説明

樹脂又は溶剤系中のナノアルミナの分散液

単純な撹拌で1,2−ジオールを含有する有機溶剤混合物中でのゾル由来のナノアルミナの分散液。チキソトロピー溶液は、エチレングリコール中の20%アルミナで得られ、その際、低い粘度(<100cps)の溶液は、(1:1、N−メチルピロリドン−エチレングリコール)溶液中での20%アルミナに関して可能である。アルミナ粒子は、最小の撹拌で解凝集される。得られた溶液又は樹脂溶液は、沈澱及び再凝集に対して安定である。該ナノアルミナ分散溶液は、イミド塗料と混合され、ワイヤ被覆を提供し、摩耗、COF、及び耐コロナ性を改良させたワイヤを提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノアルミナの分散液に、及びよりいっそう詳述すれば、被覆、例えばワイヤ被覆のための改良されたナノアルミナ分散液に関する。
【0002】
ナノアルミナ分散液は、多くの被覆の適用において使用される。電気絶縁の適用において、チキソトロピーであるナノアルミナ分散液は、成形されたワイヤ上のむらのない縁端メッキを提供することを見出している。ワイヤのためのポリアミドイミドのオーバーコートにおける低い装填レベルが、摩擦係数を低くし、かつワイヤ被覆の耐摩耗性を改良することも見出されている。さらに、ポリエステル、ポリエステルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド又はポリウレタン塗料における高い装填レベル(樹脂(固体)に対して〜20%)が、インバーターモーターにおいて非常に許容できる耐コロナ性を得ることが見出されている。
【0003】
アルミナは、典型的に粉体で入手できる。しかしながら、樹脂系又は溶剤中のその粉末の分散は、問題がある。これは、該アルミナが、個々の粒子に分解するための極端な真の力を要求する不溶性の凝集物を形成するためである。これを達成する典型的な方法は、例えば、超音波、ボールミル粉砕、サンドミル粉砕、及び高圧の均一化を含む。しかしながら、前記の及び同様の技術での問題は、得られた分散液が、アルミナ粒子が樹脂又は溶剤系中で沈澱又は再凝集する結果としばしば相反することである。これは、最終使用者のための被覆の不均一性及び品質の問題を導く。
【0004】
一般に塗料産業において使用される分散剤を、それらの分散及び沈澱の問題を和らげるために使用することができる。しかし、ナノ粒子を必要とする高い装填レベルは、それらの広い表面積のために、分散剤の有用性に影響を及ぼす。また、使用される分散剤は、しばしば、最終の硬化された被覆に要求される物理的特性に不利益であることも見出される。該分散剤は、低品質の熱安定性及び被覆の欠陥を有する。その結果、該分散剤の使用において被った高い費用を、容易に正当化することができない。
【0005】
充填剤、例えばアルミナは、電気絶縁被覆産業において普通であり、かつマグネット線の改良されたコロナ耐久度のための充填剤の使用に関する多くの米国の特許がある。該特許は、例えば米国特許6,649,661号及び6,476,083号を含む。しかしながら、充填剤の使用は、どちらの問題も解決しない。
【0006】
発明の要約
本発明は、前記に記載された問題に対する解決法に関し、かつ安定なアルミナ分散液を製造するための最小の撹拌のみを要求する特有の分散法を有する。本発明の方法を使用して、ゾル由来のナノアルミナは、樹脂又は溶剤系中で容易に分散させることができる。該分散液は、経時的に沈澱することに対して安定であり、かつ良好な熱安定性を有し、被覆の欠点を有さない、最終の硬化された被覆の物理的特性の製造を含む、より高い均一性及び稠性を最終利用者に提供する。より小さな粒子サイズも、より少ない欠陥を有するより可撓性のある被覆を提供する。
【0007】
最初に、本発明に従った安定なナノアルミナ分散液の製造は、1,2−ジオールを含む分散溶液中でナノアルミナを分散することを含む。該1,2−ジオールは、エチレングリコール及び/又は1,2−プロパンジオールでありうる。ナノアルミナ:分散溶液の比は、約1:4〜約1:10である。
【0008】
前記ナノアルミナを、前記分散溶液中に、例えば選択された時間混合することによって分散することができる。もちろん、該ナノアルミナを、他の同様の手法によって該溶液中に分散することができる。
【0009】
