説明

樹脂組成物およびその用途

【課題】本発明は、透明性、耐熱性、有機溶媒への溶解性、強度、および加工性に優れ、特異な複屈折の波長依存性を有する光学部品を製造し得る、環状オレフィン系開環共重合体を含む樹脂組成物、それから得られるフィルム、光学部品ならびにその用途を提供することを課題としている。
【解決手段】本発明の樹脂組成物は、ノルボルネン系開環(共)重合体である環状オレフィン系樹脂と、特定のイミド結合含有化合物とを含有することを特徴としている、

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈折率の異方性をコントロールできる、イミド化合物を含有する環状オレフィン系開環共重合体組成物、該樹脂組成物から得られるフィルムまたは延伸フィルムおよびその用途、ならびに該樹脂組成物から得られる光学部品に関する。詳しくは、本発明は、透明性、耐熱性、有機溶媒への溶解性、強度および加工性に優れ、特異な複屈折性および波長依存性を有する環状オレフィン系樹脂組成物およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
環状オレフィン系樹脂は、一般に複屈折が比較的小さいため、偏光板保護フィルム、液晶基板材料、光ディスク、各種光学レンズ、光ファイバーなどへの利用が近年検討されている。また環状オレフィン系樹脂は、加工条件をコントロールすることにより適度な複屈折を発現するため、これを積極的に利用した光学補償フィルムが実際に使用されている。たとえば、特許文献1〜4には、環状オレフィン系樹脂のフィルムを用いた位相差板が記載されている。また、特許文献5〜7には、環状オレフィン系樹脂のフィルムを、偏光板の保護フィルムに使用することが記載されている。さらに、特許文献8には、環状オレフィン系樹脂のフィルムからなる液晶表示素子用基板が記載されている。
【0003】
一般的に位相差フィルムは、延伸配向により、透過光に位相差(複屈折)を与える機能が付与されているが、多くの樹脂フィルムでは透過光の波長が長波長になるにつれて透過光の位相差(複屈折)の絶対値は小さくなる傾向を有するため、可視光領域全域(400〜800nm)において、たとえば1/4λなどの特定の位相差を透過光に与えることは非常に困難であった。しかしながら現在では、反射型や半透過型の液晶ディスプレイや、光ディスク用ピックアップなどの用途においては、実際に、可視光領域全域(400〜800nm)などの広範な波長領域において、1/4λの位相差を与える逆波長分散性位相差フィルムが必要とされており、一方では現在位相差フィルムとして多用されている環状オレフィン開環(共)重合体よりも正波長分散性の大きな位相差フィルムが求められている。正波長分散性の大きな位相差フィルムとしてはポリカーボネートが良く知られているが、このような位相差フィルムでは光弾性係数が大きいため実用的でなく、環状オレフィン開環(共)重合体のように光弾性係数が小さい事に加え、波長分散性が高度に制御された材料の開発が強く望まれている。この他にも、種々の要求に応じ、複屈折の値の正負、その絶対値の大小、位相差の波長依存性の大小等、更に多様な光学的特性を有する樹脂の開発が望まれている。
【0004】
このため、従来の環状オレフィン系樹脂からなる光学フィルムでは、前記の高度な要求に対応できず、そのような光学特性を達成するには複数のフィルムを積層したり、光学特性改良のために各種コーティング剤を塗布したり、さらには複数の延伸フィルムを配向方向を交えて貼合したりして所望の光学特性を得ることが行われている。しかしながら、このような方法で得られる光学フィルムでは、切り出し、フィルム貼合、接着など、製造工程が複雑であるため高コスト、低歩留まり、およびフィルム厚み低減が困難であるといった問題がある。
【0005】
このような状況において、広範な波長領域において、所望の位相差を有する、単層の光学フィルムの実現が望まれており、このような光学フィルムを製造し得る樹脂の出現が強く求められている。
【特許文献1】特開平4−245202号公報
【特許文献2】特開平4−36120号公報
【特許文献3】特開平5−2108号公報
【特許文献4】特開平5−64865号公報
【特許文献5】特開平5−212828号公報
【特許文献6】特開平6−51117号公報
【特許文献7】特開平7−77608号公報
【特許文献8】特開平5−61026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、透明性、耐熱性、有機溶媒への溶解性、強度、および加工性に優れ、特異な複屈折の波長依存性を有する光学部品を製造し得る、環状オレフィン系開環共重合体を含む樹脂組成物、それから得られるフィルム、光学部品ならびにその用途を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者が鋭意検討した結果、イミド基を含有する化合物と環状オレフィン系(共)重合体とからなる樹脂組成物が上記課題を達成しうることを見出し、これに基づき本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の樹脂組成物は、
(A)下記式(1)で表される構造単位を有する環状オレフィン系樹脂と、
(B)下記式(2−1)で表される構造単位を有する重合体(以下、「重合体(2−1)」ともいう)、および、下記式(2−2)または下記式(2−3)で表される化合物(以下、それぞれ「化合物(2−2)」、「化合物(2−3)」ともいう)よりなる群から選ばれる一種以上のイミド結合含有化合物と
を含有することを特徴としている。
【0009】
【化1】

【0010】
(式(1)中、aおよびbは独立に0または1であり、cおよびdは独立に0〜2の整数である。Xは式:−CH=CH−で表される基または式:−CH2CH2−で表される基で
ある。R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、およびR10は、それぞれ独立に
水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、硫黄原子、窒素原子、またはケイ素原子を含む連結基を有しても良い置換または非置換の炭素数1〜30の炭化水素基;または極性基を表す。R7とR8、またはR9とR10とは一体化して2価の炭化水素基を形成しても良く、R7またはR8とR9またはR10とは相互に結合して、それぞれが結合している炭素原子と共に炭素環または複素環(これらの炭素環または複素環は単環構造でも良いし、他の環が縮合して多環構造を形成しても良い。)を形成しても良い。)
【0011】
【化2】

