説明

樹脂封止型半導体装置及びその製造方法

【課題】外部接続用4端子としての樹脂パッケージの縦・横いずれも0.8mm以下、高さ0.3mmm以下の樹脂パッケージの小型化薄型化と、ダイパッド占有面積比30%以上の半導体装置基板実装における実装効率(チップ面積/パッケージ占有面積)を上げ、高い半導体素子搭載率にして高放熱型に対応した樹脂封止型半導体装置、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】一方に突出する形状を、他方に外部接続用端子方向内側へ傾斜する垂直面形状を有し、アップセットされて屈曲部を有するインナーリードは、屈曲部と外部接続用端子にかけて切り欠き部が設けられ、インナーリード上面部の高さを半導体素子の上面より高く、側面部の薄肉部と底面の露出部が設けられたダイパッドの辺に対して傾斜する垂直面形状と平行にしてダイパッドの略中央部に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に係り、特にアップセットされたインナーリードを封止樹脂体内に有し、樹脂封止体の底面に外部接続端子を有する樹脂封止型半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型・小型が進められている樹脂封止型半導体装置へ更に、半導体素子サイズの縮小が進む中で高機能化する半導体素子を搭載して、ダイパッド占有面積比を高め半導体装置基板実装における実装効率(チップ面積/パッケージ占有面積)を上げて高い半導体素子搭載率にするとともに、高放熱型に対応できる脂封止型半導体装置が求められている。そのため樹脂封止型の半導体装置においては新たな構造が必要とされてきている。
【0003】
樹脂封止型半導体装置の従来例として、図14に示す樹脂封止型半導体装置の構造のものがある。半導体素子1と、半導体素子1を支持するダイパッド2と、半導体素子1とダイパッド2を接着する接着剤3と、半導体素子1とボンディングワイヤ4により電気的に接続された複数リードインナーリード5と、半導体素子1、ダイパッド2、接着剤3、ボンディングワイヤ4、及びインナーリード5を封止樹脂で封止する封止体6により構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
従来例の樹脂封止型半導体装置の樹脂パッケージの大きさは、X軸方向の長さ1.2mm、Y軸方向の長さ1.6mm、Z軸方向の長さ0.48mm程度である。
【0005】
インナーリードの形状の機能は、図14に示すインナーリード5の先端両側に設けられた拡張形状はボンディングエリアの確保と基板実装曲げ強度テストのリード引き抜き強度を満たすアンカーの役割を果たしている。
【0006】
従来のワイヤボンディングのワイヤループ形成は、図15に示すワイヤループ4dのように、ワイヤループ4dと半導体素子1端部との電気的接触を避けるための間隔L12を大きくとらなければならず、所定の高さとスペースを必要としている。
【0007】
また、従来のダイパッドの占有面積は、樹脂パッケージ面積1.9mm2に対してダイパッド面積は0.7mm2であり、ダイパッド面積/樹脂パッケージ面積は37%である。
【0008】
樹脂パッケージの縦横1mm以下にする場合には、従来のインナーリード5を封止体6内のダイパッド端面までの長さと同じく配置すると、ダイパッドを配置させる面積が少なくなり、パッケージ機能の一つとしての実装効率(チップ面積/パッケージ占有面積)が低下してしまうという課題があった。
【0009】
この課題を解消するために、内蔵する半導体素子を、半導体装置に対し傾けて配置するという半導体装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4050199号公報
【特許文献2】特開2008−103550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の半導体装置では、小型化や薄型化、そして高放熱化に対し課題があることが分かった。以下、課題について具体的に記す。
【0012】
第1の課題は、従来のインナーリードの形状と、ワイヤボンディングのワイヤループ形成による必要高さと必要スペースでは、小型の樹脂パッケージ、例えば、縦横いずれも0.8mm以下の中でインナーリードとワイヤループを形成するのは困難なことである。具体的には以下の3つの要因が考えられる。
【0013】
1つには、インナーリードの従来形状ではボンディングエリアの確保とアンカー役割を果たしてのリード引き抜き強度を確保しなければならないため、インナーリードがスペースを取り小型化を困難にしていることである。
【0014】
インナーリードの役割は、ボンディングエリアの確保とアンカー役割のリード引き抜き強度確保とがあるが、最低限の必要長さと幅が備えられ、むやみに小型化を図ろうとすれば、ボンディングエリアが十分に確保できずボンディング不安定・信頼性低下につながり、アンカー役割部が小さ過ぎればアンカー役割が果たせず、強度不足となってしまう課題があった。
【0015】
2つには、従来のレイアウトではワイヤボンディングのワイヤループによる高さと、半導体素子とセカンドボンド位置との必要間隔を確保しなければならないため、必要高さとスペース拡大から小型化を困難にしていることである。
【0016】
図15に示すように、ワイヤボンディングでの、ファーストボンド4aの半導体素子1のボンディングパッドの高さに比べ、リード端子面セカンドボンド4bの高さを大幅に低くしてワイヤボンドする「打ち下げ」での手法で行う場合、ワイヤのループ高さの不足からくる半導体素子1の上端部との電気的接触が生じやすくなるのを避けるために、ボンディングワイヤ4dのループ高さが高くしなければならない。必然的に半導体素子1ボンディングパッド上面の樹脂厚みを厚くしなければならないという欠点があった。また、ダイボンド時の半導体素子1の位置ずれ寸法と、セカンドボンド4b時のキャピラリ径の寸法と、半導体素子1の上端部との電気的接触を避けるための間隔寸法とに配慮して半導体素子1とセカンドボンド4b位置との間隔L12のように拡大してしまうという欠点があった。
【0017】
3つには、小型化していくにつれて、ダイパッド底面端部と外部接続用端子端部との間隔が接近してくることから、基板実装時の基板実装配線パターン間ショート回避のために、ダイパッド底面端部と外部接続用端子端部との間に一定間隔の距離を確保することが必要であるが、この一定間隔の距離確保が小型化には大きな障害となっていることである。
【0018】
QFNのパッケージの例では、エッチングの腐食除去や等方性の制約からリード間幅を小さくできず、ダイパッド底面端部と外部接続用端子端部との間隔を大きくとることになってしまう。また電鋳を使用したパッケージの例では、メッキとの制約関係で張り出しは大きくとれず、小さいリード形成は封止樹脂からの剥離防止に強度不足となってしまい、小さいリード形成の障害となっていた。QFNのパッケージや電鋳を使用したパッケージの例では、このような制約関係で樹脂パッケージの大型化へつながり、小型化の障害になるという欠点がある。
【0019】
第2の課題は、インナーリードとワイヤループとを配置する必要スペースを縮小すると同時に、ダイパッド占有面積比30%以上の半導体装置基板実装における実装効率(チップ面積/パッケージ占有面積)を上げることは更に困難なことである。
【0020】
インナーリードを小型化せずにそれぞれの必要機能を従来の面積同等で樹脂パッケージの小型化を図ればダイパッドの載置面積縮小に至り、必要長さと幅でダイパッド載置面の拡大がそのままパッケージ占有面積拡大に直結してしまい、半導体装置基板実装における実装効率(チップ面積/パッケージ占有面積)を損ねてしまう。
【0021】
第3の課題は、高機能化と小型化が進化していく半導体素子からの放熱効率を高めていかなければならないことである。
【0022】
従来の半導体装置は、半導体素子から発生する熱が、アップセットされたダイパッドの場合外部接続用端子のみを介して実装基板の実装パターンに伝導するため、半導体素子から封止樹脂の外部へ放熱する放熱部を兼ねた実装基板の実装パターンまでの熱伝導の距離が長く、且つ外部接続用端子と実装パターンとの接地面積を確保するのが困難であるため、半導体素子から発生する熱を効率よく放熱することができない。このため半導体素子から発生する熱が十分に放熱されないことから半導体素子が熱暴走して破損してしまい、信頼性が著しく低下するという問題を有している。また、底面から露出しているダイパッドの半導体装置においても、ダイパッドに熱伝導率の低い材質で構成されている場合には同様の問題を有している。
【0023】
本発明は、上記課題に鑑み成されたもので、更なる小型かつ薄型、そして実装効率(チップ面積/パッケージ占有面積)が高く、高放熱に対応した樹脂封止型半導体装置を提供することにある。また、信頼性を確保しつつ低コストに生産できる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題は上記の目的を達成するために、下記に記した手段により解決することができる。
