説明

横押し型プッシュスイッチ

【課題】可動接点としてのドーム状金属板の良好な動作特性を得ることができる小形、薄形で接触信頼性の高い1段動作タイプ及び2段動作タイプの横押し型プッシュスイッチを提供する。
【解決手段】押しボタン11の移動方向の操作力をドーム状金属板の動作方向に変換する傾斜部9aと、この傾斜部9aをドーム状金属板の動作方向に移動させる可撓性を持ったヒンジ部9bと、ドーム状金属板を押し下げる押圧部9cと、を一体に形成した押し子9を備える。またドーム状金属板6,7をその動作方向に2段で設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話機や携帯オーディオプレーヤ等の側面操作用の操作スイッチとして用いられる小形・薄形の横押し型プッシュスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の横押し型プッシュスイッチでは、その小形、薄形を実現するために基板への実装を面実装で行い、可動接点にばね性を持ったドーム状金属板を用いるものが多く、横方向の操作力をその操作方向とは垂直方向に変換してドーム状金属板に伝達し、そのドーム状金属板を押し下げて動作させるようになっている。
【0003】
このような従来の横押し型プッシュスイッチとしては、特許文献1で示すものが知られており、1枚のドーム状金属板がハウジングの内底面に設置され、押しボタンはハウジングに支持され、ハウジングの側部より突出した操作部の押圧操作に伴いドーム状金属板の動作方向とは垂直方向に案内されて移動する。そして、押しボタンに操作部と一直線上で一体に形成する可撓性を持ったヒンジ部と、ハウジングに取り付くカバーに一体に形成し押しボタンの移動方向の操作力をドーム状金属板の動作方向に変換する傾斜部と、を備え、ヒンジ部の先端が傾斜部上で摺動することで、操作部の押圧操作に伴う押しボタンの移動方向の操作力を押しボタンの移動方向とは垂直方向のドーム状金属板の動作方向に変換している。
【特許文献1】特開2005−122989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように従来の横押し型プッシュスイッチは、横方向の操作力をその操作方向とは垂直方向のドーム状金属板の動作方向に変換する部品(傾斜部)と、その部品をドーム状金属板の動作方向に移動させる部品(ヒンジ部)と、を別体に備えているので、操作力をそのままドーム状金属板に伝達し得ず、それに加えて、ドーム状金属板の略中心部を精度よく押圧し得ないため、ドーム状金属板の良好な動作特性を得ることが難しい。
【0005】
また、傾斜部とヒンジ部とが別体で、それぞれの支持がハウジングで行われ、傾斜部とヒンジ部との位置精度が悪いことも、ドーム状金属板の良好な動作特性を得る上での障害となっている。
【0006】
さらに、操作部の押圧操作に伴う押しボタンの移動規制(ストローク規制)もまたハウジングとの間で行われ、ドーム状金属板の過剰な押し下げを招く押しボタンのオーバーストロークを精度よく制限し得ないことも、ドーム状金属板の良好な動作特性を得る上での障害となっている。
【0007】
また、ヒンジ部は略水平姿勢から撓んで弾性変形しながら下方向に押し下げられて、ドーム状金属板を押し下げ、最終的にドーム状金属板をその設置面に対して傾いた傾斜姿勢でドーム状金属板の動作状態を保持するため、接触信頼性に欠ける面がある。
【0008】
ところで、携帯電話機や携帯オーディオプレーヤ等の小形、薄形化に加え、その多機能化が進む中で、従来の横押し型プッシュスイッチは、1枚のドーム状金属板を用い、1段階で1種類のスイッチ回路を開閉操作する1段動作タイプであるため、2枚のドーム状金属板をその動作方向に2段で備え、2段階で2種類のスイッチ回路を開閉操作する2段動作タイプの横押し型プッシュスイッチが強く求められている。
【0009】
しかしながら、2段動作タイプの場合、1段動作タイプよりヒンジ部の動作ストローク(ドーム状金属板の押し下げストローク)が長くなるため、上記のような問題が顕著に現れる。それに加えて、ヒンジ部の動作ストロークを長くするためには、傾斜部を大きくする必要があり、そのことが製品の厚みを厚くするという致命的な問題を生じる。
【0010】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、ドーム状金属板の良好な動作特性を得ることができる小形、薄形で接触信頼性の高い横押し型プッシュスイッチを提供することにある。
