説明

樹脂容器成形用プリフォーム

【課題】胴部が細い樹脂容器成形用プリフォームをスタックした場合に、プリフォーム同士が密着して引き抜き不能あるいは引き抜き困難な状態に陥ることを回避すること。
【解決手段】樹脂容器成形用プリフォーム1(1)、1(2)は、口部2に差し込み可能な太さの胴部4を備えており、胴部4の先は半球状の底部5によって封鎖されている。半球面状の底部外周面5aには全面がシボ加工領域6となっている。プリフォーム1(2)をプリフォーム1(1)の口部2から差し込んでスタックした場合、プリフォーム1(2)のシボ加工されている底部外周面5aが他方のプリフォーム1(1)の首部3のテーパ状湾曲内周面3bに接触する。よって、接触部分が密着状態にならないので、プリフォーム1(2)をプリフォーム1(1)から簡単に引き抜くことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PETボトルなどの樹脂容器を延伸ブロー成形等によって製造するために用いる樹脂容器成形用プリフォームに関し、さらに詳しくは、口部に比べて一回り細い胴部を備えた延伸ブロー成形用プリフォームの改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
PETボトルなどの熱可塑性樹脂からなる容器は、射出成形品である試験管形状をしたプリフォーム(パリソン)を、加熱してブロー成形型内において二軸延伸ブロー成形することにより製造される。近年、樹脂容器の薄肉化、軽量化が強く要求されるようになっている。また、樹脂容器の形状についても各種の形状のものが要求されるようになっている。これらの要求に答えるために、プリフォームの胴部を口部に比べて細くしたものが使用されるようになってきている。この形状のプリフォームは特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されているように、この形状のプリフォームにおいて、胴部が口部に差し込み可能な太さの場合には、プリフォームの口部に他のプリフォームの胴部が差し込まれた状態が形成されることがある。プリフォームの外周面および内周面は平滑な面となっているので、双方のプリフォームの内周面および外周面が密着して、相互に離れなくなる、あるいは、容易に引き抜くことができなくなる等の問題が発生する。特許文献1においては、プリフォームの底面に突起を形成して、プリフォーム相互の密着状態を回避するようにしている。
【特許文献1】特開2007−296720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プリフォームの底面に突起を形成してプリフォーム相互の密着状態を回避する方法においては、突起の大きさ、形成位置、個数を適切に設定しておく必要がある。突起が大きすぎると、突起が邪魔になってプリフォームの搬送が阻害されるなど、プリフォーム取り扱い作業に支障を来たすおそれがある。また、突起が大きすぎると二軸延伸ブロー成形によって得られた樹脂容器に突起の跡が残ることがあり、突起形成部分の肉厚がその他の部分とは相違するなど、成形性にも影響が及ぶことがある。さらには、突起の形成位置、形成個数が適切でないと、プリフォーム同士の密着状態を回避できないことがある。
【0005】
本発明の課題は、極めて簡単な構造によって、プリフォーム同士の密着を回避可能な樹脂容器成形用プリフォームを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、
円筒状の口部と、この口部に同軸状態に連続して太さが漸減している円形断面の首部と、この首部に同軸状態に連続している一定太さの円筒状胴部と、この円筒状の胴部の先を封鎖している底部とを有し、前記胴部は前記口部内に差し込み可能な太さとなっている樹脂容器成形用プリフォームにおいて、
前記底部は、前記胴部の円形外周面の端に滑らかに連続していると共にプリフォーム中心軸線を中心とした半球面状の底部外周面を備えており、
この底部外周面の少なくとも一部は、シボ加工などの粗面加工が施された粗面領域となっており、
前記底部外周面を、前記口部の側から前記首部のテーパ状内周面に同軸状に押し付けた場合に形成される、これら底部外周面およびテーパ状内周面の間の円形接触ラインを含むように、前記粗面領域が設定されていることを特徴としている。
【0007】
本発明の樹脂容器成形用プリフォームでは底部外周面に粗面領域が形成されており、このプリフォームが同一形状の他のプリフォームの口部から差し込まれた場合には、当該粗面領域によって双方のプリフォームが密着状態に陥ることが回避される。粗面領域はシボ加工などを底部外周面に施すことによって簡単に形成することができる。また、プリフォームの射出成形に用いる成形型の成形面を粗面としておくことにより簡単に形成できる。さらに、プリフォームを二軸延伸ブロー成形して得られる樹脂容器に粗面が残ることもない。さらには、双方のプリフォームの接触部分に必ず粗面領域が位置するように、粗面領域を広めに設定しておけばよいので、突起などを用いる場合のように形成位置などを精度良く設定する必要もない。
【0008】
また、胴部が細い樹脂容器成形用プリフォームは、相互にスタックした状態で保管される場合があり、そのような場合には、一般に、同軸状態にプリフォームがスタックされる。よって、同軸状態にスタックした場合のプリフォーム相互の接触部分(円形接触ライン)を含む領域を粗面領域としておけば、プリフォーム相互の密着状態を確実に回避できる。
