説明

樹脂溶着用芯金、複合部材及びその製造方法

【課題】樹脂外周材と樹脂溶着用芯金との接合強度を容易に向上することができる樹脂溶着用芯金の製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂外周材30の嵌合孔31に樹脂溶着用芯金20を嵌合して誘導加熱することで、樹脂溶着用芯金20の側周面21に樹脂外周材30を溶着する際、樹脂外周材30の嵌合孔31に平坦内壁面32を設け、樹脂溶着用芯金20の側周面21に、複数の筋状突部26が周方向に互いに隣接配置した凹凸部24と、複数の筋状突部26の両端側に形成された平坦部25とを設け、樹脂溶着用芯金20の側周面21に樹脂外周材30の嵌合孔31を嵌合させることで、平坦内壁面32に複数の筋状突部26の頂部を接触させると共に平坦部25を対向させ、その後誘導加熱することにより凹凸部24及び平坦部25に樹脂外周材30を溶着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂外周材の嵌合孔に嵌合して誘導加熱されることで樹脂外周材が側周面に溶着される樹脂溶着用芯金と、樹脂溶着用芯金の側周面に樹脂外周材が溶着された複合部材、並びにその複合部材を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂溶着用芯金の側周面に樹脂外周材を溶着した複合部材が種々の部品に使用されている。例えば電動パワーステアリング装置のウオームホイールなどにも使用されている。電動パワーステアリング装置のウオームホイールなどでは操作の確実性や耐久性等を確保するために、樹脂溶着用芯金と樹脂外周材との間が確実に接合されていることが要求される。
【0003】
樹脂外周材の嵌合孔に樹脂溶着用芯金を嵌合して誘導加熱することで、樹脂溶着用芯金の側周面に樹脂外周材を溶着する技術が提案されている。例えば下記特許文献1に記載された樹脂成形物に金属ボスを固定する方法では、まず金属成形体の樹脂接触面に凹凸加工を施す。樹脂成形物に金属成形体の外径より僅かに小径とした通孔を形成する。金属成形体の凹凸加工面に結合材を塗布し、樹脂成形物を加熱して通孔の直径を膨張させて金属成形体を圧入する。その後、高周波誘導加熱することで樹脂成形物の金属接触部分を溶融温度以上にして金属成形体に樹脂成形物を溶着する。引用文献1の方法によれば、樹脂と金属とからなる偏平な歯車や車輪のような成形品を効率よく製造することができる。
【0004】
例えば下記特許文献2に記載されたウオームホイールの製造方法では、まず金属製の芯金の外周に周方向に並んだ外周凹凸部を形成し、樹脂製のリングギヤの内周に芯金の外周凹凸部に対応する形状で周方向に並んだ内周凹凸部を形成する。リングギヤと芯金との間に接着剤を介在させて外周凹凸部と内周凹凸部とを係合させ、その後、高周波溶着によって結合する。引用文献2の方法では、金属芯金と樹脂リングギヤとの固着力を確保しつつ、設計の自由度を向上できるとされている。
【0005】
樹脂外周材の嵌合孔に樹脂溶着用芯金を嵌合して誘導加熱する従来の技術では、樹脂外周材と樹脂溶着用芯金との間の溶着による接合強度を向上するために、樹脂溶着用芯金の側周面に凹凸形状を形成していた。例えば特許文献1では、接合強度を向上するために1〜3mmのローレット加工等を施こしていた。引用文献2では、固着力を向上するために金属製の芯金の外周に雄セレーションを形成していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−118006号公報
【特許文献2】特開2001−141033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の方法では樹脂溶着用芯金に対する樹脂外周材の接合強度を向上するために、凹凸形状をより大きく形成することが行われていた。
ところが凹凸形状を大きくする場合、ローレット加工により樹脂溶着用芯金に凹凸形状を形成するには加工時に、より大きな加圧力が必要となったり、機械加工が必要となったりしていた。しかも樹脂溶着用芯金に大きな凹凸形状を形成するときには、引用文献2のように樹脂外周材の内周面にもその凹凸形状に対応した形状で凹凸形状を設けることで嵌合可能にしていた。そのため樹脂溶着用芯金に対する樹脂外周材の接合強度を向上することに手間を要していた。
【0008】
そこで本発明は、樹脂外周材との接合強度を容易に向上できる樹脂溶着用芯金を提供することを第1の目的とし、そのような樹脂溶着用芯金を用いて接合強度が向上された複合部材を提供することを第2の目的とする。また樹脂溶着用芯金と樹脂外周材との接合強度を容易に向上できる複合部材の製造方法を提供することを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
