説明

樹脂成形部品および樹脂成形用金型

【課題】 薄肉部の裏面にリブ状突起を設けた樹脂成形部品の表面に発生する色ムラ、艶ムラ、曇り等を防止する事を課題とする。
【解決手段】 ゲートから樹脂を注入して成形される、薄肉部を有する樹脂成形部品において、前記薄肉部の裏面にリブ状突起を有し、少なくとも前記ゲートの周辺部に形成される前記リブ状突起は、複数の板状突起がそれぞれ離間して配されたものであって、前記複数の板状突起のそれぞれが、前記それぞれの板状突起の底面の長辺上の点とゲートを結ぶ線と、前記底面の長辺とのなす角度が、一定範囲内になるように配置されている事を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薄肉面の裏面にリブ状突起を設けた樹脂成形部品において、射出成形時に裏面のリブ状突起によりその表面部に白スジ等の悪影響が発生しないリブ状突起形状を有する樹脂成形部品および樹脂成形用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形部品の薄肉部の裏面には補強のため、あるいは、他の部品を取り付ける際の位置決め等の目的でリブ状突起が設けられている。
【0003】
射出成形時、前記薄肉成形部品を成形するための成形金型のキャビティに、射出ゲートより注入された樹脂は、前記リブ状突起部でその流れが乱される。その影響で前記リブ状突起の表面側である樹脂成形部品の薄肉部の表面に、色ムラ、艶ムラ、曇り、ヒケ、等が発生する場合がある。
【0004】
この色ムラ、艶ムラ、曇り、ヒケ、等を回避する手段として、成形時に樹脂の流れに乱れが生じる部分のリブをカットして乱れを防ぐ方法が提案されている(特許文献1)。また、特に樹脂の流れが乱されやすいリブの交差部とリブを設けた面との間に空隙を設けること(特許文献2)、リブの付け根部のリブ厚をリブ先端部より薄くする方法(特許文献3)も提案されている。
【0005】
さらにリブ状突起を成形するキャビティにガスベントを設けた金型を用い、金型温度を60℃〜樹脂の射出温度にして成形し、さらに薄肉部の肉厚をリブの厚みに対して2.7倍以上にすること(特許文献4)も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001‐171455
【特許文献2】特開平7‐276445
【特許文献3】特開2009‐29252
【特許文献4】特開2009‐45918
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし近年、装置の外観面を意匠性の高い光沢面、鏡面、高品位のシボ面とした樹脂成形部品、また、光学装置では画像等を反射させるような高機能な鏡面の樹脂成形部品等の要請が高くなってきている。
【0008】
前記特許文献1〜3に記載の方法では、これらの意匠性の高い外観面におけるムラ等の抑制効果は十分ではない。
【0009】
また、特許文献4に記載の方法では、金型温度を高くした場合、冷却時間を長くする必要があり成形サイクルタイムが長くなる。リブの最低必要な厚さに対して光沢面を形成する薄肉部の肉厚を2.7倍以上とすると薄肉部の肉厚が必要以上に厚くなってしまい、樹脂の使用量が増えてコストと製品重量が増加すると共に冷却に要する時間も長くなる。また、金型から取り出した後にも継続する樹脂の収縮量が大きくなり、全長の変化、そり量の変化など別の課題も生じてしまう。反対に薄肉部の肉厚を必要最小限とした場合には、リブの肉厚を薄くする必要があり、リブの機能に必要な肉厚が確保できなくなってしまう。このような場合には、一体成形は断念し、リブに相当する部材を接着、溶着により成形体に取付けなければならなかった。
【0010】