【0009】
次に、本発明の樹脂容器成形用プリフォームにおいて、前記粗面領域は前記底部外周面の全面に形成されていることを特徴としている。
【0010】
次に、本発明の樹脂容器成形用プリフォームにおいて、前記首部の前記テーパ状内周面における前記円形接触ラインを含む領域は、シボ加工などの粗面加工が施されていることを特徴としている。このようにすれば、粗面同士が当たるので、それらの接触面積を大幅に少なくでき、プリフォーム相互が密着して引き抜き不能あるいは引き抜き困難な状態に陥ることを確実に回避できる。
【0011】
一方、本発明の樹脂容器成形用プリフォームにおいては、
前記プリフォーム中心軸線を含む断面をとり、
前記底部外周面を規定している輪郭曲線上における前記円形接触ラインに交差する点を通るように当該輪郭曲線に接線を引き、
当該接線の前記プリフォーム中心軸線に対する傾斜角度をαとすると、
傾斜角度αが45°以上となるように、前記底部外周面の曲面形状および前記首部の前記テーパ状内周面の曲面形状が設定されていることを特徴としている。
【0012】
傾斜角度αが小さい程、プリフォームが引き抜き不能あるいは引き抜き困難な状態に陥りやすい。角度αを45°以上にすれば、プリフォームの底部が他のプリフォームの首部のテーパ状円形内周面に嵌り込み、そこから引き抜き不能あるいは引き抜き困難になる可能性が少なくなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の樹脂容器成形用プリフォームは、その底部外周面にシボ加工などによって粗面領域が形成されている。粗面領域はプリフォーム同士が接触する面に形成されているので、プリフォーム同士が密着して分離不能あるいは分離が困難な状態に陥ることを回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した樹脂容器成形用プリフォームの実施の形態を説明する。
【0015】
図1(A)および(B)は、本実施の形態に係る樹脂容器成形用プリフォームを示す側面図および縦断面図である。樹脂容器成形用プリフォーム1は、PETなどの熱可塑性樹脂の射出成形品であり、円筒状の口部2と、この口部2に同軸状態に連続して太さが漸減している円形断面の首部3と、この首部3に同軸状態に連続している一定太さの円筒状の胴部4と、この円筒状の胴部4の先を封鎖している底部5とを有している。胴部4は口部2内に差し込み可能な太さのものであり、胴部4の外径は口部2の内径よりも一回り小さい。
【0016】
口部2は一定の肉厚の円筒であり、その円形外周面にはねじ部2aが形成されており、その首部3の側には大径のサポートリング2bが形成されている。首部3も一定の肉厚をしており、口部2から胴部4に向けてプリフォーム中心軸線Lの側に湾曲したテーパ状湾曲外周面3aおよびテーパ状湾曲内周面3bによって規定されている。胴部4は一定の肉厚を有しており、一定の外径寸法の円形外周面4aおよび一定の内径寸法の円形内周面4bによって規定されている。
【0017】
底部5も胴部4と略同一の肉厚であり、胴部4の円形外周面4aの端に滑らかに連続している半球面状の底部外周面5aと、胴部4の円形内周面4bの端に滑らかに連続している半球面状の湾曲内周面5bとによって規定されている。ここで、底部5の底部外周面5aは、図1(A)において網掛けで示すように、全体に粗面加工が施されている。本例の底部外周面5aはシボ加工が施されたシボ加工領域6となっている。シボ加工以外の公知の粗面加工を施すようにしてもよい。
【0018】
樹脂容器成形用プリフォーム1は不図示のブロー成形型内において二軸延伸ブロー成形されて、例えば、図1(B)において想像線で示す形状の樹脂容器10になる。シボ加工面である底部外周面5aは樹脂容器10の底面になる部分であり、二軸延伸ブロー成形によってシボ加工面が無くなり平滑な底面が形成される。
【0019】
図2は、樹脂容器成形用プリフォーム1を同軸状態にスタッキングした場合を示す説明図である。一方の樹脂容器成形用プリフォーム1(1)の口部2の開口2cから、他方の樹脂容器成形用プリフォーム1(2)が、その胴部4の底部5側から同軸状態に差し込まれている。
【0020】
樹脂容器成形用プリフォーム1(2)の底部外周面5aの全面はシボ加工面であり、この底部外周面5aが、樹脂容器成形用プリフォーム1(1)の首部3のテーパ状湾曲内周面3bに同軸状態で押し付けられている。この状態においては、底部外周面5aがテーパ状湾曲内周面3bに対して円形接触ラインCに沿って線接触している。双方の接触面が平滑面の場合には、これらが密着してしまい、差し込まれている樹脂容器成形用プリフォーム1(2)が引き抜き不能あるいは困難な状態に陥る可能性がある。本例では、双方のプリフォームの一方の接触面がシボ加工面となっているので、接触面積が少なく、接触部分を介して空気の流通も可能である。したがって、樹脂容器成形用プリフォームが引き抜き不能あるいは困難な状態に陥ることを回避できる。
【0021】