【0012】
【化3】

【0013】
(式(2−1)、式(2−2)および式(2−3)中、Aは4価の有機基を表し、B、R13、およびR14はそれぞれ独立に2価の有機基を表し、R11およびR12はそれぞれ独立に1価の有機基を表す。)
本発明の樹脂組成物では、環状オレフィン系樹脂(A)が、前記式(1)で表される構造単位のうち、式(1)中のXが−CH2CH2−で表される基である構造単位を90%以上含むことが好ましい。
【0014】
また、本発明の樹脂組成物では、環状オレフィン系樹脂(A)とイミド結合含有化合物(B)との割合((A)/(B))が、重量比で、99/1〜50/50の範囲にあることが好ましい。
【0015】
本発明のフィルムは、前記本発明の樹脂組成物をキャスト法または押出し法により製膜して得られることを特徴としている。本発明の延伸フィルムは、前記本発明の樹脂組成物をキャスト法または押出し法により製膜し、加熱延伸して得られることを特徴としている。
【0016】
本発明の偏光板、ならびに本発明の液晶表示装置は、前記本発明の樹脂組成物からなる延伸フィルムを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る樹脂組成物は、特定のイミド結合含有化合物および環状オレフィン系開環(共)重合体を混合することにより容易に製造可能で、得られる樹脂組成物は透明性、耐熱性、有機溶剤への溶解性、強度、および加工性に優れる。また、本発明に係る樹脂組成物は、その組成比を適切に調整することで、屈折率の異方性や波長分散性を自在にコントロールすることができる。
【0018】
本発明に係る樹脂組成物は、光学材料として非常に有用であり、光ディスク、光磁気ディスク、光学レンズ(Fθレンズ、ピックアップレンズ、レーザープリンター用レンズ、カメラレンズ等)、眼鏡レンズ、光学フィルム/シート(ディスプレイ用フィルム、位相差フィルム、偏光フィルム、偏光板保護フィルム、拡散フィルム、反射防止フィルム、液晶基板、EL基板、電子ペーパー用基板、タッチパネル基板、PDP前面板等)、透明導電性フィルム用基板、光ファイバー、導光板、光カード、光ミラー、IC、LSI、LED封止材等、非常に高精度の光学設計が必要とされている光学材料への応用が可能である。
【0019】
特に本発明に係る樹脂組成物は、光学フィルムの用途に用いることができ、キャスト法または押出し法により製膜したフィルム、それを延伸した延伸フィルムの製造に適している。延伸フィルムは、位相差フィルムとして好適であり、偏光板や液晶表示装置などの用途に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明について具体的に説明する。
本明細書において、複屈折との用語は通常の意味で用いられる。また、複屈折の値(これを、Δnとする)とは、重合体から成形されたフィルムを一軸または二軸延伸し、重合体分子鎖を一方向に配向させた延伸フィルムにおいて、延伸方向(二軸延伸においては延伸倍率の大きい方向)をx軸、これに対して面内垂直方向をy軸とし、x軸方向の屈折率をnx、Y軸方向の屈折率をnyとして、下記式:
Δn=nx−ny
で定義される正ないし負の値であり、その絶対値は入射光の波長によって異なる。
【0021】
そして、正(または、負)の複屈折性とは、前記Δnが正(または、負)である場合の上記延伸フィルムの性質を意味する。
次に、位相差(Retardation、これをReとする)とは、下記式:
Re=Δn×d (式中、dは、透過光の光路長(nm)であり、通常、上記延伸フィルムの厚さである。)
で定義される正〜負の値であり、その絶対値は入射光の波長によって異なる。
【0022】
そして、位相差の波長依存性とは、前記Reの値と入射光の波長との相関性を意味し、「位相差の波長依存性が大きい」とは、短波長の入射光に対するReの絶対値と、長波長の入射光に対するReの絶対値との差異が大きいことを意味する。また、「正の波長分散性」とは入射光波長が長波長になるに従い位相差が小さくなる特性を意味し、「逆波長分散性」とは入射光波長が長波長になるに従い位相差が大きくなる特性を意味する。
【0023】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、特定の環状オレフィン系樹脂(A)と、イミド結合含有化合物(B)とを必須の成分として含有する。本発明の樹脂組成物は、環状オレフィン系樹脂(A)およびイミド結合含有化合物(B)のみから構成されていてもよいし、さらにこれら以外の成分を含有していてもよい。
【0024】
(A)環状オレフィン系樹脂
本発明で用いる環状オレフィン系樹脂(A)は、前記式(1)で表される構造単位を有する樹脂またはその組成物である。本発明において、環状オレフィン系樹脂(A)は、前記式(1)で表される単一の構造単位からなる重合体であってもよく、前記式(1)で表される2種以上の構造単位からなる共重合体または混合物であってもよく、前記式(1)で表される構造単位とその他の構造単位とを有する共重合体であってもよい。また、環状オレフィン系樹脂(A)は、上述の重合体の他に酸化防止剤、光安定剤、UV吸収剤等の
各種添加剤を含有していてもよい。
【0025】
ここで、前記式(1)におけるR1〜R10で表される、水素原子;ハロゲン原子;酸素
原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有してもよい、置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または極性基について説明する。
【0026】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子および臭素原子が挙げられる。
炭素原子数1〜30の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;エチリデン基、プロピリデン基等のアルキリデン基;フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等の芳香族基等が挙げられる。これらの基中の炭素原子に結合した水素原子は、例えば、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、フェニルスルホニル基、シアノ基等で置換されていてもよい。
【0027】
上記の置換または非置換の炭化水素基は直接環構造に結合していてもよいし、或いは連結基を介して結合していてもよい。前記連結基としては、例えば、炭素原子数1〜10の2価炭化水素基(例えば、−(CH2m−(式中、mは1〜10の整数)で表されるアルキレン基);酸素原子、窒素原子、硫黄原子またはケイ素原子を含む連結基(例えば、カルボニル基(−CO−)、カルボニルオキシ基(−COO−)、スルホニル基(−SO2
−)、スルホニルオキシ基(−SO2−O−)、エーテル結合(−O−)、チオエーテル
結合(−S−)、イミノ基(−NH−)、アミド結合(−NHCO−)、シロキサン結合(−Si(R)2O−)(式中、Rはメチル基、エチル基等のアルキル基である);或い
はこれらの2種以上が組み合わさって連なったものが挙げられる。
【0028】
極性基としては、例えば、水酸基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アミド基、イミノ基(=NH)、トリオルガノシロキシ基、トリオルガノシリル基、アミノ基、アシル基、アルコキシシリル基、スルフィノ基(−SO2H)、カルボキシル基等が挙げられる。
【0029】
更に具体的には、上記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられ;アルキルカルボニルオキシ基としては、例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基等が挙げられ;アリールカルボニルオキシ基としては、例えば、ベンゾイルオキシ基等が挙げられ;アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられ;アリーロキシカルボニル基としては、例えば、フェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基、フルオレニルオキシカルボニル基、ビフェニリルオキシカルボニル基等が挙げられ;トリオルガノシロキシ基としては、例えば、トリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基等が挙げられ;トリオルガノシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基等が挙げられ;アミノ基としては、例えば、第1級アミノ基等が挙げられ;アルコキシシリル基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等が挙げられる。
【0030】
また、R7またはR8と、R9またはR10とは相互に結合して炭素環または複素環(これ
らの炭素環または複素環は単環構造でもよいし、他の環が縮合して多環構造を形成してもよい。)を形成してもよい。
【0031】
本発明に係る環状オレフィン系樹脂(A)は、特に限定されるものではないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(GPC測定条件:測定器;東ソー(株)製HLC-8220GPC、カラム;東ソー(株)製ガードカラムHXL-H、TSK gel G7000HXL、TSK gel GMHXL2本、TSK gel G2000HXLを順次連結、溶媒;テトラヒドロフラン、流速;1mL/min、サ
ンプル濃度0.7〜0.8wt%、注入量;70μL、測定温度;40℃、検出器;RI(40℃)、標準物質;東ソー(株)製TSKスタンダードポリスチレン))で求めた数平均分子量(Mn)が、通常、1000〜50万、好ましくは2000〜30万、更に好ましくは5000〜30万であり、重量平均分子量(Mw)は、通常、5000〜200万、好ましくは1万〜100万、更に好ましくは3万〜50万である。また、ウッベローデ型粘度計を用いて、クロロホルム中、試料濃度0.5g/dL、温度30℃で測定した対数粘度が0.4〜0.
8dL/gであることが好ましい。
【0032】
上記対数粘度(ηinh)が0.4未満であるか、数平均分子量(Mn)が1000未満
であるか、或いは、重量平均分子量(Mw)が5000未満であると、環状オレフィン系樹脂(A)を含む樹脂組成物から得られる成形物の強度が著しく低下する場合がある。一方、対数粘度(ηinh) が0.81以上であるか、数平均分子量(Mn)が50万以上であるか、或いは、重量平均分子量(Mw)が200万以上であると、環状オレフィン系樹脂(A)の溶融粘度または溶液粘度が高くなりすぎて、環状オレフィン系樹脂(A)を含む樹脂組成物から所望の成形品を得ることが困難になる場合がある。
【0033】
環状オレフィン系樹脂(A)の製造方法
・単量体
本発明に係る環状オレフィン系樹脂(A)は、下記一般式(1’)で表される環状オレフィン系の単量体を、必要に応じて他の単量体とともに、開環(共)重合して調製することができる。
【0034】
【化4】