本発明は薄肉部の裏面にリブ状突起を設けた樹脂成形部品の表面に発生する色ムラ、艶ムラ、曇り等を防止する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する樹脂成形部品は、ゲートから樹脂を注入して成形される、薄肉部を有する樹脂成形部品において、前記薄肉部の裏面にリブ状突起を有し、前記リブ状突起は、複数の板状突起がそれぞれ離間して配されたものであって、前記複数の板状突起は、該板状突起の長辺が異なる方向を向いて配置されている事を特徴とする。
【0012】
また、上記課題を解決する樹脂成形部品は、ゲートから樹脂を注入して成形される、薄肉部を有し、前記薄肉部の裏面に、格子状のリブ状突起が配置された樹脂成形部品において、前記リブ状突起と平行であって、且つ前記ゲートを横切る一定範囲以外に、前記リブ状突起が配置されていることを特徴とする。
【0013】
また、上記課題を解決する樹脂成形用金型は、ゲートと、薄肉部およびリブ状突起を有するキャビティとを有する樹脂成形用金型において、前記リブ状突起は、複数の板状突起がそれぞれ離間して配されたものであって、前記複数の板状突起は、該板状突起の長辺が異なる方向を向いて配置されている事を特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、裏面にリブ状突起部を有する薄肉部の、表面に発生する色ムラ、艶ムラ、曇り等を防止し、意匠性が高い樹脂成形部品を成形する事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を適用する原稿読取装置を備えた複合型プリンターの斜視図
【図2】本発明を適用した原稿カバーを開いた状態の斜視図
【図3】本発明を適用した原稿カバーの第一の実施形態の平面図
【図4】樹脂の流れがリブ状突起に直角の場合を説明する断面図
【図5】樹脂の流れがリブ状突起に並行の場合を説明する断面図
【図6】樹脂の流れがリブ状突起に斜めの場合を説明する断面図
【図7】本発明を適用した原稿カバーの第二の実施形態の平面図
【図8】本発明を適用した原稿カバーの第三の実施形態の平面図
【図9】従来の原稿カバーの平面図
【図10】リブ状突起の樹脂流れ方向との角度に対する白スジ目視データ
【図11】板状突起の概略図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本願発明者は鋭意検討した結果、リブ状突起部を有する薄肉部の表面に発生する色ムラ、艶ムラ、曇り等の発生原因を突き止めることに成功した。まず、このムラ等の発生原因について図4乃至図6を用いて説明する。
【0017】
図4は従来の樹脂成形部品を成形するための樹脂成形用金型のキャビティの断面の概略図を示した図である。図4(a)において、21は、樹脂成形部品の薄肉部を形成するためのキャビティの薄肉部、22は、樹脂成形部品の薄肉部の裏面側に設けられたリブ状突起を形成するためのキャビティのリブ状突起部である。また、23は、金型のキャビティに樹脂を注入するためのゲートから注入された樹脂を示す。図4(b)はリブ状突起部22のA−A断面を示した図であり、リブ状突起部22は紙面と直角方向に奥行きを有し、紙面の直角方向にリブ状突起部22の長辺が形成され、紙面と平行方向に短辺が形成されている。
【0018】
図4(a)は、樹脂成形用金型のキャビティの断面図であって、リブ状突起部および薄肉部の断面を示した図である。リブ状突起部の長辺と垂直に交わる断面の図を示す。ゲートから注入された樹脂23が、紙面と平行に薄肉部を流れ、図中の矢印に示す方向(リブ状突起部22の長辺方向に対して垂直方向)に、リブ状突起部22に流れ込む様子を示している。図中の矢印で示した方向に流れて来た樹脂が、リブ状突起部22に差しかかったところで、樹脂23の一部がリブ状突起部22に充填され始める。この時、急激に肉厚が変化するため、樹脂23の流れに乱れが発生する。このため、薄肉部21の表面側の樹脂成形部品の表面である薄肉部表面24の樹脂圧力が低圧力となり薄肉部表面24に凹状のガス溜り25が発生する。リブ状突起部22の厚さ(短辺の長さ)は、厚くしすぎると充填時に溶融している樹脂23が冷却されて固まる際に成形収縮してリブ状突起部22の表面側の薄肉部表面24に引けが発生してしまうため、必要最小限の厚さとしなければならない。このため、樹脂圧力が低下する部分が局所的となるために前記ガス溜り25のガスは保圧を与えても完全には除去することができず、残ってしまい、ムラ等が発生してしまう。
