説明

樹脂のエッチング方法、エッチング装置およびプリント基板

【課題】高密度プリント配線板に必要不可欠な樹脂のエッチング方法において、従来法では、液中の炭酸イオン除去について配慮されておらず、液中の水酸化物イオンが低下し、その結果、基板の不良原因を招く恐れがあった。従って、本発明の目的は、液中の反応生成物として蓄積される炭酸イオンを特定の処理液で沈澱除去し、エッチング液の安定化及び長寿命化を図った。その結果、不良が低減し、高信頼性のプリント配線基板製造が可能となる。
【構成】エッチング槽1中のアルカリ性過マンガン過マンガン酸液をポンプ2で循環る際、配管の途中に特定の液3を注入し、反応生成物の炭酸塩を沈澱させフィルター4により濾過して除去し、自動分析装置5によりアルカリ規定度測定し、所定の規定度に調整し、この液により樹脂のエッチングを行う。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はプリント配線板製造において、めっき前に行うアルカリ性過マンガン酸浴による樹脂のエッチング方法、エッチング装置およびプリント基板に関し、特に樹脂とめっき膜との接着力安定化及びアルカリ性過マンガン酸浴の長寿命化に適した樹脂のエッチング方法、エッチング装置およびそれを用いたプリント基板に関する。
【0002】
【従来の技術】めっき膜と樹脂との接着性の向上を目的として種々処理方法が考案されてきた。プリント配線板製造においては、ドリリングする際に発生するスミアが内層接続不良をもたらすため樹脂のエッチング工程であるデスミアプロセスが必須である。また近年、各社で盛んに開発されているビルドアップ配線基板においても、絶縁樹脂と銅配線との密着性向上を目的に樹脂表面の粗化処理プロセスが行われている。これは、樹脂表面をエッチングして凹凸を形成し、アンカー効果により接着力を向上させるものである。
【0003】ウェット処理による樹脂のエッチング方法としては、濃硫酸処理、濃硫酸とクロム酸との混合液処理、アルカリ性の過マンガン酸処理等が用いられてきた。
【0004】濃硫酸処理と、濃硫酸とクロム酸との混合液処理とは、強酸性処理液であるため銅配線を溶解してしまうため使い勝手が非常に悪い。さらに、濃硫酸とクロム酸との混合液処理は、6価クロムを使用するため公害規制等で使用不可能な状態となっている。以上の状況から現在は、アルカリ性過マンガン酸処理液が殆ど樹脂のエッチングに使用されている。
【0005】アルカリ性過マンガン酸のよる樹脂のエッチング液は、基本的に過マンガン酸カリウムと水酸化ナトリウムとから構成されており、樹脂のエッチング反応の進行と共に(化1)に従って過マンガン酸イオン、水酸化物イオンが消費され、それぞれのイオン濃度が低下する。一方マンガン酸イオン濃度が増加し、炭酸ガスが発生する。
【0006】
【化1】


【0007】炭酸ガスは、そもそも酸性物質であるため、発生すると同時に浴のアルカリ成分(水酸化物イオン)との間で(化2)に示す中和反応を起こして炭酸イオンとして溶解する。
【0008】
【化2】