本発明の一つの側面において、該分散溶液は、フェノール性溶剤又はアミドを基礎とする溶剤を含むことができる。フェノール性溶剤は、フェノール及び/又はクレゾール酸でありうる。アミド溶剤は、N−メチルピロリドン又はジメチルホルムアミドでありうる。本発明の側面によると、該分散溶液は、(a)エチレングリコールとフェノール性溶剤との溶液、又は(b)エチレングリコールとアミドを基礎とする溶剤との溶液でありうる。エチレングリコールが1,2−ジオールのために使用される場合に、エチレングリコールを、約1:1〜約3:1の比でフェノール性溶剤又はアミドを基礎とする溶剤と混合してよい。
【0010】
他の側面によると、安定なナノアルミナ分散溶液を、樹脂塗料と混合することができる。そしてこの混合物は、ワイヤ上で被覆され、かつ硬化されて、ワイヤに対して高められた物理的特性、例えば耐引掻性及び摩擦係数を提供することができる。該樹脂塗料は、ポリアミドイミド塗料、ポリエステルイミド塗料、ポリエステル塗料、ポリウレタン塗料、ポリイミド塗料、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。ナノアルミナ分散溶液は、樹脂塗料と、約0.5:100〜約20:100の比で混合される。
【0011】
発明の詳細な説明
次の詳細な説明は、一例として及び制限されずに本発明を説明する。本明細書は、明らかに当業者が本発明を製造及び使用することができてよく、かつ本発明を実施する最良の形態であると現在信じられているものを含む、いくつかの実施態様、適応、変更、代替及び本発明の使用を記載している。種々の変更が、本発明の趣旨から逸脱することなく構成において製造されることができるように、本明細書中に含まれる全ての事柄は、説明として解釈されてよく、かつ制限を意味しないことを意図する。
【0012】
本発明は、有機溶剤又は樹脂系中でアルミナを分散する方法に関する。無機粒子、例えばアルミナは、粉砕又は別の方法で分散させた場合に、急速に沈澱又は再凝集する傾向がある。少なくとも2つのタイプのアルミナが市販されており、ゾル誘導アルミナ(ゾル−ゲル法を使用して形成される)及びヒュームドアルミナがある。ヒュームドアルミナは、伝統的に火炎中での三塩化アルミニウムの酸化によって製造される。得られた固体は、小さな粒子の大きな凝集物を含有し、その際、特有の粒子サイズは、ほぼ50nmである。典型的な溶剤又は樹脂中のヒュームドアルミナの分散液は、分散の安定性を得るために、ボールミル(又は同様のタイプの装置)を必要とする。しかしながら、その時でさえ、その安定性は制限され、かつ粒子は、長時間、再び沈澱する傾向がある。
【0013】
一方で、ゾル誘導アルミナは、水中で製造され、かつ沈澱しない均一な分散液を得る。それは、酸又は塩基どちらかの条件下で、アルミニウムアルコキシドの加水分解によって製造される。しかし、従来の塗料用樹脂又は溶剤中の固体のアルミナ粉末を分散する試みは、樹脂又は溶剤を放置したままで直ちに沈澱し始める傾向がある粒子の低品質の分散をもたらす。
【0014】
アルミナの安定な分散液は、ヒュームドアルミナ及びゾル誘導アルミナの双方を使用して得られ、その場合に、それらは、1,2−ジオール中で約1:4〜約1:10のアルミナ:分散溶液の比で分散されている。好適な1,2−ジオールは、エチレングリコール及び1,2−プロパンジオールを含む。試験されない場合に、他の1,2−ジオールも、作業に求められる。少なくとも5のヘグマン粒ゲージ(Hegman Grind gage)の安定な分散液は、コールズブレード(cowles blade)又はプロペラ撹拌機のどちらかを使用して達成された。該分散液は、均一であり、かつ放置した場合に沈澱しなかった。全質量に対してアルミナ約10〜30%の分散液を検査して、固体含有率がより高くなれば、レオロジーにおいてよりチキソトロピーである混合物になることが判明した。
【0015】
本発明の方法の第二の特有の特徴は、得られたレオロジー特性に対する溶剤混合物の効果である。フェノール性溶剤、例えばフェノール又はクレゾールは、1,2−グリコール、例えばエチレングリコールとの組合せで使用される場合に、より高いチキソトロピーの分散液を製造した。フェノール:エチレングリコールの溶剤混合物を、それぞれ、それら2つの成分の0:100〜75:25の範囲の混合物に関して検査した。この溶剤の組み合わせは、混合した場合に半透明色であるチキソトロピーの分散液を生じ、5以上のヘグマン粒ゲージ測定値をもたらし、かつ混合物が放置された場合に、沈澱の最小の徴候を示した。フェノール中のアルミナを分散する試みは、単独で、放置して急速に沈澱する低品質の分散液を生じた。
【0016】
