説明

樹脂用抗菌性帯電防止剤およびそれを用いた抗菌・帯電防止性樹脂組成物

【課題】帯電防止性と抗菌性とを同時に付与できる樹脂用抗菌性帯電防止剤を提供する。
【解決手段】式(1)または(2)で表される四級アンモニウムカチオンと、特定のビスアルキルリン酸アニオン又は特定のビスアルキルスルホコハク酸アニオン(ハロゲン原子を含まない有機アニオン)との塩を含有する樹脂用抗菌性帯電防止剤。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のアニオンと特定のカチオンとからなる塩を含有する樹脂用の帯電防止剤、およびその帯電防止剤を含有する樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
有機のポリマー材料、いわゆる樹脂材料や、その加工形態である樹脂成形体や合成繊維は、その優れた物理的性質により、産業用以外にも、衣料、各種製品の外装等に広範に使用されている。しかし樹脂材料は一般的に絶縁体であるため静電気を帯び易く、帯電防止性に劣るという欠点を有しているため、ほこりの付着や衣類の人体へのまとわりつき、人体への感電のショックといった種々の問題を有している。
【0003】
そのため、このような樹脂材料に添加または塗布して帯電防止性を付与する帯電防止剤が種々開発されており、例えば、特開昭61−69884号公報(特許文献1)においてはカチオンポリマーにグアニジン塩及び/又は無機塩を併用した繊維用帯電防止剤が、特開昭58−149376号公報(特許文献2)においてはアミノホスフェート型燐酸エステルとグアニジン塩とを併用した繊維用帯電防止剤が開示されている。
【0004】
一方、樹脂材料は、衣料、各種製品の外装等の人体に触れやすい場所に使われることが多く、またその耐久性や耐水性からパイプ等の水と接触する使われ方も多い。このような樹脂材料においては、樹脂材料表面での細菌の繁殖を抑えることも重要な課題となっている。
【0005】
そのため、このような樹脂材料に抗菌性を付与する抗菌剤が種々開発されており、例えば、銀イオンを用いた無機系の抗菌剤が知られている。また、本発明者らにより、特開2005−343871号公報(特許文献3)においてはベンジルジメチルアルキルアンモニウムカチオンまたはN−アルキルピリジニウムカチオンとスルホコハク酸ジアルキルエステルアニオンとの塩を用いた有機系の抗菌剤が、特開2007−39820号公報(特許文献4)においてはベンジルジメチルアルキルアンモニウムカチオンとリン酸ジアルキルエステルアニオンとの塩を用いた有機系の抗菌剤が開示されている。
【0006】
しかしながら、従来は、このような帯電防止性は帯電防止剤の添加または塗布により、一方、抗菌性に関しては抗菌剤の添加または塗布により、それぞれ別々の加工処理により樹脂材料に付与されていた。そのため、樹脂材料への加工処理工程が多くなる要因の1つとなっており、より簡便な加工処理を可能とする技術の開発が望まれていた。
【特許文献1】特開昭61−69884号公報
【特許文献2】特開昭58−149376号公報
【特許文献3】特開2005−343871号公報
【特許文献4】特開2007−39820号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、樹脂材料に要求される2つの重要な機能である帯電防止性と抗菌性とを同時に各種の樹脂に付与することを可能とする樹脂用抗菌性帯電防止剤、およびそれを含有する抗菌性と帯電防止性とを併せ持った樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の四級アンモニウムカチオンと特定の有機アニオンとの塩が、驚くべきことに抗菌性のみならず帯電防止性を併せ持っており、各種の樹脂と混合することが可能であることから、このような塩を用いることにより樹脂材料に帯電防止性と抗菌性とを同時に付与することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の樹脂用抗菌性帯電防止剤は、下記式(1)または下記式(2)で表される四級アンモニウムカチオンと、下記式(3)または下記式(4)で表される有機アニオンとの塩を含有することを特徴とするものである。
【0010】
【化1】

【0011】
〔式(1)中、Rはメチル基またはエチル基を表し、Rは炭素数8〜18の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基、或いは下記式(1−1):
【0012】
【化2】

【0013】
で表される基を表す。〕
【0014】
【化3】

【0015】
〔式(2)中、Rは炭素数12〜18の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を表す。〕
【0016】
【化4】

【0017】
〔式(3)中、RおよびRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数2〜16の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を表す。〕
【0018】
【化5】