樹脂外周材を樹脂溶着用芯金の嵌合孔に嵌合して誘導加熱しても、凹凸加工面に樹脂外周材の樹脂が十分に入り込まないと、凹凸加工面と樹脂外周材との間に微細な間隙等の未溶着部分が生じる。未溶着部分が生じると、樹脂溶着用芯金と樹脂外周材との接合強度がその分低下し、樹脂溶着用芯金に対する樹脂外周材の周方向の接合強度や中心軸方向の接合強度が低下する。
【0010】
樹脂溶着用芯金と樹脂外周材との接合強度を増加するために凹凸加工面の凹凸形状を大きくした場合、溶着前の嵌合状態で樹脂溶着用芯金と樹脂外周材との接触する間隔が離間したり接触面積が減少する。その状態で誘導加熱すると、樹脂溶着用芯金からの熱により樹脂外周材の内周面を均一に溶融することができず、未溶融部分が増加したり、局部的に過熱されて樹脂の不均一な変形部分等が生じる。樹脂外周材の内周面に凹凸形状を設けたとしても、樹脂溶着用芯金の凹凸形状と樹脂外周材の凹凸形状とが一致しない部分で未溶融部分や過熱部分が生じる。
【0011】
その結果、凹凸形状を大きくした場合には、樹脂の過熱部分が生じることを防止しつつ誘導加熱により樹脂溶着用芯金に樹脂外周材を溶着すると、樹脂が凹凸部の隅々まで入り込むことができず、凹凸部の表面において未溶着部分を生じて接合強度を十分に向上できないことが新たに見出された。
【0012】
かかる知見に基づき、第1の目的を達成する本発明の樹脂溶着用芯金は、樹脂外周材の嵌合孔に嵌合して誘導加熱されることで、樹脂外周材が側周面に溶着される樹脂溶着用芯金であって、側周面には凹凸部が設けられ、凹凸部は複数の筋状突部が周方向に隣接配置されることで形成され、複数の筋状突部の高さが1mm以下で、互いに隣接する筋状突部間の間隙が2mm以下となっている。
【0013】
このような樹脂溶着用芯金によれば、互いに隣接する筋状突部間の間隙を特定の範囲にしているので、複数の筋状突部により樹脂外周材の接合面全体を溶融できて凹凸部に樹脂が隅々まで十分に入り込むことができる。そのため樹脂外周材との接合強度を容易に向上することが可能である。
【0014】
この樹脂溶着用芯金は筋状突部の両端側にそれぞれ平坦部を備え、複数の筋状突部は平坦部より外側に1mm以下の高さで突出して設けられているのがよい。
この樹脂溶着用芯金は凹凸部と中空部とを備えた鍛造品からなり、中空部は端面から凹凸部の底部内側となる位置に達するように設けられたものであってもよい。
【0015】
第2の目的を達成する本発明の複合部材は、上述のような樹脂溶着用芯金と、この樹脂溶着用芯金の側周面に溶着された樹脂外周材とを備えている。
この複合部材によれば、上述のような樹脂溶着用芯金を用いているので、樹脂溶着用芯金と樹脂製部材との接合強度を向上することが可能である。
【0016】
第3の目的を達成する本発明の複合部材の製造方法は、樹脂外周材の嵌合孔に樹脂溶着用芯金を嵌合して誘導加熱することで、樹脂溶着用芯金の側周面に樹脂外周材を溶着する複合部材の製造方法であり、樹脂外周材の嵌合孔に平坦な内壁面を設け、樹脂溶着用芯金の側周面に、複数の筋状突部が周方向に隣接配置した凹凸部と、筋状突部の両端側に形成された平坦部とを設け、樹脂溶着用芯金の側周面に樹脂外周材の嵌合孔を嵌合させることで、平坦内壁面に複数の筋状突起の頂部を接触させ且つ平坦部を対向させ、その後誘導加熱して凹凸部及び平坦部に樹脂外周材を溶着して複合部材を製造する。
【0017】
このようにして複合部材を製造すれば、樹脂外周材の嵌合孔に平坦内壁面を設けて複数の筋状突部に接触させるので、平坦内壁面の筋状突部が接触している部位を確実に溶融することができる。そのため、樹脂溶着用芯金の凹凸部に対向する平坦内壁面を十分に溶融して筋状突部間の隅々に入り込ませて溶着すれば、樹脂溶着用芯金の平坦部と樹脂外周材の平坦内壁面とを溶着することができ、樹脂外周材の平坦内壁面を樹脂溶着用芯金の側周面に十分な強度で接合することができる。しかも、樹脂溶着用芯金の側周面に複数の筋状突部と平坦部を設け、樹脂外周材に複数の筋状突部と接触する平坦内壁面を設ければよく、嵌合するための凹凸形状などを設ける必要がないので、複合部材の接合強度を容易に向上し得る。
【0018】
この複合部材の製造方法では、複数の筋状突部の高さを1mm以下に形成し、互いに隣接する筋状突部間の間隙を2mm以下に形成するのがよい。
【0019】
この複合部材の製造方法では、樹脂溶着用芯金が凹凸部と端面から凹凸部の底部内側となる位置に達する中空部とを備えて鍛造により作製されてもよい。
【0020】
この複合部材の製造方法では、平坦部の中心軸に沿う幅を、互いに隣接する筋状突部間の間隙における最大間隔の0.5倍以上1倍以下にするのがよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の樹脂溶着用芯金によれば、側周面に形成された複数の筋状突部の高さと、互いに隣接する筋状突部間の間隙とを特定の範囲にしているので、樹脂外周材との接合強度を向上した樹脂溶着用芯金を提供できる。
本発明の複合部材によれば、その樹脂溶着用芯金を用いているので、樹脂溶着用芯金と樹脂製部材との接合強度が向上された複合部材を提供することができる。
