説明

樹脂系屋根材の施工構造

【課題】隣接する樹脂系屋根材同士を確実に一体化して雨水の浸入を防止できるうえ、吊り子を不要にして施工作業も簡易にする。
【解決手段】家屋等の屋根Y上に敷設施工される樹脂系屋根材において、隣設される一方の樹脂系屋根材1の表面に係止部11を形成すると共に、他方の樹脂系屋根材2の裏面に係止受部21を形成してなり、上記係止受部21に上記係止部11を係止させて、上記樹脂系屋根材1、2が敷設施工される構造にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋等の屋根上に敷設施工される樹脂系屋根材の施工構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家屋等の屋根上には、粘土やセメントを主原料とする窯業系瓦が屋根材として最も一般的に用いられてきたが、窯業系瓦は、高重量であるため、建物に対する負荷が大きく、設計上荷重に耐えうるものであっても地震に際しては家屋の倒壊の原因となる。また、振動により落下した場合には、破損して、付近の人や物に甚大な被害を及ぼすという問題もあった。
【0003】
そこで、近年では、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂に補強繊維や結合剤等を含んで成形した軽量且つ強度の大きな樹脂系屋根材が開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
ところが、この樹脂系屋根材は、軽量且つ大きな強度を有する点では優れている反面、軽量であるために、強風等などによって樹脂系屋根材が浮き上がり易いという危険がある。
【0005】
そのため、図3で示すように、敷設された樹脂系屋根材101の山部121の端縁に吊り子102を釘103で固定しておき、この吊り子102に他の樹脂系屋根材104端縁を係止させて樹脂系屋根材101、104を一体化することで、強風等による葺き上がりを防止する構造にしていた。
【特許文献1】特開2002−276082号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の樹脂系屋根材101では、その適所に吊り子102を釘103で固定する作業を要するため、施工作業に手間を要するという問題があった。
【0007】
また、波型の樹脂系屋根材101では、吊り子102を谷部111に固定すると、吊り子102の厚み近傍の隙間から雨水が浸入して雨漏りし易いため、吊り子102は、樹脂系屋根材101の山部121に固定しなければならない。
【0008】
そのため、吊り子102を樹脂系屋根材101の山部121だけにしか固定できず、隣接する樹脂系屋根材101、103同士を確実に一体化することができず、例えば、台風等の暴風雨の状況下では、吊り子102で固定された山部121以外の部分では、強風によって隙間が生じてしまい、その隙間から雨水が浸入して雨漏りを生じるという問題もあった。
【0009】
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするもので、隣接する樹脂系屋根材同士を確実に一体化して雨水の浸入を防止できるうえ、吊り子を不要にして施工作業も簡易にできる樹脂系屋根材の施工構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、
請求項1に係る樹脂系屋根材の施工構造は、家屋等の屋根上に敷設施工される樹脂系屋根材において、隣設される一方の樹脂系屋根材の表面に係止受部を形成すると共に、他方の樹脂系屋根材の裏面に係止部を形成してなり、上記係止受部に上記係止部を係止させて上記樹脂系屋根材が敷設施工される構造にしたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る樹脂系屋根材の施工構造は、請求項1において、係止部及び係止受部は、樹脂系屋根材の一端縁の全部又は一部に形成されたことを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る樹脂系屋根材の施工構造は、請求項1又は2の何れかにおいて、所望の樹脂系屋根材に吊り子を装着したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、次のような効果がある。
請求項1に係る樹脂系屋根材の施工構造によれば、一方の樹脂系屋根材の係止部を、他方の樹脂系屋根材の係止受部に係止するだけで、隣接される樹脂系屋根材同士を簡単且つ確実に一体化できる。
【0014】
