説明

樹状細胞腫瘍注射治療及び関連するワクチン

【解決手段】本発明は、効果的で安全な包括的組合せ治療法であって、患者の腫瘍組織中の腫瘍細胞のサイズを安全且つ効果的に縮小する。方法は、患者の腫瘍組織から単球細胞を採取し、単球細胞から未成熟樹状細胞を形成するために1又は複数の因子を用いて単球細胞を培養し、患者の腫瘍組織に未成熟樹状細胞とアジュバントを導入し、患者の腫瘍組織内に活性化したT細胞を導入することによって、患者の腫瘍組織において腫瘍細胞のサイズを縮小することを含んでいる。方法には、患者の体内に未成熟樹状細胞、アジュバント及び活性化されたT細胞を導入する前に、患者に局部的化学療法、全身化学療法、腫瘍放射線治療、又は、局部的腫瘍放射線治療を組み合わせた全身化学療法を用いて前処置することをさらに含む。また、患者の腫瘍のサイズを縮小するための癌ワクチンを提供するものであって、癌ワクチンには、患者から採取された単球細胞に由来する未成熟樹状細胞、アジュバント、患者の体内の腫瘍からの抗原及び活性化したT細胞が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
この出願は、2006年10月31日に出願された米国特許出願第60/855,905号の優先権を主張し、引用を以て本願への記載加入とする。
【0002】
本発明は、癌患者のための治療法に関し、より詳細には、従来の癌治療を癌免疫療法と共に用いる組み合わせ治療法に関する。
【背景技術】
【0003】
<従来技術の説明>
樹状細胞(DCs)は、免疫システムのセンチネル抗原提示細胞である(Banchereau, J. et al, Ann NY Acad Sci, 987:180-7, 2003)。これら細胞は、それらの環境から抗原物質を得て、その後活発な免疫反応を開始する能力を持つ。この可能性が認識され、DCsは癌免疫療法用の候補ワクチンを送達するプラットホームとして用いられている(den Brok, M.B. et al., Expert Rev Vaccines, 4:699-710, 2005)。これらの研究の大部分において、未成熟DCsは、生体外にて、単球細胞又は幹細胞前駆体から発現し、腫瘍細胞溶解物、タンパク質又はHLAクラスI対立遺伝子特性ペプチドの形態の候補ワクチンを携える。DCsは、選択されたサイトカインとともに成熟し、静脈ルート又は非経口のルートにより投与される。
【0004】
他のアプローチとして、アジュバントと共に未成熟DCsを患者の腫瘍組織に直接注射することで、理論上、多岐に亘る抗原決定基への免疫反応の生成を高めることのできる注射部位にて、これらの細胞が多様な腫瘍細胞生成物を得ることができる(Chi, K.H. et al., J Immunother, 28:129-35, 2005)。
【0005】
未成熟DCsの腫瘍内注射と、放射線治療や化学療法のような通常治療の組み合わせることが、免疫反応を増加させ、臨床結果を改善するものとして提案されている(Hoffmann T.K. et al., Cancer Res, 60:3542-9, 2000)。そのような治療はアポトーシスを誘発し、腫瘍抗原を利用するDCsの能力を高める環境を作り出し、T細胞への腫瘍抗原を効果的に示すリンパ節を成熟させ、移動させることができる(Pierre, P. et al., Nature, 388:787-92, 1997)。免疫抑制制御性T細胞を制御するための化学療法を実施したり、活性化したT(AT)細胞のような他の細胞生成物と共に注射することも、免疫応答性を高める助けとなると示唆されている(Berd, D. et al., Cancer Res, 44:5439-43, 1984)。シクロホスファミドは、例えば、免疫活性効果を発揮するだけでなく、多くの制御性T細胞を減少させ、アポトーシスを増加させることが認められている(Berd, D. et al., Cancer Res, 44:5439-43, 1984)。CD4OLを発現し、DC成熟に影響を及ぼす誘導因子である自己AT細胞の注入、は臨床で血行状態を安定させる状況を示している。注入された細胞は、生体内にて著しく拡張し、広T細胞スペクトル(broad T cell spectrum)を維持することができる(Berger C. et al., Blood, 101 : 476-84, 2003)。それゆえ、大量のAT細胞を投与することで、癌に対して反応する能力のあるT細胞プールを増加させる可能性がある。T細胞によるIFNγのようなサイトカインの放出により、さらに制癌効果を高めることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、癌患者のためのより効果的な治療プロトコルを提供する要求がある。
【0007】
<発明の概要>
本発明は、この要求を満足させるために、患者の腫瘍組織中の腫瘍細胞のサイズを縮小させる包括的な組み合わせ治療法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様として、患者の腫瘍組織において腫瘍細胞のサイズを縮小する方法を提供するものであり、該方法は、患者の腫瘍組織から単球細胞を採取し、単球細胞から未成熟樹状細胞を形成するために1又は複数の因子を用いて単球細胞を培養し、患者の腫瘍組織に未成熟樹状細胞とアジュバントを導入し、そして、患者の腫瘍組織内に活性化したT細胞を導入することを含んでいる。患者の体内に未成熟樹状細胞及びアジュバントを導入した数日後に、活性化したT細胞が導入され、抗原特異的T細胞が生成される。
