説明

樹脂シート連続熱成形用型とその製造方法及び樹脂成形体の製造方法並びに樹脂成形体

【課題】安価に製造でき、樹脂シートの連続熱成形時にも過度の温度上昇を生じることなく、寸法精度に優れた樹脂成形体を製造でき、繊維片や木屑が発生しない熱成形用型の提供。
【解決手段】熱硬化性樹脂を含み、密度が0.85〜1.60g/cmの範囲内であり、熱伝導率が0.30W/mK以上であることを特徴とする樹脂シート連続熱成形用型。この樹脂シート連続熱成形用型を熱成形装置にセットし、加熱した樹脂シートを樹脂シート連続熱成形用型によって熱成形し、目的形状の樹脂成形体を得ることを特徴とする樹脂成形体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスチレン系樹脂シートなどの熱可塑性樹脂シートを熱成形して成形体を製造する際に用いる樹脂シート連続熱成形用型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリスチレン系樹脂シートなどの熱可塑性樹脂シートを熱成形して成形体を製造する際に用いる成形用型としては、金属製、例えばアルミニウム製の金型が用いられていた。
しかし、前記金属製の金型は、製造コストが高いため、食品容器などの樹脂成形体を多品種・少ロットで製造する場合、成形型の製造コストかかさみ、低コストで製品を提供し難いという問題がある。
【0003】
従来、アルミニウム等の金属製の金型に代えて、製造コストの安価な成形用型として、例えば、特許文献1,2に開示された技術が提案されている。
特許文献1には、真空成形機本体にセットされた型の上面に熱可塑性樹脂シートをセットし、この熱可塑性樹脂シートの上面から該シートをヒータによって加熱するとともに、前記型の下面側から真空吸引することにより、前記熱可塑性樹脂シートを型の上面に密着させ、型の形状に倣った成形体を成形する真空成形用型において、前記型を、木材繊維を接着剤とともに熱圧した通気性を有する中性繊維板によって形成したことを特徴とする真空成形用型が開示されている。
【0004】
特許文献2には、木質繊維材を用い、加熱した平面状の熱可塑性樹脂シートから凹凸を有する成形体を真空成形するのに使用する木質型の製造方法であって、型材本体部とその底に封止用接着剤で接合された底板部とを有する木質繊維材の前記型材本体部に、表面側からNC加工を行って、表側周縁に平面を維持した状態で、前記成形体の仕上げ寸法より0.2〜0.6mmの仕上げ代を残した窪み凹部の粗彫りを行う第1工程と、前記粗彫りの上に第1の熱硬化性樹脂を塗布して樹脂硬化させる第2工程と、前記樹脂硬化させた粗彫りの表面を更にNC加工して、前記型材本体部に前記窪み凹部の仕上げ加工彫りを行う第3工程と、前記仕上げ加工彫りの表面に第2の熱硬化性樹脂を塗布して少なくともその表面を硬化させる第4工程と、前記底板部の底部周囲に、底端面が平面となった周縁部を形成してその内側に真空室を形成すると共に、前記窪み凹部と前記真空室を貫通する直径が0.1〜1mmの複数の真空孔を形成する第5工程と、少なくとも前記窪み凹部に離型促進樹脂をコーティングする第6工程とを有することを特徴とする真空成形に使用する木質型の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−301019号公報
【特許文献2】特開2010−30160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2に開示された成形用型や木質型は、木材繊維を含む中性繊維板などによって形成されているので、金属製の金型と比べて熱伝導率が小さいために、余熱された樹脂シートを連続して熱成形する場合に、成形用型の温度が上がり、この成形用型で熱成形して得られる樹脂成形体の成形性が悪くなり、角部の丸まり、平面部のシワ、凹凸部の深さ・高さの低下などが発生し、樹脂成形体の寸法精度が悪くなってしまう問題があった。
