説明

樹脂成形体およびその製造方法

【課題】本発明は、内部に複数の微細気泡を含有した成形体を得ることができる微細発泡樹脂成形体に関するもので、特に押出成形性、射出成形性に優れる発泡性組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】熱可塑性樹脂からなる短径が30μm以上の成形体であり、1000個/mm以上の気泡を含有し、かつ、気泡径0.5μm未満の気泡が気泡数全体の30%以上である、成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に複数の微細気泡を含有した成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡体は、住宅などの断熱材として用いられており、近年高まる省エネルギー意識の中で、冷暖房エネルギーを削減するという非常に重要な役割を担うものである。このような断熱材は一般に、発泡体内部のごく小容積に低熱伝導率の気体を内包することで優れた断熱性能を発現するものである。また、比重が小さいため、発泡体の欠点である機械強度の低下を抑制することができれば、自動車用部材といった軽量化が要求される分野において、有用なものとなる。光学用途としても、微細な発泡体は光を反射するため、液晶表示装置や照明器具などのバックライトに用いられ、さらに微細な発泡体は光を透過するため、透明性を必要とする部材への展開が期待される。
【0003】
機械強度の高い発泡体として、マサチューセッツ工科大学のN.P.Suhらにより提案されたマイクロセルラープラスチック(以下MCPと略することがある)が知られている。MCPとは平均気泡径が0.1〜10μm、気泡密度が109〜1015個/cm3の独立気泡を有する発泡体のことであり、従来の発泡体以上の機械強度を持つとされている。しかしながら、この方法においても安定して製造できる平均気泡径の最小値は1μm程度が限界であり、機械強度も十分なものではないため、さらなる気泡の微細化が求められている。
【0004】
ここで発泡体の主な製造方法を簡単に説明する。発泡する方法としては高分子材料中に発泡剤を混入する方法が主流であり、分解反応を利用した化学発泡による方法と、ガスを発泡剤として溶融した樹脂中に混入する物理発泡剤による方法に分かれている。
【0005】
化学発泡による方法で用いられる分解反応としては、光分解、加水分解、熱分解、酸またはアルカリによる分解、紫外線照射による分解、微生物などによる生分解が挙げられ、分解対象樹脂によって、種々の方法を用いることができる。例えば、分解対象樹脂がポリメチルメタクリレートであれば、樹脂発泡体に紫外線を照射することで分解することができ、ポリ乳酸であれば、加水分解、生分解などで分解することができる。
【0006】
化学発泡による方法として、ポリエチレンテレフタレートシート上に、熱硬化性樹脂をコーティングした後、活性エネルギー線を照射することによって酸または塩基を発生させ、熱効果樹脂を分解することによって微細な気泡を発生させる方法が開示されている(特許文献1)。
【0007】
一方、物理発泡による方法では、物理発泡剤を圧力や温度を制御して高分子材料中に含浸した後、常温・常圧状態に開放させることによって、液相物質が急激に気相化し、膨張して発泡体を得ることができる。化学発泡よりも環境に低負荷である点も特徴である。
【0008】
物理発泡による方法としては、2時間以上の熱処理を施すことで結晶化させ、発泡剤の含有領域を限定したポリ乳酸に100℃・30MPaの高温・高圧で発泡剤を含浸させ、次いで5MPa/sec以上の急激な速度で発泡剤の放圧をすることで平均気泡径の小さな発泡体を得る方法が提示されている(特許文献2)。
【0009】
また、物理発泡を用いて気泡の微細化とは違った方法で透明な発泡体を得る方法が提示されている。それは、厚み方向の発泡セルを1〜4個とする方法であり、軽量、かつ、透明性に優れるとしている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−66638号公報
【特許文献2】特開2007−46019号公報
【特許文献3】特開2008−56863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
活性エネルギーによって発生する酸または塩基によって、微細な気泡を形成する方法は、微小な泡状の気泡が形成出来るものの、発泡層の厚みが10μm程度までしか厚く出来ないため、用途が限られたものであり、断熱性、軽量性に関しても十分なものではなかった。
【0012】
また結晶化させて発泡剤を含浸させる方法は、結晶化させることによって平均気泡径は0.5μm未満になるものの、気泡ごとの大きさは不均一であり、また、気泡の形状も結晶の方向に沿って楕円状であることから、長径が0.5μmを大きく超える気泡が多数存在するものであった。そのため、長径の大きな気泡に起因する機械強度が特に結晶の方向に沿って大きく低下してしまう問題があった。また、長径が0.5μm以上である気泡が不均一に多数存在することで色むらが発生する問題もあった。
【0013】
また、厚み方向の気泡数を4個以下とする方法に関しても、気泡が少なすぎるために、断熱性、軽量性が十分に得られなかった。
【0014】
本発明は、内部に独立した複数の微細気泡を形成させた成形体に関するもので、特に押出成形性、射出成形性に優れる微細気泡を有する成形体に関するものである。本発明において、微細気泡を有する成形体とは、気泡の長径0.5μm未満、さらには0.1μm未満の気泡を含有する成形体をさす。本発明の微細気泡を含有する成形体は、断熱性、低誘電率性、透明性、白色性、不透明性、光散乱性、光反射性、隠蔽性、波長選択的反射および透過性、軽量性、浮揚性、遮音性、吸音性、緩衝性、クッション性、吸収性、吸着性、貯蔵性、透過性、濾過性などの特性を自在に制御できる素材である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1) 熱可塑性樹脂を主として含む、短径が30μm以上の成形体であり、1000個/mm以上の気泡を含有し、かつ、気泡径0.5μm未満の気泡数が気泡数全体の30%以上である、成形体。
(2) 光線透過率が50%以上である前記(1)に記載の成形体。
(3) 前記熱可塑性樹脂が、メタクリル酸系樹脂および/又はポリ乳酸系樹脂である前記(1)または(2)に記載の成形体。
(4) 熱可塑性樹脂を主として含む、短径が30μm以上の成形体の製造方法であって、熱可塑性樹脂と発泡剤の混合物を、Tg−5度以上Tm−20度以下(Tgとは、熱可塑性樹脂のガラス転移温度を意味する。Tmとは、熱可塑性樹脂の融点を意味する。)、3MPa以上70MPa以下にする工程1、Tg−5度より低い温度まで冷却する工程2、大気圧まで放圧する工程3、を有する成形体の製造方法。
(5) 前記工程3において放圧するに際し、放圧速度が0.001MPa/sec以上5MPa/sec未満であることを特徴とする前記(4)に記載の成形体の製造方法。
(6) 前記工程1から工程3の放圧までの間において、発泡剤が超臨界状態であることを特徴とする前記(4)又は(5)に記載の成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決し、材料を削減でき、軽量化が可能であり、透明性もしくは反射性などの光学特性を付与可能な微細気泡を有する成形体、および該成形体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、熱可塑性樹脂を主として含む、短径が30μm以上の成形体であり、1000個/mm以上の気泡を含有し、かつ、気泡径0.5μm未満の気泡数が気泡数全体の30%以上である、成形体である。つまり本発明の成形体は、微細な気泡を特定の割合で含有していることに特徴がある。
【0018】
