説明

樹脂積層シートの製造方法

【課題】塗工機に樹脂を送液するポンプ内部等でゲル化等を起こさず、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を安定的に基材上に積層できるシートの製造方法を提供する。
【解決手段】溶融した樹脂組成物とする第一工程と、該溶融した組成物を被覆装置により基材上に積層する第二工程を含有する積層シートの製造方法で、第一工程が複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度が25℃以上である活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を加熱してηが1〜1×10dPa・sの溶融した組成物とする工程で、第二工程が相互に離間し各々が2つのポンプギア14,15を有する複数のポンプ部13と各々隣接する2つのポンプ部に位置して互いに隔離するスペーサーピース16と、複数のポンプ部を伝動関係に連結する手段とを有するギアポンプ機構12が設けられた被覆装置により基材上に積層する工程である積層シートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリズムレンズシート、レンチキュラーレンズシート、マイクロレンズアレイ等の光学レンズシート、光拡散フィルム、反射防止フィルム、再帰反射フィルム等の光機能フィルム、映写スクリーン、建装材用エンボスシートをはじめとする意匠性シート等の賦形物の製造、及びナノインプリントに好適に用いることができる賦形用シート、あるいは表面保護層形成用の転写シートに代表される、シート状樹脂基材の片面または両面に、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を積層してなる積層シートを安定して製造することができる積層シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学レンズ、スクリーン、建装材用エンボスシート等の賦形物の製造する方法として活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を含有する樹脂層を、ポリエチレンテレフタレート等のシート状基材に積層させた積層シートを賦形用シートとして用い、該シートに円筒形のレンズ型等を押し当て(押圧し)て、シート状樹脂基材の片面または両面に連続的にレンズパターンを賦形する製造方法(押圧賦形法)が注目されている。押圧賦形法は大きなサイズのシートの成形が可能、大量生産のために数多くの金型を必要としない等、従来より知られている射出成形法、押出成形法、プレス成形法にはない有利な利点がある。
【0003】
また、表面の耐摩耗性および耐薬品性向上に優れた成型品を製造するために、離型フィルムの片面に、転写層として活性エネルギー線硬化型樹脂からなる表面保護層を含む層を設けた転写フィルムを用い、転写層を内側にして成型樹脂と接着するようにこの転写フィルムを成型金型内に配置し、金型を閉じて射出成型を行うと同時にその表面に表面保護層を有する転写層を接着させ、金型から取り出した後に離型フィルムを剥離させ、さらに活性エネルギー線を照射することにより表面保護層を形成させる方法が知られている。
【0004】
この積層シートは、例えば、スクリーンの製造方法の過程においてフィルムを紫外線硬化性樹脂の入った槽に送り、紫外線硬化性樹脂中を、該フィルムを一定の速度で通過させることによりフィルムに樹脂膜厚が50〜300μmとなるように樹脂を塗布することにより製造する(ディップ法)旨の記載が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ところで、シート状樹脂基材上に積層される紫外線硬化性樹脂からなる樹脂層は、賦形前後の樹脂層の流動を防ぐために樹脂の粘度を高くする必要がある。このような、粘度の高い樹脂を用いて前記特許文献1に記載されたディップ法により賦形用シートを製造する場合、特に厚膜を形成しようとすると、極端にラインスピードを低くせざるを得ず、実用的ではない。
【0006】
そのため、高粘性の樹脂をシート上に均一に積層させる機械的手段として種々の塗工機が開発されており、特に厚膜で精度よく積層される手段としては、スロットダイコーターが知られている。しかし、これらの塗工機を用いて、特に活性エネルギー線硬化型樹脂をシート上に積層させようとすると、塗工機に樹脂を送液するポンプ内部等で樹脂が経時的にゲル化を起こしやすい問題があり、樹脂を安定的にシート上に積層させる方法が求められていた。
【0007】
【特許文献1】特開平1−159627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、塗工機に樹脂を送液するポンプ内部等で活性エネルギー線硬化型樹脂が経時的にゲル化等を起こさず、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を安定的にシート状樹脂基材上に積層できる積層シートの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、下記の項目を見出した。
(1)溶剤を除く成分の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T4)が25℃以上である活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いることにより得られる積層シートは賦形前後の樹脂層の流動を防ぐことができる。
(2)活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を加熱し、溶融した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物とする第一工程と、該溶融した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を被覆装置によりシート状樹脂基材上に積層する第二工程を含有する積層シートの製造方法において、前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を加熱して周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1〜1×10dPa・sの溶融した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物とすることによりシート上に積層することができる。
