説明

樹脂組成物、それを用いたフィルムおよび画像表示装置

【課題】 耐熱性、光学特性および力学特性に優れており、かつ線熱膨張係数が小さなプラスチックフィルムを与えうる樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 ガラス転移温度(Tg)が250℃以上の樹脂が層状珪酸塩を含有してなる、厚さ100μmでの420nmの光線透過率が70%以上であることを特徴とする樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、光学特性および力学特性に優れた新規なフィルムとその原料となる樹脂組成物、および該フィルムを用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無機ガラス材料は、透明性および耐熱性に優れ、かつ光学異方性も小さいことから、透明材料として広く使用されている。しかし、無機ガラスは、比重が大きく、かつ脆いため、成型されたガラス製品は重く、破損しやすい等の欠点を有している。このような欠点から、近年は、無機ガラス材料に代替するプラスチック材料の開発が盛んに行われている。
【0003】
こうした無機ガラス材料の代替を目的としたプラスチック材料として、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等が知られている。これらのプラスチック材料は、軽量で力学特性に優れ、かつ加工性にも優れているため、最近では、例えばレンズやフィルムなどの様々な用途に使用されている。
【0004】
また、液晶表示装置、有機EL表示装置等のフラットパネルディスプレイ分野においても、耐破損性の向上、軽量化、薄型化のニーズが高まっていることから、ガラス基板からプラスチックフィルム基板に置き換えることが検討されている。プラスチックフィルム基板はフレキシブルな基板となり得るため、携帯電話や、電子手帳、ラップトップ型パソコンなど携帯情報端末などの移動型情報通信機器用表示装置の基板として利用できるため、特に高いニーズがある。
【0005】
上記目的に使用される耐熱性プラスチックとしては、これまでに耐熱性の非晶ポリマー、例えば変性ポリカーボネート(変性PC:例えば、特許文献1参照)、ポリエーテルスルホン(PES:例えば、特許文献2参照)、シクロオレフィンコポリマー(例えば、特許文献3参照)が知られている。
しかしながら、これらの耐熱性プラスチックを用いてもプラスチックフィルム基板として十分な耐熱性が得られないという問題があった。すなわち、これらの耐熱性プラスチックを用いたプラスチック基板に導電層を形成させた後、配向膜などを付与するため150℃以上の温度に曝した場合、導電性とガスバリア性が大きく低下するという問題があった。また、アクティブマトリクス型画像素子作製時のTFTを設置する際には、更なる耐熱性が要求されていることから、一段と優れた耐熱性を有するプラスチック基板を提供することが望まれていた。
【0006】
これまでに、耐熱性光学フィルムとしてフルオレン構造を主鎖に有するポリアリレートフィルムが提案されている(例えば特許文献4参照)。しかし、このフィルムはフィルム面内での線熱膨張係数(CTE)が大きいことから、TFT設置のプロセスで熱膨張により無機層にクラックが発生したり、ズレが大きくTFT特性が十分に得られないという問題を有している。
【0007】
一方、樹脂の線熱膨張係数を下げる技術として、樹脂を無機粒子やクレイなどの層状化合物と複合化させる方法が知られている(例えば特許文献5および特許文献6参照)。しかし、無機成分との複合化すると樹脂の透明性を損なわれるという別の問題が発生する。
【0008】
透明性を損なうことなく無機成分と複合化する技術も提案されている(例えば特許文献7参照)が、十分な耐熱性を得ることことができない。
【0009】
以上のようなことから、高い耐熱性を有し、力学特性や光学特性などの要求性能を十分に満足し、かつ、線熱膨張係数が小さなプラスチックフィルムの開発が強く望まれていた。
【特許文献1】特開2000−227603号公報(請求項7、[0009]〜[0019])
【特許文献2】特開2000−284717号公報([0010]、[0021]〜[0027])
【特許文献3】特開2001−150584号公報([0027]〜[0039])
【特許文献4】特開平3−28222号公報
【特許文献5】特開平9−194723号公報
【特許文献6】特開2004−107541号公報
【特許文献7】特開2004−359740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は従来のプラスチック材料の問題点を解消するためになされたものであり、本発明の目的は、耐熱性、光学特性および力学特性に優れており、かつ線熱膨張係数が小さなプラスチックフィルムおよび該フィルムを製造するための樹脂組成物を提供することにある。また、本発明のもう一つの目的は、前記フィルムを用いた、表示品位に優れた画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下の構成を有する本発明によれば課題を解決しうることを見いだした。
[1] ガラス転移温度(Tg)が250℃以上の樹脂が層状珪酸塩を含有してなる、厚さ100μmでの420nmの光線透過率が70%以上であることを特徴とする樹脂組成物。
[2] ガラス転移温度が250℃以上の樹脂が下記一般式(1)、(2)または(3)で表される構造を含むことを特徴とする[1]に記載の樹脂組成物。
【化1】

[一般式(1)および(2)中、環αおよび環βは、それぞれ独立に単環式または多環式の環を表し、1つの4級炭素によって連結している。一般式(1)中、連結基は環αの任意の2つの炭素と結合している。一般式(2)中、連結基は環αの任意の1つの炭素と環βの任意の1つの炭素と結合している。一般式(3)中、2つの環γおよび環δは、それぞれ独立に単環式または多環式の環を表し、環δ上の1つの4級炭素に連結される。連結基は環γの任意の炭素と結合している。]
[3] 層状珪酸塩が有機化されていることを特徴とする[1]または[2]に記載の樹脂組成物。
[4] [1]〜[3]のいずれか一項に記載の樹脂組成物からなり、延伸されていることを特徴とするフィルム。
[5] 20℃から(Tg−20)℃までの線熱膨張係数が−20〜40ppm/℃であることを特徴とする[4]に記載のフィルム。
[6] [4]または[5]に記載のフィルムの上にガスバリア層を有するガスバリア層つきフィルム。
[7] [4]〜[6]のいずれか一項に記載のフィルムの上に透明導電層を有する透明導電層つきフィルム。
[8] [4]〜[7]のいずれか一項に記載のフィルムの上にTFTを有するTFTつきフィルム。
[9] [4]〜[8]のいずれか一項に記載のフィルムを基板として用いた画像表示装置。
[10] 画像表示装置が液晶表示装置または有機エレクトロルミネッセンス表示装置である[9]に記載の画像表示装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明のフィルムは、耐熱性が高く、光学特性と力学物性に優れており、かつ線熱膨張係数が低いという特徴を有する。本発明の樹脂組成物は、このようなフィルムを製造する原料として有用である。また、本発明の画像表示装置は、表示品位に優れている。特に液晶表示装置や有機EL表示装置等として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下において、本発明の樹脂組成物、フィルムおよび画像表示装置について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物には、ガラス転移温度(Tg)が250℃以上である樹脂を用いる。ガラス転位温度(Tg)が250℃以上である樹脂であれば、その詳細は制限されるものではない。
例えば、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリエステルアミド、ポリエステルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトンなどが挙げられる。
【0015】
以下に本発明で用いることができる樹脂の具体例を挙げるが、本発明で用いることができる樹脂はこれらに限定されるものではない。
【化2】

【0016】
本発明で用いることができる樹脂としては、上記一般式(1)〜(3)で表されるような構造を主鎖に含有する樹脂が好ましい。
一般式(1)および(2)中、環αおよび環βは、それぞれ独立に単環式または多環式の環を表し、1つの4級炭素によって連結している。一般式(1)中、連結基は環αの任意の2つの炭素と結合している。一般式(2)中、連結基は環αの任意の1つの炭素と環βの任意の1つの炭素と結合している。一般式(3)中、2つの環γおよび環δは、それぞれ独立に単環式または多環式の環を表し、環δ上の1つの4級炭素に連結される。連結基は環γの任意の炭素と結合している。
