説明

樹脂組成物、樹脂型及び当該樹脂型を使用する成形体の製造方法

【課題】成形時の金型からの離型性および糸引き性が良好である樹脂組成物、剥離性に優れる樹脂型および当該樹脂型を使用する成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】脂環式構造含有熱可塑性樹脂と、樹脂組成物100質量部に対して0.02〜0.20質量部の水酸基含有エステル化合物を含有する樹脂組成物の、230℃、せん断速度10000/sでのせん断粘度を20〜50Pa・sとし、かつ、230℃、伸張レート100/sにおける伸張粘度を6〜20kPa・sとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光情報記録媒体の製造に用い得る、成形時の糸引き性に優れる樹脂組成物、当該樹脂組成物からなり剥離性に優れる樹脂型および当該樹脂型を使用する成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ディスクの高密度化および大容量化が著しく要求されている。現在、コンパクトディスクの約7倍に相当する片面約4.7GBの記録容量をもつDVD(Digital Versatile Disk)が市販されているが、より多くの情報を記録できる技術の開発が盛んに行われている。
【0003】
光ディスクの高密度化および大容量化のためには、線記録密度およびトラック密度を高くする必要がある。そのためには、プリピットを小さくしたり、グルーブピッチを狭くしたりすることが必要である。その様な光情報記録媒体の製造方法として、放射線硬化型樹脂を含有する樹脂層が、表面に凹凸パターンを有するスタンパ(以後樹脂型ということがある)と媒体の基板との間に挟まれた状態とし、次いで、放射線を前記樹脂層に照射し、次いでスタンパを剥離し、前記凹凸パターンが転写された中間層を形成する工程を設け、前記スタンパが、少なくとも前記凹凸パターンが形成された表面が環状ポリオレフィンからなる樹脂組成物から構成されている、光情報記録媒体の製造方法が検討された(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、前記環状ポリオレフィンからなる樹脂型を射出成形により成形する際に、当該樹脂型の金型からの離型性が十分でなく、凹凸パターンが変形してしまう離型不良が発生する場合がある。
この離型性の問題を改善する方法として、脂環式構造含有熱可塑性樹脂と水酸基含有エステル化合物からなる樹脂組成物が検討された(例えば、特許文献2参照)。しかし、この樹脂組成物は成形時に糸引きが発生しやすく、成型体に糸が付着し形状不良が発生し良品率が低くなるといった問題があった。
【特許文献1】特開2003−85839号公報
【特許文献2】特開2006−35823号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、成形時の金型からの離型性および糸引き性が良好である樹脂組成物、剥離性に優れる樹脂型および当該樹脂型を使用する成形体の製造方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究の結果、脂環式構造含有熱可塑性樹脂と水酸基含有エステル化合物を含有する樹脂組成物であって、水酸基含有エステル化合物の含有量が樹脂組成物100質量部に対して0.02〜0.20質量部であり、230℃、せん断速度10000/sでのせん断粘度が20〜50Pa・sであり、かつ、230℃、伸張レート100/sにおける伸張粘度が6〜20kPa・sである樹脂組成物が、成形時の糸引きの抑制及び良好な金型からの離型性を示すことを見出し、本発明を完成させるに至った。
上記脂環式構造含有熱可塑性樹脂の分岐指数は0.5〜0.98の範囲であり得る。本発明の樹脂組成物は、粘度平均分子量150万〜300万のポリエチレンを、樹脂組成物100質量部に対して0.01〜1.0質量部含有し得る。上記脂環式構造含有熱可塑性樹脂はノルボルネン系開環重合体水素化物又はノルボルネン系付加重合体であり得る。
【0007】
更に、本発明は、上記樹脂組成物からなる樹脂型を提供する。本発明が提供する成形体の製造方法は、基体上に硬化性樹脂を塗布し、得られた硬化性樹脂層上に上記樹脂型を重ね合わせ、当該硬化性樹脂層を硬化させた後に当該樹脂型を剥離除去する工程、又は、上記樹脂型が形成する内部空間内に充填し、硬化性樹脂を硬化させた後、当該樹脂型を剥離除去する工程を行う。
【発明の効果】
【0008】
本発明の樹脂組成物は、成形時の糸引きの発生が抑制されかつ良好な金型からの離型性を示すから、光学情報記録媒体の樹脂型に好適である。更に、当該樹脂型は光学情報記録媒体の製造プロセスに好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の樹脂組成物は、脂環式構造含有熱可塑性樹脂及び水酸基含有エステル化合物を含有し、230℃、せん断速度10000/sでのせん断粘度が20〜60Pa・sであり、かつ、230℃、伸張レート100/sにおける伸張粘度が6〜20kPa・sである。
せん断粘度及び伸張粘度をこの範囲にする為には、例えば以下の2つの方法がある。
(1)分岐構造を脂環式構造含有熱可塑性樹脂に導入する。
(2)高分子量のポリエチレンを樹脂組成物に含有させる。
【0010】
本発明で用いられる脂環式構造含有熱可塑性樹脂は、主鎖および/または側鎖に脂環式構造を有する。機械的強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を含有する脂環式構造含有熱可塑性樹脂が好ましい。
【0011】
脂環式構造の具体例は、飽和環状炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和環状炭化水素(シクロアルケン)構造などであるが、機械的強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が最も好ましい。
【0012】
脂環式構造を構成する炭素原子数は、制限されないが、通常4〜30、好ましくは5〜20、より好ましくは5〜15の範囲であるある。当該炭素原子数が上記範囲である場合、樹脂組成物の機械的強度、耐熱性および成形性が高度にバランスされる。
【0013】
脂環構造含有熱可塑性樹脂の具体例は、(1)ノルボルネン系開環重合体水素化物、(2)ノルボルネン系付加重合体、(3)ビニル脂環式炭化重合体およびこれの水素化物、などがである。これらの中でも、耐熱性、機械的強度等の観点から、ノルボルネン系開環重合体水素化物およびノルボルネン系付加重合体が好ましい。
【0014】
ノルボルネン系単量体の具体例は、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)及びその誘導体(環に置換基を有するもの)、トリシクロ[4.3.01,6.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名ジシクロペンタジエン)及びその誘導体、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名メタノテトラヒドロフルオレン:1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)及びその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)及びその誘導体などである。