また、前記加熱によって成形用型が変質すると、繊維片や木屑が発生して成形体に付着してしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みてなされ、安価に製造でき、樹脂シートの連続熱成形時にも過度の温度上昇を生じることなく、寸法精度に優れた樹脂成形体を製造でき、繊維片や木屑が発生しない熱成形用型の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明は、熱硬化性樹脂を含み、密度が0.85〜1.60g/cmの範囲内であり、熱伝導率が0.30W/mK以上であることを特徴とする樹脂シート連続熱成形用型を提供する。
【0009】
本発明の樹脂シート連続熱成形用型において、ショアDの硬さが70以上であることが好ましい。
【0010】
本発明の樹脂シート連続熱成形用型において、熱変形温度が80℃以上であることが好ましい。
【0011】
本発明の樹脂シート連続熱成形用型において、真空成形用の通気孔が穿設されている構成としてもよい。
【0012】
本発明の樹脂シート連続熱成形用型において、前記熱硬化性樹脂が、ポリウレタン系樹脂発泡体、非発泡ポリウレタン系樹脂、無機充填材含有ポリウレタン系樹脂からなる群から選択される1種であることが好ましい。
【0013】
また本発明は、熱硬化性樹脂を含み、密度が0.85〜1.60g/cmの範囲内であり、熱伝導率が0.30W/mK以上である型素材を用意し、該型素材にNC加工を施して所望の型形状を有する樹脂シート連続熱成形用型を得ることを特徴とする樹脂シート連続熱成形用型の製造方法を提供する。
【0014】
また本発明は、前記樹脂シート連続熱成形用型を熱成形装置にセットし、加熱した樹脂シートを樹脂シート連続熱成形用型によって熱成形し、目的形状の樹脂成形体を得ることを特徴とする樹脂成形体の製造方法を提供する。
【0015】
本発明の樹脂成形体の製造方法において、前記熱成形を真空成形法によって行うことが好ましい。
また本発明は前記樹脂成形体の製造方法によって得られた樹脂成形体を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の樹脂シート連続熱成形用型は、熱硬化性樹脂を含み、密度が0.85〜1.60g/cmの範囲内であり、熱伝導率が0.30W/mK以上であるものなので、金属製の成形型に比べて安価に製造できる。また、従来の木材繊維を含む成形用型と比べて、樹脂シートの連続熱成形時にも過度の温度上昇を生じることなく、寸法精度に優れた樹脂成形体を製造でき、繊維片や木屑が発生することがない。
【0017】
本発明の樹脂シート連続熱成形用型の製造方法は、熱硬化性樹脂を含み、密度が0.85〜1.60g/cmの範囲内であり、熱伝導率が0.30W/mK以上である型素材を用意し、該型素材にNC加工を施して所望の型形状を有する樹脂シート連続熱成形用型を得る構成としたので、樹脂シートの連続熱成形時にも過度の温度上昇を生じることなく、寸法精度に優れた樹脂成形体を製造でき、繊維片や木屑が発生しない熱成形用型を安価に製造することができる。
【0018】
本発明の樹脂成形体の製造方法は、本発明に係る前記樹脂シート連続熱成形用型を熱成形装置にセットし、加熱した樹脂シートを樹脂シート連続熱成形用型によって熱成形し、目的形状の樹脂成形体を得る構成としたので、寸法精度に優れ、繊維片や木屑が付着していない高品質の樹脂成形体を安価で製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の樹脂シート連続熱成形用型を用いた樹脂シート熱成形装置の一例を示す構成図である。
【図2】前記樹脂シート熱成形装置の要部拡大図である。
【図3】前記樹脂シート熱成形装置の要部斜視図である。
【図4】図3中のA−A部断面図である。
【図5】樹脂成形体の一例を示す斜視図である。