【0009】
未成熟樹状細胞、アジュバント及び活性化したT細胞の導入は、腫瘍内注射によりもたらすことができる。
【0010】
患者の単球細胞、すなわち、末梢血単核細胞(PBMCs)は、例えば、GM−CSFやIL−4のような因子を用いて培養することができる。
【0011】
T細胞の活性化は、T細胞を、抗CD3抗体や、例えばイオノマイシンのようなイオノフォアに曝すことによりもたらすことができる。
【0012】
活性化したリンパ球溶液は、CD3−CD28ビーズを用いて準備することができる。
【0013】
本発明の方法において用いられるアジュバントは、活性化したリンパ球溶液(ALM)、スーパーリンパ系組織抽出物、ベータ・グルカン又はキーホールリンペットヘモシニアンを含むが、これらに限定されるものではない。
【0014】
本発明の他の態様として、患者の腫瘍組織内の腫瘍細胞のサイズを縮小させるための方法であって、未成熟樹状細胞、アジュバント及び活性化したT細胞を患者の腫瘍組織内に導入する前に、患者に局部的化学療法を用いて前処置することをさらに含む。
【0015】
本発明の他の態様として、患者の腫瘍組織内の腫瘍細胞のサイズを縮小させるための方法であって、未成熟樹状細胞、アジュバント及び活性化したT細胞を患者の腫瘍組織内に導入する前に、患者に全身化学療法を用いて前処置することをさらに含む。
【0016】
本発明の他の態様として、患者の腫瘍組織内の腫瘍細胞のサイズを縮小させるための方法であって、未成熟樹状細胞、アジュバント及び活性化したT細胞を患者の腫瘍組織内に導入する前に、患者に全身化学療法と局部的腫瘍放射線治療を用いて前処置することをさらに含む。
【0017】
本発明の他の態様として、腫瘍組織に導入すると、抗原と結合して、患者の体内の腫瘍のサイズを縮小させる癌ワクチンプレカーサーを提供するものであり、癌ワクチンには、患者から採取された単球細胞に由来する未成熟樹状細胞、アジュバント、患者の体内の腫瘍からの抗原及び活性化したT細胞が含まれる。
【0018】
本発明の目的は、癌患者のためのより安全で効果的な組み合わせ治療プロトコルを提供することである。
【0019】
さらに本発明の目的は、従来の治療法に加え、未成熟樹状細胞、アジュバント及び活性化したT細胞の腫瘍内注射を用いて、患者の体内の腫瘍細胞のサイズを縮小するための効果的で安全な方法を提供することである。
【0020】
さらに本発明の目的は、患者の腫瘍細胞のサイズを縮小するための効果的で安全な癌ワクチンを提供するものであり、癌ワクチンは、未成熟樹状細胞、アジュバント及び活性化したT細胞を含んでいる。
【0021】
本発明は、以下の望ましい実施例の説明と共に、添付の図面を参照することで、十分理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の実施例に関する4つの治療プロトコルを示している。
【0023】
【図2】図2は、45歳女性における再発上部喉頭癌再発のPET CTイメージであり、AT細胞治療の前(A)、3週間後(B)、3.5カ月後(C)及び9ヵ月後(D)を示している。
【0024】
【図3】図3は、CEA血中濃度が、樹状細胞とAT細胞(プロトコルIV)を用いた治療法によって低下していることを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<望ましい実施例の説明>
本発明は、患者の腫瘍組織中の腫瘍細胞のサイズを縮小するための安全で効果的な包括的組み合わせ治療法を提供するものである。
【0026】
本発明の一つの実施例として患者の腫瘍組織において腫瘍細胞のサイズを縮小する方法を提供するものであり、該方法は、患者の腫瘍組織から単球細胞を採取し、単球細胞から未成熟樹状細胞を形成するために1又は複数の因子を用いて単球細胞を培養し、患者の腫瘍組織に未成熟樹状細胞とアジュバントを導入し、そして、患者の腫瘍組織内に活性化したT細胞を導入することを含んでいる。患者の体内に未成熟樹状細胞及びアジュバントを導入した数日後に、活性化したT細胞を導入し、抗原特異的T細胞が生成される。
【0027】
未成熟樹状細胞、アジュバント及び活性化したT細胞の導入は、腫瘍内注射によりもたらすことができる。
【0028】
患者の単球細胞、すなわち、末梢血単核細胞(PBMCs)は、例えば、GM−CSFやIL−4のような因子を用いて培養することができる。
【0029】
T細胞の活性化は、T細胞を、抗CD3抗体や、例えばイオノマイシンのようなイオノフォアに曝すことによりもたらすことができる。
【0030】
活性化したリンパ球溶液は、CD3−CD28ビーズを用いて準備することができる。
【0031】
本発明の方法において用いられるアジュバントは、活性化したリンパ球溶液(ALM)、スーパーリンパ系組織抽出物、ベータ・グルカン又はキーホールリンペットヘモシニアンを含むが、これらに限定されるものではない。
【0032】
本発明の他の実施例として、患者の腫瘍組織内の腫瘍細胞のサイズを縮小させるための方法であって、未成熟樹状細胞、アジュバント及び活性化したT細胞を患者の腫瘍組織内に導入する前に、患者に局部的化学療法を用いて前処置することをさらに含む。
【0033】
本発明の他の実施例として、患者の腫瘍組織内の腫瘍細胞のサイズを縮小させるための方法であって、未成熟樹状細胞、アジュバント及び活性化したT細胞を患者の腫瘍組織内に導入する前に、患者に全身化学療法を用いて前処置することをさらに含む。
