説明

樹脂シートの製造方法

【課題】比較的厚肉の樹脂シートの場合であっても、成形後の板反りが小さく、所望の断面形状を得ることができ、特に、各種表示装置の背面に配される導光板や各種光学素子に使用するのに好適な樹脂シートの製造方法を提供する。
【解決手段】ダイ12より押し出したシート状の樹脂材料14を型ローラ16と型ローラに対向配置されるニップローラ18とで挟圧し、型ローラ表面の凹凸形状を前記樹脂材料に転写し、転写後の樹脂材料を型ローラに対向配置される剥離ローラ24に巻き掛けることにより型ローラより剥離し、樹脂材料を該樹脂材料のガラス転移温度に対して(Tg−30)〜(Tg+40)°Cの温度に制御した状態で剥離ローラより剥離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂シートの製造方法に係り、特に、各種表示装置の背面に配される導光板や各種光学素子に使用するのに好適な樹脂シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種光学素子に使用される樹脂シートとして、フレネルレンズやレンチキュラーレンズ等が様々な分野で使用されている。このような樹脂シートの表面には、規則的な凹凸形状が形成されており、この凹凸形状により、フレネルレンズやレンチキュラーレンズとしての光学的性能を発揮している。
【0003】
このような樹脂シートを製造する方法として、これまでに各種の提案がなされている(特許文献1等参照)。これらの提案においては、いずれも、生産性向上の観点よりローラ成形方式が採用されている。
【0004】
これら従来技術の代表的なローラ成形方式は、図6に示される構成のようになっている。この装置構成は、押出し機(図示略)によって溶融された樹脂材料1をシート状に賦形するためのシート用のダイ2と、表面に凹凸形状が形成されたスタンパーローラ3と、スタンパーローラ3に対向配置される鏡面ローラ4と、スタンパーローラ3に対向するとともに、鏡面ローラ4の反対側に配置される剥離用鏡面ローラ5よりなる。
【0005】
そして、ダイ2より押し出したシート状の樹脂材料1を、スタンパーローラ3と鏡面ローラ4とで挟圧し、スタンパーローラ3表面の凹凸形状を樹脂材料1に転写し、樹脂材料1を剥離用鏡面ローラ5に巻き掛けることによりスタンパーローラ3より剥離する。
【0006】
このような樹脂材料成形方式において深刻な問題点の1つは、比較的厚肉の樹脂シートの場合、特に、成形時の幅方向の厚さ分布が大きい樹脂シートの場合には成形後の板反りが大きくなるということである。この対策として、特許文献2、3では、以下のような内容の対策が採られている。しかしながら、完全な解決策が得られた訳ではない。
たとえば、特許文献2では、成形後のアニーリング時に加熱固定(矯正)して板反り対策としており、特許文献3では、シート切断時に加熱軟化させて板反り対策としている。
【特許文献1】特開平9−11328号公報
【特許文献2】特開2005−47126号公報
【特許文献3】実開平5−16234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2、3のような板反り対策では、型付けしたシートの場合、加熱により型が崩れ、各種光学素子用途の樹脂シートとして所望の機能を発揮できない。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、比較的厚肉の樹脂シートの場合であっても、特に、成形時の幅方向の厚さ分布が大きい樹脂シートの場合であっても、成形後の板反りが小さく、所望の断面形状を得ることができ、特に、各種表示装置の背面に配される導光板や各種光学素子に使用するのに好適な樹脂シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記目的を達成するために、ダイより押し出したシート状の樹脂材料を型ローラと該型ローラに対向配置されるニップローラとで挟圧し、前記型ローラ表面の凹凸形状を前記樹脂材料に転写し、転写後の前記樹脂材料を前記型ローラに対向配置される剥離ローラに巻き掛けることにより前記型ローラより剥離し、前記樹脂材料を該樹脂材料のガラス転移温度Tgに対して(Tg−30)〜(Tg+40)°Cの温度に制御した状態で前記剥離ローラより剥離することを特徴とする樹脂シートの製造方法を提供する。