図3(A)は底部外周面5aのシボ加工領域(粗面加工領域)の別の例を示す説明図である。樹脂容器成形用プリフォームは一般には図2に示すように同軸状態でスタックされる。したがって、シボ加工領域(粗面領域)は、相互のプリフォームが接触している円形接触ラインCを包含する底部外周面5aの部分に形成しておけばよい。図3(A)に示す樹脂容器成形用プルフォーム1Aでは、プリフォーム中心軸線Lを中心として、一定幅で輪帯状に形成したシボ加工領域6が形成されている。
【0022】
図3(B)はシボ加工領域の形成位置の別の例を示す説明図である。この図に示す樹脂成形用プリフォーム1Bでは、シボ加工領域6が、底部外周面5aに形成する代わりに、この底部外周面5aが接触する首部3のテーパ状湾曲内周面3bに輪帯状に形成されている。勿論、テーパ状湾曲内周面3bの全面に形成してもよい。さらに、シボ加工領域6を、底部外周面5aおよびテーパ状湾曲内周面3bの双方に形成しておいてもよい。
【0023】
次に、図4を参照して説明すると、樹脂容器成形用プリフォーム1の中心軸線Lを含む断面で見た場合に、底部外周面5aを規定している輪郭曲線5L上における円形接触ラインCに交差する点Pを通るように当該輪郭曲線5Lに接線Tを引き、当該接線Tのプリフォーム中心軸線Lに対する傾斜角度をαとする。この傾斜角度αが小さい程、プリフォーム1をスタックした場合に、プリフォームが引き抜き不能あるいは引き抜き困難な状態に陥りやすい。したがって、この傾斜角度αが45°以上となるように、底部外周面5aの曲面形状および首部3のテーパ状湾曲内周面3bの曲面形状を設定しておくことが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を適用した樹脂容器成形用プリフォームの側面図および縦断面図である。
【図2】図1の樹脂容器成形用プリフォームを同軸状にスタックした状態を示す説明図である。
【図3】シボ加工領域の形成位置を示す説明図である。
【図4】図1の樹脂容器成形用プリフォームのスタック状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1、1(1)、1(2)、1A、1B 樹脂容器成形用プリフォーム
2 口部
2a ねじ部
2b サポートリング
2c 開口
3 首部
3a テーパ状湾曲外周面
3b テーパ状湾曲内周面
4 胴部
4a 円形外周面
4b 円形内周面
5 底部
5a 底部外周面
5b 湾曲内周面
6 シボ加工領域(粗面加工領域)
10 樹脂容器
L プリフォーム中心軸線
C 円形接触ライン
5L 底部外周面の輪郭曲線
P 接点
T 接線
α 傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の口部(2)と、この口部(2)に同軸状態に連続して太さが漸減している円形断面の首部(3)と、この首部(3)に同軸状態に連続している一定太さの円筒状の胴部(4)と、この円筒状の胴部(4)の先を封鎖している底部(5)とを有し、前記胴部(4)は前記口部(2)内に差し込み可能な太さとなっている樹脂容器成形用プリフォーム(1)において、
前記底部(5)は、前記胴部(4)の円形外周面(4a)の端に滑らかに連続していると共にプリフォーム中心軸線(L)を中心とした半球面状の底部外周面(5a)を備えており、
この底部外周面(5a)の少なくとも一部は、シボ加工などの粗面加工が施された粗面領域(6)となっており、
前記底部外周面(5a)を、前記口部(2)の側から前記首部(3)のテーパ状内周面(3b)に同軸状に押し付けた場合に形成される、これら底部外周面(5a)およびテーパ状内周面(3b)の間の円形接触ライン(C)を含むように、前記粗面領域(6)が形成されていることを特徴とする樹脂容器成形用プリフォーム(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂容器成形用プリフォーム(1)において、
前記粗面領域(6)は前記底部外周面(5a)の全面に形成されていることを特徴とする樹脂容器成形用プリフォーム(1)。
【請求項3】
請求項1または2に記載の樹脂容器成形用プリフォーム(1)において、
前記首部(3)の前記テーパ状内周面(3b)における前記円形接触ライン(C)を含む領域は、シボ加工などの粗面加工が施されていることを特徴とする樹脂容器成形用プリフォーム(1)。
【請求項4】
請求項1ないし3のうちのいずれかの項に記載の樹脂容器成形用プリフォーム(1)において、
前記プリフォーム中心軸線(L)を含む断面をとり、
前記底部外周面(5a)を規定している輪郭曲線(5L)上における前記円形接触ライン(C)に交差する点(P)を通るように当該輪郭曲線(5L)に接線(T)を引き、
当該接線(T)の前記プリフォーム中心軸線(L)に対する傾斜角度をαとすると、
傾斜角度αが45°以上となるように、前記底部外周面(5a)の曲面形状および前記首部(3)の前記テーパ状内周面(3b)の曲面形状が設定されていることを特徴とする樹脂容器成形用プリフォーム(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−670(P2010−670A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−160803(P2008−160803)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(594082648)株式会社フロンティア (34)
【Fターム(参考)】