置換基の具体例は、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基、アルキリデン基などであり、上記ノルボルネン系単量体は、これらの置換基を2種以上有していてもよい。置換基を有するノルボルネン系単量体の具体例は、8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−エチリデン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンなどである。
これらのノルボルネン系単量体は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0015】
ノルボルネン系開環重合体水素化物は、一種類以上のノルボルネン系単量体、または、これと開環共重合可能なその他の単量体とを、公知の開環重合触媒の存在下で重合して得られたノルボルネン系開環重合体の炭素―炭素の二重結合を水素化して得る。
ノルボルネン系単量体と開環共重合可能なその他の単量体の具体例は、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの単環の環状オレフィン系単量体などである。
【0016】
開環重合触媒の具体例は、ルテニウム、オスミウムなどの金属のハロゲン化物と、硝酸塩又はアセチルアセトン化合物、及び還元剤とからなる触媒;チタン、ジルコニウム、タングステン、モリブデンなどの金属のハロゲン化物又はアセチルアセトン化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒等である。
【0017】
ノルボルネン系開環重合体の分子量を調整する必要がある場合は、開環重合する際に反応系に分子量調節剤を添加し得る。用いる分子量調節剤は特に限定されず、従来公知の分子量調節剤である。
【0018】
水素化は、常法に従って、水素化触媒の存在下に脂環構造含有開環重合体を水素を接触させて行う。水素化触媒は、特開昭58−43412号公報、特開昭60−26024号公報、特開昭64−24826号公報、特開平1−138257号公報、特開平7−41550号公報などに記載されている水素化触媒である。
【0019】
ノルボルネン系単量体の付加重合体、又はノルボルネン系単量体とこれと共重合可能なその他の単量体との付加重合体は、これらの単量体を、公知の付加重合触媒、例えば、チタン、ジルコニウム又はバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いて重合させて得る。
【0020】
ノルボルネン系単量体と付加共重合可能なその他の単量体の具体例は、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンなどの炭素数2〜20のα−オレフィン、及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、3a,5,6,7a−テトラヒドロ−4,7−メタノ−1H−インデンなどのシクロオレフィン、及びこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役ジエンなどである。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンが特に好ましい。
これらの、ノルボルネン系単量体と付加共重合可能なその他の単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用し得る。ノルボルネン系単量体とこれと付加共重合可能なその他の単量体とを付加共重合する場合、付加重合体中のノルボルネン系単量体由来の構造単位と付加共重合可能なその他の単量体由来の構造単位との割合が、質量比で通常30:70〜99:1、好ましくは50:50〜97:3、より好ましくは60:40〜95:5の範囲となるように適宜選択される。
樹脂組成物の耐熱性、機械的強度、成形性等の観点から、ノルボルネン系単量体とエチレンとの付加共重合体が特に好ましい。
【0021】
ノルボルネン系付加重合体の分子量を調整する必要がある場合、分子量調節剤を付加重合反応系に添加し得。用いる分子量調節剤は特に限定されず、従来公知の分子量調節剤を使用できる。
【0022】
ビニル脂環式炭化水素重合体の具体例は、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキサンなどのビニル脂環式炭化水素系単量体の重合体及びその水素化物;スチレン、α−メチルスチレンなどのビニル芳香族系単量体の重合体の芳香環部分の水素化物、ビニル脂環式炭化水素重合体、ビニル芳香族系単量体と当該単量体と共重合可能な他の単量体とのランダム共重合体、ブロック共重合体などの共重合体及びその水素化物などである。ブロック共重合体の具体例は、ジブロック、トリブロック、それ以上のマルチブロック、傾斜ブロック共重合体などである。
【0023】
水素化反応は、常法に従って、脂環構造含有開環重合体を水素化触媒の存在下に水素と接触させて行う。水素化方法の具体例は、特開2001−48924号公報に記載されている方法等である。
【0024】
分岐構造を有する脂環式構造含有熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
分岐構造の導入の目的は、せん断粘度と伸張粘度のバランスの変更である。
より具体的には、同じせん断粘度を有する分岐構造の無い樹脂と有る樹脂を比べた場合、分岐構造を適度に有する樹脂の伸張粘度は、分岐構造の無い樹脂の伸張粘度より高くなり、分岐構造を適度に有する樹脂の糸引きが抑制される。
本発明でいう分岐構造とは、単量体由来の構成単位の繰り返しからなる主鎖の途中から枝分かれし、そこから単量体単位の繰り返しからなる側鎖が形成されている構造である。
【0025】
分岐構造は分岐指数で表すことができる。
分岐指数は、分岐指数g=[η]Bra/[η]Linによって定義され、1に近いほど分岐構造が少なく、0にちかいほど分岐構造が多い。
[η]Braは分岐状の脂環構造含有熱可塑性樹脂の極限粘度、[η]Linは同一の重量平均分子量である直鎖状の脂環構造含有熱可塑性樹脂の極限粘度である。ここで極限粘度[η]は、シクロヘキサンに溶解した試料を60℃で測定した値である。
【0026】
分岐指数が高すぎると(分岐構造が少なすぎると)、樹脂組成物の伸張粘度を高くする効果が低くなり、分岐指数が低すぎると(分岐構造が多すぎると)、逆に樹脂組成物の伸張粘度が低くなる畏れがある。
本発明で好ましく用いられる分岐した脂環式構造含有熱可塑性樹脂の分岐指数は、0.5〜0.98、好ましくは0.55〜0.95、より好ましくは0.6〜0.95である。
【0027】
このような分岐構造を導入し、分岐指数を調整するためには、重合を実施する際に、同一分子内に2つ以上の重合反応点をもつ単量体を含有させればよい。
【0028】
同一分子内に2つ以上の二重結合を有する単量体が、同一分子内に2つ以上の反応点をもつ単量体として好ましい。当該単量体の具体例は、(A)2以上のノルボルネン環を有する単量体、(B)ノルボルネン環と末端炭素―炭素二重結合を有する単量体、(C)2つの末端炭素―炭素二重結合を有する単量体、(D)3つ以上の末端炭素―炭素二重結合を有する単量体などである。
ノルボルネン系開環重合体水素化物に分岐構造を導入する場合は、(A)、(B)、(D)が好ましく、ノルボルネン系付加重合体に分岐構造を導入する場合は、(A)、(B)、(C)、(D)が好ましく、ビニル脂環式炭化重合体およびこれの水素化物に分岐構造を導入する場合は、(C)および(D)が好ましい。
【0029】
(A)2以上のノルボルネン環を有する単量体
