説明

樹脂組成物及びハードコート剤並びにインサート成型用ハードコートフィルム

【課題】 表面硬度(鉛筆硬度、耐擦傷性)と、柔軟性(曲げ性)を兼ね揃えたインサート成型用フィルムを得る。
【解決手段】 アミノトリアジン化合物、パラホルムアルデヒド、および水酸基含有(メタ)アクリレートから1工程で合成されたトリアジン環含有(メタ)アクリレートプレポリマーに対して、平均一次粒子径が80〜500nmである有機微粒子を1〜50重量部配合する。前記ハードコート剤を透明プラスチックフィルム上に塗布し、乾燥、硬化させてなるハードコートフィルムであって、全光線透過率が90%以上であり、該ハードコート層の鉛筆硬度が1H以上、耐擦傷性が良好でかつ、2R以下の曲げ性を持つインサート成型用ハードコートフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂組成物及びハードコート剤並びにインサート成型用ハードコートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ハードコート樹脂を塗工したPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの裏面に印刷を施したインサートフィルムは、金型に貼り付け、成型と同時にフィルムごと絵付けされる。
【特許文献1】特開平7−173222
【特許文献2】特開2000−344910
【特許文献3】特開平9−95098
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来は樹脂として柔軟性に優れた高分子量のウレタン変性アクリレートなどが主に利用されていたが、表面物性が満足するものではなかった。一方、表面硬度を満足させるためにハードコート樹脂などを用いた開発が行われてきたが、硬すぎるために成型時に曲面部でクラックが発生する問題が生じていた。そのため、インサートフィルムでは表面硬度(鉛筆硬度、耐擦傷性)と、柔軟性(曲げ性)を兼ね揃えたフィルムが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明はかかる状況に鑑み検討されたもので、アミノトリアジン化合物、パラホルムアルデヒド、および水酸基含有(メタ)アクリレートから1工程で合成され、平均分子量200〜20000のトリアジン環含有(メタ)アクリレートプレポリマーに対して、平均一次粒子径が80〜500nmである有機微粒子が1〜50重量部配合されることにより、表面硬度及び柔軟性を兼ね揃えたインサート用ハードコートフィルムを作製でき、前記の課題を解決することができる。
【発明の効果】
【0005】
アミノトリアジン化合物、パラホルムアルデヒド、および水酸基含有(メタ)アクリレートから1工程で合成され、平均分子量200〜20000のトリアジン環含有(メタ)アクリレートプレポリマーに対して、平均一次粒子径が80〜500nmである有機微粒子を1〜50重量部配合することで、ドライ膜厚1〜10μmで十分な柔軟性及び表面物性が両立可能になる。以下、本発明について詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
(1)請求項1の発明は、
アミノトリアジン化合物、パラホルムアルデヒド、および水酸基含有(メタ)アクリレートから1工程で合成され、平均分子量200〜20000のトリアジン環含有(メタ)アクリレートプレポリマーに対して、平均一次粒子径が80〜500nmである有機微粒子が1〜50重量部配合されてなることを特徴とする樹脂組成物である。トリアジン環含有(メタ)アクリレートプレポリマーの平均分子量は200〜20000が好ましく、平均分子量が下限未満の場合は、ハードコート用として十分な性能は得られず、20000を超えると粘度が高くなりすぎて塗工が難しくなる。
【0007】
アミノトリアジン化合物は、Cからなるトリアジン環の3つの炭素原子にそれぞれアミノ基が結合した構造の化合物であり、アミノトリアジン化合物とは、アミノトリアジン自身あるいはアミノトリアジン誘導体を示す。
【0008】
アミノトリアジン自身としては、メラミンが挙げられ、アミノトリアジン誘導体としては、ベンゾグアナミン,アセトグアナミン,シクロヘキサンカルボグアナミン,シクロヘキセンカルボグアナミン,ノルボルナンカルボグアナミン,ノボルネンカルボグアナミン等が挙げられる。