(3)前記溶融した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を被覆装置によりシート状樹脂基材上に積層する際に、フィルムの全被覆巾に渡って延びた送出チャンネルを介し活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を供給容器からスロットノズル機構のノズルスロットへ送出されるようになっている塗工機で、全被覆巾に渡って延びているギアポンプ機構を有する塗工機を用いることにより、ポンプ内部等で活性エネルギー線硬化型樹脂が経時的にゲル化等を起こさず、樹脂を安定的にシート状樹脂基材上に積層できる。
本発明は上記知見に基づいて完成したものである。
【0010】
即ち、本発明は、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を加熱し、溶融した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物とする第一工程と、該溶融した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を被覆装置によりシート状樹脂基材上に積層する第二工程を含有する積層シートの製造方法であり、前記第一工程が溶剤を除く成分の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T4)が25℃以上である活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を加熱して周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1〜1×10dPa・sの溶融した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物とする工程で、且つ前記第二工程がノズルスロットを有するスロットノズル機構を備え、裏当ローラを経て移動するシート状樹脂基材上に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の被膜を施す被覆装置で、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は全被覆巾に渡って延びた送出チャンネルを介し供給容器からスロットノズル機構のノズルスロットへ送出されるようになっており、スロットノズル機構の送出チャンネル内の空所には直線上に位置合わせされ、相互に離間し各々が2つのポンプギアを有する複数のポンプ部と各々隣接する2つのポンプ部に位置して互いに隔離するスペーサーピースと、前記複数のポンプ部を伝動関係に連結する手段とを有するギアポンプ機構が設けられ、該ギアポンプ機構が全被覆巾に渡って延びており、上記ポンプ部と前記スペーサーピースとは互いに独立の部材として形成されている被覆装置によりシート状樹脂基材上に積層する工程であることを特徴とする積層シートの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、樹脂を安定的にシート状樹脂基材上に積層できる積層シートの製造方法を提供することができる。また、本発明で得られる積層シートは、賦形用シートとして用いた場合に良好な賦形性(微細な金型の形状でも正確に再現し、その形状を維持する性能)を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に用いる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、溶剤を除く成分の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T4)が25℃以上である活性エネルギー線硬化型樹脂組成物である必要がある。温度(T4)が25℃より低いと得られるシート状樹脂基材に積層された樹脂層の膜厚を均一に維持することが困難となることから望ましくない。本発明で用いる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は温度25℃において溶剤を除く成分の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10〜1×1012dPa・sである活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が好ましい。
【0013】
また、本発明で用いる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は溶剤を除く成分の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T4)が30℃以上で、周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T6)が100℃以下である活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が好ましい。
【0014】
本発明で用いる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は溶剤を除く成分の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T4)が25℃以上であれば良いが、例えば、ポリエステル樹脂と重合性ビニル系化合物を含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が好ましく用いることができる。
【0015】
前記ポリエステル樹脂としては、シート状樹脂基材が熱による変形の影響を受けない温度領域、例えば30〜100℃での加熱による粘度低下が適度に大きく、賦形性と硬化物の機械物性のバランスのより良好な賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が得られ、また、溶剤溶解性も良好なことから、数平均分子量(Mn)1,000〜8,000のポリエステル樹脂であることが好ましく、1,500〜5,000のポリエステル樹脂がより好ましい。さらに、本発明で用いるポリエステル樹脂としては、環球法による軟化点が80〜150℃のものが好ましい。