本発明の複合部材の製造方法によれば、樹脂溶着用芯金の側周面に複数の筋状突部と平坦部を設け、樹脂外周材の嵌合孔に平坦内壁面を設け、これらを嵌合させて誘導加熱するので、樹脂溶着用芯金と樹脂外周材との接合強度を容易に向上することができる複合部材の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)は本発明の実施形態に係る複合部材を示し、一部を断面で示す正面図であり、(b)は複合部材の一部を断面で示す側面図である。
【図2】(a)は本発明の実施形態に係る樹脂溶着用芯金の正面図であり、(b)は樹脂溶着用芯金の一部を断面で示す側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る樹脂溶着用芯金の筋状突起を示す部分拡大図である。
【図4】(a)は本発明の実施形態に係る樹脂溶着用芯金の筋状突起と樹脂外周材との溶着前の状態を示す断面図、(b)は樹脂溶着用芯金の筋状突起と樹脂外周材との溶着後の状態を示す断面図である。
【図5】(a)〜(e)は本発明の実施形態に係る複合部材の製造工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図1乃至図5を参照して、本発明の実施形態について説明する。
この実施形態の複合部材10は、図1(a)(b)に示すように、中心軸Lを中心にした略円板形状を呈し、樹脂溶着用芯金20と、樹脂溶着用芯金20の側周面21に溶着された樹脂外周材30とを備える。この複合部材は電動パワーステアリング用ウオームホイールブランクの例である。ウオームホイールブランクは、外周表面にギヤ溝を形成するなどにより、電動パワーステアリング装置のウオームホイールを製造することが可能な中間体である。
【0024】
複合部材10の樹脂溶着用芯金20は、図2(a)(b)及び図3に示すように、中心軸L方向の所定長さの略円板形状を呈し、中心には中心軸Lに沿って一定断面形状に形成された貫通孔22が設けられている。一方の端面は平坦に形成され、他方の端面には円環溝状の中空部23が形成されている。側周面21は、中心軸Lに沿って平行に形成されており、周方向の全長に環状に設けられた凹凸部24と、凹凸部の中心軸Lに沿う方向の両端にそれぞれ断面円形に形成された平坦部25とを有する。
【0025】
凹凸部24は、多数の筋状突部26が周方向に互いに隣接配置されることで構成されている。多数の筋状突部26は全周にわたり一定ピッチで均等に配置されているのがよい。
各筋状突部26の形状は、後述する誘導加熱の際、樹脂外周材30の嵌合孔31の内表面に接触した状態で樹脂を溶融し易い形状であることが好ましく、しかも溶着後には樹脂溶着用芯金の側周面と樹脂部材との間の接合強度を確保し易い形状とすることが好ましい。そのため多くの筋状突部26の形状を同一にするのがよく、好ましくは全ての筋状突部26の形状を同一にする。
【0026】
この実施形態では全ての筋状突部26が同一形状に形成されている。各筋状突部26は、図3に示すように周方向の断面形状において頂部26aが狭く底部26bが広がった山形或いは略三角形形状となっている。両側面は平面又は曲面等の何れに形成されていてもよい。このような形状であれば、後述する誘導加熱の際、互いに隣接する筋状突部間の間隙27に溶融樹脂が入り込み易い。
【0027】
頂部26aは曲面又は平面である必要はなく、尖頭形状となっていてもよい。
互いに隣接する筋状突部26間の底部26bの形状は、平面又は曲面形状とするのが好ましい。このような底部26bであれば、誘導加熱の際に溶融樹脂を十分に底部26bに充填させることができる。
【0028】
各筋状突部26の両側面は頂部26aに対して対称であっても非対称であってもよい。各側面の勾配は特に限定されるものではないが、樹脂溶着用芯金20の側周面21の法線に対する各側面の最大角度θは、例えば30度〜60度、好ましくは40度〜50度である。最大角度θが過剰に小さいと互いに隣接する筋状突部26間の間隙27が深くなるため、後述する誘導加熱の際、溶融樹脂が間隙27に入り込み難くなる。一方、最大角度θが過剰に大きいと互いに隣接する筋状突部26間の間隙27が浅くなるため、筋状突部26と樹脂外周材30との周方向における機械的な係止力を得難くなる。
【0029】
各筋状突部26は中心軸Lに対して平行であっても、中心軸Lに対して傾斜していてもよい。各筋状突部26が中心軸Lに対して平行となる形状であれば、鍛造により樹脂溶着用芯金20を作製することができる。
また各筋状突部26の中心軸Lに沿う方向の形状は長手方向で変化していてもよいが、全長にわたり一定断面形状或いは凸形状を呈していれば、鍛造により樹脂溶着用芯金20を作製し易い。
【0030】
