説明

樹脂組成物

【課題】 熱による反りが抑制された、フレキシブルプリント配線板のオーバーコート剤として有用な、樹脂組成物の提供。
【解決手段】 (A)分子内にポリブタジエン構造を有する樹脂、(B)熱硬化性樹脂、並びに(C)分子内にメルカプト基を二個以上有する化合物及び/又は分子内にジスルフィド結合を有する化合物を含有することを特徴とする樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TCP、COF等に使用されるフレキシブルプリント配線板において、回路表面を保護するオーバーコート剤として好適に用いられる樹脂組成物、さらには該樹脂組成物で表面が保護されたフレキシブルプリント配線板および該配線板を内蔵した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
TCP(Tape Carrier Package)やCOF(Chip On FlexibleまたはFilm)等に利用されているフレキシブルプリント配線板(FPC)は、一般に、ポリエステルテレフタレートやポリイミドのフィルムの片面または両面に、回路形成された導体層(導体回路層)を有する基板と、該基板の表面を保護する表面保護膜から主として構成される。FPC用の絶縁保護膜としては、一般に、ポリイミドフィルムを金型により所望の形状に打ち抜いたものに接着剤層を設けたカバーレイフィルムを基板に貼り付ける方法や、ワニス状の樹脂組成物(オーバーコート剤)をスクリーン印刷によって所望のパターンに印刷し、これを硬化させる方法が知られている。カバーレイフィルムを使用する方法は作業性やコスト面で不利となるため、オーバーコート剤をスクリーン印刷で被膜する方法が主流となりつつある。
【0003】
FPCのオーバーコート剤に使用する樹脂組成物は、その硬化物が柔軟性に優れ、反りが生じにくいことが要求される。このような特性を付与する方法としては、ポリブタジエン骨格を有する樹脂を使用する方法が挙げられる。特許文献1及び2では、特定のポリブタジエンポリオール、ポリエステルポリオール及びポリブタジエンブロックイソシアネートを含有するポリブタジエン骨格を有するフレキシブル回路のオーバーコート剤やポリイミド樹脂、ポリブタジエンポリオールおよびポリブロックイソシアネートを含有する樹脂組成物が、柔軟性、反りなどの特性に優れ、フレキシブル回路のオーバーコート剤として好適であることが開示されている。
【0004】
一方、近年、電子機器の薄型化・小型化の要求はますます高まっており、FPCにおいても配線の微細化が進行している。しかしながら、配線がファインピッチ化したFPCにおいては、表面保護膜の熱による反りによる影響がより顕著に現れ、歩留まりを著しく低下させる要因となる。従って、これまで以上に熱による反りが抑制されたオーバーコート剤用の樹脂組成物が求められている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−71551号公報
【特許文献2】特開平11−199669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、熱による反りが抑制された、フレキシブルプリント配線板のオーバーコート剤として有用な樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、(A)分子内にポリブタジエン構造を有する樹脂、(B)熱硬化性樹脂、並びに(C)分子内にメルカプト基を二個以上有する化合物及び/又は分子内にジスルフィド結合を有する化合物を含有することを特徴とする樹脂組成物が、ポリブタジエン構造を有する樹脂を含有することにより硬化物が優れた柔軟性を有し、かつ熱による反りが小さいことを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は以下の内容を含むものである。
[1](A)分子内にポリブタジエン構造を有する樹脂、(B)熱硬化性樹脂、並びに(C)分子内にメルカプト基を二個以上有する化合物及び/又は分子内にジスルフィド結合を有する化合物を含有することを特徴とする樹脂組成物。
[2]成分(A)の分子内にポリブタジエン構造を有する樹脂が、分子内にポリブタジエン構造およびポリウレタン構造を有する樹脂である、上記[1]記載の樹脂組成物。
[3]成分(A)の分子内にポリブタジエン構造を有する樹脂が、分子内にポリブタジエン構造、ポリウレタン構造およびポリイミド構造を有する樹脂である、上記[1]記載の樹脂組成物。
[4]成分(A)の分子内にポリブタジエン構造を有する樹脂が、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる変性ポリイミド樹脂である、上記[1]記載の樹脂組成物。
[5]成分(A)の分子内にポリブタジエン構造を有する樹脂が、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエンとジイソシアネート化合物を、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエンのヒドロキシル基に対するジイソシアネート化合物のイソシアネート基の官能基当量比が1を超える比率で反応させて得られるポリブタジンエンジイソシアネート組成物に、四塩基酸二無水物を反応させて得られる変性ポリイミド樹脂である、上記[1]記載の樹脂組成物。
[6]成分(A)の分子内にポリブタジエン構造を有する樹脂が、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエンとジイソシアネート化合物を、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエンのヒドロキシル基とジイソシアネート化合物のイソシアネート基の官能基当量比が1:1.5〜1:2.5となる比率で反応させて得られるポリブタジンエンジイソシアネート組成物に、四塩基酸二無水物を反応させて得られる変性ポリイミド樹脂である、上記[1]記載の樹脂組成物。
[7]成分(A)の分子内にポリブタジエン構造を有する樹脂が、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエンとジイソシアネート化合物を、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエンのヒドロキシル基とジイソシアネート化合物のイソシアネート基の官能基当量比が1:1.5〜1:2.5となる比率で反応させて得られるポリブタジンエンジイソシアネート組成物に、四塩基酸二無水物を、原料であるジイソシアネート化合物のイソシアネート基の官能基当量X、原料である2官能ヒドロキシル末端ポリブタジエンのヒドロキシル基の官能基当量W及び四塩基酸二無水物の酸無水物基の官能基当量Yが、Y>X−W≧Y/5(W>0、X>0、Y>0)の関係を満たす比率で反応させて得られる変性ポリイミド樹脂である、上記[1]記載の樹脂組成物。
[8]変性ポリイミド樹脂が、反応後に得られた変性ポリイミド樹脂に、さらに新たなジイソシアネート化合物を、原料であるジイソシアネート化合物のイソシアネート官能基当量X、原料である2官能ヒドロキシル末端ポリブタジエンのヒドロキシル基官能基当量W、四塩基酸二無水物の酸無水物の官能基当量Y及び新たに反応させるジイソシアネート化合物のイソシアネート官能基当量Zが、Y−(X−W)>Z≧0(W>0、X>0、Y>0、Z>0)の関係を満たす比率で反応させて得られる変性ポリイミド樹脂である、上記[2]〜[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9]2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエンの数平均分子量が800〜10000である、上記[2]〜[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10]成分(A)の分子内にポリブタジエン構造を有する樹脂が、下式(1-a):