【0034】
本発明の他の実施例として、患者の腫瘍組織内の腫瘍細胞のサイズを縮小させるための方法であって、未成熟樹状細胞、アジュバント及び活性化したT細胞を患者の腫瘍組織内に導入する前に、患者に全身化学療法と局部的腫瘍放射線治療を用いて前処置することをさらに含む。
【0035】
本発明の他の実施例として、腫瘍組織に導入されると、抗原と結合して、患者の体内の腫瘍のサイズを縮小させる癌ワクチンプレカーサーを提供するものであり、癌ワクチンには、患者から採取された単球細胞に由来する未成熟樹状細胞、アジュバント、患者の体内の腫瘍からの抗原及び活性化したT細胞が含まれる。
【0036】
ここでは、「患者」はヒトを含む哺乳類を意味する。
【0037】
本発明は、以下の非制限的な実施例にてより具体的に説明するが、これらは説明のみを目的としたものであり、当業者であれば多くの改変や変更を行なうことができることは明らかであろう。
【実施例】
【0038】
1.イントロダクション
通常の治療に、DC細胞とAT細胞治療を組み合わせることで、血行状態が安定するかどうか調査するために、安全なパイロットテストを行なった。いくつかのプロトコルを開発し、その中で未成熟DCsとAT細胞は、末梢血から作成し、悪性腫瘍の進行段階にある患者の転移病巣に注射した。0日目、患者には、最初に、自己の未成熟DCsとアジュバントを注射した。すぐに、未成熟DC注射が、拒絶反応を引き起こさないことが確認され、実質的に毒性のない免疫反応を高めるとして知られている追加の治療法(treatment modalities)を治療群に組み込んだ。放射線治療又は化学療法は、未成熟DC投与の前に行なった。特定の腫瘍部位は、放射線治療(20-50Gy)の影響を受けて、腫瘍DNAの分解に由来する抗原性を誘発した。いくつかのケースでは、特定悪性腫瘍に対する従来の治療に用いられているシスプラチン(CDDP)、シクロホスファミド(Cytoxan)、フルオロウラシル(5-FU)、ドセタキセル(DTX)或いはアドリアマイシン(ADM)を含む化学療法薬を、アポトーシスを誘発し、又は、免疫反応を抑制することができる細胞の存在を減少させるため投与した。AT細胞治療は、未成熟DC及びアジュバント治療に引き続いて3日間行なった。
【0039】
II.患者及び方法
1.患者治療
41〜83歳の37人の患者を、DC及びAT細胞治療の研究プロトコルに登録した。すべての患者は、癌の標準的化学療法及び/又は放射線治療を受診し、失敗した後に、再発していた。研究に含まれる癌のタイプとケース数を表1の中に示している。患者を研究プロトコルに組み入れ、表2のようにまとめた。
【表1】

【表2】

【0040】
全ての患者には、未成熟DCs(1注射毎に4.9×106〜5.9×109の範囲)とアジュバントを、単独で、又は、従来の化学療法、放射線治療及び/又はAT細胞(4.1×101〜7.5×108)と組み合わせて投与した。治療前に、腫瘍を生検し、血液検査を行なった。図1は、引き続き行なわれた5つのプルトコルの各治療コースを示している。全ての患者には、0日目に未成熟DCsとアジュバントを投与した。プルトコルIに登録された患者には、未成熟DCsとアジュバントを投与した。プロトコルIIの患者には、未成熟DCsとアジュバントを投与する前に、局部的な化学療法を用いて前処置を施した。他のグループの患者には、化学療法及び放射線療法による前処置の有無に関わらず、未成熟DCとアジュバントを注射して3日後に、AT細胞を投与した。化学療法は、腫瘍内に(プルトコルIII)、又は、全身に(プロトコルIV)、又は、放射線治療と組み合わせて(プルトコルV)、実施した。患者には、局部的に及び/又は全身に拒絶反応の徴候が生じた。細胞生検と血液検査は、治療の後3〜4週間に行なった。局部的又は転移性の腫瘍の退縮は、PET−CTイメージングによって評価した。腫瘍の退縮が観察されると、治療を繰り返した。
【0041】
2.末梢血単核細胞(PBMCs)の採取と単離
白血球フェレーシスは、単球核(MNCs)の採取プログラム(version 7.1)を使用したCOBEスペクトラ血液分離器(Gambro KK, Tokyo, Japan)を、手動調整のプラズマポンプと共に用いることで実施した。抗凝固は、ACD−A(比12:1, Baxter, Deerfield, IL)を用いて行なった。注入速度は、40〜60ml/分、採取速度は1ml/分、分離係数は700であった。MNCsは、細胞分離を行ない、AIM−V溶液(Gibco, Invitrogen, Tokyo)の10%DMSO中、1.5×108cells/ml/vialで低温保存し、1〜3ヶ月間、−80℃で保存した。DC及びAT細胞培養に使用する前に、MNCsは、3Vのウォーターバスで解凍し、AIM−V溶液中で2度洗浄して、カウントした。
【0042】
3.未成熟DCs(iDCs)の生成