各筋状突部26の高さHは1mm以下とするのがよい。この筋状突部26の高さHは中心軸Lから各筋状突部26の頂部26aまでの距離と中心軸Lから互いに隣接する筋状突部26間の底部26bまでの距離との差である。各筋状突部26の高さHが過剰に高いと、互いに隣接する筋状突部26間の間隙27の深さが深くなりすぎ、溶融樹脂が十分に入り込み難くなる。一方、各筋状突部26の高さHは、好ましくは0.5mm以上、特に好ましくは0.7mm以上とする。各筋状突部26の高さHが過剰に低いと、溶着後に樹脂溶着用芯金20と樹脂外周材との間の周方向及び中心軸Lに沿う方向の機械的な係止力を確保し難くなる。
【0031】
この凹凸部24では互いに隣接する筋状突部26間の間隙27を2mm以下、即ち、間隙27の最大間隔Dを2mm以下とするのがよい。この互いに隣接する筋状突部26間の間隙27の最大間隔Dは、互いに隣接する筋状突部26の頂部26a間における周方向に沿う距離である。例えば各筋状突部26の頂部26aが尖頭形状の場合には筋状突部26の頂部26a間を直線で近似した距離としてもよく、各筋状突部26の頂部26aに平面又は曲面が設けられて両側部に角部が設けられている場合には角部間を直線で近似した距離としてもよい。なお、各筋状突部26の頂部26aが曲面形状で角部が設けられていない場合には、後述する樹脂外周材30が実際に接触する部位間を直線で近似した距離としてもよい。
【0032】
互いに隣接する筋状突部26間の間隙27が過剰に広いと、後述する誘導加熱の際、各筋状突部26から樹脂外周材30に供給される熱で、互いに隣接する筋状突部26の頂部26aが接触する樹脂外周材30間の樹脂を十分に溶融することができず、未溶着部分が生じ易くなる。
互いに隣接する筋状突部26間の間隙27が過剰に狭いと、各筋状突部26の深さを深くできないために突出量形状が小さくなり、溶着後に樹脂溶着用芯金と樹脂外周材30との間の十分な接合強度を確保し難くなる。互いに隣接する筋状突部26間の間隙27の最大間隔Dは1mm以上とするのが好ましい。
【0033】
樹脂溶着用芯金20の平坦部25は、中心軸Lに沿う方向において凹凸部24の隣接位置、即ち、多数の筋状突部26の両端側に隣接する位置に設けられている。この平坦部25は凹凸のない中心軸Lと平行な面からなり、好ましくは断面円形形状の曲面からなる。平坦部25は少なくとも凹凸部24の筋状突部26の頂部26aより中心軸Lからの距離が小さく形成されている。このような距離で平坦部25を設けることで、多数の筋状突部26の頂部が平坦部25より外側に1mm以下の高さとなる。この高さは好ましくは0.5mm以上、特に好ましくは0.7mm以上とする。そのため樹脂外周材30の後述する平坦内壁面32を対向させて加熱すれば、多数の筋状突部26から供給される熱により樹脂外周材30を平坦部25に溶着させることができる。
【0034】
この平坦部25の中心軸Lからの距離は、互いに隣接する筋状突部26間の底部26bと中心軸Lとの間の距離以下とするのがよく、平坦部25の中心軸Lからの距離が互いに隣接する筋状突部26間の底部26bと同一の距離に形成されるのが特に好ましい。溶着後に樹脂外周材30が平坦部25に溶着することで、各筋状突部26の両端と樹脂外周材30との間に中心軸Lに沿う方向の機械的な係止力が得られ、接合強度を向上することができる。
【0035】
このような平坦部25の中心軸Lに沿う方向の幅Wは、互いに隣接する筋状突部26間の間隙27における最大間隔Dの0.5倍以上に形成するのが好ましい。後述する誘導加熱の際、各筋状突部26の熱により平坦部25に対向する樹脂外周材30が軟化又は溶融される。互いに隣接する筋状突部26間に配置される樹脂外周材30が十分に溶融する程度に加熱されると、各筋状突部26の端部と隣接する部位でも同程度に溶融されることになる。そのため、平坦部25の幅が互いに隣接する筋状突部26間の間隙27における最大間隔Dの0.5倍以上に形成されていれば、各筋状突部26の端部と隣接する部位が十分に軟化又は溶融されたとき、それらが溶着できる広さを確保することができる。よって、多数の筋状突部26の両端部側において平坦部25と樹脂外周材30とを十分な広さで溶着でき、樹脂溶着用芯金20と樹脂外周材30との間の中心軸Lに沿う方向の機械的な係止力を確保することが可能である。
この平坦部25の幅Wは例えば間隙27の最大間隔D以下にしてもよい。平坦部25の幅Wが過剰に広いと、平坦部25と樹脂外周材30との間に不完全な溶着部分が形成される場合がある。
【0036】
樹脂溶着用芯金20の中空部23及び貫通孔22は必要に応じて形成され、その形状や大きさは任意である。この実施形態では、中空部23は樹脂溶着用芯金20の一方の端面に開口した溝形状に形成されており、凹凸部24の底部26bの内側に到達する深さとなっている。そのため中空部23と凹凸部24の底部26bとの間の厚みが薄くなっている。この部位の厚みが薄ければ熱容量を小さくできるため加熱時に昇温し易くできる。
中空部23は、樹脂溶着用芯金20の両端面にそれぞれ設けた溝であってもよく、一方又は両方の端面に、凹凸部24の内側となる位置まで到達する深さで局部的に設けた穴であってもよい。さらに樹脂溶着用芯金20の両端面間に貫通するように局部的に設けた孔であってもよい。