【0019】
〔式(4)中、RおよびRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数2〜16の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を表す。〕。
【0020】
また、本発明の抗菌・帯電防止性樹脂組成物は、前記本発明の樹脂用抗菌性帯電防止剤を含有することを特徴とするものである。
【0021】
本発明においては、前記四級アンモニウムカチオンが、Rが前記式(1−1)で表される基である前記式(1)で表されるものであることが好ましい。
【0022】
また、本発明においては、前記四級アンモニウムカチオンと前記有機アニオンとの塩が、室温で液体であるハロゲンフリーの有機塩であることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、樹脂材料に要求される2つの重要な機能である帯電防止性と抗菌性とを同時に各種の樹脂に付与することを可能とする樹脂用抗菌性帯電防止剤、およびそれを含有する抗菌性と帯電防止性とを併せ持った樹脂組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0025】
先ず、本発明の樹脂用抗菌性帯電防止剤について説明する。本発明の樹脂用抗菌性帯電防止剤は、特定の四級アンモニウムカチオン(特定のベンジルアンモニウムカチオンまたは特定のピリジニウムカチオン)と特定の有機アニオン(特定のビスアルキルリン酸アニオンまたは特定のビスアルキルスルホコハク酸アニオン)とからなる塩(有機塩)を含有する。
【0026】
(ベンジルアンモニウムカチオン)
本発明に用いられるベンジルアンモニウムカチオンは、下記式(1):
【0027】
【化6】

【0028】
で表されるものである。
【0029】
前記式(1)中、Rはメチル基またはエチル基であり、好ましくはメチル基である。また、Rは炭素数8〜18の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基、或いは下記式(1−1)で表される基である。
【0030】
【化7】

【0031】
としてこのような基を有していないベンジルアンモニウムカチオンを用いると、抗菌性と帯電防止性とを高水準でバランスよく付与することができず、また、得られる塩の融点が室温(25℃)以上となり易くなる傾向にある。他方、Rとして炭素数19以上のアルキル基を有するベンジルアンモニウムカチオンを用いると、十分な抗菌性を付与することができず、また、得られる塩の粘度が非常に高くなり帯電防止性が低下する。このようなRとしては、得られる塩の抗菌性がより向上するという観点から炭素数12〜16の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基、或いは前記式(1−1)で表される基であることが好ましく、得られる塩の抗菌性及び帯電防止性が更に向上するという観点から前記式(1−1)で表される基であることが特に好ましい。
【0032】
前記炭素数8〜18の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基としては、オクチル基、1−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、2−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチルヘプチル基、3−エチルヘキシル基、ノニル基、1−エチルヘプチル基、2−エチルヘプチル基、3−メチルオクチル基、3−エチルヘプチル基、デシル基、2−エチルオクチル基、ウンデシル基、ドデシル基、3−エチルデシル基、トリデシル基、2−エチルウンデシル基、テトラデシル基、2−ブチルデシル基、ペンタデシル基、2−ペンチルデシル基、ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、ヘプタデシル基、2−ヘプチルデシル基、オクタデシル基、2−オクチルデシル基等が挙げられる。
【0033】
(ピリジニウムカチオン)
本発明に用いられるピリジニウムカチオンは、下記式(2):
【0034】
【化8】

【0035】
で表されるものである。
【0036】
前記式(2)中、Rは炭素数12〜18の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基である。Rとして炭素数11以下のアルキル基を有するピリジニウムカチオンを用いると、抗菌性と帯電防止性とを高水準でバランスよく付与することができず、また、得られる塩の融点が室温(25℃)以上となり易くなる傾向にある。他方、Rとして炭素数19以上のアルキル基を有するピリジニウムカチオンを用いると、十分な抗菌性を付与することができず、また、得られる塩の粘度が非常に高くなり帯電防止性が低下する。このようなRとしては、得られる塩の抗菌性がより向上するという観点から炭素数14〜18の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基であることが好ましい。
【0037】
前記炭素数12〜18のアルキル基としては、ドデシル基、3−エチルデシル基、トリデシル基、2−エチルウンデシル基、テトラデシル基、2−ブチルデシル基、ペンタデシル基、2−ペンチルデシル基、ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、ヘプタデシル基、2−ヘプチルデシル基、オクタデシル基、2−オクチルデシル基等が挙げられる。
【0038】
(ビスアルキルリン酸アニオン)
本発明に用いられるビスアルキルリン酸アニオンは、下記式(3):
【0039】
【化9】