解凍したMNCs(およそ6×108)を、20mlのAIM-V溶液で再懸濁させて、それぞれ1OralのAIM−V溶液を入れた44−T−75cm2のポリスチレンフラスコ中へ、5mlアリコートずつ分配した。37℃にて2時間培養した後、非接着性細胞をピペットにより除去し、コニカルチューブへ移し、AT細胞作成(下記参照)のために保管した。15mlのDC成長溶液(800IU/mlのGM−CSFを追加したAIM−V溶液(CellGenix, Germany)+500UmlのIL4(BD Pharmingen))を、接着性細胞の入ったフラスコに夫々添加した。フラスコを37℃、5%の二酸化炭素で培養した。成長溶液は3日目に新しくし、DCsはピペッティングにより7日目に採取した。採取した細胞をカウントし、20%の自己血清+10%のDMSOを含むAIM-V冷凍溶液で再懸濁させて、BICELLコンテナ(Nihon Freezer Co., Tokyo, Japan)で冷凍保存した。BICELLコンテナは、プログラムされた冷凍処理(1℃/分の冷凍速度)にて段階的な細胞の冷凍が可能である。細胞は、患者に注射するまで(0.5〜3ヶ月)、−80℃にて保存した。
【0043】
4.AT細胞の作成
DC生成のために、単球接着(monocyte adherence)の後に採取された非付着性T細胞(およそ6〜9×108細胞)を洗浄し、20mlのAIM−V溶液で再懸濁した。この細胞懸濁液5mlとAT細胞溶液35mlを夫々抗CD3抗体でコーティングされた4つのT−225cm2フラスコに添加した(Yamazaki, T. et al, Neurol Med Chir, Tokyo, 32:255-61, 1992)。次に、フラスコを37℃、5%の二酸化炭素で培養した。採取3時間前に、T細胞を刺激するためにイオノマイシン1ug/ml(Sigma, USA)を溶液に添加した(Sato, T. et al., Cancer Immunol Immunother, 53:53-61, 2004)。AT細胞溶液は、IL2と自己血清を加えたAIM−V溶液から構成されるため、各フラスコは、最終レベル1000IU/ml、10%自己血清を含むこととなる。抗CD抗体コーティングは、DPBS中5ug/mlの抗CD3抗体(Orthoclone, OKT3 injection. Janssen Pharmaceutical, KK)10mlをフラスコに添加して、室温で2時間放置して行ない、その後、細胞を添加する前に、15mlのDPBSを用いてフラスコを3回洗浄した。採取した細胞は、低温保存し、患者へ注射する前に−80℃にて貯蔵した(0.5〜3ヶ月)。
【0044】
5.細胞培養の無菌及び純度試験
細胞を採取する7日前に、37℃の寒天上で培養細胞を培養することで微生物試験を行なった。結果が陰性の細胞のみを臨床的に使用した。細胞の純度は、商業的に利用可能な発色エンドトクシン試験キット(Toxicolor system LS-50M, Seikagaku Corp., Tokyo, Japan)を用い、製造者の指示に従って、エンドトキシンレベル(<0.5EU/ml)を測定することで評価した。各サンプルのエンドトクシンの濃度は、リムラスアメーバ溶解物試験(LAL)で測定した。簡単に説明すると、各サンプル50ulを、エンドトクシンフリーの96ウェルプレート(Toxipet LP; Seikagaku)へ移し、LAL試薬50ulを各ウェルに添加して混合し、37℃にて30分間培養した。反応を止めるために、各ウェルに0.8M酢酸を添加、混合して、405nmで測定した。エンドトクシンレベルは、参照エンドトクシンE. coli 011 1:B4 LPS(Toxicolor system CSE; Seikagaku)と対照して計測した。
【0045】
6.細胞培養の特性
標準的なフローサイトメトリーラベリングプロトコルを、細胞の表面マーカーの発現を判断するために用いた(Parks, D. et al., Flow Cytometry and Fluorescence- Activated Cell Sorting; Raven Press Ltd, New York, 1989)。DCsは、7日間培養した後、表面マーカーの発現について特徴付けし、解凍した後、CD11c、CD14、CD40、CD80、CD83、CD86及びHLA−DR(BD Pharmingen)に対する蛍光色素標識モノクローナル抗体を用いてDC注射を行なった。AT細胞は、培養後、CD3、CD4、CD8、CD11c、CD14、CD19、CD25、CD45、CD56、CD154(CD40L)及びHLA−DRについて評価した。最小、10,000事象について、BD FACスキャン(BD Biosciences)で入手し、データをセルクエスト分析ソフトウェア(Cell Quest analysis software)を用いて分析した。マーカー発現は、患者の細胞培養の標準偏差において蛍光の平均レベルとして表わしている。
【0046】
7.注射用の細胞作成
DCs及びAT細胞のバイアルを、計画された注射前の1時間、37℃のウォーターバスで解凍した。AIM−V溶液1mlを解凍した各バイアルに添加し、バイアルを2分間放置して、50mlの溶液に移し、DMSOを除去するために遠心分離(300×g、7分)した。細胞を新しい溶液中で再懸濁、カウントし、サンプルを寒天培地による無菌性試験を行なうために取り出した。残った細胞を、2つのラベル付けしたマイクロチューブ(各500ul)へ分配し、患者の転移病巣への注射用に病院へ輸送するため、氷の上に載置した。細胞は、CTスキャンの情報に基づいて注射した。
【0047】
8.アジュバントの作成