【0017】
上記一般式(1)および(2)中、環αおよびβは多環式の構造を表すが、それぞれ独立に2〜5環であることが好ましく、2〜3環であることがより好ましい。環αおよびβは同一の構造であっても異なる構造であってもよい。多環を構成するそれぞれの環は脂環、芳香環、複素環のいずれであってもよい。連結基が結合する環の構造は、脂環、芳香環または複素環のいずれであってもよいが、芳香環であることが好ましい。
上記一般式(1)および(2)中、環αおよびβの例としては、インダン環、クロマン環、2,3−ジヒドロベンゾフラン環、インドリン環、テトラヒドロピラン環、テトラヒドロフラン環、ジオキサン環、シクロヘキサン環、シクロペンタン環等が挙げられる。
【0018】
環αおよびβは置換基を有していてもよく、好ましい置換基としては、アルキル基(炭素数1〜10が好ましく、1〜5がより好ましく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、tert−ブチル基、トリフルオロメチル基など)、アリール基(炭素数6〜30が好ましく、6〜20がより好ましく、例えばフェニル基、2−メチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2−クロロフェニル基、4−メトキシフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基など)、アルコキシ基(炭素数1〜10が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基など)、アシル基(炭素数2〜10が好ましく、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基など)、アシルアミノ基(炭素数1〜10が好ましく、例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基など)、ニトロ基、シアノ基などが挙げられる。より好ましくはアルキル基、ハロゲン原子、アリール基、アルコキシ基、ニトロ基であり、特に好ましくは、アルキル基、ハロゲン原子である。
【0019】
上記一般式(3)中、環δは単環式または多環式の構造を表すが、単環〜5環であることが好ましく、単環〜4環であることがより好ましく、2〜4環であることがさらに好ましい。環δが多環の場合、少なくとも一つの環は芳香環であることが好ましい。また環γは、単環式または多環式の構造を表すが、単環式構造であることが好ましい。環γおよび環δ上には一般式(1)および(2)で示したような置換基を有していてもよい。
上記一般式(3)中、環δの例としては、フルオレン環、インダンジオン環、インダノン環、インデン環、インダン環、テトラロン環、アントロン環、シクロヘキサン環、シクロペンタン環等が挙げられる。上記一般式(3)中、環γの例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フルオレン環、シクロヘキサン環、シクロペンタン環、ピリジン環、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ベンゾチアゾール環、インダン環、クロマン環、インドール環、α-ピロン環等が挙げられる。
【0020】
一般式(3)の好ましい例として下記一般式(4)で表される構造を主鎖に含有する樹脂が挙げられる。
【化3】

【0021】
一般式(4)中、R41〜R44はそれぞれ独立に置換基を表し、一般式(1)および(2)で示したような置換基が挙げられるが、アルキル基、アリール基またはハロゲン原子であることがより好ましい。aおよびbは、それぞれ独立に0〜4の整数を表し、0〜3が好ましく、0〜2がより好ましい。cおよびdは、それぞれ独立に0〜3の整数を表し、0〜3が好ましく、0〜2がより好ましい。連結基が結合する位置は、芳香環のいずれの位置でもよいが、4級炭素のメタ位またはパラ位が好ましく、パラ位が特に好ましい。
【0022】
本発明で用いられるポリマーは、一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位が複数種含まれていてもよく、本発明の効果を損なわない範囲で一般式(1)〜(4)以外の繰り返し単位を含んでいてもよい。本発明で用いられるポリマーにおける一般式(1)〜(4)の繰り返し単位の量は、通常は10モル%以上であり、好ましくは20モル%以上であり、より好ましくは30モル%以上である。
【0023】
上記一般式(1)〜(4)を繰り返し単位として含むポリマーの連結基は、単結合、エステル結合、カーボネート結合、アミド結合、イミド結合、ケトン結合、エーテル結合、スルホン結合、ウレタン結合、ウレア結合、べンゾアゾール結合などが挙げられるが、好ましくは、エステル結合、カーボネート結合、アミド結合、イミド結合、エーテル結合であり、特に好ましくは、エステル結合、アミド結合、イミド結合である。種々の結合様式のうち1種類の結合で連結されたポリマーであってもよく、あるいは複数の組み合わせで連結されたポリマーであってもよい。
【0024】
以下に一般式(1)〜(4)で表される構造を含むポリマーを挙げるが、本発明で用いることができるポリマーはこれらに限定されるものではない。
【0025】
【化4】

【0026】
【化5】

【0027】
【化6】

【0028】
【化7】

【0029】
【化8】

【0030】
本発明で用いられる層状珪酸塩は、特に限定されるものではないが、膨潤性および/または劈開性を有する粘土鉱物やハイドロタルサイト類化合物およびその類似化合物が好ましい。これら粘土鉱物としては、例えば、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、スチブンサイト、ヘクトライト、テトラシリリックマイカ、ナトリウムテニオライト、白雲母、マーガライト、タルク、バーミキュライト、金雲母、ザンソフィライト、緑泥石などを挙げることができる。
上記層状珪酸塩は、天然物であっても合成物であってもよい。また、これらの層状珪酸塩は、単独で用いることができ、また複数を併用することもできる。
【0031】
上記層状珪酸塩の形状は、特に限定されるものではないが、層状珪酸塩が多層に重なっていると有機化した後に劈開することが困難になることから、親有機化されていない層状珪酸塩の厚さは、可能な限り1層における厚み(約1nm)であることが好ましい。また、平均長さは0.01〜50μm、好ましくは0.05〜10μm、アスペクト比は20〜500、好ましくは50〜200であるものを好適に用いることができる。
【0032】
上記層状珪酸塩は、その層間にイオン交換可能な無機カチオンを有する。イオン交換可能な無機カチオンとは、層状珪酸塩の結晶表面上に存在するナトリウム、カリウム、リチウムなどの金属イオンのことである。これらのイオンは、カチオン性物質とのイオン交換性を有し、イオン交換反応によりカチオン性を有する種々の物質を上記層状珪酸塩の層間に挿入(インターカレート)できる。
【0033】
上記層状珪酸塩のカチオン交換容量(CEC)は、特に限定されるものではないが、例えば25〜200meq/100gであることが好ましく、50〜150meq/100gであることがより好ましく、90〜130meq/100gであることがさらに好ましい。層状珪酸塩のカチオン交換容量が25meq/100g以上であれば、イオン交換により層状珪酸塩の層間に十分な量のカチオン性物質が挿入(インターカレート)され、層間が十分に親有機化される。一方、カチオン交換容量が200meq/100g以下であれば、層状珪酸塩の層間の結合力が強固になりすぎて結晶薄片が剥離しにくくなることもなく、良好な分散性を維持することができる。
【0034】
上記条件を満たす層状珪酸塩の具体例としては、例えば、クニミネ工業のスメクトンSA、クニミネ工業のクニピアF、コープケミカル社のソマシフME−100、コープケミカル社のルーセンタイトSWNなどの商品を挙げることができる。
【0035】
本発明で用いられる層状珪酸塩の有機化剤としては、一般的はオニウム塩であれば何でもよいが、耐熱性の観点から特開2004−107541号公報に開示されているような熱分解温度の高いオニウム塩を用いることが好ましい。
【0036】
上記層状珪酸塩の層間に親有機化剤を含有させる方法は、特に限定されるものではないが、合成操作が容易であるという観点からイオン交換反応で無機カチオンを親有機化剤に交換することにより含有させる方法が好ましい。上記層状珪酸塩のイオン交換可能な無機カチオンを親有機化剤とイオン交換する手法は、特に限定されるものではなく、既知の方法を用いることができる。具体的には、水中におけるイオン交換、アルコール中におけるイオン交換、水/アルコール混合溶媒中におけるイオン交換等の手法を用いることができる。