微細な気泡のサイズは、小さければ小さいほど好ましいが、具体的には気泡径(以下、気泡の長径と略することがある)が0.5μm未満であることが重要である。気泡径は、好ましくは0.3μm未満、より好ましくは0.1μm未満、さらに好ましくは0.05μm未満である。気泡径が0.5μm以上の場合、機械物性が低下する可能性があるため好ましくない。また気泡径(気泡の長径)の下限に特に制限はないが、技術的に0.001μm未満とすることは困難であることから、下限は0.001μm程度と思われ、また下限として0.001μm程度あれば、断熱性や軽量化といった効果の点からも十分である。なお下限としては0.005μm以上であることが好ましく、0.01μm以上であることがより好ましく、0.02μm以上であることがさらに好ましい。なお、長径(気泡径)が0.5μm未満の気泡を、以下微細気泡とする。
【0019】
また、微細気泡の含有率は高ければ高いほど好ましいが、具体的には微細気泡(気泡径0.5μm未満の気泡)の数が、気泡数全体100%に対して30%以上であることが重要である。気泡数全体100%における、気泡径0.5μm未満の気泡の数(微細気泡の含有率)は、好ましくは50%以上100%以下、より好ましくは70%以上100%以下、さらに好ましくは90%以上100%以下である。微細気泡(気泡径0.5μm未満の気泡)の数が、気泡数全体100%に対して30%未満の場合、成形体の機械物性が低下する場合がある。
【0020】
本発明の成形体において、微細気泡(気泡径0.5μm未満の気泡)の数を、気泡数全体100%に対して30%以上とするためには、後述する樹脂に発泡剤を特定の圧力・温度で含浸させ、さらに温度を変化させた後、含浸圧力を開放させる工程を含んだ製造方法や、気泡増核剤を含有させる方法、気泡増核剤の粒径を最適化する方法などを挙げることができる。
【0021】
気泡径のサイズ(微細気泡のサイズ)と微細気泡の数(含有率)は、上述のように微細気泡が気泡径0.5μm未満の気泡であり、その微細気泡の数が気泡数全体100%に対して30%以上であれば、用途によって微細気泡のサイズや微細気泡の含有率を適宜選択することが可能である。例えば透明性が必要な用途に使用するのであれば、気泡径0.5μm未満の気泡の数が、気泡数全体100%の70%以上100%以下であることが好ましい。一方、不透明性、とりわけ反射性などが必要な用途に用いるのであれば、気泡径0.5μm未満の気泡の数が、気泡数全体100%の30%以上50%未満であり、同時に気泡径0.5μm以上3μm未満の気泡の数が、気泡数全体100%の50%以上70%であることが好ましい。
【0022】
特に、高い透明性を必要とする場合、気泡径0.001μm以上0.1μm未満の気泡の数が、気泡数全体100%に対して90%以上100%以下であることが好ましい。より好ましくは、95%以上100%以下である。このような微細気泡の数(含有率)とすることにより可視光線の散乱を少なくし、高い光線透過率を得ることができる。このような特に優れた光線透過率の成形体とするための方法は、後述する好適な製造方法(熱可塑性樹脂と発泡剤の混合物を、温度Tg−5度以上Tm−20度以下、圧力3MPa以上70MPa以下の高温・高圧状態にする工程1、Tg−5度より低い温度まで冷却する工程2、冷却した状態で、大気圧にまで放圧する工程3)において、発泡剤として窒素を使用し、前記工程1から工程3の放圧までの間、発泡剤を超臨界状態として、さらに工程3の大気圧までの放圧速度を0.001MPa/sec以上5MPa/sec未満とする方法を挙げることができる。
【0023】
なお、ここでいう気泡径(気泡の長径)とは、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて試料断面を観察した画像中の気泡の長さにおいて、最も長い部分の長さのことを言う。
【0024】
本発明の成形体は大気泡が少ないことが好ましい。ここでいう大気泡とは、気泡径(気泡の長径)が5μm以上のものをいう。大気泡が多数含まれていると、成形体の機械物性が低下する場合がある。また、気泡数全体100%に対する大気泡の数(大気泡の含有率)は、好ましくは0%以上50%以下であり、より好ましくは0%以上20%以下であり、さらに好ましくは0%以上5%以下である。気泡数全体100%に対する大気泡の数が50%を超える場合には、成形体の機械強度が劣る場合があるために好ましくない。
【0025】
本発明の成形体は独立気泡率が高いほど好ましい。具体的には、独立気泡率は80%以上であることが好ましく、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。独立気泡率が80%に満たない場合、機械物性が低下する場合がある。尚、成形体内部の気泡の独立気泡率は、ASTM−D2856(1998)に準拠して測定した値のことである。
【0026】
本発明の成形体は、1000個/mm以上の密度で気泡(ここでいう気泡とは、前述の微細気泡や大気泡などの全ての気泡を含む)を含有していることが重要である。また、5000個/mm以上1000000個/mm未満であることが好ましく、より好ましくは10000個/mm以上500000個/mm未満であり、さらに好ましくは50000個/mm以上100000個/mm未満である。気泡径にもよるが、気泡の密度が1000個/mm未満の場合、断熱性、軽量化といった気泡を含有することによる効果が十分に得られない場合がある。一方で気泡の密度が高すぎる場合、具体的には1000000個/mm以上の場合には、成形体の機械強度が低下する場合がある。本発明の成形体は、含有される気泡を前述のように微細(気泡径0.5μm未満)にした上で、気泡の数を増やすことによって、初めて達成できる。
【0027】
本発明の成形体において、成形体中の気泡数を1000個/mm以上の密度とするためには、後述する樹脂に発泡剤を特定の圧力・温度で含浸させ、さらに温度を変化させた後、含浸圧力を開放させる工程を含んだ製造方法や、気泡増核剤を含有させる方法、気泡増核剤の粒径を最適化する方法などを挙げることができる。
【0028】
本発明の成形体は、その短径が30μm以上であることが重要である。短径が30μm未満である場合、気泡を含有することによる軽量化や断熱性向上といった効果が十分に得られなくなるからである。また、成形体の短径はその用途に応じて適宜設定可能であるため、特に上限はないが、成形体の短径が10cm以上である場合には、製造する際に発泡剤を十分含浸するのに時間がかかり生産性が悪化する場合がある。そのため成形体の短径は10cm未満であることが好ましい。なおここでいう短径とは、成形体を構成する3次元の長さで最も短い部分のことを言う。例えば、成形体がシートであれば、成形体の短径とはシートの厚みを意味するものとする。
【0029】
また成形体がウインドウフィルムなどの透明性、半透明性が必要な部材として使用される場合には、成形体の短径は50μm以上5mm以下であることが好ましく、より好ましくは100μm以上1mm以下である。成形体が5mmより厚い場合には、透明性を十分得られない場合がある。
【0030】
一方、成形体が自動車用部材や建材などの用途で使用される場合には、成形体の短径は100μm以上10cm以下であることが好ましく、より好ましくは300μm以上3cm以下である。
【0031】
本発明の成形体は、上述のようにウインドウフィルムなどの透明性を必要とする用途に使用することも可能である。該用途に使用する場合、その好ましい光線透過率は50%以上であり、より好ましくは70%以上98%未満、さらに好ましくは80%以上95%未満である。
【0032】
光線透過率を50%以上にする方法としては、樹脂を最適化する方法(好ましい例としてはポリ乳酸など)、気泡増核剤を最適化する方法(好ましい例としてはエチレンビスラウリン酸アミド)、粒径の小さな気泡増核剤を使用すること(好ましい例としては数平均粒径が0.001μm以上10μm未満)などが挙げられる。
【0033】