1.本発明による樹脂封止型半導体装置では、半導体素子と、前記半導体素子を支持するダイパッドと、前記半導体素子と前記ダイパッドを接着する接着剤と、前記半導体素子とボンディングワイヤにより電気的に接続された複数の信号用リードと、前記半導体素子、前記ダイパッド、前記接着剤、前記ボンディングワイヤ、及び前記信号用リードの一部を封止樹脂で封止する封止体とを備え、前記信号用リード中央部は、その周辺部からアップセットされた樹脂封止型半導体装置において、前記ダイパッドは、該ダイパッドの底面の少なくとも一部が前記封止体の底面から露出している露出部を有し、前記信号用リードの他端部は、前記封止体の底面に外部接続用端子として一部表面を露出している露出部を有し、前記ダイパッドの側面部は、前記ダイパッド載置面にほぼ平行に薄肉部が設けられ、前記アップセットされた信号用リード端部のインナーリードは、前記ダイパッドの上面と前記インナーリードの裏面とをほぼ同等の高さとする屈曲部を有し、前記信号用リード幅方向に対して一方が突出形状を有し、他方が前記信号用リード幅方向内側に傾斜垂直面の形状を有する前記アップセットされたインナーリードであることを特徴とするものである。
【0025】
この構成により、屈曲部と突出形状と傾斜垂直面の形状とにより、インナーリードの小型化を図ることができる。
【0026】
前記アップセットされた信号用リード端部のインナーリードは、前記信号用リード幅方向に対して一方が突出形状を有し、他方が前記信号用リード幅方向内側に傾斜垂直面の形状を有することにより、一方の突出形状がボンディングエリアの確保とアンカー役割を果たし、他方の傾斜垂直面の形状がインナーリードとダイパッドの間隔を最少に接近させる役割を果たし、最小限にして極めて小型のインナーリードを実現することができる。また一方の突出形状は、実装曲げ強度テストの外部接続用端子引き抜き強度テストに必要なシェア強度を確保し、他方の傾斜垂直面の形状は、インナーリードの前記封止体内に配置するレイアウトの自由度を拡大させる役割をすることができる。
【0027】
前記アップセットされた信号用リード端部のインナーリードには、前記ダイパッドの上面と前記インナーリードの裏面とほぼ同等の高さとする屈曲部が設けられているため、封止樹脂における前記インナーリードの裏面側の領域に封止樹脂材が充填されるので、前記外部接続用端子の底面が封止樹脂の底面に露出していても、外部接続用端子が封止樹脂から剥離することがなく、小型化の形状形成に好適である。また、屈曲部が設けられているために前記インナーリード裏面部と外部接続用端子底面部とは離れていることからダイパッドとの間隔をとることができるため、外部接続用端子を接続する実装配線パターン間のショート回避距離を確保してインナーリードとダイパッドの間隔を最少に接近させることができる。
【0028】
前記ダイパッドの側面部にほぼ平行に設けられている前記薄肉部の張り出し長さは、ダイパッド本体の底面から薄肉部の底面までの距離と同程度か2倍程度までの距離であることが望ましい。このようにすると、ダイパッドが封止樹脂から剥離することを確実に防止できると共に、ダイパッドの載置面が広がるため、該載置面の周縁部に位置するボンディング部にワイヤを接続するパッドを確実に設けることができる。また、薄肉部の張り出し長さを長くすることによってダイパッド底面端部と薄肉部の張り出し端部との間隔をとることができることから、ダイパッド底面端部と外部接続用端子端部との間隔を長くとることができるため、外部接続用端子を接続する実装配線パターン間のショート回避距離を確保し、またインナーリードとダイパッドの間隔を最少に接近させることができる。
【0029】
ダイパッドの底面の少なくとも一部が前記封止樹脂の底面から露出している露出部を有し、且つ、ダイパッドの露出部と外部接続用端子の露出部とがほぼ同一面上に位置しているため、実装基板に封止樹脂の底面側を実装する際に該ダイパッドが基板面に直接接するので、半導体素子から発生する熱がダイパッドから実装基板に直接伝導されるようになり、その結果、半導体素子から実装基板までの熱伝導の距離が短縮される。
2.また、本発明の構成においては、前記アップセットされたインナーリードの一方側の前記突出形状配置の方向は、前記封止体の外側に向かう方向であり、他方側の前記アップセットされたインナーリードの傾斜前記垂直面の形状配置の方向は、前記封止体の内側に向かう方向であることが好ましい。
【0030】
この構成にした場合には、前記アップセットされたインナーリードの一方側の前記突出形状配置の方向は、前記封止体の外側に向かう方向であり、他方側の前記アップセットされたインナーリードの傾斜垂直面の形状配置の方向は、前記封止体の内側に向かう方向であることにより、一方の突出形状がボンディングエリアの確保と、実装曲げ強度テストのリード引き抜き強度を満たすアンカー役割を果たすことと、他方の傾斜する垂直面の形状がダイパッドとの距離を最小限の寸法まで接近させることとを同時に機能すると共に、前記封止体内レイアウトを効率的に図る小型なインナーリードとすることができる。
3.また、本発明の構成においては、前記アップセットされたインナーリード上面部と外部接続用端子の上面部の間と、前記アップセットされたインナーリード裏面部と前記外部接続用端子底面部の間の前記屈曲部には、前記外部接続用端子底面に対して垂直形状部が形成されていることを特徴とするものである。ここで、前記垂直形状部は前記外部接続用端子に対して80°〜90°の角度を含む。
【0031】
この構成にした場合には、前記信号用リードの接続用平坦部の直下に前記垂直形状部が形成され、前記垂直形状部すぐ上でのワイヤボンディング接続が可能となり、特別な下方からの受け部を不要にして小スペースでの、接続時のワイヤボンディング加重及び超音波振動が有効に伝わり良好なワイヤボンディング性が得られ、信頼性を高められる。
4.また、本発明の構成においては、前記屈曲部の垂直形状部の面は、前記封止体の辺に対し平行であり、該信号用リード幅方向内側に前記傾斜垂直面の形状は、前記ダイパッドの辺と対向して平行であることが好ましい。
【0032】
この構成にした場合には、前記屈曲部の垂直形状部の面を前記封止体の辺に対し平行にすることにより、屈曲部を安定的に形成しやすくなる。外部接続用端子下面部を接続する実装配線パターン形状と外部接続用端子とを平行となることから、基板実装に対して実装効率が上がる。信号用リード幅方向内側に前記傾斜する垂直面の形状は、前記ダイパッドの辺と対向して平行であることにより、インナーリードとダイパッドとの距離を最も接近させる効果を奏する。
5.また、本発明の構成においては、前記アップセットされたインナーリードは、前記信号用リード幅方向内側に傾斜する垂直面の形状のある側に、前記屈曲部と前記外部接続用端子にかけて切り欠き部を設けていることが好ましい。
【0033】
この構成にした場合には、前記屈曲部と前記外部接続用端子にかけて切り欠き部を設けていることにより、ダイパッド露出部との間隔の距離を前記切り欠き部の大きさを増やして離すことができ、基板実装配線パターン間ショートを回避することができる。また、外部接続用端子の幅を狭めることなく、実装基板への接地面積を拡大できることにより、実装基板への半田付け時の実装強度を増すことができる。
6.また、本発明の構成においては、前記アップセットされたインナーリード上面部の高さは、前記ダイパッドに載置された前記半導体素子の上面より高いことが好ましい。
【0034】
この構成にした場合には、ファーストボンドの位置に対してセカンドボンドの位置が高い「打ち上げ」とすることによりループ高さを最小にして半導体素子の上面とインナーリード上面部との高さの差を維持し易くなり、両者の電気的短絡の危険性を低下できる。更に、半導体素子の上面とインナーリード上面部との高さの差を維持し易くなることからインナーリードを半導体素子のボンディングパッドに対して接近できるので、必然的にボンディングワイヤのループ長さとループ高さを小さくできる。従って小型化と装置外形の高さを薄くすることができる。また、屈曲部が設けられていることにより、ダイパッドに載置された半導体素子の上面とインナーリードの上面との封止樹脂の底面からの位置が接近することになるので、半導体素子の上面に設けられたボンディングパッドとインナーリードとの距離が短くなり、その結果、ボンディングパッドとインナーリードとを接続するワイヤの長さを短縮することができる。
7および8.また、本発明の構成においては、前記アップセットされたインナーリードの平坦上面部長さは、前記アップセットされたインナーリードの平坦裏面部長さより長く、前記外部接続用端子の平坦裏面部長さは、前記外部接続用端子の平坦上面部長さより長くするが好ましい。
【0035】