【0009】また、過マンガン酸塩は、(化3)のように浴中の水酸化ナトリウムとの接触反応でも濃度が低下する。
【0010】
【化3】


【0011】過マンガン酸イオン、水酸化物イオンの濃度は、エッチング速度の支配要因なので、これらが消費されると共に樹脂のエッチング速度が低下するため、濃度を一定に維持する必要がある。すなわち、アルカリ性過マンガン酸浴によるエッチング方法では、各成分、特に過マンガン酸イオン及び水酸化物イオン(水酸化ナトリウム)の濃度管理が最重要項目となる。
【0012】過マンガン酸塩の濃度管理は、吸光度法或いは滴定法による分析結果に基づいて行う方法が知られているが、一般的に吸光度法が用いらる。滴定法では、過マンガン酸イオン濃度とマンガン酸イオン濃度とを1度の操作で分析できないが、吸光度法では、過マンガン酸塩の吸収波長526nmとマンガン酸塩の吸収波長603nmとに現れるピーク大きさにから1度の分析操作により各々の濃度が演算できるからである。
【0013】樹脂のエッチング或いは接触反応で低下した過マンガン酸塩は、反応生成物であるマンガン酸塩を酸化することにより、またもとの過マンガン酸塩に戻すことが可能である。
【0014】この手法として例えば、特開昭59−14052号公報,特開昭61−279688号公報,特開平3−80827号公報等に記載のように、過マンガン酸塩以外の強力な酸化剤を浴中に添加することで増加したマンガン酸塩を過マンガン酸塩に戻している。一方、特開平5−25662号公報に記載のように、浴中のアノード電極とカソード電極間に所定量の電解を加えることによっても電気的に酸化を行うことができる。従って、過マンガン酸塩の濃度は、持ち出しによる不足分を補給すれば一定に維持できる。
【0015】一方、水酸化物イオン濃度(水酸化ナトリウム)は、希釈したアルカリ性過マンガン酸に希塩酸を滴定し、その滴定量で濃度を管理するという、いわゆる、中和滴定法によって分析される。一般的は、その分析結果から演算した濃度不足分の水酸化ナトリウムを補給することでアルカリ性過マンガン酸エッチング浴のアルカリ規定度を一定に維持し、それによって水酸化物イオン濃度が一定範囲に入るようにコントロールしていた。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来のアルカリ規定度を測定する水酸化物濃度の管理方法では、樹脂のエッチング量増大に伴い浴中の水酸化物イオン濃度が急激に低下するおそれがある。すなわち、従来技術では、真の水酸化ナトリウム濃度の測定法に関しては、全く配慮されておらず、樹脂の処理量増加と共にエッチング速度が低下することによってエッチング液として使用できなくなるため、処理可能な樹脂量が多くなかった。この理由について、下記反応式を用いて説明する。
【0017】
【化4】


【0018】
【化5】


【0019】
【化6】


【0020】アルカリ性過マンガン酸処理液中で水酸化物イオンは(化4)ないし(化6)に従って消費される。(化4)は、樹脂のエッチング反応である。この反応では過マンガン酸イオンと水酸化物イオンとを消費して二酸化炭素とマンガン酸イオンを副生する。こうして生成した二酸化炭素は、アルカリ性の雰囲気中へ炭酸ナトリウムとして溶解することによって水酸化イオンを消費する(化5)。また、過マンガン酸イオンのマンガン酸イオンへの自己分解反応の際にも水酸化イオンは消費される。更に、エッチング液周囲の大気中からの炭酸ガスの溶け込みによっても水酸化物イオン濃度は低下する。
【0021】
【化7】


