説明

樹脂成形品の成形方法

【課題】成形過程で生じた不要物を容易に除去することが可能な樹脂成形品の成形方法を提供することである。
【解決手段】樹脂を成形型に導入して成形物を成形する樹脂成形品10の成形方法において、一部に切削刃部4を有した置き子1を成形型の中に設置し、その状態で成形型に樹脂を導入し、成形物を成形した後に脱型し、置き子1を回転させることにより、樹脂成形品10の一部である薄バリ部35を切削し、成形過程で生じた不要物である薄バリ部35を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品の成形方法に関し、さらに詳細には、樹脂を成形型に導入して成形物を成形する樹脂成形品の成形方法に関する。本発明は、洗面台用品、台所用品、浴槽等の樹脂成形品の成形に有用なものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂製の洗面台や台所用天板、浴槽等は、従来のステンレススチールやホーロー、陶器製のものと比べ、軽くて丈夫であり、さらに意匠性に優れることから、益々その需要は高まっている。
【0003】
図2(a)は樹脂製の洗面台の一例を示す斜視図、図2(b)は図2(a)の洗面台の排水口部分の断面図である。図2(a)に示す洗面台89は、水槽90と一体型の洗面台であり、成形型(生型)に樹脂を注入して成形されたものである。図2(b)に示す排水口91は、「置き子」と呼ばれる鋳型(中子)を用いることにより形成される。
【0004】
図3(a),(b)は、それぞれ置き子を示す斜視図と断面図である。図3(a),(b)に示す置き子70は突起部71を備え、突起部71に対向する端面72の縁にはエッジ73を有している。エッジ73は、後述する薄バリ部97を除去し易くするためのものである。なお、図3(a),(b)では、置き子70は使用時の姿勢とは天地逆に描かれている。
【0005】
図4(a)〜(c)に水槽90と排水口91の成形手順を示す。まず図4(a)に示すように、上型21と下型22から構成された成形型20の中に置き子70を設置する。この状態で成形型20に樹脂30を流し込む(樹脂注入工程)。すると、成形型20内の空気はエアーパイプ25から排出される。このとき、成形型20の上型21と置き子70との間に若干の隙間Sが生じ、この隙間Sにも樹脂30が入り込む。この状態で樹脂30が固まると成形品である水槽90が成形され、隙間Sに入り込んだ樹脂30は薄バリ部97となる。薄バリ部97は、成形過程で生じた不要物である。
【0006】
続いて、図4(b)に示すように、成形型20から水槽90を脱型し、置き子70に当てた治具75をハンマー等で叩く(バリ取り工程)。すると、図4(c)に示すように、置き子70と共に薄バリ部97が打ち抜かれ、水槽90が成形される。そして、水槽900から置き子70を外して得られた空間が、排水口91となる。
【0007】
その他の例として、置き子(中子)を用いた樹脂成形品の成形方法が、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−193178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、置き子70のエッジ73は、前述のとおり、成形過程で生じた不要物である薄バリ部97を除去し易くするためのものであり、鋭利な形状をなしている。ところが、製造現場において、何百回と樹脂成形に置き子70を用いる内に、エッジ73が摩耗し丸味を帯びてくる。摩耗したエッジ73では薄バリ部97を上手く抜けず「排水口91」まで損傷する場合があり、製品の歩留まりの低下を招く。
【0010】
そこで、本発明は、成形過程で生じた不要物を容易に除去することが可能な樹脂成形品の成形方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、樹脂を成形型に導入して成形物を成形する樹脂成形品の成形方法において、一部に切削刃部を有した置き子を成形型の中に設置し、その状態で成形型に樹脂を導入し、成形物を成形した後に脱型し、置き子を回転させることにより成形物の一部を切削することを特徴とする樹脂成形品の成形方法である。
【0012】
本発明の樹脂成形品の成形方法は、樹脂を成形型に導入して成形物を成形する樹脂成形品の成形方法において、一部に切削刃部を有した置き子を成形型の中に設置し、その状態で成形型に樹脂を導入するものであり、成形物を成形した後に脱型し、置き子を回転させることにより成形物の一部を切削するものである。本発明の樹脂成形品の成形方法は、成形過程で生じた不要物を容易に除去することが可能となるものである。
【0013】
「切削刃部を有した置き子」とは、従来の単に「鋭利なエッジを持つ置き子」ではなく、切削をするための刃部を有することを指している。また、「成形物の一部を切削」とは、成形物のバリ部を切削することを指している。すなわち、従来の単に「置き子を打ち抜く」のではなく、「切削刃部を有した置き子」を「回転させる」ことにより切削する。このために、成形物の不要物であるバリ部のみの除去を、切削部以外に影響を及ぼすことなく容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の樹脂成形品の成形方法によれば、成形物の不要物であるバリ部のみの除去を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は本発明の実施形態に係る樹脂成形品の成形方法に用いる置き子を示す斜視図であり、(b)は(a)の置き子を用いた樹脂成形品の成形方法(バリ取り工程)を説明する断面図である。