【0035】
(式(1’)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、およびR10、ならび
にa、b、c、dは、それぞれ式(1)で定義の通り)
このような環状オレフィン系の単量体の具体例としては、たとえば、以下のものを挙げることができる。
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
【0036】
【化5】

【0037】
5−エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
【0038】
【化6】

【0039】
5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
【0040】
【化7】

【0041】
5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
【0042】
【化8】

【0043】
5−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
【0044】
【化9】

【0045】
5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
【0046】
【化10】

【0047】
5−メチル−5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
【0048】
【化11】

【0049】
5−(ビフェニル−4−イル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
【0050】
【化12】

【0051】
5−(ナフタレン−2−イル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
【0052】
【化13】

【0053】
5−(ナフタレン−1−イル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
【0054】
【化14】

【0055】
5−シクロヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
【0056】
【化15】

【0057】
5−(シクロヘキセン−4−イル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
【0058】
【化16】

【0059】
5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
【0060】
【化17】

【0061】
5−エトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
【0062】
【化18】

【0063】
5−ブトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
【0064】
【化19】

【0065】
5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
【0066】
【化20】

【0067】
5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
【0068】
【化21】

【0069】
5−メチル−5−エトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
【0070】
【化22】

【0071】
5−メチル−5−フェノキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
【0072】
【化23】

【0073】
5−フルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
【0074】
【化24】

【0075】
5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
【0076】
【化25】

【0077】
トリシクロ[5.2.1.02,6 ]−8−デセン
【0078】
【化26】

【0079】
トリシクロ[5.2.1.02,6 ]−デカ−3,8−ジエン
【0080】
【化27】

【0081】
トリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン
【0082】
【化28】

【0083】
7−メチルトリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン
【0084】
【化29】

【0085】
テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン
【0086】
【化30】

【0087】
2,10−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン
【0088】
【化31】

【0089】
2,9−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン
【0090】
【化32】

【0091】
8−フェニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
【0092】
【化33】

【0093】
8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
【0094】
【化34】

【0095】
8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
【0096】
【化35】

【0097】
8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
【0098】
【化36】

【0099】
8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデ
セン
【0100】
【化37】

【0101】
8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデ
セン
【0102】
【化38】

【0103】
8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセ

【0104】
【化39】

【0105】
8−フェノキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
【0106】
【化40】

【0107】
8−(1−ナフトキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−
ドデセン
【0108】
【化41】

【0109】
8−(2−ナフトキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−
ドデセン
【0110】
【化42】

【0111】
8−(4−フェニルフェノキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
]−3−ドデセン
【0112】
【化43】

【0113】
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン
【0114】
【化44】

【0115】
8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン
【0116】
【化45】

【0117】
8−メチル−8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
]−3−ドデセン
【0118】
【化46】

【0119】
8−メチル−8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
]−3−ドデセン
【0120】
【化47】

【0121】
8−メチル−8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
−3−ドデセン
【0122】
【化48】

【0123】
8−メチル−8−フェノキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−
3−ドデセン
【0124】
【化49】

【0125】
8−メチル−8−(1−ナフトキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
【0126】
【化50】

【0127】
8−メチル−8−(2−ナフトキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
【0128】
【化51】

【0129】
8−メチル−8−(4−フェニルフェノキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
【0130】
【化52】

【0131】
8−フルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
【0132】
【化53】

【0133】
8−フルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
【0134】
【化54】

【0135】
8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
【0136】
【化55】

【0137】
8−ペンタフルオロエチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
【0138】
【化56】

【0139】
8,8−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
【0140】
【化57】

【0141】
8,9−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
【0142】
【化58】

【0143】
8,8−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン
【0144】
【化59】

【0145】
8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン
【0146】
【化60】

【0147】
8,8,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
【0148】
【化61】

【0149】
8,8,9,9−テトラフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ド
デセン
【0150】
【化62】

【0151】
8,8,9,9−テトラキス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5
.17,10]−3−ドデセン
【0152】
【化63】

【0153】
8,9−ジフルオロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
【0154】
【化64】

【0155】
ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン
【0156】
【化65】

【0157】
ペンタシクロ[7.4.0.12,5.18,11.07,12]−3−ペンタデセン
【0158】
【化66】

【0159】
ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ヘキサデセン
【0160】
【化67】

【0161】
ヘプタシクロ[8.7.0.13,6.110,17.112,15.02,7.011,16]−4−エイコ
セン
【0162】
【化68】

【0163】
ヘプタシクロ[8.8.0.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ヘンエ
イコセン
【0164】
【化69】

【0165】
スピロ[フルオレン−9,8'−トリシクロ[4.3.0.12.5][3]デセン
【0166】
【化70】

【0167】
本発明で使用する環状オレフィン系樹脂(A)は、このようなノルボルネン系誘導体の少なくとも1種以上を開環(共)重合して得ることができるが、式(1)中のcが0である(A)成分が好ましく使用される。即ち、式(1)で表される環状オレフィン開環重合体を誘導し得る式(1’)で表される単量体中のcが0であることが好ましく、生産の容易さから下記に示す環状オレフィン系単量体から選ばれる単量体が特に好ましく使用できる。
【0168】
【化71】