本発明の成形体を製造する際に使用される発泡剤としては、二酸化炭素、窒素、空気などの無機ガス、およびエタン、ブタン、プロパン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素類、塩化メチル、モノクロルトリフルオロメタン、ジクロルフルオロメタン、ジクロルテトラフルオロメタンなどのハロゲン化炭化水素などの揮発性発泡剤が挙げられる。これらの揮発性発泡剤は、単独で用いても良いし、2種類上を組み合わせて用いても良い。これらの中でも、二酸化炭素と窒素が安全性、環境負荷(特に地球温暖化)の面から最も好ましい。また二酸化炭素や窒素を超臨界状態として用いることは、質量平均分子量が100万以上の高分子量ポリマ(熱可塑性樹脂)を使用した場合でも、これを均一に溶解し、相溶性も向上するので、発泡成形性が良好となる点で好ましい製造方法である。
【0034】
本発明の成形体を製造する際は、気泡増核剤を樹脂に添加して分散させることが好ましい。気泡増核剤を含有させることで、気泡数が増え、それにより1000個/mm以上の密度で気泡を含有した成形体とすることができる。また気泡増核剤を樹脂に添加して分散させる製造方法によれば、気泡径が大きくなることを抑制することができ、それにより気泡径0.5μm未満の気泡の数を、成形体の気泡数全体100%において30%以上とすることができる。
【0035】
気泡増核剤としては、亜リン酸、ホスホン酸などのリン化合物、カーボンブラックやグラファイトなどの炭素系微粒子、層状珪酸塩、酸化マグネシウム、酸化チタン等の金属酸化物、タルク、シリカ、アルミナ、カオリン、石膏等の無機質微粒子、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミドなどの脂肪族カルボン酸アミド、酢酸ナトリウム、ステアリン酸バリウム、オレイン酸カルシウムなどの脂肪族カルボン酸塩、ペンタデシルアルコール、ステアリルアルコール、1,6−ヘキサンジオールなどの脂肪族アルコール、エチレングリコールジステアレート、ラウリン酸セチルエステル、モノパルミチン酸グリセリンエステルなどの脂肪族カルボン酸エステル、ソルビトール系化合物が挙げられる。本発明で特に好適に用いられる、少量の添加によって多量の微細気泡を発生させることができる気泡増核剤としては、金属酸化物としては酸化チタンや酸化マグネシウム、無機粒子としてはタルクやシリカ、脂肪族カルボン酸アミドとしてはラウリン酸アミドやステアリン酸アミドを挙げることができる。
【0036】
本発明の成形体に用いられる気泡増核剤の数平均粒径(1次粒径)は、0.001μm以上10μm未満が好ましく、より好ましくは0.005μm以上2μm以下であり、さらに好ましくは0.02μm以上1μm以下である。気泡増核剤の数平均粒径が、0.001μm未満であると、比表面積が大きくなるため、凝集による粗大異物の発生や高い表面活性によるポリマーの分解の恐れがあるので好ましくない。気泡増核剤の数平均粒径が10μm以上であると、破泡が生じるために、成形体中に微細な気泡の数が少なくなり、欠点も多くなるので好ましくない。
【0037】
本発明の成形体中の気泡増核剤の含有量は、成形体中の熱可塑性樹脂の全成分100質量部に対して0.01質量部以上10質量部未満であることが好ましく、より好ましくは0.1質量部以上5質量部未満であり、さらに好ましくは0.2質量部以上2質量部未満である。気泡増核剤の含有量が、成形体中の全ての熱可塑性樹脂の合計100質量部に対して0.01質量部未満であると、発生する気泡の数が少なくなり、1000個/mm以上の気泡を有する成形体とすることが困難となり、また、気泡径が大きくなりやすいために、気泡径0.5μm未満の気泡の数を気泡数全体100%において30%以上とすることが困難となるために好ましくない。気泡増核剤の含有量が、成形体中の全ての熱可塑性樹脂の合計100質量部において10質量部以上の場合、熱可塑性樹脂の結晶化度が増加してしまうため、発泡剤のガス抜けが生じやすくなるため好ましくない。
【0038】
本発明の成形体に用いられる熱可塑性樹脂は、発泡剤が溶解するものであれば特に制限なく使用することができるが、発泡剤の溶解性に優れた熱可塑性樹脂としては、非晶性樹脂及び/又は生分解性樹脂が好ましい。非晶性樹脂及び/又は生分解性樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、メタクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、環状オレフィン系樹脂、フルオレン系樹脂、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。この中でも特に、ポリ乳酸系樹脂やメタクリル酸系樹脂が好ましい。
【0039】
ここでいう非晶性樹脂とは、加熱すると軟化し、冷却すると固化する特徴を有する熱可塑性樹脂のうち、結晶状態となりえないか、結晶化しても結晶融解熱量が10J/g以下となる結晶化度が極めて低い熱可塑性樹脂を示す。
【0040】
また本発明の成形体は、熱可塑性樹脂を2種類以上使用することも可能であり、特に発泡剤に対する溶解特性が異なる2種類以上の熱可塑性樹脂を使用することにより、成形体中の気泡の気泡径を小さくすることができる。樹脂の種類としては、非晶性樹脂及び/又は生分解性樹脂が少なくとも1種類以上含まれていることが好ましく、より好ましい例としては、ポリ乳酸系樹脂とメタクリル酸系樹脂の併用であり、成形体中の熱可塑性樹脂の全成分100質量%において、ポリ乳酸系樹脂が50質量%以上90質量%以下、メタクリル酸系樹脂が10質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、ポリ乳酸系樹脂が80質量%以上90質量%以下、メタクリル酸系樹脂が10質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましい。成形体中の熱可塑性樹脂の全成分100質量%において、ポリ乳酸系樹脂を50質量%以上90質量%以下、メタクリル酸系樹脂を10質量%以上50質量%以下の範囲とすることで、成形体中の気泡の気泡径を小さくしやすくなり、透明性などを付与しやすくなる。また、これらの樹脂を溶融押出しする場合に、剪断力を高くするなどの樹脂の分散径を小さくする方法を使用するとさらに好ましい。
【0041】
なお、本発明の成形体は、熱可塑性樹脂を主として含むが、これは成形体を構成する全成分において、熱可塑性樹脂の質量割合が最も大きいことを意味する。そして本発明の成形体は、成形体の全成分100質量%において、熱可塑性樹脂成分を70質量%以上100質量%以下含有することが好ましい。そして前述の気泡増核剤や、その他の添加剤を、成形体の全成分100質量%において0質量%以上30質量%以下含有することができる。
【0042】
本発明の成形体は、発泡剤のガス抜けを防止する目的で、成形体の一部もしくは全面に、金属あるいは金属酸化物の蒸着層を積層した樹脂フィルム(蒸着フィルム)でシールすることもできる。蒸着フィルムでシールすることにより、発泡剤のガス抜けによる成形体の断熱性の径時低下や緩衝性の径時低下を防ぐことができ、成形体の使用年数を長くすることができる。蒸着フィルムの蒸着層として用いる金属としては、アルミニウム、インジウム、亜鉛、金、銀、プラチナ、ニッケル、クロムなどが挙げられ、蒸着フィルムの蒸着層として用いる金属酸化物としては、チタン、ジルコニウム、ケイ素、マグネシウムなどの酸化物が挙げられる。中でも、炭酸ガス/水蒸気透過性が低く、幅広く用いられているアルミニウムが好適に用いられる。樹脂フィルムにこれらの蒸着層を形成することで、炭酸ガス/水蒸気バリア性が向上し、炭酸ガス/水蒸気バリアフィルムとして好適に用いられる。
【0043】
また、樹脂フィルムに金属あるは金属酸化物の蒸着層を積層する方法としては、真空蒸着法、EB蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理的蒸着法、プラズマCVDなどの化学蒸着法などを用いることができるが、生産性の観点からは真空蒸着法が特に好ましく用いられる。
【0044】
蒸着層を積層した樹脂フィルム(蒸着フィルム)の樹脂フィルムに用いる樹脂は、熱可塑性樹脂であれば特に限定されないが、炭酸ガス透過率および水蒸気透過率が低いものが好ましく、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂やポリグリコール酸樹脂などのポリエステル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などが好ましく用いられる。また、同じ構成の蒸着フィルムを複数枚貼り合わせてもよく、異なる構成の蒸着フィルムを複数枚重ねて貼り合わせてもよい。
