説明

樹脂成形体の成形金型装置

【課題】油圧シリンダーを用いずに一方のパンチングブロックを可動構造にすることができる樹脂成形体の成形金型装置の提供を図る。
【解決手段】ガススプリング6によってコア型1の型面1Aから突出配置された可動側のパンチングブロック3は、型締め・射出工程でキャビティ型2の型面2Aに設けた固定側のパンチングブロック4により押圧されて後退移動する。これにより、ガススプリング6の大きなばね力によってパンチングブロック3,4の圧接状態が維持され、樹脂成形体D・Tに多数の穿孔を有する多孔部Gの成形が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形体の成形金型装置、とりわけ、スピーカーグリルのような多数の穿孔を有する多孔部を一体に設けた樹脂成形体の成形に供して好適な成形金型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スピーカーグリルを一体に設けた車両用ドアトリムの成形金型装置として、一対の金型の各型面に、スピーカーグリルを成形するためのパンチングブロックを対向的に配設し、一方のパンチングブロックを、他方のパンチングブロックに対して接・離可能な可動構造とした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−260184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の開示技術では、一方の金型の内部に油圧シリンダーを配設し、この油圧シリンダーによって上述の一方のパンチングブロックを進・退作動させるようにしている。
【0005】
このように、パンチングブロックを油圧シリンダーによって進・退作動させるようにした場合、パンチングブロックのサイズが大きな場合には、作動力を高めるために油圧シリンダーを大型化する必要がある。
【0006】
このため、金型内における油圧シリンダーの占有面積が大きくなって、パンチングブロックに付設するエジェクターピンや、パンチングブロックの移動ガイド手段を構成するガイドピンおよびガイドブッシュのレイアウトが困難になってしまう。
【0007】
また、この金型装置を用いてスピーカーグリルを一体に設けた車両用ドアトリムを、スピーカーグリルを除いた一般部分を発泡成形するコアバック成形法によって射出発泡成形する場合、金型の型締め、およびコアバックに同期してパンチングブロックの油圧シリンダーを作動制御する必要があって、制御回路構成が複雑となってしまうことは否めない。
【0008】
そこで、本発明は油圧シリンダーを用いることなく一方のパンチングブロックを可動構造とすることができると共に、コアバック成形法の採用が可能な樹脂成形体の成形金型装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の樹脂成形体の成形金型装置は、型開閉手段によって型締め,型開きされる一対の金型の各型面に、樹脂成形体の多孔部を形成するためのパンチングブロックを対向的に配設し、一方のパンチングブロックを、他方のパンチングブロックに対して接・離可能な可動構造とした構成であって、この可動側のパンチングブロックを、一方の金型内に配設したガススプリングによって、該一方の金型の型面から突出して配置し、型締め・射出工程で他方のパンチングブロックと当接して押圧されることにより、該一方の金型内に後退移動可能としたことを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ガススプリングによって一方の金型の型面から突出配置された可動側のパンチングブロックは、型締め・射出工程で他方の固定側のパンチングブロックにより押圧されて後退移動する。これにより、ガススプリングの大きなばね力(反力)によって、両パンチングブロックの圧接状態が維持され、これらパンチングブロックに対応した部分に多数の穿孔を有する多孔部の成形が可能となる。
【0011】
ガススプリングは、大きなばね力が得られる割に小型であるため、金型内の占有面積を極力小さくすることができる。従って、可動側パンチングブロックのエジェクターピン等の付設部分の配設レイアウトの自由度を高めることができる。
【0012】
また、ガススプリングのばね力で両パンチングブロックの圧接状態を維持できるため、コアバックにより発泡空間を形成して充填樹脂材を発泡成形するコアバック成形法の採用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の成形金型装置の一実施形態を(A)〜(D)にて工程順に示す断面説明図。