【図6】図5中のB−B部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1〜図4は、本発明の樹脂シート連続熱成形用型を用いた樹脂シート熱成形装置の一例を示す図である。
この樹脂シート熱成形装置は、雌型1と雄型2とを備え、予熱された樹脂シート4aを熱成形する成形ゾーン6と、該成形ゾーン6の上流側に設けられ、ロール3から引き出し供給される樹脂シート4をヒータで予熱する予熱ゾーン5とを備えている。
【0021】
本例示において、雌型1には、多数個の容器を熱成形するための多数の雌型凹部1aが設けられ、また雄型2には、前記雌型凹部1aに対応する位置に多数の雄型凸部が設けられている。
なお、本例では、樹脂シート4を熱成形して多数個の容器を製造する場合を例示しており、雌型1と雄型2とで予熱された樹脂シート4aを挟んだ状態で熱成形する構成としているが、本発明は本例示にのみ限定されるものではなく、例えば一つの成形型により真空成形を行って樹脂成形体を製造することもできる。また、製造する樹脂成形体の形状は特に限定されず、トレー状、丼状、カップ状などの種々の形状の樹脂成形体を製造でき、その形状を熱成形可能な樹脂シート連続熱成形用型を用いることができる。
【0022】
(樹脂シート連続熱成形用型)
前記成形ゾーン6に設けられた雌型1と雄型2とは、熱硬化性樹脂を含み、密度が0.85〜1.60g/cmの範囲内であり、熱伝導率が0.30W/mK以上である本発明の樹脂シート連続熱成形用型からなっている。
【0023】
前記雌型1と雄型2の材料としては、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂などの各種の熱硬化性樹脂の中から選択でき、例えば、ポリウレタン系樹脂発泡体、非発泡ポリウレタン系樹脂、無機充填材含有ポリウレタン系樹脂からなる群から選択される1種であることが好ましい。前記無機充填材含有ポリウレタン系樹脂に含有させる無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、二酸化チタン、酸化鉄、リン酸カルシウム、ホウ酸塩、ガラス繊維、炭素繊維、シラスバルーンなどが挙げられる。
【0024】
本発明の樹脂シート連続熱成形用型は、熱硬化性樹脂を含み、密度が0.85〜1.60g/cmの範囲内である。この密度は、熱硬化性樹脂を発泡させることや無機充填材を添加することによって適宜調整が可能である。樹脂シート連続熱成形用型の密度が0.85〜1.60g/cmの範囲内であれば、樹脂シート連続熱成形用型の熱伝導率が大きくなり、予熱された樹脂シート4aが接触する型表面部分の熱が型全体に拡散し易くなり、型表面部分の局部加熱を防ぐことができる。また、成形時の型締め工程などで生じる衝撃によっても、変形や割れや欠けを防止できる強度が得られる。この密度が0.85g/cmの未満であると、樹脂シート連続熱成形用型の熱伝導率が小さくなって予熱された樹脂シート4aが接触する型表面部分が局部加熱され、熱成形して得られる樹脂成形体の寸法精度が悪くなって連続熱成形する際に良品を製造し難くなる。また、変形や割れや欠けを防止できる強度が得られない。この密度が1.60g/cmを超える場合には、熱硬化性樹脂に添加する無機充填材の量が多くなって、樹脂シート連続熱成形用型の製造時に切削加工がし難くなり、型の製造コストが高くなってしまうおそれがある。
【0025】
本発明の樹脂シート連続熱成形用型は、熱伝導率が0.30W/mK以上である材料からなっている。熱伝導率が0.30W/mK以上あれば、予熱された樹脂シート4aが接触する型表面部分の熱が型全体に拡散し易くなり、型表面部分の局部加熱を防ぐことができ、熱成形して得られる樹脂成形体の寸法精度を良好に保つことができ、連続熱成形する場合でも良品を製造することができる。熱伝導率が0.30W/mK未満であると、予熱された樹脂シート4aが接触する型表面部分が局部加熱され、熱成形して得られる樹脂成形体の寸法精度が悪くなって連続熱成形する際に良品を製造し難くなる。
【0026】