この構成にした場合には、ワイヤボンド接続領域部としての前記インナーリードの平坦上面部長さと、外部接続用端子上面部の封止体を形成するための平坦長さと、外部接続用端子裏面部の平坦長さとの必要長さ維持を図ると共に、前記ダイパッド両側に配置している、前記インナーリード上面部平坦長さ増加分と、外部接続用端子裏面部平坦長さ増加分だけインナーリード自身小さくできるため、更により小型のインナーリードを実現することができる。
9.また、本発明の構成においては、前記ダイパッド及び前記信号用リードの厚さは50μmから80μm以下にするのが好ましい。
【0036】
この構成にした場合には、一方に突出形状を、他方に外部接続用端子方向内側へ傾斜垂直面形状を有し、垂直な屈曲部をもつ、極めて小型なインナーリードの形状とすることができる。
10.また、本発明の構成においては、前記ダイパッドの薄肉先端部の辺と、前記アップセットされたインナーリードの傾斜垂直面形状との距離は、前記ダイパッドの厚みより小さくするのが好ましい。ここで、ダイパッドの辺と傾斜する垂直面形状との距離は30〜80μm以下が好ましい。
【0037】
この構成にした場合には、インナーリードを前記ダイパッドの薄肉先端部の辺に対して接近できるので、必然的にボンディングワイヤのループ長さとループ高さを小さくできる。従って小型化と装置外形の高さを薄くすることができる。
11.また、本発明の構成においては、前記ダイパッドは、前記ダイパッドの各辺の頂点部から少なくとも一対の吊ピン形状が設けられて前記ダイパッドと同じ厚みをもって前記封止体の辺まで延在していることが好ましい。
【0038】
この構成にした場合には、ダイパッドの薄肉部を圧延により形成しているため、ダイパッドを折り曲げることなく容易に且つ確実に薄肉部を形成でき、載置面の広がりと平坦性とを確実に得ることができる。
12.また、本発明の構成においては、前記アップセットされたインナーリードは、請求項10の距離をおいて、前記ダイパッドの各辺の略中央部にそれぞれ配置されていることが好ましい。
【0039】
この構成にした場合には、前記屈曲部の垂直形状部の面は、前記封止体の辺に対し平行であり、前記アップセットされ、該信号用リード幅方向内側に前記傾斜垂直面の形状は、前記ダイパッドの辺と対向して平行であることから、前記ダイパッドの各辺には、前記封止体の4隅のスペースが配置されるため、前記インナーリードの前記封止体内に高効率的に配置され、前記封止体を小型にすることができる。
【0040】
前記半導体素子と前記インナーリード間ワイヤループ形状を最短の長さで最適に形成することができる。前記封止体の4隅のスペースの封止樹脂材を最大限に活用して、インナーリードの裏面側の領域に封止樹脂材を充填されるのでインナーリードの保持力が大きくなる。
13.また、本発明の構成においては、前記アップセットされたインナーリードは、前記ダイパッドの各辺の頂点部に設けられた少なくとも一対の前記吊ピン形状を互いに挟むように配置されていることが好ましい。
【0041】
この構成にした場合には、前記アップセットされたインナーリードは、前記ダイパッドの各辺の頂点部に設けられた少なくとも一対の前記吊ピン形状を互いに挟むように配置されていることにより、ダイパッド薄肉部の底面とインナーリードの裏面の領域に封止樹脂材が効率良く充填される。
14.また、本発明の構成においては、前記ダイパッドの側面部に前記ダイパッド載置面とほぼ平行の前記薄肉部は、前記ダイパッドの側面部の2辺に繋がる1対の薄肉部であることが好ましい。
【0042】
この構成にした場合には、前記ダイパッドの側面部に前記ダイパッド載置面とほぼ平行の前記薄肉部は、前記ダイパッドの側面部の2辺に繋がる1対の薄肉部であることにより、ダイパッドの薄肉部を圧延により平行する辺を対としてまた辺を同一の長さとして形成しているため、ダイパッドを折り曲げることなく容易に且つ確実に薄肉部を形成でき、載置面の広がりと平坦性とを確実に得ることができる。また、前記薄肉部底面の封止樹脂材充填の領域を更に広げられる。
【0043】
薄肉部の厚さは、ダイパッド本体の厚さの20%程度から90%程度であることが望ましい。従って、ダイパッド本体における底面から薄肉部の底面までの高さは、ダイパッド本体の厚さの10%程度から80%程度となる。
【0044】
封止樹脂におけるダイパッドの薄肉部の底面側の領域に封止樹脂材が充填されているため、ダイパッドの底面及び外部接続用端子の底面が露出していても、該ダイパッド及び外部接続用端子が剥離しにくくなる。薄肉部の張り出し長さは、ダイパッドの底面から薄肉部の底面までの距離と同程度か2倍程度までの距離であることが好ましい。
15.また、本発明の構成においては、前記樹脂封止型半導体装置の各辺の大きさは0.5mmから1.0mmであることが好ましい。
【0045】
この構成にした場合には、樹脂パッケージ大きさにおけるダイパッド面積の比率をこの範囲で効率最大にして極めて小型の樹脂封止型半導体装置を提供することができ、半導体装置基板実装における前記半導体素子実装効率を高めることに貢献できる。1.0mm以上では従来例(特許文献1)の方のダイパッド面積比率が勝り、0.5mm以下では、ダイパッド面積比率が低下して搭載できる前記半導体素子が小さくなりすぎて実用的ではなくなる。
16.また、本発明の樹脂封止型半導体装置の製造方法においては、前記ダイパッドと複数の信号用リードを形成し、前記インナーリードには前記突出形状と前記傾斜垂直面の形状とを形成する工程と、前記インナーリード部と前記外部接続用端子部との間に屈曲部を形成する工程と、前記ダイパッドの側面部に前記薄肉部を設ける工程とを含むリードフレームを用意する工程と、前記リードフレーム上に半導体素子を搭載する工程と、前記半導体素子と前記インナーリードとを互いにワイヤボンドで電気的に接続する工程と、封止樹脂を用いて前記半導体素子と前記ダイパッドと前記接着剤と前記ボンディングワイヤと前記信号用リードとを封止する工程と、前記リードフレーム本体から樹脂封止型半導体装置を分離する工程とを備えている。
【0046】
この構成にした場合には、最小限形状で極めて小型のインナーリードによる高い半導体素子搭載率にして、かつ半導体素子から実装基板までの熱伝導の距離が短縮されて半導体の熱暴走による破損・信頼性低下を回避でき、半導体装置基板実装における高実装効率な極めて薄い小型な封止型半導体装置を低コストに製造することができる。
【発明の効果】
【0047】
上述の如く本発明によれば、下記のような種々の効果を実現できる。
【0048】
樹脂封止型半導体装置の封止体内空間と表面を最大限に活用して、樹脂封止型半導体装置の小型化、薄型化、高放熱化を図ることができる。
【0049】
第1に、(1)極小スペースで最大機能するインナーリードの小型化と、(2)ワイヤボンディングのワイヤループ形成からくる高さとスペース拡大の抑制を図り、(3)基板実装配線パターン間ショートを回避して、インナーリードとダイパッドの間隔を最少に接近させた極めて小型の樹脂封止型半導体装置を提供することができる。即ち、
(1)極小スペースで最大機能するインナーリードの小型化に関しては、ボンディングエリアの確保とアンカー役割を果たし、ダイパッドとの距離を最小とするインナーリードにして小型化を図ることができる。50μmから80μm以下の厚みの信号用リードを用い、インナーリード裏面部と外部接続用端子下面部の間に垂直形状部を形成し、インナーリードの平坦上面部長さは平坦裏面部長さより長く、外部接続用端子の平坦裏面部長さは平坦上面部長さより長くすると共に、信号用リード幅方向に対して一方が突出する形状を有し、他方が信号用リード幅方向内側に傾斜垂直面の形状を有することにより、一方の突出形状がボンディングエリアの確保とアンカー役割を果たし、インナーリードの省スペースと小型化を図ることができる。
(2)ワイヤボンディングのワイヤループ形成からくる高さとスペース拡大の抑制に関しては、ダイパッドの上面とインナーリードの裏面とがほぼ同等の高さとするための屈曲部を設けることにより、ダイパッドに載置された半導体素子の上面とインナーリードの上面とが接近し、半導体素子の上面に設けられたボンディングパッドとインナーリードとの距離が短くなり、その結果、ボンディングパッドとインナーリードとを接続するワイヤの長さを短縮することができる。また、半導体素子の上面とインナーリード上面との高低差が小さくなることでボンディングワイヤのループ長さとループ高さを小さくできる。これにより、極めて薄い小型の樹脂封止型半導体装置を提供することができる。
(3)基板実装配線パターン間ショートを回避に関しては、基板実装配線パターン間距離であるダイパッド底面端部と外部接続用端子端部との間隔を確保して、外部接続用端子を接続する基板実装配線パターン間ショートを回避することができる。
【0050】