[式中、R1は2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエンのヒドロキシル基を除いた残基を示し、R3はジイソシアネート化合物のイソシアネート基を除いた残基を示す。]
で表されるウレタン構造を有する樹脂である、上記[1]記載の樹脂組成物。
[11]成分(A)の分子内にポリブタジエン構造を有する樹脂が、分子内に下式(1-a):

[式中、R1は2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエンのヒドロキシル基を除いた残基を示し、R3はジイソシアネート化合物のイソシアネート基を除いた残基を示す。]
で表されるポリブタジエン構造及び式(1-b)

[式中、R2は四塩基酸二無水物の酸無水物基を除いた残基を示し、R3は前記と同意義を示す。]
で表されるポリイミド構造を有する変性ポリイミド樹脂である、上記[1]記載の樹脂組成物。
[12]成分(B)の熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である、上記[1]〜[11]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[13]樹脂組成物がエポキシ硬化剤をさらに含有する、上記[12]記載の樹脂組成物。
[14]成分(A)と成分(B)の比が、質量比で100:1〜1:1であり、樹脂組成物中の成分(A)および(B)の合計の含有量が60質量%以上である、上記[1]〜[13]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[15]成分(A)と成分(C)の比が、質量比で1000:1〜10:1である上記[1]〜[14]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[16]樹脂組成物がさらに充填材を含有する上記[1]〜[15]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[17]樹脂組成物中の充填材の含有量が5〜50質量%である上記[16]記載の樹脂組成物。
[18]樹脂組成物がさらに有機溶剤を含有するワニス状の樹脂組成物である上記[1]〜[17]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[19]樹脂組成物中の有機溶剤の含有量が20〜60質量%である上記[18]記載の樹脂組成物。
[20]フレキシブルプリント配線板の表面保護に使用される上記[1]〜[19]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[21]上記[1]〜[17]のいずれか一項に記載の樹脂組成物で表面が保護されたフレキシブルプリント配線板。
[22]上記[18]または[19]記載の樹脂組成物ワニスを、フレキシブルプリント配線板の所定部分に塗布後、乾燥工程を経て得られる表面が保護されたフレキシブルプリント配線板。
[23]上記[21]または[22]記載のフレキシブルプリント配線板を内蔵する電子機器。
【発明の効果】
【0009】
本発明の樹脂組成物は、分子内にポリブタジエン構造を有する樹脂を含有することにより硬化物が優れた柔軟性を有し、かつ熱による反りが小さいため、フレキシブルプリント配線板のオーバーコート剤に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の樹脂組成物は、分子内にポリブタジエン構造を有する樹脂、熱硬化性樹脂並びに分子内にメルカプト基を二個以上有する化合物及び/又は分子内にジスルフィド結合を有する化合物を含有することを主たる特徴とする。
すなわち本発明は、硬化物において優れた柔軟性効果を付与するポリブタジエン構造を有する樹脂と熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物において、分子内にメルカプト基を二個以上有する化合物及び/又は分子内にジスルフィド結合を配合することにより、該樹脂組成物が層状に硬化される際に生じる反りが著しく低減された樹脂組成物を得ることができる。分子内にポリブタジエン構造を有する樹脂を含有することによる柔軟性に加え、硬化時の反りが低減されるため、フレキシブルプリント配線板用の樹脂組成物として有用であり、特にブレキシブルプリント配線板の表面保護用の樹脂組成物(フレキシブルプリント配線板のオーバーコート剤)として好適である。
【0011】
本発明における成分(A)の「分子内にポリブタジエン構造を有する樹脂」は特に限定されないが、通常ポリブタジエンと他の化合物の共重合体であり、好ましくは柔軟性の観点から、分子内にポリブタジエン構造およびポリウレタン構造を有する樹脂が挙げられる。
【0012】
分子内にポリブタジエン構造およびポリウレタン構造を有する樹脂としては、分子内に下式(1−a)で表される繰り返し単位を有する樹脂を挙げることができる。
【0013】

[式中、R1は2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエンのヒドロキシル基を除いた残基を示し、R3はジイソシアネート化合物のイソシアネート基を除いた残基を示す。]
【0014】
本発明の樹脂組成物における成分(A)の「分子内にポリブタジエン構造を有する樹脂」は、フレキシブルプリント配線板に用いる上で、耐熱性の観点から、特に、分子内にポリブタジエン構造およびポリウレタン構造に加え、ポリイミド構造を有する樹脂であるのが好ましい。
【0015】
分子内にポリブタジエン構造、ポリウレタン構造およびポリイミド構造を有する樹脂としては、分子内に下式(1−a)および(1−b)で表される繰り返し単位を有する変性ポリイミド樹脂を挙げることができる。
【0016】