【0009】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタアクリレートのほか、必要により、少なくとも1個のヒドロキシシル基を有するエチレン性不飽和結合を持つ化合物、例えば2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチールプロパンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アリルアルコール、エチレングリコールアリルエーテル、グリセリン(モノ、ジ)アリルエーテル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等あるいはこれらの混合物が添加可能である。単独及び混合して使用しても良く、このうちコストや扱い易さの点から、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0010】
プレポリマーの合成は以下の方法により行われる。合成反応はアミノトリアジン化合物へのホルムアルデヒドの付加反応によるメチロール基の生成及びメチロール基とヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートのヒドロキシル基との縮合反応、あるいはアミノトリアジン化合物とヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート、ホルムアルデヒドヘミアセタールとの反応により縮合反応して進行するものと解される。
縮合反応の進行程度はこれら縮合反応により離脱する水分量により判断できる。
この水分量を経時的に把握し、所定の段階において水分留出を止めれば縮合反応をコントロールできる。
有機微粒子としては、乳化重合法により合成されたスチレン系樹脂、スチレン−アクリル系共重合樹脂、アクリル系樹脂などの有機微粒子が挙げられる。乳化重合法以外の方法では一次粒子径のバラツキが多く、面内で屈曲性のバランスが悪い。また、単分散微粒子を合成し易い分散重合法では、架橋剤の添加量を増やすことができないために樹脂に溶解してしまう問題がある。そこで、平均一次粒子径の制御が容易で、かつ架橋剤を添加することができる乳化重合法が好ましい。
【0011】
有機微粒子の平均一次粒子径は80〜500nmのものが好適である。乳化重合法では平均一次粒子径が80nm未満および500nmを越えると有機微粒子を合成することは難しい。また、80nm未満では表面に凹凸を形成するのに必要な添加量が多くなるためにハードコート性能が得られないのに対し、500nmを越えるとヘイズが上昇し、視認性が低下する問題が発生する。有機微粒子の形状は、球状、数珠状が好ましく用いられるが、特にこれらに限定されない。尚、平均一次粒子径とは凝集を起こしていない単一の粒子の径であり、球状のものについてはその直径を、球状以外のものについては長軸径、短軸径の算術平均値を示し、電子顕微鏡により測定される値である。
【0012】
有機微粒子の添加量は、樹脂固形分100重量部に対し、1〜50重量部が好適であり、1重量部未満では屈曲性を満足することができず、また50重量部を越えると十分なハードコート性能を発揮することができない。好ましくは10〜30重量部である。
(2)請求項2の発明は、
アミノトリアジン化合物、パラホルムアルデヒド、および水酸基含有(メタ)アクリレートから1工程で合成されたトリアジン環含有(メタ)アクリレートプレポリマーに残存する未反応の水酸基をイソシアネート化合物と反応してなるウレタン化トリアジン環含有(メタ)アクリレートプレポリマーに対して、平均一次粒子径が80〜500nmである有機微粒子が1〜50重量部配合されてなることを特徴とする樹脂組成物である。ウレタン化することで更に屈曲性が良好になる。
イソシアネ−ト化合物としては、脂肪族、脂環式、芳香族、芳香脂肪族イソシアネートおよびこれらの変性物が挙げられる。
【0013】
脂肪族イソシアネートとしてはヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、リジンジイソシアネート(LDI)などが挙げられ、脂環式イソシアネートとしてはジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1、4−シクロヘキサンジイソシアネート(CHDI)、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)、水添トリレンジイソシアネート(HTDI)などが挙げられる。また、芳香族イソシアネートとしてはトリレンジイソシアネート(TDI)、4、4′(または2、4′)−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、p−フェニレンジイソシアネート(PPDI)などが挙げられ、芳香脂肪族ポリイソシアネートとしてはα、α、α´、α´−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などが挙げられる。