本発明の樹脂シート連続熱成形用型は、図2及び図3に示す雌型1のように、冷却水を循環させる水冷、或いはエアー吹き付け等による空冷によって冷却して使用することが好ましい。
図2及び図3に例示する雌型1は、冷却水を循環させて水冷する水冷ベース10と、冷却用エアーを雌型1に吹き付けて空冷するエアー配管12とを備えて構成されている。
【0027】
前記水冷ベース10は、雌型1に接して設けられ、水冷用の冷却水を入口10aから導入し、出口10bから排出することで雌型1を水冷する水冷部と、該水冷部に冷却水を循環供給するための配管と、該配管の途中に設けられたポンプ11とからなっている。
【0028】
前記水冷ベース10及びエアー配管12によって雌型1を冷却することで、雌型1の温度上昇を防ぐことができ、熱成形して得られる樹脂成形体の寸法精度を良好に保つことができ、連続熱成形する場合でも良品を製造することができる。
【0029】
本例示による雌型1は、図4に示すように、雌型凹部1aに開口し雌型裏側まで貫通する真空引き用の複数の穴13が穿設されている。
この真空引き用の穴13の大きさや数、配置位置などは特に限定されず、熱成形して得られる樹脂成形体の形状や大きさなどに応じて適宜決めればよい。
【0030】
本発明の樹脂シート連続熱成形用型は、ショアD硬さ(ASTM D2240)が70以上であることが好ましく、70〜100の範囲がより好ましい。ショアD硬さが70未満であると成形時の型締め工程などで生じる衝撃により変形が発生するおそれがある。
本発明の樹脂シート連続熱成形用型は、熱変形温度(JIS K6911)が80℃以上であることが好ましく、80〜160℃の範囲内であることがより好ましい。熱変形温度が80℃未満であると、樹脂シートを連続して熱成形する際に、型が変形してしまうおそれがある。
【0031】
(樹脂シート連続熱成形用型の製造方法)
本発明の樹脂シート連続熱成形用型の製造方法は、熱硬化性樹脂を含み、密度が0.85〜1.60g/cmの範囲内であり、熱伝導率が0.30W/mK以上である型素材を用意し、該型素材にNC加工を施して所望の型形状を有する樹脂シート連続熱成形用型を得ることを特徴としている。
【0032】
前記型素材としては、前述した通りポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂などの各種の熱硬化性樹脂の中から選択でき、例えば、ポリウレタン系樹脂発泡体、非発泡ポリウレタン系樹脂、無機充填材含有ポリウレタン系樹脂からなる群から選択される1種が好ましく、また型素材の形状は特に限定されないが、厚板状やボード状などの型素材が好適である。なお、このような型素材は、各種の市販品の中から適宜選択して使用することができ、そのような市販品としては、例えば、三洋化成工業社製のウレタン樹脂含有ブロック材であるサンモジュールNV(商品名、以下同じ)、サンモジュールTH、サンモジュールNZなどが挙げられる。
【0033】
前記型素材は、木材、合成樹脂、金属などの切削加工の分野で周知のNC工作機を用い、所望の成形用型の形状に切削加工するNC加工を施し、本発明の樹脂シート連続熱成形用型を作製する。
NC加工によって型素材から樹脂シート連続熱成形用型を作製すれば、安価に高品質の樹脂シート連続熱成形用型を作製することができる。
また、NC加工では、プログラミングによって型寸法や凹凸形状を簡単に変更可能であるので、樹脂成形体を多品種・少ロットで製造する場合であっても、短期間で安価に多種類の型を準備することができるので利便性に優れている。
【0034】
NC加工によって作製した樹脂シート連続熱成形用型は、図1に示す樹脂シート熱成形装置に雌型1,雄型2として取り付けて使用することができる。
なお、得られる樹脂シート連続熱成形用型の表面には、シリコーン樹脂やフッ素樹脂などの離型剤をコーティングしておいてもよい。
【0035】
(樹脂成形体の製造方法)