【0010】
本発明によれば、樹脂材料を型ローラとニップローラとで挟圧し、型ローラ表面の凹凸形状を樹脂材料に転写し、型ローラより剥離し、樹脂材料を(Tg−30)〜(Tg+40)°Cの温度に制御した状態で剥離ローラより剥離する。
【0011】
したがって、型ローラ表面の凹凸形状を樹脂材料に精度よく転写でき、かつ、樹脂シートの成形後の板反りを小さくできる。特に、樹脂材料の幅方向における最厚肉部と最薄肉部との厚さの差が1mm以上(特に、厚さの差が2.5mm以上)の樹脂シートの製造に好適である。
【0012】
なお、樹脂材料を(Tg−30)°C未満の温度に制御した状態で剥離ローラより剥離させた場合、樹脂の流動状態が悪く、その結果転写精度が不良となり、一方、樹脂材料を(Tg+40)°Cを超える温度に制御した状態で剥離ローラより剥離させた場合、成形後の収縮の面内分布が大きく、その結果板反りが過大となる。
【0013】
なお、ガラス転移温度Tgとは下記のように説明される。高分子物質を加熱した場合に、ガラス状の硬い状態からゴム状に変わる現象をガラス転移といい、ガラス転移が起こる温度をガラス転移点(温度)という。この温度は、樹脂材料の材質や組成により異なり、たとえばポリメチルメタクリレート樹脂では90〜110°Cの範囲である。
【0014】
本発明において、前記型ローラ、ニップローラ及び剥離ローラのうちの1以上に、及び/又は、前記型ローラ、ニップローラ及び剥離ローラのうちの1以上の近傍に温度制御手段を設けることが好ましい。このように、温度制御手段を設け樹脂材料の温度を制御するのであれば、転写精度が向上する。
【0015】
また、本発明において、測温手段を設け、前記剥離ローラより剥離される際の前記樹脂材料の温度を測定し前記温度制御手段にフィードバックすることが好ましい。このように、測温手段を設け樹脂材料の温度を測定し、測定結果を温度制御手段にフィードバックするのであれば、一層転写精度が向上する。
【0016】
また、本発明において、前記樹脂材料に転写される凹凸形状により、該樹脂材料の幅方向における最厚肉部と最薄肉部との厚さの差が1mm以上となることが好ましい。また、本発明において、前記樹脂材料の最薄肉部の厚さを5mm以下とすることが好ましい。このように、従来、成形が困難であった、断面形状の樹脂材料の成形において、本発明の効果が発揮できる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、型ローラ表面の凹凸形状を樹脂材料に精度よく転写でき、かつ、樹脂シートの成形後の板反りを小さくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面に従って、本発明に係る樹脂シートの製造方法の好ましい実施の形態について詳説する。図1は、本発明に係る樹脂シートの製造方法が適用される、樹脂シートの製造ラインの例を示す構成図である。
【0019】
この樹脂シートの製造ライン10は、押出し機(図示略)によって溶融された樹脂材料14をシート状に賦形するためのシート用のダイ12と、表面に凹凸形状が形成された型ローラ16と、型ローラ16に対向配置されるニップローラ18と、型ローラ16に対向配置される剥離ローラ24と、型ローラ16に接する前の樹脂材料14の温度を制御する樹脂温制御手段20と、剥離ローラ24より剥離される際の樹脂材料14の温度を測定する温度センサ(測温手段)22と、徐冷ゾーン30と、図示しない制御手段等より構成される。
【0020】
ダイ12のスリットサイズは、成形された溶融樹脂材料14の幅が型ローラ16の幅よりも広くなるように形成され、また、このダイ12から押し出される溶融樹脂材料14が型ローラ16と第1ニップローラ18との間に押し出されるように配置されている。
【0021】
型ローラ16の表面には、規則的な凹凸形状が形成されている。この規則的な凹凸形状は、たとえば、図2に示される成形後の樹脂材料14表面(上面)の反転形状とすることができる。なお、この図2は、成形後の樹脂材料14の断面図である。