また、吊り子を不要にできるため、施工作業が容易であるうえ、係止される樹脂系屋根材同士に隙間を生じることがなく、隙間から雨水が浸入して雨漏りする危険も防止できる。
【0015】
請求項2に係る樹脂系屋根材の施工構造によれば、係止受部及び係止部は、樹脂系屋根材の一端縁の全部又は一部に形成できるので、例えば、波型の樹脂系屋根材の谷部にのみ設けることも可能である。
【0016】
また、これら係止受部及び係止部を樹脂系屋根材の一端縁の全部に設ければ、隣接される樹脂系屋根材同士を、より確実に一体化できるため、台風等の暴風雨の状況下でも、その強風によって隣接する樹脂系屋根材に隙間が生じることがなく、雨水の浸入による雨漏りを確実に防止できる。
【0017】
請求項3に係る樹脂系屋根材の施工構造によれば、従来の吊り子を更に装着することも可能にしているので、例えば、波型の樹脂系屋根材の山部に吊り子を設けると共に、谷部には、係止受部及び係止部を係止させて、隣接される樹脂系屋根材同士を、より確実に一体化することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る樹脂系屋根材の施工構造Aを図面とともに説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明に係る樹脂系屋根材の施工構造Aの一実施例を示す一部破断された施工状態の斜視図である。
【0020】
この樹脂系屋根材の施工構造Aを実施するまでの施工手順は、従来同様であり、具体的には、先ず、下地材Xを屋根Y上に所定の間隔をあけて固定し、この下地材X上に野地板Zを釘又はビス等の固定具(不図示)で固定する。
【0021】
次に、この固定した野地板Y上にシート状の下葺き材Pを軒先側から棟側に向けて、その弛みや皺が生じないように敷設して従来同様に施工する。
【0022】
このように施工された下葺き材P上に、本発明の樹脂系屋根材の施工構造Aを行うのである。以下、詳説する。
【0023】
樹脂系屋根材1は、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂に補強繊維や結合剤等を含んで波型に一体成形された軽量且つ強度の大きなものである。
【0024】
この樹脂系屋根材1を、下葺き材P上の軒先側に配置して、その適所に釘、ネジ等の固定具(不図示)で固定して横葺きした後、さらに棟側に向けて他の樹脂系屋根材2を同様にして葺き上げて敷設施工して行くのであるが、この樹脂系屋根材1の基端側(棟側)の表面には、上方に向けて凸設された係止部11を形成すると共に、他方の樹脂系屋根材2の裏面には、係止部11を嵌め入れて係止される溝状に凹んだ係止受部21を形成してなる。
【0025】
ここで、係止部11及び係止受部21の係止構造は、これに限定されるものではなく、例えば、後述するように係止部11と係止受部21を逆に形成しても良く、要は、隣接される一方の樹脂系屋根材1と、他方の樹脂系屋根材2とが、密着して係止される構造であれば採用できる。
【0026】
また、係止部11及び係止受部21は、樹脂系屋根材1、2の上下端縁、側端縁等の一端縁の全部又は一部の何れに形成することも可能である。
【0027】
例えば、一方の樹脂系屋根材1の基端側(棟側)の谷部12表面だけに、上方に向けて凸設された係止部11を形成すると共に、他方の樹脂系屋根材2の谷部22の裏面には、係止部11を嵌め入れて係止する凹んだ係止受部21を形成しても良い。
【0028】
このような一部だけに係止部11及び係止受部21を形成すれば、係止部11を係止受部21にスライドさせて嵌め込むだけで、簡単に係止することができる。
【0029】
また、一方の樹脂系屋根材1に横葺きされる樹脂系屋根材(不図示)との係止が必要であれば、一方の樹脂系屋根材1の側端縁に係止部11を形成し、この係止部11に係止される係止受部21を上記横葺きされる樹脂系屋根材(不図示)に形成しても良い。
【0030】
なお、本実施例の係止部11は、樹脂系屋根材1と一体成形された樹脂材で形成したものを示しているが、この係止部11が収縮性を備えたゴム材、発泡材等で形成すれば、係止部11を係止受部21に係止する際、係止部11をスライドさせずに係止受部21に向けて押し込むだけで簡単に係止できる。
【0031】
このようにして固定された一方の樹脂系屋根材1の係止部11に、他方の樹脂系屋根材2の係止受部21を係止しながら重合させて隣接すれば、これらの樹脂系屋根材1、2を互いに密接した状態で一体化しながら敷設施工できる。
【0032】