【0045】
本発明の成形体の好適な製造方法は、熱可塑性樹脂に発泡剤を特定の圧力・温度で含浸させる工程1、温度を変化させる工程2、含浸圧力を開放させることにより、熱可塑性樹脂内部の発泡剤を放圧する工程3が含まれる。具体的製造方法としては、熱可塑性樹脂と発泡剤を押出機に供給し、スリットダイなどから金型内に吐出して発泡体(成形体)を得る押出発泡法、一度熱可塑性樹脂をビーズ、シート状に加工したのち、オートクレーブなどの耐圧容器で発泡剤を含浸して発泡体(成形体)を得るバッチ発泡法が挙げられる。
【0046】
以下に、本発明の成形体を得るための方法について、原料熱可塑性樹脂としてポリ乳酸(以下PLAと略することがある)を用い、気泡増核剤としてエチレンビスラウリン酸アミド(以下EBLAと略することがある)を該PLAに練りこみ、オートクレーブにて発泡させる製造方法の例を説明するが、本発明の成形体の製造方法は以下の方法に限定されるものではない。
【0047】
まず、原料熱可塑性樹脂としてPLAと、気泡増核剤としてEBLA粒子とを、ベントを備えた二軸混練押出機に供給し、溶融混練して粒子含有組成物を得る。
【0048】
次に、該粒子含有組成物と原料熱可塑性樹脂たるPLAとを、気泡増核剤の濃度が所望の値となるように混合し、120〜180℃で2〜4時間減圧乾燥後、溶融押出機に供給し、押出機に具備されたT型ダイ口金からシート状に溶融押出しし、キャスティングドラムを一定速度で回転させながら、キャスティングドラムの前方に着地させる。このとき溶融ポリマーとキャスティングドラムの角度は0°〜90°が好ましく、さらに好ましくは10°〜60°である。溶融ポリマーを静電印加法および/またはエアーナイフ法により密着固化し、未配向(未延伸)シートを得る。
【0049】
必要に応じて、得られた未配向シートを、複数のロール群を備えた延伸機で、ロール間の周速差を利用して長手方向に延伸する。この際の延伸温度は80〜170℃が好ましい。より好ましくは100〜160℃、さらに好ましくは120〜150℃である。延伸倍率は1.1〜4倍が好ましく、より好ましくは1.5〜3倍である。こうして得られた、長手方向に一軸配向(一軸延伸)されたシートの両端をクリップで把持して、加熱したテンター内で必要に応じて幅方向に延伸を行う。延伸倍率は1.1〜4倍が好ましく、より好ましくは1.5〜3倍である。また、延伸温度は85〜180℃が好ましい。より好ましくは、100℃〜170℃、さらに好ましくは120℃〜160℃である。
【0050】
なお、幅方向に延伸した後、さらに長手方向および/または幅方向に110〜180℃の延伸温度範囲で1.01〜2.5倍に延伸してもよい。
【0051】
また、延伸後にシートの融点以下の温度で熱固定を加えることが好ましく、より好ましい温度範囲は190〜245℃であり、弾性率を減少させるには220〜245℃であることがさらに好ましい。熱固定時間は、1〜60秒間であることが好ましい。
【0052】
ここで、本発明の成形体(シート)の熱可塑性樹脂の融点とは、示差走査熱量計(セイコー電子工業製RDC220)を用いて、シート5mgをサンプルに用い、25℃から20℃/分の昇温速度で300℃まで昇温し、測定を行った際の融解現象で発現する吸熱ピーク温度である。なお、本発明の成形体(シート)は異なる組成の熱可塑性樹脂を用いてなることがあるため、シートとした場合に熱可塑性の融解に伴う吸熱ピークが複数現れる場合があるが、その場合、最も高温側に現われる吸熱ピーク温度を本発明の成形体の融点とする。
【0053】
また、熱固定工程の前後または同時に弛緩処理を行ってもよく、その後100〜160℃の温度で中間冷却を行ってもよい。より好ましくは、熱固定と弛緩処理を同時に行うことである。弛緩処理の倍率は、幅方向及び/または長手方向に1〜15%であることが好ましく、より好ましくは3〜10%である。
【0054】
なお、幅方向の弛緩処理は幅方向の延伸が完了した後の最大フィルム幅に対してテンター出口の幅を縮めることによって行うことが好ましく、幅方向の弛緩処理の倍率Rwは、弛緩開始直前におけるシートの幅方向のクリップ間隔をDw1、弛緩終了直後のクリップ間隔をDw2として、
Rw=(Dw1−Dw2)/Dw1×100[%]
で表される。
【0055】
また、長手方向の弛緩処理は、テンタークリップのレール上の走行速度を徐々に減速することによって行うことが好ましく、長手方向の弛緩処理の倍率Rlは、弛緩開始直前のクリップと、そのクリップと同じレール上で隣接する進行方向手前のクリップとの間隔をDl1、弛緩終了直後のクリップと、そのクリップと同じレール上で隣接する進行方向奥のクリップとの間隔をDl2として、
Rl=(Dl1−Dl2)/Dl1×100[%]
で表される。
【0056】
続いて、得られたシートから短径が30μm以上の本発明の成形体を製造する方法を以下で説明する。
【0057】
本発明の成形体の製造方法は特に限定されないが、発泡剤を封入した後に、熱可塑性樹脂と発泡剤の混合物を、温度Tg−5度以上Tm−20度以下、圧力3MPa以上70MPa以下の高温・高圧状態にする工程1(ここでTgとは、熱可塑性樹脂のガラス転移温度を意味する。またTmとは、熱可塑性樹脂の融点を意味する。)、Tg−5度より低い温度まで冷却する工程2、冷却した状態で、大気圧にまで放圧する工程3、といった3つの工程を有する製造方法が好ましい。ここで工程1においては、熱可塑性樹脂を、温度Tg−5度以上Tm−20度以下、圧力3MPa以上70MPa以下の高温・高圧状態にした後に、発泡剤を混入することも可能である。また工程2と3は、同時に行なうことも可能である。また前記工程3で放圧するに際しては、放圧速度が0.001MPa/sec以上5MPa/sec未満であることが好ましい。さらに前記工程1から工程3の放圧までの間において、発泡剤が超臨界状態であることが好ましい。このような本発明の製造方法について、以下説明する。
【0058】
発泡剤を封入する方法としては特に制限がないが、工程1において圧力を3MPa以上70MPa以下にするためには、超臨界状態で封入することが好ましい。つまり工程1においては、発泡剤が超臨界状態であることが好ましい。ここで、超臨界状態について簡単に説明する。一般に物質は温度や圧力などの変化により、気体・液体・固体の異なる三つの状態を取ることができる。横軸に温度、縦軸に圧力をとって物質の状態図を考えると、固体と液体の境界が存在する限界は実験的に得られていないが、液体と気体の境界は臨界点が限界である。温度、圧力を上げていき臨界点を超えると一相の流体となり、それ以上加圧圧縮しても液体とならず、昇温しても気体にはならない。この状態を超臨界状態とよび、この状態の流体を超臨界流体という。超臨界流体の有する溶媒特性の一つとして、その優れた溶解能力が挙げられる。工程1において、発泡剤を超臨界状態とする利点は、この優れた溶解能力により、熱可塑性樹脂に対して短時間で発泡剤を含浸できる点にある。二酸化炭素や窒素は超臨界状態が比較的得やすいことが知られており、例えば二酸化炭素は、臨界温度31.1℃、臨界圧力7.4MPa、窒素は、臨界温度が−147.0℃、臨界圧力3.4MPaである。超臨界流体を封入させる方法としては、シートを入れたオートクレーブを0℃以下に冷却した後、加圧して(二酸化炭素なら4.3MPa程度)封入する方法などがある。
【0059】
熱可塑性樹脂と発泡剤の混合物は、3MPa以上70MPa以下とすることが好ましい。つまり、前述の方法により得られたシート(熱可塑性樹脂)に発泡剤を含浸させる圧力としては、3MPa以上70MPa以下であることが好ましい。より好ましくは5MPa以上40MPa未満であり、さらに好ましくは10MPa以上25MPa未満である。含浸圧力が3MPa未満の場合には、発泡剤の含浸量が少なすぎて十分な数の気泡が発生しない場合があり、70Mpaを超えると、気泡を小さくすることが難しくなる。