【0037】
具体的には、層状珪酸塩を水、アルコール等で十分溶媒和させた後、親有機化剤を加え、撹拌し、層状珪酸塩の層間の金属イオンを親有機化剤で置換させる。その後、未置換の親有機化剤を十分に洗浄し、濾取し、乾燥する。その他、有機溶剤中で層状珪酸塩と有機カチオンを直接反応させたり、樹脂などの存在下、層状珪酸塩と親有機化剤とを押出機中で加熱混練しながら反応させたりすることも可能である。
イオン交換は、0〜100℃の温度で行うことが好ましく、10〜90℃の温度範囲で行うことがより好ましく、15〜80℃の温度範囲で行うことがさらに好ましい。
【0038】
上記イオン交換の進行状況は、既知の方法で確認することができる。例えば、濾液のICP発光分析法により交換された無機イオンを確認する方法、X線解析により層状珪酸塩の層間隔が拡張したことを確認する方法、熱天秤により昇温過程の質量減少から親有機化剤の存在を確認する方法等により、層状珪酸塩の親有機化剤と置換されたことを確認することができる。イオン交換は、層状珪酸塩のイオン交換可能な無機イオン1当量に対し、0.05当量(5%)以上であることが好ましく、0.1当量(10%)以上であることがより好ましく、0.5当量(50%)以上であることがさらに好ましい。
【0039】
本発明においては、上記の方法で得られた有機変性層状珪酸塩とガラス転移温度が250℃以上の樹脂とを溶融混練または溶液中で混合することにより、有機変性層状珪酸塩が劈開した状態で前記重合体中に分散された樹脂組成物を得ることができる。溶融混練で用いる溶融混練機としては、熱可塑性樹脂で一般に実用されている混練機を挙げることができ、例えば、一軸または多軸混練押出機、ロール、バンバリーミキサー等を混練機として使用することができる。
【0040】
本発明で用いる樹脂は耐熱性が高いため、溶液混練が好ましい。混練時に用いる溶剤としては、有機化層状珪酸塩および樹脂の両方に対して溶解性が高いものが好ましい。このような溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、1,2−ジクロロエタン、酢酸エチル、酢酸メチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、クロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、メタノール、エタノール、シクロヘキサノン、アニソール等が挙げられるが、本発明で用いることができる溶媒はこれらに限定されるものではない。
【0041】
上記有機変性層状珪酸塩の配合比率は、樹脂に対して0.1〜50質量%であることが好ましく、0.2〜30質量%であることがさらに好ましく、0.3〜25質量%であることが特に好ましい。
【0042】
[フィルム]
本発明のフィルムは、上記の本発明の樹脂組成物を用いて製造する。本発明のフィルムを製造する方法として、公知の方法を採用することができるが、溶液流延法、押出成形法(溶融成型法)を用いることが好ましい。
溶液流延法における流延および乾燥方法については、米国特許第2336310号、米国特許第2367603号、米国特許第2492078号、米国特許第2492977号、米国特許第2492978号、米国特許第2607704号、米国特許第2739069号、米国特許第2739070号、英国特許第640731号、英国特許第736892号の各明細書、特公昭45−4554号、特公昭49−5614号、特開昭60−176834号、特開昭60−203430号、特開昭62−115035号の各公報に記載がある。
【0043】
溶液流延法を用いて本発明のフィルムを製造する製造装置の例としては、特開2002−189126号公報の段落[0061]〜[0068]に記載された製造装置、図1および2などが挙げられるが、本発明で用いることができる製造装置はこれらに限定されるものではない。
【0044】
溶液流延法では、樹脂組成物を溶媒に溶解する。使用する溶媒は、樹脂組成物を溶解可能なものであれば特に制限はないが、特に25℃で固形分濃度10質量%以上を溶解できる溶媒を用いることが好ましい。また、使用する溶媒の沸点は250℃以下のものが好ましく、205℃以下のものがさらに好ましい。沸点が205℃以下であれば、溶媒を十分乾燥でき、フィルム中に溶媒が残存しないため好ましい。
【0045】
このような溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、1,2−ジクロロエタン、酢酸エチル、酢酸メチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、クロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、メタノール、エタノール、シクロヘキサノン、アニソール等が挙げられるが、本発明で用いることができる溶媒はこれらに限定されるものではない。
【0046】
上記溶媒は2種以上を混合して用いてもよい。混合溶媒の例としては、塩化メチレンに炭素数1〜5のアルコールを1種ないし数種を混合した溶媒が挙げられる。この場合、アルコールの含有量は、溶媒全体に対して5〜20質量%であることが好ましい。さらに、炭素数3〜12のエーテル、ケトンおよびエステルを適宣混合した溶媒が好ましい例として挙げられ、この場合、炭素数1〜5のアルコールを1種ないし数種混合してもよい。また、発明協会公開技報2001−1745号、段落6に記載の有機溶媒の例なども好ましい例として挙げられる。
【0047】
溶液流延に用いる溶液中における樹脂組成物の濃度は、5〜60質量%であることが適当であり、10〜40質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがさらに好ましい。樹脂組成物の濃度が5〜60質量%であれば、適度な粘度が得られ、厚さの調節が容易であり、かつ良好な製膜性が得られる。
【0048】
溶液流延する方法は特に限定されないが、例えば、バーコーター、Tダイ、バー付きTダイ、ドクターブレード、ロールコート、ダイコート等を用いて平板またはロール上に流延することができる。
【0049】
溶媒を乾燥する温度は、使用する溶媒の沸点によって異なるが、2段階に分けて乾燥することが好ましい。第一段階としては10〜100℃で溶媒の濃度が50質量%以下、好ましくは40%質量以下になるまで乾燥し、次いで、第二段階として平板またはロールからフィルムを剥がし、60℃〜樹脂のTgの温度範囲で乾燥することが好ましい。
なお、平板またはロールからフィルムを剥がす場合、第一段階の乾燥終了直後に剥がしても、一旦冷却してから剥がしてもよい。
【0050】
本発明のフィルムは延伸されていることが好ましい。延伸法としては、公知の方法が使用でき、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、特開平4−284211号、特開平4−298310号、特開平11−48271号各公報などに記載されている、ロール一軸延伸法、テンター一軸延伸法、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、インフレーション法、圧延法により延伸できる。以下において、テンターを用いる延伸法を例にとって詳細に説明する。
【0051】
フィルムの延伸は、常温または加熱条件下で実施する。フィルムは、乾燥処理を行いながら延伸することができ、特に溶媒が残存する状態で延伸することが有効である。フィルムの延伸は、一軸延伸でも二軸延伸でもよいが、二軸延伸が好ましい。例えば、フィルムの搬送ローラーの速度を調節して、フィルムの剥ぎ取り速度よりもフィルムの巻き取り速度の方を速くするとフィルムは延伸される。フィルムの巾をテンターで保持しながら搬送して、テンターの巾を徐々に広げることによってもフィルムを延伸できる。フィルムの乾燥後に、延伸機を用いて延伸すること(好ましくはロング延伸機を用いる一軸延伸)もできる。フィルムの延伸倍率(元の長さに対する延伸による増加分の比率)は、0.5〜300%であることが好ましく、さらには1〜200%であることがより好ましく、1〜100%であることが特に好ましい。
【0052】
延伸速度は5%/分〜1000%/分であることが好ましく、さらに10%/分〜500%/分であることが好ましい。延伸温度は用いる樹脂のガラス転移温度(Tg)を基準として、Tg〜(Tg+50℃)で行うことが好ましく、さらにはTg〜(Tg+40℃)で行うことが好ましく、特にTg〜(Tg+30℃)で行うことが好ましい。延伸はヒートロール、放射熱源(IRヒーター等)および/または温風により行うことが好ましい。また、温度の均一性を高めるために恒温槽を設けてもよい。
【0053】