「式中、R1は2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエンのヒドロキシル基を除いた残基を示し、R2は四塩基酸二無水物の酸無水物基を除いた残基を示し、R3はジイソシアネート化合物のイソシアネート基を除いた残基を示す。」
【0017】
本発明において特に好ましい上記変性ポリイミド樹脂は、
[a]2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、
[b]ジイソシアネート化合物、及び
[c]四塩基酸二無水物
の3成分を反応して得ることができる。
【0018】
2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエンとしては、数平均分子量が800〜10000である2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエンが好ましい。また式(1-a)のポリブタジエン構造としては、式中のR1が、数平均分子量が800〜10000の2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエンのヒドロキシル基を除いた残基を示す場合が好ましい。2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエンの数平均分子量が800以下の場合、変成ポリイミド樹脂が柔軟性に欠ける傾向にあり、10000以上の場合、変成ポリイミド樹脂の熱硬化性樹脂との相溶性に欠ける傾向があり、また耐熱性にも欠ける傾向にある。なお本発明において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレンン換算)で測定した値である。GPC法による数平均分子量は、具体的には、測定装置として(株)島津製作所製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工(株)社製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルムを用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0019】
変性ポリイミド樹脂における、1分子当たりのポリブタジエン構造(1-a)の存在数は、通常1〜10,000、好ましくは1〜100であり、ポリイミド構造(1-b)の存在数は、通常1〜100、好ましくは1〜10である。
【0020】
変性ポリイミド樹脂の数平均分子量は特に限定されないが、通常5000〜200000、好ましくは10000〜100000とすることができる。
【0021】
また変性ポリイミド樹脂組成物の原料となる各成分[a]〜[c]は、順に以下の各式(a)〜(c)で表すことができる。

各式中の記号は前記と同義である。
【0022】
本発明における変成ポリイミド樹脂組成物を効率的に得るには以下の手順に依るのが好ましい。
【0023】
まず成分[a]のポリブタジエンと成分[b]のジイソシアネート化合物を該ポリブタジエンのヒドロキシル基に対するジイソシアネート化合物のイソシアネート基の官能基当量が1を超える比率で反応させポリブタジエンジイソシアネートを含有する組成物を得る。該ポリブタジエンジイソシアネートは下記式(a-b)で表すことができる。

【0024】
式中、R1は2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエンのヒドロキシル基を除いた残基を示し、R3はジイソシアネート化合物のイソシアネート基を除いた残基を示し、nは1以上100以下(0≦n≦100)の整数を示す。nは好ましくは1以上10以下(0≦n≦10)の整数を示す。式中、R1は2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエンのヒドロキシル基を除いた残基を示し、R2は四塩基酸二無水物の酸無水物基を除いた残基を示し、R3はジイソシアネート化合物のイソシアネート基を除いた残基を示す。式(a-b)で表されるポリブタジエンイソシアネートにおいては、式中のR1が、800〜10000の2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエンのヒドロキシル基を除いた残基を示す場合が好ましい。
【0025】
ポリブタジエンとジイソシアネート化合物の反応割合は、該ポリブタジエンのヒドロキシル基に対するジイソシアネート化合物のイソシアネート基の官能基当量比が1:1.5〜1:2.5となる比率で反応させるのが好ましい。
【0026】
次に、該ポリブタジエンジイソシアネート組成物に四塩基酸二無水物を反応させる。四塩基酸二無水物の反応割合は特に限定されないが、組成物中にイソシアネート基を極力残さないようにするのが好ましく、原料であるジイソシアネート化合物のイソシアネート基の官能基当量をX、原料である2官能ヒドロキシル末端ポリブタジエンのヒドロキシル基の官能基当量をW、四塩基酸二無水物の酸無水物基の官能基当量をYとすると、Y>X−W≧Y/5(W>0、X>0、Y>0)の関係を満たす比率で反応させるのが好ましい。
【0027】
このようにして得られる変性ポリイミド樹脂は、前述したように、その分子内に式(1-a)で表されるポリブタジエン構造と、式(1-b)で表されるイミド構造の双方を含むものである。また本発明における変性ポリイミド樹脂組成物は、下式(a-b-c)で表される構造を含む変性ポリイミドを主成分とするものが好ましい。

式中、R1は2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエンのヒドロキシル基を除いた残基を示し、R2は四塩基酸二無水物の酸無水物基を除いた残基を示し、R3はジイソシアネート化合物のイソシアネート基を除いた残基を示し、n及びmは1以上100以下(1≦n≦100)の整数を示す。n及びmは好ましくは1以上10以下(1≦n≦10)の整数を示す。式(a-b-c)におけるポリブタジエン構造としては、式中のR1が、800〜10000の2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエンのヒドロキシル基を除いた残基を示す場合が好ましい。
【0028】
ポリブタジエンジイソシアネート組成物中のイソシアネート基を極力残さないようにするために、反応中において、FT−IR等でイソシアネート基の消失を確認するのが好ましい。このようにして得られる変成ポリイミド樹脂の末端基は下式(1-c)又は下式(1-d)で表すことができる。