【0019】
図5は、樹脂成形用金型のキャビティの断面図であって、リブ状突起部および薄肉部の断面を示した図である。ゲートから注入された樹脂23が、薄肉部を流れ、紙面手前から紙面奥の方向(リブ状突起部22の長辺方向に対して平行方向)に、リブ状突起部22に流れ込む様子を示している。ゲートから注入された樹脂23が、キャビティの薄肉部21の狭い空間を、紙面手前より紙面奥に向かって流れる。そして、リブ状突起部22に差しかかったところで樹脂23の一部がリブ状突起部22に充填され始める。この時、急激に肉厚が変化するため、樹脂23の流れに乱れが発生する。このため、薄肉部21の表面側の樹脂成形部品の表面である薄肉部表面24の樹脂圧力が低圧力となり薄肉部表面24に凹状のガス溜り25が発生する。リブ状突起部22が厚さが薄い(短辺の長さが短い)ため、樹脂圧力が低下する部分が局所的となるために前記ガス溜り25のガスは保圧を与えても完全には除去することができず、残ってしまい、ムラ等が発生してしまう。
【0020】
そこで、本発明は、ゲートから注入された樹脂23が、リブ状突起部22の長辺方向に対して斜め方向に流れ込むようにすることにより、薄肉部表面24に発生するムラ等を軽減するものである。
【0021】
図6は、樹脂成形用金型のキャビティの断面図であって、リブ状突起部および薄肉部の断面を示した図である。図6においては、リブ状突起部の長辺に対して30度の角度で交わる断面の図を示すが、この角度に限るものではない。ゲートから注入された樹脂23が、紙面と平行に薄肉部を流れ、リブ状突起部22の長辺方向に対して斜め方向(リブ状突起部の長辺に対して30度の角度の方向)から、リブ状突起部22に流れ込む様子を示している。図6に示すように、ゲートから注入された樹脂23が、キャビティの薄肉部21の狭い空間を流れてきて、図中の矢印のごとくリブ状突起部22に差しかかったところで樹脂23の一部が前記リブ状突起部22に充填され始める。しかし、樹脂23はリブ状突起部22の長辺方向に対し30度の方向から流れ込んでいるため、樹脂の流れ方向に対するリブの厚さが厚くなる。したがって薄肉部21の表面側の樹脂成形部品の表面である薄肉部表面24の樹脂圧力が低圧力となる部分が局所的にならず、また圧力の低下も少なくなるため、薄肉部表面24に凹状のガス溜まり25が発生しにくくなることを見出したものである。
【0022】
(第一の実施の形態)
次に、本発明に係る樹脂成形部品を実施するための第一の実施形態を、原稿読取装置を備えた複合型プリンターを一例として、図面を用いて説明する。
【0023】
図1は本発明を適用する原稿読取装置を備えた複合型プリンターの斜視図を示す。1は複合型プリンターであり、本体筐体2及び原稿カバー3が黒色の樹脂で成形されている。また、表面は鏡面となっている。本実施形態では鏡面としたが、その他、意匠性の高い光沢面、高品位のシボ面においても同様の効果を得ることができる。原稿カバー3は裏面にリブ状突起を有する薄肉の樹脂成形部品で構成され、本発明が適応される。
【0024】
図2は原稿カバー3を開いた状態の原稿カバーの裏面の斜視図を示す。図示していないプリンター機構は、本体筐体2の下部に配置されており、上部には原稿読取装置が配置されている。4はガラスで作られた原稿台であり、原稿台4の下部にはラック装置5が設けてある。原稿を読み取る際には、図示していない画像センサーがラック装置5に沿って走査され原稿を読み取る。原稿は読み取り面を下向きに前記原稿台4に載置して原稿カバー3を閉じて原稿を原稿台に隙間無く密着させる。