インナーリードには屈曲部が設けられているため、インナーリードの裏面側の領域に封止樹脂材が充填されるので、封止樹脂の底面に露出していても、外部接続用端子が封止樹脂から剥離することなく、インナーリードをダイパッドに接近させてもダイパッド底面端部と外部接続用端子端部との間隔をとることができる。また、薄肉部の張り出し長さを、ダイパッド本体の底面から薄肉部の底面までの距離と同程度か2倍程度までの距離にし、ダイパッドが封止樹脂から剥離することを確実に防止でき、ダイパッドの載置面が広がる。更に、屈曲部と外部接続用端子にかけて切り欠き部を設けていることにより、外部接続用端子の幅を大きくしながらにして一定間隔の距離を切り欠き部の大きさで離すことができることから、基板実装配線パターン間距離を確保できる小型化の形状形成に好適である。
【0051】
第2に、(1)一対の吊ピン形状と2辺に繋がる1対の薄肉部とするダイパッド構成と、(2)一対の前記吊ピン形状を互いに挟むように略中央配置したことと、(3)薄肉部の張り出し2倍の長さをもつダイパッドとしたことで、高い実装効率(チップ面積/パッケージ占有面積)を有する小型の樹脂封止型半導体装置を提供することができる。即ち、
(1)一対の吊ピン形状と2辺に繋がる1対の薄肉部とするダイパッド構成により、載置面の平坦性、封止樹脂材の効率良い充填、封止樹脂からの剥離回避、実装配線パターン間のショート回避、実装基板への直接熱伝導、の機能を満たしての載置面最大のダイパッドとすることができる。
(2)一対の吊ピン形状を互いに挟むように略中央配置により、封止体の4隅のスペースの封止樹脂材を最大限に活用して、封止樹脂材充填されるインナーリードの保持力を高めると共に、(3)薄肉部の張り出し2倍の長さをもちながら、ダイパッドとの距離を最小限の寸法まで接近させることができることから、ダイパッド載置面を最大化することができる。
【0052】
第3に、半導体素子からの放熱の課題を解決した信頼性の高い樹脂封止型半導体装置を提供することができる。即ち、実装基板に実装する際にダイパッド露出部が基板面に直接熱伝導される熱伝導距離短縮と、熱伝導率の良いリードフレームと、半導体素子を載置する面積の広いダイパッドとによって、半導体の熱暴走による破損・信頼性低下を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施例である樹脂封止型半導体装置の一例を説明するための図であり、(a)は封止体を透視して概略構成を示した斜視図であり、(b)は側面図である。
【図2】本発明の実施例であるインナーリードの一例を説明するための図であり、(a)は側面図を示し、(b)は平面図を示し、(c)は斜視図である。
【図3】本発明の実施例であるダイパッドの一例を説明するための側面断面図である。
【図4】本発明の実施例であるダイパッドの一例を説明するための底面図である。
【図5】本発明の実施例であるワイヤループの一例を説明するための図であり、(a)は側面図、(b)は斜視図、(c)は半導体素子厚の異なる場合の側面図である。
【図6】本発明の実施例であるインナーリードとダイパッドの一例の配置を説明するための平面図である。
【図7】本発明の実施例であるインナーリードとダイパッドの他の例の配置を説明するための平面図である。
【図8】本発明の実施例である樹脂封止型半導体装置の基板実装における配線パターンの一例を説明するための図であり、基板実装の配線パターンのみと、樹脂封止型半導体装置の基板実装面との位置関係を説明するための底面図である。
【図9】本発明の実施例であるリードフレームの一例を説明するための平面図である。
【図10】本発明の実施例である樹脂封止型半導体装置の製造方法の一例を説明するための図であり、リードフレームを用意する工程のインナーリードとダイパッド形状を形成する金型断面図である。(a)は、折り曲げ形成上金型、折り曲げ形成下金型、リードフレームの配置図を示し、(b)は、折り曲げ形成上金型と折り曲げ形成下金型で屈曲部が形成されるプレス形態を示し、(c)は、垂直形状部を形成するための折り曲げ形成上金型と折り曲げ形成下金型で垂直形状部が形成されるプレス形態を示し、(d)は、ダイパッドの薄肉部を形成するための薄肉形成上金型と薄肉形成上金型で薄肉部が形成されるプレス形態を示す。
【図11】本発明の実施例であるダイパッド薄肉部形成の一例を説明するためのダイパッドのサイズ比較平面図であり、(a)はダイパッド薄肉部形成の前の平面図であり、(b)は形成後の平面図である。
【図12】本発明の実施例であるワイヤループの一例と従来との比較を説明するための斜視図であり、(a)は、実施例であるワイヤループの一例の側面図を示し、(b)は、従来のワイヤループの側面図である。
【図13】本発明の実施例である樹脂封止型半導体装置の一例のモールディング製造方法を説明するための平面図である。
【図14】従来の樹脂封止型半導体装置の正面図、平面図、斜視図である。
【図15】従来の樹脂封止型半導体装置のワイヤループの一例を説明するための斜視図である
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、本実施例の樹脂封止型半導体装置について図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施例である樹脂封止型半導体装置の一例を説明するための図であり、(a)は封止体を透視して概略構成を示した斜視図であり、(b)は側面図である。
【0055】
図1(a)に示すように、本発明の本樹脂封止型半導体装置は、半導体素子1と、半導体素子1を支持するダイパッド2と、半導体素子1とダイパッド2を接着するダイパッド2載置面上の接着剤3と、半導体素子1とボンディングワイヤ4により電気的に接続された複数の信号用リード5と、半導体素子1、ダイパッド2、接着剤3、ボンディングワイヤ4、及び信号用リード5の一部を封止樹脂で封止する封止体6とを備えている。信号用リード5の中央部は、インナーリード5としてその周辺部からアップセットされている。ここで、ダイパッド2の外周の辺は樹脂封止型半導体装置の外周の辺と平行ではなく斜めに配置されており、樹脂封止型半導体装置内のダイパッド2の無い領域である樹脂封止型半導体装置の隅部にインナーリードが配置されている。また、ダイパッド2は、ダイパッド2の底面の少なくとも一部が封止体6の底面から露出しているダイパッド露出部7を有している。
【0056】
図1(b)に示すように、信号用リード5の他端部は、封止体6の底面に外部接続用端子8として一部表面を露出している外部接続用端子露出部9を有している。実装基板に封止樹脂の底面側を実装する際に、ダイパッド2の底面のダイパッド露出部7が実装基板面に直接接するので、半導体素子1から発生する熱がダイパッド2の底面のダイパッド露出部7から実装基板に直接伝導されるようになり、その結果、半導体素子1から実装基板までの熱伝導の距離が短縮される。外部接続用端子8の外部接続用端子露出部9も実装基板に直接伝導されるが、半導体素子1に近いダイパッド露出部7からの熱伝導の割合の方が圧倒的に多いことから放熱効率は高まる。
【0057】
次に、本発明の実施例であるインナーリード5について図面に基づいて説明する。
図2は本発明の実施例であるインナーリードの一例を示し、(a)はインナーリード5の側面図を示し、(b)は平面図を示し、(c)は斜視図を示している。
【0058】
図2(a)に示すように、アップセットされた信号用リード端部のインナーリード5は、ダイパッド2の上面とインナーリード5の裏面であるインナーリード裏面部5bとほぼ同等の高さとする屈曲部10を有している。これにより、封止樹脂におけるインナーリード5の裏面側の領域に封止樹脂材が充填される。そのため、外部接続用端子8の底面である外部接続用端子露出部9が封止樹脂の底面に露出していても、外部接続用端子8が封止樹脂から剥離しにくくなっている。インナーリード裏面部5bと外部接続用端子8の底面部である外部接続用端子露出部9とは、屈曲部10の間隔で離れていることから、ダイパッド2の底面部であるダイパッド露出部7とを屈曲部10とインナーリード裏面部5bの間隔で、基板実装する間隔として離れてとることができる。そのため、外部接続用端子8を接続する実装配線パターン間のショート回避距離を確保しての、インナーリード5の先端とダイパッド2の載置面先端の間隔を最少に接近させることができ、小型化の形状形成に好適である。また、アップセットされたインナーリード5の上面であるインナーリード上面部5aは、屈曲部10によって、ダイパッド2に載置された半導体素子1の上面との位置が近くなるので、半導体素子1の上面に設けられたボンディングパッドとインナーリード5との距離が短くなり、その結果屈曲部10はボンディングパッドとインナーリード5とを接続するボンディングワイヤ4の長さを短縮することができる。
【0059】
また、図2(a)に示すように、アップセットされたインナーリード上面部5aと外部接続用端子8の上面部の間と、アップセットされたインナーリード裏面部5bと外部接続用端子露出部9の間の屈曲部10には、外部接続用端子露出部9に対して垂直形状部11が形成されている。垂直形状部11は外部接続用端子8に対して80°〜90°の角度を含む。
【0060】