本発明の樹脂成形体の製造方法は、前記樹脂シート連続熱成形用型を熱成形装置にセットし、加熱した樹脂シートを樹脂シート連続熱成形用型によって熱成形し、目的形状の樹脂成形体を得ることを特徴とする。
【0036】
前記樹脂シートとしては、熱可塑性樹脂の発泡シートや非発泡シートなどが挙げられ、例えば、ポリスチレン系樹脂の発泡又は非発泡シート、ポリエチレン系樹脂の発泡又は非発泡シート、ポリプロピレン系樹脂の発泡又は非発泡シート、ポリエチレンテレフタレート系樹脂の発泡シート又は非発泡シート、ポリスチレン系樹脂発泡シートに別種の樹脂フィルムを積層した発泡積層シートなどが挙げられ、その中でも軽量性、機械強度、に優れ、低コストで提供できるなどの点からポリスチレン系樹脂の発泡シートが好ましい。
【0037】
熱可塑性樹脂の発泡シートを用いる場合、その厚みや発泡倍数や目付量は特に限定されないが、通常は厚みが0.5〜5.0mmの範囲が好ましく、0.7〜3.0mmの範囲がより好ましい、発泡倍数は1.3〜20倍の範囲が好ましく、目付量は80〜400g/mの範囲の熱可塑性樹脂発泡シートが好ましい。
また非発泡シートを用いる場合には、厚みが0.3〜1.0mm程度のシートが好ましい。
【0038】
前記樹脂シート4は、ロール3に巻回した状態で図1に示す樹脂シート熱成形装置に供給される。ロール3から引き出された樹脂シート4は、予熱ゾーン5を通過する間に軟化する程度まで予熱され、成形ゾーン6に移送される。
【0039】
予熱された樹脂シート4aは、成形ゾーン6に設置された雌型1と雄型2の間に挿入され、雄型2を雌型1に向けて降下移動させて予熱された樹脂シート4aを熱成形すると共に、雌型1に設けられた真空引き用の穴13…から真空引きし、予熱された樹脂シート4aを雌型1に吸引して真空成形を行う。
【0040】
その後、雄型2を上昇させて型開きし、成形シート4bを型から取り出し、図示していない裁断ゾーンにて、成形シート4bを個別の樹脂成形体が得られるように裁断し、所望の形状の樹脂成形体を製造する。
得られた樹脂成形体は、即時若しくは一定期間保管して熟成した後、必要に応じて外面側に印刷を施して製品とする。
【0041】
図5及び図6は、本例での樹脂成形体の製造方法によって製造された樹脂成形体の一例を示す図である。
本例の樹脂成形体20は、四角形をなす底面21と、該底面21の周縁から立設された側壁22と、該側壁22の先端部が外側に向けて張出したフランジ23とからなっている。側壁22は底面21から斜め上方に向け拡径する方向に設けられ、底面21と側壁22とが成す角度θ2は鈍角となっている。
【0042】
本例での樹脂成形体の製造方法では、雌型1と雄型2として、前述した本発明に係る樹脂シート連続熱成形用型を熱成形装置にセットし、予熱した樹脂シート4aを前記雌型1と雄型2によって熱成形し、目的形状の樹脂成形体20を得る構成としたので、寸法精度に優れ、繊維片や木屑が付着していない高品質の樹脂成形体20を安価で製造することができる。
【実施例】
【0043】
[実施例1]
汎用トレー用の発泡ポリスチレンシート(積水化成品工業社製、品名:H−260LB−250、原反一次厚み:1.9mm、発泡倍率:14倍)を、予熱ゾーンにて加熱し、厚み:4.1mmに二次発泡させる予熱工程を行った。その後、成形ゾーンにて、二次発泡した発泡ポリスチレンシートを、雄型、雌型間に型締めし、雌型に設けた真空引きするための穴から真空引きして、型締め時間:4秒、真空度:−600mmHgで真空成形を行った。
この時用いた雄型、雌型は、合成木材(三洋化成工業社製、ウレタン樹脂含有ブロック材、品名:サンモジュールNV、密度:1.13g/cm、熱伝導率:0.43W/mK、硬さショアD:74、熱変形温度:93℃、外寸:850mm(長辺)×590mm(短辺)×30mm(高さ))をNC工作機を用いて切削加工し、寸法:192mm(長辺、図5中のX)×118mm(短辺、図5中のY)mm×12mm(高さ、図5中のZ)の発泡トレーを25個成形するための凸部(雄型)と凹部(雌型)を形成したものを用いた。雌型に形成した凹部の底面と側壁面との角度θ1は128.0°であった。