【0025】
原稿カバー3の原稿台4と対向する面には、リブ状突起が設けられている。この複数のリブ状突起6の先端に、図示していない発泡ウレタンフォームに白色のPETシートを張り合わせた原稿押えパッドが、発泡ウレタンフォーム側を両面接着シート等でリブ状突起6に貼られる。原稿押えパッドは、読み取り原稿の前面を押えられるように、読み取り原稿よりも大きな面積になるように構成されている。原稿を読み取る際には原稿台4に原稿を載置し、原稿カバー3を閉じることで、前記原稿押えパッドにより、原稿は、隙間無く原稿台4に密着され、ムラなく全面にピントが合った読み取りが可能となる。複数のリブ状突起6の先端が形成する面は、原稿カバー3を閉じた時には、原稿台4とほぼ平行になるようになっている。さらに複数のリブ状突起6は、前記の原稿押えパッドを原稿台に均一に押し付けられるように、概ね均等の間隔を持って配置されている。
【0026】
次に、図3を用いて、本発明が適応される原稿カバー3について説明する。図3は、原稿台と対向する面の平面図を示すものである。
図3において、8は、樹脂成形部品の薄肉部である。本実施形態においては、原稿カバー3の薄肉部を示す。7は、原稿カバー3を射出成形する際に溶融した樹脂を注入するゲートである。本実施形態においては原稿カバー3の薄肉部8のほぼ中央部に設けている例を示す。ゲート7から注入された樹脂は、図中の矢印のごとくゲート位置を中心に原稿カバー3の薄肉部8を放射状に流れていく。
【0027】
薄肉部8は、原稿押えパッドを均一に平面に保持するための、複数のリブ状突起が設けられている。リブ状突起6は、複数に分割して設けられている。そして、ある一定の間隔を持つように、それぞれが離間して配置され、それぞれが異なる方向を向いて配置されている。成形条件の変化等による樹脂の流れの不安定化等によって表面にスジが発生してしまう場合がある。本実施形態のように、リブ状突起6を、適当な長さで分断し、それぞれを離間して配置すると、このスジを目立たなくすることができる。
【0028】
次に、リブ状突起6について、図11を用いて説明する。図11(a)は、図3の、丸で囲んだB部におけるリブ状突起のC−C断面を示す図である。図11(b)はその上面図である。断面が長辺と短辺からなる長方形を持つ、板状の突起部が薄肉部から突出して形成されている。この板状のリブ状突起を本明細書においては板状突起と呼び、根元部(薄肉部と接している部分の断面)を底面、その反対側を上面と呼ぶことにする。リブ状突起を分割して形成しているため、それぞれが異なる方向を向くように配置することができる。つまり、全ての板状突起6の長辺と樹脂流動方向とが一定の角度を保つように配置することが可能になる。
【0029】
長辺の長さ17は、成形部品の表面(意匠面)の見栄えと、リブとしての機能の確保を考慮して、10mm以上30mm以下が好ましい。原稿カバーとして用いる場合、板状突起6の長さを10mmより短くすると、板状突起6の先端が前記の原稿押えパッドの発泡ウレタンフォームに食い込んでしまう場合がある。また、板状突起6の長さが30mmより長くなると成形部品の表面(意匠面)に白ずんだスジが発生する可能性がある。
【0030】
図3に戻り説明を続ける。少なくともゲート周辺部に形成されている板状突起6のそれぞれは、樹脂の流れ方向と、板状突起6の底面の長辺とのなす角度が一定範囲内になるように配置されている。樹脂は、ゲート7を中心に放射状に流れていくので、樹脂の流れ方向と、板状突起6の底面の長辺17とのなす角度は、板状突起6の底面の長辺上の点とゲートを結ぶ線と、前記底面の長辺との成す角度に等しくなる。少なくともゲート周辺部に形成されている板状突起6のそれぞれは、板状突起6の底面の長辺上の点とゲートを結ぶ線と、前記底面の長辺との成す角度が、10度以上80度以下の範囲となるように配置されている。本明細書においては、底面の長辺との成す角度とは、鋭角側の角度15のことを指す。言うまでもなく、例えば鋭角側の角度が30度の場合、鈍角側の角度16は180度−30度=150度となる。板状突起6の底面の長辺上の点とゲートを結ぶ線と、前記底面の長辺との成す角度は、板状突起6の底面の長辺上の点の位置によって異なる。しかし、長辺上のいずれの点においても、ゲートを結ぶ線と、前記底面の長辺とのなす角度が鋭角側の角度15が、10度以上80度以下の範囲となるように配置される。