【0016】
前記ポリエステル樹脂としては、不飽和二重結合を有するものである方が活性エネルギー線照射による硬化後に十分な架橋密度を得ることができ、好ましい。また、分岐状ポリエステル樹脂であってもよい。
【0017】
前記ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリカルボン酸成分とポリオール成分を必須成分として用いて得られるものが挙げられる。
【0018】
前記ポリカルボン酸成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、マロン酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸、またはその無水物;トリメリット酸、トリメチン酸、ピロメリット酸等の三官能以上のカルボン酸、またはその無水物等が挙げられる。また、炭素原子数1以上4以下の低級アルキルカルボン酸エステル類をポリカルボン酸成分として使用することもできる。これらのポリカルボン酸成分は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、マレイン酸および/またはフマール酸をポリカルボン酸成分の一部乃至全部として用いた場合には、得られるポリエステル樹脂に不飽和二重結合を導入でき、また、重合性ビニル系化合物との相溶性に優れるポリエステル樹脂が得られることから、より好ましい。なお、必要により安息香酸、p−トルイック酸、p−tert−ブチル安息香酸等のモノカルボン酸を併用することもできる。
【0019】
前記ポリオール成分としても、特に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール 、1,4−ブテンジオール 、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物等の2価アルコール類;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート、ペンタエリスリトール等の3価以上のアルコ−ル類等が挙げられる。これらのポリオール成分は単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、ビスフェノール類および/またはそのアルキレンオキサイド付加物をポリオール成分の一部乃至全部として用いた場合には、溶剤を除く成分の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T4)が25℃以上に制御しやすいポリエステル樹脂が得られることから、より好ましい。
【0020】
従って、前記ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリカルボン酸成分の一部乃至全部としてマレイン酸および/またはフマール酸を用い、かつ、ポリオール成分の一部乃至全部としてビスフェノール類および/またはそのアルキレンオキサイド付加物を用いて得られるものが特に好ましい。
【0021】
なお、これらのポリカルボン酸成分とポリオール成分を用いてポリエステル樹脂を製造する際には、ジブチル錫オキシド等のエステル化触媒を適宜使用することができる。
【0022】
前記重合性ビニル系化合物としては、特に限定されるものではなく、各種の重合性ビニルモノマーや重合性ビニルオリゴマー、例えば、β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、β−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕イソシアヌレート等の(メタ)アクリル系モノマー、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールFのジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールSのジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、ノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系オリゴマーなどが挙げられる。これら重合性ビニルモノマーと重合性ビニルオリゴマーはそれぞれ単独で用いることができるが、通常は重合性ビニルモノマーの単独使用、重合性ビニルモノマーと重合性ビニルオリゴマーの併用が好ましく、なかでも重合性ビニルモノマーと重合性ビニルオリゴマーの併用が特に好ましい。なお、重合性ビニルオリゴマーとしては、数平均分子量が200以上2,000以下で、かつ前記ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)よりも小さいオリゴマーが好ましい。
【0023】
また、これら重合性ビニル系化合物のなかでも、活性エネルギー線照射による硬化後に十分な架橋密度を得ることができることから、分子中に不飽和二重結合を2〜6個有する(メタ)アクリル系化合物であるエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕イソシアヌレート、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールFのジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールSのジ(メタ)アクリレートを必須成分として用いることが好ましい。
【0024】
本発明で用いる賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の温度(T4)は40℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましい。また、温度(T6)は80℃以下が好ましく、60℃以下がより好ましい。中でも、温度(T4)が40℃以上で、且つ、温度(T6)は80℃以下である賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が好ましく、温度(T4)が55℃以上で、且つ、温度(T6)は60℃以下である賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物がより好ましい。