【図2】(a)は樹脂製の洗面台を示す斜視図であり、(b)は(a)の洗面台の排水口を示す断面図である。
【図3】(a)は従来の樹脂成形品の成形方法に用いる置き子を示す斜視図であり、(b)は(a)の置き子の断面図である。
【図4】水槽と排水口の成形手順を説明する断面図であり、(a)は樹脂注入工程、(b)はバリ取り工程、(c)はバリ取り工程直後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明の樹脂成形品の成形方法の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明は、実施形態の理解を容易にするためのものであり、これによって、本発明が制限して理解されるべきではない。
【0017】
まず、本発明の実施形態に係る樹脂成形品の成形方法に用いる置き子1の構成について説明する。図1(a)に示す天地逆に描写した置き子1は、突起部2を備え、突起部2に対向する端面3の縁には切削刃部4を備えている。置き子1は耐摩耗性に優れた金属で形成することが好ましい。切削刃部4はノコギリ刃形状であることが好ましく、耐摩耗性を高くするために、焼き入れ処理することが好ましい。なお、切削刃部4は、図1(a)において、連続したノコギリ刃を描写しているが、不連続のノコギリ刃であっても良く、ノコギリ刃でなくても構わない。
【0018】
つぎに、本発明の実施形態に係る樹脂成形品10の成形方法について説明する。樹脂成形品10の成形方法は基本的に図4で説明した成形手順とほぼ同一であるが、樹脂成形に用いる置き子の構成と、バリ取り工程で置き子を回転させる点が前記手順とは異なる。
【0019】
まず、樹脂注入工程について、図4(a)を用いて説明する。図4(a)の樹脂注入工程では、一部に切削刃部4を有した置き子1を成形型20の中に設置し、その状態で成形型20に樹脂30を導入する。この時、成形型20内の空気は、エアーパイプ25から排出されるが、成形型20の上型21と置き子1との間に若干の隙間Sが生じ、この隙間Sにも樹脂30が入り込む。
【0020】
この状態で樹脂30を硬化させると、成形物である水槽90が成形される。さらに隙間Sに入り込んだ樹脂30は薄バリ部35となる。
【0021】
そして、成形型20から水槽90を脱型する。脱型した水槽90には置き子1が着いたままである。
【0022】
この状態で、図1(b)のバリ取り工程において、置き子1を回転させると、置き子1に備えられた切削刃部4が回転し、水槽90の不要物である薄バリ部35のみを切削する。すなわち、切削刃部4により、薄バリ部35を容易に除去することができ、樹脂成形品10が成形される。
【0023】
以上のように本発明の実施形態に係る樹脂成形品10の成形方法では、水槽90(樹脂成形品10)自体を損傷することなく、薄バリ部35のみを容易に除去することができる。
【0024】
本実施形態では、置き子1の一部(端面3の縁)に切削刃部4を備える例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、置き子1の端面3の全体に切削刃部4を備えても構わない。
【0025】
樹脂30については、例えば高級感のある人造大理石樹脂や、撥水性に優れ、且つ高強度の有機ガラス系素材を用いることが好適である。このことにより、樹脂成形品10に高級感を出すことが可能であり、或いは汚れがつきにくく高強度な成形品となる。
【0026】
ちなみに、人造大理石樹脂には、アクリル樹脂に無機物等を混入させたアクリル系人造大理石樹脂や、ポリエステル樹脂に無機物等を混入させたポリエステル系人造大理石樹脂等があるが、耐衝撃性と耐熱性に優れたアクリル系人造大理石樹脂を用いることが望ましい。
【符号の説明】
【0027】
1 置き子
4 切削刃部
10 樹脂成形品
20 成形型
30 樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を成形型に導入して成形物を成形する樹脂成形品の成形方法において、一部に切削刃部を有した置き子を成形型の中に設置し、その状態で成形型に樹脂を導入し、成形物を成形した後に脱型し、置き子を回転させることにより成形物の一部を切削することを特徴とする樹脂成形品の成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−67995(P2011−67995A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219831(P2009−219831)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】