【0014】
芳香脂肪族、脂肪族、脂環式もしくは芳香族イソシアネート化合物の変性物としては、上述の例示した化合物のイソシアネート基の一部または全部がカーボジイミド基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、ビューレット基、イソシアヌレート基などに変性された化合物が挙げられ、イソシアネ−ト化合物は二種以上併用してもよい。
【0015】
イソシアネート成分のイソシアネート基との反応を促進するために、有機錫系ウレタン化触媒が使用されるが、有機錫系ウレタン化触媒としては、ウレタン化反応に一般に使用されるものであればよく、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアルキルマレート、ステアリン酸錫、オクチル酸錫等が挙げられる。
【0016】
これら有機錫系ウレタン化触媒の使用量は特に制限されるものではないが、0.005〜3重量%の範囲内で用いるのが適当である。下限に満たないとウレタン反応が十分に進行せず、上限を超えるとウレタン反応時の発熱により反応制御が困難となる。
【0017】
(3)請求項3の発明は、
有機微粒子が添加された(ウレタン化)トリアジン環含有(メタ)アクリレートプレポリマー単独もしくは反応性化合物と混合・重合して得られる硬化性樹脂組成物である。反応性化合物として、多官能重合性モノマーが用いられ、混合もしくは、または重合して得られる。該多官能重合性モノマーは、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基を分子中に少なくとも2個以上有するものである。中でも(メタ)アクリロイル基を有するものはラジカル反応性が非常に高く、速硬性と高硬度の点から優位性がある。具体的には、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは、単独、または混合して使用しても良い。
【0018】
(4)請求項4の発明は、
ハードコート剤を透明プラスチックフィルム上に塗布し、乾燥、硬化させてなるハードコートフィルムであって、全光線透過率が90%以上であり、該ハードコート層の鉛筆硬度が1H以上、耐擦傷性が良好でかつ、3R以下の曲げ性を持つことを特徴とするハードコートフィルムである。全光線透過率が90%以下では視認性が低下し、鉛筆硬度が1H未満及び耐擦傷性が悪い場合は表面硬度が不足し、2R未満の曲げ性では絞りの深い成型加工に追従できず、ひび割れなどの問題が発生する。
【0019】
(5)請求項5の発明は、
ハードコート層の硬化膜厚が1〜10μmであるハードコートフィルムである。ハードコート剤は、グラビアコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法など、公知の方法により硬化後の塗膜の厚みが1〜10μmとなるようにプラスチックフィルムに塗布される。1μm未満では耐擦傷性や鉛筆硬度が劣り、10μm超では屈曲性が劣る。
【0020】
プラスチックフィルムとしては、塩化ビニルフィルム、アクリルフィルム、ポリカーボネートフィルムのほか、ポリプロピレンフィルム、低延伸性ポリエステルフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリスチレンフィルム、アクリロニトリルブタジエンスチレンフィルム、ナイロンフィルムなどを用いることができる。
【0021】
プラスチックフィルムに塗布されたハードコート剤は、紫外線、電子線などの活性エネルギー線の照射により硬化させる。紫外線により硬化する場合には、組成物中に光重合開始剤、場合により光重合増感剤、光重合促進剤を含有する必要がある。
【0022】
ラジカル重合用光重合開始剤としては、特に限定はなく既知の種類のものが使用可能であるが、例えばベンゾインモノメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられ、光増感剤としては、2ークロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
【0023】
また、光促進剤としては、例えばp−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、p−ジメチルアミノ安息香酸2−n−プトキシエチル、安息香酸2−ジメチルアミノエチル等が挙げられる。
【0024】
更に、光カチオン重合用開始剤としては、ジアリルヨードニウム塩及びトリアリールスルホニウム塩等が挙げられる。