【0169】
単量体組成物は、上述の式(1’)で表される環状オレフィン系単量体の他に、本発明の目的を損なわない範囲で、その他の共重合可能な単量体を含有していてもよい。共重合可能な単量体としては、たとえば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロオクテン、シクロドデセン等の環状オレフィン;1,4−シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロドデカトリエン等の非共役環状ポリエンが挙げられる。前記共重合可能な単量体は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。本発明では、単量体組成物中の共重合可能な単量体は、30モル%以下であるのが好ましく、20モル%以下であるのがより好ましい。
【0170】
・開環重合触媒
本発明に係る環状オレフィン系樹脂(A)を製造するのに好適に用いることのできる、開環重合用の触媒としては、例えば、
(I)Olefin Metathesis and Metathesis Polymerization(K.J.IVIN, J.C.MOL, Academic Press 1997)に記載されている触媒が好ましく用いられる。このような触媒としては
、例えば、(a)W、Mo、Re、VおよびTiの化合物から選ばれた少なくとも1種と、(b)アルカリ金属元素(例えば、Li、Na、K)、アルカリ土類金属元素(例えば、Mg、Ca)、第12族元素(例えば、Zn、Cd、Hg)、第13族元素(例えば、B、Al)、第14族元素(例えば、Si、Sn、Pd)等の化合物であって、少なくとも1つの当該元素−炭素結合または当該元素−水素結合を有するものから選ばれた少なくとも1種との組み合わせからなるメタセシス触媒が挙げられる。該触媒の活性を高めるために、後述の(c)添加剤が添加されたものであってもよい。
【0171】
上記(a)成分の具体例としては、例えば、WCl6、MoCl5、ReOCl3、VO
Cl3、TiCl4等の特開平1−240517号公報に記載の化合物を挙げることができる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0172】
上記(b)成分の具体例としては、例えば、n−C49Li、(C253Al、(C252AlCl、(C251.5AlCl1.5、(C25)AlCl2、メチルアルモキサ
ン、LiH等の特開平1−240517号公報に記載の化合物を挙げることができる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0173】
上記(c)成分の添加剤としては、例えば、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類等を好適に用いることができ、更に、特開平1−240517号公報に記載の化合物を使用することができる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0174】
上記(a)成分等を組み合わせてなるメタセシス触媒の使用量は、上記(a)成分と、全単量体との、「(a)成分:全単量体」のモル比が、通常、1:500〜1:500,000となる範囲、好ましくは1:1,000〜1:100,000となる範囲である。更に、上記(a)成分と(b)成分との割合は、「(a):(b)」の金属原子(モル)比が、通常、1:1〜1:50、好ましくは1:2〜1:30の範囲である。このメタセ
シス触媒に上記(c)添加剤を添加する場合、(a)成分と(c)成分との割合は、「(c):(a)」のモル比が、通常0.005:1〜15:1、好ましくは0.05:1〜7:1の範囲である。
【0175】
また、その他の触媒として、
(II)周期表第4族〜第8族の遷移金属−カルベン錯体やメタラシクロブタン錯体等からなるメタセシス触媒を用いることができる。
【0176】
上記触媒(II)の具体例としては、例えば、W(=N−2,6−C63iPr2)(=CHtBu)(OtBu)2、Mo(=N−2,6−C63iPr2)(=CHtBu)(Ot
Bu)2、Ru(=CHCH=CPh2)(PPh32Cl2、Ru(=CHPh2)[P(C61132Cl2等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0177】
上記触媒(II)の使用量は、「触媒(II):全単量体」のモル比が、通常1:500〜1:50,000となる範囲、好ましくは1:100〜1:10,000となる範囲である。
【0178】
なお、上記触媒(I)と(II)とを組み合わせて用いても差し支えない。
・分子量調節剤
本発明に係る環状オレフィン系樹脂(A)の分子量の調節は、重合温度、触媒の種類、溶媒の種類等を調整することによっても行うことができるが、分子量調節剤を開環共重合の反応系に共存させることにより調節することが好ましい。分子量調節剤としては、例えば、エチレン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等のα−オレフィン類およびスチレンが好ましく、これらのうち、1−ブテンおよび1−ヘキセンが特に好ましい。これらの分子量調節剤は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。この分子量調節剤の使用量は、全単量体1モル当り、通常、0.005〜0.6モル、好ましくは0.02〜0.5モルである。
【0179】
・開環重合反応溶媒
開環重合反応において用いられる溶媒(即ち、単量体、開環重合触媒、分子量調節剤等を溶解する溶媒)としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等のアルカン類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素;クロロブタン、ブロムヘキサン、塩化メチレン、ジクロロエタン、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン、クロロホルム、テトラクロロエチレン等のハロゲン化アルカン、ハロゲン化アリール等の化合物;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、プロピオン酸メチル等の飽和カルボン酸エステル類;ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル類が挙げられ、これらの中では芳香族炭化水素が好ましい。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。この開環重合反応用溶媒の使用量は、「溶媒:全単量体」の重量比が、通常、1:1〜10:1となる量であり、好ましくは1:1〜5:1となる量であるのが望ましい。
【0180】
・開環重合反応の条件
開環重合反応を行う際の反応開始温度としては通常40〜160℃、好ましくは45〜150℃、特に好ましくは50〜140℃である。
【0181】
また、開環重合反応を行う際の反応時間としては通常0.1〜10時間、好ましくは0
.1〜8時間、特に好ましくは0.1〜6時間である。
・水素添加
本発明に係る環状オレフィン系樹脂(A)は、前記式(1)で表される構造単位を有し、この式(1)中のXは、−CH=CH−または−CH2CH2−を表し、複数存在するXは同一でも異なっていてもよい。すなわち本発明で使用する環状オレフィン系樹脂(A)は、これを形成し得る環状オレフィン系単量体を(共)重合した(共)重合体であってもよく、さらに水素添加したものであってもよい。環状オレフィン系単量体を(共)重合しただけの(共)重合体は、Xが−CH=CH−で表されるオレフィン性不飽和基の状態であるが、耐熱安定性の観点から、このような不飽和基が水素添加されて、前記Xが−CH2CH2−で表される基に転換された基であることが好ましく、構造単位(1)中のXの合計(2種以上の式(1)で表される構造単位を有する樹脂にあってはそれらが各々有する
Xの合計)を100mol%として、通常80mol%以上、好ましくは85mol%以上、より好ましくは90mol%以上、特に好ましくは95mol%以上が、−CH2
2−であることが望ましい。Xが−CH2CH2−である割合が高いほど、すなわち(共
)重合体の水素転化率が高いほど、安定な(共)重合体となり、熱による着色や劣化が抑制されるため好ましい。ただし、本発明でいう水素添加物とは、開環(共)重合により生じる前記オレフィン性不飽和基が水素添加されたものであって、単量体構造に由来するベンゼン環などの芳香環骨格中の環内共役二重結合は、実質的に水素添加されていないものであることが好ましい。
【0182】
水素添加反応は、上記芳香環骨格中の環内共役二重結合が実質的に水素添加されない条件で行われるのが望ましい。例えば、開環(共)重合体の溶液に水素添加反応触媒を添加し、これに、通常、常圧〜300気圧、好ましくは3〜200気圧の水素ガスを加えて、通常、0〜200℃、好ましくは50〜200℃で反応させることによって行うことができる。また、反応時間としては上記反応温度に達した後、0.1〜10時間、好ましくは0.1〜8時間、より好ましくは0.1〜6時間である。
【0183】
水素添加反応触媒としては、通常のオレフィン性化合物の水素添加反応に用いられるものを使用することができ、不均一系触媒および均一系触媒が公知である。不均一系触媒としては、例えば、パラジウム、白金、ニッケル、ロジウム、ルテニウム等の貴金属触媒物質を、カーボン、シリカ、アルミナ、チタニア等の担体に担持させた固体触媒が挙げられる。均一系触媒としては、例えば、ナフテン酸ニッケル/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリエチルアルミニウム、オクテン酸コバルト/n−ブチルリチウム、チタノセンジクロリド/ジエチルアルミニウムモノクロリド、酢酸ロジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム等が挙げられる。これら触媒の形態は粉末状でも粒状でもよい。また、この水素添加反応触は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0184】
これらの水素添加反応触媒は、上記芳香環骨格中の環内共役二重結合が実質的に水素添加されないようにするために、その添加量を調整する必要があり、「開環(共)重合体:水素添加反応触媒」の重量比が、通常、1:1×10-6〜1:2となる割合で使用される。
【0185】
イミド結合含有化合物(B)
本発明で用いられるイミド結合含有化合物(B)は、重合体(2−1)、化合物(2−2)および化合物(2−3)よりなる群から選ばれる一種以上を含有する。
【0186】
これらのうち、通常、重合体(2−1)はテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの縮
合反応、化合物(2−2)はテトラカルボン酸二無水物とモノアミンとの縮合反応、化合物(2−3)はジアミンと環状ジカルボン酸無水物との縮合反応によってそれぞれ合成することができる。
【0187】
・重合体(2−1)
重合体(2−1)は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させてポリアミック酸を合成し、該ポリアミック酸をイミド化処理することにより得られる。以下、このような構造を形成し得るテトラカルボン酸二無水物およびジアミンについて例示する。
【0188】
・テトラカルボン酸二無水物
テトラカルボン酸二無水物としては、たとえば、1,2,3,4−シクロブタンテトラカ
ルボン酸二無水物、1,2−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3
−ジクロロ−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二
無水物、3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−ト
リカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、2,3,5,6−ノルボルナンテトラカルボン酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,
5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−7−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−
3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2
]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、スピロ[2,5−ジ
オキソテトラヒドロフラン−3,6’−ビシクロ[2.3.1]ヘプタン−3−オキサ−2,4−ジオン]、ブタンテトラカルボン酸二無水物、
ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水
物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水
物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェ
ニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物
、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’
−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−イソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピ
リデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、
ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリ
フェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物、エチレングリコール−ビス
(アンヒドロトリメリテート)、プロピレングリコール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,4−ブタンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,6−ヘキサンジオール−ビス(アンヒドロトリメリテート)、1,8−オクタンジオール−ビス(アンヒ
ドロトリメリテート)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン−ビス(アン
ヒドロトリメリテート)などが挙げられる。
【0189】
好ましくは、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、
3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボ
キシシクロペンチル酢酸二無水物、2,3,5,6−ノルボルナンテトラカルボン酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、4−(2,5−ジ
オキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−7−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]−フラン−1,3−ジオン、5−(2,5−ジオキソテトラ
ヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビ
シクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ス
ピロ[2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3,6’−ビシクロ[2.3.1]ヘプタン−3−オキサ−2,4−ジオン]、ブタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−イソプロピリデンジフ
タル酸二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物
、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物である。
【0190】
テトラカルボン酸二無水物は、一種単独でまたは複数種を併用することができる。
・ジアミン
ジアミンとしては、たとえば、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキ
シ)ビフェニル、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミ
ノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、3,4’−ジアミノジフェニル
エーテル、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,
4’−ジアミノベンゾフェノン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル
]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプ
ロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]
スルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−10−ヒドロアントラセン、2,7−ジアミノフルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリ
ン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジク
ロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリ
ン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ジ
アミノ−2,2’−ジメチルビフェニル、4,4’−ビス[(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル、1,1−メタキシリレンジアミン
、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキ
サメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレン
ジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6.2.1.02,7]−ウン
デシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、2,3−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジア
ミノピリミジン、5,6−ジアミノ−2,3−ジシアノピラジン、5,6−ジアミノ−2,4−ジヒドロキシピリミジン、2,4−ジアミノ−6−ジメチルアミノ−1,3,5−トリア
ジン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、2,4−ジアミノ−6−イソプロポキシ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メトキシ−1,3,5−トリアジ
ン、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−メチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−1,3,5−トリアジン、4,6−ジアミノ−2−ビニル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−5−フェニルチアゾール、2,6−ジアミノプリン、5,6−ジアミノ−1,3−ジメチルウラシル、3,5−ジアミノ−1,2,4−
トリアゾール、6,9−ジアミノ−2−エトキシアクリジンラクテート、3,8−ジアミノ−6−フェニルフェナントリジン、1,4−ジアミノピペラジン、3,6−ジアミノアクリジン、ビス(4−アミノフェニル)フェニルアミン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビシクロヘキシル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビシクロヘキシル、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビシクロヘキシル、3,3’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビシクロヘキシルおよび下記一般式(i)もしくは(ii)で表される化合物、
【0191】
【化72】

