかりではなく、ある一定の長さで断続的に存在するものも多くある。こういった場合、該ニードル20、エアー駆動シリンダー21を微細噴霧ノズル11に装備することによって、長さの短い断続溝等に対しても、本発明の塗装が可能になる。
該塗料の粘度は、2,000〜30,000mPa・sの範囲であれば良いが、好ましくは5,000〜15,000mPa・sの範囲が良い。塗料粘度が5,000mPa・s未満だと、「自然ゆらぎ調形状の模様」の場合、スプレー粒子径が小さ過ぎて、塗装部と未塗装部の境界がぼやけて見え、外観上良好な溝模様塗膜3が得られ難いためであり、また、15,000mPa・sを超えると、スプレー粒子径が大き過ぎて、均一なスプレーパターンが得られ難いためである。
【0017】
該塗料12の塗布量は、溝模様として識別できる膜厚を確保していること、また、建物の外壁として使用する際、性能上の問題が無い塗膜が形成されること、等が条件となるが、塗布量は、塗料流量、アトマイズエアーの流量又は圧力、該微細噴霧ノズル11又は基材の走行速度、等によってコントロールすることが出来る。
本発明の塗装に用いるポンプは、粘度2,000〜30,000mPa・sの塗料を定量移送出来るものであれば何でも良いが、低粘度型ポンプや脈動を生じ易いポンプ等は塗料流量安定性、塗装精度、等に影響を与えるため、使用が難しい。例えば、無脈動で定量移送出来るモーノポンプ等が適している。
【0018】
本発明に用いる塗装装置は図16、17に示す通り、該微細噴霧ノズル11、塗料供給配管15、塗料循環配管18、塗料ホッパー14、塗料送液ポンプ13、塗料制御用バルブ17、等から成る装置であれば良い。
該塗装装置には、「循環」と「スプレー塗装」の2つの状態がある。
「循環」とは、図16に示す通り、塗料ホッパー14の中にある塗料12が塗料送液ポンプ13により塗料供給配管15を通って微細噴霧ノズル11の内部まで送られ、その後、塗料循環配管18を通って再び塗料ホッパー14に戻ってくる状態をいう。
また、「スプレー塗装」とは、図17に示す通り、塗料ホッパー14の中にある塗料12が送液ポンプにより塗料供給配管15を通って微細噴霧ノズル11の内部まで送られ、ノズル11の先端部より塗料12が噴霧する状態をいう。
【0019】
ここで、「循環」状態における圧力損失を△P1、「スプレー塗装」状態における圧力損失を△P2とする。この場合、△P1=△P2とするのが、本発明の模様塗膜3を均一に形成させるための理想条件となる。例えば、△P1>△P2の条件でスプレー塗装を開始した場合は、循環時の残圧(△P1−△P2>0)がスプレーパターンに影響するため、塗装開始部分の模様塗膜3は大きな楕円型になり易く、外観上、見苦しくなる場合がある。また、△P1<△P2の条件でスプレー塗装を開始した場合は、循環時の残圧は存在しないものの、スプレー塗装されるまでに時間を要する等の応答遅れが生じ、結果的には、塗装開始部分の模様塗膜3が細くなる、模様塗膜が短くなる、等の問題を生じる。
【0020】
これらの問題点を解決するために創案したのが、初めに△P1>△P2の条件で装置を組み、塗料循環中に発生する循環配管の残圧(△P1−△P2)を除去した後に、塗装を開始する方法である。例えば、基材溝部8に対してスプレー塗装を開始する前に、微細噴霧ノズルから塗料を基材から離れた場所で捨て吹きをして塗料配管内の圧力を低下させ、△P2とほぼ同じ値になった状態からスプレー塗装を開始する方法、又は、塗料循環配管に予め圧力調節弁やバイパス配管等を取り付けておき、スプレー塗装開始前に、圧力調節弁を開放、または、圧力損失の小さいバイパス配管に切り替えることによって塗料配管内の圧力を低下させ、△P2とほぼ同じ値になった状態からスプレー塗装を開始する方法、等が挙げられる。
【0021】
