説明

樹脂系化粧板

【課題】化粧板の膨張収縮があったとしても間隙が開くことがなく、見栄え良く、下地が露出せず、ゴミが溜まりにくく、化粧板どうしのせり上がりがなく、その施工の際にも施工し易い形状構造を備えた化粧板が望まれていた。
【解決手段】外形略四角形板状体が長辺に連接構造を持つと共に主材が樹脂である化粧板において、少なくとも長辺の一辺には長辺に平行にクサビ型の突起部が形成されていると共に、長辺の他辺には長辺に前記クサビ型突起部と対をなす切欠部が平行に形成されている化粧板を提供する。また、嵌合部分に熱による伸縮を許容する隙間を設けた樹脂系化粧板を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は床材、壁材、天井材等の建築内装に用いる樹脂系化粧板に関し、特に、施工し易い形状構造を備えた樹脂系化粧板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、戸建て住宅、集合住宅、店舗、ビルディング等に使用される化粧板において、フローリング等の木質系化粧板に代わり、樹脂系材料を用いた樹脂系化粧板が実用化されてきている。木質系化粧板が湿度による影響(伸縮)を受けるのに対し、樹脂系化粧板は熱による影響(伸縮)を受けるのが特徴である。そのことにより、樹脂系化粧板は冬期から夏期にかけての温度差により伸縮し、化粧板同士の突き上げや目すき等が発生することがある。
【0003】
しかし、熱による伸縮は居室の壁際及び突き付け部において規定の隙間を設けることで対処している場合が多い。しかしながら、壁際の直線精度が悪い場合や、施工者によっては規定の隙間を設けずに施工する場合があり、壁際や突き付け部において隙間が設けられずに施工される場合が多いのが現状である。その結果、冬期〜夏期にかけての温度差による樹脂系化粧板の伸縮により、突き上げ、目すき等の問題が発生する場合がある。
【特許文献1】特開平10−61150号公報
【特許文献2】特開2003−97011号公報
【特許文献3】特開2003−247327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記のような問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、冬期から夏期にかけての温度差により伸縮し、化粧板同士の突き上げや目すき等が発生するのを、壁際および突き付け部において規定の隙間を設けることなく、嵌合部分において熱伸縮を許容する空間を設けた樹脂系化粧板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は前記問題を解決するためになされたものであり、その請求項1記載の発明は、外形が略四角形の板状体の長辺に連接構造を持つ樹脂系化粧板において、前記長辺の一辺には長辺に平行にクサビ型突起部が形成されていると共に、前記長辺の他辺には前記クサビ型突起部と対をなす切欠部が平行に形成され、前記切欠部の隙間が、前記突起部分と前記樹脂系化粧板の幅方向に対する熱伸縮分を含めて許容するように形成されてなることを特徴とする樹脂系化粧板である。
【0006】
また、請求項2記載の発明は前記クサビ型突起部の先端部が上方に向かって傘状の凸部を有し、前記切欠部の奥部上面が、前記傘状凸部と同一平面をなすとともに幅方向に対して傘状凸部横幅の2〜5%を許容する隙間が形成されてなることを特徴とする請求項1記載の樹脂系化粧板である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明により、夏場と冬場の施工時の温度差による基材の熱膨張による突き上げ防ぐ樹脂系化粧板を提供することが可能となった。
【0008】
また、請求項2記載により、より正確に、夏場と冬場の施工時の温度差による基材の熱膨張による突き上げ防ぐ樹脂系化粧板を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明の樹脂系化粧板を図面に基づき詳細に説明する。
図1に本発明の樹脂系化粧板の一実施例の断面の構造を示す。樹脂系化粧板P、四辺形の長辺1、四辺形の短辺2、クサビ型突起部と対をなす切欠部3、クサビ型の突起部4という構成であり、樹脂系化粧板の表面には化粧シート5を設けても良い。
【0010】
本発明における樹脂系化粧板Pとしては、具体的には、例えばポリオレフィン系樹脂であれば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−αオレフィン共重合体、プロピレン−αオレフィン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体やそれらの酸変成物(接着性向上の目的で不飽和カルボン酸またはその無水物を共重合させたもの)、アイオノマー(オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属水和物)等から適宜選択が可能である。
【0011】
これらの中から選ばれる樹脂に適宜必要に応じて例えば熱安定剤、酸中和剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料または染料等の着色剤、木質系以外の有機系または無機系の充填剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤、発泡剤、難燃剤、ブロッキング防止剤、半透明化のための光散乱剤、艶調整剤等の添加剤を添加したものが適用可能である。また、異種の樹脂を組み合わせてもよいが、その場合には、互いによく相溶するかもしくは互いによく接着する樹脂の組み合わせであることが望ましいが、そうでない場合であっても、両者を相溶させるための相溶化剤の添加により混合後の物性が維持できれば使用可能である。