【0022】
すなわち、成形後の樹脂材料14の裏面(下面)は平面であり、樹脂材料14の表面には、図の矢印方向の直線状の凹凸パターンが形成されている。この矢印方向は、樹脂材料14の走行方向を示す。したがって、型ローラ16の表面には、樹脂材料14表面の反転形状のエンドレス溝を形成すればよい。なお、樹脂材料14表面の凹凸パターン形状の詳細については後述する。
【0023】
型ローラ16の材質としては、各種鉄鋼部材、ステンレス鋼、銅、亜鉛、真鍮、これらの金属材料を芯金として、表面にゴムライニングしたもの、これらの金属材料にHCrメッキ、Cuメッキ、Niメッキ等のメッキを施したもの、セラミックス、及び各種の複合材料が採用できる。
【0024】
型ローラ16表面の凹凸パターン形成方法としては、凹凸パターン(ピッチ、深さ、等)や型ローラ16表面の材質にもよるが、一般的にはNC旋盤による切削加工と仕上げバフ加工との組み合わせが好ましく採用できる。また、他の公知の加工方法(研削加工、超音波加工、放電加工、等)も採用できる。
【0025】
型ローラ16表面の表面粗さは、Raで0.5μm以下とするのが好ましく、0.2μm以下とするのがより好ましい。
【0026】
型ローラ16は、図示しない駆動手段により、所定の周速度で図1の矢印方向に回転駆動されるようになっている。また、型ローラ16には、温度調節手段が施されている。このような温度調節手段が設けられることにより、高温状態の樹脂材料14による型ローラ16の温度上昇や急激な温度低下を抑制すべく制御できる。
【0027】
このような温度調節手段としては、ローラ内部に温度調節したオイルを循環させる構成が好ましく採用できる。このオイルの供給と排出は、ローラの端部にロータリージョイントを設ける構成により実現できる。図1の樹脂シートの製造ライン10においては、この温度調節手段が採用されている。
【0028】
ニップローラは、型ローラ16に対向配置され、型ローラ16とにより樹脂材料14とを挟圧するためのローラで、型ローラ16と同一高さで、型ローラ16と平行に配置されている。
【0029】
ニップローラ18の表面は鏡面状に加工されていることが好ましい。このような表面とすることにより、成形後の樹脂材料14の裏面を良好な状態にできる。そして、ニップローラ18表面の表面粗さは、Raで0.5μm以下とするのが好ましく、0.2μm以下とするのがより好ましい。
【0030】
ニップローラ18の材質としては、各種鉄鋼部材、ステンレス鋼、銅、亜鉛、真鍮、これらの金属材料を芯金として、表面にゴムライニングしたもの、これらの金属材料にHCrメッキ、Cuメッキ、Niメッキ等のメッキを施したもの、セラミックス、及び各種の複合材料が採用できる。
【0031】
ニップローラ18は、図示しない駆動手段により、所定の周速度で図1の矢印方向に回転駆動されるようになっている。なお、ニップローラ18に駆動手段を設けない構成も可能であるが、樹脂材料14の裏面を良好な状態にできる点より、駆動手段を設けることが好ましい。
【0032】
ニップローラ18には、図示しない加圧手段が設けられており、型ローラ16との間の樹脂材料14を所定の圧力で挟圧できるようになっている。この加圧手段は、ニップローラ18と型ローラ16との接触点における法線方向に圧力を印加する構成のもので、モータ駆動手段、エアシリンダ、油圧シリンダ等の公知の各種手段が採用できる。
【0033】
ニップローラ18には、挟圧力の反力による撓みが生じにくくなるような構成を採用することもできる。このような構成としては、ニップローラ18の背面側(型ローラ16の反対側)にバックアップローラを設ける構成、クラウン形状(中高形状とする)を採用する構成、ローラの軸方向中央部の剛性が大きくなるような強度分布を付けたローラの構成、及びこれらを組み合わせた構成等が採用できる。
【0034】
ニップローラ18には、温度調節手段が施されている。ニップローラ18のローラ設定温度は、樹脂材料14の材質、樹脂材料14の溶融時(たとえば、ダイ12のスリット出口)の温度、樹脂材料14の搬送速度、型ローラ16の外径、型ローラ16の凹凸パターン形状等によって最適な値を選択すべきである。