このように、本発明に係る樹脂系屋根材の施工構造Aによれば、従来のような吊り子を用いることなく、一方の樹脂系屋根材1の係止部11を、他方の樹脂系屋根材2の係止受部21に係止するだけで、隣接される樹脂系屋根材1、2同士を簡単且つ確実に一体化できるので、施工作業が容易であるうえ、係止された樹脂系屋根材1、2同士が密着されるので隙間も生じることがなく、その重合部分から雨水が浸入して雨漏りする危険も防止できる。
【0033】
また、本実施例のように係止部11を上方に向けて突設しておけば、万一、雨水が浸入しても、この係止部11が防水壁となって、それ以上の浸入を防止できる点で好ましい。
【実施例2】
【0034】
図2(a)〜(d)は、本発明に係る係止部11及び係止受部21の他の実施例を示した部分拡大断面図である。
【0035】
なお、図1と共通する部位には、共通の符号を付し、その説明は省略し、ここでは、その特徴のみを説明する。
【0036】
図2(a)で示す樹脂系屋根材の施工構造Aは、一方の樹脂系屋根材1の係止部1が、上方に向けて拡開された逆山形状に形成され、他方の樹脂系屋根材2には、これを係止するために下方に向けて狭めたアリ溝状に形成したものを示している。
【0037】
このような係止部11及び係止受部21によれば、一旦係止された係止構造Aがスライドさせない限り離脱されることがなく、確実に係止できる。
【0038】
図2(b)で示す樹脂系屋根材の施工構造Aは、一方の樹脂系屋根材1の係止部1が、上方から基端側に向けて突設されたフック状に形成され、他方の樹脂系屋根材2には、これを係止するために、下方から基端に向けて掘削された係止受部21を示している。
【0039】
このような係止部11及び係止受部21によれば、樹脂材で形成された硬質の係止部11であっても、これをスライドさせなくても、簡単に係止受部21に係止することができる。
【0040】
図2(c)で示す樹脂系屋根材の施工構造Aは、図2(b)で示した係止部11と係止受部21とが逆構造のものを示しており、図2(b)と同様の効果を得ることができる。
【0041】
図2(d)で示す樹脂系屋根材の施工構造Aは、一方の樹脂系屋根材1の係止部1が、上方から基端側に向けて突設されたフック状に形成されているが、その立ち上げた空間に、他方の樹脂系屋根材2の端縁が嵌合して係止される構造のものを示している。
【0042】
このような係止部11によれば、他方の樹脂系屋根材2に係止受部21を形成しなくても、隣接する樹脂系屋根材1、2同士を簡単に係止することができる。
【0043】
なお、本実施例で示した樹脂系屋根材1、2の山部13、23に、従来の吊り子(不図示)を更に装着することも可能であり、この場合には、波型の樹脂系屋根材の山部13、23に上記吊り子(不図示)を設けると共に、谷部12、22には、係止部11及び係止受部21を係止させて、隣接される樹脂系屋根材1、2同士を、より確実に一体化することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る樹脂系屋根材の施工構造Aの一実施例を示す一部破断された施工状態の斜視図である。
【図2】(a)〜(d)は、本発明に係る係止部11及び係止受部21の他の実施例を示した部分拡大断面図である。
【図3】従来の樹脂系屋根材の施工構造Aの一実施例を示す一部破断された施工状態の斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
A 樹脂系屋根材の施工構造
Y 屋根
1 一方の樹脂系屋根材
11 係止部
2 他方の樹脂系屋根材
21 係止受部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家屋等の屋根上に敷設施工される樹脂系屋根材において、
隣設される一方の樹脂系屋根材の表面に係止部を形成すると共に、他方の樹脂系屋根材の裏面に係止受部を形成してなり、
上記係止受部に上記係止部を係止させて、上記樹脂系屋根材が敷設施工される構造にしたことを特徴とする樹脂系屋根材の施工構造。
【請求項2】
請求項1において、
係止部及び係止受部は、樹脂系屋根材の一端縁の全部又は一部に形成されたことを特徴とする樹脂系屋根材の施工構造。
【請求項3】
請求項1又は2の何れかにおいて、
所望の樹脂系屋根材に吊り子を装着したことを特徴とする樹脂系屋根材の施工構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−307539(P2006−307539A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−131505(P2005−131505)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(593178409)株式会社オーティス (224)
【Fターム(参考)】