【0192】
(式(i)中、R15は、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、ピペリジンおよびピペラジンから選ばれる窒素原子を含む環構造を有する1価の有機基を示し、Zは2価の有機基を示す。)
【0193】
【化73】

【0194】
(式(ii)中、R16は、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、ピペリジンおよびピペラジンから選ばれる窒素原子を含む環構造を有する2価の有機基を示し、Zは2価の有機基を示し、複数存在するXは、同一でも異なっていてもよい。)
下記式(iii)で表されるモノ置換フェニレンジアミン類、
【0195】
【化74】

【0196】
(式(iii)中、R17は、−O−、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH
−および−CO−から選ばれる2価の有機基を示し、R18は、ステロイド骨格を有する1価の有機基、トリフルオロメチル基もしくはフルオロ基を有する1価の有機基、または炭素数6〜30のアルキル基を示す。)
下記式(iv)で表されるジアミノオルガノシロキサン、
【0197】
【化75】

【0198】
(式(iv)中、R19は、それぞれ独立に炭素数1〜12の炭化水素基を示し、qは1〜20の整数であり、rは1〜3の整数である。)
下記式(v)〜(ix)で表される化合物などを挙げることができる。
【0199】
【化76】

【0200】
【化77】

【0201】
【化78】

【0202】
【化79】

【0203】
(上記式(viii)中、tは2〜12の整数である。)
【0204】
【化80】

【0205】
(上記式(ix)中、uは1〜5の整数である。)
上記ジアミン化合物は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。これらのうち、ビフェニル骨格を有するジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジア
ミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−
ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフ
ェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフ
ルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン
)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジメチルビフェニル、1,4−シクロヘキサンジアミン、4,4’−メチレンビ
ス(シクロヘキシルアミン)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4
’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビシクロヘキシル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビシクロヘキシル、2,2’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビシクロヘキシル、3,3’−ジトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビシクロヘキシル、上記式(v)〜(ix)で表される(B)成分,6
−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−
ジアミノアクリジン、上記式(i)で表される化合物のうち下記式(i−1)で表される
化合物、上記式(ii)で表される化合物のうち下記式(ii−1)で表される化合物および上記式(iii)で表される化合物のうち下記式(iii−1)〜(iii−6)で表される
化合物が好ましい。
【0206】
【化81】