【0060】
また、熱可塑性樹脂と発泡剤の混合物は、温度Tg−5度以上Tm−20度以下にすることが好ましい。つまり前述の方法により得られたシート(熱可塑性樹脂)に発泡剤を含浸させる温度としては、原料である熱可塑性樹脂のTg−5度以上Tm−20度以下であることが好ましく、より好ましくはTg度以上Tm−50度以下であり、さらに好ましくはTg+5度以上Tm−80度以下である。温度がTg−5度より低い場合、熱可塑性樹脂に対して発泡剤の含浸が難しくなる。一方で発泡剤が熱可塑性樹脂に含浸されると可塑化するためTgやTmが降下する。しかし発泡剤が熱可塑性樹脂に含浸している最中の熱可塑性樹脂のTgは測定が困難である。そのため、熱可塑性樹脂のTg−5度以上、さらにはTg度以上とすることで十分含浸が可能であることを検討によって算出した。また、Tm―20度より大きい場合は、成形体が変形してしまう場合がある。なお熱可塑性樹脂に対して発泡剤を含浸させるためには、1時間以上保持することが好ましく、より好ましくは3時間以上、さらに好ましくは10時間以上である。保持時間が短い場合、熱可塑性樹脂に対する発泡剤の含浸量が少なく、表面しか気泡が含有しない場合がある。
【0061】
熱可塑性樹脂と発泡剤の混合物を、温度Tg−5度以上Tm−20度以下、圧力3MPa以上70MPa以下の高温・高圧状態にする工程1に続いては、工程2として熱可塑性樹脂と発泡剤の混合物をTg−5度より低い温度まで冷却することが好ましい。つまり前述のように高温・高圧にしたシート(熱可塑性樹脂)と発泡剤の混合物を、熱可塑性樹脂のTg−5度より低い温度まで冷却する。工程2における冷却後の温度としては、0度以上Tg−5度未満がより好ましく、さらに好ましくは15度以上Tg−5度未満である。
【0062】
なお、工程2において、発泡剤がシート(熱可塑性樹脂)に対して均一に含浸された状態を維持するために、発泡剤の状態は超臨界状態であることが好ましい。工程2において、発泡剤が超臨界状態でない状態(液体もしくは固体)となった場合、発泡剤のシート(熱可塑性樹脂)への含浸状態が局在化する可能性があり、局在化した状態で続く工程3を行うと、気泡径が不均一なものとなり、透明性などの物性面のバラツキが大きくなる。そのため工程2を含む、工程1から工程3の放圧までの間においては、発泡剤が超臨界状態であることが好ましい。
【0063】
続いて工程3として、気泡核を形成し、発泡させるために、大気圧まで放圧する。なお、前述の工程2と工程3は同時に行うことも可能である。発泡剤を放圧する温度が低すぎる場合、ガス抜きが生じてしまい、気泡が生成しない場合があり、発泡剤を放圧する温度が高すぎる場合には、大きく発泡してしまう可能性がある。そのため工程3における温度は、工程2における温度と同程度が好ましく、具体的にはTg−5度未満の温度であることが好ましく、0度以上Tg−5度未満がより好ましく、15度以上Tg−5度未満であることが更に好ましい。
【0064】
また、工程3として含浸圧力を放圧する速度は、0.001MPa/sec以上5MPa/sec未満であることが好ましく、より好ましくは0.005MPa/sec以上1MPa/sec未満、さらに好ましくは0.01MPa/sec以上0.1MPa/sec未満である。5MPa/sec以上の場合には、得られる成形体中の気泡径の分布が大きくなり、機械物性のバラツキを引き起こす恐れがある。放圧の初期段階において気泡の核が生成し、続いて気泡の成長が生じるため、放圧の速度と気泡数、気泡径とは密接な関係がある。1μm〜10μm程度の気泡を高密度に形成するには、放圧の速度を高くすることが有効であることが知られている。しかし、本発明の成形体に含有されているような気泡径0.5μm未満の微細気泡の場合はこの限りではない。一方、放圧する速度が0.001MPa/sec未満の場合には、成形体中の気泡数が少なくなるために好ましくない。気泡の成長段階においては、放圧の速度を上記0.001MPa/sec以上5MPa/sec未満の範囲にすることによって、気泡径を0.5μm未満にしやすくなる。
【0065】
前述の理由のために、工程1から工程3の放圧までの間は、発泡剤は超臨界状態であることが好ましい。工程1または工程2において、発泡剤が超臨界状態を維持していた場合には、工程3の大気圧への放圧過程において、発泡剤は超臨界状態から液体もしくは気体の状態となる。超臨界状態でなくなる圧力・温度条件は、使用した発泡剤の種類によって異なる。
【0066】
本発明の成形体は、気泡径や成形体の短径を制御することによって、建築部材、自動車部材、電気・電子部品、各種容器、日用品など各種用途に利用することができる。具体的な用途としては、結露を防止出来る程度の断熱性を持ち、透明性もしくは半透明性を持つウインドウフィルムや、耐衝撃性の高い外張り断熱材、断熱性をもった壁紙といった建築部材、光拡散フィルム、反射フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、輝度向上フィルム、プリズムシートなどの光学フィルム、軽量性、もしくは緩衝性をもつ自動車部材、ソケットなどの照明部品、導電性テープなどの電気・電子部品、各種ケース、チューブ、タンク、コンテナーなど各種容器や日用品といった用途に有用である。
【実施例】
【0067】
[特性の測定方法および効果の評価方法]
本発明において説明に使用した特性値の測定方法および効果の評価方法は、次のとおりである。
【0068】
(1)熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tg、融点Tm、結晶融解エネルギー△Hmの測定
示差走査熱量計(DSC)として、セイコー電子工業株式会社製ロボットDSC「RDSC220」を用い、データ解析装置として、同社製ディスクステーション「SSC/5200」を用いてJIS K7121(1987)に従い測定した。
【0069】
まず、アルミニウム製受皿に5mgの発泡前の樹脂サンプルを充填する。このサンプルを常温から300℃まで、20℃/分の昇温速度で昇温し、1stRunのDSC曲線を得た。得られたDSC曲線から、ベースラインが吸熱側へ0.001mW/mg以上の段差が生じている場合にガラス転移温度Tg(℃)が存在しているとして、成形体の熱可塑性樹脂のガラス転移温度TgをJISK−7121(1987)に従い、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線が交わる点の温度をTg(℃)とした。なお、本発明の成形体の熱可塑性樹脂は、ベースラインの段差が複数現れる場合があるが、その場合、最も低温側に現われる段差を本発明の成形体の熱可塑性樹脂のTg(℃)とした。また、ガラス転移温度Tg以上の温度領域において、吸熱ピーク(ap)と吸熱ピーク面積(a)(J/g)を得た。ここで、吸熱ピークとは、昇温することによりベースラインから吸熱側にずれ、さらに昇温を続けるとベースラインの位置へ戻ろうとする曲線の頂点のことであり、吸熱ピーク面積(a)(J/g)とは、吸熱ピークの低温側、高温側それぞれから引ける2本の接線と、高温側のベースラインを低温側に延長したラインに囲まれる面積のことである。
【0070】
次いで、同じ条件で、In(インジウム)を測定し、1st RunのDSC曲線を得た。1stRunのDSC曲線からInの吸熱ピーク面積(b)(J/g)を求め、次式により結晶融解エネルギーΔHm(J/g)を求めた。
ΔHm=28.5(J/g)×a/b
このときの△Hmが観測されないか、10J/g以下であるときに、熱可塑性樹脂を非晶性とした。本発明の原料として用いられる熱可塑性樹脂は、吸熱ピークが複数現れる場合があるが、その場合、吸熱ピークの頂点の温度で最も低いものを熱可塑性樹脂の融点Tm(℃)とし、吸熱ピーク面積(a)の合計を熱可塑性樹脂の結晶融解エネルギーΔHm(J/g)とした。
【0071】
(2)1mm当たりの気泡数