各式中の記号は前記と同義である。
【0029】
変性ポリイミド樹脂の製造において、ポリブタジエンジイソシアネート組成物と四塩基酸二無水物を反応させた後、更にジイソシアネート化合物と反応させることにより、より高分子量の変性ポリイミド樹脂を得ることができる。この場合のイソシアネート化合物の反応割合は特に限定されないが、原料であるイソシアネート化合物のイソシアネート官能基当量をX、原料である2官能ヒドロキシル末端ポリブタジエンのヒドロキシル基官能基当量をW、四塩基酸二無水物の酸無水物の官能基当量をY、新たに反応させるイソシアネート化合物のイソシアネート官能基当量をZとすると、Y−(X−W)>Z≧0(W>0、X>0、Y>0、Z>0)の関係を満たす比率で反応させるのが好ましい。
【0030】
本発明における変成ポリイミド樹脂は、上記式(1-a)で表されるポリブタジエン構造及び上記式(1-b)で表されるポリイミド構造の2つの化学構造単位を含む。通常、樹脂組成物に柔軟性を付与するためには、ポリブタジエン樹脂のようなゴム系樹脂を樹脂組成物に直接混合することが一般的であるが、非極性のゴム系樹脂は、極性の高い熱硬化性樹脂組成物中で相分離を起こしやすく、特にゴム系樹脂の含有割合が高い場合は、安定した組成物を得ることが難しい。また、ゴム系樹脂を含有する樹脂組成物は、十分な耐熱性が得られないことが多い。一方、ポリイミド樹脂は耐熱性を有しているとともに、極性が高いために熱硬化性樹脂組成物との相溶性が比較的良好である。本発明の変性ポリイミド樹脂は、このポリイミド構造と柔軟性を付与するポリブタジエン構造の双方をひとつの分子内に有するため、柔軟性と耐熱性の両方の特性に優れた材料となり、さらに熱硬化性樹脂との相溶性も良好なため、安定した熱硬化性樹脂組成物を得るのに適した材料となる。
【0031】
本発明における変成ポリイミド樹脂中の、ポリブタジエン構造とポリイミド構造の構成比は、原料の反応比率を調整することにより、変化させることができる。ポリブタジエン構造の割合が多い場合は、本発明の樹脂組成物は、より柔軟性に優れた材料となり、ポリイミド構造の割合が多い場合は、より耐熱性に優れた材料となる。またポリブタジエン構造、またはポリイミド構造を有する化合物は誘電率及び誘電正接が低い値を示す傾向にあることが知られており、本発明における変成ポリイミド樹脂は両骨格を有するため、本発明の樹脂組成物は誘電特性にも優れた絶縁材料となる。特に変性ポリイミド樹脂中のポリブタジエン構造の割合が多い場合は、より誘電特性に優れた材料となる。
【0032】
本発明における変成ポリイミド樹脂の原料となる成分[a]2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエンにおける2官能性ヒドロキシル基末端とは、ポリブタジエンの両末端がヒドロキシル基であることを意味する。該ポリブタジエンとしては、分子内の不飽和結合の一部が水素化されたものでもよい。2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエンの具体例としては、例えば、G−1000、G−3000、GI−1000、GI−3000(以上、日本曹達(株)社製)、R−45EPI(出光興産(株)社製)などが挙げられる。
【0033】
本発明における変成ポリイミド樹脂の原料となる成分[b]ジイソシアネート化合物としては、トルエン−2,4−ジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネートなどが挙げられる。
【0034】
本発明における変成ポリイミド樹脂の原料となる成分[c]四塩基酸二無水物の具体例としては、ピロメリット酸二無水物、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチル−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,3’−4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−C]フラン−1,3−ジオンなどが挙げられる。
【0035】
本発明における変成ポリイミド樹脂の製造において、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエンとジイソシアネート化合物の反応は、有機溶媒中、反応温度が80℃以下、反応時間が通常1〜8時間の条件で行うことができる。また必要により触媒存在下に行ってもよい。ポリブタジエンジイソシアネート組成物と四塩基酸二無水物の反応は、上記反応後に得られるポリブタジエンジイソシアネート組成物を含む溶液を室温まで冷却した後、これに四塩基酸二無水物を添加し、反応温度120〜180℃、反応時間2〜24時間の条件で反応を行うことができる。反応は通常触媒存在下に行われる。また有機溶媒を更に添加して行ってもよい。得られた反応溶液は、必要により不溶物を除くため濾過を行ってもよい。得られた反応溶液に変性ポリイミドに対して貧溶媒となる溶媒を添加し、変性ポリイミドを分離することで精製してもよいが、通常は、このような精製は必要でなく、反応溶液を、必要であれば不溶物を除くため濾過するなどして、本発明における変性イミド樹脂ワニスとしてそのまま使用することができる。
【0036】
このようにして得られるワニス状の変性ポリイミド樹脂において、ワニス中の溶媒量は、反応時の溶媒量を調整する、又は反応後に溶媒を添加するなどして適宜調整することができる。また、ポリブタジエンジイソシアネート組成物と四塩基酸二無水物の反応の後、更にジイソシアネートを反応させて、より高分子量体である変性ポリイミド樹脂を得ることもできる。この場合ポリブタジエンジイソシアネート組成物と四塩基酸二無水物の反応物にジイソシアネート化合物を滴下により添加し、反応温度120〜180℃、反応時間2〜24時間の条件で反応を行うことができる。
【0037】
上記各反応に使用される有機溶媒としては、例えば、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジエチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N,N’−ジエチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、テトラメチルウレア、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、ジグライム、トリグライム、カルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどの極性溶媒を挙げることができる。これらの溶媒は2種以上を混合して用いてもよい。また、必要により芳香族炭化水素などの非極性溶媒を適宜混合して用いることもできる。
【0038】
上記各反応に使用される触媒としては、例えば、テトタメチルブタンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、N,N’−ジメチルピペリジン、α−メチルベンジルジメチルアミン、N−メチルモルホリン、トリエチレンジエミン等の三級アミンや、ジブチル錫ラウレート、ジメチル錫ジクロライド、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛等の有機金属触媒などを挙げることができる。これらの触媒は2種以上を混合して用いてもよい。触媒としては、特に、トリエチレンジアミンを使用するのが最も好ましい。
【0039】
本発明における成分(B)の「熱硬化性樹脂」としては、例えばエポキシ樹脂、イソシアネートとポリオールの混合物又はブロックイソシアネートとポリオールの混合物などからなるウレタン樹脂、ビスマレイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、ビスアリルナジド樹脂、ビニルベンジルエーテル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ビスマレイミドとジアミンの重合物、などが挙げられる。これら熱硬化性樹脂は2種以上を混合して用いてもよい。本発明における熱硬化性樹脂としては、特にエポキシ樹脂が好ましい。
【0040】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールとフェノール性ヒドロキシル基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂肪環式エポキシ樹脂等などの1分子中に2以上の官能基を有するエポキシ樹脂を挙げることができる。これらのエポキシ樹脂は2種以上を混合して用いてもよい。
【0041】