延伸前に予熱工程を設けることが好ましい。また、延伸後に熱処理を行ってもよい。熱処理はフィルムのガラス転移温度より100℃低い値から10℃高い温度で行うことが好ましく、熱処理時間は1秒間〜3時間であることが好ましい。また、加熱方法はゾーン加熱であっても、赤外線ヒータを用いた部分加熱であっても良い。工程の途中または最後にフィルムの両端をスリットしても良い。これらのスリット屑は回収し原料として再利用することが好ましい。さらにテンターに関しては、特開平11−077718号公報に記載されているようにテンターで幅保持しながらウエブを燥させる際に、乾燥ガス吹き出し方法、吹き出し角度、風速分布、風速、風量、温度差、風量差、上下吹き出し風量比、高比熱乾燥ガスの使用等を適度にコントロールすることで、溶液流延法による速度を上げたり、ウエブ幅を広げたりする時の平面性等の品質低下を防止することができる。
【0054】
また、特開平11−077822号公報に記載されているように、ムラ発生を防ぐために、延伸した熱可塑性樹フィルムを延伸工程後、熱緩和工程においてフィルムの幅方向に温度勾配を設けて熱処理することもできる。
【0055】
さらに、ムラ発生を防ぐために、特開4−204503号公報に記載されているように、フィルムの溶媒含有率を固形分基準で2〜10%にして延伸することもできる。
【0056】
また、クリップ噛み込み幅の規定によるカールを抑制するために、特開2002−248680号公報に記載されているように、テンタークリップ噛み込み幅DをD≦(33/(log延伸率×log揮発分))に設定して延伸することにより、カールを抑制し、延伸工程後のフィルム搬送を容易にすることもできる。
【0057】
さらに、高速軟膜搬送と延伸とを両立させるために、特開2002−337224号公報に記載されているように、テンター搬送を、前半ピン、後半クリップに切り替えることもできる。
【0058】
また、Reが小さくかつばらつきのない光学用フィルムを製造するために、特開2002−311245号公報に記載されているように、剥離したウェブを第1のテンター装置に送り、ウェブの幅方向両側縁部を把持して、ウェブ幅を一定に保持、またはウェブを幅方向に延伸する工程と、ウエブを乾燥させてフィルムを得る工程と、フィルムを第2にテンターに装置に送りフィルムの幅方向両縁部を把持して、フィルムの幅を一定に保持、またはフィルムを幅方向に延伸する工程をそれぞれ実施することもできる。
【0059】
さらに、特開2003−014933号公報に記載されているように、延伸する方法として、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を横方向に広げて横方向に延伸するテンター(横延伸機)を用いる方法を採用することもできる。また、縦方向に延伸または収縮させるために、同時2軸延伸機を用いて搬送方向(縦方向)にクリップやピンの搬送方向の間隔を広げたりまたは縮めたりすることもできる。また、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかに延伸を行うことができ、破断等の危険性が減少できるので好ましく、また、縦方向に延伸する方法としては、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法も用いることができる。なお、これらの延伸方法は複合して用いることもでき、縦延伸、横延伸、縦延伸または縦延伸、縦延伸などのように、延伸工程を2段階以上に分けて行ってもよい。
【0060】
さらに、テンター乾燥のウエブの発泡を防止し、離脱性を向上させ、発塵を防止するために、特開2003−004374号公報には、乾燥装置において、乾燥器の熱風がウエブ両縁部に当たらないように、乾燥器の幅がウエブの幅よりも短く形成されている発明が記載されている。
【0061】
また、テンター乾燥のウエブの発泡を防止し、離脱性を向上させ、発塵を防止するために、特開2003−019757号公報に記載されているように、テンターの保持部に乾燥風が当らないようウエブ両側端部内側に遮風板を設けることもできる。
【0062】
さらに、搬送、乾燥を安定的に行うために、特開2003−053749号公報に記載されているように、ピンテンターにより担持されるフィルムの両端部の乾燥後の厚さをXμm、フィルムの製品部の乾燥後の平均厚さをTμmとしたとき、XとTとの関係が(1)T≦60のとき、40≦X≦200、(2)60<T≦120のとき、40+(T−60)×0.2≦X≦300または(3)120<Tのとき、52+(T−120)×0.2≦X≦400の関係を満たすようにすることもできる。
【0063】
また、多段式テンターにシワを発生させないために、特開平2−182654号公報に記載されているように、テンター装置において、多段式テンターの乾燥器内に加熱室と冷却室とを設け、左右のクリップ-チェーンを別々に冷却することもできる。
【0064】
さらに、ウエブの破断、シワ、搬送不良を防止するために、特開平9−077315号公報に記載されているように、ピンテンターのピンにおいて、内側のピン密度を大きくし、外側のピン密度を小さくすることもできる。
【0065】
また、テンター内においてウエブ自体の発泡やウエブが保持手段に付着するのを防止するために、特開平9−085846号公報に記載されているように、テンター乾燥装置において、ウエブの両側縁部保持ピンを吹出型冷却器でウエブの発泡温度未満に冷却すると共に、ウエブを喰い込ます直前のピンをダクト型冷却器でのドープのゲル化温度+15°C以下に冷却することもできる。
【0066】
さらに、ピンテンターハズレを防止し、異物を良化するために、特開2003−103542号公報に記載されているように、ピンテンターにおいて、差込構造体を冷却し、差込構造体と接触しているウエブの表面温度がウエブのゲル化温度を超えないようにする溶液製膜方法を採用することもできる。
【0067】
また、溶液流延法により速度を上げたり、テンターにてウェブの幅を広げたりする時の平面性等の品質低下を防止するために、特開平11−077718号公報に記載されているように、テンター内でウエブを乾燥する際には、風速を0.5〜20(40)m/s、横手方向温度分布を10%以下、ウェブ上下風量比を0.2〜1とし、乾燥ガス比を30〜250J/Kmolとすることもできる。特開平11−077718号公報には、テンター内での乾燥において、残留溶媒の量に応じた好ましい乾燥条件が記載されている。具体的には、(1)ウェブを支持体から剥離した後、ウェブ中の残留溶媒量が4質量%になるまでの間に、吹き出し口からの吹き出す角度をフィルム平面に対して30°〜150°の範囲にし、かつ乾燥ガスの吹き出し延長方向に位置するフィルム表面上での風速分布を風速の上限値を基準にした時、上限値と下限値との差を上限値の20%以内にして、乾燥ガスを吹き出し、ウェブを乾燥させること、(2)ウェブ中の残留溶媒量が70〜130質量%の時には、吹き出し型乾燥機から吹き出される乾燥ガスのウェブ表面上での風速を0.5m/sec〜20m/secとすること、(3)また残留溶媒量が4質量%以上70質量%未満の時には、乾燥ガスの風速が0.5m/sec〜40m/secで吹き出される乾燥ガス風により乾燥させ、ウェブの幅手方向の乾燥ガスの温度分布がガス温度の上限値を基準にした時、上限値と下限値との差を上限値の10%以内とすること、(4)ウェブ中の残留溶媒量が4質量%〜200質量%以下の時には、搬送されるウェブの上下に位置する吹き出し型乾燥機の吹き出し口から吹き出す乾燥ガスの風量比qを0.2≦q≦1とすることができる。さらに、好ましい態様として、(5)乾燥ガスに少なくとも1種の気体を使用し、その気体の平均比熱が31.0J/K・mol〜250J/K・molとなるようにすること、(6)乾燥中の乾燥ガスに含まれる常温で液体の有機化合物の濃度が50%以下である飽和蒸気圧の乾燥ガスで乾燥することもできる。
【0068】
平面性を良化し、テンター内での裂けによる品質低下を改良し、生産性を上げるために、特開平11−090943号公報に記載されているように、テンタークリップにおいて、テンターの任意の搬送長さLt(m)と、Ltと同じ長さのテンターのクリップがウェブを保持している部分の搬送方向の長さの総和Ltt(m)との比Lr=Ltt/Ltを、1.0≦Lr≦1.99とすることもできる。このとき、ウェブを保持する部分が、ウェブ幅方向から見て隙間なく配置することがこのましい。
【0069】
また、テンターにウェブを導入する際、ウエブのたるみに起因する平面性悪化と導入不安定性を良化させるために、特開平11−090944号公報に記載されているように、プラスティックフィルムの製造装置において、テンター入口前に、ウェブ幅手方向のたるみ抑制装置を設置することもできる。このとき、たるみ抑制装置は幅手方向に広がる角度が2〜60°の方向範囲で回転する回転ローラーであることが好ましい。また、ウェブの上部に吸気装置を設置したり、ウェブの下から送風できる送風機を設置したりすることも好ましい。