【0207】
【化82】

【0208】
【化83】

【0209】
【化84】

【0210】
【化85】

【0211】
【化86】

【0212】
【化87】

【0213】
・テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応
テトラカルボン酸無水物とジアミンとの反応は、テトラカルボン酸無水物とジアミンとを、ジアミンに含まれるアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸無水物に含まれる酸無水物基が0.2〜2当量となる割合で用いて、有機溶媒中において、通常0〜150℃、好ましくは0〜100℃の温度条件下で行われる。
【0214】
上記有機溶媒としては、反応原料である酸無水物およびジアミン、さらに生成する重合体であるポリアミック酸を溶解し得るものであれば特に制限はない。具体的には、γ−ブチロラクトン,N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−
ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホトリアミドなどの非プロトン系極性溶媒;m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノールなどのフェノール系溶媒、酢酸等のカルボン酸系溶媒などを用いることができる。
【0215】
上記有機溶媒の使用量は、反応原料である酸無水物とジアミンとの総量が、反応溶液の全量に対して0.1〜30重量%になるような割合であることが好ましい。また、上記有機溶媒には、生成するポリアミック酸に対して貧溶媒であるアルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、炭化水素類などを、生成するポリアミック酸が析出しない範囲で併用してもよい。
【0216】
上記のようにして得られたポリアミック酸を、加熱によるイミド化処理、または、脱水剤およびイミド化触媒の存在下でイミド化処理して脱水閉環させることにより、上記ポリイミドが得られる。加熱によるイミド化処理における温度は、通常、60〜250℃、好ましくは100〜170℃である。
【0217】
上記脱水剤としては、たとえば、酢酸、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などを用いることができる。この脱水剤の使用量は、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して1.6〜20モルとするのが好ましい。
【0218】
上記イミド化触媒としては、たとえば、ピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの3級アミンを用いることができるが、これらに限定されるものではない。このイミド化触媒の使用割合は、使用する脱水剤1モルに対し、0.5〜10モルとするのが好ましい。なお、このイミド化処理に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。そして、このイミド化処理における温度は、通常0〜180℃、好ましくは60〜150℃である。
【0219】
また、本発明で用いるポリイミドは、ポリアミック酸が100%イミド化されていない、部分イミド化重合体であってもよいが、イミド化率は好ましくは50%以上、更に好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上である。イミド化率を上記範囲とすることで、本発明の環状オレフィン系樹脂組成物フィルムの位相差のコントロール性が良好となり好ましい。
【0220】
・化合物(2−2)
化合物(2−2)は、テトラカルボン酸二無水物とモノアミンとを反応させてアミック酸化合物を合成し、該アミック酸をイミド化処理することにより得られる。このような構造を形成し得るテトラカルボン酸二無水物としては、重合体(2−1)を形成し得るテトラカルボン酸二無水物として例示したものと同じものを挙げることができる。また、モノアミンとしては重合体(2−1)を形成し得るジアミンとして例示したものと同様の骨格でアミノ基が1つであるものを挙げることができる。
【0221】
化合物(2−2)を製造する条件としては、重合体(2−1)の製造条件として例示した溶媒、温度、脱水剤、触媒等を使用することができるが、テトラカルボン酸無水物に含まれる酸無水物基1当量に対して、モノアミンに含まれるアミノ基が0.5〜1.5当量となる割合で用いることが好ましい。
【0222】
・化合物(2−3)
化合物(2−3)は、ジアミンと環状ジカルボン酸無水物とを反応させてアミック酸化合物を合成し、該アミック酸化合物をイミド化処理することにより得られる。このような構造を形成し得るジアミンとしては重合体(2−1)を形成し得るジアミンとして例示し
たものと同じものを挙げることができる。また、環状ジカルボン酸無水物としては重合体(2−1)を形成し得るテトラカルボン酸二無水物として例示したものと同様の骨格でカルボン酸無水物基が1つであるものを挙げることができる。このような化合物(2−3)を製造する条件としては重合体(2−1)の製造条件として例示した溶媒、温度、脱水剤、触媒等を使用することができるが、ジアミンに含まれるアミノ基1当量に対して、ジカルボン酸無水物に含まれる酸無水物基が0.5〜1.5当量となる割合で用いることが好ましい。
【0223】
本発明で用いるイミド結合含有化合物(B)の、ウッベローデ型粘度計を用いて、N−
メチルピロリドン中、試料濃度0.5g/dL、温度30℃で測定した対数粘度は、通常
0.01〜1.00、好ましくは0.01〜0.90、より好ましくは0.01〜0.80である。溶液粘度が上述の範囲内であることにより、位相差値やその波長分散のコントロール性を保持し、尚且つ環状オレフィン系樹脂(A)との高い相溶性を確保することができる。
【0224】
樹脂組成物
本発明に係る樹脂組成物は、上述した環状オレフィン系樹脂(A)と、イミド結合含有化合物(B)とを含有する。
【0225】
樹脂組成物における、環状オレフィン系樹脂(A)と、イミド結合含有化合物(B)との割合(混合比)は、重量比((A)/(B))で、好ましくは99/1〜50/50、より好ましくは99/1〜70/30の範囲にあることが望ましい。組成比がこのような範囲内であると、本発明の樹脂組成物から得られる成型物の透明性、強度、および位相差やその波長分散のコントロール性が高いものとなる。樹脂組成物の調製は、公知の方法により行うことができる。
【0226】
<成形>
本発明の樹脂組成物は、押出し成形および射出成型などの溶融成形、溶液流延法(キャスト法)による成形のいずれによっても好適に所望の形状に成形することができる。
【0227】
本発明の樹脂組成物の物理的物性値は、樹脂組成物を構成する環状オレフィン系樹脂(A)およびイミド結合含有化合物(B)の、各成分の共重合組成比や分子量調節剤の使用量、各成分の使用割合等によりコントロールすることができるが、本発明の樹脂組成物の特性を失わない範囲で各種添加剤を添加して調整してもよい。また、本発明の環状オレフィン系開環重合体には、これ以外の目的でも、公知の各種添加剤を添加することができる。
【0228】
添加剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’
−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、ペンタエリスリトール・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−
ヒドキシフェニル)プロピオネート]、4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−3−メ
チルフェノール)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、オクタデシル・3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−t−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール等のフェノール系、ヒドロキノン系酸化防止剤;トリス(4−メトキシ−3,5−ジフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系
酸化防止剤が挙げられる。これらの酸化防止剤の1種または2種以上を添加することにより、開環共重合体の耐酸化劣化性を向上することができる。また、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−メ
チレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−[(2H−ベンゾトリ
アゾール−2−イル)フェノール]]等の紫外線吸収剤を添加することによって耐光性を
向上することもできる。更に、加工性を向上させる目的で滑剤等の添加剤を添加することもできる。これらの添加剤は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0229】
また、本発明の樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、樹脂成分として、成分(A)以外の環状オレフィン系樹脂など、成分(A)、(B)以外の公知の樹脂を含むこともできる。
【0230】
本発明の樹脂組成物は、所望の形状に成形することができるが、光学特性に優れるため、各種光学材料の用途に有用である。なかでも、フィルムまたはシート(本発明ではこれらを総称してフィルムという)への成形が好ましく、光学フィルムおよびその用途に好適に使用することができる。また、本発明の樹脂組成物は、射出成形により、各種レンズなどの光学材料を製造する用途にも好適である。
【0231】
・光学フィルム
本発明の樹脂組成物は、環状オレフィン系樹脂(A)の上述した式(1)における置換基R1〜R10の構造・種類、イミド結合含有化合物(B)の骨格および置換基の構造・種
類、共重合組成比、ならびに成分(A)、(B)の混合比などを設定することにより、得られるフィルムなどの成形品の複屈折の絶対値や位相差の波長依存性を調製することができる。また、本発明の樹脂組成物が、樹脂成分として、成分(A)、(B)以外の公知の環状オレフィン系樹脂等を含むことによっても、得られる樹脂組成物から成形された重合体フィルム等の複屈折の値の正負、複屈折の絶対値や位相差の波長依存性を調整することができる。
【0232】
本発明の樹脂組成物を選択して用いると、複屈折の値の正負、その絶対値の大小、位相差の波長依存性の大小等を容易にコントロールできるため、本発明の樹脂組成物から得られたフィルムは光学補償フィルムとして好適に利用できる。このため、本発明の樹脂組成物またはそれを含む組成物を、キャスト法または押し出し法により製膜して、光学フィルムとすることが好ましい。さらに、上記光学フィルムは延伸加工によりその性能を十分に発現することから、自由幅一軸延伸、幅拘束一軸延伸、逐次二軸延伸、同時二軸延伸、または収縮フィルムを延伸時または延伸後に貼付してフィルム厚み方向の屈折率を調整するいわゆるZ軸配向(Z軸延伸)させて延伸フィルムとすることが好ましい。フィルムの延伸は、加熱延伸により好適に行うことができる。
【0233】
本発明の光学フィルムは、押出し成形またはキャスト成形により製膜したフィルムでは優れた透明性を示すため、各種保護フィルムなどとして好適に用いることができる。また、製膜して得たフィルムをさらに延伸した延伸フィルムでは、独自の波長依存性を示すため、位相差板や液晶表示装置を構成するフィルムとして好適に用いることができる。
【0234】
本発明の樹脂組成物から製膜して得られた光学フィルムを、延伸して得られたフィルムは、樹脂組成物を構成する(A)成分および(B)成分の種類および組成比を選択することによって、可視光領域において、透過する波長が小さくなるほど位相差Reが大きくなる、正波長分散性を有するフィルムとすることができ、その分散性は従来公知の環状オレフィン開環(共)重合体から成るフィルムよりも大きなものとなる。このようなフィルムは位相差フィルムとして好適に用いることができる。このようなフィルムは、偏光板や液晶表示装置を構成するフィルムとして好適である。
【0235】
実施例
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、「部」及び「%」は、特に断りのない限り「重量部」および「重量%」を意味する。また、室温とは25℃である。
【0236】
本発明における各種物性値の測定方法を以下に示す。
・ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ社製、商品名:DSC6200)を用いて、日本工業規格K7121に従って補外ガラス転移開始温度を求めた。以下、単にガラス転移温度(Tg)という。
【0237】
・重量平均分子量および分子量分布
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー(株)製HLC-8220GPC、カラム;東
ソー(株)製ガードカラムHXL-H、TSK gel G7000HXL、TSK gel GMHXL2本、TSK gel G2000HXLを順次連結、溶媒;テトラヒドロフラン、流速;1mL/min、サンプル濃度0.7〜0.8wt%、注入量;70μL、測定温度;40℃、検出器;RI(40℃)、標準物質;東ソー(株)製TSKスタンダードポリスチレン)を用い、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)を測定した。なお、前記Mnは数平均分子量である。
【0238】
・位相差、複屈折評価
開環重合体のトルエン乃至塩化メチレン溶液(濃度:25%)を平滑なガラス板上にキャストし、乾燥後、厚さ100μm、残留溶媒0.5〜0.8%の無色透明なフィルムを得た。このフィルムのガラス転移温度(Tg)よりも5〜10℃高い温度で、1.2〜2.0倍に一軸延伸した。この延伸フィルムの位相差および複屈折の値を、レターデーション測定器(王子計測機器製、商品名:KOBRA21DH)を用いて測定した。
【0239】
・対数粘度
ウッベローデ型粘度計を用いて、クロロホルム中、試料濃度0.5g/dL、温度30
℃で測定した。
合成例1(環状オレフィン系樹脂(A)の合成例)
単量体として下記式(1a)に示す8−メトキシカルボニル−8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン 50g、分子量調節剤として1−へキ
セン 3.6g、およびトルエン 100gを窒素置換した反応容器に仕込み、80℃に加熱した。これにトリエチルアルミニウム(0.6mol/L)のトルエン溶液 0.09mL、およびメタノール変性WCl6トルエン溶液(0.025モル/L) 0.29mlを加え、80℃で3時間反応させることにより開環重合体を得た。次いで、水素添加反
応触媒であるRuHCl(CO)[P(C6533を0.02g添加し、水素ガス圧を9〜10MPaとし、160〜165℃の温度で、3時間反応させた。反応終了後、得られた生成物を多量のメタノール中で沈殿させることにより水素添加物を得た[ガラス転移温度(Tg)=167℃、重量平均分子量(Mw)=5.6x104、分子量分布(Mw
/Mn)=3.2、収量45g(収率90%)]。NMR測定により求めたこの水素添加物の水素添加率は99.0%以上であった。以後、得られた開環重合体水素添加物を重合体1bとする。
【0240】
【化88】