エポキシ樹脂を使用する場合には通常エポキシ硬化剤が必要となる。エポキシ硬化剤としては、例えば、アミン系硬化剤、グアニジン系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、チオール系硬化剤、又はこれらのエポキシアダクトやマイクロカプセル化したもの等を挙げることができる。特に樹脂組成物を印刷インクにしたときの粘度安定性などの観点からイミダゾール系硬化剤が好ましい。エポキシ硬化剤は2種以上を混合して用いてもよい。また、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア等の硬化促進剤を併用して用いてもよい。
【0042】
エポキシ硬化剤の具体例としては、例えば、アミン系硬化剤としてジシアンジアミド、イミダゾール系硬化剤として2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物などを挙げることができる。
【0043】
本発明の樹脂組成物をフレキシブルプリント配線板のオーバーコート剤として使用する場合、成分(B)の熱硬化性樹脂は、成分(A)と成分(B)の比が質量比で100:1〜1:1となる範囲で使用するのが好ましい。成分(A)の樹脂の比がこれより大きいと架橋度が低下し耐薬品性が低下する傾向にあり、またこれより少ないと架橋度が高くなりすぎて、十分な柔軟性が得られにくい傾向にある。また、本発明の樹脂組成物(100質量%)中、成分(A)および(B)の合計の含有量が60質量%以上であるのが好ましい。なお、ここで成分(A)および(B)の合計の含有量は、樹脂組成物ワニスなど樹脂組成物が有機溶剤を含む場合、有機溶剤を除く樹脂組成物成分中の含有量として算出する。60質量%未満である場合、樹脂組成物においてオーバーコート剤としての機能が十分得られない場合がある。
【0044】
本発明における成分(C)の「分子内にメルカプト基を二個以上有する化合物及び/又は分子内にジスルフィド結合を有する化合物」としては、1,4−ブタンジチオール、p−キシレン−α、α’−ジチオール、2,4,6−トリメルカプト−s−トリアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール等の1分子中にメルカプト基を二個以上有するジチオール化合物や、ジエチルジスルフィド、ジフェニルジスルフィド、ジヘキシルジスルフィド、ジオクチルジスルフィド等の1分子中にジスルフィド結合を有する化合物などを使用することができる。好ましいものとしては、例えば2,4,6−トリメルカプト−s−トリアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールが挙げられる。
【0045】
成分(C)は、成分(A)と成分(C)の比が、質量比で1000:1〜10:1となる範囲で使用するのが好ましく、さらに200:1〜20:1の範囲で使用するのがより好ましい。成分(C)の比がこれより小さいと、反りを低減する効果が十分に得られない傾向にある。またこれより大きいと、臭気の問題が生じる傾向にあり、さらにオーバーコート剤を保存する際に粘度上昇により可使時間が短くなる傾向がある。
【0046】
本発明の樹脂組成物は、さらに充填材を含有していてもよい。充填材は有機充填材および無機充填材のいずれでもよい。充填材は2以上を混合して用いることもできる。無機充填剤を使用することにより、塗膜の機械的強度を向上させることができる。無機充填材の配合量は特に限定されないが、好ましくは、該樹脂組成物中、5〜50質量%以内の範囲で添加することができる。50質量%を超えると、樹脂組成物ワニスとしてフレキシブル回路基板表面に塗布するのが困難となる傾向にあり、また形成される表面保護膜の弾性率が増大し強靱性が低下する傾向にある。5質量%よりも少ないと、機械的強度を向上させる効果が十分に発揮されない傾向にある。
【0047】
無機充填材としては、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウムなどが挙げられる。特にシリカ、タルクが好ましい。無機充填材は平均粒径が5μm以下のものが好ましい。有機充填材としては、アクリルゴム粒子、ポリアミド微粒子、シリコーン粒子などが挙げられる。アクリルゴム粒子の具体例としては、アクリロニトリルブタジエンゴム、ブタジエンゴム、アクリルゴムなどのゴム弾性を示す樹脂に化学的架橋処理を行施し、有機溶剤に不溶かつ不融とした樹脂の微粒子体であるものならばどのようなものでも良く、例えば、XER−91(日本合成ゴム(株)社製)、スタフィロイドAC3355、AC3816、AC3832、AC4030、AC3364、IM101(以上、ガンツ化成(株)社製)パラロイドEXL2655、EXL2602(以上、呉羽化学工業(株)社製)などが挙げられる。ポリアミド微粒子の具体例としてはとしては、ナイロンのような脂肪族ポリアミドやケブラーのような芳香族ポリアミド、さらには、ポリアミドイミドなど、アミド結合を有する樹脂の50ミクロン以下の微粒子であればどのようなものでも良く、例えば、VESTOSINT 2070(ダイセルヒュルス(株)社製)や、SP500(東レ(株)社製)などが挙げられる。有機充填材も平均粒径が5μm以下のものが好ましい。なお平均粒径は、株式会社 堀場製作所製のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−500により測定することができる。
【0048】
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果が発揮される範囲において、各種樹脂添加剤や成分(A)及び(B)以外の樹脂成分等を配合することができる。樹脂添加剤の例としては、例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等のカップリング剤、シリコーン系消泡剤、フッ素系消泡剤、アクリル重合物系消泡剤等の消泡剤、オルベン、ベントン等の増粘剤、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、カーボンブラック等の着色剤、リン含有化合物、臭素含有化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の難燃剤、レベリング剤、チキソトロピック剤などを挙げることができる。他の樹脂成分としてはポリエステルポリオール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等が挙げられる。
【0049】
本発明の樹脂組成物をフレキシブルプリント配線板の表面保護用として使用する場合、すなわち、フレキシブルプリント配線板のオーバーコート剤として使用する場合、その使用に当たっては、通常、樹脂組成物に有機溶剤を配合しワニス状にして用いられる。このワニス状の樹脂組成物、すなわち樹脂組成物ワニスの作成に使用する有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。これら有機溶剤は2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお本発明の樹脂組成物ワニスは本発明の樹脂組成物にさらに有機溶剤が含まれるものであり、概念的に本発明の樹脂組成物に包含される。ワニス状の樹脂組成物における有機溶剤の含有量は、樹脂の分子構造、有機溶剤への溶解性、分子量などによって最適値が異なるが20〜60質量%であるのが好ましく、さらに30〜50質量%であるのがさらに好ましい。
【0050】
本発明の樹脂組成物ワニスをフレキシブルプリント配線板の所定の部分に塗布し、塗布面を乾燥することで、全表面または一部表面が本発明の樹脂組成物で保護されたフレキシブルプリント配線板を得ることができる。乾燥条件は使用する樹脂組成物ワニスの種類により、当業者が適宜容易に設定することができるが、通常100〜200℃で、1〜120分程度乾燥させる。形成される表面保護膜の厚みも特に限定されないが、通常5〜100μmである。本発明の樹脂組成物により表面を保護されるフレキシブルプリント配線板に特に限定はなく、TAB用フレキシブルプリント配線板、COF用フレキシブルプリント配線板、多層フレキシブルプリント配線板、導電性ペースト印刷フレキシブルプリント配線板などの各種フレキシブルプリント配線板に使用できるが、特にTAB用フレキシブルプリント配線板、COF用フレキシブルプリント配線板に好適に用いることができる。
【0051】
本発明の樹脂組成物で表面が保護されたフレキシブルプリント配線板は各種電子機器に内蔵される形で用いられる。例えば、携帯電話、デジタルカメラ、ビデオカメラ、ゲーム機器、パーソナルコンピューター、プリンター、ハードディスクドライブ、プラズマテレビ、液晶テレビ、液晶ディスプレイ、カー・ナビゲーション・システム、複写機、ファックス、AV機器、計測機器、医療機器などの各種電子機器の内部配線として好適に使用される。
【0052】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例中、部は質量部を意味する。
【0053】
<変性ポリイミド樹脂ワニスA製造>