【0022】
【化8】


【0023】一方、中和滴定によってアルカリ規定度を測定する際には、測定対象である水酸化イオンの中和反応(化7)の他に炭酸イオンの中和反応(化8)も平行して起こる。従って、ここで塩酸の滴定により測定されるアルカリ規定度の値は、炭酸イオンと水酸化物イオン含有量の和となり、実際の水酸化イオン含有量よりも見かけ上大きな分析値が得られる。この分析値を基にして水酸化ナトリウムの補給量を計算すると、実際の浴中の水酸化ナトリウム濃度は減少することになる。この結果、樹脂量の増大や経時変化により、樹脂のエッチング速度が低下して、エッチング液としての性能・能力が速やかに低下するという事態に陥り、デスミアプロセスにおけるエッチング不足起因の内層接続不良発生やビルドアッププロセスのおける樹脂とめっき膜との接着性が低くなるという問題が生ずる。
【0024】本発明の目的は、従来技術の課題である樹脂処理量の増大や経時変化によるエッチング能力の変動を抑えた、アルカリ性過マンガン酸浴による樹脂のエッチング方法、エッチング装置およびそれを用いたプリント基板を提供することにある。
【0025】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため、本発明に係るアルカリ性過マンガン酸浴による樹脂のエッチング方法を種々検討し、以下の結果を得た。
【0026】その一手段としては、アルカリ成分補給量算出の基になるアルカリ規定度測定の前に、炭酸イオンを除去する工程を設けるという簡単な操作を追加することによって、上記のようなアルカリ規定度の値と水酸化物イオン濃度とを一致させることが可能であることを見出して本出願に至った。炭酸イオンを除去する方法としては、公知慣用の方法であれば特段の問題はなく、例えば、イオン交換や吸着によるもの、或いは、炭酸イオンと結合して難溶性或いは不溶性物質を形成し、後に濾過しても良い。
【0027】本発明では、炭酸イオンと結合して難溶性物質を形成するような成分を含有する処理液と混合することが好適である。生成した難溶性物質は簡単な工学処理、例えば、濾別や重力沈降、遠心分離等の手段を用いて容易に分離可能だからである。
【0028】尚、本発明では、炭酸イオンと結合して難溶性或いは不溶性物質であるかどうかは、室温での純水に対する溶解度が3wt%以下であるか、或いは、室温での0.1規定水酸化ナトリウム水溶液への溶解度が1wt%以下であるかどうかで簡便に判定できる。
【0029】炭酸イオンと結合して難溶性或いは不溶性物質を生成するような成分として、本願発明に好適な物質はIA族,IB族,IIA族,IIIB族元素から選ばれる1種類以上ものが好適である。例えば、Li,Ba,Ca,Ag等の元素を含むものが挙げられる。これらの元素と水酸化物イオン、塩素イオン、硝酸イオン、燐酸イオン等とからなるアルカリ可溶性の無機塩類が特に好適であり、LiOH,BaCl2等がよい。中でもバリウムイオンは、炭酸イオンと迅速且つ定量的に結合するため、水酸化バリウム塩類が良く、最も好適なバリウム塩の一例としては、水溶性の高い塩化バリウムなどが挙げられる。また、炭酸イオンは、バリウム塩と反応し白色の沈殿物を生ずる特徴がある。この反応を(化9)に示す。
【0030】
【化9】