【0040】
で表されるものである。
【0041】
前記式(3)中、RおよびRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数2〜16の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基である。RおよびRとしてこのような基を有していないビスアルキルリン酸アニオンを用いると、抗菌性と帯電防止性とを高水準でバランスよく付与することができず、また、得られる塩の融点が室温(25℃)以上となり易くなる傾向にある。他方、RおよびRとして炭素数17以上のアルキル基を有するビスアルキルリン酸アニオンを用いると、得られる塩の粘度が非常に高くなり帯電防止性が低下する。
【0042】
このようなRおよびRとしては、炭素数が6以上の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基であることが好ましい。RおよびRとして炭素数5以下のアルキル基を有するビスアルキルリン酸アニオンを用いると、前記カチオンと構成される塩の水溶性が高まり、樹脂に配合した後に水によって上記塩が脱落し易くなるため、抗菌性および帯電防止性の耐久性が低下する傾向にある。
【0043】
また、このようなRおよびRとしては、炭素数が10以下の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基であることが好ましい。RおよびRとして炭素数11以上のアルキル基を有するビスアルキルリン酸アニオンを用いると、前記カチオンと構成される塩の融点が室温(25℃)以上となり、結果として帯電防止性が低下する傾向にある。
【0044】
前記炭素数2〜16の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基としては、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、ペンチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、2−メチルブチル基、2−エチルプロピル基、ヘキシル基、1−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、2−メチルペンチル基、2−エチルブチル基、ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、1−エチルペンチル基、2−メチルヘキシル基、2−エチルペンチル基、3−メチルヘキシル基、3−エチルペンチル基、オクチル基、1−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、2−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチルヘプチル基、3−エチルヘキシル基、ノニル基、1−エチルヘプチル基、2−エチルヘプチル基、3−メチルオクチル基、3−エチルヘプチル基、デシル基、2−エチルオクチル基、ウンデシル基、ドデシル基、3−エチルデシル基、トリデシル基、2−エチルウンデシル基、テトラデシル基、2−ブチルデシル基、ペンタデシル基、2−ペンチルデシル基、ヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基等が挙げられる。
【0045】
(ビスアルキルスルホコハク酸アニオン)
本発明に用いられるビスアルキルスルホコハク酸アニオンは、下記式(4):
【0046】
【化10】