その他、粘度調整剤として有機溶剤、また性能付与のために各種添加剤を添加することができる。例えば、帯電防止剤、屈折率調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、光増感剤、レベリング剤、消泡剤、無機充填剤、カップリング剤、防腐剤、可塑剤、流動調整剤、増粘剤、pH調整剤等などを配合材料としてもよい。
【0025】
紫外線照射装置としては、高圧水銀灯やメタルハライドランプ等既知の装置を使用でき、照射エネルギーは100〜2000mJ/cm2、さらに300〜700mJ/cm2がより好ましい。尚、照射する際、窒素ガス雰囲気下でおこなうと耐擦傷性がより向上することから好ましい。
【0026】
また、電子線により硬化する場合には、従来既知の硬化装置を使用することができ、照射線量は10kGy〜200kGyが好ましく、さらに30kGy〜100kGyがより好ましい。10kGy未満だと完全硬化ができず、200kGyを越えると電子線照射管の寿命は著しく短くなり、経済的に好ましくない。
また、加速電圧は基材上に設ける塗膜厚みおよび密度により設定されるが、50kvから300kv、さらに、150kv〜250kvがより好ましい。
【0027】
以下、本発明について実施例、比較例を挙げてより詳細に説明するが、具体例を示すものであって特にこれらに限定するものではない。
(A)樹脂の合成
(1)トリアジン環含有(メタ)アクリレートプレポリマー
攪拌装置、温度計、気体導入管、還流冷却管を備えた2リットルのセパラブルフラスコに、2−ヒドロキシエチルアクリレート、696g(6モル)、メラミン126g(1モル)、95重量%パラホルムアルデヒド189g(ホルムアルデヒドとして6モル)、パラトルエンスルホン酸3.0g、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.2gを加え、空気を吹き込みながら昇温した。80〜100℃において、メラミンおよびパラホルムアルデヒドが2−ヒドロキシエチルアクリレートに溶解した後、内温を105〜115℃に保ちながら、水分の留出量が108g(6モル)になるまで反応した。得られたトリアジン環含有アクリレートプレポリマー(以下AMとする)は、20℃での粘度が2Pa・s、臭素価92.1(gBr/100g)、分子量3200であった。
(2)ウレタン化トリアジン環含有(メタ)アクリレートプレポリマー
上記AM100重量部に、イソホロンジイソシアネート(IPDI)28.7重量部、触媒としてジラウリン酸ジーn−ブチル錫(DBTDL)を0.1重量部加え24時間室温で攪拌後、イソプロパノールを加えた。IRにてイソシアネート基の反応の確認を行い、エバポレーターで未反応のイソプロパノールを除去してウレタン化メラミンアクリレートプレポリマー(以下U−AMとする)を得た。
(B)有機微粒子の合成
(1)有機微粒子スラリーA
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入口を備えた重合容器に、脱イオン水120重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.3重量部およびpH緩衝剤として重炭酸ナトリウム0.1重量部を仕込み攪拌しながら60℃に加熱した後、窒素置換した。この中にメチルメタクリレート2重量部を添加し、10分後に0.98重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1部を添加し種重合を行った。発熱開始から60分後、4.9部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し、さらに10分後、メチルメタクリレート43.7重量部、スチレン29.1重量部、エチレングリコールジメタクリレート24.2重量部、脱イオン水60重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.8重量部、重炭酸ナトリウム0.3部重量からなる乳化モノマー液を攪拌下、温度を80℃に保ちながら3時間かけて滴下し、滴下終了後2時間85℃を維持し重合を終了させ水系ラテックス(A−1)を得た。生成物(A−1)は固形分33.9%、平均粒子径489nmであった。
【0028】
上記で合成された水系ラテックス(A−1)に、有機溶剤への転相の妨げとなるイオン性不純物の除去を目的に、イオン交換樹脂15重量部を添加し攪拌した。24時間攪拌した後、濾過によりイオン交換樹脂を除去し、イオン性不純物の限りなく少ない水系ラテックス(A−2)を得た。
【0029】