【0241】
合成例2(イミド結合含有化合物(B)の合成例)
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物5gとp-フェノキシアニリン 6.3gとを酢酸100mLに溶解し、135℃にて8時間反応させた後、多量のメタノールで洗浄精製し、真空乾燥機で乾燥することにより下記式(2a)で表される白色固体のイミド結合含有化合物2aを得た。重量平均分子量(Mw)=410であった。
【0242】
【化89】

【0243】
[実施例1]
合成例1で得た環状オレフィン系開環重合体1b 3gと、合成例2で得たイミド化合
物2a 0.075gとを、塩化メチレン50gに溶解し、平滑な硝子製浴槽にキャスト
した。このフィルムを浴槽から剥離後、100℃の真空乾燥機で12時間乾燥して厚さ140μmのフィルムを得た。
【0244】
次いで、このフィルムを幅10×長さ70mmに切り出し、恒温槽を備えた引っ張り試験機で加熱延伸して延伸フィルムを作成した。180℃において220%/分の速度で2倍に延伸したところ、膜厚が93μmの延伸フィルムが得られ、この位相差を測定したところR480=407、R550=401、R750=393nmであった。ここでR480、R550、およびR750はそれ
ぞれ波長480、550、および750nmにおける位相差を表す。
【0245】
[実施例2]
合成例1で得た環状オレフィン系開環重合体1b 3gと、合成例2で得たイミド化合
物2a 0.15gとを、塩化メチレン50gに溶解し、平滑な硝子製浴槽にキャストし
た。このフィルムを浴槽から剥離後、100℃の真空乾燥機で12時間乾燥して厚さ140μmのフィルムを得た。
【0246】
次いで、このフィルムを幅10×長さ70mmに切り出し、恒温槽を備えた引っ張り試験機で加熱延伸して延伸フィルムを作成した。180℃において220%/分の速度で2倍に延伸したところ、膜厚が93μmの延伸フィルムが得られ、この位相差を測定したところR480=391、R550=381、R750=374nmであった。
【0247】
[比較例1]
合成例1で得た環状オレフィン系開環重合体1b 3gを、塩化メチレン50gに溶解
し、平滑な硝子製浴槽にキャストした。このフィルムを浴槽から剥離後、100℃の真空乾燥機で12時間乾燥して厚さ135μmのフィルムを得た。
【0248】
次いで、このフィルムを幅10×長さ70mmに切り出し、恒温槽を備えた引っ張り試験機で加熱延伸して延伸フィルムを作成した。180℃において220%/分の速度で2倍に延伸したところ、膜厚が90μmの延伸フィルムが得られ、この位相差を測定したところR480=370、R550=368、R750=365nmであった。
【0249】
これらの実施例および比較例の結果を表1に、各実施例および比較例で得た延伸フィルムの波長分散性の相違を図1に示す。
【0250】
【表1】

【0251】
これらの結果から、比較例に対して実施例では顕著に波長分散性が増大することが明らかとなった。また、その変化する割合は本発明の樹脂組成物の組成比を目的に応じて変更することにより可能であることが判明した。即ち本発明では、環状オレフィン開環(共)重合体の特徴の1つである高耐熱性を保持したまま、波長分散性を制御することが容易にできる樹脂組成物が得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0252】
本発明の樹脂組成物は、各種光学フィルムおよび光学材料の原料として好適に用いられる。本発明に係るフィルムは、未延伸のフィルムでは各種保護フィルムなどの光学用途に特に好適であり、また、延伸フィルムは所望の逆波長分散性を示す位相差フィルムとし得るため、偏光板の製造に好適に用いられ、携帯電話、ディジタル情報端末機、ポケットベル、ナビゲーション、車載用液晶ディスプレイ、液晶モニター、調光パネル、OA機器用ディスプレイ、AV機器用ディスプレイなどの各種液晶表示素子や、エレクトロルミネッセンス表示素子あるいはタッチパネルなどに用いることができる。また、本発明に係る光学部品は、各種光学レンズ、光ディスクなど、射出成形により得られる各種光学部材として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0253】
【図1】図1は、実施例1,2および比較例1で得た延伸フィルムの波長分散性を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)で表される構造単位を有する環状オレフィン系樹脂と、
(B)下記式(2−1)で表される構造単位を有する重合体、および、下記式(2−2)または下記式(2−3)で表される化合物よりなる群から選ばれる一種以上のイミド結合含有化合物と
を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【化1】

(式(1)中、aおよびbは独立に0または1であり、cおよびdは独立に0〜2の整数である。Xは式:−CH=CH−で表される基または式:−CH2CH2−で表される基で
ある。R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、およびR10は、それぞれ独立に
水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、硫黄原子、窒素原子、またはケイ素原子を含む連結基を有しても良い置換または非置換の炭素数1〜30の炭化水素基;または極性基を表す。R7とR8、またはR9とR10とは一体化して2価の炭化水素基を形成しても良く、R7またはR8とR9またはR10とは相互に結合して、それぞれが結合している炭素原子と共に炭素環または複素環(これらの炭素環または複素環は単環構造でも良いし、他の環が縮合して多環構造を形成しても良い。)を形成しても良い。)
【化2】

【化3】

(式(2−1)、式(2−2)および式(2−3)中、Aは4価の有機基を表し、B、R13、およびR14はそれぞれ独立に2価の有機基を表し、R11およびR12はそれぞれ独立に1価の有機基を表す。)
【請求項2】
環状オレフィン系樹脂(A)が、前記式(1)で表される構造単位のうち、式(1)中のXが−CH2CH2−で表される基である構造単位を90モル%以上含むことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
環状オレフィン系樹脂(A)とイミド結合含有化合物(B)との割合((A)/(B))が、重量比で、99/1〜50/50の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物をキャスト法または押出し法により製膜して得られることを特徴とするフィルム。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物をキャスト法または押出し法により製膜し、加熱延伸して得られることを特徴とする延伸フィルム。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物からなる延伸フィルムを含むことを特徴とする偏光板。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物からなる延伸フィルムを含むことを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2008−111024(P2008−111024A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−294260(P2006−294260)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】