インナーリード5のワイヤボンディング接続用平坦部となるインナーリード上面部5aの直下に垂直形状部11が形成され、垂直形状部11すぐ上でのワイヤボンディング接続が可能となる。特別な下方からの受け部を不要にした小スペースでのインナーリード5となる。ワイヤボンディング荷重及び超音波振動が直下の垂直形状部11によって有効に伝わり、良好なワイヤボンディング性が得られ、信頼性を高められる小型なインナーリード5とすることができる。
【0061】
また、図2(a)に示すように、アップセットされたインナーリード5の平坦なインナーリード上面部5a長さL1は、アップセットされたインナーリード5の平坦なインナーリード裏面部5b長さL2より長くしている。これによりインナーリード5の平坦上面部の面積を拡大することができる。
【0062】
外部接続用端子8の平坦な外部接続用端子露出部9長さL3は、外部接続用端子8の平坦な外部接続用端子上面部5c長さL4より長くしている。これにより外部接続用端子8の平坦裏面部の面積を拡大することができる。
【0063】
ワイヤボンド接続領域部としてのインナーリード5の平坦必要面積と、外部接続用端子8裏面部の平坦必要面積との維持を図ると共に、ダイパッド2両側に配置している、インナーリード5の平坦なインナーリード上面部5a長さL1増加分と、外部接続用端子8の平坦な外部接続用端子露出部9長さL3増加分が、インナーリード5自身を小さくできるため、更により小型のインナーリード5を実現することができる。
【0064】
また、インナーリード5、ダイパッド2及び外部接続用端子8の厚さは50μmから80μm以下のリードフレームにするのが好ましい。このリードフレームの厚みは屈曲部10をもつインナーリード5の構成をより小型化するのに効果を奏する。
【0065】
図2(b)に示すように、アップセットされたインナーリード5は、信号用リード幅方向に対して一方が突出形状部12を有し、他方が信号用リード幅方向内側に傾斜垂直面13の形状を有している。
【0066】
一方の突出形状12は、ボンディングエリアを拡大させる効果がある。また一方の突出形状部12は、実装曲げ強度テストにおける外部接続用端子8の引き抜き強度を満たすアンカーの役割を果たし必要なシェア強度を確保することができる。
【0067】
他方の傾斜垂直面13の形状は、インナーリード5とダイパッド2の間隔を最少に接近させる役割を果たしている。更に、傾斜垂直面13の形状は、ダイパッド2の各辺に沿って、インナーリード5の封止体6内に配置するレイアウトの自由度を拡大させる役割をさせることができる。
【0068】
また、図2(c)に示すように、アップセットされたインナーリード5は、信号用リード幅方向内側に傾斜垂直面13の形状のある側に、屈曲部10と外部接続用端子8にかけて切り欠き部14を設けている。切り欠き部14は、インナーリード上面部5aよりも外部接続用端子8の幅を大きくとることができ、実装基板への接地面積を拡大できることにより、実装基板への半田付け時の実装強度を確保できる。また、ダイパッド露出部7との距離を切り欠き部14、インナーリード裏面部5b、屈曲部10による大きさで離すことができ、基板実装配線パターン間ショートを回避することができる。
【0069】
このようにインナーリード5は、一方に突出形状部12を、他方に信号用リード幅方向内側へ傾斜垂直面13の形状を有し、垂直な屈曲部10をもつ、極めて小型なインナーリードの形状とすることができる。
【0070】
次に、本発明の実施例であるダイパッド2について図面に基づいて説明する。
【0071】
図3は、本発明の実施例であるダイパッドの一例を説明するための側面断面図である。ダイパッド2の側面部は、ダイパッド2載置面2aにほぼ平行に薄肉部15が設けられている。薄肉部15の張り出し長さL5は、ダイパッド2本体の底面であるダイパッド露出部7から薄肉部15の底面7aまでの距離と同程度か2倍程度までの距離であることが望ましい。
【0072】
このようにすると、ダイパッド露出部7及び外部接続用端子露出部9が露出していても、ダイパッド2が封止樹脂から剥離することを確実に防止できると共に、ダイパッド2の載置面2aが広がるため、該載置面の周縁部に位置するボンディング部にボンディングワイヤ4を接続するパッドを確実に設けることができる。
【0073】
また、薄肉部15の張り出し長さL5を長くすることによってダイパッド2底面端部と薄肉部15の張り出し端部との間隔をとることができることから、ダイパッド2底面端部7bと外部接続用端子露出部9の端部9aとの間隔を長くとることができるため、外部接続用端子露出部9を接続する実装配線パターン間のショート回避距離を確保し、またインナーリード5とダイパッド2の間隔を最少に接近させることができる。
【0074】
ダイパッド2の薄肉部15は圧延により形成しているため、ダイパッド2を折り曲げることなく容易に且つ確実に薄肉部15を形成でき、載置面2aの広がりと平坦性とを確実に得ることができる。
【0075】
薄肉部15の厚さは、ダイパッド2本体の厚さの20%程度から90%程度であることが望ましい。従って、ダイパッド2本体における底面から薄肉部15の底面までの高さは、ダイパッド2本体の厚さの10%程度から80%程度となる。
【0076】
ダイパッド2の薄肉先端部2bの辺と、アップセットされたインナーリード5の傾斜垂直面13形状との距離は、ダイパッド2の厚みより小さい。ここで、ダイパッド2の薄肉先端部の辺と傾斜垂直面13形状との距離は30〜80μm以下が好ましい。
【0077】
次に、図4のダイパッド2底面図に示すように、ダイパッド2の側面部2bにダイパッド載置面2aとほぼ平行の薄肉部15は、ダイパッドの側面部2bの2辺に繋がる1対の薄肉部15として形成される。
【0078】
ダイパッド2の薄肉部15を平行する辺を対として、また辺を同一の長さとして形成しているため、圧延によりダイパッド2を折り曲げることなく容易に且つ確実に薄肉部15を形成でき、載置面の広がりと平坦性とを確実に得ることができる。また、薄肉部15底面の封止樹脂材充填の領域を更に広げている。
【0079】
図5は、ワイヤループの一例を説明するための図であり、図5(a)(b)は、半導体素子の厚みがダイパッドやインナーリードに比べ薄い場合を図示したものであり、(a)は側面図、(b)は斜視図である。ダイパッド2上に半導体素子1が載置され、半導体素子1表面のボンディングパッドと対向するインナーリード5はボンディングワイヤ4で接続されているが、インナーリード5の裏面はダイパッド2の上面と高さが同じかそれより高いところに位置している。したがって、アップセットされたインナーリード5の上面部5aは、ダイパッド2に載置された半導体素子1の上面よりH1だけ高くなるように形成されている。ボンディングワイヤの一端は半導体素子1表面のボンディングパッド上にファーストボンド4aであり、他端はインナーリード5の上面部5aのボンディングエリアにセカンドボンド4bであって、セカンドボンド4bはファーストボンド4aよりも位置が高い「打ち上げ」とすることにより、ボンディングワイヤ4のループ高さを低く抑えても半導体素子1の上端部とボンディングワイヤ4との接触による電気的短絡を回避することができる。なお、本実施例では、半導体素子は50μm厚、ダイパッドおよびインナーリードは80μm厚として図示している。
【0080】
また、半導体素子1の上面とインナーリード5上面部5aとの高さの差を維持し易くなることから、インナーリード5をダイパッド2の薄肉先端部2bの辺に対して接近できるので、必然的にボンディングワイヤ4のループ長さとループ高さを小さくできる。従って半導体素子1とインナーリード5間ワイヤループ形状を最短の長さで最適に形成することができ、小型化と装置外形の高さを薄くすることができる。
【0081】
図5(c)は、半導体素子の厚みがダイパッドやインナーリードに比べ厚い場合の側面図である。ダイパッド2上に半導体素子1が載置され、半導体素子1表面のボンディングパッドと対向するインナーリード5はボンディングワイヤ4で接続されている。インナーリード5の裏面はダイパッド2の上面と同じかそれより高いところに位置しているが、半導体素子が厚い(例えば、150μm)ためにアップセットされたインナーリード5の上面部5aは、ダイパッド2に載置された半導体素子1の上面よりH2だけ低くなるように形成されている。ボンディングワイヤの一端は半導体素子1表面のボンディングパッド上にファーストボンド4aであり、他端はインナーリード5の上面部5aのボンディングエリアにセカンドボンド4bであって、セカンドボンド4bはファーストボンド4aよりも位置が高い「打ち下げ」となっているが、インナーリード5の裏面がダイパッド2の上面と同じかそれより高いところに位置しているために大幅なループ高さを必要としない。従来技術では、ダイパッド上面とインナーリード上面の高さを同じとしていた為にループ高さを大きくすることで電気的短絡を回避していたが、本実施例では「打ち下げ」であってもインナーリードの厚み以上高いところにセカンドボンド4bが位置するためファーストボンド4aとセカンドボンド4bの高低差が少なく、ボンディングワイヤ4のループ高さを低く抑えても半導体素子1の上端部とボンディングワイヤ4との電気的短絡を回避することができる。