反応容器にG−3000(2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、数平均分子量=5047(GPC法)、ヒドロキシル基当量=1798g/eq.、固形分100質量%:日本曹達(株)製)50gと、イプゾール150(芳香族炭化水素系混合溶媒:出光興産(株)製)23.5g、ジブチル錫ラウレート0.005gを混合し均一に溶解させた。均一になったところで50℃に昇温し、更に撹拌しながら、トルエン−2,4−ジイソシアネート(イソシアネート基当量=87.08g/eq.)4.8gを添加し約3時間反応を行った。次いで、この反応物を室温まで冷却してから、これにベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(酸無水物当量=161.1g/eq.)8.96gと、トリエチレンジアミン0.07gと、エチルジグリコールアセテート(ダイセル化学工業(株)製)40.4gを添加し、攪拌しながら130℃まで昇温し、約4時間反応を行った。FT−IRより2250cm−1のNCOピークの消失の確認を行った。NCOピーク消失の確認をもって反応の終点とみなし、反応物を室温まで降温してから100メッシュの濾布で濾過して変性ポリイミド樹脂ワニスAを得た。
【0054】
変性ポリイミド樹脂ワニスAの性状:粘度=7.5Pa・s(25℃、E型粘度計)
酸価=16.9mgKOH/g
固形分(溶剤以外の成分)=50質量%
数平均分子量=13723
ポリブタジエン構造部の含有率=50*100/(50+4.8+8.96)
=78.4質量%
【0055】
<変性ポリイミド樹脂ワニスBの製造>
反応容器にG−3000(2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、数平均分子量=5047(GPC法)、ヒドロキシル基当量=1798g/eq.、固形分100質量%:日本曹達(株)製)50gと、イプゾール150(芳香族炭化水素系混合溶媒:出光興産(株)製)23.5g、ジブチル錫ラウレート0.007gを混合し、均一に溶解させた。均一になったところで50℃に昇温し、更に撹拌しながら、トルエン−2,4−ジイソシアネート(イソシアネート基当量=87.08g/eq.)4.8gを添加し約3時間反応を行った。次いで、この反応物を室温まで冷却してから、これにベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(酸無水物当量=161.1g/eq.)8.83gと、トリエチレンジアミン0.07gと、エチルジグリコールアセテート(ダイセル化学工業(株)社製)74.09gを添加し、攪拌しながら130℃まで昇温、約4時間反応を行った。FT−IRより2250cm−1のNCOピークの消失が確認された時点でさらに、トルエン−2,4−ジイソシアネート(イソシアネート基当量=87.08g/eq.)1.43gを添加し、再び130℃で2〜6時間攪拌反応を行いながらFT−IRによりNCOピーク消失の確認を行った。NCOピーク消失の確認をもって反応の終点とみなし、これを室温まで降温してから100メッシュの濾布で濾過し、変性ポリイミド樹脂ワニスBを得た。
【0056】
変性ポリイミド樹脂ワニスBの性状:粘度=7.0Pa・s(25℃、E型粘度計)
酸価=6.9mgKOH/g
固形分=40質量%
数平均分子量=19890
ポリブタジエン構造部の含有率=50*100/(50+4.8+8.83+1.43)
=76.9質量%
【0057】
<その他樹脂ワニスの性状>
(i) ポリブタジエンポリオール(G−1000、日本曹達(株)社製、OH末端ポリブタジエン、固形分100質量%、)
(ii)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂ワニス(N695、大日本インキ(株)、カルビトールアセテート溶液、固形分80質量%)
(iii) ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂ワニス(HP7200、大日本インキ(株)、カルビトールアセテート溶液、固形分80質量%)
(iv) ポリエステルポリオール(バイロン−200、東洋紡績(株)、OH末端ポリエステルポリオール、カルビトールアセテート/石油ナフサ=2/1固形分45質量%)
【0058】
<ポリブタジエンポリブロックイソシアネート樹脂ワニスの製造>
反応容器にHTP−9(出光興産(株)社製、NCO末端ポリブタジエン、NCO当量=467g/eq.、固形分=100質量%)1000gとカルビトールアセテート216gとジブチル錫ジラウレート0.1gを混合均一に溶解させた。均一となったところで70℃に昇温し、更に攪拌しながらメチルエチルエトンオキシムを214gを2時間かけて滴下し更に1時間保持、FT−IRにより2250cm−1のNCOの吸収ピークが消失確認されたところで降温し、ポリブタジエンポリブロックイソシアネート樹脂ワニス樹脂ワニスを得た。
【0059】
ポリブタジエンポリブロックイソシアネート樹脂ワニス樹脂ワニスの性状:
NCO当量=672.5g/eq、固形分85質量%
【0060】
<表面保護膜の評価方法>
1.反り試験:縦35mm×横60mm×厚さ40μmのポリイミドフィルム上に25mm×35mmの範囲内に厚さ15μmで塗布し、下記条件で硬化後の反り量を測定した。反り量の測定は塗膜面を下にして定盤上においてそりの高さ(mm)を測定し評価した。
条件:120℃/90分間硬化した試験片を150℃で100時間エージング。
判定基準
◎:反り量が0.2mm以下
○:反り量が1.0mm以下
×:反り量が1.0mmを超える
【0061】
2.耐折り曲げ性(柔軟性)試験:縦35mm×横60mm×厚さ40μmのポリイミドフィルム上に25mm×35mmの範囲内に厚さ15μmで塗布し、120℃、90分間硬化した試験片を180°折り曲げて、塗膜の表面を観察した。
○:折り曲げ前後で塗膜に変化なし。
△:折り曲げ前後で塗膜の一部に変化が見られる。
×:折り曲げ前後で塗膜に変化が見られる。
【0062】
3.耐熱性:ILB(Inner Lead Bonding)模擬耐熱試験:40μmピッチの銅配線パターンを形成したポリイミド基材上に、樹脂組成物を厚さ15μmで塗布し、120℃、90分間硬化し試験片を用意した。パターン部の樹脂組成物の塗布部と非塗布部の境界部分にILBボンダの加熱ツールを2秒間接触させ、樹脂組成物に膨れ発生の有無を観察した。膨れが生じなければ加熱ツールの温度を10℃上昇させ、同様の操作を繰り返した。膨れが観察されない限界温度を耐熱温度とした。
【0063】
4.耐薬品性:縦35mm×横60mm×厚さ40μmのポリイミドフィルム上に25mm×35mmの範囲内に厚さ15μmで塗布し、120℃、90分間硬化した試験片を1Mの塩酸に30分間浸漬して塗膜の外観を観察した。
○:浸漬前後で塗膜に変化なし。
△:浸漬前後で塗膜の一部に変化が見られる。
×:浸漬前後で塗膜に変化が見られる。
【0064】
5.耐溶剤性:縦35mm×横60mm×厚さ40μmのポリイミドフィルム上に25mm×35mmの範囲内に厚さ15μmで塗布し、120℃、90分間硬化した試験片の塗膜上をアセトンをしみ込ませたウエスで塗膜をラビングし、塗膜の外観を観察した。
○:ラビング前後で塗膜に変化なし。
△:ラビング前後で塗膜の一部に変化が見られる。
×:ラビング前後で塗膜に変化が見られる。
【0065】
6.電気絶縁性:30μmピッチの櫛形銅配線パターンをもつポリイミド基材上に、樹脂組成物を厚さ15μmで塗布し、120℃、90分間硬化した試験片を25±3℃、50±10%RHの環境下で2時間以上放置した後、絶縁抵抗値(初期値)を計測した。試験片を85±2℃、85±2%RHの恒温恒湿槽に入れ60V印加、1000時間経過後に25±3℃、50±10%RHの環境下で2時間以上放置した後の絶縁抵抗値を計測した。
【実施例1】
【0066】
表1の実施例1に従い(A)から(E)の各成分を配合し、3本ロールを用いて混練したのち、粘度調整溶剤としてカルビトールアセテート及び石油ナフサをもちいて粘度20±2Pa・Sに調整した。各評価用基材に所定の膜厚に塗布し、120℃/90分の条件で乾燥、硬化を行い、試験サンプルを作成した。
【実施例2】
【0067】
表1の実施例2に従い各成分を配合し、実施例1と同様の方法で試験サンプルを作成した。
【実施例3】
【0068】
表1の実施例3に従い各成分を配合し、実施例1と同様の方法で試験サンプルを作成した。
【実施例4】
【0069】
表1の実施例4に従い各成分を配合し、実施例1と同様の方法で試験サンプルを作成した。
【実施例5】
【0070】
表1の実施例5に従い各成分を配合し、3本ロールを用いて混練し、成分(G)を添加しプラネタリーミキサーにて攪拌した後、粘度調整溶剤としてカルビトールアセテート及び石油ナフサをもちいて粘度20±2Pa・Sに調整した。試験サンプルは実施例1と同様の方法で作成した。
【実施例6】
【0071】
表1の実施例6に従い各成分を配合し、実施例と同様の方法で試験サンプルを作成した。
【表1】