この精製された水系ラテックス(A−2)に、酢酸エチル570重量部を加え攪拌、水系ラテックス中に存在する有機微粒子の有機層への転相を行った。その後静置し、透明な水相と白濁した有機相とを分離し、非水系微粒子分散体(A−3)を得た。有機微粒子スラリーA(A−3)は固形分15.0%であった。
(2)有機微粒子スラリーB
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入口を備えた重合容器に、脱イオン水120重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム0.8重量部およびpH緩衝剤として重炭酸ナトリウム0.4重量部を仕込み攪拌しながら60℃に加熱した後、窒素置換した。この中にメチルメタクリレート2重量部を添加し、10分後に0.98重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し種重合を行った。発熱開始から60分後、4.9重量部の脱イオン水に溶解した過硫酸ナトリウム0.1重量部を添加し、さらに10分後、メチルメタクリレート43.7重量部、スチレン29.1重量部、エチレングリコールジメタクリレート24.2重量部、脱イオン水60重量部、ジアルキルスルホコハク酸エステルナトリウム1.2重量部、重炭酸ナトリウム0.5重量部からなる乳化モノマー液を攪拌下、温度を80℃に保ちながら3時間かけて滴下し、滴下終了後2時間85℃を維持し重合を終了させ水系ラテックス(B−1)を得た。生成物(B−1)は固形分34.1%、平均一次粒子径109nmであった。
【0030】
上記で合成された水系ラテックス(B−1)に、有機溶剤への転相の妨げとなるイオン性不純物の除去を目的に、イオン交換樹脂(アンバーライトMB−2,Rohm and Haas社製)25重量部を添加し攪拌した。24時間攪拌した後、濾過によりイオン交換樹脂を除去し、イオン性不純物の限りなく少ない水系ラテックス(B−2)を得た。
【0031】
この精製された水系ラテックス(B−2)に、酢酸エチル570重量部を加え攪拌、水系ラテックス中に存在する有機微粒子の有機層への転相を行った。その後静置し、透明な水相と白濁した有機相とを分離し、非水系微粒子分散体(B−3)を得た。有機微粒子スラリーB(B−3)は固形分15.1%であった。
【実施例1】
【0032】
(1)ハードコート剤
上記のAM100重量部に対し、有機微粒子スラリーAを20重量部、MEK133重量部、開始剤として1−ヒドロキシーシクロへキシルーフェニルーケトンを5重量部加えハードコート剤を得た。
(2)インサート成型用ハードコートフィルム
次いで、上記ハードコート剤を100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下PETフィルムとする)に硬化膜厚が2μmとなるようにバーコート法で塗工して熱風乾燥機で100℃、2分の条件で乾燥した。しかる後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製、フュージョンランプ)を用いて紫外線を積算光量約200mJ/cm照射してハードコートフィルムを得た。
【実施例2】
【0033】
前記実施例1において、AM100重量部に対し、有機微粒子スラリーBを300重量部に変更し、硬化膜厚が7μmにした以外は同様に実施して、実施例2のハードコートフィルムを得た。
【実施例3】
【0034】
前記実施例2において、AMの代わりにU−AMを使用し、U−AM100重量部に対し、有機微粒子スラリーBを13重量部、MEKを39重量部、硬化膜厚を3μmに変更した以外は同様に実施して、実施例3のハードコートフィルムを得た。
【実施例4】
【0035】
前記実施例3において、有機微粒子スラリーBを267重量部、MEKを添加せず、硬化膜厚を8μmに変更した以外は同様に実施して、実施例4のハードコートフィルムを得た。
【実施例5】
【0036】
前記実施例3において、U−AMを70%、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、商品名カヤラッドDPHA 不揮発分100%、以下DPHAとする)を30%添加した樹脂混合物100重量部に対して、有機微粒子スラリーAを200重量部に変更した以外は同様に実施して、実施例5のハードコートフィルムを得た。
【実施例6】
【0037】
前記実施例5において、DPHAの代わりにペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬株式会社製、商品名カヤラッドPET−30 不揮発分100%)に変更した以外は同様に実施して、実施例6のハードコートフィルムを得た。
【0038】
比較例1