【0025】
本発明で用いる賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物としては、前記ポリエステル樹脂と前記重合性ビニル系化合物を必須成分とし、さらに必要により前記ポリエステル樹脂以外の他の樹脂、光重合開始剤、その他の添加剤、溶剤等を含有してなるもの等が挙げられる。
【0026】
なお、賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の温度に対する粘度変化があまりに急激な場合、賦形工程のわずかな温度の振れが賦形性に及ぼす影響を無視できなくなるため、本発明の賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物としては適当な感温性を示すものであることがより好ましく、具体的には前記温度(T4)と温度(T6)の温度差(T4−T6)が20℃以上であることが好ましく、20〜50℃であることがより好ましい。このとき、周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sを示す温度(T5)が30〜100℃であることが好ましく、40〜80℃であることがより好ましい。
【0027】
前記ポリエステル樹脂と前記重合性ビニル系化合物とは、得ようとする賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中の溶剤を除く成分の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T4)が25℃以上であれば任意の割合で混合してよいが、なかでも、その重量比(ポリエステル樹脂/重合性ビニル系化合物)が40/60〜90/10の範囲であることが、前記温度差〔温度(T4)−温度(T6)〕が20℃以上で、かつ、前記温度(T5)が30〜100℃である賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得やすいことから好ましい。また、ポリエステル樹脂と重合性ビニル系化合物の組み合わせは自由に選択できるが、最終製品として得られる賦形物の用途が光学物品の場合、組成物として透明性が得られる組み合わせであることが好ましい。
【0028】
なお、本発明において賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の溶剤を除く成分の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)は、HAAKE社製レオメーター RS500を用いて、測定周波数:6.28rad/sec.(1Hz)、測定開始温度:25℃、測定終了温度:150℃、昇温速度:2℃/min.の条件で、溶剤を含有しない賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物について測定を行って得られるものである。また、温度(T4)、温度(T5)及び温度(T6)は、それぞれ前記複素粘性率(η)の温度変化の測定結果のチャートから求めることができる。
【0029】
本発明で用いる賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、前記したように必要により前記ポリエステル樹脂以外の他の樹脂、光重合開始剤、その他の添加剤等を含有させることができ、前記ポリエステル樹脂以外の他の樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート等が挙げられる。これら他の樹脂の使用量は、通常前記ポリエステル樹脂100重量部に対して100重量部以下、好ましくは50重量部以下である。
【0030】
また、前記光重合開始剤としては、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジェフェニルエタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ベンゾインエチルエーテル、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、イソプロピルチオキサントン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタノン、ベンゾフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエチルエステル等が挙げられ、なかでも1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジェフェニルエタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドが好ましい。光重合開始剤の使用量は、通常前記ポリエステル樹脂と重合性ビニル系化合物の合計(または、活性エネルギー線照射で硬化する樹脂成分)100重量部に対して10重量部以下、好ましくは0.1〜6重量部である。
【0031】
さらに、前記その他の添加剤としては、例えば、離形工程における離形性を向上させるための離形剤、顔料、染料等の着色剤、酸化防止剤、光拡散剤、熱重合防止剤等が挙げられる。
【0032】
これらその他の添加剤のなかでも、本発明の賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の製造時の熱重合の防止や貯蔵安定性を保つために、熱重合防止剤を配合することが望ましい。熱重合防止剤としては、特に限定されないが、代表的なものを例示すれば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、tert−ブチルカテコール、p−ベンゾキノン、フェノチアジン等が挙げられる。熱重合防止剤の使用量は、通常前記ポリエステル樹脂と重合性ビニル系化合物の合計(または、加熱により硬化する樹脂成分)100重量部に対して2重量部以下、好ましくは0.05〜1重量部である。なお、本発明で用いる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には有機溶剤を含有してもよいが、厚膜塗工後の有機溶剤除去を発泡なく行うことが困難なこと、および近年のVOC削減の動向より、無溶剤で実施することがより好ましい。