日本電子社製走査型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて、成形体の厚さ方向断面を50000倍に拡大した画像を取り込んだ。画像を取り込む位置は任意とした。得られた画像の中心から上下左右5μmの範囲をトリミングし、10μm四方(拡大後20cm四方)の画像を得た。その画像内に観測される気泡数を計測し、1mm当たりの気泡数に換算した。尚、画像端で切られて気泡の一部のみが写っているものに関しては計測しなかった。
【0072】
(3)気泡径
日本電子社製走査型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて、成形体の厚さ方向断面を50000倍に拡大した画像を取り込んだ。画像を取り込む位置は任意とした。この画像中で気泡100個を無作為に選び出し、顕微鏡を用いてそれらの気泡の断面図中における最も長い長さをそれぞれ採寸した。なお、1つの画像中に気泡の数が100個未満の場合には、新たに違う位置の画像を取り込んで100個になるまで採寸した。以下の基準に準じて径の大きさを分類し、0.001μm未満、0.001μm以上0.1μm未満、0.1μm以上0.5μm未満、0.5μm以上3μm未満、及び3μm以上に分類された気泡の数の各分類毎の合計を100で割って、気泡径0.5μm未満の気泡の割合を算出した。なお、いずれの実施例および比較例においても0.001μm未満の気泡は観測できなかったが、50000倍に拡大した画像から0.001μm未満の気泡を観測することは、現時的に困難と思われる。
0.001μm未満
0.001μm以上0.1μm未満
0.1 μm以上0.5μm未満
0.5 μm以上3μm未満
3 μm以上
(4)成形体の短径
成形体の短径は、(株)ミツトヨ製デジマチックマイクロメーターMDC−MJ/PJを用い、下記の方法で求めた。
(i)まず、成形体の任意の位置から平滑な部分を選び、4cm×5cmの寸法に切り出したものをサンプルとし、サンプルの長辺方向を上下方向、短辺方向を左右方向とした。
(ii)上端から1cm、左端から1cmの位置を測定始点とする。
(iii)測定始点の厚みを測定し、その位置から右方向に測定位置を0.5cmずつ移動させながら、測定始点も含め、計5点の厚みを測定した。
(iv)次に、成形体の上端から1.5cm、左端から1cmの位置を測定始点し、(iii)と同様の測定を行った(すなわち、測定位置を右方向に0.5cmずつ移動させながら計5点の厚みを測定した)。
(v)以下同様に、測定始点を下方向に0.5cmずつずらしながら(iii)と同様の測定を測定始点も含めて計7回行い、合計35点の測定値を得た。なお、測定位置の終点は上端から4cm、左端から3cmの地点となる。
(vi)35点の合計値を35で割ることにより成形体の短径を得た。
【0073】
(5)成形体の光線透過率
成形体の任意の位置から平滑な部分を選び、4cm×5cmの寸法に切り出したものをサンプルとし、日本電色工業(株)製濁度計NDH2000を用いて、23℃での全光線透過率(%)を3回測定し、平均値で透明性を評価した。光源にはハロゲンランプ(12V50W)を用い、全光線透過率はJIS−K7361−1997に準じて測定を行った。
【0074】
(6)軽量性
軽量性は比重の変化より判定した。成形体を3cm×4cmの大きさに切取ったものをサンプルとし、電子比重計(ミラージュ貿易(株)製SD−120L)を用いて、室温23℃、相対湿度65%の雰囲気にて測定を行った。測定は3回行い平均値をその成形体の比重とした。同様に発泡処理前の成形体(例えばシート)の比重も測定し、発泡処理後の比重を発泡処理前の比重で割ることによって、軽量化の評価を下記の基準に則り◎〜×で判定した。
0.8未満 :◎
0.8以上0.9未満 :○
0.9以上0.95未満 :△
0.95以上 :×
(7)気泡増核剤の数平均粒径
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、倍率1000000倍で観察した画像中の粒子について、円相当粒子径を求めた。円相当粒子径が0.0005〜15μmであった粒子から無作為に100個の粒子を選び、それら100個の粒子の円相当粒子径の平均値を求め、気泡増核剤の数平均粒径とした。なお、観察には発泡成形体の厚さ方向断面を用いてもかまわないが、発泡処理前の未発泡樹脂成形体の厚さ方向断面を用いることが好ましい。
【0075】
(実施例1)
原料樹脂としてPLA(ネイチャーワークス(株)製 4042D)100質量部を140℃で3時間乾燥した。その後、T型口金を備えた押出機に供給し、25℃に冷却したキャスティングドラム上に静電印加を行いながら混練押出・冷却して未発泡樹脂成形体を得た。
【0076】
得られた未発泡樹脂成形体をオートクレーブ中に投入し、二酸化炭素を封入し、65℃、15MPa(超臨界状態)の条件で、4時間含浸させた。その後、オートクレーブ内の温度を50℃まで冷却し、0.1MPa/secの速度で大気圧まで放圧することにより、成形体を得た。得られた成形体の気泡特性、成形体特性を表1−1に示す。
【0077】
(実施例2)
原料樹脂としてPLA(ネイチャーワークス(株)製 4042D)20質量部と、気泡増核剤としてEBLA(日本化成(株)製)1質量部を、二軸混練機を用いて、混練温度200℃で混練し、粒子含有組成物を得た。該粒子含有組成物と、希釈用原料樹脂としてPLA(ネイチャーワークス(株)製 4042D)80質量部を、それぞれ140℃で3時間乾燥した。その後、T型口金を備えた押出機に供給し、25℃に冷却したキャスティングドラム上に静電印加を行いながら混練押出・冷却して未発泡樹脂成形体を得た。
【0078】
得られた未発泡樹脂成形体をオートクレーブ中に投入し、二酸化炭素を封入し、70℃、15MPa(超臨界状態)の条件で、2時間含浸させた。その後、オートクレーブ内の温度を60℃まで冷却し、4MPa/secの速度で大気圧まで放圧することにより、成形体を得た。得られた成形体の気泡特性、成形体特性を表1−1に示す。
【0079】
(実施例3)
原料樹脂としてPLA(ネイチャーワークス(株)製 4042D)95質量部と原料樹脂としてPMMA(住友化学(株)製 LG−21)5質量部を、それぞれ80℃で3時間乾燥した。その後、T型口金を備えた押出機に供給し、25℃に冷却したキャスティングドラム上に静電印加を行いながら混練押出・冷却して未発泡樹脂成形体を得た。
【0080】
得られた未発泡樹脂成形体をオートクレーブ中に投入し、二酸化炭素を封入し、70℃、15MPa(超臨界状態)の条件で、3時間含浸させた。その後、10MPaまで10MPa/secの速度で放圧した後、オートクレーブ内の温度を40℃まで冷却し、0.01MPa/secの速度で大気圧まで放圧することにより、成形体を得た。得られた成形体の気泡特性、成形体特性を表1−1に示す。
【0081】
(実施例4)
原料樹脂としてPMMA(住友化学(株)製 LG−21)100質量部を80℃で3時間乾燥した。その後、T型口金を備えた押出機に供給し、25℃に冷却したキャスティングドラム上に静電印加を行いながら混練押出・冷却して未発泡樹脂成形体を得た。
【0082】
得られた未発泡樹脂成形体をオートクレーブ中に投入し、二酸化炭素を封入し、70℃、15MPa(超臨界状態)の条件で、3時間含浸させた。その後、0.1MPa/secの速度で大気圧まで放圧することにより、成形体を得た。このとき、圧力が10MPaの時点で温度は50℃であった。得られた成形体の気泡特性、成形体特性を表1−1に示す。
【0083】
(実施例5)
原料樹脂としてPET−G(DIC(株)製 F82D)40質量部と、気泡増核剤として酸化チタン(繊維状、長径3μm、短径0.1μm)2質量部を、二軸混練機を用いて、混練温度260℃で混練し、粒子含有組成物を得た。該粒子含有組成物と、希釈用原料樹脂としてPET−G(DIC(株)製 F82D)60質量部を、それぞれ140℃で3時間乾燥した。その後、T型口金を備えた押出機に供給し、25℃に冷却したキャスティングドラム上に静電印加を行いながら混練押出・冷却して未発泡樹脂成形体を得た。
【0084】
得られた未発泡樹脂成形体をオートクレーブ中に投入し、二酸化炭素を封入し、70℃、15MPa(超臨界状態)の条件で、3時間含浸させた。その後、1MPa/secの速度で大気圧まで放圧することにより、成形体を得た。得られた成形体の気泡特性、成形体特性を表1−1に示す。