【0035】
ニップローラ18のローラ温度調節手段としては、ローラ内部に温度調節したオイルを循環させる構成が好ましく採用できる。このオイルの供給と排出は、ローラの端部にロータリージョイントを設ける構成により実現できる。図1の樹脂シートの製造ライン10においては、この温度調節手段が採用されている。
【0036】
他の温度調節手段としては、たとえば、ローラの内部にシースヒータを埋め込む構成、ローラの近傍に誘電加熱手段を配する構成等、公知の各種手段が採用できる。
【0037】
樹脂温制御手段20は、型ローラ16に接する前の樹脂材料14の温度を制御するために設けられたもので、エアノズル20Aと、このエアノズル20Aに図示しないエア供給源よりエアを供給するエア配管20Bとより構成される。
【0038】
このエアノズル20Aより噴出される気体の温度や流量は、樹脂材料14の材質、樹脂材料14の溶融時(たとえば、ダイ12のスリット出口)の温度、樹脂材料14の搬送速度、型ローラ16の外径、型ローラ16の凹凸パターン形状等によって最適な値を選択すべきである。
【0039】
なお、樹脂温制御手段20は、上記の方式のものに限られる訳ではなく、樹脂材料14の温度を適正に制御できるものであれば、公知の各種手段が採用できる(たとえば、誘電加熱手段、冷却水パイプ等)。
【0040】
剥離ローラ24は、型ローラ16に対向配置され、樹脂材料14を巻き掛けることにより樹脂材料14を型ローラ16より剥離するためのローラで、型ローラ16を挟んでニップローラ18の180度下流側に配置されている。すなわち、剥離ローラ24は、型ローラ16と同一高さで、型ローラ16と平行に配置されている。
【0041】
剥離ローラ24の表面は鏡面状に加工されていることが好ましい。このような表面とすることにより、成形後の樹脂材料14の裏面を良好な状態にできる。そして、剥離ローラ24表面の表面粗さは、Raで0.5μm以下とするのが好ましく、0.2μm以下とするのがより好ましい。
【0042】
剥離ローラ24の材質としては、各種鉄鋼部材、ステンレス鋼、銅、亜鉛、真鍮、これらの金属材料を芯金として、表面にゴムライニングしたもの、これらの金属材料にHCrメッキ、Cuメッキ、Niメッキ等のメッキを施したもの、セラミックス、及び各種の複合材料が採用できる。
【0043】
剥離ローラ24は、図示しない駆動手段により、所定の周速度で図1の矢印方向に回転駆動されるようになっている。なお、剥離ローラ24に駆動手段を設けない構成も可能であるが、樹脂材料14の裏面を良好な状態にできる点より、駆動手段を設けることが好ましい。
【0044】
剥離ローラ24には、温度調節手段が施されている。そして、適正な設定温度にすることにより、樹脂材料14の表面の凹凸パターン形状を良好にできる。
【0045】
温度センサ(測温手段)22は、既述したように、剥離ローラ24より剥離される際の樹脂材料14の温度を測定するセンサ(測温手段)であり、剥離ローラ24に巻き掛けられている樹脂材料14の幅方向の複数点の表面(ローラの反対面側)の温度を測定する赤外線式温度計である。
【0046】
この温度センサ22は図示しない制御手段(パソコン等)に接続されている。また、この制御手段は、既述の各温制御手段(樹脂温制御手段20や、各ローラの温度調節手段)に接続されており、これらの各温制御手段を制御できるようになっている。したがって、温度センサ22の測定結果を各温制御手段やダイ12等にフィードバックして、樹脂材料14や各ローラ等の温度制御に反映させている。なお、温度センサ22として赤外線式温度計以外の測温手段(たとえば、放射式温度計)を使用してもよい。
【0047】
また、上記以外の箇所において、以上に説明した各ローラ、及び、樹脂材料14の各箇所の表面温度がモニターできるように、表面温度測定手段(図示略)を設けることが好ましい。このような表面温度測定手段としては、赤外線温度計、放射式温度計等の公知の各種測定手段が採用できる。
【0048】
このような表面温度測定手段による測定箇所としては、たとえば、ダイ12とニップローラ18との間の樹脂材料14の幅方向の複数点、型ローラ16に巻き掛けられている樹脂材料14(たとえば、時計方向で6時の位置)の幅方向の複数点、剥離ローラ24より剥離後の樹脂材料14の幅方向の複数点、等が考えられる。