【0033】
本発明の第一工程は前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を加熱して、周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1〜1×10dPa・sの溶融した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物とする工程である。加熱する温度としては、用いる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物にもよるが、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物がゲル化を生じにくいことから通常50〜150℃が好ましく、60〜120℃がより好ましい。
【0034】
第一工程において、上述されるような活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を加熱・溶融する装置としては特に限定されるものではないが、例えば、マントルヒーター、脱気口、ルッキンググラスおよびマックスブレンド翼を備えたオートクレーブを用いれば、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を加熱しながら均一に混合でき、さらに最終的な積層シートへの気泡の混入を防ぐための減圧・脱泡が可能であるため好ましい。
【0035】
第一工程において周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×100〜1×10dPa・sまで加熱された活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、第二工程で被覆装置において被覆装置によりシート状樹脂基材上に積層する。ここで用いる被覆装置は、ノズルスロットを有するスロットノズル機構を備え、裏当ローラを経て移動するシート状樹脂基材上に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の被膜を施す被覆装置で、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は全被覆巾に渡って延びた送出チャンネルを介し供給容器からスロットノズル機構のノズルスロットへ送出されるようになっており、スロットノズル機構の送出チャンネル内の空所には直線上に位置合わせされ、相互に離間し各々が2つのポンプギアを有する複数のポンプ部と各々隣接する2つのポンプ部に位置して互いに隔離するスペーサーピースと、前記複数のポンプ部を伝動関係に連結する手段とを有するギアポンプ機構が設けられ、該ギアポンプ機構が全被覆巾に渡って延びており、上記ポンプ部と前記スペーサーピースとは互いに独立の部材として形成されている被覆装置である。この様な被覆装置にあっては、全被覆巾に渡るスロットノズル機構により高粘性の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を厚膜で精度よく積層することが可能であり、また、全被覆巾に渡って延びたギアポンプ機構を特徴とする送出チャンネルを有することで、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物をゲル化させることなく、連続的に安定してスロットノズルに送出し、フィルム状樹脂基材上に積層することを可能とする。
【0036】
本発明で用いる被覆装置では、被覆物が被覆巾に渡って延びた送出チャネルを介し供給容器からスロットノズル機構のノズルスロットへ送出され、スロットノズル機構の送出チャネル内で、各々2つの相互に噛合されたポンプギアを有する複数のポンプ部を備えたポンプギア機構が全被覆巾に渡って延びると共に、ポンプギアを取付ける離間ピース即ちスペーサーピースと一緒に容易に取外し可能なごとくポンプ部間で配置される。こうした構成により、全被覆巾に渡って一様に分割された充分な被覆物がノズルスロットで得られ、ポンプ部の数を所望の被覆巾に従って選択でき、しかも容易に変更可能である。
【0037】
好ましくは、ポンプギアがその両側の軸端によってスペーサーピースに取付けられ、動力源に結合される側の各被駆動ポンプギアがロック可能な方法で各ポンプギアと係合する軸連結ピースを介して隣接する被駆動ポンプギアに一体的に接続され、スペーサーピースの領域内で駆動伝達を行なう。従って、被駆動ポンプギアの駆動は一つの駆動モーターで達成できる。
【0038】
上述されるような被覆装置を用いて、フィルム状基材の両面もしくは片面に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を積層するにあたっては、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の温度分布が粘度分布となって、膜厚等の塗工精度に影響を及ぼすため、第一工程において供給された際の温度を維持したまま行うことが好ましい。このために、被覆装置としては、供給容器の壁が加熱される構造を有するものが好ましい。
以下に図面に示した例示を詳しく説明する。
【0039】
第1、2図は被覆材料の薄い被覆を施すための本発明による装置の好ましい例を示しており、通常金属又は硬質ゴムの表面層を有する裏当てローラ1を備えている。被覆すべきシート状樹脂基材2が、矢印Aの方向に沿い裏当てローラ1に沿って案内される。
【0040】
裏当てローラ1の片側に、ノズルスロット4の固定先導ノズルリップと後行ノズルリップ(先導、後行はシート状樹脂基材の移動方向に対して名づけた)を有するスロットノズル機構3が設けられている。ノズルスロット4の先導ノズルリップ5は固定され、ノズルスロット4の後行ノズルリップ6は、本図では回転可能なドクター部材6として構成されている(固定されたノズルリップでも差し支えない)。