【0082】
次に、本発明の実施例であるインナーリード5とダイパッド2とが小型化構成される最適な配置について説明する。
【0083】
図6は、本発明の実施例であるインナーリードとダイパッドの一例の配置を説明するための平面図である。アップセットされたインナーリード5の一方側の突出形状部12配置の方向は、封止体6の外側に向かう方向に配置されている。他方側のアップセットされたインナーリード5の傾斜垂直面13の形状配置の方向は、封止体6の内側に向かう方向に配置されている。これにより、封止体6内のレイアウトが自由度をもって効率的に配置できる。
【0084】
前図1(a)(b)に示すように、屈曲部10の垂直形状部11の面は、封止体6の辺に対し平行であるように配置されている。
【0085】
インナーリード5の屈曲部10を形成する上で安定的にしやすく、外部接続用端子8下面部を接続する実装配線パターン形状と平行にして基板実装に対して効率的である。
【0086】
図6に示す、信号用リード幅方向内側に傾斜垂直面13の形状は、ダイパッド2の辺と対向して平行であるように配置されている。
【0087】
屈曲部10の垂直形状部11の面は、封止体6の辺に対し平行である配置と、該信号用リード幅方向内側に傾斜垂直面13形状は、ダイパッド2の辺と対向して平行である配置から、ダイパッド2の各辺には、封止体6の4隅のスペースが自由度をもって配置されるため、インナーリード5がの封止体6内に高効率的に配置される。また、インナーリード5とダイパッド2との距離を最も接近させる効果を奏する。結果的に封止体6を小型にすることができる。
【0088】
ダイパッド2は、ダイパッド2の各辺の頂点部から少なくとも一対の吊ピン形状部16が設けられ、ダイパッド2と同じ厚みをもって封止体6の辺まで延在している。アップセットされたインナーリード5は、ダイパッド2の各辺の略中央部にダイパッド2の厚みより小さい距離をおいてそれぞれ配置されている。この配置によって、封止体6の4隅のスペースの封止樹脂材を最大限に活用して、ダイパッド2のサイズを最大化できる。アップセットされたインナーリード5は、ダイパッド2の各辺の頂点部に設けられた少なくとも一対の吊ピン形状部16を互いに挟むように配置されている。アップセットされたインナーリード5は、ダイパッド2の各辺の頂点部に設けられた少なくとも一対の吊ピン形状部16を互いに挟むように配置されていることにより、ダイパッド2薄肉部15の底面とインナーリード5の裏面の領域に封止体6の4隅のスペースの封止樹脂材が効率良く充填される。
【0089】
図7は、本発明の第2の実施例であるインナーリードとダイパッドの他の例の配置を説明するための平面図である。他の例では、外部接続用端子8がダイパッド2の各辺の頂点部に設けられた少なくとも一対の吊ピン形状部16を互いに挟むように配置されている。インナーリード5と外部接続用端子8をこのように配置しても、ダイパッド2薄肉部15の底面とインナーリード5の裏面の領域に封止体6の4隅のスペースの封止樹脂材が同様に効率良く充填される。このような配置から、ダイパッド底面の面積も相対的に大きくとれることによって、ダイパッド占有面積比30%以上の半導体装置基板実装における実装効率(チップ面積/パッケージ占有面積)を上げられると共に、ダイパッド底面の露出部から効率よく放熱させることができる。
【0090】
次に、基板実装配線の一例の推奨パッドレイアウトを説明し、基板実装配線パターン間ショートの回避について説明する。
【0091】
図8は、本発明の実施例である樹脂封止型半導体装置の基板実装における配線パターンの一例を説明するための図であり、基板実装の配線パターンのみと、樹脂封止型半導体装置の基板実装面との位置関係を説明するための底面図である。
【0092】
ダイパッド底面の基板実装配線パターンP1と、外部接続用端子8底面の基板実装配線パターンP2とは、L6の間隔を隔てて設けられている。インナーリード5の傾斜垂直面13形状とダイパッド2の側面部2bとの間隔L7より、L6の間隔を広くとることができている。インナーリード5の傾斜垂直面13形状とダイパッド2の側面部2bとの間隔L8から、ダイパッド2の基板実装配線パターンP1と外部接続用端子8の基板実装配線パターンP2との間隔L7への拡大は、インナーリード5の屈曲部10、垂直形状部11、傾斜垂直面13、切り欠き部14、ダイパッド2の薄肉部15の形状による効果である。
【0093】
これにより、基板実装配線パターン間ショートを回避して、半導体装置基板実装における実装効率を高め、インナーリードとダイパッドの間隔を最少に接近させた極めて小型の樹脂封止型半導体装置を提供することができる。
【0094】
次に、本発明の実施例の樹脂封止型半導体装置とその製造方法について説明する。
【0095】
図9は、本発明の実施例であるリードフレームの一例を説明するための平面図である。
【0096】
リードフレーム20は、例えば銅(Cu)系合金からなる厚さが50μmから80μmの板状に、半導体素子1を搭載しようとする領域に設けられたリードフレーム開口部21へ、リードフレーム開口部21内に配置された半導体素子1を支持するための略四辺形をしたダイパッド2が形成されている。ダイパッド2の外周4辺には、リードフレーム開口部21の縁第1辺からダイパッド2の第1、2辺に向かって延びる第1、第2の信号用リード5aa,5bbと、リードフレーム開口部21の縁第1辺に対向する第2辺からダイパッド2の対向する第3、4辺に向かって延びる第3、第4の信号用リード5cc,5ddをプレスして形成されている。インナーリード5となる信号用リード中央部には、突出形状部12、傾斜垂直面13、切り欠き部14、吊ピン形状部16が同時にプレスして形成される。ダイパッド2は吊ピン形状部16によって支持されている。
【0097】
このようにリードフレーム20には、リードフレーム開口部21内において、ダイパッド2、吊ピン形状部16と、第1〜第4の信号用リード5aa、5bb、5cc、5ddとを形成し、突出形状部12、傾斜垂直面13、切り欠き部14の形状とがプレスして形成される。
【0098】
次に、図10は、本発明の実施例である樹脂封止型半導体装置の製造方法の一例を説明するための図であり、リードフレームを用意する工程の屈曲部と薄肉部を形成する金型断面図である。(a)は、折り曲げ形成上金型、折り曲げ形成下金型、リードフレームの配置図を示し、(b)は、折り曲げ形成上金型と折り曲げ形成下金型で屈曲部が形成されるプレス形態を示し、(c)は、垂直形状部を形成するための折り曲げ形成上金型と折り曲げ形成下金型で垂直形状部が形成されるプレス形態を示し、(d)は、ダイパッドの薄肉部を形成するための薄肉形成上金型と薄肉形成上金型で薄肉部が形成されるプレス形態を示す。
【0099】
本発明の製造方法のリードフレームを用意する工程としての、屈曲部10を形成する工程とダイパッド2の側面部に薄肉部15を設ける工程について、図9に示す金型断面図の一例をもとに説明する。
【0100】
図10(a)は、上部に折り曲げ形成上金型22、下部に折り曲げ形成下金型23、中央には図9に示すリードフレーム20が配置された図を示す。
【0101】
図10(a)の工程には、インナーリード5の突出形状部12、傾斜垂直面13、切り欠き部14と、ダイパッド2、吊ピン形状部16が形成されたリードフレーム20が、折り曲げ形成上金型22、折り曲げ形成下金型23の間に準備される。
【0102】
図10(b)は、上部の折り曲げ形成上金型22と下部の折り曲げ形成下金型23によって、リードフレーム20に対し折り曲げして概略の屈曲部10の形状を形成するプレスした形態を示す。
【0103】
図10(b)の工程は、屈曲部10の形状を形成するアップセット工程として設定している。この工程は、信号用リード5a、5b、5c、5dの先端部の上面部を折り曲げ形成上金型22で、裏面部を折り曲げ形成下金型23でクランプし、信号用リード5aa、5bb、5cc、5ddの平面位置を保持できるクランプ力でアップセットされ、信号用リード5aa、5bb、5cc、5ddと外部接続用端子8の間で引き伸ばされる。
【0104】
図10(c)は、上部の折り曲げ形成上金型22aと下部の折り曲げ形成下金型23aによって、概略の屈曲部10の形状から屈曲部10を垂直形状部11へと形成するプレスした形態を示す。
【0105】
図10(c)の工程は、垂直形状部11の形状を形成する工程として設定している。垂直形状部11形成時には、屈曲部10の形状の円弧形状部を形成させる折り曲げ形成上金型22a、折り曲げ形成下金型23aの角部は0に近いR部で折り曲げられる。この実施例では曲率半径Rは10μm以下である。これは、50μmから80μmの厚さのリードフレーム20を用い、屈曲部10の形状の円弧形状部の曲率半径が10μm以下にして垂直形状部11を形成する。垂直形状部11の角度は外部接続用端子露出部9に対して85°〜90°を含む。垂直形状部11の厚みは、インナーリード5と外部接続用端子8の間で、垂直形成時更に引き伸ばされ、この実施例では、リードフレーム20より10〜50%薄く形成される。