【0011】
また、第2の目的は、ドーム状金属板の良好な動作特性を得ることができる小形、薄形で接触信頼性の高い2段動作タイプの横押し型プッシュスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の第1の目的を達成するために本発明の横押し型プッシュスイッチは、押しボタンの操作部が側部より突出すると共に、可動接点にばね性を持ったドーム状金属板を用い、前記操作部の押圧操作に伴う前記押しボタンの移動方向の操作力を前記押しボタンの移動方向とは垂直方向のドーム状金属板の動作方向に変換する横押し型プッシュスイッチであって、前記押しボタンの移動方向の操作力を前記ドーム状金属板の動作方向に変換する傾斜部と、この傾斜部を前記ドーム状金属板の動作方向に移動させる可撓性を持ったヒンジ部と、前記ドーム状金属板を押し下げる押圧部と、を一体に形成した押し子を備えたことを特徴とするもので、この構成を採用することにより、操作力をそのままドーム状金属板に伝達し、ドーム状金属板の略中心部を精度よく押圧し、ドーム状金属板の良好な動作特性を得る。
【0013】
また、前記押し子が前記押しボタンをその移動方向に案内支持するガイド体に前記ヒンジ部で繋がれて一体に形成されている構成を付加することにより、押しボタンと傾斜部との位置精度を良くし、ドーム状金属板の良好な動作特性を得る。
【0014】
また、前記押しボタンに可動ストッパが一体に形成され、前記ガイド体に前記可動ストッパを受け止めて前記操作部の押圧操作に伴う前記押しボタンの移動を決められた位置で規制する固定ストッパが一体に形成されている構成を付加することにより、ドーム状金属板の過剰な押し下げを招く押しボタンの過剰な移動(オーバーストローク)を精度よく制限し、ドーム状金属板の良好な動作特性を得る。
【0015】
また、前記押し子自体に前記傾斜部より緩傾斜の傾斜を持たせている構成を付加することにより、1段動作タイプでは傾斜部を小さくしながら、押し子に必要な動作ストロークを得られるようにし、一方、2段動作タイプでは傾斜部を大きくすることなく、押し子の動作ストロークを長くできるようにする。
【0016】
また、前記押し子が前記可動ストッパと前記固定ストッパによる前記押しボタンの移動規制時に前記ドーム状金属板の設置面と略平行になる構成を付加することにより、押し子がドーム状金属板の動作状態をその設置面に対して略平行になる姿勢で保持し、高い接触信頼性を得る。
【0017】
上記の第2の目的を達成するために本発明の横押し型プッシュスイッチは、上記の第1の目的を達成するための本発明の横押し型プッシュスイッチに、前記ドーム状金属板をその動作方向に2段で設置したことを特徴とするもので、製品の厚みを厚くすることなく、2段動作タイプの横押し型プッシュスイッチを得る。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明の横押し型プッシュスイッチによれは、ドーム状金属板の良好な動作特性を得ることができる小形、薄形で接触信頼性の高い横押し型プッシュスイッチを提供することができる。
【0019】
また、ドーム状金属板の良好な動作特性を得ることができる小形、薄形で接触信頼性の高い2段動作タイプの横押し型プッシュスイッチを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチの平面図、図2は同横押し型プッシュスイッチの断面図、図3は同横押し型プッシュスイッチの組み立て図である。
【0021】
図1〜図3に示すように、本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチ1は、2段階で2種類のスイッチ回路を開閉操作する2段動作タイプであり、インサート成形等により第1,第2,第3の3つの固定接点端子2,3,4と一体に形成された合成樹脂製で絶縁性を持ったハウジング5と、第1,第2の2つの可動接点として用いる第1,第2の2枚のばね性を持ったドーム状金属板6,7と、固定ストッパ8及び押し子9を一体に形成した合成樹脂製で絶縁性を持ったガイド体10と、横方向から押圧操作される合成樹脂製で絶縁性を持った押しボタン11と、スイッチケースをハウジング5とで形成するカバー12とから構成される。
【0022】