【0085】
(実施例6)
原料樹脂としてPLA(ネイチャーワークス(株)製 4042D)40質量部と、気泡増核剤としてカーボンブラック(東海カーボン(株)製 平均粒径0.02μm)1質量部を、二軸混練機を用いて、混練温度200℃で混練し、粒子含有組成物を得た。該粒子含有組成物と、希釈用原料樹脂としてポリプロピレン(日本ポリプロ(株)製 ニューフォーマーFB5100)60質量部を、それぞれ140℃で3時間乾燥した。その後、T型口金を備えた押出機に供給し、25℃に冷却したキャスティングドラム上に静電印加を行いながら混練押出・冷却して未発砲樹脂成形体を得た。
得られた未発泡樹脂成形体をオートクレーブ中に投入し、二酸化炭素を封入し、50℃、15MPa(超臨界状態)の条件で、3時間含浸させた。その後、オートクレーブ内の温度を20℃まで冷却し、0.1MPa/secの速度で大気圧まで放圧することにより、成形体を得た。得られた成形体の気泡特性、成形体特性を表1−1に示す。
【0086】
(実施例7)
原料樹脂としてポリスチレン樹脂(カネカ(株)製 カネライトPS)40質量部と、気泡増核剤としてステアリン酸バリウム(ナカライテスク(株)製)3質量部を、二軸混練機を用いて、混練温度260℃で混練し、粒子含有組成物を得た。該粒子含有組成物と、希釈用樹脂としてポリスチレン樹脂(カネカ(株)製 カネライトPS)60質量部を、それぞれ100℃で3時間乾燥した。その後、T型口金を備えた押出機に供給し、25℃に冷却したキャスティングドラム上に静電印加を行いながら混練押出・冷却して未発泡樹脂成形体を得た。
【0087】
得られた未発泡樹脂成形体をオートクレーブ中に投入し、二酸化炭素を封入し、80℃、20MPa(超臨界状態)の条件で、3時間含浸させた。その後、オートクレーブ内の温度を50℃まで冷却し、0.1MPa/secの速度で大気圧まで放圧することにより、成形体を得た。得られた成形体の気泡特性、成形体特性を表1−1に示す。
【0088】
(実施例8)
原料樹脂としてポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアプラスチック(株)製 H−4000)80質量部と、ポリトリメチレンテレフタレート(DuPont製 コルテラ ブライト)20質量部を、それぞれ140℃で3時間乾燥した。その後、T型口金を備えた押出機に供給し、25℃に冷却したキャスティングドラム上に静電印加を行いながら混練押出・冷却して未発砲樹脂成形体を得た。
【0089】
得られた未発泡樹脂成形体をオートクレーブ中に投入し、二酸化炭素を封入し、120℃、30MPa(超臨界状態)の条件で、3時間含浸させた。その後、冷却しながら3MPa/secの速度で大気圧まで放圧することにより、成形体を得た。このとき、圧力が20MPaの時点で温度は100℃であった。得られた成形体の気泡特性、成形体特性を表1−1に示す。
【0090】
(実施例9)
原料樹脂としてポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアプラスチック(株)製 H−4000)20質量部と、気泡増核剤としてシリカ粒子(触媒化成(株)製 平均粒径0.06μm)0.1質量部を、二軸混練機を用いて、混練温度280℃で混練し、粒子含有組成物を得た。該粒子含有組成物と、希釈用原料樹脂としてポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアプラスチック(株)製 H−4000)80質量部を、それぞれ140℃で3時間乾燥した。その後、T型口金を備えた押出機に供給し、25℃に冷却したキャスティングドラム上に静電印加を行いながら混練押出・冷却して未発泡樹脂成形体を得た。
【0091】
得られた未発泡樹脂成形体をオートクレーブ中に投入し、窒素を封入し、150℃、20MPa(超臨界状態)の条件で、3時間含浸させた。その後、オートクレーブ内の温度を80℃まで冷却し、1MPa/secの速度で大気圧まで放圧することにより、成形体を得た。得られた成形体の気泡特性、成形体特性を表1−1に示す。
【0092】
(実施例10)
原料樹脂としてポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.65)40質量部を、それぞれ180℃で3時間乾燥した。その後、T型口金を備えた押出機に供給し、25℃に冷却したキャスティングドラム上に静電印加を行いながら混練押出・冷却して未発泡樹脂成形体を得た。
【0093】
得られた未発泡樹脂成形体をオートクレーブ中に投入し、窒素を封入し、100℃、30MPa(超臨界状態)の条件で、24時間含浸させた。その後、オートクレーブ内の温度を50℃まで冷却し、0.01MPa/secの速度で大気圧まで放圧することにより、成形体を得た。得られた成形体の気泡特性、成形体特性を表1−1に示す。
【0094】
(実施例11)
原料樹脂としてPLA(ネイチャーワークス(株)製 4042D)50質量部とPMMA(住友化学(株)製 LG−21)50質量部を、それぞれ80℃で3時間乾燥した。その後、T型口金を備えた押出機に供給し、25℃に冷却したキャスティングドラム上に静電印加を行いながら混練押出・冷却して未発泡樹脂成形体を得た。
【0095】
得られた未発泡樹脂成形体をオートクレーブ中に投入し、二酸化炭素を封入し、60℃、15MPa(超臨界状態)の条件で、3時間含浸させた。その後、オートクレーブ内の温度を50℃まで冷却し、0.1MPa/secの速度で大気圧まで放圧することにより、成形体を得た。得られた成形体の気泡特性、成形体特性を表1−2に示す。
【0096】
(実施例12)
原料樹脂としてPMMA(住友化学(株)製 LG−21)20質量部と、気泡増核剤としてタルク(日本タルク(株)製 平均粒径0.1μm)1質量部を、二軸混練機を用いて、混練温度280℃で混練し、粒子含有組成物を得た。該粒子含有組成物と、希釈用原料樹脂としてPLA(ネイチャーワークス(株)製 4042D)80質量部を、それぞれ80℃で3時間乾燥した。その後、T型口金を備えた押出機に供給し、25℃に冷却したキャスティングドラム上に静電印加を行いながら混練押出・冷却して未発泡樹脂成形体を得た。
【0097】
得られた未発泡樹脂成形体をオートクレーブ中に投入し、二酸化炭素を封入し、70℃、15MPa(超臨界状態)の条件で、2時間含浸させた。その後、冷却しながら、5MPa/secの速度で大気圧まで放圧することにより、成形体を得た。このとき、圧力が10MPaの時点で温度は50℃であった。得られた成形体の気泡特性、成形体特性を表1−2に示す。
【0098】
(実施例13)
原料樹脂としてPLA(ネイチャーワークス(株)製 4042D)40質量部とPMMA(住友化学(株)製 LG−21)60質量部を2台の押出機を直列に接続したタンデム押出機に供給した。押出機の構成は、1台目が、スクリュー長さと口径の比L/D=30、2台目がL/D=20のものを用いた。1台目の押出機においては、L/D=15の地点のスクリューにリング状のシールを施し、L/D=18の地点に発泡剤供給口を設けた。1台目の押出機において220℃で溶融状態とし、ガス供給口より発泡剤として炭酸ガスを11MPaで圧入し、2台目の押出機の設定温度を180℃として押し出した。押出機から押し出された溶融樹脂は、短管を介してフィルタパックで濾過された後、圧力調整弁を経て口金からシート状に成形して吐出した。圧力調整弁直前の溶融樹脂圧力を22MPaになるように設定して、口金から吐出する際、溶解していた炭酸ガスが発泡し、成形体中に多数の気泡を発生させた。口金から押し出されたシートを、口金から1cm離れた位置に設置した表面温度20℃に保たれたキャスティングドラムを用いて急冷固化せしめ巻き取った。得られた成形体の気泡特性、成形体特性を表1−2に示す。
【0099】
(実施例14)
実施例1で得られた未発泡樹脂成形体を、加熱ロールにて温度を上昇させ、予熱温度を110℃、延伸温度を105℃として、長手方向に3.0倍延伸し、次いでテンター式横延伸機にて予熱温度95℃、延伸温度120℃で幅方向に3.1倍延伸し、そのままテンター内にて幅方向に4%の弛緩処理を行いながら、温度230℃で5秒間の熱固定を行い、未発泡樹脂成形体を得た。