プロトコルには、以下のように、異なるアジュバントを含めた。商業的に入手可能な(1)スーパーリンパ系組織抽出物(S-LTE, 0.5ml, Shukokai, Inc., Japan, プロトコルIとプロトコルII)、(2)β‐グルカン(0.5ml-1.0 ml at 50 ug/ml in saline, Wako, Japan, プロトコルII及びプロトコルIII)、(3)キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)1mg(Immucothel、プロトコルIV)。これらは、製造業者の推奨通り準備した。また、(4)活性化されたリンパ球溶液(ALM)(プロトコルIII、IV及びV、エルトリエートしたリンパ球(Gambro BCT, Colorado, USA)から、我々の臨床検査室で作成)。ALMを作成するために、リンパ球をT−75cm2フラスコ当たりXVIVO溶液50ml(Cambrex, Walkersville, MD)中1×106cells/mlで懸濁し、CD3−CD28 T細胞エキスパンダービーズ(Dynal. Norway)(Levine, B.L. et al., J Immunol, 159:5921-30, 1997)を1細胞に対して1ビーズとの比となるように添加し、37℃、5%二酸化炭素濃度にて2日間培養した。上清(supematants)を遠心分離(300×G、7分)により採取し、後で使用するために4℃で保管した。すべてのアジュバントは、DCsの送達と同時に、腫瘍内に送達した。
【0048】
9.化学療法
化学療法のタイプを、特定の癌に対する標準的な治療を基に選択した。化学療法は、プロトコルに従って、腫瘍内又は全身に施した。21人の患者には、シクロホスファミド(CPM, 5-800 mg, Shinogi)を施し、5人の患者には、シスプラチン(CDDP, 2.5-5.0 mg, Nihon Kayaku)を施し、1人の患者には、ドセタキセル(DTX, 55mg, Aventis)を施し、1人の患者には、ドキソルビシン(ADM, 20mg, Kyowa Hakko)を施した。CDDPは、上部咽頭癌の一人の患者に、フルオロウラシル(5-FU, 900 mg/day, Kyowa Hakko)と組み合わせて全身に施した。
【0049】
10.放射線治療
放射線治療(20〜50Gy)は、プロトコルVで2人の患者に施した。1人の転移性上部咽頭癌患者に50Gyを行ない、他の再発性転移食道癌患者には、20Gyを行なった。放射線治療は所定のプロトコル(Shimamura, H. et al., Eur Surg Res, 37:228-34, 2005)に従って患者へ施した。腫瘍部位の放射線範囲を予め指定し、放射線は、放射線は3〜4週間の間に1回当たり2〜2.5Gyを施した。放射線治療は、化学療法と同じ期間に行なった。DCsは、放射線治療が完了した後7日目に腫瘍内に注射し、AT細胞は、放射線治療が完了した後10日目に腫瘍内に注射、即ち、適用されたプロトコル中でDC細胞を注射した後、3日目に注射した。
【0050】
11.反応の評価
癌(例えば大腸、直腸、胃、胸、肺や膵臓ガン)で上昇する癌胎児性抗原(CEA)レベルを、治療と病気再発に対する患者の反応をモニターするために使用した。注射や照射が行なわれた部位も転移部についても、腫瘍のサイズは、PET−CTイメージングと固形がん治療効果判定法(RECIST)を用いた処置の前とその3〜4週間後に評価した。ベースライン和は、測定可能な病巣中の最も大きい直径として評価した。処置の有効性は、完全な反応(CR、測定可能な病巣の完全に消滅し、4週を超える期間、新たな病巣が発現していないか維持されているものとして定義する)、部分的な反応(PR、注射された腫瘍のサイズが少なくとも30%の縮小しているものとして定義する)、疾患安定(SD、サイズが30%未満縮小又は20%未満拡大で、新しい病巣の発現がないものとして定義する)、進行性疾患(PD、元の測定から20%以上の増加として定義する)として評価した。副作用は、一般的なWHO毒性基準を用いて記録した。
【0051】
12.統計的測定
腫瘍サイズデータは、治療前後の変化を測定するために、スチューデントのt検定と対応のあるt検定を用いて比較した。統計学的有意性は、p<0.05とした。
【0052】
III.結果
1.DCsとAT細胞の特性
接着性PBMCsは、DCsに対して識別することができる。7日間培養した種々の癌の患者からの接着性細胞は、共刺激マーカー(costimulatory markers)と低いCD83表面抗原を示し、未成熟DCsであることを示している(表3)。細胞生存能力は、7日の培養後、以下の低温保存後と同様に、85〜95%と高いままであった。抗CD3と共に処置したリンパ球と活性化したT細胞治療用のイオノマイシンは、CD25及びCD4OLを示した(表3)。刺激された細胞の生存能力は、低温保存の前後で75〜90%の範囲であった。
【表3】

【0053】
2.毒性
治療の間及び後に行なった血液検査及び尿検査では、総タンパク質、グルタミン酸塩オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(GOT)、グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT)、乳酸脱水素酵素(LDH)、アルカリホスファターゼ、総ビリルビン、血中尿素窒素(BUN)、クレアチニン、全コレステロール、トリグリセリド、血糖、血尿症、また、蛋白尿には変化が見られなかった。
【0054】