ハウジング5は、上面開口状の箱型に形成され、その内底面に段付き凹部5aが形成され、この段付き凹部5aの外周段差面に第1固定接点端子2の一部が略面一に露出されて第1固定接点としてのコモン接点2aが形成され、また段付き凹部5aの底面外側部に第2固定接点端子3の一部が略面一に露出されて第2固定接点としての第1選択接点3aが形成され、さらに段付き凹部5aの底面中心部に第3固定接点端子4の一部が略面一に露出されて第3固定接点としての第2選択接点4aが形成される。
【0023】
各固定接点端子2,3,4は、導電性の金属薄板を打ち抜き及び曲げ加工して形成され、各固定接点端子2,3,4の一端部がハウジング5の外部に取り出され、横押し型プッシュスイッチ1の面実装用に図示しない外部接続端子を形成する。この外部接続端子は図示しないプリント回路基板に半田付けで固定、接続する。
【0024】
また、ハウジング5の4側壁のうちの1つの側壁(左側壁)の中央上部には、押しボタン突出用に凹状の切り欠き5bが形成される。さらに、ハウジング5の上面側の4隅には、カバー位置決め用に上方へ突出する突起5cが形成されると共に、ハウジング5の4側壁には、カバー固定用の係合爪5dと係合溝5eが形成される。係合爪5dは切り欠き5bを形成した側壁の両端上部とその側壁に対向する側壁外面の中央上部とに外方へ突出して形成され、係合溝5eは残りの対向する2つの側壁の外面中央部に形成される。係合溝5eの下端部はハウジング5の外底面に沿って内側に屈曲形成される。ハウジング5の外底面には、図示しないプリント回路基板に対する位置決め用に突起5fが形成される。
【0025】
第1,第2のドーム状金属板6,7は、導電性の金属薄板(ばね用金属材料)からなり、第1ドーム状金属板6が段付き凹部5aの外周部段差面に支持され、第2ドーム状金属板7が段付き凹部5aの底面に支持され、第1,第2のドーム状金属板6,7がハウジング5の段付き凹部5aに上下2段で設置される。第1ドーム状金属板6はその外側部がコモン接点2aと常時接触する。第2ドーム状金属板7はその外側部が第1選択接点3aと常時接触し、中心部が第2選択接点4aと対向する。
【0026】
図4の(A)はガイド体の平面図、(B)は(A)のA−A線断面図、図5の(A)はガイド体に押しボタンをセットした状態の平面図、(B)は(A)の底面図、(C)は(A)のA−A線断面図である。
【0027】
図1〜図5に示すように、ガイド体10は、平面視コ字状に形成されたベース板部10aと、このベース板部10aの両端辺部の外側縁から立ち上げたガイド壁部10bとを一体に形成し、ベース板部10a中間辺部の外側面がハウジング5の切り欠き5bを形成した側壁下部内面と接触し、ベース板部10a両端辺部の外側面とガイド壁部10bの外側面がハウジング5の切り欠き5bを形成した側壁に隣接する2つの側壁内面と接触し、ベース板部10a両端辺部の端面がハウジング5の切り欠き5bを形成した側壁と対向する側壁の内面と接触した状態で、第1ドーム状金属板6を覆わないようにハウジング5の段付き凹部5aの周囲にある内底面の上に配置され、ガイド壁部10bの上側面をカバー12で押えて固定される。
【0028】
また、各ガイド壁部10bの中央上部には、押しボタン11の移動規制用に凹状の切り欠き10cが形成され、この各切り欠き10cの一側(右側)の側端面が押しボタン11の移動を規制する固定ストッパ8になっている。
【0029】
さらに、押し子9は、押しボタン11の移動方向の操作力を第1,第2ドーム状金属板6,7の動作方向に変換する傾斜部9aと、この傾斜部9aを第1,2ドーム状金属板6,7の動作方向に移動させる可撓性を持ったヒンジ部9bと、第1,第2ドーム状金属板6,7を押し下げる押圧部9cを一体に形成したもので、この押し子9がベース板部10aの中間辺部の中央部にヒンジ部9bで繋がれ、ベース板部10aの中間辺部の中央部からガイド壁部10bの間に、傾斜部9aより緩傾斜の傾斜角θを持たせて片持ち梁状に突出され、傾斜部9aがハウジング5の切り欠き5bの内側に配置されると共に、押圧部9cが第1ドーム状金属板6の上に配置される。
【0030】
押しボタン11は、平面視コ字状に形成された基板部11aと、この基板部11a中間辺部の中央外側面から突出した操作部11bと、基板部11a中間辺部の両端外側面でなる肩部11cとを一体に形成し、操作部11bがハウジング5の切り欠き5bから外方へ突出すると共に、肩部11cがハウジング5の切り欠き5bを形成した側壁の切り欠き5bの両側にある内面と対向し、基板部11a下面がベース板部10aの上面と接触し、基板部11a両端辺部の外側面がガイド壁部10bの内面と接触した状態で、ガイド体10によって支持され、基板部11a上面をカバー12で摺動自在に押えて、操作部11bの押圧操作方向に沿って移動案内される。