【0047】
で表されるものである。
【0048】
前記式(4)中、RおよびRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数2〜16の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基である。RおよびRとしてこのような基を有していないビスアルキルスルホコハク酸アニオンを用いると、抗菌性と帯電防止性とを高水準でバランスよく付与することができず、また、得られる塩の融点が室温(25℃)以上となり易くなる傾向にある。他方、RおよびRとして炭素数17以上のアルキル基を有するビスアルキルスルホコハク酸アニオンを用いると、得られる塩の粘度が非常に高くなり帯電防止性が低下する。
【0049】
このようなRおよびRとしては、炭素数が6以上の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基であることが好ましい。RおよびRとして炭素数5以下のアルキル基を有するビスアルキルスルホコハク酸アニオンを用いると、得られる塩の融点が室温(25℃)以上となり易く、また、前記カチオンと構成される塩の水溶性が高まり、樹脂に配合した後に水によって上記塩が脱落し易くなるため、抗菌性および帯電防止性の耐久性が低下する傾向にある。
【0050】
また、このようなRおよびRとしては、炭素数が10以下の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基であることが好ましい。RおよびRとして炭素数11以上のアルキル基を有するビスアルキルスルホコハク酸アニオンを用いると、前記カチオンと構成される塩の融点が室温(25℃)以上となり、結果として帯電防止性が低下する傾向にある。
【0051】
前記炭素数2〜16の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基としては、前記式(3)中のRおよびRとして例示した炭素数2〜16の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基が挙げられる。また、本発明に用いられるビスアルキルスルホコハク酸アニオンとしては、ビス−2−エチルヘキシルスルホコハク酸アニオンが特に好ましい。
【0052】
前記特定の四級アンモニウムカチオンと特定の有機アニオンとからなる塩は、電荷を持つ化合物であるため帯電防止性に優れており、同時に良好な抗菌性も発揮する。また、このような塩は、ハロゲンフリーでかつ融点が十分に低く(好ましくは25℃以下)、室温で液体であるという性質を有するイオン液体であることが好ましい。このような室温(25℃)で流動性を示す塩は、イオンが動き易く、湿度が低い環境下でもより優れた帯電防止性が発揮される傾向にある。また、上述した塩の粘度(E型粘度計により標準ローターを使用し、25℃で測定)は特に限定されないが、工業的な取り扱いの容易性、効率性という観点から、20000mPa・s以下であることが好ましい。さらに、上述した塩がハロゲンフリーであるため、本発明の樹脂用抗菌性帯電防止剤は製造コストが低く、腐食性がないなど、環境に対する負荷も低いものである。
【0053】
本発明の樹脂用抗菌性帯電防止剤の形態は特に制限されず、上述した塩をそのまま帯電防止剤として使用してもよいし、有機溶媒で希釈して使用してもよいし、賦形剤を用いて製剤化して使用してもよい。前記有機溶媒は安全性・価格・残留性等を考慮して適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ジエチルエーテル等が好ましい。前記賦形剤は、帯電防止剤の投与形態等に応じて、固体または液体状態の製剤を形成するときに通常用いられるものを適宜採用することができる。また、製剤化する方法も特に制限されず、練り込み、スプレー、コーティングといった表面加工等の手法を適宜採用することができる。固体状態の製剤としては、上述した塩を分散・固化させたものが挙げられる。
【0054】
また、本発明の樹脂用抗菌性帯電防止剤においては、上述した塩に加えて、樹脂用の添加剤として公知の各種の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の成分が更に配合されていてもよい。
【0055】
本発明の樹脂用抗菌性帯電防止剤の製造方法は特に制限されないが、例えば、前記式(3)または(4)で表される有機アニオンとアルカリ金属イオンとの塩、および前記式(1)または(2)で表される四級アンモニウムカチオンとハロゲン化物イオンとの塩を、水と有機溶媒との混合溶媒中でイオン交換反応せしめることにより製造することができる。前記アルカリ金属イオンとしては、ナトリウムイオン、リチウムイオン、カリウムイオン等が挙げられ、また、前記ハロゲン化物イオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等が挙げられる。ここで用いられる有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドンが挙げられる。また、水と有機溶媒との混合比率は特に制限されないが、水:有機溶媒の比率(体積比)が1:0.5〜1:2であることが好ましい。
【0056】
また、前記アニオンとアルカリ金属イオンとの塩と、前記カチオンとハロゲン化物イオンとの塩との混合比率は、前者:後者の比率(モル比)が1:0.8〜1:1.2であることが好ましく、1:1(等モル)程度であることが特に好ましい。さらに、水と有機溶媒との混合溶媒中における、前記アニオンとアルカリ金属イオンとの塩の濃度および前記カチオンとハロゲン化物イオンとの塩の濃度は特に制限されないが、0.1〜2mol/リットル程度であることが好ましい。
【0057】
前記アニオンとアルカリ金属イオンとの塩と、前記カチオンとハロゲン化物イオンとの塩とを、前記混合溶媒中に溶解せしめて混合すればイオン交換反応が進行し、混合溶媒(反応液)中に前記式(3)または(4)で表される有機アニオンと前記式(1)または(2)で表される四級アンモニウムカチオンとからなる塩と、ハロゲン化金属塩が生成する。