アミドを基礎とする溶剤、例えばN−メチルピロリドン(NMP)又はジメチルホルムアミド(DMF)は、1,2−ジオールとの組合せで使用された場合に、種々の結果をもたらした。NMP:エチレングリコールの溶剤混合物を、それぞれそれら2つの成分の、0:100〜75:25の範囲の混合物で試験した。この溶剤の組合せは、混合した場合に半透明色である低い粘度の分散液を生じ、5以上のヘグマン粒ゲージ測定値をもたらし、かつ沈澱の最小の徴候を示した。NMP又はDMF中のアルミナを分散する試みは、単独で、放置して急速に沈澱する低品質の分散液を生じた。
【0017】
他のジオール溶剤も、NMP又はフェノール自体、及びそれらの組合せの双方を試験した。1,3−ジオール、例えば1,3−プロパンジオールは、放置して急速に沈澱する低品質の分散液を生じた。他の溶剤、例えば芳香族炭化水素、二塩基性エステル及びグリコールエステルも、混合物が放置された場合に、低品質の分散液、及び急速な沈澱を生じた。
【0018】
良好な分散液を付与した1,2−ジオール/溶剤混合物は、樹脂系中に、最小の撹拌で容易に取り込まれた。例えば、プロペラ撹拌機の使用は、典型的なワイヤエナメル塗料において使用される場合に、均一な分散液を得ることが十分に見出された。検査されたワイヤエナメルは、THEICポリエステル、THEICポリエステルイミド、ポリアミドイミド及びポリウレタン塗料を有した。直接、アミド溶剤又はフェノール性溶剤のどちらか、及び1,2−ジオールを含んだワイヤエナメル塗料中にアルミナを分散することができることも期待される。
【0019】
前記に記載されたようなアルミナ分散液を含有するワイヤ被覆を、アルミナの取り込みの従来の方法、例えば粉砕を使用するワイヤ被覆と比較した。ヒュームドアルミナの粉砕された試料は、3.49ミクロンのD[v、0.50]を有した。ゾル誘導アルミナのNMP/エチレングリコールアルミナ分散液は、0.36ミクロンのD[v、0.50]を有した。より小さな粒子サイズは、ワイヤ上で優れた被覆能力を提供した。より小さな粒子はまた、ワイヤ製造業者のためのより少ない維持及び機械停止時間を生じる、より少ないだれをもたらすべきであった。
【0020】
より小さな粒子サイズはまた、最終産物中の優れた分散安定性ももたらす。ポリアミドイミド樹脂溶液中のヒュームドアルミナの粉砕された試料は、放置して直ちに沈澱する傾向があり、不均一な試料を提供する。反対に、ポリアミドイミド樹脂溶液中のゾル誘導アルミナのNMP/エチレングリコールアルミナ分散液は、1年以上乱されずに放置して沈澱しなかった。
【0021】
アミド溶剤又はフェノール性溶剤、及びエチレングリコール中に分散されたアルミナを含むエナメルを、銅線上で被覆及び硬化した。ワイヤの物理的特性を、ワイヤエナメル中に粉砕されたヒュームドアルミナを含有する対照試料に対して、試験し、かつ比較した。より高い装填レベルで、それぞれの試料は、パルス耐久試験をインバーターモーターに関して行った間に、許容できる耐コロナ性を有した。低い装填レベルで、耐摩耗性及び摩擦係数(COF)における改良を、アルミナを含まない対照試料と比較して観察した。
【0022】
実施例
実施例1:ゾル由来のナノアルミナ20gを、エチレングリコール80gに添加した。その試料を、コールズブレードを装備したIndco製のModel AS2AM、3/4hpの直接駆動空気撹拌機を使用して混合した。該試料を、15分間混合した。得られた溶液は、天然でチキソトロピーであった。その試料は、8ヘグマン単位より大きい磨砕度を呈した。試料の磨砕度を、試験法ASTM D 1210−79によるヘグマン粒ゲージを使用して調査した。その溶液は、外観上は透光性の白色であり、かつ放置してアルミナ沈澱の徴候がなかった。
【0023】
実施例2:ゾル由来のナノアルミナ20gを、1:1のエチレングリコールとN−メチルピロリドンとの混合物80gに添加した。その試料を、コールズブレードを装備したIndco製のModel AS2AM、3/4hpの直接駆動空気撹拌機を使用して混合した。該試料を、15分間混合した。得られた溶液は、天然でチキソトロピーであった。その試料は、8ヘグマン単位より大きい磨砕度を呈した。試料の磨砕度を、試験法ASTM D 1210−79によるヘグマン粒ゲージを使用して調査した。その溶液は、外観上は透光性の白色であり、かつ放置してアルミナ沈澱の徴候がなかった。
【0024】