【0049】
また、このような表面温度測定手段のモニター結果を各ローラの温度調節手段やダイ12や樹脂温制御手段20等にフィードバックして、樹脂材料14や各ローラ等の温度制御に反映させることもできる。なお、表面温度測定手段を設けずに、フィードフォワード制御により運転することも可能である。
【0050】
図1の樹脂シートの製造ライン10において、徐冷ゾーン30の下流又は剥離ローラ24の下流に樹脂材料14の張力を検出するテンション検出手段を設けたり、樹脂材料14の板厚を検出する板厚検出手段(厚さセンサ)を設けたりすることも、好ましく採用できる。また、このような検出手段による検出結果を設定値と比較し、型ローラ16等の駆動手段にフィードバックすることもできる。
【0051】
徐冷ゾーン30(又はアニーリングゾーン)は、剥離ローラ24の下流における樹脂材料14の急激な温度変化を防止するために設けられたものである。樹脂材料14に急激な温度変化を生じた場合、たとえば、樹脂材料14の表面近傍が塑性状態になっているのに、樹脂材料14の内部が弾性状態であり、この部分の硬化による収縮で樹脂材料14の表面形状が悪化する。また、樹脂材料14の表裏面に温度差を生じ、樹脂材料14に反りを生じる不具合もある。
【0052】
徐冷ゾーン30としては、水平方向のトンネル形状とし、トンネル内部に温度調節手段を設け、樹脂材料14の冷却温度プロファイルを制御できる構成が採用できる。温度調節手段としては、複数のノズルより温度制御されたエア(温風又は冷風)を樹脂材料14に向けて噴出させる構成、加熱手段(ニクロム線ヒータ、赤外線ヒータ、誘電加熱手段等)により、樹脂材料14の表裏面をそれぞれ加熱する構成等、公知の各種手段が採用できる。
【0053】
徐冷ゾーン30(又はアニーリングゾーン)の下流には、図示を省略するが、洗浄装置(洗浄ゾーン)、欠陥検査装置(検査ゾーン)、ラミネート装置、サイドカッター、クロスカッター、集積部が順に設けられる。
【0054】
このうち、ラミネート装置は、樹脂材料14の表裏面に保護フィルム(ポリエチレン等のフィルム)を貼り付ける装置であり、サイドカッターは、樹脂材料14の幅方向両端部分(捨て部分)を切除する装置であり、クロスカッターは、樹脂材料14を所定長さに切り揃える装置である。
【0055】
上記装置のうち、用途に応じて、いくつかを省略することもできる。
【0056】
次に、図1に示される樹脂シートの製造ライン10による樹脂シートの製造方法について説明する。
【0057】
本発明に適用される樹脂材料14としては、熱可塑性樹脂を用いることができ、たとえば、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、MS樹脂、AS樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、熱可塑性エラストマー、又はこれらの共重合体、シクロオレフィンポリマー等が挙げられる。
【0058】
ダイ12より押し出したシート状の樹脂材料14を、型ローラ16と型ローラ16に対向配置されるニップローラ18とで挟圧し、型ローラ16表面の凹凸形状を樹脂材料14に転写し、樹脂材料14を型ローラ16に対向配置される剥離ローラ24に巻き掛けることにより型ローラ16より剥離する。そして、剥離ローラ24に巻き掛けられた樹脂材料14を時計方向の12時に位置において、剥離ローラ24より剥離する。
【0059】
この際、温度センサ22は、剥離ローラ24より剥離される際の樹脂材料14の幅方向の複数点の表面(ローラの反対面側)の温度を測定する。そして、制御手段は温度センサ22の測定結果を各温制御手段やダイ12等にフィードバックして、樹脂材料14や各ローラ等の温度制御に反映させている。
【0060】
これにより、樹脂材料14を樹脂材料14の(Tg−30)〜(Tg+40)°Cの温度に制御した状態で剥離ローラ24より剥離することができ、樹脂材料14の反りを大幅に低減することができる。
【0061】