【0031】
また、図3に示すように、それぞれの板状突起6の底面の中心を結ぶ線18は、原稿カバー3の外周19の4辺に対し平行になるよう配置される。このようにすることで均一に原稿押えパッドを保持することができ、原稿押えパッドを原稿台に均一に押し付けることができる。また、本実施形態においては、樹脂の流れ方向に対する板状突起6の角度は、板状突起の底面の頂点のうち一番ゲートに近い点とゲートを結ぶ線と、板状突起の底面の長辺とのなす角度がほぼ一定の角度となるように考慮されている。一定の角度になるようにすることで、設計がしやすくなり、また、板状突起をより均一に配置することができる。そのため、図3に示す少なくともゲート周辺部は、隣接する板状突起6がお互いに平行とはならず、原稿カバー3の外周の辺に対して異なった角度で配列されている。
【0032】
また、それぞれの板状突起6の間隔は20mm以上40mm以下に形成される。この間隔をあけることにより、白ずんだスジや曇り等の表面状態の悪化を回避する事ができ、また原稿押えパッドで均等に読み取り原稿を原稿台4に押える事ができる。
【0033】
このように、板状突起6は樹脂の流れの方向に対し斜めに設けられているため、板状突起6が設けられている面の反対側の面である樹脂成形部品の表面部(薄肉部表面)にはガス溜りが発生しにくい。その結果、意匠面に白ずんだスジや曇り等による表面状態の悪化を回避する事ができる。
【0034】
(第二の実施の形態)
本発明に係る樹脂成形部品を実施するための第二の実施形態を、原稿読取装置を備えた複合型プリンターを一例として、図面を用いて説明する。
【0035】
図8に、本実施形態による原稿カバー3の、原稿台と対向する面の平面図を示す。8は、樹脂成形部品の薄肉部であり、本実施形態においては、原稿カバー3の薄肉部である。7は、原稿カバー3を射出成形する際に溶融した樹脂を注入するゲートであり、本実施形態においては原稿カバー3の薄肉部8の中央部に設けられている。ゲート7から注入された樹脂は、図中の矢印のごとくゲート位置を中心に原稿カバー3の薄肉部8を放射状に流れる。36は、リブ状突起であり、縦、横の格子状に配置されている。
【0036】
図9は、従来の原稿台カバー33の、原稿台と対向する面の平面図を示す。36はリブ状突起であり、縦、横の格子状に配置されている。図8と重複する符号については説明を省略する。従来の原稿台カバー33と本実施形態との異なる点は、本実施形態は、前記リブ状突起と平行であって、且つ前記ゲートを横切る一定範囲以外に、前記リブ状突起が配置されていることである。
【0037】
リブ状突起と平行であって、且つ前記ゲートを横切る一定範囲とは、図8に示す、D、Eの楕円で囲われた部分ことである。この範囲は、リブ状突起が、樹脂の流れ方向に対し直角、または平行に近くなってしまう範囲である。つまり、リブ状突起36の底面の長辺上の点の各々とゲートを結ぶ線と、前記底面の長辺との成す角度の鋭角側の角度が、10度以下または80度以上の範囲となってしまう範囲のことである。
【0038】
例えば、原稿カバー3の長辺の長さは読み取り原稿サイズがA4サイズの場合では300mm以上必要である。その場合、ゲートより最も遠いリブ状突起36までの距離は概ね140mmとなる。またリブ状突起36と樹脂の流れ方向とがなす最少の角度9が10度とすると、リブ状突起の間隔10は最少で50mmとなる。(リブ状突起の間隔10=tan10×140mm×2≒50mm)