【0037】
このような樹脂溶着用芯金20は、得られる複合部材の用途、即ちこの実施形態の場合にはウオームホイールの用途において必要な強度等の所望の性質を確保でき、誘導加熱可能な各種の金属などから構成することができる。この樹脂溶着用芯金20は、鍛造により貫通孔22及び中空部23等が設けられて凹凸部24及び平坦部25を備えた一体形状に形成されるのが好適である。
【0038】
鍛造であれば、材料を除去しないで貫通孔22及び中空部23等を設けることができるため、材料の無駄を省くことができる。また、鍛造であれば、ローレット加工とは異なり、複数の筋状突部26の形状、高さH、間隙27の最大間隔D、位置、大きさなどを自由に設定でき、これらを調整することで、樹脂外周材30の最適な接合強度を確保できる。しかも、鍛造により複数の筋状突部26を形成すれば、ローレット加工のように側周面を外側から加圧して凹凸部24を形成する必要がなく、中空部23と凹凸部24の底部26bとの間の厚みが本実施形態のように薄く、例えば5mm以下であっても容易に筋状突部26を側周面21に容易に形成できる。
【0039】
一方、樹脂外周材30は樹脂溶着用芯金20の側周面21に溶着された樹脂製の部材である。この樹脂外周材30は、樹脂溶着用芯金に接触して配置された状態で、樹脂溶着用芯金20が加熱されることで、その熱により溶融又は軟化可能な熱可塑性樹脂からなり、複合部材の用途に応じて選択可能である。嵌合孔31側を溶融温度以上に加熱した際、表面側が溶融されない程度の熱伝導性の材料であるのが好ましい。
【0040】
この実施形態では、ウオームホイールとして要求される強度が確保できると共に、耐熱製を確保し易くするなどのために、6,6−ナイロン、6−ナイロン、4,6−ナイロンなどのポリアミドを用いる。特に、強度を確保し易くできるなどの理由で、6−ナイロンが好適であり、特に機械強度、熱的特性、化学的性質に優れるMCナイロン(日本ポリペンコ株式会社製、登録商標)が好適である。なお、摺動性を確保するためには、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアセタール(POM)等を用いてもよい。
【0041】
この実施形態の樹脂外周材30はリング形状を呈する。樹脂外周材30の内周面は樹脂溶着用芯金20の側周面21に密着しており、図4(b)に示すように樹脂溶着用芯金20の側周面21に設けられている多数の筋状突部26が完全に埋設され、各筋状突部26間の間隙27に入り込んで各筋状突部26に十分に溶着されている。また樹脂溶着用芯金20の側周面21の両端側に設けられている平坦部25に十分に溶着されている。
このように樹脂溶着用芯金20に樹脂外周材30が溶着された状態では、多数の筋状突部26が完全に埋設されているため、複合部材10の両端面側から視認される樹脂溶着用芯金20と樹脂外周材30との境界線が、図1に示すように平坦部25の端部からなる円形形状となっている。
なお、樹脂外周材30の外周形状及び厚みは、ウオームホイールのギヤ歯等の加工代を含めた寸法となっている。
【0042】
次に、複合部材10を製造する方法について説明する。
複合部材10を製造するには、樹脂外周材30と樹脂溶着用芯金20とを準備する準備工程と、樹脂溶着用芯金20の側周面21に樹脂外周材30の嵌合孔31を嵌合させて組合せ部材40を作製する嵌合工程と、樹脂溶着用芯金20を誘導加熱することで樹脂溶着用芯金20の側周面に嵌合した樹脂外周材30を溶着する溶着工程と、複合部材10としての精度を実現する前加工工程とを経る。
【0043】
まず、準備工程では、図5(a)(b)に示すように、樹脂溶着用芯金20と樹脂外周材30とをそれぞれ別々に形成する。
樹脂溶着用芯金20は、図5(b)に示すように、樹脂溶着用芯金20の側周面21に、複数の筋状突部26が周方向に互いに隣接配置した凹凸部24と、複数の筋状突部26の両端側に形成された平坦部25とを設けるようにして、鍛造により作製する。このとき、平坦部25の中心軸Lに沿う幅Wは互いに隣接する筋状突部26間の間隙27における最大間隔Dの0.5倍より大きく形成する。
鍛造後、必要に応じて機械加工等を施すことも可能である。機械加工では、各部の所定精度で形成したり、両端面を中心軸Lに所定精度で直交させるようにする。
【0044】
樹脂外周材30は、図5(a)に示すように、熱可塑性樹脂を成形するなどによりリング状に形成する。この実施形態では、樹脂外周材30は、中心軸Lに対して平行な断面円形の外周面33と、樹脂溶着用芯金20の側周面21に対応した内壁面を有する嵌合孔31と、平面からなる両端面とを備える。両端面間の厚みは、樹脂溶着用芯金20の側周面21に設けられた凹凸部24及びその両側の平坦部25の中心軸Lに沿う方向の長さに対応している。
【0045】