すべての治療は概ね耐容性が良好であり、AT細胞治療を受けたグループ中で2、3人だけが拒絶反応を伴った(表4)。プロトコルI及びIIでDCs+アジュバントを受けた患者は、注射直後又は追跡期間中には、局部的又は全身的な拒絶反応は観察されなかった。AT細胞治療を受けた患者で、プロトコルIIIの4人の患者に注射直後に発熱(38℃)が観察され、プロトコルVの2人の患者は、注射部位の腫れ、リンパ節症及び痛みと、発熱を経験した。
【表4】

【0055】
3.患者の反応
臨床有効性を、治療前の腫瘍のサイズと、最初のDC注射後3〜4周後の腫瘍のサイズを比較することによって観察した(表5)。
【表5】

【0056】
37人の患者中7人(19%)について、少なくとも3ヶ月間観察した腫瘍部位で、完治(プロトコルVの患者1人)又は部分退縮(プロトコルIとプロトコルIIの患者6人)の治療効果が見られた。完全な腫瘍退縮は、上部喉頭癌再発と診断され、治療部位と転移部位の両方で効果的にDCs、AT細胞、及び、化学療法と放射線治療(プロトコルV、図2)の両方を受けた患者に見られた。
【0057】
すべてのプロトコルの37人の患者中25人(67%)では、腫瘍のサイズは、少なくとも3ヵ月の間、同じあるいは変化なしのままであった。患者に続けて行なった血清腫瘍マーカーは、特定の腫瘍を示し、この期間に亘り安定していた。しかし、1人の転移性胃腺癌患者は、DCsとAT細胞の注射後に、CEAレベルの劇的に低下を示した(図3)。患者は、我々のプロトコルに登録する前に、およそ3年診断を受けており、複数回の化学療法と胃切除術を経験していた。これらの標準的な治療アプローチにもかかわらず、CEAレベルは上がり続け、大動脈周囲リンパ節のサイズが増大していた。患者は、AT細胞に続けてDCsを注射する前に、シクロホスファミド800mgを受けた。血清CEAレベルは、直近の試験で6.7のレベルに届く安定した低下を示した。
【0058】
DCsのみ、または、化学療法と共にDCsを受けた4人の患者(プロトコルI及びII)と、化学療法と放射線療法と共にDCsとAT細胞を受けた1人の患者(プロトコルV)に、進行性疾患が観察された。後者は、安定した症状が1ヶ月間観察され、未治療の腫瘍に3ヶ月で進行が観察された。
【0059】
IV.考察
癌放射線治療、化学療法及び養子細胞療法を含む抗癌治療は、それ自体で有効性を示した。本研究の第一の目的は、種々の進行性癌患者に、自己の未成熟DCsを直接腫瘍へ施し、このアプローチを、活性化されたT細胞を転移病巣へ直接注射するような他の治療方法や、注射部位への局部的化学療法や放射線治療、全身化学療法のような前処置と組み合わせることの安全性と効果を判断することであった。本研究により、単一のプロトコル内で、独特の特性を有する異なる処置方法を組み合わせることで、抗癌反応を著しく増加することが示された。
【0060】
DCsは、特異的T細胞免疫誘導(Banchereau, J. et al., Nature 392: 245- 52; 1998)用の重要な抗原提示細胞として役立つものであり、例えば、種々の癌の多くの診療試験の基礎を形成することは確立されている。幾つかの治験では、生体外で腫瘍特異的抗原を添加して生成されたDScを用いており、それらは、宿主に再び戻されたときに、抗腫瘍免疫の誘発をもたらす(Hsu, FJ. et al., Nat. Med., 2:52-58, 1996)。しかしながら、腫瘍に関連する抗原が十分明確でない癌では、この研究の場合のように、腫瘍全体が、アポトーシス細胞の形態で用いられている。アポトーシス細胞は、T細胞反応を効果的にクロスプライムし、強い免疫力を誘発する。
【0061】
イオン化放射線療法や化学療法が、アポトーシスを誘発するために用いられる。腫瘍放射線治療は、一般的に、サイトカイン、プロスタグランジン及び熱ショックタンパク質(これらに限定されるものではない)の活性化に付随して生ずる周囲環境に、細胞内含有物を放出することによって、炎症を引き起こす。化学療法の局部送達は、腫瘍部位に類似した環境を作り出す。そのような方策は、抗原の獲得、処理、及び成熟を促進する環境を作るだけでなく、DCsの、広い範囲の潜在的なエフェクター細胞と相互作用する排出リンパ節への移動を刺激する。
【0062】
原体放射線治療と化学療法を、DC腫瘍内注射と組み合わせることで、ヒトとネズミのモデルの両方に現れる免疫応答性が改善し、実践的な見地から、直接注射により、DCs上に添加する抗原の量を十分確保することができる。
【0063】
本研究の第一の目的は、未成熟DCsを基礎的な免疫として用いる異なる治療の安全性及び有効性を評価することであったので、患者のグループには、最初に未処置の腫瘍に直接DCsを注射した(プロトコルI)。この注射方法を用いて拒絶反応は観察されず、数名の患者は、実際に腫瘍部位に局部的反応を示し(25%、2/8)、幾人かは、安定した症状(50%、4/8)、一方、数名の患者(25%、2/8)は疾患の進行を示した。次の患者のグループには、局部的癌化学療法をDCsにより抗原取込みを高めるために追加したときに(プロトコルII)、拒絶反応は観察されなかった。実際に、局部的な治療を加えることは、局部的部分腫瘍反応を若干改善(40%、4/10)。患者はまた、安定(40%、4/10)と進行性疾患(20%、2/10)となった。
【0064】