【0070】
また、安定した物性のフィルムを作るために、特開平2000−289903号公報に記載されているように、剥離後の溶媒含有率が50〜12質量%のウェブで、ウェブの巾方向にテンションを与えつつ搬送する搬送装置を用いて処理することもできる。すなわち、ウェブの幅検知手段とウェブの保持手段と、2つ以上の可変可能な屈曲点を有する搬送装置によって、ウェブの幅を検知し、検知の信号からウェブ幅を演算し、屈曲点の位置を変更することができる。
【0071】
さらに、クリッピング性を向上し、ウエブの破断を長期間防止し、品質の優れたフィルムを得るために、特開2003−033933号公報に記載されているように、テンターの入口寄り部分の左右両側において、ウェブの左右両側縁部の上方および下方のうちの少なくとも下方にウェブ側縁部カール発生防止用ガイド板を配置し、ガイド板のウェブ対向面が、ウェブの搬送方向に配されたウェブ接触用樹脂部とウェブ接触用金属部とによって構成される装置を用いることもできる。このときの好ましい態様としては、(1)ガイド板のウェブ対向面のウェブ接触用樹脂部がウェブ搬送方向の上流側に、ウェブ接触用金属部が同下流側に配置される態様、(2)ガイド板のウェブ接触用樹脂部およびウェブ接触用金属部の間の段差(傾斜を含む)が500μm以内である態様、(3)ガイド板のウェブ接触用樹脂部およびウェブ接触用金属部のウェブに接する幅手方向の距離が、それぞれ2〜150mmである態様、(4)ガイド板のウェブ接触用樹脂部およびウェブ接触用金属部のウェブに接するウェブ搬送方向の距離が、それぞれ5〜120mmである態様、(5)ガイド板のウェブ接触用樹脂部が、金属製ガイド基板に表面樹脂加工もしくは樹脂塗装により設けられている態様、(6)ガイド板のウェブ接触用樹脂部が樹脂単体からなっている態様、(7)ウェブの左右両側縁部において上方および下方に配置されたガイド板のウェブ対向面同士の間の距離が、3〜30mmである態様、(8)ウェブの左右両側縁部において上下両ガイド板のウェブ対向面同士の間の距離が、ウェブの幅手方向にかつ内方に向かって幅100mm当たり2mm以上の割合で拡大されている態様、(9)ウェブの左右両側縁部において上下両ガイド板がそれぞれ10〜300mmの長さを有するものであり、かつ上下両ガイド板がウェブの搬送方向に沿って前後にずれるように配置されていて、上下両ガイド板同士の間のずれの距離が、−200〜+200mmとなっている態様、(10)上部ガイド板のウェブ対向面が、樹脂または金属のみによって構成されている態様、(11)ガイド板のウェブ接触用樹脂部がテフロン(登録商標)製であり、ウェブ接触用金属部がステンレス鋼製である態様、(12)ガイド板のウェブ対向面またはこれに設けられたウェブ接触用樹脂部および/またはウェブ接触用金属部の表面粗さが、3μm以下である態様等である。また、ウェブ側縁部カール発生防止用上下ガイド板の設置位置は、支持体の剥離側端部からテンター導入部までの間が好ましく、特にテンター入口寄り部分に設置するのがより好ましい。
【0072】
さらに、テンター内で乾燥中発生するウエブの切断やムラを防止するために、特開平11−048271号に記載されているように、剥離後、ウエブの溶媒含有率50〜12質量%の時点で、幅延伸装置で延伸・乾燥し、またウエブの溶媒含有率が10質量%以下の時点で加圧装置によってウェブの両面から0.2〜10KPaの圧力を付与することもできる。このとき、溶媒含有率が4質量%以上の時点で張力付与を終了するが好ましい。また、ニップロールを用いて圧力をウェブ(フィルム)両面から加える場合は、ニップロールのペアは1〜8組程度が好ましく、加圧する場合の温度は100〜200℃が好ましい。
【0073】
膜厚が薄く、光学的等方性、平面性に優れたフィルムを得るために、特開2000−239403号公報に記載されているように、剥離時の残留溶媒率Xとテンターに導入する時の残留溶媒率Yの関係を0.3X≦Y≦0.9Xの範囲として製膜を行うこともできる。
【0074】
特開2002−286933号公報に記載されているように、流延により製膜するフィルムを延伸する方法として、加熱条件下で延伸する方法と溶媒含有条件下で延伸する方法とが挙げられるが、加熱条件下で延伸する場合には、樹脂のガラス転移点近傍以下の温度で延伸することが好ましく、一方、流延製膜されたフィルムを溶媒含浸条件下で延伸する場合には、一度乾燥したフィルムを再度溶媒に接触させて溶媒を含浸させて延伸することが可能である。
【0075】
以上記載したこれらのテンターに関する発明は、適宜組み合わせて適用することもできる。
【0076】
本発明のフィルムを延伸する際、見かけのTgを下げること等を目的として溶剤を含有させた状態で延伸することができる。Tgが高いフィルムの場合、熱延伸では熱分解してしまうが、溶剤を含有させることで熱分解温度以下での延伸が可能となる。
【0077】
延伸時のフィルムの溶剤含有量は、1〜50質量%が好ましく、1〜45質量%がさらに好ましく、1〜40質量%が特に好ましい。
【0078】
溶剤を含有させた状態で延伸する際の温度は、0〜250℃が好ましく、0〜230℃がさらに好ましく、10〜220℃が特に好ましい。
【0079】
溶剤を含有させる方法として、フィルムの乾燥過程の状態を利用する方法と、フィルムを乾燥させた後に溶剤を含有させる方法があるが、前者が特に好ましい。
【0080】
含有させる溶剤は何でもよいが、ドープに用いたのと同じ種類のものが好ましい。
【0081】
溶剤を含有させた状態で延伸する場合の延伸方法としては、公知の延伸方法が使用でき、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、特開平4−284211号、特開平4−298310号、特開平11−48271号各公報などに記載されている、ロール一軸延伸法、テンター一軸延伸法、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、インフレーション法、圧延法、プレス延伸法を使用することができる。
【0082】
溶剤を含有させた状態で延伸する条件のうち、延伸温度以外の条件は上記で示した溶剤を含有しない状態での延伸の条件を使用することができる。
【0083】
本発明のフィルムは延伸後、残留応力の除去を目的として熱処理してもよい。
【0084】
本発明に用いる樹脂の質量平均分子量は10,000〜5,000,000が好ましく、15,000〜5,000,000がより好ましく、20,000〜5,000,000が特に好ましい。
【0085】
本発明に用いる樹脂のガラス転位温度(Tg)は250〜500℃が好ましく、250〜450℃がより好ましく、250〜400℃がさらに好ましい。
【0086】
本発明のフィルムの線熱膨張係数は20℃から(Tg−20)℃の温度範囲で、−20〜40ppm/℃であり、−15〜35ppm/℃であることが好ましく、−10〜30ppm/℃であることがより好ましい。線熱膨張係数を20℃から(Tg−20)℃の温度範囲で−20〜40ppm/℃である本発明のフィルムは、ガスバリア層や透明電極などの無機材料を積層した場合に加熱による膨張率の差による無機層の割れを抑制できる、無機層の各層間の位置ズレを抑制できるなどの利点がある。
【0087】
本発明のフィルムは膜厚100μmでの420nmの光線透過率は70%〜100%であることが好ましく、75%〜100%であることがさらに好ましく、80〜100%であることが特に好ましい。また、全光線透過率は、70〜100%であることが好ましく、80〜100%であることがさらに好ましく、85〜100%であることが特に好ましい。
【0088】
本発明のフィルムのヘイズは5%以下であることが好ましく、4%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。
【0089】
本発明のフィルム表面には、用途に応じて他の層を形成してもよいし、また他の部品との密着性を高める目的で、フィルム表面上にケン化、コロナ処理、火炎処理、グロー放電処理等の処理を行ってもよい。さらに、フィルム表面にアンカー層を設けてもよい。
【0090】
本発明のフィルムの少なくとも片面側には、透明導電層を積層してもよい。透明導電層としては、公知の金属膜、金属酸化物膜等を適用できる。中でも、透明性、導電性、機械的特性に優れた金属酸化物膜を透明導電層とすることが好ましい。金属酸化物膜は、例えば、不純物としてスズ、テルル、カドミウム、モリブテン、タングステン、フッ素、亜鉛、ゲルマニウム等を添加した酸化インジウム、酸化カドミウムまたは酸化スズの金属酸化物膜;不純物としてアルミニウムを添加した酸化亜鉛、酸化チタン等の金属酸化物膜が挙げられる。中でも酸化スズから主としてなり、酸化亜鉛を2〜15質量%含有した酸化インジウムの薄膜が、透明性、導電性が優れており、好ましく用いられる。