なお、既述したように、樹脂材料14を(Tg−30)°C未満の温度に制御した状態で剥離ローラ24より剥離させた場合、樹脂の流動状態が悪く、その結果転写精度が不良となる。一方、樹脂材料14をガラス転移温度(Tg+40)°Cを超える温度に制御した状態で剥離ローラ24より剥離させた場合、成形後の収縮の面内分布が大きく、その結果板反りが過大となる。
【0062】
なお、樹脂温制御手段20により、型ローラ16に巻き掛ける直前の樹脂材料14の温度を適正値(たとえば、(Tg+80)〜(Tg+140)°C)に制御することが好ましい。また、型ローラ16の温度も適正値(たとえば、(Tg−40)〜(Tg+30)°C)に制御することが好ましい。これにより、型ローラ16表面の凹凸形状を樹脂材料14に精度よく転写でき、また、樹脂材料が型ローラ16から剥れない剥離不良も生じない。
【0063】
型ローラ16より剥離した樹脂材料14を、水平方向に搬送し、徐冷ゾーン30を通過することにより徐冷し、歪みが除去された状態で、下流の製品取り部(図示略)において所定長さに切断し、樹脂シートの製品として収容する。
【0064】
この樹脂シートの製造において、ダイ12よりの樹脂材料14の押し出し速度は、0.1〜50m/分、好ましくは0.3〜30m/分の値が採用できる。したがって、型ローラ16の周速も略これに一致させる。なお、各ローラ(型ローラ16、ニップローラ18、剥離ローラ24)の速度ムラは、設定値に対して1%以内になるように制御することが好ましい。
【0065】
ニップローラ18の型ローラ16への押し付け圧は、線圧換算(各ニップローラの弾性変形による面接触を線接触と仮定して換算した値)で、0〜200kN/m(0〜200kgf/cm)とするのが好ましく、0〜100kN/m(0〜100kgf/cm)とするのがより好ましい。
【0066】
次に、樹脂材料14表面の凹凸パターン形状の詳細について説明する。図2は、既述したように、成形後の樹脂材料14の端面14Aを直線状に切り取った状態の斜視図である。樹脂材料14の裏面は平面である。
【0067】
樹脂材料14の表面の凹凸パターン形状は、長手方向(図の矢印方向)の直線状の凹凸パターンである。このパターンは、樹脂材料14の最厚肉部14Bに形成されるV溝50と、このV溝50の両縁より樹脂材料14の最薄肉部14Cに向かって直線状に板厚が減少していくテーパ部52、52が繰り返される形状である。すなわち、V溝50の中心線に対して線対象となる、V溝50及び両側のテーパ部52、52を1単位(1ピッチ)とした連続形状である。
【0068】
図2において、樹脂材料14の最薄肉部14Cの厚さは、5mm以下であることが好ましく、2mm以下であることがより好ましい。樹脂材料14の最厚肉部14Bと最薄肉部14Cとの厚さの差は、1mm以上であることが好ましく、2.5mm以上であることがより好ましい。このような寸法とすることにより、各種表示装置の背面に配される導光板や各種光学素子に好適に使用できる。
【0069】
成形後の樹脂材料14を導光板に使用する場合には、V溝50の内部に円柱状の冷陰極管が配され、この冷陰極管より照射される光線が、V溝50の表面より樹脂材料14の内部に入射し、テーパ部52、52で反射し、樹脂材料14の裏面より面状に照射されることとなる。
【0070】
このように成形後の樹脂材料14を導光板に使用する場合には、V溝50の幅Pを2mm以上にすることが好ましく、V溝50の頂角θ1を40〜80度にするのが好ましい。また、V溝50の深さΔtは1mm以上にすることが好ましく、2.5mm以上にするのがより好ましい。テーパ部52、52の傾斜角度θ2は3〜20度にするのが好ましい。また、テーパ部52、52の幅P2は5mm以上にすることが好ましく、10mm以上にするのがより好ましい。
【0071】
次に、樹脂材料14表面の他の凹凸パターン形状について説明する。図3は、成形後の樹脂材料14の端面14Aを直線状に切り取った状態の斜視図である。樹脂材料14の裏面は平面である。
【0072】
樹脂材料14の表面の凹凸パターン形状は、長手方向(図の矢印方向)の直線状の凹凸パターンである。この断面が鋸刃状パターンは、樹脂材料14の最厚肉部14Bと最薄肉部14Cとを繋ぐ鉛直壁54と、この鉛直壁54の上縁(最厚肉部14B)より樹脂材料14の最薄肉部14Cに向かって直線状に板厚が減少していくテーパ部56が繰り返される形状である。