【0072】
*)表中の数値は、原料中の溶剤分を含んだ質量部を表す。
*)表中、アエロジルA−200:超微粒子シリカ、日本アエロジル(株)社製。
【0073】
<比較例1〜3>
表1の比較例1〜3に従い各成分を配合し、実施例1と同様の方法で試験サンプルを作成した。
【0074】
実施例1〜6、および比較例1〜3について、各項目の評価を実施して、結果を表2にまとめた。
【表2】

【0075】
実施例1〜6の樹脂組成物は比較例の樹脂組成物に比べ、柔軟性および硬化時の反りに優れ、さらに耐薬品性、耐熱性、電気絶縁性にも優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子内にポリブタジエン構造を有する樹脂、(B)熱硬化性樹脂、並びに(C)分子内にメルカプト基を二個以上有する化合物及び/又は分子内にジスルフィド結合を有する化合物を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
成分(A)の分子内にポリブタジエン構造を有する樹脂が、分子内にポリブタジエン構造およびポリウレタン構造を有する樹脂である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
成分(A)の分子内にポリブタジエン構造を有する樹脂が、分子内にポリブタジエン構造、ポリウレタン構造およびポリイミド構造を有する樹脂である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項4】
成分(A)の分子内にポリブタジエン構造を有する樹脂が、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる変性ポリイミド樹脂である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項5】
成分(A)の分子内にポリブタジエン構造を有する樹脂が、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエンとジイソシアネート化合物を、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエンのヒドロキシル基に対するジイソシアネート化合物のイソシアネート基の官能基当量比が1を超える比率で反応させて得られるポリブタジンエンジイソシアネート組成物に、四塩基酸二無水物を反応させて得られる変性ポリイミド樹脂である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項6】
成分(A)の分子内にポリブタジエン構造を有する樹脂が、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエンとジイソシアネート化合物を、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエンのヒドロキシル基とジイソシアネート化合物のイソシアネート基の官能基当量比が1:1.5〜1:2.5となる比率で反応させて得られるポリブタジンエンジイソシアネート組成物に、四塩基酸二無水物を反応させて得られる変性ポリイミド樹脂である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項7】
成分(A)の分子内にポリブタジエン構造を有する樹脂が、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエンとジイソシアネート化合物を、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエンのヒドロキシル基とジイソシアネート化合物のイソシアネート基の官能基当量比が1:1.5〜1:2.5となる比率で反応させて得られるポリブタジンエンジイソシアネート組成物に、四塩基酸二無水物を、原料であるジイソシアネート化合物のイソシアネート基の官能基当量X、原料である2官能ヒドロキシル末端ポリブタジエンのヒドロキシル基の官能基当量W及び四塩基酸二無水物の酸無水物基の官能基当量Yが、Y>X−W≧Y/5(W>0、X>0、Y>0)の関係を満たす比率で反応させて得られる変性ポリイミド樹脂である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項8】
変性ポリイミド樹脂が、反応後に得られた変性ポリイミド樹脂に、さらに新たなジイソシアネート化合物を、原料であるジイソシアネート化合物のイソシアネート官能基当量X、原料である2官能ヒドロキシル末端ポリブタジエンのヒドロキシル基官能基当量W、四塩基酸二無水物の酸無水物の官能基当量Y及び新たに反応させるジイソシアネート化合物のイソシアネート官能基当量Zが、Y−(X−W)>Z≧0(W>0、X>0、Y>0、Z>0)の関係を満たす比率で反応させて得られる変性ポリイミド樹脂である、請求項4〜7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエンの数平均分子量が800〜10000である、請求項4〜6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
成分(A)の分子内にポリブタジエン構造を有する樹脂が、下式(1-a):