縦と横のリブ状突起が交差する部分(図8の13参照)に、リブ状突起36の切り欠き(図8の14参照)を設ける事も表面状態を良好に保つためには有効である。
【0039】
(第三の実施形態)
図7には原稿台カバー3を射出成形する際に溶融した樹脂を注入するゲート7を原稿カバー3の薄肉部8の外周の一辺の中央部に設けた場合を示す。
【0040】
図7において原稿カバー3の下辺のほぼ中央にゲート7が設けられており、この部分より溶融した樹脂が太い矢印に示すごとく射出注入される。第一の実施形態同様、注入された樹脂はゲート7の部分より矢印で示すごとく原稿カバー3の薄肉部8に放射状に流れていく。本実施形態において、ゲート7の位置が、原稿台カバーの外周部に設けられているため、樹脂は扇形に流れる。
【0041】
少なくともゲート周辺部に形成されている板状突起6のそれぞれは、樹脂の流れ方向と板状突起6の底面の長辺とのなす角度が一定範囲内になるように配置されている。少なくともゲート周辺部に形成されている板状突起6のそれぞれは、板状突起6の底面の長辺上の点とゲートを結ぶ線と、前記底面の長辺との成す角度の鋭角側の角度15が、10度以上80度以下の範囲となるように配置されている。板状突起6の底面の長辺上の点とゲートを結ぶ線と、前記底面の長辺との成す角度は、板状突起6の底面の長辺上の点の位置によって異なる。しかし、長辺上のいずれの点においても、ゲートを結ぶ線と、前記底面の長辺とのなす角度が鋭角側の角度15が、10度以上80度以下の範囲となるように配置される。また、第一の実施形態と同様、長辺の長さは実際の意匠面の見栄えと、リブとしての機能の確保を考慮して、10mm以上30mm以下が好ましい。
【0042】
上記第一の実施形態乃至第三の実施形態は、原稿読取装置の原稿カバーに本発明を適用した例であるが、原稿カバーに限らず種種の装置の意匠面にも適用でき、黒色鏡面に限らずムラやスジの目立ちやすい濃い色の樹脂成形部品に適用する事ができる。
【0043】
表面も鏡面に限らず、樹脂の表面に凹凸の模様を施したシボ面の場合において、光沢のあるシボ面にも適用できる。さらに意匠面に限らず、光学装置に用いる樹脂製の画像反射ミラー等の光学的な機能を目的とする面を有する樹脂成形部品に適用できる。
【0044】
またリブ状突起の機能は原稿押えパッドを保持する機能には限らず、薄肉部の強度を向上させるための補強リブにも適用できる。
【0045】
その他、意匠面ではなく光学的な機能面に適用する場合には機能面を高精度な平面に維持するためのスペーサーとして本発明のリブ状突起を適用できる。
【0046】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
黒色の光沢鏡面の薄肉部を有する読み取り原稿サイズがA4の画像読取装置の原稿カバーを成形した。薄肉部の樹脂の基本肉厚を2.7mmとなるように金型キャビティを作成し、ゲート位置を原稿カバーの長辺の中心より約10%右寄りになるように金型に配置し、金型温度を50℃として射出成形を行った。
【0048】
板状突起と樹脂の流れ方向との関係を変えて、それぞれについて原稿カバーを作成し、薄肉部の表面状態を観察した。表面状態の観察は、白ずんだスジが、最も目立つ場合を5、まったく無い場合を0として、目視にて5段階評価した。
【0049】
板状突起と樹脂の流れ方向との関係は、以下のものを用意した。
板状突起の底面の頂点のうち一番ゲートに近い点とゲートを結ぶ線と、板状突起の底面の長辺とのなす角度の鋭角側の角度が、10度、20度、30度、40度、45度、50度、60度、70度、80度となる金型を用意した。そして、それぞれ射出成形を行ない、板状突起の角度の異なる原稿カバーを作成した。
【0050】
(比較例1)
板状突起の底面の頂点のうち一番ゲートに近い点とゲートを結ぶ線と、板状突起の底面の長辺とのなす角度の鋭角側の角度が5度、85度となる原稿カバーをそれぞれ作成した。角度を変えた以外は実施例1同様の方法で射出成形を行なった。