【図2】可動側のパンチングブロックを示す略示的外観斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面と共に詳述する。
【0015】
図1に示す本実施形態の成形金型装置は、汎用の型開閉手段によって型締め,型開きされる一対の金型、例えば、コア型1とキャビティ型2とを備えている。
【0016】
コア型1およびキャビティ型2の各型面1A,2Aの所要部位には、例えば、車両用ドアトリムのスピーカーグリル部のような、樹脂成形体D・Tに多孔部Gを形成するためのパンチングブロック3,4を対向的に配設してある。
【0017】
パンチングブロック4は、キャビティ型2に固定してある一方、パンチングブロック3は、パンチングブロック4に対して接・離可能なようにコア型1に可動的に配設してある。
【0018】
パンチングブロック3,4は、それらの型面に多数の突起3a,4aを対向的に形成してあり、対向する一対の突起3a,4aの突き合わせによって上述の多孔部Gにおける穿孔を成形する。
【0019】
パンチングブロック3は、コア型1に設けた凹部5Aに摺動可能に収容配置してある。凹部5Aの底部には複数のガススプリング6を埋設してある。そして、このガススプリング6の作動ロッド6aの端部をパンチングブロック3の底面に連結もしくは突き当てて、該ガススプリング6のばね力によってパンチングブロック3を突出方向に付勢している。
【0020】
これにより、常態にあってはパンチングブロック3をコア型1の型面1Aから突出して配置し、型締め・射出工程でキャビティ型2の固定側のパンチングブロック4と当接して押圧されることにより、該パンチングブロック3がガススプリング6のばね力に抗してコア型1内に後退移動するようにしている。
【0021】
また、パンチングブロック3は、凹部5Aの開口周縁部と、該パンチングブロック3の外周面とに設けたストッパー手段7A,7B相互の係止によって突出が規制される進出位置と、型締め時に凹部5Aの底面に底付きする後退位置と、に移動範囲が規制されている。
【0022】
このパンチングブロック3の進・退作動は、該パンチングブロック3の底面に植設した複数のガイドピン8と、凹部5Aの底面に設けたピン受容孔9の開口部に嵌装固定したガイドブッシュ10とによって摺動ガイドするようにしている。
【0023】
コア型1の底面側には、凹部5Aに対応して凹部5Bを形成してあり、ここに複数のエジェクターピン11を植設したエジェクタープレート12を収容配置してある。
【0024】
エジェクターピン11は、コア型1およびパンチングブロック3をそれぞれ貫通したピン受容孔13に挿入配置してある。
【0025】
エジェクタープレート12は、図外の型盤に設けた油圧シリンダー14によって進・退作動され、該エジェクタープレート12の進・退作動は、凹部5Bの底面に植設した複数のガイドピン15と、エジェクタープレート12に貫通固定したガイドブッシュ16とによって摺動ガイドするようにしている。
【0026】
このパンチングブロック3と、エジェクターピン11およびエジェクタープレート12等の関連構成を図2に略示的に斜視図として示している。
【0027】
以上の構成よりなる成形金型装置を用いて、コアバック成形法によって樹脂成形体D・Tを射出発泡成形する場合を、図1により詳述する。
【0028】
図1(A)は、コア型1とキャビティ型2とが型開きされた状態を示している。この状態では、パンチングブロック3はガススプリング6のばね力によって、コア型1の型面1Aより突出した進出位置にある。
【0029】
図1(B)は型締め・射出工程を示しており、この工程の過程ではキャビティ型2のパンチングブロック4が上述の進出位置にあるパンチングブロック3と当接してこれを押圧する。型締め位置では該パンチングブロック3をガススプリング6のばね力に抗して凹部5の底面に底付きする後退位置にまで押圧移動させる。
【0030】
発泡性溶融樹脂材料Mは、例えば、パンチングブロック3,4が当接する直前でキャビティ内に射出充填され、パンチングブロック3,4間では、パンチングブロック3が凹部5に底付きすることによってバリ切りが行われる。
【0031】