【0031】この反応生成物である炭酸バリウムは、解離定数が低く難溶性の特性を示す。従って、炭酸バリウムの沈殿物は、フィルターで濾過し除去可能となる。炭酸ナトリウムを除去後塩酸で中和滴定を行えば真の水酸化ナトリウム濃度が測定できる。その結果、長期間に渡って安定したエッチング速度を得ると共に、樹脂とめっきとの接着力の安定化が図れる。
【0032】すなわち、本発明は、マンガン酸イオン濃度を過マンガン酸イオンに酸化する工程と、過マンガン酸イオンとマンガン酸イオン濃度を吸光度により管理し不足分を補給する工程と、浴中にバリウム塩等の水溶液を添加して炭酸ナトリウムを除去する工程と、次いで水酸化ナトリウム濃度を中和滴定により管理し不足分を補給する工程とから構成される樹脂のエッチング方法である。このような、エッチング方法によれば、長期に渡って安定したエッチング能力が維持できるにで、従来のように頻繁に浴を更新する必要が無くなり、省資源と低コストにも貢献できる。
【0033】本発明における各成分濃度としては、過マンガン酸塩濃度が40ないし70g/L,マンガン酸塩濃度が30g/L以下,水酸化ナトリウム濃度が20ないし80g/Lが好ましい。係る濃度の上限値及び下限値は、樹脂とめっきとの接着力及び内層接続性とから求めたものである。また、バリウム塩の添加量としては、樹脂の処理量によって決定されるものであり、規定するものではない。添加方法としては、アルカリ性過マンガン酸浴の循環系配管途中で行い、バリウム塩水溶液の添加,フィルター濾過,水酸化ナトリウム濃度測定の順に行うことが好ましい。
【0034】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図表を参照して説明する。
【0035】(実施例1)以下、図1を参照しながら本発明の実施の形態であるエッチング装置の実施例を説明する。図1は、本発明の実施例であるエッチング装置の構成を説明するブロック図である。図1において、符号1は本槽の樹脂エッチング浴槽、符号2はエッチング液成分を均一にするための循環ポンプ、符号3はエッチング液中の炭酸ナトリウムを沈澱するために必要な塩化バリウム水溶液補給タンクである。液濃度は、今回の検討では、0.5mol/L水溶液を用いている。添加量としては、樹脂の処理面積にあわせ随時調整できる構造としている。また、符号4は沈殿物を除去するフィルターであり、孔径の大きいものから順に数段通すことが効果的である。
【0036】符号5は自動分析装置であり、アルカリ規定度については中和滴定で、過マンガン酸あるいはマンガン酸濃度については吸光度方で測定する。また、符号6は、自動分析装置5の測定結果をもとに成分の不足分を補給する自動液補給コントローラーである。符号7、符号8は、それぞれ水酸化ナトリウム水溶液と過マンガン酸水溶液との補給液タンク、符号9はマンガン酸を過マンガン酸にするための電解酸化装置の直流安定化電源である。符号10がカソード電極、符号11がアノード電極である。
【0037】一定濃度の水酸化ナトリウム水溶液と過マンガン酸水溶液とが入った樹脂エッチング浴槽1に基板を入れ、樹脂のエッチングを行う。その際に樹脂エッチング浴槽1内での液濃度均一性及び基板表面への均一接触性を保持する目的で符号2のポンプにより循環を行う。樹脂のエッチングに重要なことは、常に薬液の濃度を一定に保つことである。樹脂のエッチング液は、基板の処理枚数が嵩むに連れ液中に蓄積する炭酸ナトリウム濃度が増加し、その反面、水酸化ナトリウム濃度は減少する。
【0038】水酸化ナトリウム濃度測定は、一般的に塩酸を用いた中和滴定によりアルカリ規定度を測定することで行われる。実際の動作としては、エッチング液のアルカリ規定度を測定し、初期の一定濃度からの不足分だけ水酸化ナトリウムを補給するものである。その時に問題となるのが、アルカリ規定度は、水酸化ナトリウム濃度と炭酸ナトリウム濃度との和のであり、真の水酸化ナトリウム濃度でないという点である。そこで、真の水酸化ナトリウム濃度を測定するために、予め補給タンク3の塩化バリウム水溶液を循環配管内でエッチング液に混合させ、炭酸バリウムとして沈澱させる。その沈殿物は、フィルター4で除去する。その後、自動分析器5を用いて、中和滴定を行えば水酸化ナトリウム濃度のみ測定可能となる。そして、自動液補給コントローラー6の指示により水酸化ナトリウム水溶液の補給タンク7のバルブを開け、水酸化ナトリウム濃度を一定に保つ。
【0039】これによって、水酸化ナトリウム濃度を一定に保持することが可能となった。
【0040】一方、過マンガン酸濃度については、樹脂をエッチングすると7価のマンガンが6価或いは4価のマンガンに還元される。ここでエッチングに重要なことは、7価のマンガン濃度を一定に保つことである。すなわち、基板を処理すると、エッチング液は、7価のマンガン(過マンガン酸)が減少し、6価のマンガン(マンガン酸)と4価のマンガン(二酸化マンガン)が増加する。6価のマンガンは、エッチング液に電解を加えることで7価に酸化できる。本装置では、直流安定化電源9、カソード電極10、アノード電極11がそれに当たる。
【0041】しかし、二酸化マンガンは、7価に酸化することができないので、自動分析装置5で過マンガン酸濃度を測定し、自動液補給コントローラー6の指示により、過マンガン酸水溶液との補給液タンク8のバルブを開け、過マンガン酸の濃度も一定に保つ。
【0042】以上述べたように、本実施例のエッチング装置によれば、エッチング液の濃度を一定に保つことができ、エッチング速度のばらつきも最低限に抑えることができた。また、その結果、基板品質も確保できた。
【0043】(実施例2)本発明の他の実施の形態であるプリント基板の実施例を表1および図2ならびに図3を参照して説明する。ここで、図2はプリント基板の接続不良評価の結果を示す図である。また、図3はエッチング液の分析結果を示す図である。
【0044】この実施例では、実施例1の装置を用いてプリント配線基板をデスミア処理したときの、処理面積と内層接続不良の関係について実験を行ったものである。プリント基板の作成は、周知の方法で回路形成した銅張り積層板とプリプレグを交互に介して積層プレスし、所望部にドリルで穴明けを行い、次いでデスミア処理を行い、後に触媒付与、めっき前処理、化学銅めっきを施した。また、この実験における基板の主なエッチング条件は、表1に示すとおりである。
【0045】
【表1】