【0031】
また、基板部11aの内側には下側から押し子11の傾斜部9aが突出し、この傾斜部9aと対向する基板部11a中間辺部の中央内側面が、傾斜部9aに接触して摺動しながら押し子11を押し下げる押し子押し下げ部11dになっている。
【0032】
さらに、基板部11a両端辺部の端部外側面には、外方へ突出してガイド体10のガイド壁部10bに形成された切り欠き10cに嵌り込み、操作部11bの押圧操作に伴う押しボタン11の移動時に固定ストッパ8で受け止めて、押しボタン11の移動を決められた位置で規制する可動ストッパ11eが一体に形成される。
【0033】
カバー12は、導電性の金属板を打ち抜き及び曲げ加工して形成され、ハウジング5の上面を覆う平板状の上側板12aと、この上側板12aの4隅に形成され、ハウジング5の突起5cと嵌合するカバー位置決め用の切り欠き12bと、上側板12aの対向する2側縁から下向きに延出され、下端部をハウジング5の係合爪5dに下側から係止させてカバー12を固定する第1係止部12cと、上側板12aの残りの対向する2側縁から下向きに延出され、ハウジング5の係合溝5eに嵌合した状態で、下端部をハウジング5の外底面に下側から係止させてカバー12を固定する第2係止部12dとを備える。
【0034】
図3に示すように、本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチ1の組み立ては、ハウジング5の段付き凹部5aに第1,第2ドーム状金属板5,6を上下2段で設置した後、段付き凹部5aの周囲にある内底面の上に固定ストッパ8及び押し子9を一体に形成したガイド体10を配置し、ハウジング5の切り欠き5bに押しボタン11の操作部11bを嵌合すると共に、ガイド体10の切り欠き10cに押しボタン11の可動ストッパ11eを嵌合しながら、押しボタン11の基板部11aをガイド体10のベース板部10aの上に重ねて配置し、最後にカバー12を上方から嵌着してハウジング5に位置決め及び係止させることにより完了する。
【0035】
図6は本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチの1段目のスイッチ動作後(第1ドーム状金属板動作後)の状態を示す断面図、図7は同横押し型プッシュスイッチの2段目のスイッチ動作後(第2ドーム状金属板動作後)の状態を示す断面図である。図2及び図6,図7に基づいて本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチの動作を説明する。
【0036】
図2は横押し型プッシュスイッチ1の動作前の状態を示し、押しボタン11を操作しない動作前の状態では、押しボタン11は、肩部11cがハウジング5の切り欠き5bを形成した側壁の切り欠き5bの両側にある内面に当接すると共に、可動ストッパ11eがガイド体10のガイド壁部10bに形成された切り欠き10c内の左端部に位置し、押し子押し下げ部11dが押し子9の傾斜部9aを押圧しない位置に保持されるので、押し子9は、そのヒンジ部9bに殆ど弾性変形を受けずに略自由状態の傾斜姿勢で保持される。
【0037】
また、第1ドーム状金属板6と第2ドーム状金属板7とは、それぞれ上向きに膨らんだ状態で離間すると共に、第2ドーム状金属板7は第2選択接点4aと離間している。ここで、押し子9の押圧部9cは、第1ドーム状金属板6の上面略中心部で上方向へ押される。これに伴い、押し子9がその自由状態の傾斜角θよりややきつい傾斜角の傾斜姿勢に保持され、押圧部9cの下端と第1ドーム状金属板6の上面略中心部とが接触保持される。
【0038】
この状態から、押しボタン11の操作部11bを図2の右方向へ押圧すると、図6に示すように、押し子押し下げ部11dが右方向に移動して押し子9の傾斜部9aを右方向に押圧すると共に、傾斜部9aの表面を摺動する。これに伴い、押し子9はヒンジ部9bで撓んで弾性変形しながら下方向に押し下げられるので、押圧部9cが第1ドーム状金属板6の上面略中心部を押し下げ操作する。
【0039】
これによって、第1ドーム状金属板6は下向きに反転動作して、下側の第2ドーム状金属板7と接触するため、コモン接点2aと第1選択接点3aが第1,第2ドーム状金属板6,7を通じて導通して1段目の第1スイッチがオンとなる。
【0040】