2以上のノルボルネン環を有する単量体は、2つ以上のノルボルネン環を有しており、特定の化合物に限定されない。2以上のノルボルネン環を有する単量体の具体例は、exo−trans−exo−ペンタシクロ−[8.2.1.14,7.02,9.03,8]テトラデカ−5,11−ジエン(以下、「NB−dimer」とすることがある。)、4,4a,4b,5,8,8a,9,9a‐オクタヒドロ‐1,4:5,8‐ビスメタノ‐1H‐フルオレン、1α,4α:5α,8α‐ジメタノ‐1,4,4a,5,8,8a,9,9a,10,10a‐デカヒドロアントラセン、5,5′‐ビ(ノルボルナ‐2‐エン)、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン‐4,9‐ジエン、1,4,4a,5,8,8a,9,9a,10,10a‐デカヒドロ‐1,4:5,8:9,10‐トリメタノアントラセンなどである。
【0030】
(B)ノルボルネン環と末端炭素―炭素二重結合を有する単量体
ノルボルネン環と末端炭素―炭素二重結合を有する単量体は、ノルボルネン環以外に、末端二重結合を有している。ノルボルネン環と末端炭素―炭素二重結合を有する単量体の具体例は、炭素数が通常2〜20、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜4の末端に二重結合を有するアルケニル基である。当該アルケニル基の具体例は、ビニル基、アリル基、3−ブテニル基、4−ペンテニル基、2−メチル−3−ブテニル基、5−ヘプチル基などである。これらの中でも、流動性の観点からビニル基とアリル基が好ましい。これらの特定アルケニル基は、任意の基を介してノルボルネン環に結合していても良く、任意の基を介してノルボルネン環に結合し環構造を形成してもよい。任意の基の具体例は、アルキレン基、−O−、−S−、−O−CO−、−O−CH2−O−CO−、フェニレンなどである。任意の基を構成する元素の数は、流動性の観点から、好ましくは10個以下、より好ましくは5個以下である。
【0031】
ノルボルネン環と末端炭素―炭素二重結合を有する単量体の具体例は、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−アリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ビニルオキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−ビニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−アリル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、8−ビニルオキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エンなどである。
【0032】
(C)2つの末端炭素―炭素二重結合を有する単量体
2つの末端炭素―炭素二重結合を有する単量体の具体例は、1,5−ヘキサジエン、1,9−デカジエン、1,3−ジビニルシクロヘキサン、1,3−ジビニルベンゼンなどである。
【0033】
(D)3つ以上の末端炭素―炭素二重結合を有する単量体
3つ以上の末端炭素―炭素二重結合を有する単量体の具体例は、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、4‐(2‐プロペニル)‐1,6‐ヘプタジエン、3‐ビニル‐1,4‐ペンタジエン、3‐ビニル‐1,5‐ヘキサジエン、1,3,5‐トリビニルベンゼン、1,2,4‐トリビニルベンゼン、1,2,4,5‐テトラビニルベンゼンなどである。
【0034】
同一分子内に2つ以上の重合反応点を有する単量体の量は、全単量体に対して、通常0.01〜1.00モル%、好ましくは0.03〜0.50モル%、より好ましくは0.05〜0.30モル%、さらに好ましくは0.08〜0.20モル%である。
同一分子内に2つ以上の重合反応点を有する単量体の量が少なすぎると、脂環構造含有熱可塑性樹脂の分岐構造が少なく、脂環構造含有熱可塑性樹脂の分岐指数が高くなりすぎる。一方、同一分子内に2つ以上のの重合反応点を有する単量体の量が多すぎると、脂環構造含有熱可塑性樹脂の分岐構造が多くなり、脂環構造含有熱可塑性樹脂の分岐指数が低くなりすぎる。
【0035】
同一分子内に2つ以上のの重合反応点をもつ単量体を用いて重合する方法は、特に限定されない。当該重合方法の具体例は、同一分子内に2つ以上のの重合反応点をもつ単量体と他の単量体を混合した後、前記と同じ方法により重合を行う方法である。
【0036】
本発明に用いる水酸基含有脂肪酸エステル化合物は離型剤として用いられ、分子内に水酸基を1以上有する脂肪酸のエステル化合物であり、特定の化合物に制限されない。水酸基含有脂肪酸エステル化合物の好ましい具体例は、式(a):RXnで表される化合物( 以下、化合物(a)という)である。
【0037】
前記式(a)において、Rは水酸基を有し得る炭化水素基を表す。添加効果の大きさの点から、Rは好ましくは水酸基を有していない炭化水素基である。
Rの炭化水素基は、飽和炭化水素基であっても、不飽和炭化水素基であってもよい。化学的安定性、成形体の着色しにくさの観点から、好ましくは、Rは飽和炭化水素基である。
Rの炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、かつ好ましくは60以下、より好ましくは50以下である。
【0038】
Xはヒドロキシアシルオキシ基を表す。ヒドロキシアシルオキシ基は、k、mを自然数とした場合に−O(CO)Cm2m+1-k(OH)k( ただし、k ≦ 2 m + 1 )で表される基である。
Xの炭素数は、好ましくは13以上、より好ましくは16以上、かつ好ましくは50以下である。
【0039】
Xの水酸基の数(kの値)は、添加効果の観点から1が好ましい。この水酸基は末端の炭素に結合していなくてもよい。同様に、X中の−COO−も末端の炭素に結合していなくてもよい。
【0040】
nは自然数を表し、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、かつ好ましくは10以下、より好ましくは7以下、特に好ましくは5以下である。nが2以上のとき、n個のXは同一であっても相異なっていてもよいが、製造の容易性の観点から、好ましくはn個のX基は同一である。
前記式(a)中、nが2以上の場合、Xのヒドロキシアシルオキシ基は、R基(炭化水素基) 中の同一の炭素と結合していなくてもよい。
【0041】
nが1のとき、及びnが2以上であり、かつn個のXが同一である場合は、X中の水酸基が1個であり、Rが水酸基を有していなければ、化合物(a)は、式(b):Cl2l +2-n〔O(CO)Cm2mOH〕n( 式中、l、m、nは自然数を表し、l+(m+1)×n≧16である。)で表される。
【0042】
前記式(b)中、lは、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、かつ好ましくは60以下、より好ましくは50以下である。
前記式(b)中のmは、好ましくは12以上、より好ましくは15以上、かつ好ましくは49以下である。
前記式(b)中の〔l+(m+1)×n〕は、16以上、好ましくは20以上、より好ましくは24以上、かつ好ましくは120以下、より好ましくは90以下、特に好ましくは60以下である。
【0043】
式(a)のRの炭素数(前記式(b)中のl、あるいはアルコール類の炭素数)、Xの炭素数( 前記式(b)中のmに1を加えた数、あるいは水酸基含有脂肪酸の炭素数)又は全炭素数(前記式(b)中のl、m、nにおいて、l+(m+1)×nの値)が少なすぎる場合には、水酸基含有脂肪酸エステル化合物が揮発しやすいため使用しにくくなる。一方、上記炭素数が多すぎる場合、水酸基含有脂肪酸エステル化合物のブリードのために成形品の外観不良が多くなる。
【0044】
式(a)で表される化合物は、アルコール類の水酸基が水酸基含有脂肪酸とエステル結合した構造を有する化合物であり、例えば、アルコール類と水酸基含有脂肪酸とを反応させて製造できる。