【0073】
図3において、樹脂材料14の最薄肉部14Cの厚さは、5mm以下であることが好ましく、2mm以上であることがより好ましい。樹脂材料14の最厚肉部14Bと最薄肉部14Cとの厚さの差は、1mm以上であることが好ましく、2.5mm以上であることがより好ましい。このような寸法とすることにより、各種表示装置の背面に配される導光板や各種光学素子に好適に使用できる。
【0074】
成形後の樹脂材料14を導光板に使用する場合には、鉛直壁54の側面に円柱状の冷陰極管が配され、この冷陰極管より照射される光線が、鉛直壁54の表面(側面)より樹脂材料14の内部に入射し、テーパ部56で反射し、樹脂材料14の裏面より面状に照射されることとなる。
【0075】
このように成形後の樹脂材料14を導光板に使用する場合には、テーパ部56傾斜角度θ3を3〜20度とするのが好ましい。
【0076】
なお、成形後の樹脂材料14を導光板に使用する場合、これら以外の形状を採用することもできる。たとえば、図2の樹脂材料14のV溝50の断面形状はV字状となっているが、これ以外の形状、たとえば、矩形状、台形状、円弧状、放物線状等の断面形状も、光学的特性、成形性等を満足できれば採用できる。
【0077】
また、型ローラ16表面の凹凸形状も、図2又は図3の樹脂材料14表面の反転形状である必要はなく、樹脂材料14の収縮代等を考慮して、樹脂材料14の製品形状が図2又は図3の形状となるように、この形状よりオフセットした形状とすることもできる。
【0078】
以上に説明した本発明に係る樹脂シートの製造方法によれば、樹脂材料の幅方向における最厚肉部と最薄肉部との厚さの差が大きい、たとえば厚さの差が1mm以上(特に、厚さの差が2.5mm以上)の樹脂シートであっても、反りが非常に小さく、かつ、所望の断面形状を得ることができる。
【0079】
以上、本発明に係る樹脂シートの製造方法の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。
【0080】
たとえば、本実施形態において、樹脂温制御手段20としてエアノズル20A等が採用されているが、既述したように、この方式のものに限られる訳ではなく、樹脂材料14の温度を適正に制御できるものであれば、公知の各種手段が採用できる。
【0081】
更に、本実施形態において、ニップローラ18の表面が鏡面状であり、転写後の樹脂材料14の裏面が平坦面となっているが、ニップローラ18の表面を凹凸状に形成し、転写後の樹脂材料14の裏面をこの反転形状とすることもできる。
【実施例】
【0082】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0083】
図1に示される樹脂シートの製造ライン10を使用して実施例の樹脂シートを製造した。樹脂シートの断面形状は、図2に示される形状とした。Pは、2.6mm、P2は、 13.7mm、Δtは、4mm、θ1は、55度、θ2は、15度とした。樹脂シートの幅は、サイドカッターにより幅方向両端部分(捨て部分)を切除した状態で274mmとした。樹脂シートの長さ(長手方向)は、クロスカッターにより所定長さに切り揃えた状態で487mmとした。図4(A)は、所定幅及び所定長さに切り揃えた状態の樹脂シートを示す斜視図である。
【0084】
この所定幅及び所定長さに切り揃えた状態の樹脂シートの反り評価は、図4(B)に示されるように行った。すなわち、樹脂シートを平坦度が確保された平板(定盤)の上に載置し、両端部の浮き上がり量を位置センサで測定し、図示の式により算出した。
【0085】
なお、図4(B)に示されるような場合、樹脂シートは成形時に下方に凸状態であったので、図示の式による反りの値は負(マイナス)となっている。これに対して、樹脂シートが成形時に上方に凸状態であった場合は、樹脂シートを反転して図4(B)に示されるようにして測定する。この場合、反りの値は正(プラス)となる。
【0086】
実施例に共通する製造条件は、以下のようにした。
【0087】
型ローラ16の周速度:118.8 mm/分