実施例3:ゾル由来のナノアルミナ20gを、1:1のエチレングリコールとジメチルホルムアミドとの混合物80gに添加した。その試料を、コールズブレードを装備したIndco製のModel AS2AM、3/4hpの直接駆動空気撹拌機を使用して混合した。該試料を、15分間混合した。得られた溶液は、天然でチキソトロピーであった。その試料は、8ヘグマン単位より大きい磨砕度を呈した。試料の磨砕度を、試験法ASTM D 1210−79によるヘグマン粒ゲージを使用して調査した。その溶液は、外観上は透光性の白色であり、かつ放置してアルミナ沈澱の徴候がなかった。
【0025】
実施例4:ゾル由来のナノアルミナ20gを、1:1のエチレングリコールとフェノールとの混合物80gに添加した。その試料を、コールズブレードを装備したIndco製のModel AS2AM、3/4hpの直接駆動空気撹拌機を使用して混合した。該試料を、15分間混合した。得られた溶液は、天然でチキソトロピーであった。その試料は、8ヘグマン単位より大きい磨砕度を呈した。試料の磨砕度を、試験法ASTM D 1210−79によるヘグマン粒ゲージを使用して調査した。その溶液は、外観上は透光性の白色であり、かつ放置してアルミナ沈澱の徴候がなかった。
【0026】
実施例5:ゾル由来のナノアルミナ20gを、1:1のプロピレングリコールとN−メチルピロリドンとの混合物80gに添加した。その試料を、コールズブレードを装備したIndco製のModel AS2AM、3/4hpの直接駆動空気撹拌機を使用して混合した。該試料を、15分間混合した。得られた溶液は、天然でチキソトロピーであった。その試料は、約6ヘグマン単位である磨砕度を呈した。試料の磨砕度を、試験法ASTM D 1210−79によるヘグマン粒ゲージを使用して調査した。その溶液は、外観上は透光性の白色であり、かつ放置してアルミナ沈澱の徴候がなかった。
【0027】
実施例6:ゾル由来のナノアルミナ20gを、1:3のエチレングリコールとN−メチルピロリドンとの混合物80gに添加した。その試料を、コールズブレードを装備したIndco製のModel AS2AM、3/4hpの直接駆動空気撹拌機を使用して混合した。該試料を、15分間混合した。得られた溶液は、天然でチキソトロピーであった。その試料は、8ヘグマン単位より大きい磨砕度を呈した。試料の磨砕度を、試験法ASTM D 1210−79によるヘグマン粒ゲージを使用して調査した。その溶液は、外観上は透光性の白色であり、かつ放置してアルミナ沈澱の徴候がなかった。
【0028】
実施例7:ゾル由来のナノアルミナ20gを、1:3のエチレングリコールとフェノールとの混合物80gに添加した。その試料を、コールズブレードを装備したIndco製のModel AS2AM、3/4hpの直接駆動空気撹拌機を使用して混合した。該試料を、15分間混合した。得られた溶液は、天然でチキソトロピーであった。その試料は、8ヘグマン単位より大きい磨砕度を呈した。試料の磨砕度を、試験法ASTM D 1210−79によるヘグマン粒ゲージを使用して調査した。その溶液は、外観上は透光性の白色であり、かつ放置してアルミナ沈澱の徴候がなかった。
【0029】
実施例8:ヒュームドアルミナ20gを、エチレングリコール80gに添加した。その試料を、コールズブレードを装備したIndco製のModel AS2AM、3/4hpの直接駆動空気撹拌機を使用して混合した。該試料を、15分間混合した。得られた溶液は、天然でわずかにチキソトロピーであった。その試料は、約6.5ヘグマン単位である磨砕度を呈した。試料の磨砕度を、試験法ASTM D 1210−79によるヘグマン粒ゲージを使用して調査した。その溶液は、外観上は、放置してアルミナの沈澱の最少量を有する乳白色であった。
【0030】
実施例9:ヒュームドアルミナ20gを、1:1のエチレングリコール:N−メチルピロリドンの混合物80gに添加した。その試料を、コールズブレードを装備したIndco製のModel AS2AM、3/4hpの直接駆動空気撹拌機を使用して混合した。該試料を、15分間混合した。得られた溶液は、天然でチキソトロピーであった。その試料は、約5ヘグマン単位である磨砕度を呈した。試料の磨砕度を、試験法ASTM D 1210−79によるヘグマン粒ゲージを使用して調査した。その溶液は、外観上は、放置してアルミナの沈澱の最少量を有する乳白色であった。
【0031】
実施例10:ヒュームドアルミナ20gを、1:1のエチレングリコール:フェノールの混合物80gに添加した。その試料を、コールズブレードを装備したIndco製のModel AS2AM、3/4hpの直接駆動空気撹拌機を使用して混合した。該試料を、15分間混合した。得られた溶液は、天然でわずかにチキソトロピーであった。その試料は、約6ヘグマン単位である磨砕度を呈した。試料の磨砕度を、試験法ASTM D 1210−79によるヘグマン粒ゲージを使用して調査した。その溶液は、外観上は、放置してアルミナの沈澱の最少量を有する乳白色であった。