アポトーシスに耐性のある腫瘍細胞は、TGFOやIL10のような免疫抑制因子の局部的分泌や、腫瘍周辺領域に到達する十分な体系機能的なDCsが欠乏することで、免疫を誘発しないかもしれないと考えられている(Bodey, B. et al., Anti cancer Res., 20: 2665-76, 2000)。腫瘍環境は、耐性又は免疫を誘導することとなる成熟状態を決定する。それ故、注射部位でのDC活性化を完全なものとするために、他の炎症誘発性サイトカインや免疫誘発性物質を未成熟DScと組み合わせる必要があるかもしれない。
【0065】
それ故、DScを、AT細胞のような他の細胞タイプと組み合わせることは、有望な治療となる。DScは、T細胞を活性化し、これらの相互作用は、効果的な免疫反応を確立するために重要である。活性化されたT細胞は、多くのメカニズムによって、DCsによる抗原提示に影響を与えることができる。AT細胞は、未成熟DCsと物理的に相互作用する表面分子を発現し、加えて、得られた抗原への適応力のある免疫反応が生じる部分的リンパ節へ、DCsの成熟及び移動に影響を与えるサイトカインとケモカインを生成する。結果として、腫瘍特異的免疫反応が生み出される可能性があり、長期記憶的に定着する。
【0066】
適応可能な治療用のT細胞を生成する異なる方策があり、それらは、抗原特異性、腫瘍親和力や細胞表現型だけでなく、生体内における寿命、トラフィッキングや抗腫瘍効果のような性質にも影響を与える。T細胞は、種々の方法により増殖しており、その方法には、生体外で刺激を与えて、抗原提示用に設計された細胞(例えば、ペプチドをパルスしたDCs、トランスフェクトされたRNA)や、人工的抗原提示細胞を用いて、末梢血から抗原特異的T細胞を引き出すことが含まれる。腫瘍細胞から浸潤リンパ球を採取することで、腫瘍への腫瘍へ幅広い反応性を有する多クローン性T細胞群が生じる。生体外での増殖後、これらの細胞を再び注入することは、免疫療法の治療方法として用いられている。別のアプローチとして、抗体と共に、及び/又は、T細胞を促進するサイトカインを使用して、T細胞受容体と共刺激分子をトリガーすることによって、末梢血リンパ球を活性化し、増殖することが行なわれている。
【0067】
本研究において、AT細胞は、抗CD3−IL2培養とイオノマイシン活性により、末梢血リンパ球から増殖され、CD4OLをアップレギュレートしている。DC注射から数日後、培養されたAT細胞は、抗原特異的T細胞が生成されるであろうとの考えの基で、腫瘍内に注射した。AT細胞療法を受けている患者には、1)局部的化学療法(プロトコルIII)、2)全身的化学療法(プロトコルIV)、又は、3)全身的化学療法と部分的腫瘍放射線治療(プロトコルV)により前処置を施した。
【0068】
局部的腫瘍放射線治療を第3のAT細胞プロトコル(プロトコルV)に追加した場合、AT細胞注射後、患者2人に、一時的な発熱、リンパ節症、転移部位の痛み、及び、AT細胞注射部位の腫れが現れた。これらの症状は、1週間以内に改善され、顕著には、咽頭癌患者1人に、治療部位及び未治療部位の両方で完全な腫瘍退縮が観察された。治療後最初の3週間は、注射部位以外では、咽頭、喉頭、子宮頸部のリンパ節を含むすべての領域で退縮があり、その後9ヶ月まで、腫瘍は、注射部位を含めて完全に退縮した。本治療グループの非常に進行した食道癌の段階にあった第2の患者は、初期に反応するように思われたが、進行性疾患を発症した。治療のどの部分が、強い炎症反応、免疫抑制因子のコントロール又は不足、又は、これら又は他の事象との組み合わせによって、反応に寄与するかは明白でない。発熱は、AT細胞と、化学療法(プロトコルIII)又は放射線治療(プロトコルV)の何れかと共に局部的腫瘍治療の両方を受けた2つのグループに関連しており、そのような反応を引き起こすことで知られている炎症サイトカインの解放を示唆している。実際、これらの拒絶反応は、腫瘍に生ずる免疫反応に必要であると思われる。
【0069】
化学療法剤を全身又は局部的に投与して、これらの薬剤が免疫治療処置と共に安全で効果的に用いられるかどうかを決定しようとした。この化学療法の投与は、患者の悪性腫瘍を治療するために一般的に最適と思われる量ではなく、どちらかというと癌への免疫反応を対処する補助としてのものであった。化学療法は、腫瘍細胞内で抗原取り込みを増大させるアポトーシスを誘発することができる。より重要なのは、これらの薬により、制御性T細胞が生じるかもしれないことである。CD4+CD25+として一般的に定義される制御性細胞は、大部分のヒト固形がんに存在することがわかっており、その数の多さとその度数は、全生存と相関あるように考えられている(Beyer, M. et al., Blood 108: 804-11, 2006)。細胞表面にてCD25を直接ターゲットとすることによるそれらの除去又は選択的な破壊は、免疫療法に対する腫瘍特異的な増強された反応を生じた結果であることが知られている。低投与量のシクロホスファミドを使用することで、特に、制御性細胞の数が減少するだけでなく、免疫刺激効果を発揮することが認識されている。化学療法を、DCとAT細胞の注射の前に全身に施しても、有害な事象は見られなかった。本研究の目的は、安全性であり必ずしも治療効果を必要としていないが、これらの手法を組み合わせることにより観察された明らかな利点は、各処置(化学療法、放射線治療、未成熟DCとAT細胞の注射)が、腫瘍に効果を与えることができたという認識をもって考えられるべきである。実際、患者2人(頭部及び頸部癌(プロトコルV)、胃癌(プロトコルVV))は共に、標準的な放射線治療/化学療法に失敗したが、放射線治療及び/又は化学療法を受け、その後に、DCs及びAT細胞を腫瘍内注射したので、十分な反応を示した。