【0045】
式(a)で表される化合物の合成に用いるアルコール類は、特に制限されない。当該化合物の炭素数(すなわち、前記式(a)中のRの炭素数であり、前記式(b)中のl) は好ましくは2以上、より好ましくは3以上、かつ好ましくは60以下、より好ましくは50以下であり、水酸基の数〔Rが水酸基を有していない場合の、前記式(a)及び前記式(b)中のn〕が、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、かつ好ましくは10以下、より好ましくは7以下、特に好ましくは5以下である。
【0046】
アルコール類の具体例は、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、トリグリセロール、ジペンタエリスリトール、エチレングリコール、ステアリルアルコール、1,6,7− トリヒドロキシ− 2,2−ジ(ヒドロキシチメル)−4−オキソヘプタン、ソルビトール、2−メチル−1,6,7−トリヒドロキシ−2−ヒドロキシメチル−4−オキソヘプタン、1,5,6−トリヒドロキシ−3−オキソヘキサンなどである。
【0047】
化合物(a)の合成に用いる水酸基含有脂肪酸は、水酸基を好ましくは一つ有し、炭素数が13以上、好ましくは16以上、かつ好ましくは50以下の化合物である。
【0048】
水酸基含有脂肪酸の具体例は、ヒドロキシヘプタデカン酸、ヒドロキシオクタデカン酸( ヒドロキシステアリン酸) 、ヒドロキシエイコサン酸、ヒドロキシドコサン酸、ヒドロキシヘキサコサン酸、ヒドロキシトリアコンタン酸などである。
【0049】
化合物(a) の具体例は、12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、12−ヒドロキシステアリン酸ステアリルアルコール、ペンタエリスリトール−テトラ−12−ヒドロキシステアレート、エチレングリコール− ジ−12−ヒドロキシステアレート、プロピレングリコール−ジ−12−ヒドロキシステアレートなどのRが水酸基を有さない炭化水素基である前記式(a)で表される化合物;12−ヒドロキシステアリン酸モノグリセリドなどのアルコール類の一部の水酸基が水酸基含有脂肪酸とエステル結合した構造を有する化合物(Rが水酸基を有する炭化水素基である前記式(a)で表される化合物)等である。
【0050】
アルコール類の全ての水酸基が水酸基含有脂肪酸とエステル結合した構造を有する化合物の市販品であるカオーワックス85P(花王社製)、ヒマコウ(川研ファインケミカル社製)も水酸基含有脂肪酸エステル化合物として使用できる。
【0051】
水酸基含有脂肪酸エステル化合物の配合量は、樹脂組成物100質量部に対して、0.02〜0.20質量部 、好ましくは0.03〜0.08質量部である。
水酸基含有脂肪酸エステル化合物の添加量が少なすぎると、十分な離型効果が得られず、一方、当該添加量が多すぎると、脂環式構造含有熱可塑性樹脂の耐熱性、耐薬品性、耐湿性などの特性を活かせなくなるおそれがある。
【0052】
本発明に用いるポリエチレンは、特定のポリエチレンに限定されないが、粘度平均分子量が150万〜300万の範囲のポリエチレンが好ましい。
ポリエチレン添加の目的は、樹脂組成物のせん断粘度と伸張粘度のバランス変更である。
ポリエチレンの分子量が高すぎると、樹脂組成物の分散性が悪くなり、一方、ポリエチレンの分子量が低すぎると、樹脂組成物のせん断粘度と伸張粘度へのポリエチレンの影響が低く、樹脂組成物のせん断粘度と伸張粘度のバランス変更が困難になる畏れがある。
【0053】
ポリエチレンの配合量は、樹脂組成物100質量部に対して0.01〜1.0質量部である。
ポリエチレンの配合量が多すぎるとせん断粘度が高く、少なすぎると伸張粘度が低くなる恐れがある。
【0054】
必要に応じて、その他のポリマー、その他の各種添加剤(樹脂工業において通常用いられる添加剤)を単独で、あるいは2種以上混合して本発明の樹脂組成物に添加される。
【0055】
その他のポリマーは、ガラス転移温度が40℃以下の熱可塑性エラストマーであり得る。当該熱可塑性エラストマーの具体例は、乳化重合又は溶液重合したスチレン・ブタジエン・ゴム、ハイスチレンゴムなどのランダム又はブロック・スチレン・ブタジエン系共重合体、これらの水素添加物;イソプレン・ゴム、その水素添加物;クロロプレンゴム、その水素添加物;エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体などの飽和ポリオレフィンゴム;エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、α−オレフィン・ジエン共重合体、ジエン共重合体、イソブチレン・イソプレン共重合体、イソブチレン・ジエン共重合体などのジエン系重合体、これらのハロゲン化物、ジエン系重合体のハロゲン化物の水素添加物、これらの無水マレイン酸、グリシジルメタクリレート、エポキシ等による変性物などである。
これらの中でも、成形体の表面平滑性の観点から、スチレン・ブタジエン・ゴム、ハイスチレンゴムなどのランダム又はブロック・スチレン・ブタジエン系共重合体の水素添加物が好ましい。
熱可塑性エラストマーは単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用い得る。熱可塑性エラストマーの配合量は、本発明の目的を損なわれない範囲で適宜選択されるが、樹脂組成物100質量部に対して、通常1〜30質量部、好ましくは2〜25質量部の範囲である。
【0056】
その他の添加剤は、熱可塑性樹脂材料で通常用いられている添加剤であり、特定の添加剤に制限されない。その他の添加剤の具体例は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、近赤外線吸収剤、染料や顔料などの着色剤、可塑剤、帯電防止剤、蛍光増白剤などである。
【0057】
老化防止剤の具体例は、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などである。これらの中でも、フェノール系酸化防止剤が好ましく、アルキル置換フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。酸化防止剤は、単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用い得る。
【0058】
紫外線吸収剤の具体例は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、アクリレート系紫外線吸収剤、金属錯体系紫外線吸収剤などである。
光安定剤の具体例は、ヒンダードアミン系光安定剤である。
【0059】
近赤外線吸収剤の具体例は、シアニン系近赤外線吸収剤、ピリリウム系赤外線吸収剤、スクワリリウム系近赤外線吸収剤、クロコニウム系赤外線吸収剤、アズレニウム系近赤外線吸収剤、フタロシアニン系近赤外線吸収剤、ジチオール金属錯体系近赤外線吸収剤、ナフトキノン系近赤外線吸収剤、アントラキノン系近赤外線吸収剤、インドフェノール系近赤外線吸収剤、アジ系近赤外線吸収剤;等である。
【0060】
染料は、脂環構造含有熱可塑性樹脂に均一に分散又は溶解する化合物であり、特定の染料に限定されない。本発明で用いられる脂環構造含有熱可塑性樹脂との相溶性の観点から、油溶性染料(各種C.I.ソルベント染料)が広く用いられる。油溶性染料の具体例は、The Society of Diyes and Colourists社刊Color Index vol.3に記載される各種のC.I.ソルベント染料である。