【0032】
実施例11:ゾル由来のナノアルミナ20gを、エチレングリコール100gに添加した。その試料を、コールズブレードを装備したIndco製のModel AS2AM、3/4hpの直接駆動空気撹拌機を使用して混合した。該試料を、15分間混合した。得られた溶液は、低い粘度であった。その試料は、8ヘグマン単位より大きい磨砕度を呈した。試料の磨砕度を、試験法ASTM D 1210−79によるヘグマン粒ゲージを使用して調査した。その溶液は、外観上は透光性の白色であり、かつ放置してアルミナ沈澱の徴候がなかった。
【0033】
比較例1:ゾル由来のナノアルミナ20gを、フェノール80g中に分散した。その試料を、コールズブレードを装備したIndco製のModel AS2AM、3/4hpの直接駆動空気撹拌機を使用して混合した。該試料を、15分間混合した。得られた溶液は、不均一であり、かつその混合物は、放置して分離した。その試料は、1ヘグマン単位未満である磨砕度を呈した。試料の磨砕度を、試験法ASTM D 1210−79によるヘグマン粒ゲージを使用して調査した。分散の徴候は、観察されなかった。
【0034】
比較例2:ゾル由来のナノアルミナ20gを、1,3プロパンジオール80g中に分散した。その試料を、コールズブレードを装備したIndco製のModel AS2AM、3/4hpの直接駆動空気撹拌機を使用して混合した。該試料を、15分間混合した。得られた溶液は、不均一であり、かつその混合物は、放置して分離した。その試料は、1ヘグマン単位未満である磨砕度を呈した。試料の磨砕度を、試験法ASTM D 1210−79によるヘグマン粒ゲージを使用して調査した。分散の徴候は、観察されなかった。
【0035】
比較例3:ゾル由来のナノアルミナ20gを、1:1のエチレングリコールと二塩基性エステル80gに分散した。その試料を、コールズブレードを装備したIndco製のModel AS2AM、3/4hpの直接駆動空気撹拌機を使用して混合した。該試料を、15分間混合した。得られた溶液は、不均一であり、かつその混合物は、放置して分離した。その試料は、1ヘグマン単位未満である磨砕度を呈した。試料の磨砕度を、試験法ASTM D 1210−79によるヘグマン粒ゲージを使用して調査した。分散の徴候は、観察されなかった。
【0036】
比較例4:ゾル由来のナノアルミナ20gを、1:1のエチレングリコールとグリコールエーテルDM80gに分散した。その試料を、コールズブレードを装備したIndco製のModel AS2AM、3/4hpの直接駆動空気撹拌機を使用して混合した。該試料を、15分間混合した。得られた溶液は、不均一であり、かつその混合物は、放置して分離した。その試料は、1ヘグマン単位未満である磨砕度を呈した。試料の磨砕度を、試験法ASTM D 1210−79によるヘグマン粒ゲージを使用して調査した。分散の徴候は、観察されなかった。
【0037】
実施例1〜11及び比較例1〜4の結果は、以下の表1中の表形式中で示される。該例に見られるように、ゾル誘導アルミナを、混合して、ジオール(例えばグリコール)、及び/又はフェノールもしくはアミドを基礎とする溶剤を含有する溶液中で分散する場合に、ナノアルミナ溶液を形成し、その際、ナノアルミナは分散され、かつ放置して沈澱しない。
【表1−1】

【表1−2】

【0038】
ナノアルミナ分散溶液でのワイヤの被覆
以下の実施例において、ナノアルミナ分散溶液を、樹脂溶液と混合し、ワイヤのための塗料を提供した。該ナノアルミナ分散溶液を、イミド樹脂と樹脂固体に対して約0.5:100〜約20:100(又は約1:200〜約1:5)の割合で混合する。そしてその混合液をワイヤに適用し、そしてワイヤについて硬化した。有利には、該混合物を、ポリエステル線のための高温のエナメル被覆の上に適用する。使用されるイミド塗料は、ポリアミドイミド塗料又はポリエステルイミド塗料のどちらであってもよい。得られた被覆は、一般に市場で市販されているワイヤの物理的特性を有するワイヤを提供するが、しかし改良された摩耗性、COF又は耐コロナ性を提供する。
【0039】