【0091】
これら透明導電層の成膜方法は、目的の薄膜を形成できる方法であれば、いかなる方法でもよい。例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法、Cat−CVD法等の気相中より材料を堆積させて膜形成する気相堆積法などが適しており、特許第3400324号、特開2002−322561号、特開2002−361774号の各公報記載の方法で成膜することができる。中でも、特に優れた導電性・透明性が得られるという観点から、スパッタリング法が好ましい。
【0092】
スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、またはプラズマCVD法の好ましい真空度は0.133mPa〜6.65Pa、好ましくは0.665mPa〜1.33Paである。透明導電層を形成する前に、プラズマ処理(逆スパッタ)、またはコロナ処理のように基材フィルムに表面処理を加えることが好ましい。また透明導電層を設けている間に50〜200℃に昇温してもよい。
【0093】
このようにして得られた透明導電層の膜厚は、20〜500nmであることが好ましく、50〜300nmであることがさらに好ましい。
【0094】
透明導電層の25℃、相対湿度60%で測定した表面電気抵抗は、0.1〜200Ω/□であることが好ましく、0.1〜100Ω/□であることがより好ましく。0.5〜60Ω/□であることがさらに好ましい。また、透明導電層の光透過性は、80%以上であることが好ましく、83%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。
【0095】
本発明のフィルムは、ガス透過性を抑制するために、少なくとも片面にガスバリア層を積層することもできる。好ましいガスバリア層としては、例えば、珪素、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、ジルコニウム、チタン、イットリウムおよびタンタルからなる群から選ばれる1種または2種以上の金属を主成分とする金属酸化物、珪素、アルミニウム、ホウ素の金属窒化物またはこれらの混合物で形成された膜を挙げることができる。この中でも、ガスバリア性、透明性、表面平滑性、屈曲性、膜応力、コスト等の点から珪素原子数に対する酸素原子数の割合が1.5〜2.0の珪素酸化物を主成分とする金属酸化物で形成された膜が良好である。これら無機化合物からなるガスバリア層は、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法、Cat−CVD法等の気相中より材料を堆積させて膜形成する気相堆積法により作製できる。中でも、特に優れたガスバリア性が得られるスパッタリング法およびCat−CVD法が好ましい。またガスバリア層を設けている間に50〜250℃に昇温してもよい。
【0096】
上記ガスバリア層の厚みは、10〜300nmであることが好ましく、30〜200nmであることがさらに好ましい。
【0097】
上記ガスバリア層は、透明導電層と同じ側、反対側いずれに設けてもよい。
【0098】
本発明のフィルムのガスバリア性能は、40℃、相対湿度90%で測定した水蒸気透過度が0〜5g/m2・dayであることが好ましく、0〜3g/m2・dayであることがより好ましく、0〜2g/m2・dayであることがさらに好ましい。また、40℃、相対湿度90%で測定した酸素透過度は、0〜1ml/m2・day・atmであることが好ましく、0〜0.7ml/m2・day・atmであることがより好ましく、0〜0.5ml/m2・day・atmであることがさらに好ましい。ガスバリア性能が上記範囲内であれば、例えば有機EL表示装置や液晶表示装置に用いた場合、水蒸気および酸素によるEL素子の劣化を実質的になくすことができるため好ましい。
【0099】
ガスバリア性能を向上させる目的で、ガスバリア層と隣接して欠陥補償層を形成することが好ましい。欠陥補償層としては、例えば、(1)米国特許第6171663号明細書、特開2003−94572号公報記載のようにゾルゲル法を用いて作製した無機酸化物層、(2)米国特許第6413645号明細書に記載の有機物層を用いることができる。これらの欠陥補償層は、真空下で蒸着後、紫外線または電子線で硬化させる方法、または塗布した後、加熱、電子線、紫外線等で硬化させることにより作製することができる。欠陥補償層を塗布方式で作製する場合には、従来の種々の塗布方法、例えば、スプレーコート、スピンコート、バーコート等の方法を用いることができる。
【0100】
本発明のフィルムには、耐薬品性付与を目的として無機バリア層、有機バリア層、有機−無機ハイブリッドバリア層などを設けてもよい。
【0101】
[画像表示素子]
以上説明した本発明のフィルムは、画像表示装置に用いることができる。ここで、画像表示装置の種類は特に限定されず、従来知られているものを挙げることができる。また、本発明のフィルムを基板として用いて表示品質に優れたフラットパネルディスプレイを作製できる。フラットパネルディスプレイとしては液晶、プラズマディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(EL)、無機エレクトロルミネッセンス、蛍光表示管、発光ダイオード、電界放出型などが挙げられ、これら以外にも従来ガラス基板が用いられてきたディスプレイ方式のガラス基板に代わる基板として用いることができる。さらに、本発明のフィルムは、フラットパネルディスプレイ以外にも太陽電池、タッチパネルなどの用途にも応用が可能である。タッチパネルは、例えば、特開平5−127822号公報、特開2002−48913号公報等に記載のものに応用することができる。
【0102】
本発明のフィルムは、特に薄膜トランジスタ(TFT)表示素子用基板として好ましく用いることができる。TFTアレイの作製方法は、例えば、特表平10−512104号公報に記載された方法等を用いることができる。さらに、これらの基板はカラー表示のためのカラーフィルターを有していてもよい。カラーフィルターは、いかなる方法を用いて作製してもよいが、フォトリソグラフィー手法を用いて作製することが好ましい。
【0103】
本発明のフィルムを基板として液晶表示装置用途などで使用する場合、光学的均一性を達成するために、フィルムを構成する樹脂組成物は非晶性ポリマーであることが好ましい。さらに、レタデーション(Re)、およびその波長分散を制御する目的で、固有複屈折の符号が異なる樹脂を組み合わせたり、波長分散の大きい(あるいは小さい)樹脂を組み合わせたりすることができる。
【0104】
本発明のフィルムは、レターデーション(Re)を制御し、ガス透過性や力学特性を改善する観点からは、異種樹脂組成物を組み合わせて積層等することが好ましい。異種樹脂組成物の好ましい組み合わせは特に制限はなく、前記したいずれの樹脂組成物も使用可能である。
【0105】
反射型液晶表示装置は、下から順に、下基板、反射電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、透明電極、上基板、λ/4板、および偏光膜の構成を一般に有している。このうち本発明のフィルムは、透明電極および/または上基板として用いることができる。カラー表示の場合には、さらにカラーフィルター層を反射電極と下配向膜との間、または上配向膜と透明電極との間に形成することが好ましい。
【0106】
透過型液晶表示装置は、下から順に、バックライト、偏光板、λ/4板、下透明電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、上透明電極、上基板、λ/4板、および偏光膜の構成を一般に有している。このうち本発明のフィルムは上透明電極および/または上基板として用いることができる。カラー表示の場合には、さらにカラーフィルター層を下透明電極と下配向膜との間、または上配向膜と透明電極との間に設けることが好ましい。
【0107】
液晶層(液晶セル)の種類は特に限定されないが、TN(Twisted Nematic)、IPS(In-P1ane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crysta1)、AFLC(Anti-ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optica1ly Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。本発明のフィルムは、表示モードの液晶表示装置に用いることも有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置に用いても有効である。
【0108】