本発明の塗装方法は、図14、15に示す通り、壁パネルを固定し、微細噴霧ノズル11を直接移動させながら塗装する方法でも良く、微細噴霧ノズル11を固定し、基材移動させながら塗装する方法でも良い。前者の場合は、該微細噴霧ノズルを多関節のアームロボット等に連結して塗装する方法、後者の場合は、門型に該微細噴霧ノズル11を必要量列設して塗装する方法、等が挙げられる。
本発明の壁パネルにおける塗膜の層構成は、下塗りによって壁パネルを全面塗装した後、溝部8、溝部8と溝部周辺に模様塗膜3を形成させたもの、さらに上記に、クリアー塗膜を形成させたもの、または、下塗り、中塗りによって基材を全面塗装した後、溝部8、溝部8と溝部周辺に模様塗膜3を形成させたもの、さらに、上記に、クリアー塗膜を形成させたもの、等が一般的である。
【0022】
下塗り塗料、中塗り塗料、溝部用塗料、クリアー塗料の乾燥は、自然乾燥、強制乾燥のどちらを選択しても良い。生産性を重視する場合は、熱風循環式乾燥機、赤外線ランプ、ジェットゾーン乾燥機、等を選択するのが良いが、使用する塗料の種類、水希釈率、粘度、塗布量等に適した乾燥条件(乾燥温度、風速、乾燥時間)にするのが良い。また自然乾燥の場合は、室温10〜30℃程度の乾燥室で生産するのが一般的であるが、生産条件(生産量、塗装室の面積)または、使用する塗料の種類、水希釈率、粘度、塗布量等に適した乾燥条件(乾燥温度、風速、湿度、乾燥時間)にするのが望ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明よれば、容易に自然で立体感のある塗装された壁パネルを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、実施例、比較例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例1〜5、比較例1〜2において使用した壁パネルは、図1に示すような溝8の加工をしたALCパネル1に下塗り塗装2を施したものとした。また、実施例1、2、5、比較例1は、タイル調の意匠性を有したALCパネルとし、実施例3、4、比較例2は、レンガ調の意匠性を有したALCパネルとした。
評価方法は模様塗膜を形成させたALCパネルを作製し、溝模様の形状・寸法評価、及びパネルの意匠性評価について行った。
【実施例1】
【0025】
タイル調ALCパネルの表面に対して、口径1.5mm、アトマイズエアー圧力0.03mPaの微細噴霧ノズルを用い、h=20mm、ノズル走行速度500mm/secの条件で、粘度10,200mPa・sに調整したアクリル・シリコーンを主成分とした塗料を1.0g/mの塗着量となるようにして噴霧し、幅1mmの自然ゆらぎ調形状の模様を有する図2、3に示すようなALCパネルを得た。該パネルの意匠性を評価した結果、自然で立体的なタイル調意匠を有していることを確認した。
【実施例2】
【0026】
タイル調ALCパネルの表面に対して、口径1.5mm、アトマイズエアー圧力0.04mPaの微細噴霧ノズルを用い、h=100mm、ノズル走行速度1,000mm/secの条件で、粘度10,400mPa・sに調整したアクリル・シリコーンを主成分とした塗料を1.0g/mの塗着量となるようにして噴霧し、幅55mmの溝ぼかし模様を有する図5、6に示すようなALCパネルを得た。該パネルの意匠性を評価した結果、自然で深みのあるタイル調意匠を有していることを確認した。
【実施例3】
【0027】
レンガ調ALCパネルの表面に対して、口径1.0mm、アトマイズエアー圧力0.03mPaの微細噴霧ノズルを用い、h=15mm、ノズル走行速度500mm/secの条件で、粘度10,200mPa・sに調整したアクリル・シリコーンを主成分とした塗料を0.8g/mの塗着量となるようにして噴霧し、幅1mmの自然ゆらぎ調形状の模様を有する図8、9に示すようなALCパネルを得た。該パネルの意匠性を評価した結果、自然で立体的なレンガ調意匠を有していることを確認した。