この状態から、押しボタン11の操作部11bをさらに右方向へ押圧すると、図7に示すように、押し子押し下げ部11dはさらに右方向に移動して押し子9の傾斜部9aをさらに右方向に押圧すると共に、傾斜部9aの表面をさらに摺動する。これに伴い、押し子9はヒンジ部9bでさらに撓んで弾性変形しながらさらに下方向に押し下げられるので、この押圧部9cが第1ドーム状金属板6を介して第2ドーム状金属板7の上面略中心部を押し下げ操作する。
【0041】
これによって、第2ドーム状金属板7は下向きに反転動作して第2選択接点4aと接触するため、コモン接点2aと第2選択接点4aが第1,第2ドーム状金属板6,7を通じて導通して2段目の第2スイッチが1段目の第1スイッチに続いてオンとなる。
【0042】
この時、押しボタン11の可動ストッパ11eはガイド体10のガイド壁部10bに形成された切り欠き10c内の右端部に移動し、ガイド体10の固定ストッパ8で受け止められ、操作部11bの押圧操作に伴う押しボタン11の移動を規制すると共に、第1,第2ドーム状金属板6,7の過剰な押し下げを招く押しボタン11の過剰な移動(オーバーストローク)を制限する。これに伴い、押し子9が第1,第2ドーム状金属板6,7の動作状態をその設置面に対して略平行になる略水平姿勢で保持する。なお、操作部11bが押圧操作されて第2ドーム状金属板7と第2選択接点4aが接触している間は第1,第2スイッチのオン状態を保つ。
【0043】
この状態から、操作部11bの押圧操作力を除くと、ヒンジ部9bの弾性復帰力によって押し子9が図6のスイッチ動作前の状態に復帰すると共に、押しボタン11も図6のスイッチ動作前の状態に復帰する。この時、押し子9の復帰に伴い、第1,第2ドーム状金属板6,7がそのばね力によりそれぞれ上向きに反転動作し、第2ドーム状金属板7が第2選択接点4aより離間して第2スイッチがオフとなり、続いて第1ドーム状金属板6が第2ドーム状金属板7と離間して第1スイッチがオフとなる。
【0044】
上記のように、本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチ1は、押しボタン11の操作部11bが側部より突出すると共に、可動接点にばね性を持ったドーム状金属板6,7を用い、前記操作部11bの押圧操作に伴う前記押しボタン11の移動方向の操作力を前記押しボタン11の移動方向とは垂直方向のドーム状金属板6,7の動作方向に変換する横押し型プッシュスイッチであって、前記押しボタン11の移動方向の操作力を前記ドーム状金属板6,7の動作方向に変換する傾斜部9aと、この傾斜部9aを前記ドーム状金属板6,7の動作方向に移動させる可撓性を持ったヒンジ部9bと、前記ドーム状金属板6,7を押し下げる押圧部9cと、を一体に形成した押し子9を備えたことにより、操作力をそのままドーム状金属板6,7に伝達でき、それに加えて、ドーム状金属板6,7の略中心部を精度よく押圧できるので、ドーム状金属板6,7の良好な動作特性を得ることができる。
【0045】
また、前記押し子9が前記押しボタン11をその移動方向に案内支持するガイド体10に前記ヒンジ部9bで繋がれて一体に形成されていることにより、押しボタン11と傾斜部9aとの位置精度を良くすることができるので、ドーム状金属板6,7の良好な動作特性を得ることができる。
【0046】
また、前記押しボタン11に可動ストッパ11eが一体に形成され、前記ガイド体10に前記可動ストッパ11eを受け止めて前記操作部11bの押圧操作に伴う前記押しボタン11の移動を決められた位置で規制する固定ストッパ8が一体に形成されていることにより、ドーム状金属板6,7の過剰な押し下げを招く押しボタン11の過剰な移動(オーバーストローク)を精度よく制限することができるので、ドーム状金属板6,7の良好な動作特性を得ることができる。
【0047】
また、前記押し子9自体に前記傾斜部9aより緩傾斜の傾斜を持たせていることにより、1段動作タイプでは傾斜部9aを小さくしながら、押し子9に必要な動作ストロークを得られるようにし、一方、2段動作タイプでは傾斜部9aを大きくすることなく、押し子9の動作ストロークを長くすることができる。
【0048】
また、前記押し子9が前記可動ストッパ11eと前記固定ストッパ8による前記押しボタン11の移動規制時に前記ドーム状金属板6,7の設置面と略平行になることにより、押し子9がドーム状金属板6,7の動作状態をその設置面に対して略平行になる姿勢で保持できるので、高い接触信頼性を得ることができる。
【0049】