ワイヤ試料1:前記の実施例2の分散液100gを、333gのThe P.D. George Companyから入手できるポリイミドアミド塗料のTritherm(登録商標)A 981−M−30に添加した。その試料を、3櫂形プロペラ撹拌機を装備したIndco製のModel AS2AM、3/4hpの直接駆動空気撹拌機を使用して、約30分間混合した。得られた均一な溶液は、わずかに緑色であった。その溶液を、National Electrical Manufacturer’s Association’s(NEMA)MW35構成に従って製造されたTerester(登録商標)C966−40(The P.D.George Companyから入手できるポリエステルワイヤのための高温エナメル被覆)を覆うトップコートとして、1.0mmの銅線上に適用し、そして工業用のエナメル炉中で硬化した。得られたワイヤを、DEI DTS 1250A及び150℃(〜302゜F)で交流±1000Vを使用するインバーターの適用中に耐コロナ性に関して検査した。ワイヤの物理的特性は、市場で市販されている該特性と同等であった。
【0040】
ワイヤ試料2:前記の実施例2の分散液100gを、3333gのThe P.D. George Company製のTritherm(登録商標)A 981−M−30に添加した。その試料を、3櫂形プロペラ撹拌機を装備したIndco製のModel AS2AM、3/4hpの直接駆動空気撹拌機を使用して、約30分間混合した。得られた均一な溶液は、わずかに緑色であった。その溶液を、Terester(登録商標)C966−40(NEMA MW35構成)を覆うトップコートとして、1.0mmの銅線上に適用し、そして工業用のエナメル炉中で硬化した。得られたワイヤを、掻き取り抵抗及び摩擦係数(COF)の改良に関して検査した。掻き取り抵抗を、検査法NEMA MW 1000−1997 3.51.1.2に従って、Hippotronics Abrasion Scrape Tester Model AST−1を使用する反復掻き取り法によって検査した。ワイヤ試料2の反復掻き取り抵抗は、対照と比較して、それぞれ110掻き取り〜85掻き取りで改良された。摩擦係数(COF)を、製造者の指針に従って、Ampac International Inc.のNOVA 912 Dynamic&Static摩擦係数検査機を使用して検査した。ワイヤ試料2は、アルミナを有さない対照溶液と比較して、改良された静止及び運動COFを有することが判明した。アルミナを含有する溶液及びアルミナを有さない溶液で被覆されたワイヤの静止COFは、それぞれ0.05〜0.07であり、かつ運動COFは、それぞれ0.11〜0.12であった。
【0041】
ワイヤ試料3:実施例4における分散液100gを、333gのTeramide(登録商標)A 3737−30(The P.D. George Companyから入手できるポリエステルイミド)に添加した。その試料を、3櫂形プロペラ撹拌機を装備したIndco製のModel AS2AM、3/4hpの直接駆動空気撹拌機を使用して、約30分間混合した。その溶液を1.0mmの銅線上にモノリシリックに適用し、そして工業用のエナメル炉中で硬化した。得られたワイヤを、DEI DTS 1250A及び150℃で交流±1000Vを使用するインバーターの適用中に耐コロナ性に関して検査した。ワイヤの物理的特性は、市場で市販されている該特性と同等であった。
【0042】
前記の実施例から分かるように、実施例2(ワイヤ実施例1及び2)の分散液で被覆されたワイヤ試料は、改良された掻き取り抵抗及び摩擦係数を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,2−ジオールを含有する分散溶液中でのナノアルミナの分散を含む、ゾル由来のナノアルミナの安定な分散液の製造方法。
【請求項2】
前記ナノアルミナを、選択された時間で混合することによって前記分散溶液中に分散する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該分散溶液が、フェノール性溶剤又はアミドを基礎とする溶剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記1,2−ジオールが、エチレングリコール又は1,2−プロパンジオール、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記フェノール性溶剤が、フェノール及びクレゾール酸からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記アミド溶剤が、N−メチルピロリドン又はジメチルホルムアミドである、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記分散溶液が、(a)エチレングリコールとフェノール性溶剤との溶液、又は(b)エチレングリコールとアミドを基礎とする溶剤との溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記エチレングリコールを、フェノール性溶剤又はアミドを基礎とする溶剤と、約1:1〜約3:1の比で混合する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記のナノアルミナ:分散溶液の比が、約1:4〜約1:10である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
安定なナノアルミナ分散溶液を提供すること、
該ナノアルミナ分散溶液と樹脂塗料とを混合すること、
得られた塗料混合物をワイヤに適用すること、かつ
得られた塗料混合物をワイヤ上で硬化すること
を含む、ワイヤの被覆方法。
【請求項11】
安定なナノアルミナ分散溶液を提供する工程が、ナノアルミナ分散溶液を製造すること;ナノアルミナを1,2−ジオールを含有する分散溶液中で分散することを含む安定なナノアルミナ分散液を製造することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ナノアルミナを、選択された時間で混合することによって前記分散溶液中に分散する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
該分散溶液が、フェノール性溶剤又はアミドを基礎とする溶剤を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記1,2−ジオールが、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記分散フェノール性溶剤が、フェノール又はクレゾール酸である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記分散アミド溶剤が、N−メチルピロリドン又はジメチルホルムアミドである、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記分散溶液が、(a)エチレングリコールとフェノール性溶剤との溶液、又は(b)エチレングリコールとアミドを基礎とする溶剤との溶液である、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記エチレングリコールを、フェノール性溶剤又はアミドを基礎とする溶剤と、約1:1〜約3:1の比で混合する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記のナノアルミナ:分散溶液の比が、約1:4〜約1:10である、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記樹脂塗料が、ポリアミドイミド塗料、ポリエステルイミド塗料、ポリエステル塗料、ポリウレタン塗料、ポリイミド塗料、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
前記ナノアルミナ分散溶液を、該樹脂塗料と約0.5:100〜約20:100の比で混合する、請求項20に記載の方法。

【公表番号】特表2009−533541(P2009−533541A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505807(P2009−505807)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【国際出願番号】PCT/EP2007/051062
【国際公開番号】WO2007/118720
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(503402633)アルタナ エレクトリカル インシュレイション ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (7)
【氏名又は名称原語表記】Altana Electrical Insulation GmbH
【住所又は居所原語表記】Abelstr. 45, D−46483 Wesel, Germany
【Fターム(参考)】