【0046】基板の評価は、断面観察により接続不良の有無判定を行った。その結果を図2に示す。図2から明らかなように、エッチング液中の炭酸ナトリウム除去しない実験1では、早期に不良が発生するのに対し、塩化バリウムを添加した実験2では、長期に渡っても不良が発生しない。また、図3に示す、実験1の水酸化ナトリウムの真濃度を塩化バリウム添加した後の測定測定結果では、処理面積が増すにつれ濃度が低下している。以上のことから、本発明のエッチング方法によれば、液寿命の長期化が図れると共に信頼性の優れた基板が提供可能となる。
【0047】(実施例3)次に、表2、表3を参照して本発明の実施の形態であるプリント基板の実施例を説明する。ここで、表2は、比較のため実施した実験であって、分析前に塩化バリウムを添加していないエッチング液で樹脂のエッチングをしたあと銅配線を形成したサンプルのピール強度を示す。また、表3は、分析前に塩化バリウムを添加したエッチング液で樹脂のエッチングをしたあと銅配線を形成したサンプルのピール強度を示す。
【0048】実施例3では、実施例1の装置を用いて、ビルドアップ基板の粗化工程を行った。これは、絶縁樹脂と銅配線との接着力向上のために行うエッチング工程である。ビルドアップ基板の作成方法は、両面銅張り積層板の表面に、静電塗布機で膜厚50μm程度の絶縁樹脂を塗布し、高圧水銀ランプ用露光機で約1000mj/cm2照射して形成した。後にアルカリ性過マンガン酸エッチング工程、触媒付与工程を行い、厚さ1μm程度の化学銅めっきを施し、次いで電気硫酸銅めっきで20μm程度厚付けめっきを行い、加熱処理を150℃,60分したものを評価用基板とした。基板の評価方法は、めっき膜を10mm幅×50mm長さにカッターナイフで切り、片側から垂直に引き剥がすピール強度測定で判定した。本実験の絶縁樹脂には、ビルドアップ基板の絶縁樹脂用に開発されたBL−8300(日立化成製)を用いた。また、表2,表3中以外の主なエッチング条件は、実施例2と同様である。ピール強度評価結果を表2,3に示す。
【0049】
【表2】