顔料の具体例は、ジアリリド系顔料、アゾレーキ系顔料、縮合アゾ系顔料、ペンズイミダゾロン系顔料、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系顔料などである。
【0061】
可塑剤の具体例は、リン酸トリエステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、脂肪酸一塩基酸エステル系可塑剤、二価アルコールエステル系可塑剤、オキシ酸エステル系可塑剤、主骨格が主にC−CまたはC=C構造である常温で液状の炭化水素ポリマーなどである。これらの中でもリン酸トリエステル系可塑剤が好ましく、トリクレジルフォスフェート、トリキシリルフォスフェートが特に好ましい。
帯電防止剤の具体例は、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなどの長鎖アルキルアルコール;グリセリンモノステアレート、ペンタエリスリトールモノステアレートなどの多価アルコールの脂肪酸エステルなどである。ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールが特に好ましい。
【0062】
これらの添加剤の配合量は、本発明の目的を損なわれない範囲で適宜選択されるが、樹脂組成物100質量部に対して通常0.001〜5質量部、好ましくは0.01〜1質量部の範囲である。
【0063】
本発明の樹脂組成物は、前記分岐構造を導入した脂環式構造含有熱可塑性樹脂及び水酸基含有エステル化合物、又は、脂環式構造含有樹脂組成物、ポリエチレン及び水酸基含有エステル化合物を含有する。
【0064】
本発明の樹脂組成物の配合方法は特定の方法に限定されない。脂環式構造含有熱可塑性樹脂、水酸基含有エステル化合物、必要に応じてポリエチレン等を、それぞれ独立して配合しても良いし、脂環式構造含有熱可塑性樹脂及び水酸基含有エステル化合物に配合したのちにポリエチレン等を配合しても良い。
混合方法は、重合体中に配合剤が十分に分散する方法であり、特定の方法に限定されない。混合方法の具体例は、ミキサー、一軸混練機、二軸混練機、ロール、ブラベンダー、押出機などの装置で樹脂を溶融状態で混練する方法、適当な溶剤に溶解して分散させて凝固、キャスト、または直接乾燥させて溶剤を除去する方法などである。
【0065】
二軸混練機を用いる場合、混練後は、通常は溶融状態で棒状に押出し、ストランドカッターで適当な長さに切り、ペレット化する。
【0066】
本発明の樹脂組成物は光情報記録媒体の樹脂型、光ディスク、磁気記録媒体、光ファイバー、カメラ用レンズ、オーバーヘッドプロジェクター用レンズ、LBP用θレンズ、プリズム、液晶表示素子(LC D)、光拡散板、導光板、偏光フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルム、集光フィルム等の光学成形品;液体薬品容器、アンプル、輸液用バッグ、点眼薬容器、半導体用ウエハ格納容器等の各種清浄容器;注射器、医療用輸液チューブ等の医療器材などの成形部材として好適である。
【0067】
本発明の樹脂型は、前記樹脂組成物を公知の成形方法により成形して製造できる。成形方法の具体例は、射出成形、プレス成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、多層ブロー成形、コネクションブロー成形、二重壁ブロー成形、延伸ブロー成形、真空成形、回転成形などである。これらの中でも、射出成形法及びプレス成形法が、凹凸形状の面内のバラツキを小さくでき、好適である。プレス成形法の具体例は、溶融押出法により作製したシート、フィルム等を、成形しようとする凹凸状の金型内で加温及び加圧する方法である。
【0068】
成形条件は、成形法及び使用する脂環式構造含有熱可塑性樹脂の種類によって異なる。成形温度が通常100〜400℃ 、好ましくは200〜380℃ 、より好ましくは200〜350℃であり、成形圧力が通常0.1〜100MPa 、好ましくは0.5〜50M Paであり、加温時間は通常数秒間から数十分間である。
【0069】
本発明の樹脂型は、高い面精度の凹凸形状を形成することが要求される光ディスクの樹脂スタンパとして特に好適である。
【0070】
金型を用いて樹脂型を成形する場合、樹脂、添加剤等の付着による金型内部の汚染が少ない。従って、同じ金型を使用して、再現性よく同じ樹脂型を大量生産できる。
【0071】
本発明の樹脂型を用いた成型体の製造方法は、2種類に大別される。基体上に硬化性樹脂を塗布し、得られた硬化性樹脂層上に表面に凹凸形状を有する本発明の第1の樹脂型を重ね合わせ、当該硬化性樹脂層を硬化させた後に第1の樹脂型を剥離除去する。表面に凹凸形状を有する硬化樹脂層を有する成形体を、第1の樹脂型により製造できる。
【0072】
第2の樹脂型による成形体の製造方法は以下のとおりである。硬化性樹脂を第2の樹脂型が形成する内部空間内に充填し、当該硬化性樹脂を硬化させた後、第2の樹脂型を剥離除去する。表面に凹凸形状を有する樹脂成形体を、第2の樹脂型により製造できる。第2の樹脂型の具体例は、(a)一体成形され、硬化性樹脂を充填する内部空間を有する樹脂型、(b)分割可能に成形され、組み合わせて硬化性樹脂を充填する内部空間を形成する樹脂型、(c)金型と組み合わせて内部空間を形成する樹脂型等である。
【0073】
以下、本発明について、実施例及び比較例を挙げて、より具体的に説明する。本発明は、これらの実施例のみに限定されない。以下の実施例及び比較例において、部及び%は、特に断りがない限り、質量基準である。
【0074】
以下の実施例及び比較例で測定された各種物性の測定法は、次のとおりである。
(1)水素添加反応前の重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、トルエンを溶離液とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による標準ポリスチレン換算値として測定した。
測定装置は、東ソー社製GPC−8020シリーズ(DP8020、SD8022、AS8020、CO8020、RI8020)であった。標準ポリスチレンは、東ソー社製標準ポリスチレン、Mw=500、2630、10200、37900、96400、427000、1090000、5480000の計8点であった。
サンプルは、サンプル濃度1mg/mlになるように、測定試料をトルエンに溶解後、孔径0.5μmの多孔質ポリテトラフルオロエチレン製フィルターでろ過して調製した。
測定は、カラムとして東ソー社製TSKgel GMHHR・Hを2本直列に繋ぎ、流速1.0ml/分、サンプル注入量100μml、カラム温度40℃の条件で行った。
【0075】
(2)水素添加反応後の重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、1,2,4−トリクロロベンゼンを溶離液とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による標準ポリスチレン換算値として140℃において測定した。
測定装置は、東ソー社製HLC8121GPC/HTであった。
標準ポリスチレンは、東ソー社製標準ポリスチレン、Mw=988、2580、5910、9010、18000、37700、95900、186000、351000、889000、1050000、2770000、5110000、7790000、20000000の計16点であった。
サンプルは、サンプル濃度1mg/mlになるように、140℃にて測定試料を1,2,4−トリクロロベンゼンに加熱溶解させて調製した。
測定は、カラムとして東ソー社製TSKgel GMHHR・H(20)HTを3本直列に繋ぎ、流速1.0ml/分、サンプル注入量300μml、カラム温度140℃の条件で行った。
【0076】