得られた未発泡樹脂成形体をオートクレーブ中に投入し、二酸化炭素を封入し、70℃、15MPa(超臨界状態)の条件で、3時間含浸させた。その後、オートクレーブ内の温度を50℃まで冷却し、0.1MPa/secの速度で大気圧まで放圧することにより、成形体を得た。得られた成形体の気泡特性、成形体特性を表1−2に示す。
【0100】
(実施例15)
原料樹脂としてPLA(ネイチャーワークス(株)製 4042D)100質量部を140℃で3時間減圧乾燥した後、T型口金を備えた押出機に供給し、25℃に冷却したキャスティングドラム上に静電印加を行いながら混練押出・冷却して未発泡樹脂成形体(シート)を得た。
【0101】
得られた未発泡樹脂成形体(シート)をオートクレーブ中に投入し、窒素を封入し、65℃、20MPa(超臨界状態)の条件で、4時間含浸させた。その後、オートクレーブ内の温度を40℃まで冷却し、0.1MPa/secの速度で大気圧まで放圧することにより、成形体を得た。得られた成形体の気泡特性、成形体特性を表1−2に示す。
【0102】
(実施例16)
原料樹脂としてPLA(ネイチャーワークス(株)製 4042D)95質量部と原料樹脂としてPMMA(住友化学(株)製 LG−21)5質量部を、それぞれ80℃で3時間乾燥した。その後、T型口金を備えた押出機に供給し、25℃に冷却したキャスティングドラム上に静電印加を行いながら混練押出・冷却して未発泡樹脂成形体を得た。
【0103】
得られた未発泡樹脂成形体をオートクレーブ中に投入し、窒素を封入し、65℃、20MPa(超臨界状態)の条件で、4時間含浸させた。その後、オートクレーブ内の温度を40℃まで冷却し、0.01MPa/secの速度で大気圧まで放圧することにより、成形体を得た。得られた成形体の気泡特性、成形体特性を表1−2に示す。
(実施例17)
原料樹脂としてPLA(ネイチャーワークス(株)製 4042D)100質量部を140℃で3時間減圧乾燥した後、T型口金を備えた押出機に供給し、25℃に冷却したキャスティングドラム上に静電印加を行いながら混練押出・冷却して未発泡樹脂成形体(シート)を得た。
【0104】
得られた未発泡樹脂成形体をオートクレーブ中に投入し、二酸化炭素と窒素を封入し、65℃、20MPa(超臨界状態)の条件で、4時間含浸させた。その後、オートクレーブ内の温度を40℃まで冷却し、0.1MPa/secの速度で大気圧まで放圧することにより、成形体を得た。得られた成形体の気泡特性、成形体特性を表1−2に示す。
【0105】
(実施例18)
原料樹脂としてPLA(ネイチャーワークス(株)製 4042D)100質量部を140℃で3時間減圧乾燥した後、T型口金を備えた押出機に供給し、25℃に冷却したキャスティングドラム上に静電印加を行いながら混練押出・冷却して未発泡樹脂成形体(シート)を得た。
【0106】
得られた未発泡樹脂成形体(シート)をオートクレーブ中に投入し、イソブタンを封入し、65℃、15MPaの条件で、4時間含浸させた。その後、オートクレーブ内の温度を40℃まで冷却し、0.1MPa/secの速度で大気圧まで放圧することにより、成形体を得た。得られた成形体の気泡特性、成形体特性を表1−2に示す。
(比較例1)
原料樹脂としてPLA(ネイチャーワークス(株)製 4042D)40質量部と、気泡増核剤としてタルク(日本タルク(株)製 平均粒径2.5μm)2質量部を、二軸混練機を用いて、混練温度280℃で混練し、粒子含有組成物を得た。該粒子含有組成物と、希釈用原料としてPLA(ネイチャーワークス(株)製 4042D〕60質量部を、それぞれ140℃で3時間乾燥した。その後、T型口金を備えた押出機に供給し、20℃に冷却したキャスティングドラム上に静電印加を行いながら混練押出・冷却して未発泡樹脂成形体を得た。
【0107】
得られた未発泡樹脂成形体をオートクレーブ中に投入し、二酸化炭素を封入し、100℃、30MPa(超臨界状態)の条件で、3時間含浸させた。その後、温度がTg以下に下がらないように加温しながら5MPa/secの速度で大気圧まで放圧することにより、成形体を得た。得られた成形体はもろく、耐撃性に劣るものであった。気泡特性、成形体特性を表1−3に示す。
【0108】
(比較例2)
原料樹脂としてPET−G(DIC(株)製 F82D)100質量部を、140℃で3時間乾燥した。その後、T型口金を備えた押出機に供給し、25℃に冷却したキャスティングドラム上に静電印加を行いながら混練押出・冷却して未発泡樹脂成形体を得た。
【0109】
得られた未発泡樹脂成形体をオートクレーブ中に投入し、二酸化炭素を封入し、70℃、15MPa(超臨界状態)の条件で、3時間含浸させた。その後、0℃まで冷却し、0.1MPa/secの速度で大気圧まで放圧することにより、成形体を得た。得られた成形体には発泡が見られなかった。気泡特性、成形体特性を表1−3に示す。
【0110】
(比較例3)
ポリエチレンテレフタラートフィルム(“ルミラー”(R)S105、厚み25μm:東レ(株)製)のフィルムの一方の面に空気中でコロナ放電処理を施し、メタリングバー(#12)を用いて、塗液1をコーティングした後、160℃に設定した熱風乾燥機で発泡処理をして、厚み29μmの成形体を得た。得られた成形体の軽量性は不十分であった。気泡特性、成形体特性を表1−3に示す。
・塗液1
水68質量部
ウレタンアクリレート(大日本インキ(株)製 AP201)15質量部
アゾジカルボンアミド(分解開始温度126℃、分解ピーク温度143℃)15質量部
界面活性剤(信越化学製 4051F)2質量部
(比較例4)
実施例15においてキャスティングドラムを口金から3cmの位置に移動し、表面温度を25℃に変更した以外は実施例15と同様の方法で未発泡樹脂成形体を作成した。得られた成形体はもろく、耐衝撃性におとるものであった。泡特性、成形体特性を表1−3に示す。
【0111】
【表1−1】

【0112】
【表1−2】

【0113】
【表1−3】

【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、内部に複数の微細気泡を含有した成形体を得ることができる微細発泡樹脂成形体に関するもので、特に押出成形性、射出成形性に優れる発泡性組成物に関するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を主として含む、短径が30μm以上の成形体であり、1000個/mm以上の気泡を含有し、かつ、気泡径0.5μm未満の気泡数が気泡数全体の30%以上である、成形体。
【請求項2】
光線透過率が50%以上である請求項1に記載の成形体。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂が、メタクリル酸系樹脂および/又はポリ乳酸系樹脂である請求項1または2に記載の成形体。
【請求項4】
熱可塑性樹脂を主として含む、短径が30μm以上の成形体の製造方法であって、
熱可塑性樹脂と発泡剤の混合物を、Tg−5度以上Tm−20度以下(Tgとは、熱可塑性樹脂のガラス転移温度を意味する。Tmとは、熱可塑性樹脂の融点を意味する。)、3MPa以上70MPa以下にする工程1、Tg−5度より低い温度まで冷却する工程2、大気圧まで放圧する工程3、を有する成形体の製造方法。
【請求項5】
前記工程3において放圧するに際し、放圧速度が0.001MPa/sec以上5MPa/sec未満であることを特徴とする、請求項4に記載の成形体の製造方法。
【請求項6】
前記工程1から工程3の放圧までの間において、発泡剤が超臨界状態であることを特徴とする請求項4又は5に記載の成形体の製造方法。

【公開番号】特開2010−222566(P2010−222566A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30921(P2010−30921)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】