嵌合孔31は凹凸形状を設けずに中心軸Lと平行に形成された断面円形の平坦内壁面32を備えている。この嵌合孔31は中心軸Lに沿う方向の長さが少なくとも樹脂溶着用芯金の凹凸部の中心軸方向の長さより大きければ、貫通孔であっても非貫通孔であってもよい。この実施形態では貫通した孔として形成されている。
【0046】
嵌合孔31は、できるだけ多くの筋状突部の頂部、好ましくは全ての筋状突部の頂部が接触する形状とするのがよく、嵌合孔31の平坦内壁面32の内径は、樹脂溶着用芯金20の凹凸部24に嵌合可能な寸法であるのが好適である。具体的には平坦内壁面32の内径が凹凸部24の頂部26aにより構成される最大直径に対して僅かに小さく設定されており、例えば平坦内壁面32の内径が凹凸部24の最大直径に対して0.4〜3%小さく設定されている。平坦内壁面32の内径が凹凸部24の最大直径に対して過剰に大きいと、後述する誘導加熱の際、多数の筋状突部26の熱により平坦内壁面32を十分に加熱できなかったり、溶融樹脂が互いに隣接する筋状突部26間の間隙27に十分に入り込み難くなることがある。一方、平坦内壁面32の内径が凹凸部24の最大直径に対して過剰に小さいと、樹脂外周材30そのものが変形してしまう。
【0047】
次いで、嵌合工程では、図5(c)に示すように樹脂溶着用芯金20の側周面21に樹脂外周材30の嵌合孔31を嵌合させることで、図4(a)に示すように平坦内壁面32に複数の筋状突部26の頂部を接触させると共に平坦部25を対向させる。
樹脂溶着用芯金20を嵌合するためには、例えば樹脂外周材30を加熱膨張させて樹脂溶着用芯金20の側周面21に嵌合させてもよい。例えば加熱炉等で樹脂外周材30を加熱し、嵌合孔31の直径を樹脂溶着用芯金20の外径に対応した直径になるように膨張させることで、嵌合孔31内への樹脂溶着用芯金20を容易に挿入することが可能である。
加熱温度は、樹脂溶着用芯金20の外径に対する嵌合孔31の内径、熱可塑性樹脂の種類、軟化点や膨張率などによって設定できる。例えばポリアミドの場合は、好ましくは130〜150℃程度にする。なお、加熱温度が過剰に高いと樹脂外周材30の精度が低下することがあり、過剰に低いと樹脂外周材30の挿入に手間を要する。
【0048】
樹脂溶着用芯金20の側周面21と樹脂外周材30の嵌合孔31との嵌合は、例えば治具等を使用して平行度や芯合わせを行いつつ、プレス機等で軸線方向に加圧して挿入することができる。このようにして樹脂溶着用芯金20と樹脂外周材30とを組み合わせた組合せ部材40を作製する。
なお、この嵌合工程に先立ち、樹脂溶着用芯金20と樹脂外周材30との間の接合強度を向上するために、樹脂溶着用芯金20の側周面21と樹脂外周材30の嵌合孔31との一方又は双方に、各種の接着材などの結合力向上剤層を設けてもよい。
【0049】
次いで、溶着工程では、図5(d)に示すように、誘導加熱により樹脂溶着用芯金20の凹凸部24及び平坦部25に樹脂外周材30を溶着する。この溶着工程は、樹脂溶着用芯金20を昇温可能な装置を用いて行うが、この実施形態では高周波誘導加熱装置を用いる。この装置では、交番磁界を発生させる加熱コイル50が設けられ、加熱コイル50への給電を制御することで、樹脂溶着用芯金20の側周面を所望の温度に調整可能となっている。また加熱時に、組合せ部材40と加熱コイル50とを中心軸Lを中心に相対回転可能となっている。
【0050】
加熱時には加熱コイル50に高周波電流を流すことによって樹脂溶着用芯金20を誘導加熱し、樹脂溶着用芯金20の表面温度が樹脂外周材30を構成する樹脂の溶融温度以上の温度範囲に維持する。
【0051】
これにより、樹脂外周材30のうち側周面21の筋状突部26に接触している部分及びその近接部分を樹脂溶着用芯金20の熱により昇温して軟化又は溶融する。すると互いに隣接する筋状突部26間の樹脂が溶融し、各筋状突部26の間の間隙27に入り込んで溶融樹脂が凹凸部24に密着する。また樹脂外周材30のうち多数の筋状突部26に隣接する近傍位置で軟化又は溶融した樹脂が樹脂溶着用芯金20の平坦部25の周囲に密着する。
【0052】
なお、この溶融工程では、複数の組合せ部材40を軸状治具に支持させ、複数個纏めて誘導加熱することも可能である。軸状治具としては、例えば各樹脂溶着用芯金20の貫通孔22内を貫通させて固定し、この状態で加熱コイル50と相対移動可能なものなどを使用することができる。
【0053】
溶着工程後、例えば大気中で放熱したり、冷却液により冷却することで、樹脂溶着用芯金20の側周面にそれぞれ溶融樹脂が密着した状態で固化する。
【0054】
この実施形態ではその後に前加工工程を実施する。前加工工程では樹脂外周材30の端面と樹脂溶着用芯金20の端面とを機械加工して、例えば平面形状にする。ここでは図5(e)に示すように端面を切削することで、平坦部25の中心軸Lに沿う幅Wを狭くする。端面を切削する量は適宜調整できるが、例えば互いに隣接する筋状突部26間の間隙27における最大間隔D以下にする。これにより樹脂溶着用芯金20の平坦部25と樹脂外周材30とが不完全に溶着されている部分を除去し、平坦部25と樹脂外周材30とが全周にわたり両端部まで完全に溶着された状態にできる。加工により平坦部25の幅Wを間隙27の最大間隔Dの0.5倍以上1倍以下としてもよい。平坦部25の幅Wを過剰に狭くすると、樹脂溶着用芯金20と樹脂外周材30との中心軸Lに沿う方向の係止力が低下する場合がある。