さらに、本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチ1は、前記ドーム状金属板6,7をその動作方向に2段で設置したことこより、製品の厚みを厚くすることなく、2段動作タイプの横押し型プッシュスイッチを得ることができる。
【0050】
よって、ドーム状金属板6,7の良好な動作特性を得ることができる小形、薄形で接触信頼性の高い横押し型プッシュスイッチを提供することができる。またドーム状金属板6,7の良好な動作特性を得ることができる小形、薄形で接触信頼性の高い2段動作タイプの横押し型プッシュスイッチを提供することができる。
【0051】
以上、本実施の形態は本発明の好適な一実施の形態を示したが、本発明はそれに限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々変形実施することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチの平面図である。
【図2】本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチの動作前の状態を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチの組み立て図である。
【図4】(A)はガイド体の平面図、(B)は(A)のA−A線断面図である。
【図5】(A)はガイド体に押しボタンをセットした状態の平面図、(B)は(A)の底面図、(C)は(A)のA−A線断面図である。
【図6】本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチの1段目のスイッチ動作後の状態を示す断面図である。
【図7】本発明の一実施の形態による横押し型プッシュスイッチの2段目のスイッチ動作後の状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 横押し型プッシュスイッチ
6 第1ドーム状金属板(第1可動接点)
7 第2ドーム状金属板(第2可動接点)
8 固定ストッパ
9 押し子
9a 傾斜部
9b ヒンジ部
9c 押圧部
10 ガイド体
11 押しボタン
11b 操作部
11d 押し子押し下げ部
11e 可動ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押しボタンの操作部が側部より突出すると共に、可動接点にばね性を持ったドーム状金属板を用い、前記操作部の押圧操作に伴う前記押しボタンの移動方向の操作力を前記押しボタンの移動方向とは垂直方向のドーム状金属板の動作方向に変換する横押し型プッシュスイッチであって、前記押しボタンの移動方向の操作力を前記ドーム状金属板の動作方向に変換する傾斜部と、この傾斜部を前記ドーム状金属板の動作方向に移動させる可撓性を持ったヒンジ部と、前記ドーム状金属板を押し下げる押圧部と、を一体に形成した押し子を備えたことを特徴とする横押し型プッシュスイッチ。
【請求項2】
前記押し子が前記押しボタンをその移動方向に案内支持するガイド体に前記ヒンジ部で繋がれて一体に形成されている請求項1に記載の横押し型プッシュスイッチ。
【請求項3】
前記押しボタンに可動ストッパが一体に形成され、前記ガイド体に前記可動ストッパを受け止めて前記操作部の押圧操作に伴う前記押しボタンの移動を決められた位置で規制する固定ストッパが一体に形成されている請求項2に記載の横押し型プッシュスイッチ。
【請求項4】
前記押し子自体に前記傾斜部より緩傾斜の傾斜を持たせている請求項3に記載の横押し型プッシュスイッチ。
【請求項5】
前記押し子が前記可動ストッパと前記固定ストッパによる前記押しボタンの移動規制時に前記ドーム状金属板の設置面と略平行になる請求項4に記載の横押し型プッシュスイッチ。
【請求項6】
前記ドーム状金属板をその動作方向に2段で設置したことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1の横押し型プッシュスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−34329(P2008−34329A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−209466(P2006−209466)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(000194918)ホシデン株式会社 (527)
【Fターム(参考)】