樹脂材料14の組成:PMMA(三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリペットVH001)
ダイ12の吐出口における樹脂材料14の温度:247°C
温度センサ22として赤外線方式の温度センサを使用した。そして、剥離ローラ24より剥離される際の樹脂材料14の幅方向の320点の表面(ローラの反対面側)の温度を測定し、平均値を算出した。
【0088】
そして、制御手段は温度センサ22の測定結果を各温制御手段やダイ12等にフィードバックして、樹脂材料14や各ローラ等の温度制御に反映させた。
【0089】
剥離ローラ24より剥離される際の樹脂材料14の温度の平均値は、115〜135°Cであった。そしてそれぞれの温度条件の樹脂材料14の反りを上記の方法で測定した。以上の結果を図5のグラフにプロットした。この図5のグラフ(XYグラフ)は、横軸が剥離ローラ24より剥離される際の樹脂材料14の温度の平均値であり、縦軸が樹脂材料14の反りである。
【0090】
図5のグラフによれば、剥離ローラ24より剥離される際の樹脂材料14の温度が120°C未満であれば、反りが1.5mm未満であり、同温度が125°C未満であれば、反りが3.0mm未満となることが確認できた。
【0091】
なお、樹脂材料14であるポリメチルメタクリレート樹脂のガラス転移温度Tgは、 110°Cであるので、温度120°Cは、(Tg+10)°Cに該当し、温度125°Cは、(Tg+15)°Cに該当する。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明が適用される樹脂シートの製造ラインの例を示す構成図
【図2】成形後の樹脂材料の端面を直線状に切り取った状態の斜視図
【図3】成形後の樹脂材料の端面を直線状に切り取った状態の斜視図
【図4】実施例における樹脂材料の反りを説明する図
【図5】実施例において、樹脂材料の温度と反りとの関係を説明するグラフ
【図6】従来例の樹脂シートの製造ラインを示す構成図
【符号の説明】
【0093】
10…樹脂シートの製造ライン、12…ダイ、14…樹脂材料、16…型ローラ、18…ニップローラ、20…樹脂温制御手段、22…温度センサ(測温手段)、24…剥離ローラ、30…徐冷ゾーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイより押し出したシート状の樹脂材料を型ローラと該型ローラに対向配置されるニップローラとで挟圧し、
前記型ローラ表面の凹凸形状を前記樹脂材料に転写し、
転写後の前記樹脂材料を前記型ローラに対向配置される剥離ローラに巻き掛けることにより前記型ローラより剥離し、
前記樹脂材料を該樹脂材料のガラス転移温度Tgに対して(Tg−30)〜(Tg+40)°Cの温度に制御した状態で前記剥離ローラより剥離することを特徴とする樹脂シートの製造方法。
【請求項2】
前記型ローラ、ニップローラ及び剥離ローラのうちの1以上に、及び/又は、前記型ローラ、ニップローラ及び剥離ローラのうちの1以上の近傍に温度制御手段を設けることを特徴とする請求項1に記載の樹脂シートの製造方法。
【請求項3】
測温手段を設け、前記剥離ローラより剥離される際の前記樹脂材料の温度を測定し前記温度制御手段にフィードバックすることを特徴とする請求項2に記載の樹脂シートの製造方法。
【請求項4】
前記樹脂材料に転写される凹凸形状により、該樹脂材料の幅方向における最厚肉部と最薄肉部との厚さの差が1mm以上となることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂シートの製造方法。
【請求項5】
前記樹脂材料の最薄肉部の厚さを5mm以下とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−210160(P2007−210160A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−31341(P2006−31341)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】