この前加工工程では、例えば貫通孔22の精度や中心軸Lに対する樹脂外周材30の外周面の平行度、両端面の直交度等の各部の精度を所定の範囲に加工するのがよい。
これにより図1に示すような複合部材10の製造を終了する。
【0055】
このようにして得られた複合部材10に対し、貫通孔22にキー溝を形成すると共に、樹脂外周材30の外周に所望の歯部等を精度良く加工すれば、最終製品であるウオームホイールを製造することができる。
【0056】
以上のようにして複合部材10を製造すれば、用いる樹脂溶着用芯金20において、複数の筋状突部26の高さHと、互いに隣接する筋状突部26間の間隙27とを特定している。これにより樹脂外周材30の嵌合孔31に樹脂溶着用芯金20の側周面21を嵌合して誘導加熱すれば、加熱された各筋状突部26に接触する樹脂外周材30が溶融し、溶融樹脂が各筋状突部26間の間隙27の内部に隅々まで確実に入り込むことができる。そのため未溶着部分が生じることを防止して、樹脂溶着用芯金20の側周面21に樹脂外周材30を確実に溶着することができる。
【0057】
しかも、この樹脂溶着用芯金20の側周面21に樹脂外周材30の嵌合孔31を嵌合させて誘導加熱すれば、加熱された各筋状突部26により凹凸部24に隣接する位置の樹脂外周材30及び凹凸部24に隣接する両端側の位置の樹脂外周材30が溶融される。そのため筋状突部26間の間隙27の内部に溶融樹脂が入り込んで、各筋状突部26と樹脂外周材30とが溶着し、また各筋状突部26の両端側の隣接位置において溶融樹脂が平坦部25に到達して、平坦部25と樹脂外周材30とが溶着する。これにより凹凸部24全体が樹脂外周材30の内部に埋設される。
【0058】
その結果、樹脂外周材30を溶着した後には樹脂溶着用芯金20の両端面から凹凸部24が視認されることがなく優れた外観が得られる。また複数の筋状突部26と樹脂外周材30とが溶着されることで、溶着による接合強度に加え、複数の筋状突部26の側面と各筋状突部26間に入り込んだ樹脂との間で周方向の機械的な係止力が得られ、複数の筋状突部26の両端部と平坦部25上の樹脂との間で中心軸Lに沿う方向の機械的な係止力が得られる。そのため樹脂溶着用芯金20に樹脂外周材30を十分な強度で溶着することが可能である。
【0059】
しかも、この樹脂溶着用芯金20では平坦部25の幅Wが互いに隣接する筋状突部26間の間隙27における最大間隔Dの0.5倍以上になっている。溶着時に各筋状突部26の熱により互いに隣接する筋状突部26間に配置される樹脂外周材30が十分に溶融する程度に加熱された際、樹脂外周材30の筋状突部26に接触する部位の近傍も溶融される。そのため樹脂外周材30の筋状突部26に隣接して十分に溶融された樹脂が確実に樹脂溶着用芯金20の平坦部25に接合することができ、これにより樹脂溶着用芯金20と樹脂外周材30との十分な接合強度を確保することができる。
【0060】
特に平坦部25の中心軸Lに沿う幅Wを、互いに隣接する筋状突部26間の間隙27における最大間隔Dの0.5倍より大きく形成し、樹脂溶着用芯金20の側周面21に樹脂外周材30を溶着した後で、樹脂溶着用芯金20の平坦部25の幅を狭くするように端面を切削している。
【0061】
そのため溶着時に平坦部25が広くて両端側において樹脂外周材30が十分に溶融されている部位を確実に平坦部25に溶着することができる。そして、溶着後に樹脂溶着用芯金20の端面を切削するので、樹脂外周材30と樹脂溶着用芯金20とが端部まで十分に溶着している複合部材10が得られる。
【0062】
従って、このような製造過程では、樹脂溶着用芯金20の凹凸部24の凹凸形状を大きく形成する必要がなく、樹脂外周材30の内面に凹凸形状を設ける必要がない。そのため樹脂溶着用芯金20と樹脂外周材30との接合強度を容易に向上できる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例及び比較例について説明する。
(実施例)
図2に示すような樹脂溶着用芯金20を作製し、これに対応したリング形状の樹脂外周材30を樹脂溶着用芯金20の側周面に嵌合し、高周波誘導加熱により溶着することで実施例の複合部材を作製した。
樹脂溶着用芯金20は炭素鋼からなり、最大直径が60mm、厚み16mmで、側周面21には両端側に2mmの平坦部25が設けられ、その間に複数の筋状突部26が周方向に互いに隣接配置して設けられている。各筋状突部26の周方向の断面形状が略三角形形状を呈し、頂部26aの角度を中心軸Lからの法線に対して左右対称で略90度とした。各筋状突部26の高さは0.9mmで、互いに隣接する筋状突部26間の間隙における最大間隔Dを1.9mmとした。一方、樹脂外周材30はMCナイロン(日本ポリペンコ株式会社製、登録商標)からなる樹脂の成形体であり、外径が85mm、嵌合孔31の内径が60mmで、厚みが19mmであった。