液晶セルおよび液晶表示装置については、特開平2−176625号公報、特公平7−69536号公報、MVA(SID97,Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845)、SID99, Digest of tech. Papers(予稿集)30(1999)206)、特開平11−258605号公報、SURVAIVAL(月刊ディスプレイ、第6巻、第3号(1999)14)、PVA(Asia Display 98,Proc.of the-18th-Inter. Display res. Conf.(予稿集)(1998)383)、Para-A(LCD/PDP International 99)、DDVA(SID98, Digest of tech. Papers(予稿集)29(1998)838)、EOC(SID98, Digest of tech. Papers(予稿集)29(1998)319)、PSHA(SID98, Digest of tech. Papers(予稿集)29(1998)1081)、RFFMH(Asia Display 98, Proc. of the-18th-Inter. Display res. Conf. (予稿集)(1998)375)、HMD(SID98, Digest of tech. Papers (予稿集)29(1998)702)、特開平10−123478号公報、国際公開第98/48320号パンフレット、特許第3022477号公報、および国際公開第00/65384号パンフレット等に記載されている。
【0109】
本発明のフィルムは、有機EL表示用途にも使用できる。有機EL表示装置の具体的な層構成としては、陽極/発光層/透明陰極、陽極/発光層/電子輸送層/透明陰極、陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/透明陰極、陽極/正孔輸送層/発光層/透明陰極、陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/透明陰極、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/透明陰極等が挙げられる。
【0110】
本発明のフィルムが使用できる有機EL表示装置は、前記陽極と前記陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2〜40V)、または直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。これら発光素子の駆動については、例えば、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号等の各公報、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、日本特許第2784615号公報、等に記載の方法を利用することができる。
【0111】
有機EL表示装置のフルカラー表示方式としては、カラーフィルター方式、3色独立発光方式、色変換方式などいずれの方式を用いてもよい。
【0112】
液晶表示措置、有機EL表示装置の駆動方式としてはパッシブマトリックス、アクティブマトリックスのいずれでもよい。
【0113】
本発明のフィルムは、光学フィルム、位相差フィルム、偏光板保護フィルム、透明導電フィルム、表示装置用基板、フレキシブルディスプレイ用基板、フラットパネルディスプレイ用基板、太陽電池用基板、タッチパネル用基板、フレキシブル回路用基板、光ディスク保護フィルムなどに用いることができる。
【実施例】
【0114】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0115】
(実施例1)
[層状珪酸塩の有機化]
層状珪酸塩としてルーセンタイトSWN(コープケミカル社製)10gと蒸留水250mLを80℃にて混合し均一になるまで攪拌した。ドデシルアミン塩酸塩5.28gを蒸留水50mLに溶解させたものを上記混合物に激しく攪拌しながら徐々に加えた。80℃にて2時間攪拌した後、析出物をろ過、熱水500mLで3回洗浄したのち、凍結乾燥することで有機化層状珪酸塩C−1を得た。
【0116】
[溶液混練]
樹脂P−8を特開平3−28222号公報に開示されている方法にしたがって合成した。樹脂P−8を9.8g、有機化層状珪酸塩C−1を2.0g、N,N−ジメチルアセトアミドを56.6g混合し、90℃にて5時間激しく攪拌することで、均一な樹脂組成物溶液(ドープ)を得た。
【0117】
[フィルムの作製および延伸]
上記で得たドープをガラス板上にドクターブレードにて流延し、140℃にて乾燥させた。完全に乾燥しきる前にガラス板より剥離し、120mm×120mmの大きさに切り出して、同時二軸延伸機により延伸した。延伸条件は温度120℃、延伸速度100mm/分(縦、横共に)、チャック間距離100mm、延伸倍率20%(延伸前の長さを基準とした増加分の割合)とした。延伸後フィルムを金枠で固定し、200℃、真空にて5時間乾燥させた。金枠から取り外し、真空中、300℃にて2時間アニール処理を行い、フィルムF−1を作製した。
【0118】
(実施例2〜5)
樹脂P−12、30、32、35を用いて実施例1と同様の操作にてフィルムF−2〜F−5を作製した。アニール温度はそれぞれの樹脂の持つガラス転移温度を基準として(Tg−20)℃にて行った。
【0119】
(比較例1)
実施例1で有機化層状珪酸塩を添加せずに他は同様の操作にてフィルムH−1、2を作製した。
【0120】
(比較例2)
実施例1で延伸操作をせずに他は同様の操作にてフィルムH−2を作製した。
【0121】
(試験および評価)
実施例1〜5、比較例1、2で用いた樹脂の質量平均分子量とガラス転移温度(Tg)、および、作成したフィルムF−1〜F−5、およびH−1、2の厚さ、線熱膨張係数、420nmでの光線透過率、引張弾性率を以下の方法で測定した。
【0122】
<質量平均分子量>
東ソー(株)製のHLC−8120GPCを用いて、テトラヒドロフランもしくはDMFを溶媒とするポリスチレン換算GPC測定によりポリスチレンの分子量標準品と比較して質量平均分子量を求めた。
【0123】
<ガラス転移温度(Tg)>
示差走査熱量計(DSC6200、セイコー(株)製)を用いて、窒素中、昇温温度10℃/分の条件で各フィルム試料のTgを測定した。
【0124】
<フィルムの厚さ>
アンリツ(株)製、K402Bを用いて、ダイヤル式厚さゲージによりフィルム基板の厚さを測定した。
【0125】
<線熱膨張係数>
フィルムサンプル(19mm×5mm)を作成し、TMA(理学電機(株)製、TMA8310)を用いて測定した。測定速度は、3℃/minとした。線熱膨張係数は20℃から(Tg−20)℃までの平均値を算出した(Tgは各サンプルのガラス転移温度)。測定は3サンプルを行い、その平均値を用いた。
【0126】
<光線透過率>
波長420nmにおける光線透過率を分光光度計(島津製作所(株)製、分光光度計UV−3100PC)を用いてフィルム基板の光線透過率を測定した。測定したフィルムの膜厚を100μmに換算したときの透過率を評価に用いた。
【0127】
<引張弾性率>
フィルムサンプル(1.0cm×5.0cm片)を作製し、引張速度3mm/分の条件下、テンシロン(東洋ボールドウィン(株)製、テンシロン RTM−25)を用いて引張弾性率を測定した。測定は3サンプル行い、その平均値を求めることにより評価した(サンプルは25℃、相対湿度60%で一晩放置後使用。チャック間距離3cm)。
【0128】
【表1】

【0129】
層状珪酸塩を添加し、かつ延伸操作を行ったフィルムの線熱膨張係数は、添加しなかったフィルムまたは延伸操作を行わなかったフィルムのそれよりも小さな値を示した。また光線透過率(420nm、100μm換算)は層状珪酸塩を添加しても低下しなかった。これにより耐熱性、透明性、熱膨張係数が良好なフィルムの作製に成功した。
【0130】
(実施例6) フラットパネルディスプレイの作製および評価(TN型液晶表示装置)
1.ガスバリア層の形成
上記のフィルムF−1〜F−5およびH−1、2の両面にDCマグネトロンスパッタリング法により、Si02をターゲットとし500Paの真空下で、Ar雰囲気下、出力5kWでスパッタリングした。得られたガスバリア層の膜厚は60nmであった。ガスバリア層を形成したフィルムの40℃、相対湿度90%における水蒸気透過度は0.1g/m2・day以下であり、40℃、相対湿度90%における酸素透過度は0.1ml/m2・day以下であった。
【0131】
2.透明導電層の形成
ガスバリア層を設置したフィルムF−1〜F−5およびH−1、2を100℃に加熱しながら、ITO(In2395質量%、Sn025質量%)をターゲットとしDCマグネトロンスパッタリング法により、0.665Paの真空下で、Ar雰囲気下、出力5kWで140nmの厚みのITO膜からなる透明導電層を片面に設けた。透明導電層を設置したフィルムの25℃、相対湿度60%における表面電気抵抗は30Ω/□であった。