【0058】
その反応条件は特に制限されないが、一般的に反応温度は室温以上かつ溶媒還流温度以下の温度であり、反応時間は30分〜14日程度であることが好ましい。また、反応させる際の圧力としては常圧下(大気圧下)でも加圧下でもよく、反応溶液を撹拌下に維持しても静置してもよい。
【0059】
反応終了後、目的とする塩を含む反応液から有機溶媒および水を除去することにより、本発明の樹脂用抗菌性帯電防止剤を得ることができる。その際、前記帯電防止剤は有機溶媒に優先的に溶解して水には溶解しないことから、有機溶媒が除去されるに従って、前記反応液は油相(帯電防止剤)と水相とに分離する。また、ハロゲン化金属塩および未反応の原料化合物は水に優先的に溶解することから、前記反応液から水相を除去することによって、ハロゲン化金属塩および未反応の原料化合物も水とともに除去され、本発明の樹脂用抗菌性帯電防止剤が得られることとなる。なお、前記反応液から有機溶媒および水を除去する方法は特に限定されず、例えば、反応液から先ず有機溶媒を揮発させて除去した後に水を分離除去する方法、または、反応液から先ず水相を分離除去した後に有機溶媒を揮発させて除去する方法が採用される。また、より純度の高い塩を得るために、必要に応じて精製工程、乾燥工程〔例えば、減圧下(約5.3kPa(約40mmHg)以下、好ましくは約0.7kPa(約5mmHg)以下)、80〜100℃で数時間減圧乾燥〕をさらに実施しても良い。なお、このような精製工程としては、例えば、純水により洗浄を行い精製する工程や、更にジクロロエタン等の溶媒にて希釈することにより洗浄効率を上げて精製する工程が挙げられる。
【0060】
次に、本発明の抗菌・帯電防止性樹脂組成物について説明する。本発明の樹脂組成物は、前記本発明の樹脂用抗菌性帯電防止剤を含有するものであり、抗菌性と帯電防止性とを高水準でバランスよく併せ有しているものである。
【0061】
本発明の樹脂組成物の基材である樹脂としては、得られる樹脂組成物の用途等に応じて適宜選択され、各種の樹脂を用いることができるが、前記本発明の樹脂用抗菌性帯電防止剤との相溶性等の観点から、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、スチレン−ブタジエンブロック共重合樹脂、ポリプロピレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂等が好適に用いられる。
【0062】
また、本発明の樹脂組成物における前記本発明の樹脂用抗菌性帯電防止剤の配合量も特に限定されないが、樹脂100質量部に対して前記の塩の配合量が0.1〜20質量部となるように配合されることが好ましく、0.5〜10質量部となるように配合されることがより好ましい。前記の塩の配合量が樹脂100質量部に対して0.1質量部未満であると、抗菌性および帯電防止性が十分に発揮されない傾向にある。他方、前記の塩の配合量が樹脂100質量部に対して20質量部を超える場合、抗菌性および帯電防止性は十分に発揮されるものの、樹脂基材が本来有する機械的特性(強度、硬さ、透明性、耐候性等)が低下する傾向にある。
【0063】
本発明の樹脂組成物の基材となる樹脂に前記帯電防止剤を混合(好ましくは練り込む)する方法としては、特に限定されず、公知の各種方法を用いることができる。例えば、ニーダーを用い、樹脂の軟化点以上の温度で、前記帯電防止剤を直接練り込むことにより本発明の樹脂組成物を得ることができる。また、樹脂と前記帯電防止剤とを溶解することができる有機溶媒にて、樹脂と帯電防止剤とを溶解、混合、均一化し、最終的に用いた溶媒を除去することにより本発明の樹脂組成物を得ることもできる。ここで用いる溶媒としては、特に限定されず、各種の有機溶媒(例えば、THF等のエーテル系溶媒や、NMP等のアミド系溶媒)を用いることができる。
【0064】
また、本発明の樹脂組成物を得る際の加工方法として、基材樹脂に本発明の帯電防止剤を高濃度にて混合したいわゆる「マスターバッチ」を製造しておき、これを基材樹脂の成型加工時に適宜混合することで、本発明の帯電防止剤を添加した本発明の樹脂組成物を製造するという手法を採用することも可能である。
【実施例】
【0065】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、各実施例および比較例における抗菌性、帯電防止性、流水耐久性、および可塑性(ガラス転移点)の評価は以下に示す評価方法に従って実施した。
【0066】
<抗菌性>
JIS L 1902:2002「抗菌加工評価試験 ハローテスト法」に記載の「9.定性試験(ハロー法)」に従って、実施例および比較例で得られた各樹脂組成物フィルムの抗菌性を評価した。なお、各樹脂組成物フィルムを2cm×2cmの大きさに切り取ったものを試験片として用いた。また、供試菌としてはStaphylococcus aureus(ATCC 6538P)(黄色ブドウ球菌)を用い、培養試験における培養条件としては37℃×18〜24時間とした。
【0067】
培養の結果、試験片の周囲にできたハロー(阻止帯)の長さを測定し、以下の判定基準に沿って抗菌性を評価した。なお、この阻止帯の長さが長いほど抗菌性に優れていることを意味する。
判定基準: X(mm) … 阻止帯の長さ
0(−) … 極僅か阻止帯が認められる
0 … 阻止帯が認められない。
【0068】
<帯電防止性>
実施例および比較例で得られた各樹脂組成物フィルムの漏洩抵抗値(単位:Ω)を、以下に示す条件にて測定し、帯電防止性を評価した。
測定装置:SM−5E型超絶縁計(東亜電波工業株式会社製)
測定雰囲気:20℃、40%RHの雰囲気下に1日間放置
測定電圧:1000V。
【0069】
<抗菌性および帯電防止性の耐久性>