[式中、R1は2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエンのヒドロキシル基を除いた残基を示し、R3はジイソシアネート化合物のイソシアネート基を除いた残基を示す。]
で表されるウレタン構造を有する樹脂である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項11】
成分(A)の分子内にポリブタジエン構造を有する樹脂が、分子内に下式(1-a):

[式中、R1は2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエンのヒドロキシル基を除いた残基を示し、R3はジイソシアネート化合物のイソシアネート基を除いた残基を示す。]
で表されるポリブタジエン構造及び式(1-b)

[式中、R2は四塩基酸二無水物の酸無水物基を除いた残基を示し、R3は前記と同意義を示す。]
で表されるポリイミド構造を有する変性ポリイミド樹脂である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項12】
成分(B)の熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
樹脂組成物がエポキシ硬化剤をさらに含有する、請求項12記載の樹脂組成物。
【請求項14】
成分(A)と成分(B)の比が、質量比で100:1〜1:1であり、樹脂組成物中の成分(A)および(B)の合計の含有量が60質量%以上である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
成分(A)と成分(C)の比が、質量比で1000:1〜10:1である請求項1〜14のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項16】
樹脂組成物がさらに充填材を含有する請求項1〜15のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項17】
樹脂組成物中の充填材の含有量が5〜50質量%である請求項16記載の樹脂組成物。
【請求項18】
樹脂組成物がさらに有機溶剤を含有するワニス状の樹脂組成物である請求項1〜17のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項19】
樹脂組成物中の有機溶剤の含有量が20〜60質量%である請求項18記載の樹脂組成物。
【請求項20】
フレキシブルプリント配線板の表面保護に使用される請求項1〜19のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項21】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の樹脂組成物で表面が保護されたフレキシブルプリント配線板。
【請求項22】
請求項18または19記載の樹脂組成物ワニスを、フレキシブルプリント配線板の所定部分に塗布後、乾燥工程を経て得られる表面が保護されたフレキシブルプリント配線板。
【請求項23】
請求項21または22記載のフレキシブルプリント配線板を内蔵する電子機器。

【公開番号】特開2006−137943(P2006−137943A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−298336(P2005−298336)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】