また、型締めから型開きまでの4秒間(型締め時間)の間、雌型の両側面に取り付けた二本のエアー配管より、エアー量36.7m/hrを、雌型に吹き付けて冷却(空冷)した。また、雌型の下面は20℃の水が循環した水冷ベースに常に接触しており冷却(水冷)されている。型を冷却する理由は、冷却しないと、予熱された二次発泡ポリスチレンシートの熱で型が高温になりすぎてしまい、成形性が低下するからである。
その後、型開きして得られた発泡成形シートを裁断し、寸法:192mm(長辺、図5中のX)×118mm(短辺、図5中のY)×12mm(高さ、図5中のZ)、厚み:3.0mmの発泡トレー25個を得た。
成形ゾーンでの成形時間6秒を1ショットとし、それを連続して3000ショット(5時間)行った。そして、200ショット目(20分)、600ショット目(1時間)、3000ショット目(5時間)の発泡トレーの底面と長側面との角度θ2を測定した。
発泡トレーの角度θ2は、そのショットから得られた25個の発泡トレーの底面と長側面との角度を測定し、それらの平均値とした。
そして、雌型に形成した凹部の底面と側壁との角度θ1(128.0°)と発泡トレーの角度θ2との差(Δθ)を、Δθ=θ2−θ1 で求め、成形性を評価した。
Δθが0.5°未満を成形性が非常に良好(○)。
Δθが0.5°以上を成形性が不良(×)。
発泡トレーの角度θ2は、200ショット目(20分)で128.0°(Δθ=0.0°)、600ショット目(1時間)で128.0°(Δθ=0.0°)、3000ショット目(5時間)で128.0°(Δθ=0.0°)であった。得られた結果を表1に示す。
【0044】
[実施例2]
雄型、雌型に用いた合成木材を、三洋化成工業社製、ウレタン樹脂含有ブロック材、品名:サンモジュールTH、密度:1.45g/cm、熱伝導率:0.85W/mK、硬さショアD:85、熱変形温度:84℃とした以外は、実施例1と同様に発泡トレーを得て、成形性を評価した。
発泡トレーの角度θ2は、200ショット目(20分)で128.0°(Δθ=0.0°)、600ショット目(1時間)で128.0°(Δθ=0.0°)、3,000ショット目(5時間)で128.0°(Δθ=0.0°)であった。得られた結果を表1に示す。
【0045】
[比較例1]
雄型、雌型に用いた合成木材を、三洋化成工業社製、ウレタン樹脂含有ブロック材、品名:サンモジュールTW−E、密度:0.75g/cm、熱伝導率:0.26W/mK、硬さショアD:64、熱変形温度:82℃とした以外は、実施例1と同様に発泡トレーを得て、成形性を評価した。
発泡トレーの角度θ2は、200ショット目(20分)で128.7°(Δθ=0.7°)であった。200ショット目で既に成形性が不良であったため、その後のショットは中止した。得られた結果を表1に示す。
【0046】
[比較例2]
雄型、雌型に用いた合成木材を、三洋化成工業社製、ウレタン樹脂含有ブロック材、品名:サンモジュールNZ、密度:0.9g/cm、熱伝導率:0.23W/mK、硬さショアD:80、熱変形温度:140℃とした以外は、実施例1と同様に発泡トレーを得て、成形性を評価した。
発泡トレーの角度θ2は、200ショット目(20分)で128.5°(Δθ=0.5°)であった。200ショット目で既に成形性が不良であったため、その後のショットは中止した。得られた結果を表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
本発明に係る実施例1、2で用いた雄型、雌型の合成木材は、密度0.85〜1.60g/cm、熱伝導率0.30〜1.00W/mKの範囲内であり、強度が高くかつ冷却効率が良いので、3000ショット(5時間)の連続成形をおこなっても、得られた発泡トレーの成形性が非常に良好であり、連続成形に非常に適したものであった。