抗菌性および帯電防止性の耐久性を評価するため、実施例および比較例で得られた各樹脂組成物フィルムの表面を流水で1時間洗い流し、80℃で2時間乾燥した後、前記の方法と同様にして抗菌性および帯電防止性を評価した。
【0070】
<可塑性(ガラス転移点)>
実施例および比較例で得られた各樹脂組成物フィルムのガラス転移点を以下のように測定した。すなわち、動的粘弾性測定装置(セイコーインスツルメンツ製、DMS120)を用い、−130℃から125℃まで(測定可能な温度まで)5℃/分で昇温させながら、周波数10Hzにて、試験片の貯蔵弾性率E’と損失弾性率E”を測定した。試験片のガラス転移点(Tg)は、貯蔵弾性率E’が温度の上昇ともに急激に低下し、損失弾性率E”がピークを示す温度にて決定した。なお、各樹脂組成物フィルムを1cm×5cm(厚さ:0.2mm)に切断したものを試験片として用いた。
【0071】
また、各実施例および比較例においては以下の有機塩1〜7を用いて樹脂組成物フィルムを得た。
【0072】
<有機塩1>
カチオンとしてベンジルジメチルドデシルアンモニウム、アニオンとしてビス−2−エチルヘキシルスルホコハク酸を用いて構成された有機塩を本発明の樹脂用抗菌性帯電防止剤として用いた。この塩は融点−40℃を示し、水に不溶であった。これを有機塩1とした。
【0073】
<有機塩2>
カチオンとしてベンジルジメチルドデシルアンモニウム、アニオンとしてビス−2−エチルヘキシルリン酸を用いて構成された有機塩を本発明の樹脂用抗菌性帯電防止剤として用いた。この塩は融点−44℃を示し、水に不溶であった。これを有機塩2とした。
【0074】
<有機塩3>
カチオンとしてヘキサデシルピリジニウム、アニオンとしてビス−2−エチルヘキシルスルホコハク酸を用いて構成された有機塩を本発明の樹脂用抗菌性帯電防止剤として用いた。この塩は融点−10℃を示し、水に不溶であった。これを有機塩3とした。
【0075】
<有機塩4>
カチオンとしてベンゼトニウム、アニオンとしてビス−2−エチルヘキシルスルホコハク酸を用いて構成された有機塩を本発明の樹脂用抗菌性帯電防止剤として用いた。この塩は融点−51℃を示し、水に不溶であった。これを有機塩4とした。
【0076】
<有機塩5>
カチオンとしてベンジルジメチルドデシルアンモニウム、アニオンとしてジブチルリン酸を用いて構成された有機塩を本発明の樹脂用抗菌性帯電防止剤として用いた。この塩は融点−20℃を示し、水に溶解した。これを有機塩5とした。
【0077】
<有機塩6>
カチオンとして1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、アニオンとしてビス−トリフルオロメチルスルホニルイミドを用いて構成された有機塩を、比較のための帯電防止剤として用いた。この塩は融点−16℃を示し、水に不溶であった。これを有機塩6とした。
【0078】
<有機塩7>
カチオンとしてベンジルジメチルドデシルアンモニウム、アニオンとして塩化物イオンを用いて構成された塩を、比較のための抗菌剤として用いた。この塩の融点は40℃を示し、水に溶解した。これを有機塩7とした。
【0079】
(実施例1)
粉末状のポリ塩化ビニル樹脂(Aldrich社製、重量平均分子量:43000)9.8gをTHF100gに均一に溶解し、ここに有機塩1(ベンジルジメチルドデシルアンモニウム・ビス−2−エチルヘキシルスルホコハク酸)0.2gを添加し、均一に溶解するまでよく攪拌した。
【0080】
この樹脂・有機塩のTHF溶液を直径5cmのアルミニウムホイル製カップにキャストし、風乾することで厚さ約0.2mmのフィルムを得た。このフィルムを真空乾燥機に入れ、100℃×6時間、真空度66Pa(0.5mmHg)で乾燥し、樹脂組成物フィルム(厚さ:0.2mm)を得た。得られた樹脂組成物フィルムについて抗菌性、帯電防止性および流水耐久性を評価し、得られた結果を表1〜表2に示す。
【0081】
(実施例2)
実施例1のポリ塩化ビニル樹脂の使用量を9.5g、有機塩1の使用量を0.5gとした以外は実施例1と同様にして樹脂組成物フィルムを得た。得られた樹脂組成物フィルムについて抗菌性および帯電防止性を評価し、得られた結果を表1に示す。
【0082】
(実施例3)
実施例1のポリ塩化ビニル樹脂の使用量を9.9g、有機塩1の使用量を0.1gとした以外は実施例1と同様にして樹脂組成物フィルムを得た。得られた樹脂組成物フィルムについて抗菌性および帯電防止性を評価し、得られた結果を表1に示す。
【0083】
(実施例4)
実施例1のポリ塩化ビニル樹脂をポリメチルメタクリレート樹脂(ナカライ社製、重合度:約8000)に代えた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物フィルムを得た。得られた樹脂組成物フィルムについて抗菌性および帯電防止性を評価し、得られた結果を表1に示す。
【0084】
(実施例5)
実施例1のポリ塩化ビニル樹脂をポリプロピレン樹脂(Aldrich社製、重量平均分子量:約12000)に代えた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物フィルムを得た。得られた樹脂組成物フィルムについて抗菌性および帯電防止性を評価し、得られた結果を表1に示す。
【0085】
(実施例6)
実施例1のポリ塩化ビニル樹脂をスチレン・ブタジエンブロック共重合樹脂(日本ゼオン社製、Nipol NS310S、ポリスチレン重量分率:22wt%)に代えた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物フィルムを得た。得られた樹脂組成物フィルムについて抗菌性および帯電防止性を評価し、得られた結果を表1に示す。
【0086】
(実施例7)
実施例1のポリ塩化ビニル樹脂をポリスチレン樹脂(Aldrich社製、重量平均分子量:192000)に代えた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物フィルムを得た。得られた樹脂組成物フィルムについて抗菌性および帯電防止性を評価し、得られた結果を表1に示す。