(3)水素添加率は、溶媒として重クロロホルムを用いて、1H−NMRにより測定した。
【0077】
(4)ガラス転移温度Tgは、示差走査熱量分析計(ナノテクノロジー社製DSC6220SII)を用いて、JIS K 6911に基づいて測定した。
【0078】
(5)メルトマスフローレートは、JIS K 7210に準拠して、230℃、2.16kg荷重で測定した。
【0079】
(6)光線透過率は、ペレットをシクロヘキサン中に10%の濃度に溶解し、得られた溶液を10mm光路の石英セルに入れて、波長365nmの光線透過率を分光光度計(日本分光社製V−570)で測定した。
なお、光線透過率は50%以上である必要がある。
【0080】
(7)せん断粘度および伸張粘度は、ツイン・キャピラリー・レオメーター(ROSAND社製)を用いて測定温度230℃で測定した。
【0081】
(8)射出成形時の金型からの離型性は、成形した樹脂型の表面を目視で観察し、離型不良(クラウド)の有無にて評価を行った。
50面の樹脂型を観察し、1枚も離型不良が観察されなければ“無”、1枚でも離型不良があれば“有”とした。
【0082】
(9)射出成形時の糸引きは、樹脂型成形時に得られるスプル末端の細い樹脂糸の長さにて評価を行った。
5個のスプルについて樹脂糸の長さを測定し、その平均値が10mm〜30mmである場合を○、30mmを超える場合を×とした。
【0083】
(10)樹脂型の転写率は、走査型原子間力顕微鏡(デジタルインスツルメンツ社製NanoScopeIIIaを使用し、Niスタンパのランド部の高さ(Hs)と樹脂型の溝深さ(Hd)の値を次式にあてはめて算出した。
転写率(%)=Hd/Hs×100
樹脂型の転写率は、97〜103%である必要がある。
【0084】
(11)分岐指数は、分岐状の脂環構造含有熱可塑性樹脂の極限粘度[η]Braを、同じ重量平均分子量の直鎖状の脂環構造含有熱可塑性樹脂水素添加物の極限粘度[η]Linで除した値として算出した。
極限粘度[η]は、シクロヘキサンに溶解した試料を、60℃下、ウデローデ粘度計を用いる多点法により、濃度調整4点の粘度を測定し、各測定点の関係を濃度ゼロに外挿して求めた。
【0085】
製造例1
脱水したシクロヘキサン250部を、室温、窒素雰囲気の反応器に入れ、更に1−ヘキセン0.84部、ジブチルエーテル0.06部及びトリイソブチルアルミニウム0.11部を入れて混合した後、45℃に保ちながら、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(以下「DCP」と略すことがある)85部、8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(以下「ETD」と略すことがある)15部、及び六塩化タングステンの0.7%トルエン溶液15部を2時間かけて連続的に添加して重合した。重合転化率は100%であった。
得られた重合反応液を耐圧性の水素化反応機に移送し、ケイソウ土担持ニッケル触媒(日産ガードラー社製G−96D、ニッケル担持率58%)5部及びシクロヘキサン100部を加え、150℃、水素圧4.4MPaで8時間反応させた。この反応溶液を、ラジオライト#500を濾過床として、圧力0.25MPaで加圧濾過(石川島播磨重工社製フンダフィルター)して水素添加触媒を除去し、無色透明なノルボルネン系開環重合体水素化物を得た。
このノルボルネン系開環重合体水素化物の重量平均分子量(Mw)は30,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.7、水素添加率は99.5%、分岐指数は1.00であった。
次いで、前記ノルボルネン系開環重合体水素化物99.50部に対して、0.50部の酸化防止剤:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバガイギー社製イルガノックス1010)を、得られた溶液に添加して溶解させた。次いで、キュノーフィルター社製ゼータープラスフィルター30H(孔径0.5〜1μm)にて順次濾過し、さらに別の金属ファイバー製フィルター(孔径0.4μm、ニチダイ社製)にて濾過して微小な固形分を除去した。
次いで、上記溶液を、円筒型濃縮乾燥器(日立製作所製)を用いて、温度270℃、圧力1kPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン及びその他の揮発成分を除去し、濃縮機に直結したダイから溶融状態でストランド状に押出し、冷却後ペレット化して開環共重合体水素添加物の樹脂組成物(A)を得た。
この樹脂組成物(A)のガラス転移温度は105℃、MFRは13.8g/10分であった。樹脂組成物(A)のせん断粘度及び伸張粘度を表1に示した。
【0086】
製造例2
前記ノルボルネン系開環重合体水素化物99.47部に対して、0.50部の酸化防止剤:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバガイギー社製イルガノックス1010)および離型剤として0.03部の水酸基含有部分エステル化合物:ペンタエリスリトールジステアレート(日油社製ユニスターH476D)を添加した以外は、製造例1と同様にして樹脂組成物(B)を得た。
この樹脂組成物(B)のガラス転移点は104℃、MFRは14.3g/10分であった。樹脂組成物(B)のせん断粘度及び伸張粘度を表1に示した。
【0087】
製造例3
1−ヘキセンを0.6部とした以外は、製造例2と同様にして樹脂組成物(C)を得た。
ノルボルネン系開環重合体水素化物の重量平均分子量(Mw)は40000、分子量分布(Mw/Mn)は3.0、水素添加率は99.5%、分岐指数は1.00であった。
樹脂組成物(C)のガラス転移点は104℃、MFRは5g/10分であった。樹脂組成物(C)のせん断粘度及び伸張粘度を表1に示した。
【0088】
製造例4
ビニルノルボルネン0.18部を追加して重合した以外は、製造例2と同様にして樹脂組成物(D)を得た。
ノルボルネン系開環重合体水素化物の重量平均分子量(Mw)は3.4300、分子量分布(Mw/Mn)は3.3、水素添加率は99.5%、分岐指数は0.65であった。
樹脂組成物(D)のガラス転移点は103℃、MFRは13g/10分であった。樹脂組成物(D)のせん断粘度及び伸張粘度を表1に示した。
【0089】
製造例5
ノルボルネン系開環重合体水素化物99.40部に対して、離型剤として0.10部の水酸基含有部分エステル化合物:ペンタエリスリトールジステアレート(日油社製ユニスターH476D)を添加した以外は、製造例4と同様にして樹脂組成物(E)を得た。
樹脂組成物(E)のガラス転移点は101℃、MFRは15g/10分であった。樹脂組成物(E)のせん断粘度及び伸張粘度を表1に示した。
【0090】
製造例6
水酸基含有部分エステル化合物:ペンタエリスリトールジステアレート(日油社製ユニスターH476D)の代わりに、離型剤として0.03部の水酸基含有脂肪酸エステル化合物:12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド(花王社製カオーワックス85P)を添加した以外は、製造例4と同様にして樹脂組成物(F)を得た。
樹脂組成物(F)のガラス転移点は103℃、MFRは13.2g/10分であった。樹脂組成物(F)のせん断粘度及び伸張粘度を表1に示した。
【0091】
製造例7
ビニルノルボルネンを0.08部に変更した以外は、製造例4と同様にして樹脂組成物(F)を得た。
ノルボルネン系開環重合体水素化物の重量平均分子量(Mw)は3.2000、分子量分布(Mw/Mn)は3.00、水素添加率は99.5%、分岐指数は0.94であった。
樹脂組成物(G)のガラス転移点は104℃、MFRは13g/10分であった。樹脂組成物(G)のせん断粘度及び伸張粘度を表1に示した。