【0041】
被覆すべきシート状樹脂基材は例えば、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル系樹脂からなるフィルム状樹脂基材、ポリメチルメタクリレートに代表されるアクリル系樹脂からなるフィルム状樹脂基材、ポリカーボネート樹脂からなるフィルム状樹脂基材のように活性エネルギー線を透過する基材であることが、これら基材の両面または片面に積層され賦形された活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の樹脂層に対して活性エネルギー線を照射する際に、フィルム状樹脂基材の一方の側からの照射で硬化させることが可能となることから好ましい。フィルム状樹脂基材の厚さは、特に限定されるものではなく、用途に応じて決定されるが、38〜500μmのものが好ましく、50〜150μmのものがより好ましい。また、フィルム状樹脂基材は樹脂層との密着性を向上させるために、その表面について、コロナ放電処理、プラズマ処理、プライマー処理等の易接着性処理を施したものが好ましい。
【0042】
本発明で用いる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物7は、加熱管9によって加熱可能な供給容器つまりホッパー8内に入れられている。活性エネルギー線硬化型樹脂組成物7は最大被覆巾にわたる送出チャネル10を介し、同じく被覆巾全体にわたって延びたギアポンプ機構12へ重力送り、またはホッパー8に加圧用の蓋を設ける等の機構を設けた上での加圧移送によって給送され、そこからギアポンプ機構12により同じく最大被覆巾を横切って延びたノズルスロット4の別の送出チャネル11を介してポンプ送りされる。
【0043】
ギアポンプ機構12は送出チャンネル10,11内に拡大して形成されかつノズル幅方向に伸びたているほぼ楕円形の空所に収容されている。ギアポンプ機構12は複数の直線状に離間して整列配置されたポンプ部13を備え、各ポンプ部13は動力源から駆動される被駆動ポンプギア14とそれに噛合うことで駆動されるポンプギア15とから成る。各ポンプ部13間には、ポンプギア14,15の両端面から突出する軸端17を軸承する軸孔を備えたスペーサーピース16が配置されている。ポンプ部13とスペーサーピース16は両方共、スロットノズル機構3の切換と洗浄のため容易に取外せるようにスロットノズル機構3内に配置される。すなわち、ポンプ部とスペーサーピース16は互いに分離可能なように独立に製作され、第2図に示され次に説明する態様で互いに組み合わされている。各種の被覆巾に対しては、対応する数のポンプとスペーサーピース16をスロットノズル機構内に挿着することによって適応できる。
【0044】
ポンプギア14,15は、それらの内側で軸端17によってスペーサーピース16に枢着されている。更に、各被駆動ポンプギア14の軸端17はスペーサーピース16の軸孔の内部において隣接するポンプギア14の軸端17に軸方向連結ピース18によって一体的に駆動連結されている。すなわち、第2図のように対向する軸端17,17の内部に形成されたロック可能な穴(例えば異形断面の穴)に相補形断面の軸方向連結ピース18を挿入することにより連結しロックする。従ってポンプ部13は全て、モーター、減速機等からの元駆動をギアポンプ機構12の一方側19から供給することにより、共通の回転数にて駆動可能である。
【0045】
送出チャネル10,11とギアポンプ機構12の壁面内部には、良好な熱伝達を保証するため、被覆巾を横切って延びた加熱又は冷却チャネル21を設けるのが好ましい。
【0046】
本発明で用いる前記した被覆装置としては、例えば、由利ロール機械(株)製「GPD(ギアーポンプインダイ)システム」等があげられる。
【0047】
本発明においてシート状樹脂基材の片面または両面に積層される活性エネルギー線硬化型樹脂塑性物の樹脂層の厚みとしては、特に限定されるものではなく、その用途に応じて決定されるが、通常10μm〜1mm、好ましくは20〜500μmであり、シート状樹脂基材の厚みの0.3〜3倍とするのが好ましい。また、賦形用シートとして用いる場合には、賦形金型の最大深さの1〜5倍とするのが好ましい。
【0048】
本発明で得られる積層シートを賦形用シートとして用いる場合、これを型押(押圧)賦形した後、活性エネルギー照射により硬化させることにより賦形物とすることができる。賦形用シートの型押(押圧)賦形は、フィルム状樹脂基材の片面または両面に積層された賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物層に、ロール状や平面状の型を型押しして賦形することにより行われる。例えば、フィルム状樹脂基材の片面または両面に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を積層した本発明の積層シートを、賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の不揮発分の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10〜1×10dPa・s、好ましくは1×10〜1×10dPa・sとなる温度、例えば40〜80℃に加温し、片方または両方に型を有する一対のロール状賦形用金型の間を通過させて、連続押圧による賦形と離型を行い、その後活性エネルギー線を照射して硬化させてフィルム状樹脂基材の片面または両側に賦形層を有する光学レンズシート等の賦形物を得る方法などが挙げられる。この際に硬化に用いる活性エネルギー線の光源としては、例えば、低圧または高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電ランプ、カーボン・アーク灯などの各種のものが使用できる。
【実施例】
【0049】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。実施例中の部は、特に記載しない限り重量基準である。実施例における複素粘性率(η)の測定条件を記す。
装置:HAAKE社製レオメーター RS500
測定周波数:6.28rad/sec.(1Hz)
測定開始温度:25℃
測定終了温度:150℃
昇温速度:2℃/min.