【0051】
実施例1、比較例1の評価結果を図10に示す。
【0052】
板状突起と樹脂の流れ方向とのなす角度が、0度以上5度以下、及び85度以上90度以下においては、薄肉部に白ずんだスジの発生が確認された。
10度及び80度の板状突起6の反対面の白ずんだスジは、意匠性を損なうというほどでなく、許容できる範囲であった。
【0053】
板状突起6と樹脂の流れ方向とのなす角度は、鋭角側の角度が30度付近が安定しているが、10度以上80度以下の範囲でガス溜りの回避に対して相応の効果が確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0054】
前記のごとく本発明は原稿読取装置の原稿カバー、原稿読取装置を備えた複合型プリンターの原稿カバーに適用できる。
【0055】
さらに、種種の装置の樹脂製筐体で濃い色の鏡面意匠面を必要とする樹脂成形部品、光学装置などの樹脂製の光学部品など、高機能な表面が必要な樹脂成形部品に広く適用する事ができる。
【符号の説明】
【0056】
1 原稿読取装置を備えた複合型プリンター
2 複合型プリンターの本体筐体
3 原稿カバー
4 原稿台
5 ラック装置
6 板状突起
7 ゲート
8 薄肉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲートから樹脂を注入して成形される、薄肉部を有する樹脂成形部品において、
前記薄肉部の裏面にリブ状突起を有し、
前記リブ状突起は、複数の板状突起がそれぞれ離間して配されたものであって、前記板状突起は、該板状突起の長辺が、前記板状突起の底面の長辺上の点とゲートを結ぶ線と、前記底面の長辺とのなす角度が、10度以上80度以下の範囲内になるように配置されている事を特徴とする樹脂成形部品。
【請求項2】
前記板状突起は、20mm以上40mm以下の間隔でそれぞれ離間して配させる事を特徴とする請求項1記載の樹脂成形部品。
【請求項3】
前記薄肉部の表面が鏡面またはシボ面であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂成形部品。
【請求項4】
前記樹脂成形部品は、原稿読取装置の原稿カバーであることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の樹脂成形部品。
【請求項5】
ゲートから樹脂を注入して成形される、薄肉部を有し、前記薄肉部の裏面に、格子状のリブ状突起が配置された樹脂成形部品において、
前記リブ状突起と平行であって、且つ前記ゲートを横切る一定範囲以外に、前記リブ状突起が配置されていることを特徴とする樹脂成形部品。
【請求項6】
前記薄肉部の裏面の中央部に前記ゲートを設けたことを特徴とする請求項5記載の樹脂成形部品。
【請求項7】
前記薄肉部の表面が鏡面またはシボ面であることを特徴とする請求項5または6記載の樹脂成形部品。
【請求項8】
前記樹脂成形部品は原稿読取装置の原稿カバーであることを特徴とする請求項5乃至7いずれか1項記載の樹脂成形部品。
【請求項9】
ゲートと、薄肉部およびリブ状突起を有するキャビティとを有する樹脂成形用金型において、
前記リブ状突起は、複数の板状突起がそれぞれ離間して配されたものであって、前記複数の板状突起は、該板状突起の長辺が、前記板状突起の底面の長辺上の点とゲートを結ぶ線と、前記底面の長辺とのなす角度が、10度以上80度以下の範囲内になるように配置されている事を特徴とする樹脂成形用金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−143589(P2011−143589A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5183(P2010−5183)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】