図1(C)はコアバック工程を示しており、図1(B)の型締め状態からコア型1を所定量キャビティ容積を拡大する方向、即ち、型開き方向に後退移動する。これにより、パンチングブロック3と4がガススプリング6のばね力によって圧接した状態を維持したまま、コア型1とキャビティ型2との間に所要の発泡空間Sが形成される。この発泡空間Sにて上述の射出充填された発泡性溶融樹脂材料Mが発泡成形される。パンチングブロック3,4が圧接した部分では、発泡性溶融樹脂材料Mの発泡が抑えられ、突起3a,4aの突き合わせによって穿孔を成形した多孔部Gを成形する。
【0032】
図1(D)は樹脂成形体D・Tの型抜き工程を示しており、コア型1とキャビティ型2とを型開きして、エジェクターピン11の進出作動により、樹脂成形体D・Tを型抜きする。
【0033】
以上のように本実施形態の成形金型装置によれば、ガススプリング6によってコア型1の型面1Aから突出配置された可動側のパンチングブロック3は、型締め・射出工程でキャビティ型2の型面2Aに設けた固定側のパンチングブロック4により押圧されて後退移動する。
【0034】
これにより、ガススプリング6の大きなばね力(反力)によって、両パンチングブロック3,4の圧接状態が維持される。
【0035】
この結果、樹脂成形体D・Tには、相互に圧接したパンチングブロック3,4に対応した部分に多数の穿孔を有する多孔部Gの成形が可能となる。
【0036】
ここで、ガススプリング6は、大きなばね力が得られる割に小型であるため、コア型1内の占有面積を極力小さくすることができる。従って、可動側のパンチングブロック3のガイドピン8,エジェクターピン11等の付設部品の配設レイアウトの自由度を高めることができる。
【0037】
また、パンチングブロック3は、ストッパー手段7A,7Bによってガススプリング6のばね力による進出位置を規制しているため、型開きした際の遊動を回避できる。一方、後退位置はコア型1の凹部5の底面に底付きして規制されるので、型締め時におけるパンチングブロック3,4間でのバリ切り精度を出すことができる。
【0038】
そして、上述のようにガススプリング6のばね力でパンチングブロック3,4の圧接状態を維持できるため、コアバックにより発泡空間Sを形成して、充填樹脂材を発泡成形するコアバック成形法の採用が可能で、多孔部G以外の一般部分が発泡した、要求に応じた樹脂成形体D・Tを得ることができる。
【符号の説明】
【0039】
1…コア型(一方の金型)
2…キャビティ型(他方の金型)
1A,2A…型面
3…可動側(一方)のパンチングブロック
4…固定側(他方)のパンチングブロック
5A…凹部
6…ガススプリング
7A,7B…ストッパー手段
D・T…樹脂成形体
G…多孔部
S…発泡空間
M…発泡性溶融樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型開閉手段によって型締め,型開きされる一対の金型の各型面に、樹脂成形体の多孔部を形成するためのパンチングブロックを対向的に配設し、一方のパンチングブロックを、他方のパンチングブロックに対して接・離可能な可動構造とした構成であって、
前記可動側のパンチングブロックを、一方の金型内に配設したガススプリングによって、該一方の金型の型面から突出して配置し、型締め・射出工程で他方のパンチングブロックと当接して押圧されることにより、該一方の金型内に後退移動可能としたことを特徴とする樹脂成形体の成形金型装置。
【請求項2】
前記可動側のパンチングブロックは、ストッパー手段によって突出が規制される進出位置と、該可動側のパンチングブロックを収容した前記一方の金型の凹部底面に底付きする後退位置と、に移動範囲が規制されていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形体の成形金型装置。
【請求項3】
前記一方の金型が、発泡性溶融樹脂の充填後に、キャビティ容積を拡大する方向に移動して、発泡空間を形成するようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂成形体の成形金型装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−236373(P2012−236373A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107790(P2011−107790)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】