【0050】
実施例1
熱可塑性ポリエステル粉体[環球式による軟化点が100℃、東ソー(株)製高速GPC装置 HLC−8220GPCと東ソー(株)製カラム(TSKgel SuperHZ4000、SuperHZ3000、SuperHZ2000、SuperHZ1000、各1本)により、溶媒としてテトラヒドロフランを用いて、流速0.350ml/min.の条件で測定して得られたポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)2,900、同重量平均分子量(Mw)10,400の、分子中に不飽和二重結合を平均2.2個有する熱可塑性ポリエステル樹脂を最大粒径3mmとなるよう微粉砕したもの]69.5部、ウレタンアクリレートオリゴマー〔大日本インキ化学工業(株)製ユニディックV−4260、数平均分子量1,700、平均不飽和基数3個〕17.4部、ジペンダエリスリトールとアクリル酸の反応物〔日本化薬(株)製KAYARAD DPHA〕2.8部、および、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン〔チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製IRGACURE651〕3.7部、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン〔東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製SILWET FZ−2164〕6.5部を2リットルのセパラブルフラスコに仕込み、105℃で混合、減圧脱泡して均一な賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。得られた賦形用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の溶剤を除く成分の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T4)は68℃、周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T5)が53℃、周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T6)が37℃であった。
【0051】
上記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を、由利ロール機械(株)製「GPD(ギアーポンプインダイ)システム」の樹脂ホッパーに仕込み、ダイの温度を105℃、バックロールの温度を65℃とし、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム〔東洋紡績(株)製 東洋紡エステルフィルムA4300〕上に、塗布幅300mm、塗布厚100μmで塗布し、厚さ25μmの剥離処理ポリエチレンテレフタレートフィルム〔東セロ(株)製 SP−PET−03−25BU〕をラミネートして巻き取った。次に、上記塗工フィルムを上記コーターの巻き出しロールにセットし、上記塗工フィルムの未塗工面に対しても同様に上記の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を、上記コーターを用いて塗布し、フィルム状基材の両面に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が積層された積層シートを製造した。105℃における、該活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の複素粘性率は4.0×10dPa・sであり、得られた塗工フィルムの塗工精度はそれぞれの面について±4μmであり、良好な精度を示した。また、6時間にわたる塗工工程の実施中に、メカノラジカルの発生によるゲル化は見られなかった。
【0052】
応用例1
得られた積層シートと、底部幅93μm、上部幅103μm、深さ40μmの矩形形状の溝が、幅47μmの間隔を空けて平行に作成されている平面金型2枚を、それぞれ55℃に加温し、積層シートを金型で挟むように接触させた後、98kPaの圧力を2秒間加えて積層シートの賦形を行った。次いで40℃まで冷却して金型からシートを剥離し、さらに紫外線ランプにより1000mJ/cmの紫外線を照射して、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に金型のパターンが転写され、硬化した賦形シートを得ることが出来た。
【0053】
比較例1
実施例と同一の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物をオートクレーブに仕込み、釜下に設けた取出し口から、15Aの配管とギアポンプ〔マーグポンプ社製TX22/22〕を介してスロットダイコーターへ樹脂を供給し、オートクレーブからダイコーターまでの配管部およびダイコーターのダイの温度を105℃に加熱し、実施例と同様にして塗工を行った。塗工開始後15分より、メカノラジカルの発生による塗面上へのゲル物の出現が確認され、連続的に塗工を行うことができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明で用いる被覆装置の横方向断面図である。
【図2】前記図1の被覆装置が有するスロットノズル機構のポンプ機構を通るII−II線に沿った縦方向断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1:裏当てローラ
2:シート状樹脂基材
3:スロットノズル機構
4:ノズルスロット
5:ノズルリップ
6:ノズルリップ
7:活性エネルギー線硬化型樹脂組成物
8:供給容器
10:送出チャネル
11:送出チャネル
12:ギアポンプ機構
13:ポンプ部
14:ポンプギア(被駆動ギアポンプ)
15:ポンプギア
16:スペーサーピース
17:軸端
18:軸連結ピース