【実施例4】
【0028】
レンガ調ALCパネルの表面に対して、口径1.2mm、アトマイズエアー圧力0.04mPaの微細噴霧ノズルを用い、h=150mm、ノズル走行速度500mm/secの条件で、粘度10,000mPa・sに調整したアクリル・シリコーンを主成分とした塗料を1.0g/mの塗着量となるようにして噴霧し、幅60mmの溝ぼかし模様を有する図10、11に示すようなALCパネルを得た。該パネルの意匠性を評価した結果、自然で深みのあるレンガ調意匠を有していることを確認した。
【実施例5】
【0029】
実施例2で作製した図5に示すような溝ぼかし模様塗膜を有するタイル調意匠のALCパネルの表面に対して、さらに、口径1.5mm、アトマイズエアー圧力0.03mPaの微細噴霧ノズルを用い、h=20mm、ノズル走行速度500mm/secの条件で、粘度10,200mPa・sに調整したアクリル・シリコーンを主成分とした塗料を1.0g/mの塗着量となるようにして噴霧し、幅1mmの自然ゆらぎ調形状の模様を有する図12、13に示すようなALCパネルを得た。該パネルの意匠性を評価した結果、立体的、深みのある自然なタイル調意匠を有していることを確認した。
[比較例1]
【0030】
タイル調ALCパネルの表面に対して、ロールコート法により、粘度2,000mPa・sに調整したアクリル・シリコーンを主成分とした塗料を0.05kg/mの塗着量となるように塗装し、2色塗装ALCパネルを得た。該パネルの意匠性を評価した結果、該ALCパネルには立体感は無く、単調なタイル調意匠を有していた。
[比較例2]
レンガ調ALCパネルの表面に対して、ロールコート法により、粘度1,500mPa・sに調整したアクリル・シリコーンを主成分とした塗料を0.05kg/mの塗着量となるように塗装し、2色塗装ALCパネルを得た。該パネルの意匠性を評価した結果、該ALCパネルには立体感は無く、単調なレンガ調意匠を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、建築構造体の壁パネルおよび壁パネルの塗装方法として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例1〜4、比較例1〜2に用いたALCパネルを示す断面図である。
【図2】実施例1で作製した自然ゆらぎ調形状の模様塗膜を有するタイル調ALCパネルを示す平面図である。
【図3】実施例1で作製した自然ゆらぎ調形状の模様塗膜を有するタイル調ALCパネルを示す断面図である。
【図4】実施例1、3で作製した自然ゆらぎ調形状の幅を示す平面図である。
【図5】実施例2で作製した溝ぼかし模様塗膜を有するタイル調ALCパネルを示す平面図である。
【図6】実施例2で作製した溝ぼかし模様塗膜を有するタイル調ALCパネルを示す断面図である。
【図7】実施例2、4で作製した溝ぼかし模様の幅を示す平面図である。
【図8】実施例3で作製した自然ゆらぎ調形状の模様塗膜を有するレンガ調ALCパネルを示す平面図である。
【図9】実施例3で作製した自然ゆらぎ調形状の模様塗膜を有するレンガ調ALCパネルを示す断面図である。
【図10】実施例4で作製した溝ぼかし模様塗膜を有するレンガ調ALCパネルを示す平面図である。
【図11】実施例4で作製した溝ぼかし模様塗膜を有するレンガ調ALCパネルを示す断面図である。
【図12】実施例5で作製した溝ぼかし模様塗膜及び自然ゆらぎ調形状を有するタイル調ALCパネルを示す平面図である。
【図13】実施例5で作製した溝ぼかし模様塗膜及び自然ゆらぎ調形状を有するタイル調ALCパネルを示す断面図である。
【図14】本発明の塗装方法でALCパネルの溝部に自然調ゆらぎ形状の模様を塗装している様子を表す断面図である。