【0012】
樹脂系化粧板1の厚みとしては2〜25mm程度が望ましく、大きさとしては短辺長さが45〜90mmで長辺長が600〜1200mmが好適であるが、部屋の大きさによっては長辺が2000mm程度でもあってもかまわない。
【0013】
本発明におけるクサビ型突起部と対をなす切欠部の嵌合後の隙間は、具体的には合わせて0.6mm程度あれば、基材の熱膨張率が1×10−4 /℃程度なので夏冬の施工時の温度差が30℃、45mm幅の板が20枚程度横に並んでも突き上げし難くなる。
【0014】
本発明の樹脂系化粧板を施工する際には、その施工箇所の環境条件の変動範囲内において、通常であれば図2のように施工する。化粧板が膨張する高温や高湿であればその図3のように施工し、化粧板が収縮する低温や低湿の環境条件下であれば、図示しないが、化粧板間の隙間が最大となるように施工しておけば、環境条件の変動の繰り返しを受けても、その範囲内で変化するのみで、化粧板が端部で競りあがったり、嵌合が外れたりする恐れがない。
【0015】
本発明の樹脂系化粧板は、従来の化粧板同様、上面と側面の稜部に、面取加工を施すこともできる。適度な幅の面取り加工を施すと、環境条件の変動による化粧板同士の隙間の幅の変動を目立ちにくくする効果があるほか、化粧板同士の段差も目立たなくなり、床材などに用いた際の歩いたときの引っ掛かり感もなくなる等の効果がある。
【0016】
本発明の樹脂系化粧板は、それのみからなるものであっても良いが、その表面に化粧仕上げのための化粧シートを積層したり、その裏面に下地の不陸の吸収およびクッション性や防音性のためのクッション層を積層したりしても良い。
【0017】
前記化粧シートとしては、天然木の突板や、木目等を印刷した紙等も使用できるが、表面物性やリサイクル適性を考慮すれば、化粧板と同系の熱可塑性樹脂のフィルムに絵柄印刷等の装飾加工を施した化粧フィルムを用いることが最も好ましい。なお、化粧シートを化粧板の嵌合構造部分まで巻き込んで積層する場合には、嵌合部の寸法に化粧シートの厚みを加味した寸法を用いることとなる。
【0018】
前記クッション層としては、例えば発泡ポリエチレンシート、発泡ポリビニルアルコールシート、発泡ウレタンシート等の、発泡倍率5〜20倍程度の発泡樹脂シートや、不織布、フェルト、インシュレーションボード等の繊維質シート等を使用することができる。クッション層の厚みとして2〜4mm程度が好適である。
【0019】
本発明の化粧板を床下地等の構造材面に固定する方法としては、特に限定されないが、粘着剤又は接着剤を使用して接着固定する方法が一般的に用いられる。特に両面粘着テープを使用する方法は、簡便に施工可能であり、好適である。
【実施例1】
【0020】
四角形の樹脂系化粧板の長辺の実の形状を図2のように、木粉樹脂ポリプロピレン樹脂を異型成形用金型から押出し機により押出した後、ポリプロピレン系樹脂の化粧シートを湿気硬化型一液ホットメルト接着剤で貼り合わせた。また、裏面に発泡倍率10倍、厚み2mmの発泡ポリエチレンシート(ハイエチレンS EF1003K:日立化成工業(株)製)を積層した。
【0021】
得られた化粧板を、温度20℃の条件下で、コンクリートスラブ面に両面粘着テープ(#810両面テープ:大日本インキ化学工業(株)製)にて施工した。その際、可能な限り嵌合部の状態は図2の状態に近い状態とした。
【0022】
しかるのち、室温を40℃、5℃、20℃(24時間サイクル)で変化させ、各温度毎(24時間毎に)施工直後の状態からの変化を観察したが、嵌合部分に著しい変化などは見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の樹脂系化粧板は化粧板、壁材、天井材等の建築内装として用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の樹脂系化粧板の長辺、短辺方向の実施の形態を示す説明図である。
【図2】本発明の樹脂系化粧板嵌合部の実施の形態を示す説明図である。
【図3】本発明の樹脂系化粧板嵌合部の実施の形態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0025】
P…樹脂系化粧板
1…四辺形の長辺
2…四辺形の短辺
3…クサビ型突起部と対をなす切欠部
4…クサビ型の突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外形が略四角形の板状体の長辺に連接構造を持つ樹脂系化粧板において、前記長辺の一辺には長辺に平行にクサビ型突起部が形成されていると共に、前記長辺の他辺には前記クサビ型突起部と対をなす切欠部が平行に形成され、前記切欠部の隙間が、前記突起部分と前記樹脂系化粧板の幅方向に対する熱伸縮分を含めて許容する隙間が形成されてなることを特徴とする樹脂系化粧板。
【請求項2】
前記クサビ型突起部の先端部が上方に向かって傘状の凸部を有し、前記切欠部の奥部上面が、前記傘状凸部と同一平面をなすとともに幅方向に対して傘状凸部横幅の2〜5%を許容する隙間が形成されてなることを特徴とする請求項1記載の樹脂系化粧板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−77449(P2006−77449A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−262025(P2004−262025)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】