誘導加熱は、樹脂溶着用芯金20の表面温度が、樹脂外周材30を構成する樹脂の略溶融温度となるようにコイルへの給電を制御し加熱した。
【0064】
得られた複合部材10を中心軸方向に切断し、互いに隣接する筋状突部26間の底部26bの位置における断面を観察したところ、実施例では互いに隣接する筋状突部26間の底部26bの位置に樹脂外周材30の樹脂が全体に十分に存在しており、底部26bまで溶着できていることが確認できた。
【0065】
次に、上記と同様にして6個の複合部材10を作製し、樹脂溶着用芯金20と樹脂外周材30とに対して中心軸Lに沿って反対方向となるように荷重を負荷して降伏強度を測定した。その結果、最大値が85.9kN、最小値が62.3kN、平均値が75.2kNであった。
【0066】
(比較例1)
樹脂溶着用芯金の各筋状突部の高さを1mmより大きくし、互いに隣接する筋状突部26間の間隙27における最大間隔Dを2mmより大きくした他は、全て実施例と同様にして、複合部材を作製した。
得られた複合部材10を中心軸方向に切断し、互いに隣接する筋状突部26間の底部26bの位置における断面を観察したところ、比較例1では互いに隣接する筋状突部26間、特に底部26b側に微細な未溶着箇所が多数存在していた。
また、6個の複合部材10を作製し、樹脂溶着用芯金20と樹脂外周材30とに対して中心軸Lに沿って反対方向となるように荷重を負荷し、降伏強度を測定した。その結果、最大値が40.3kN、最小値が30.0kN、平均値が34.2kNであった。実施例と比較して降伏強度が劣っていることが確認できた。
【符号の説明】
【0067】
10 複合部材
20 樹脂溶着用芯金
21 側周面
22 貫通孔
23 中空部
24 凹凸部
25 平坦部
26 筋状突部
26a 頂部
26b 底部
27 間隙
30 樹脂外周材
31 嵌合孔
32 平坦内壁面
33 外周面
40 組合せ部材
50 加熱コイル
L 中心軸
H 高さ
W 幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂外周材の嵌合孔に嵌合して誘導加熱されることで、上記樹脂外周材が側周面に溶着される樹脂溶着用芯金であって、
上記側周面には凹凸部が設けられ、該凹凸部は複数の筋状突部が周方向に隣接配置されることで形成され、該複数の筋状突部の高さが1mm以下で、互いに隣接する上記筋状突部間の間隙が2mm以下である、樹脂溶着用芯金。
【請求項2】
前記筋状突部の両端側にそれぞれ平坦部を備え、該複数の筋状突部は上記平坦部より外側に1mm以下の高さで突出して設けられている、請求項1に記載の樹脂溶着用芯金。
【請求項3】
前記凹凸部と中空部とを備えた鍛造品からなり、該中空部は端面から上記凹凸部の底部内側となる位置に達するように設けられている、請求項1又は2に記載の樹脂溶着用芯金。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載された樹脂溶着用芯金と、該樹脂溶着用芯金の側周面に溶着された樹脂外周材とを備えた複合部材。
【請求項5】
樹脂外周材の嵌合孔に樹脂溶着用芯金を嵌合して誘導加熱することで上記樹脂溶着用芯金の側周面に上記樹脂外周材を溶着する、複合部材の製造方法であり、
上記樹脂外周材の嵌合孔に平坦な内壁面を設け、
上記樹脂溶着用芯金の側周面に、複数の筋状突部が周方向に隣接配置した凹凸部と、上記筋状突部の両端側に形成された平坦部とを設け、
上記樹脂溶着用芯金の側周面に上記樹脂外周材の嵌合孔を嵌合させることで、上記平坦内壁面に上記複数の筋状突起の頂部を接触させ且つ上記平坦部を対向させ、
その後誘導加熱して上記凹凸部及び上記平坦部に上記樹脂外周材を溶着する、複合部材の製造方法。
【請求項6】
前記複数の筋状突部の高さを1mm以下に形成し、互いに隣接する前記筋状突部間の間隙を2mm以下に形成する、請求項5に記載の複合部材の製造方法。
【請求項7】
前記樹脂溶着用芯金は、前記凹凸部と端面から該凹凸部の底部内側となる位置に達する中空部とを備えて鍛造により作製される、請求項5又は6に記載の複合部材の製造方法。
【請求項8】
前記平坦部の前記中心軸に沿う幅を互いに隣接する前記筋状突部間の間隙における最大間隔の0.5倍以上1倍以下にする、請求項5乃至7の何れかに記載の複合部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−81588(P2012−81588A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226915(P2010−226915)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(390029089)高周波熱錬株式会社 (288)
【Fターム(参考)】