【0132】
3.加熱処理
上記で得られた透明導電層を設置したフィルムF−1〜F−5およびH−1、2に対して、TFT設置プロセスを想定して300℃で2時間の加熱処理を行った。室温に冷却後、SiO2層、ITO層の割れの有無を観察したところ、F−1〜F−5に割れは見られなかったが、H−1、2では割れが見られた。
層状珪酸塩を添加したフィルムは、添加していないフィルムよりも面内の線熱膨張係数が大きく低下しているため加熱による無機層の割れがなくなっていた。
【0133】
4.円偏光膜の作製
本発明のフィルムF−1〜F−5と比較例フィルムH−1、2を用いて作製したフィルム基板の透明導電層の反対側に、特開2000−826705号公報、特開2002−131549号公報に記載のλ/4板を積層し、さらにその上に特開2002−865554号公報に記載の偏光板を積層し円偏光板を形成した。なお、偏光膜の透過軸とλ/4板の遅相軸との角度は45°となるように配置した。
【0134】
5.TN型液晶表示装置の作製
本発明のフィルムF−1〜F−5と比較例フィルムH−1、2並びに微細な凹凸が形成されたアルミニウム反射電極を設けたガラス基板の透明導電層(ITO)側に、それぞれポリイミド配向膜(SE−7992、日産化学(株)製)を形成し、200℃で30分熱処理した。本発明のフィルムF−1〜F−5を用いたものは、抵抗値の増加とガス透過性の増加は全く見られなかった。これに対し、比較例フィルムH−1、2を用いたものは抵抗値およびガス透過性が2倍以上に増大した。
さらに、ラビング処理を行った後、1.7μmのスペーサーを介して、二枚の基板(ガラス基板とプラスチック基板)を配向膜が向かい合うように重ねた。二つの配向膜のラビング方向は、110°の角度で交差するように、基板の向きを調節した。基板の間隙に、液晶(MLC−6252、メルク社製)を注入し、液晶層を形成した。このようにして、ツイスト角が70°、Δndの値が269nmのTN型液晶セルを作製した。
さらに、フィルム基板のITOと反対面に上記λ/4板、偏光板を積層し反射型液晶表示装置を作製した。
本発明のフィルムF−1〜F−5を用いたものは良好な画像が得られた。一方、比較例フィルムH−1、2を用いたものは、ガスバリア性の低下に起因する黒点故障(画層部に細かな黒い点となり画像が表示されない)や、導電層の割れに起因する色ずれが発生した。
【0135】
(実施例7) 有機EL素子の作製および評価
本発明のフィルムF−1〜F−5と比較例フィルムH−1、2をそれぞれ用いて、有機EL素子試料A〜Gを作製した。
上記で加熱処理を行った透明導電層を形成した基板フィルムの透明電極層より、アルミニウムのリード線を結線し、積層構造体を形成した。透明電極の表面に、ポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホン酸の水性分散液(BAYER社製、Baytron P:固形分1.3質量%)をスピンコートした後、150℃で2時間真空乾燥し、厚さ100nmのホール輸送性有機薄膜層を形成した。これを基板Xとした。
一方、厚さ188μmのポリエーテルスルホン(住友ベークライト(株)製スミライトFS−1300)からなる仮支持体の片面上に、下記組成を有する発光性有機薄膜層用塗布液を、スピンコーターを用いて塗布し、室温で乾燥することにより、厚さ13nmの発光性有機薄膜層を仮支持体上に形成した。これを転写材料Yとした。
【0136】
ポリビニルカルバゾール(Mw=63000、アルドリッチ社製) : 40質量部
トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム錯体(オルトメタル化錯体) : 1質量部
ジクロロエタン : 3200質量部
【0137】
基板Xの有機薄膜層の上面に転写材料Yの発光性有機薄膜層側を重ね、一対の熱ローラーを用い160℃、0.3MPa、0.05m/minで加熱・加圧し、仮支持体を引き剥がすことにより、基板Xの上面に発光性有機薄膜層を形成した。これを基板XYとした。
【0138】
また、25mm角に裁断した厚さ50μmのポリイミドフィルム(UPILEX-50S、宇部興産製)片面上に、パターニングした蒸着用のマスク(発光面積が5mm×5mmとなるマスク)を設置し、約0.1mPaの減圧雰囲気中でAlを蒸着し、膜厚0.3μmの電極を形成した。Al23ターゲットを用いて、DCマグネトロンスパッタリングにより、Al23をAl層と同パターンで蒸着し、膜厚3nmとした。Al電極よりアルミニウムのリード線を結線し、積層構造体を形成した。得られた積層構造体の上に下記組成を有する電子輸送性有機薄膜層用塗布液をスピンコーター塗布機を用いて塗布し、80℃で2時間真空乾燥することにより、厚さ15nmの電子輸送性有機薄膜層を形成した。これを基板Zとした。
【0139】
ポリビニルブチラール2000L(Mw=2000、電気化学工業社製): 10質量部
1−ブタノール : 3500質量部
下記構造を有する電子輸送性化合物 : 20質量部
【0140】
【化9】

【0141】
基板XYと基板Zを用い、電極同士が発光性有機薄膜層を挟んで対面するように重ね合せ、一対の熱ローラーを用い160℃、0.3MPa、0.05m/minで加熱・加圧し、貼り合せ、有機EL素子試料A〜Gを得た。
【0142】
得られた有機EL素子試料A〜Gをソースメジャーユニット2400型(東洋テクニカ(株)製)を用いて、直流電圧を有機EL素子に印加した。本発明の試料A〜Eは、発光することを確認した。一方、比較試料F、Gは一瞬発光したもののすぐに発光しなくなった。
【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明のフィルムは、必要に応じて各種機能層を設けた上で、液晶、プラズマディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(EL)、無機エレクトロルミネッセンス、蛍光表示管、発光ダイオード、電界放出型などフラットパネルディスプレイなどの画像表示装置に用いることができる。また、本発明のフィルムは、太陽電池、タッチパネルなどの用途にも利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度(Tg)が250℃以上の樹脂が層状珪酸塩を含有してなる、厚さ100μmでの420nmの光線透過率が70%以上であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
ガラス転移温度が250℃以上の樹脂が下記一般式(1)、(2)または(3)で表される構造を含むことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【化1】

[一般式(1)および(2)中、環αおよび環βは、それぞれ独立に単環式または多環式の環を表し、1つの4級炭素によって連結している。一般式(1)中、連結基は環αの任意の2つの炭素と結合している。一般式(2)中、連結基は環αの任意の1つの炭素と環βの任意の1つの炭素と結合している。一般式(3)中、2つの環γおよび環δは、それぞれ独立に単環式または多環式の環を表し、環δ上の1つの4級炭素に連結される。連結基は環γの任意の炭素と結合している。]
【請求項3】
層状珪酸塩が有機化されていることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂組成物からなり、延伸されていることを特徴とするフィルム。
【請求項5】
20℃から(Tg−20)℃までの線熱膨張係数が−20〜40ppm/℃であることを特徴とする請求項4に記載のフィルム。
【請求項6】
請求項4または5に記載のフィルムの上にガスバリア層を有するガスバリア層つきフィルム。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか一項に記載のフィルムの上に透明導電層を有する透明導電層つきフィルム。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれか一項に記載のフィルムの上にTFTを有するTFTつきフィルム。
【請求項9】
請求項4〜8のいずれか一項に記載のフィルムを基板として用いた画像表示装置。
【請求項10】
画像表示装置が液晶表示装置または有機エレクトロルミネッセンス表示装置である請求項9に記載の画像表示装置。

【公開番号】特開2006−265383(P2006−265383A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85899(P2005−85899)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】