【0087】
(実施例8)
実施例1のポリ塩化ビニル樹脂をポリビニルブチラール樹脂(和光社製、重合度:約700)に代えた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物フィルムを得た。得られた樹脂組成物フィルムについて抗菌性および帯電防止性を評価し、得られた結果を表1に示す。
【0088】
(実施例9)
実施例1のポリ塩化ビニル樹脂をポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチック社製、ユーピロンS−3000)に代えた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物フィルムを得た。得られた樹脂組成物フィルムについて抗菌性および帯電防止性を評価し、得られた結果を表1に示す。
【0089】
(実施例10)
実施例1のポリ塩化ビニル樹脂の使用量を9.0g、有機塩1の使用量を1.0gとした以外は実施例1と同様にして樹脂組成物フィルムを得た。得られた樹脂組成物フィルムについて抗菌性および帯電防止性を評価し、得られた結果を表1に示す。
【0090】
(実施例11)
水分散ウレタン樹脂(日華化学社製、エバファノールHA−107C、不揮発分:40wt%)23.75gに、有機塩1(ベンジルジメチルドデシルアンモニウム・ビス−2−エチルヘキシルスルホコハク酸)0.2gを添加し、均一に溶解するまでよく攪拌した。これをポリプロピレンフィルム製の箱に流し込み、水平にて24時間放置することで、厚さ0.4mmの樹脂フィルムを得た。この樹脂フィルムに120℃にて40分間熱処理を施し、樹脂組成物フィルムを得た。得られた樹脂組成物フィルムについて抗菌性および帯電防止性を評価し、得られた結果を表1に示す。
【0091】
(実施例12)
有機塩1(ベンジルジメチルドデシルアンモニウム・ビス−2−エチルヘキシルスルホコハク酸)1.0gをポリプロピレングリコール(分子量3000)67gに添加し、均一に溶解するまでよく攪拌した。それに水2.7g、トリエチレンジアミン0.6gを添加してよく混合した。ここにトルエンジイソシアネート32gを添加し、ディスパにてよく攪拌・混合しつつ、これをポリプロピレン製の箱に流し込み、1日間熟成を行うことによって発泡ポリウレタン樹脂組成物からなる樹脂組成物フィルムを得た。得られた樹脂組成物フィルムについて抗菌性、帯電防止性および流水耐久性を評価し、得られた結果を表1〜表2に示す。
【0092】
(実施例13)
実施例1の有機塩1を有機塩2(ベンジルジメチルドデシルアンモニウム・ビス−2−エチルヘキシルリン酸)に代えた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物フィルムを得た。得られた樹脂組成物フィルムについて抗菌性、帯電防止性および流水耐久性を評価し、得られた結果を表1〜表2に示す。
【0093】
(実施例14)
実施例1の有機塩1を有機塩3(ヘキサデシルピリジニウム・ビス−2−エチルヘキシルスルホコハク酸)に代えた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物フィルムを得た。得られた樹脂組成物フィルムについて抗菌性および帯電防止性を評価し、得られた結果を表1に示す。
【0094】
(実施例15)
実施例1の有機塩1を有機塩4(ベンゼトニウム・ビス−2−エチルヘキシルスルホコハク酸)に代えた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物フィルムを得た。得られた樹脂組成物フィルムについて抗菌性および帯電防止性を評価し、得られた結果を表1に示す。
【0095】
(実施例16)
実施例1の有機塩1を有機塩5(ベンジルジメチルドデシルアンモニウム・ジブチルリン酸)に代えた以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物フィルムを得た。得られた樹脂組成物フィルムについて抗菌性、帯電防止性および流水耐久性を評価し、得られた結果を表1〜表2に示す。
【0096】
(実施例17)
実施例1のポリ塩化ビニル樹脂の使用量を9.0g、有機塩1の使用量を1.0gとした以外は実施例1と同様にして樹脂組成物フィルムを得た。得られた樹脂組成物フィルムについてガラス転移点を評価し、得られた結果を表3に示す。
【0097】
(実施例18)
ポリメチルメタクリレート樹脂(ナカライ社製、重合度:約8000)を9.5g、有機塩1の使用量を0.5gとした以外は実施例4と同様にして樹脂組成物フィルムを得た。得られた樹脂組成物フィルムについてガラス転移点を評価し、得られた結果を表3に示す。
【0098】
(比較例1)
実施例1の有機塩1を有機塩6(1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・ビス−トリフルオロメチルスルホニルイミド)に代えた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物フィルムを得た。得られた樹脂組成物フィルムについて抗菌性および帯電防止性を評価し、得られた結果を表1に示す。
【0099】
(比較例2)
実施例1の有機塩1を有機塩7(ベンジルジメチルドデシルアンモニウム塩化物)に代えた以外は実施例1と同様にして樹脂組成物フィルムを得た。得られた樹脂組成物フィルムについて抗菌性、帯電防止性および流水耐久性を評価し、得られた結果を表1〜表2に示す。
【0100】
(比較例3)
ポリ塩化ビニル樹脂単独にて樹脂組成物フィルムを得た。得られた樹脂組成物フィルムについてガラス転移点を評価し、得られた結果を表3に示す。
【0101】
(比較例4)
ポリメチルメタクリレート樹脂単独にて樹脂組成物フィルムを得た。得られた樹脂組成物フィルムについてガラス転移点を評価し、得られた結果を表3に示す。
【0102】
【表1】