一方、比較例1で用いた雄型、雌型の合成木材は、密度0.75g/cm、熱伝導率0.26W/mKであり、強度が低くかつ冷却効率が悪いので、200ショット(20分)の成形を行っただけで発泡トレーの成形性が不良であり、連続成形には適さないものであった。
比較例2で用いた雄型、雌型の合成木材は、密度0.90g/cm、熱伝導率0.23W/mKであり、強度はあるが冷却効率が悪いので、200ショット(20分)の成形を行っただけで発泡トレーの成形性が不良であり、連続成形には適さないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、ポリスチレン系樹脂シートなどの熱可塑性樹脂シートを熱成形して成形体を製造する際に用いる樹脂シート連続熱成形用型に関する。本発明によれば、安価に製造でき、樹脂シートの連続熱成形時にも過度の温度上昇を生じることなく、寸法精度に優れた樹脂成形体を製造でき、繊維片や木屑が発生しない熱成形用型を提供することができる。
【符号の説明】
【0050】
1…雌型(樹脂シート連続熱成形用型)、1a…雌型凹部、2…雄型(樹脂シート連続熱成形用型)、3…ロール、4…樹脂シート、4a…予熱した樹脂シート、4b…成形シート、5…予熱ゾーン、6…成形ゾーン、10…水冷ベース、10a…入口、10b…出口、11…ポンプ、12…エアー配管、13…真空引き用の穴、20…発泡トレー(樹脂成形体)、21…底面、22…側壁、23…フランジ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂を含み、密度が0.85〜1.60g/cmの範囲内であり、熱伝導率が0.30W/mK以上であることを特徴とする樹脂シート連続熱成形用型。
【請求項2】
前記樹脂シート連続熱成形用型は、ショアDの硬さが70以上であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂シート連続熱成形用型。
【請求項3】
前記樹脂シート連続熱成形用型は、熱変形温度が80℃以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂シート連続熱成形用型。
【請求項4】
真空成形用の通気孔が穿設されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂シート連続熱成形用型。
【請求項5】
前記熱硬化性樹脂が、ポリウレタン系樹脂発泡体、非発泡ポリウレタン系樹脂、無機充填材含有ポリウレタン系樹脂からなる群から選択される1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂シート連続熱成形用型。
【請求項6】
熱硬化性樹脂を含み、密度が0.85〜1.60g/cmの範囲内であり、熱伝導率が0.30W/mK以上である型素材を用意し、該型素材にNC加工を施して所望の型形状を有する樹脂シート連続熱成形用型を得ることを特徴とする樹脂シート連続熱成形用型の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂シート連続熱成形用型を熱成形装置にセットし、加熱した樹脂シートを樹脂シート連続熱成形用型によって熱成形し、目的形状の樹脂成形体を得ることを特徴とする樹脂成形体の製造方法。
【請求項8】
前記熱成形を真空成形法によって行うことを特徴とする請求項7に記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の樹脂成形体の製造方法によって得られた樹脂成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−196876(P2012−196876A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62430(P2011−62430)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】