【0092】
製造例8
ビニルノルボルネンをNBdimerに変更した以外は、製造例4と同様にして樹脂組成物(H)を得た。
ノルボルネン系開環重合体水素化物の重量平均分子量(Mw)は35300、分子量分布(Mw/Mn)は3.3、水素添加率は99.5%、分岐指数は0.61であった。
樹脂組成物(H)のガラス転移点は104℃、MFRは13g/10分であった。樹脂組成物(H)のせん断粘度及び伸張粘度を表1に示した。
【0093】
製造例9
製造例2で得られたノルボルネン系開環重合体水素化物99.37部に対して、0.50部の酸化防止剤:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバガイギー社製イルガノックス1010)、離型剤として0.03部の水酸基含有部分エステル化合物:ペンタエリスリトールジステアレート(日油社製ユニスターH476D)及び超高分子ポリエチレンパウダー(三井化学社製ミペロンXM220、粘度平均分子量200万)を0.10部添加し、2軸混練機(東芝機械社製TEM−35B、スクリュー径37mm、L/D=32、スクリュー回転数150rpm、樹脂温度240℃、フィードレート20kg/時間)で混練し、押出し、樹脂組成物(I)を得た。
樹脂組成物(I)のガラス転移点は104℃、MFRは12g/10分であった。樹脂組成物(I)のせん断粘度及び伸張粘度を表1に示した。
【0094】
製造例10
製造例4で得られたノルボルネン系開環重合体水素化物99.28部に対して、離型剤として0.22部の水酸基含有部分エステル化合物:ペンタエリスリトールジステアレート(日油社製ユニスターH476D)を添加した以外は、製造例4と同様にして樹脂組成物(J)を得た。
樹脂組成物(J)のガラス転移点は101℃、MFRは17g/10分であった。樹脂組成物(J)のせん断粘度及び伸張粘度を表1に示した。
【0095】
製造例11
水酸基含有部分エステル化合物の代わりに、離型剤として0.03部の水酸基を含有しない脂肪酸エステル化合物:ステアリン酸トリグリセリド(理研ビタミン社製リケマールVT)を添加した以外は、製造例4と同様にして樹脂組成物(K)を得た。
樹脂組成物(K)のガラス転移点は104℃、MFRは13g/10分であった。樹脂組成物(K)のせん断粘度及び伸張粘度を表1に示した。
【0096】
製造例12
ビニルノルボルネンを0.30部に変更した以外は、製造例4と同様にして樹脂組成物(L)を得た。
ノルボルネン系開環重合体水素化物の重量平均分子量(Mw)は3.8000、分子量分布(Mw/Mn)は3.5、水素添加率は99.5%、分岐指数は0.46であった。
樹脂組成物(L)のガラス転移点は104℃、MFRは25g/10分であった。樹脂組成物(L)のせん断粘度及び伸張粘度を表1に示した。
【0097】
製造例13
製造例2で得られたノルボルネン系開環重合体水素化物99.17部に対して、超高分子ポリエチレンパウダー(三井化学社製ミペロンXM220)を0.30部添加した以外は、製造例9と同様にして樹脂組成物(M)を得た。
樹脂組成物(M)のガラス転移点は104℃、MFRは6g/10分であった。樹脂組成物(M)のせん断粘度及び伸張粘度を表1に示した。
【0098】
製造例14
製造例2で得られたノルボルネン系開環重合体水素化物99.46部に対して、超高分子ポリエチレンパウダー(三井化学社製ミペロンXM220)を0.01部添加した以外は、製造例9と同様にして樹脂組成物(N)を得た。
樹脂組成物(N)のガラス転移点は103℃、MFRは13g/10分であった。樹脂組成物(N)のせん断粘度及び伸張粘度を表1に示した。
【0099】
製造例15
120kgのテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(以後TCDということがある)を、シクロヘキサン258リットルを装入した反応容器に、常温、窒素気流下で加え、5分間撹拌を行った。さらにトリイソブチルアルミニウムを系内の濃度が1.0ml/リットルとなるように添加した。続いて、撹拌しながら常圧でエチレンを流通させ系内をエチレン雰囲気とした。オートクレーブの内温を70℃に保ち、エチレンにて内圧がゲージ圧で6kg/cm2 となるように加圧した。10分間撹拌した後、予め用意したイソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウムジクロリドおよびメチルアルモキサンを含むトルエン溶液0.4リットルを系内に添加し、エチレン及びNBの共重合反応を開始させた。このときの触媒濃度は、全系に対してイソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(インデニル)ジルコニウムジクロリドが0.018mmol/リットルであり、メチルアルモキサンが8.0mmol/リットルであった。
【0100】
重合中、系内にエチレンを連続的に供給し、温度を70℃、内圧をゲージ圧で6kg/cm2に保持した。60分後、イソプロピルアルコールを添加し、重合反応を停止した。脱圧後、ポリマー溶液を取り出し、その後、水1m3に対し濃塩酸5リットルを添加した水溶液と1:1の割合で強撹拌下に接触させ、触媒残渣を水相へ移行させた。この接触混合液を静置したのち、水相を分離除去し、さらに水洗を2回行い、重合液相を精製分離した。
得られたノルボルネン系付加重合体の重量平均分子量(Mw)は41000、分子量分布(Mw/Mn)は3.5、重合体中のTCD由来の繰り返し単位量は25モル%であった。
【0101】
次いで、精製分離された重合液を3倍量のアセトンと強撹拌下で接触させ、共重合体を析出させた後、固体部(共重合体)を濾過により採取し、アセトンで十分洗浄した。さらに、ポリマー中に存在する未反応のモノマーを抽出するため、この固体部を40kg/m3となるようにアセトン中に投入した後、60℃で2時間の条件で抽出操作を行った。抽出処理後、固体部を濾過により採取し、窒素流通下、130℃、350mmHgで12時間乾燥し、ノルボルネン系付加重合体(O)を得た。ノルボルネン系付加重合体(G)の分岐指数は1.00であった。
次いで、ノルボルネン系付加重合体(O)99.50部に対して、0.50部の酸化防止剤:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバガイギー社製イルガノックス1010)を、得られた溶液に添加して溶解させた。次いで、キュノーフィルター社製ゼータープラスフィルター30H(孔径0.5〜1μm)にて順次濾過し、さらに別の金属ファイバー製フィルター(孔径0.4μm、ニチダイ社製)にて濾過して微小な固形分を除去した。
次いで、上記溶液を、円筒型濃縮乾燥器(日立製作所製)を用いて、温度270℃、圧力1kPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン及びその他の揮発成分を除去し、濃縮機に直結したダイから溶融状態でストランド状に押出し、冷却後ペレット化して樹脂組成物(O)を得た。
樹脂組成物(O)のガラス転移温度は115℃、MFRは13.8g/10分であった。樹脂組成物(O)のせん断粘度及び伸張粘度を表1に示した。
【0102】
製造例16
ノルボルネン系付加重合体(G)99.47部に対して、0.50部の酸化防止剤:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバガイギー社製イルガノックス1010)、離型剤として0.03部の水酸基含有部分エステル化合物:ペンタエリスリトールジステアレート(日油社製ユニスターH476D)を添加した以外は、製造例15と同様にして樹脂組成物(P)を得た。
樹脂組成物(P)のガラス転移点は114℃、MFRは15.2g/10分であった。樹脂組成物(P)のせん断粘度及び伸張粘度を表1に示した。