【0103】
【表2】

【0104】
【表3】

【0105】
表1に示した結果から明らかなように、本発明の樹脂用抗菌性帯電防止剤は、抗菌性と帯電防止性とを併せ持つものであることが確認された。それに対し、従来の抗菌剤(比較例2)では帯電防止性が発揮されなかったことが確認された。また、室温で液体である有機塩であっても、本発明の樹脂用抗菌性帯電防止剤に該当しないもの(比較例1)は、帯電防止性は発揮されるものの抗菌性は発現しなかったことが確認された。
【0106】
また、表2に示した結果から明らかなように、本発明の樹脂用抗菌性帯電防止剤は、水分の接触時にも抗菌性および帯電防止性の耐久性が良好であることが確認された。
【0107】
さらに、表3に示した結果から明らかなように、本発明の樹脂用抗菌性帯電防止剤は、ポリ塩化ビニル樹脂およびポリメチルメタクリレート樹脂に対して可塑剤としての効果も発揮するものであることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0108】
以上説明したように、本発明によれば、樹脂材料に要求される2つの重要な機能である帯電防止性と抗菌性とを同時に各種の樹脂に付与することを可能とする樹脂用抗菌性帯電防止剤を提供することが可能となる。したがって、本発明の樹脂用抗菌性帯電防止剤は、帯電防止性と抗菌性との双方の特性を併せ有する各種の樹脂組成物を得るための技術として非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)または下記式(2)で表される四級アンモニウムカチオンと、下記式(3)または下記式(4)で表される有機アニオンとの塩を含有することを特徴とする樹脂用抗菌性帯電防止剤。
【化1】

〔式(1)中、Rはメチル基またはエチル基を表し、Rは炭素数8〜18の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基、或いは下記式(1−1):
【化2】

で表される基を表す。〕
【化3】

〔式(2)中、Rは炭素数12〜18の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を表す。〕
【化4】

〔式(3)中、RおよびRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数2〜16の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を表す。〕
【化5】

〔式(4)中、RおよびRは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数2〜16の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基を表す。〕
【請求項2】
前記四級アンモニウムカチオンが、Rが前記式(1−1)で表される基である前記式(1)で表されるものであることを特徴とする請求項1に記載の樹脂用抗菌性帯電防止剤。
【請求項3】
前記四級アンモニウムカチオンと前記有機アニオンとの塩が、室温で液体であるハロゲンフリーの有機塩であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂用抗菌性帯電防止剤。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の樹脂用抗菌性帯電防止剤を含有することを特徴とする抗菌・帯電防止性樹脂組成物。

【公開番号】特開2010−43206(P2010−43206A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208920(P2008−208920)
【出願日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年2月19日 公立大学法人福井県立大学主催の「平成19年度福井県立大学 生物資源学部 生物資源学科 卒業論文発表会」に文書をもって発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年2月21日 公立大学法人福井県立大学主催の「平成19年度福井県立大学 生物資源学研究科 生物資源学専攻 修士論文発表会」に文書をもって発表
【出願人】(000226161)日華化学株式会社 (208)
【Fターム(参考)】