21:加熱又は冷却チャネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を加熱し、溶融した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物とする第一工程と、該溶融した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を被覆装置によりシート状樹脂基材上に積層する第二工程を含有する、シート状樹脂基材の片面または両面に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物からなる樹脂層を積層してなる積層シートの製造方法であり、前記第一工程が溶剤を除く成分の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T4)が25℃以上である活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を加熱して周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10〜1×10dPa・sの溶融した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物とする工程で、且つ前記第二工程がノズルスロットを有するスロットノズル機構を備え、裏当ローラを経て移動するシート状樹脂基材上に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の被膜を施す被覆装置で、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は全被覆巾に渡って延びた送出チャンネルを介し供給容器からスロットノズル機構のノズルスロットへ送出されるようになっており、スロットノズル機構の送出チャンネル内の空所には直線上に位置合わせされ、相互に離間し各々が2つのポンプギアを有する複数のポンプ部と各々隣接する2つのポンプ部に位置して互いに隔離するスペーサーピースと、前記複数のポンプ部を伝動関係に連結する手段とを有するギアポンプ機構が設けられ、該ギアポンプ機構が全被覆巾に渡って延びており、上記ポンプ部と前記スペーサーピースとは互いに独立の部材として形成されている被覆装置によりシート状樹脂基材上に積層する工程であることを特徴とする積層シートの製造方法。
【請求項2】
前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物として、温度25℃において周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10〜1×1012dPa・sである活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いる請求項1記載の積層シートの製造方法。
【請求項3】
前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物として数平均分子量(Mn)1,000〜8,000のポリエステル樹脂と重合性ビニル系化合物を含有し、かつ、溶剤を除く成分の周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T4)が30℃以上で、周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10dPa・sとなる温度(T6)が100℃以下である活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いる請求項1記載の積層シートの製造方法。
【請求項4】
前記ポリエステル樹脂として不飽和二重結合を有するポリエステル樹脂を用いる請求項3記載の積層シートの製造方法。
【請求項5】
前記ポリエステル樹脂としてポリカルボン酸成分とポリオール成分を必須成分として用いて得られるポリエステル樹脂であり、かつ、ポリカルボン酸成分の一部乃至全部としてマレイン酸および/またはフマール酸を用いて得られるポリエステル樹脂を用いる請求項3記載の積層シートの製造方法。
【請求項6】
前記ポリオール成分の一部乃至全部がビスフェノール類および/またはそのアルキレンオキサイド付加物である請求項5記載の積層シートの製造方法。
【請求項7】
前記重合性ビニル系化合物として不飽和二重結合を2〜6個有する(メタ)アクリル系化合物を用いる請求項3記載の積層シートの製造方法。
【請求項8】
前記温度(T4)が55℃以上で、温度(T6)が60℃以下である請求項3記載の積層シートの製造方法。
【請求項9】
前記シート状樹脂基材としてポリエチレンテレフタレート樹脂のシート状樹脂基材を用いる請求項1記載の積層シートの製造方法。
【請求項10】
前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物として50〜150℃の組成物温度で周波数1Hzにおける複素粘性率(η)が1×10〜1×10dPa・sの溶融した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物となる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いる請求項1記載の積層シートの製造方法。
【請求項11】
前記被覆装置として送出チャンネルとギアポンプ機構の領域内に全被覆巾に渡って延びた加熱または冷却チャンネルが設けられた被覆装置を用いる請求項1記載の積層シートの製造方法。
【請求項12】
前記被覆装置として供給容器の壁が加熱される構造を有する被覆装置を用いる請求項1記載の積層シートの製造方法。
【請求項13】
シート状樹脂基材の片面または両面に樹脂層を積層してなる賦形用シートを製造する請求項1〜10のいずれか1項記載の積層シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−222866(P2007−222866A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−291151(P2006−291151)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】