【0103】
製造例17
TCDに対するエチレン及びNBdimerの重合割合を表1に示すように変更した以外は、製造例15と同様にして樹脂組成物(Q)を得た。
ノルボルネン系付加重合体の重量平均分子量(Mw)は43000、分子量分布(Mw/Mn)は3.5、重合体中のTCD由来の繰り返し単位量は25モル%、重合体中のビニルノルボルネン由来の繰り返し単位量は0.18モル%、分岐指数は0.6であった。
樹脂組成物(Q)のガラス転移点は103℃、MFRは10g/10分であった。樹脂組成物(Q)のせん断粘度及び伸張粘度を表1に示した。
【0104】
【表1】

【0105】
実施例1
樹脂型の作成
製造例4により得られた樹脂組成物(D)を射出成形し、内径15mm、外径120mm、厚さ0.6mmの円板形状の樹脂型を得た。
【0106】
射出成形に使用する可塑化装置は、幅0.16μm、配列ピッチ0.32μm、深さ160nmの同心円状凹凸パターンを有するDVD+R用のNiスタンパを取り付けた、キャビティ深さ0.580mmの金型を装着した射出成形機(住友重機械工業社製SD40ER)であった。
【0107】
樹脂温度(バレル設定最高温度)を350℃、金型固定側を91℃、金型可動側を69℃とした。金型の最大圧縮力は35トンとし、金型開き量制御にて金型の初期開き幅(初期型開量)を0.4mmに設定し、射出開始から0.12秒経過後に最大圧縮力にて金型を閉じた。充填樹脂量は6.4gとし、最大射出速度は130mm/sとした。
得られた樹脂型(D)の離型性、糸引き及び転写率の評価した。結果を表2に示した。
【0108】
実施例2
製造例5でえられた樹脂組成物(E)を実施例1と同様に射出成形して得た樹脂型の離型性、糸引き及び転写率を評価した。結果を表2に示した。
【0109】
実施例3
製造例6でえられた樹脂組成物(F)を実施例1と同様にして射出成形して得た樹脂型の離型性、糸引き及び転写率を評価した。結果を表2に示した。
【0110】
実施例4
製造例7でえられた樹脂組成物(G)を実施例1と同様にして射出成形して得た樹脂型の離型性、糸引き及び転写率を評価した。結果を表2に示した。
【0111】
実施例5
製造例8でえられた樹脂組成物(H)を実施例1と同様にして射出成形して得た樹脂型の離型性、糸引き及び転写率を評価した。結果を表2に示した。
【0112】
実施例6
製造例9でえられた樹脂組成物(I)を実施例1と同様にして射出成形して得た樹脂型の離型性、糸引き及び転写率を評価した。結果を表2に示した。
【0113】
実施例7
製造例17でえられた樹脂組成物(Q)を実施例1と同様にして射出成形して得た樹脂型の離型性、糸引き及び転写率を評価した。結果を表2に示した。
【0114】
比較例1
製造例1でえられた樹脂組成物(A)を実施例1と同様にして射出成形して得た樹脂型の離型性、糸引き及び転写率を評価した。結果を表2に示した。
【0115】
比較例2
製造例2でえられた樹脂組成物(B)を実施例1と同様にして射出成形して得た樹脂型の離型性、糸引き及び転写率を評価した。結果を表1に示した。
【0116】
比較例3
製造例3でえられた樹脂組成物(C)を実施例1と同様にして射出成形して得た樹脂型の離型性、糸引き及び転写率を評価した。結果を表2に示した。
【0117】
比較例4
製造例10でえられた樹脂組成物(J)を実施例1と同様にして射出成形して得た樹脂型の離型性、糸引き及び転写率を評価した。結果を表2に示した。
【0118】
比較例5
製造例11でえられた樹脂組成物(K)を実施例1と同様にして射出成形して得た樹脂型の離型性、糸引き及び転写率を評価した。結果を表2に示した。
【0119】
比較例6
製造例12でえられた樹脂組成物(L)を実施例1と同様にして射出成形して得た樹脂型の離型性、糸引き及び転写率を評価した。結果を表2に示した。
【0120】
比較例7
製造例13でえられた樹脂組成物(M)を実施例1と同様にして射出成形して得た樹脂型の離型性、糸引き及び転写率を評価した。結果を表2に示した。
【0121】
比較例8
製造例14でえられた樹脂組成物(N)を実施例1と同様にして射出成形して得た樹脂型の離型性、糸引き及び転写率を評価した。結果を表2に示した。
【0122】
比較例9
製造例15でえられた樹脂組成物(O)を実施例1と同様にして射出成形して得た樹脂型の離型性、糸引き及び転写率を評価した。結果を表2に示した。
【0123】
比較例10
製造例16でえられた樹脂組成物(P)を実施例1と同様にして射出成形して得た樹脂型の離型性、糸引き及び転写率を評価した。結果を表2に示した。
【0124】
【表2】

【0125】
実施例1〜7の樹脂組成物は、良好な離型性及び糸引き性を有しており、当該樹脂組成物からなる樹脂型は、良好な転写性を有していた。
水酸基含有エステル化合物を含まない比較例1の樹脂組成物は、離型不良を発生させた。
伸張粘度が低すぎる比較例2の樹脂組成物は、糸引きを発生させた。
せん断粘度が高すぎる比較例3の樹脂組成物からなる樹脂型の転写率は低かった。
水酸基含有エステル化合物の含有量が多すぎる比較例4の樹脂組成物は、糸引きを発生させた。
水酸基含有エステル化合物を含まない比較例5の樹脂組成物は、離型不良を発生させた。
せん断粘度及び伸張粘度が低すぎる比較例6の樹脂組成物は、糸引きを発生させ、当該樹脂組成物からなる樹脂型の凹凸パターンは変形してしまい転写不良となった。
せん断粘度が高すぎる比較例7の樹脂組成物からなる樹脂型の転写率は低かった。
水酸基含有エステル化合物を含まない比較例9の樹脂組成物からなる樹脂型の凹凸パターンは変形してしまい転写不良となった。
伸張粘度が低すぎる比較例10の樹脂組成物は、糸引きを発生させ、当該樹脂組成物からなる樹脂型の凹凸パターンは変形してしまい転写不良となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂環式構造含有熱可塑性樹脂と水酸基含有エステル化合物を含有する樹脂組成物であって、水酸基含有エステル化合物の含有量が樹脂組成物100質量部に対して0.02〜0.20質量部であり、230℃、せん断速度10000/sでのせん断粘度が20〜50Pa・sであり、かつ、230℃、伸張レート100/sにおける伸張粘度が6〜20kPa・sである樹脂組成物。
【請求項2】
上記脂環式構造含有熱可塑性樹脂の分岐指数が0.5〜0.98の範囲である請求項1に記載された樹脂組成物。
【請求項3】
粘度平均分子量150万〜300万のポリエチレンを、樹脂組成物100質量部に対して0.01〜1.0質量部含有する請求項1に記載された樹脂組成物。
【請求項4】
上記脂環式構造含有熱可塑性樹脂がノルボルネン系開環重合体水素化物である請求項1〜3のいずれか1項に記載された樹脂組成物。
【請求項5】
上記脂環式構造含有熱可塑性樹脂がノルボルネン系付加重合体である請求項1〜3のいずれか1項に記載された樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載された樹脂組成物からなる樹脂型。
【請求項7】
基体上に硬化性樹脂を塗布し、得られた硬化性樹脂層上に請求項6に記載された樹脂型を重ね合わせ、当該硬化性樹脂層を硬化させた後に当該樹脂型を剥離除去する、成形体の製造方法。
【請求項8】
硬化性樹脂を請求項6に記載された樹脂型が形成する内部空間内に充填し、硬化性樹脂を硬化させた後、当該樹脂型を剥離除去する、成形体の製造方法。

【公開番号】特開2010−82849(P2010−82849A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252072(P2008−252072)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】