【0050】
【表3】


【0051】表2、表3から明らかなように、一般的に行われているエッチング方法の実験3ないし実験6(塩化バリウム無添加)では、処理面積増加と共にピール強度が低下し、更にばらつきが大きくなっている。一方、本発明による実験7ないし実験14(塩化バリウム添加)では、長期間に渡って安定したピール強度を得ることができた。
【0052】
【発明の効果】本発明によれば、樹脂と銅めっきとの接着力が良好であり、かつ、内層接続不良が発生しない高信頼性のプリント配線板が製造できた。更に、従来のエッチング方法と比較し液の長寿命化が図ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例であるエッチング装置の構成を説明するブロック図である。
【図2】本発明の実施例であるプリント基板の接続不良評価の結果を示す図である。
【図3】本発明の実施例であるエッチング液の分析結果を示す図である。
【符号の説明】
1…エッチング槽、 2…循環ポンプ、3…塩化バリウム水溶液補給タンク、4…フィルター濾過機、5…自動分析装置、 6…自動液補給コントローラー、7…水酸化ナトリウム補給タンク、 8…過マンガン酸塩補給タンク、9…直流安定化電源、 10…カソード電極、11…アノード電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】マンガン酸塩を過マンガン酸塩に酸化する工程と、炭酸イオンを除去する工程と、アルカリ成分を補給する工程とを備えることを特徴とする樹脂のエッチング方法。
【請求項2】請求項1に記載の樹脂のエッチング方法であって、前記除去する工程が、炭酸イオンと結合して難溶性または不溶性物質を形成するような成分を含有する処理液との混合と、生成した難溶性または不溶性物質の濾別とからなることを特徴とする樹脂のエッチング方法。
【請求項3】請求項2に記載の樹脂のエッチング方法であって、前記難溶性または不溶性物質は、純水に対する溶解度が3wt%以下であることを特徴とする樹脂のエッチング方法。
【請求項4】請求項2に記載の樹脂のエッチング方法であって、前記難溶性または不溶性物質は、0.1規定水酸化ナトリウム水溶液に対する溶解度が1wt%以下であることを特徴とする樹脂のエッチング方法。
【請求項5】請求項2に記載の樹脂のエッチング方法であって、前記難溶性あるいは不溶性物質を形成する成分が、周期律表のIA族、IB族、IIA族、IIIB族元素から選ばれる1種類以上の元素を含有することを特徴とする樹脂のエッチング方法。
【請求項6】請求項2に記載の樹脂のエッチング方法であって、前記難溶性あるいは不溶性物質を形成する成分が、炭素イオンと結合する結合方法が、イオン結合または化学結合によるものであることを特徴とする樹脂のエッチング方法。
【請求項7】請求項2ないし請求項6のいずれか一に記載の樹脂のエッチング方法であって、前記難溶性あるいは不溶性物質を形成する成分が、アルカリ浴中で可溶な無機塩類であることを特徴とする樹脂のエッチング方法。
【請求項8】請求項1に記載の樹脂のエッチング方法であって、アルカリ規定度が0.5ないし2.0規定範囲内に収めるようにアルカリ成分を補給することを特徴とする樹脂のエッチング方法。
【請求項9】マンガン酸塩を過マンガン酸塩に酸化する工程と、過マンガン酸塩とマンガン酸塩の濃度を吸光度により分析する工程と、分析値から演算して過マンガン酸塩の不足分を補給する工程と、浴中に生成した炭酸塩をバリウム塩類で沈殿させ濾過により除去する工程と、アルカリ規定度を中和滴定により分析する工程と、その分析値から演算して水酸化ナトリウムを補給する工程とを含むことを特徴とする樹脂のエッチング方法。
【請求項10】請求項9に記載の樹脂のエッチング方法であって、前記バリウム塩類が、塩化バリウム、硝酸バリウム、水酸化バリウム、燐酸バリウム或いはこれらの混合物の中から選ばれるものであることを特徴とする樹脂のエッチング方法。
【請求項11】エッチング液に生成した炭酸塩をバリウム塩類で沈殿させる手段と、前記エッチング液をろ過する手段と、アルカリ規定度を測定する手段と、その測定値から水酸化ナトリウムを補給する手段とからなるエッチング装置。
【請求項12】請求項11記載のエッチング装置であって、前記エッチング液に生成したマンガン酸塩を過マンガン酸塩に酸化する手段と、前記エッチング液の過マンガン酸塩とマンガン酸塩との濃度を測定する手段と、その測定値から過マンガン酸塩を補給する手段とからなるエッチング装置。
【請求項13】請求項1から請求項10のいずれか一に記載の方法により製造された高密度プリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2000−13000(P2000−13000A)
【公開日】平成12年1月14日(2000.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−175579
【出願日】平成10年6月23日(1998.6.23)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】