【0106】
また、この図10(c)の工程では、アップセットされたインナーリード5の平坦上面部長さL1は、図2に示すように、平坦裏面部長さL2より長く、外部接続用端子8平坦下面部長さL3は、平坦上面部長さL4より長く形成される。これにより、ボンディングワイヤ4接続領域部としてのインナーリード5の平坦必要長さと、外部接続用端子8上面部の封止体6を形成するための平坦必要長さと、外部接続用端子8裏面部の平坦必要長さが確保される。
【0107】
図10(d)は、上部の薄肉形成上金型22bと下部の薄肉形成上金型23bによって、ダイパッド2の薄肉部15を形成するプレスした形態を示す。
【0108】
図10(d)の工程は、薄肉部15の形状を形成の工程として設定している。ダイパッド2の側面部は、薄肉形成上金型22b、薄肉形成下金型23bの圧延によりダイパッド2載置面にほぼ平行に薄肉部15が形成される。薄肉部15はダイパッドの側面部と、ダイパッド載置面にほぼ平行にして2辺に繋がる1対の薄肉部として形成される。ダイパッド2の薄肉部を圧延により平行する辺を対として、また辺を同一の長さとして形成している。
【0109】
図10のリードフレームを用意する工程としての(b)(c)、(d)工程は、1工程で同時に行うことも、それぞれを複数工程で行うことも可能である。
【0110】
図11は、ダイパッド薄肉部形成の一例を説明するためのダイパッド2のサイズ比較平面図であり、(a)はダイパッド薄肉部形成の前の平面図であり、(b)は形成後の平面図である。
【0111】
図11に示すように、図11(a)から図11(b)へ、は、前図10(d)工程の薄肉形成下金型23bの圧延によって、ダイパッド2のサイズが薄肉部形成後に拡大変化し、ダイパッド2の載置面を広げ、ダイパッド2とアップセットされたインナーリード5の傾斜垂直面形状との距離を図11(a)のL8から図11(b)L9に狭められている。これはダイパッド2の載置面拡大と共に樹脂封止型半導体装置小型化に効果を奏している。
【0112】
このようにして、リードフレーム20は、図2(a)(b)(c)に示すように、アップセットされたインナーリード5の形状には、屈曲部10、垂直形状部11、突出形状部12、傾斜垂直面13、切り欠き部14が形成され、ダイパッド2には、薄肉部15、吊ピン形状部16が形成される。
【0113】
次に、前述のように構成したリードフレーム20を用いた本発明の実施例の樹脂封止型半導体装置とその製造方法について説明する。
【0114】
前図1に示す、半導体素子1は、例えば単結晶珪素からなる半導体基板及びこの半導体基板上に形成された配線層を主体とする構成になっており、その平面形状は方形状で形成されている。半導体素子1には、回路システムが搭載されている。この回路システムは半導体基板の主面に形成された半導体素子1及び配線層に形成された配線によって構成されている。半導体素子1の回路形成面には、半導体素子1の外周囲の各辺に沿って3〜4個の電極が形成されている。この3〜4個の電極の各々は半導体素子1の配線層のうちの最上位層の配線層に形成され、回路システムを構成する半導体素子1に配線を介して電気的に接続されている。3〜4個の電極は例えばアルミニウム膜又はアルミニウム合金膜で形成されている。
【0115】
リードフレーム20上に半導体素子1を搭載する工程において、ダイパッド2に、半導体素子1搭載用の接着剤3がディスペンサ等により供給される。半導体素子1が、例えばコレットにより一面側を真空吸着されることにより保持され、半導体素子1を保持した状態で前記コレットは所定の位置まで移動され、半導体素子1をダイパッド2に供給されることにより、ディスペンサ等によりダイパッド2に供給された接着剤3がダイパッド2上に押し広げられる。そして接着剤3が加熱により硬化されて半導体素子1はダイパッド2上に接着固定され搭載される。
【0116】
次に、半導体素子1とインナーリード5とを互いにボンディングワイヤ4で電気的に接続する工程において、第1〜第4信号用リード5aa、5bb、5cc、5ddから形成されたインナーリード5の各々は、半導体素子1の回路形成面に形成された3〜4個の電極の各々に導電性のボンディングワイヤ4を介して電気的に接続される。ボンディングワイヤ4としては、例えば金(Au)ワイヤを用いている。また、ボンディングワイヤ4の接続方法としては、例えば熱圧着に超音波振動を併用したボンディング法を用いている。
【0117】
以下に、上述した半導体装置のワイヤボンド工程を詳細に説明する。
前図5(a)を参照して、ボンディングツールである略円筒形のキャピラリの中心孔に挿通したボンディングワイヤ4の先端に前記中心孔より大きな直径60μ程度の金ボールを形成する。キャピラリを移動してその金ボールを第1の半導体素子1の第1のボンディングパッド上に所定圧力で押圧し、キャピラリを介して超音波振動と加熱を与えることにより金ボールを第1のボンディングパッド表面に固着する(ファーストボンド4a)。第1のボンディングパッドの位置でキャピラリを垂直方向に上昇せしめる。キャピラリをインナーリード5側に向かって水平方向に移動し、ボンディングワイヤ4は、再結晶領域の部分で折れ曲がる。キャピラリを下降して、インナーリード5aのボンディングエリアに所定圧力で押圧せしめると共に、超音波振動熱圧着によりボンディングワイヤ4をインナーリード5a表面にステッチボンドせしめる(セカンドボンド4b)。クランパによりボンディングワイヤ4を挟み固定し、キャピラリを上昇することでボンディングワイヤ4を切断する。こうして、信号用リード5aa、5bb、5cc、5ddのインナーリード5の先端部分にボンディングワイヤ4の他端側をキャピラリで熱圧着して接続する。半導体素子1の回路形成面に形成された3〜4個の電極の各々からインナーリード5までは、長さが短く、高さが低いワイヤループ形状が形成される。
【0118】
ファーストボンド4aの位置に対してセカンドボンド4bの位置が高い「打ち上げ」とすることによりループ高さを最小にして半導体素子1の上面とインナーリード5上面部との高さの差を維持し易くなり、両者の電気的短絡の危険性を低下できる。
【0119】
図12は本発明の実施例であるワイヤループの一例と従来との比較を説明するための斜視図であり、図12(a)は、実施例であるワイヤループの一例の側面図を示し、図12(b)は、従来のワイヤループの側面図である。ボンディングワイヤ4のループ長さとループ高さ形状の従来との比較を説明すると、図12(b)に示すように、従来のボンディングワイヤ4dのループが「打ち下げ」方式のため、半導体素子1端との電気的接触を避けて、ループを高く、長くせざるを得ないのに比べ、図12(a)に示すように、「打ち上げ」方式のボンディングワイヤ4cのループは、低く、短くループを形成している。そのため、インナーリード5のセカンドボンド4bと半導体素子1との間の長さは従来長さL10に比べ、L11の長さとなり低く短くすることができている。
【0120】
その後、封止する工程において、半導体素子1、ダイパッド2、信号用リード5a、5b、5c、5dのインナーリード5及びボンディングワイヤ4を絶縁性の樹脂からなる封止体6で封止する。第1〜第4の4本の信号用リード5aa、5bb、5cc、5ddの一方の端部は、封止体6の下面に一部表面を露出し、外部接続用端子10を形成している。
【0121】
封止体6の平面形状は方形状で形成されている。封止体6は、低応力化を図る目的として、例えばフェノール系硬化剤、シリコンゴム及びフィラー等が添加されたビフェニール系の絶縁性樹脂で形成されている。この種の封止方法である大量生産に好適なトランスファーモールディング法は、ポット、ランナー、流入ゲート、及びキャビティ等を備えた成形金型を使用し、ポットからランナー及び流入ゲートを通じてキャビティ内に絶縁性樹脂を加圧注入して封止体6を形成する方法である。
【0122】
図13は、本発明の実施例である樹脂封止型半導体装置の一例のモールディング製造方法を説明するための平面図である。図13に示すように、モールディング成形金型24の上型と下型とで形成されるキャビティ内に前記半導体素子1、ボンディングワイヤ4、信号用リード5aa、5bb、5cc、5ddのインナーリード5等が配置されるように、上型と下型との間にリードフレーム20を配置し、その後、上型と下型とでリードフレーム20をクランプする。次に、モールディング成形金型24のポット25に樹脂タブレットを投入し、その後、樹脂タブレットをトランスファーモールド装置のプランジャで加圧し、キャビティ内に樹脂を供給して封止体6を形成する。半導体素子1、ボンディングワイヤ4、信号用リード5aa、5bb、5cc、5ddのインナーリード5等が封止体6で封止される。その後モールディング成形金型24からリードフレーム20を取り出す。