【図15】本発明の塗装方法でALCパネルの溝部に溝ぼかし模様を塗装している様子を表す断面図である。
【図16】本発明の塗装方法に用いる塗装装置の「循環」状態を模式的に表す図面である。
【図17】本発明の塗装方法に用いる塗装装置の「スプレー塗装」状態を模式的に表す図面である。
【符号の説明】
【0033】
1 ALCパネル
2 下塗り塗膜
3 模様塗膜
4 自然ゆらぎ調形状の幅
5 溝ぼかし模様の幅
6−1) タイル調ALCパネル
6−2) レンガ調ALCパネル
7 意匠部
8 溝部
9 溝部斜面
10 溝部底面
11 微細噴霧ノズル
12 塗料
13 塗料送液ポンプ
14 塗料ホッパー
15 塗料供給配管
16 圧力計
17 塗料制御用バルブ
18 塗料循環配管
19 ノズル開閉エアー
20 塗料シャットオフニードル
21 エアー駆動シリンダー
22 微細噴霧ノズルを移動させる方向
23 基材を移動させる方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝加工された壁パネルにおいて、該壁パネルの溝部に意匠部と色調の異なる塗膜が形成され、かつ、該溝部上の塗膜は端面が、幅0.5〜5mmの自然ゆらぎ調形状の模様塗膜で形成されていることを特徴とする壁パネル。
【請求項2】
溝加工された壁パネルにおいて、該壁パネルの溝部ないし溝部周辺に意匠部と色調の異なる塗膜が形成され、かつ、該溝部上ないし溝部周辺の塗膜は、幅15〜300mmの溝ぼかし模様塗膜で形成されていることを特徴とする壁パネル。
【請求項3】
請求項2記載の壁パネルにおいて、さらに、溝部に色調の異なる塗膜が形成され、かつ、該溝部上の塗膜は端面が、幅0.5〜5mmの自然ゆらぎ調形状の模様塗膜で形成されていることを特徴とする壁パネル。
【請求項4】
溝加工された壁パネルの塗装方法において、溝部、意匠部全体が塗装された壁パネルの溝部に対して、口径0.3〜3.0mm、アトマイズエアー圧力0.02〜0.3mPaの微細噴霧ノズルで、粘度2,000〜30,000mPa・sに調整した色調の異なる塗料を所定の高さから噴霧することにより、該溝部上に端面が、幅0.5〜5mmの自然ゆらぎ調形状の模様塗膜を形成させることを特徴とした、請求項1記載の壁パネルの塗装方法。
【請求項5】
溝加工された壁パネルの塗装方法において、溝部、意匠部全体が塗装された壁パネルの溝部に対して、口径0.3〜3.0mm、アトマイズエアー圧力0.02〜0.3mPaの微細噴霧ノズルで、粘度2,000〜30,000mPa・sに調整した色調の異なる塗料を所定の高さから噴霧することにより、溝部ないし溝部周辺に幅15〜300mmの溝ぼかし模様塗膜を形成させることを特徴とした、請求項2記載の壁パネルの塗装方法。
【請求項6】
溝加工された壁パネルの塗装方法において、溝部、意匠部全体が塗装された壁パネルの溝部に対して、口径0.3〜3.0mm、アトマイズエアー圧力0.02〜0.3mPaの微細噴霧ノズルで、粘度2,000〜30,000mPa・sに調整した色調の異なる塗料を所定の高さから噴霧することにより、溝部ないし溝部周辺に幅15〜300mmの溝ぼかし模様塗膜を形成させ、ついで色調の異なる塗料を同じように噴霧することにより、該溝部上に端面が、幅0.5〜5mmの自然ゆらぎ調形状の模様塗膜を形成させることを特徴とした、請求項3記載の壁パネルの塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−705(P2007−705A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−181135(P2005−181135)
【出願日】平成17年6月21日(2005.6.21)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】