【0070】
全体的に見れば、本研究では、治療プロトコルのすべてが、比較的良好な耐容性があり、免疫原生を高め又は耐性を覆すために、未成熟DCsとAT細胞の腫瘍内注射に、従来の治療をプラスした組合せを単一のプロトコル中に安全に且つ効果的に組み入れることができることを証明した。
【0071】
本発明について、好ましい実施例を参照して、具体的に説明し、記載したが、当業者であれば、その精神と発明の範囲から離れることなく、添付のクレームに規定したとおり、形態や詳細に種々の変更を行うことができることは理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の腫瘍組織中の腫瘍細胞のサイズを縮小する方法であって、
患者から単球細胞を採取するステップ、
単球細胞から未成熟樹状細胞を形成するために、1又は複数の因子を用いて単球細胞を培養するステップ、
患者の腫瘍組織に未成熟樹状細胞とアジュバントを導入するステップ、及び、
活性化したT細胞を患者の腫瘍組織に導入するステップと、
を含んでいる患者の腫瘍組織中の腫瘍細胞のサイズを縮小する方法。
【請求項2】
未成熟樹状細胞、アジュバント及び活性化したT細胞の導入は、腫瘍内注射によりもたらされる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
活性化したT細胞は、患者の体内に未成熟樹状細胞及びアジュバントを導入し
た後に導入され、抗原特性T細胞が生成される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
単球細胞は、GM−CSF及びIL−4を用いて培養される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
アジュバントは、活性化したリンパ球溶液、スーパーリンパ系組織抽出物、ベータ・グルカン及びキーホールリンペットヘモシニアンからなる群より選択される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
活性化したリンパ球溶液は、CD3−CD28ビーズを用いて作成される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
活性化したT細胞の活性化は、T細胞を、抗CD3抗体とイオノフォアに曝すことによりもたらされる請求項1に記載の方法。
【請求項8】
イオノフォアは、イオノマイシンである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
アジュバント及び活性化したT細胞を患者の腫瘍組織内に導入するステップの前に、患者に局部的化学療法を用いて前処置するステップをさらに含んでいる請求項1に記載の方法。
【請求項10】
未成熟樹状細胞、アジュバント及び活性化したT細胞を患者の腫瘍組織内に導入するステップの前に、患者に全身化学療法を用いて前処置するステップをさらに含んでいる請求項1に記載の方法。
【請求項11】
未成熟樹状細胞、アジュバント及び活性化したT細胞を患者の腫瘍組織内に導入するステップの前に、患者に全身化学療法と局部的腫瘍放射線治療を用いて前処置するステップをさらに含んでいる請求項1に記載の方法。
【請求項12】
患者は、ヒトである請求項1に記載の方法。
【請求項13】
腫瘍組織中に導入されると、抗原と結合して、患者の腫瘍のサイズを縮小する癌ワクチンであって、
患者から採取された単球細胞に由来する未成熟樹状細胞、アジュバント、患者の体内の腫瘍からの抗原及び活性化したT細胞を含んでいる癌ワクチン。
【請求項14】
腫瘍内注射によって患者の腫瘍組織中に導入される請求項13に記載の癌ワクチン。
【請求項15】
単球細胞は、GM−CSF及びIL−4を用いて培養される請求項13に記載の癌ワクチン。
【請求項16】
アジュバントは、活性化したリンパ球溶液、スーパーリンパ系組織抽出物、ベータ・グルカン及びキーホールリンペットヘモシニアンからなる群より選択される請求項13に記載の癌ワクチン。
【請求項17】
活性化したリンパ球溶液は、CD3−CD28ビーズを用いて作成される請求項16に記載の癌ワクチン。
【請求項18】
活性化したT細胞の活性化は、T細胞を、抗CD3抗体とイオノフォアに曝すことによりもたらされる請求項13に記載の癌ワクチン。
【請求項19】
イオノフォアは、イオノマイシンである請求項18に記載の癌ワクチン。
【請求項20】
患者は、ヒトである請求項13に記載の癌ワクチン。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−508364(P2010−508364A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535441(P2009−535441)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2007/083161
【国際公開番号】WO2008/063837
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(507086262)ハスミ インターナショナル リサーチ ファウンデイション (2)
【氏名又は名称原語表記】HASUMI INTERNATIONAL RESEARCH FOUNDATION
【Fターム(参考)】