【0123】
次に、封止体6の外部に位置するランナーを除去し、その後リードフレーム20に半田メッキ処理を施す。その後、リードフレーム20本体から樹脂封止型半導体装置を分離する工程で、リードフレーム20から信号用リード5aa、5bb、5cc、5ddを外部接続用端子8として切断することにより、樹脂封止型半導体装置が得られる。
【0124】
本実施例の樹脂封止型半導体装置小型化への具体的な実施例を説明すると、樹脂パッケージの各辺の大きさは0.8mm×0.8mm、ダイパッド載置面の各辺の大きさは0.44mm×0.44mmのダイパッド占有面積比30%以上として、厚さ0.3mmにして極めて小型の樹脂封止型半導体装置を実現することができる。
【符号の説明】
【0125】
1 半導体素子
2 ダイパッド
3 接着剤
4 ボンディングワイヤ
5 インナーリード
6 封止体
7 ダイパッド露出部
8 外部接続用端子
9 外部接続用端子露出部
10 屈曲部
11 垂直形状部
12 突出形状部
13 傾斜垂直面
14 切り欠き部
15 薄肉部
16 吊ピン形状部
20 リードフレーム
21 リードフレーム開口部
22 折り曲げ形成上金型
23 折り曲げ形成下金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子と、前記半導体素子を支持するダイパッドと、前記半導体素子と前記ダイパッドを接着する接着剤と、前記半導体素子とボンディングワイヤにより電気的に接続された複数の信号用リードと、前記半導体素子、前記ダイパッド、前記接着剤、前記ボンディングワイヤ、及び前記信号用リードの一部を封止樹脂で封止する封止体とを備え、前記信号用リード中央部は、その周辺部からアップセットされた樹脂封止型半導体装置において、
前記ダイパッドは、該ダイパッドの底面の少なくとも一部が前記封止体の底面から露出している露出部を有し、
前記信号用リードの他端部は、前記封止体の底面に外部接続用端子として一部表面を露出している露出部を有し、
前記ダイパッドの側面部は、前記ダイパッド載置面にほぼ平行に設けられた薄肉部を有し、
前記アップセットされた信号用リード端部のインナーリードは、前記ダイパッドの上面と前記インナーリードの裏面とをほぼ同等の高さとする屈曲部を有し、前記信号用リード幅方向に対して一方が突出形状を有し、他方が前記信号用リード幅方向内側に傾斜垂直面の形状を有する樹脂封止型半導体装置。
【請求項2】
前記アップセットされたインナーリードの一方側の前記突出形状配置の方向は、前記封止体の外側に向かう方向であり、他方側の前記アップセットされたインナーリードの前記傾斜垂直面の形状配置の方向は、前記封止体の内側に向かう方向であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂封止型半導体装置。
【請求項3】
前記アップセットされたインナーリード上面部と前記外部接続用端子の上面部の間と、前記アップセットされたインナーリード裏面部と前記外部接続用端子底面部の間の前記屈曲部には、前記外部接続用端子底面に対して前記垂直形状部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂封止型半導体装置。
【請求項4】
前記屈曲部の前記垂直形状部の面は、前記封止体の辺に対し平行であり、該信号用リード幅方向内側に前記傾斜垂直面の形状は、前記ダイパッドの辺と対向して平行であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の樹脂封止型半導体装置。
【請求項5】
前記アップセットされたインナーリードは、前記信号用リード幅方向内側に前記傾斜垂直面の形状のある側に、前記屈曲部と前記外部接続用端子にかけて切り欠き部を設けていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の樹脂封止型半導体装置。
【請求項6】
前記アップセットされたインナーリード上面部の高さは、前記ダイパッドに載置された前記半導体素子の上面より高いことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の樹脂封止型半導体装置。
【請求項7】
前記アップセットされたインナーリードの平坦上面部長さは、前記アップセットされたインナーリードの平坦裏面部長さより長いことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の樹脂封止型半導体装置。
【請求項8】
前記外部接続用端子の平坦裏面部長さは、前記外部接続用端子の平坦上面部長さより長いことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の樹脂封止型半導体装置。
【請求項9】
前記ダイパッド及び前記信号用リードの厚さは50μmから80μm以下であることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の樹脂封止型半導体装置。
【請求項10】
前記ダイパッドの前記薄肉先端部の辺と、前記アップセットされたインナーリードの前記傾斜垂直面形状との距離は、前記ダイパッドの厚みより小さいことを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の樹脂封止型半導体装置。
【請求項11】
前記ダイパッドは、前記ダイパッドの各辺の頂点部から少なくとも一対の吊ピン形状が設けられて前記ダイパッドと同じ厚みをもって前記封止体の辺まで延在していることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載の樹脂封止型半導体装置。
【請求項12】
前記アップセットされたインナーリードは、前記ダイパッドの各辺の略中央部にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項に記載の樹脂封止型半導体装置。
【請求項13】
前記アップセットされたインナーリードは、前記ダイパッドの各辺の頂点部に設けられた少なくとも一対の前記吊ピン形状を互いに挟むように配置されていることを特徴とする請求項1乃至12の何れか1項に記載の樹脂封止型半導体装置。
【請求項14】
前記ダイパッドの側面部に前記ダイパッド載置面とほぼ平行の前記薄肉部は、前記ダイパッドの側面部の2辺に繋がる1対の薄肉部であることを特徴とする請求項1乃至13の何れか一項に記載の樹脂封止型半導体装置。
【請求項15】
前記樹脂封止型半導体装置の各辺の大きさは0.5mmから1.0mmであることを特徴とする請求項1乃至14の何れか一項に記載の樹脂封止型半導体装置。
【請求項16】
ダイパッドと複数の信号用リードを形成し、前記複数の信号用リードのインナーリードとなる部分には突出形状と傾斜垂直面の形状とを形成する工程と、
前記インナーリード部と前記信号用リードの外部接続用端子部との間に屈曲部を形成する工程と、
前記ダイパッドの側面部に薄肉部を設ける工程とを含むリードフレームを用意する工程と、
前記ダイパッド上に接着剤を介して半導体素子を搭載する工程と、
前記半導体素子と前記インナーリードとを互いにワイヤボンドで電気的に接続する工程と、
封止樹脂を用いて前記半導体素子と前記ダイパッドと前記接着剤と前記ボンディングワイヤと前記信号用リードとを封止する工程と、
前記リードフレーム本体から樹脂封止型半導体装置を分離する工程と、
を備えたことを特徴とする樹脂封止型半導体装置の製造方法。
【請求項17】
ダイパッドとインナーリードを有する信号用リードとを、前記インナーリードは、前記信号用リード幅方向に対して一方が突出形状を有し、他方が前記信号用リード幅方向内側に傾斜垂直面の形状を有するように形成する工程と、
前記ダイパッドの側面部に前記ダイパッド載置面にほぼ平行に薄肉部を設ける工程と、
前記インナーリード部と前記信号用リードの外部接続用端子部との間に、前記ダイパッドの上面と前記インナーリードの裏面とをほぼ同等の高さとする屈曲部を形成する工程と、
前記ダイパッド上に接着剤を介して半導体素子を搭載する工程と、
前記半導体素子と前記インナーリードとを互いにワイヤボンドで電気的に接続する工程と、
前記ダイパッドの底面の少なくとも一部および外部接続用端子として前記信号用リードの他端部の一部が底面から露出するように封止樹脂で封止する工程と、
からなる樹脂封止型半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−66327(P2011−66327A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217642(P2009−217642)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】