前記実施例1において、AM100重量部に対して有機微粒子スラリーAを133重量部、MEKを37重量部、硬化膜厚を0.5μmに変更し、窒素ガス雰囲気下でUV照射をおこなった以外は同様に実施した。
【0039】
比較例2
前記比較例1において、硬化膜厚を12μmに変更し、窒素ガス雰囲気下ではなく大気中でUV照射をおこなった以外は同様に実施した。
【0040】
比較例3
前記実施例2において、AM100重量部に対して有機微粒子スラリーBを0.7重量部、MEKを149重量部添加し、硬化膜厚を3μmに変更した以外は同様に実施した。
【0041】
比較例4
前記実施例4において、AM100重量部に対して有機微粒子スラリーBを367重量部、MEKを添加せずに硬化膜厚を3μmに変更した以外は同様に実施した。
【0042】
比較例5
前記実施例5において、樹脂混合物100重量部に対して、有機微粒子スラリーBを133重量部、MEKを37重量部、硬化膜厚を0.5μmに変更し、窒素ガス雰囲気下でUV照射をおこなった以外は同様に実施した。
【0043】
比較例6
前記実施例6において、樹脂混合物100重量部に対して、有機微粒子スラリーAを367重量部、MEKを添加せずにおこなった以外は同様に実施した。

評価結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
評価方法は以下の通りとした。
試験・評価方法
(1)全光線透過率(Tt)の測定
JIS K 7361−1(2000年版)3.2の規定に基づいて行った。測定装置としては、株式会社東洋精機製作所製のヘイズガードIIを用いた。
(2)ヘイズ値(Hz)の測定
JIS K 7136(2000年版)の規定に基づきヘイズメータ(スガ試験機製)により測定した。測定装置としては、株式会社東洋精機製作所製のヘイズガードIIを用いた。
(3)鉛筆硬度の測定
JIS K 5600−5−4(1999年版)の規定に基づいて行った。測定装置としては、株式会社東洋精機製作所製の鉛筆引掻塗膜硬さ試験機(形式P)を用いた。1H以上をOKとし、F以下をNGとした。
(4)耐擦傷性の測定
得られたフィルムの表面を、2kg/cmの荷重をかけた日本スチールウール株式会社製のスチールウール#0000にて摩擦して傷の度合いを目視により評価した。傷の本数が3本以下のものを○、それ以上のものを×とした。
(5)曲げ性の測定
半径1Rから6Rの筒の外周に、ハードコート剤塗工面を外側にしたハードコートフィルムを巻き、樹脂層にクラックが入るかどうかにより評価する。クラックの入らない最小の半径を曲げ性の値とした。1R〜2RをOKとし、3R以上をNGとした。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノトリアジン化合物、パラホルムアルデヒド、および水酸基含有(メタ)アクリレートから1工程で合成されたトリアジン環含有(メタ)アクリレートプレポリマーに対して、平均一次粒子径が80〜500nmである有機微粒子が1〜50重量部配合されてなることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
アミノトリアジン化合物、パラホルムアルデヒド、および水酸基含有(メタ)アクリレートから1工程で合成されたトリアジン環含有(メタ)アクリレートプレポリマーに残存する未反応の水酸基をイソシアネート化合物と反応してなるウレタン化トリアジン環含有(メタ)アクリレートプレポリマーに対して、平均一次粒子径が80〜500nmである有機微粒子が1〜50重量部配合されてなることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項3】
前記1〜2記載の樹脂組成物を単体もしくは反応性化合物と混合・重合して得られる硬化性樹脂組成物であることを特徴とするハードコート剤。
【請求項4】
前記ハードコート剤を透明プラスチックフィルム上に塗布し、乾燥、硬化させてなるハードコートフィルムであって、全光線透過率が90%以上であり、該ハードコート層の鉛筆硬度が1H以上、耐擦傷性が良好でかつ、2R以下の曲げ性を持つことを特徴とするインサート成型用ハードコートフィルム。
【請求項5】
前記ハードコート層の硬化膜厚が1〜10μmであるインサート成型用ハードコートフィルム。

【公開番号】特開2007−270069(P2007−270069A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−100447(P2006−100447)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【出願人】(592230542)ガンツ化成株式会社 (38)
【Fターム(参考)】