説明

樹脂組成物

【課題】 300℃以上の高温で加熱処理しても十分な透明性を維持することができ、加熱処理後の成形体が十分な耐熱性及び機械特性を有する樹脂組成物及びそれを用いたポリイミド成形体を提供する。
【解決手段】 (a)一般式(I)で示される繰り返し単位で、繰り返し単位中に少なくとも1つは脂環式基を有するポリイミド前駆体及び、(b)エポキシ基、オキセタニル基又はブロックイソシアネート基を有する化合物を含有する樹脂組成物。
【化1】


(一般式(I)中、Rは四価の有機基、Rは二価の有機基を示し、R又はRの少なくとも1つは脂環構造を有する。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド前駆体とエポキシ基、オキセタニル基又はブロックイソシアネート基を有する化合物を含有し、耐熱性、透明性、電気特性及び機械特性に優れる樹脂組成物、及び該樹脂組成物を成形してなるポリイミド成形体に関する。また、該成形体からなるプラスチック基板及び保護膜、又は該基板及び該保護膜を備えた電気・電子部品、並びに該ポリイミド成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリイミド樹脂は、高い耐熱性に加え、絶縁性に優れた電気特性、耐薬品性、耐摩耗性、及び寸法安定性といった機械強度を有する。このような特性を併せ持つことから、ポリイミド樹脂はフレキシブルプリント基板のベースフィルムなどの電気・電子産業分野で広く用いられている。近年、表示装置の分野では、耐破損性の向上、軽量化、薄型化等の要望から、基板ガラスやカバーガラスをプラスチック基板に置き換えることが検討されている。表示装置とは、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、電子ペーパー等を差す。特に、携帯電話、電子手帳、ラップトップ型パソコン等の携帯情報端末などの移動型情報通信機器用表示装置では、プラスチック基板に対する強い要望がある。さらに、耐熱性や機械特性に加え、透明性にも優れる樹脂材料の開発が強く求められている。
【0003】
しかし、一般にポリイミド樹脂は、分子内共役及び電荷移動錯体の形成により、黄褐色に着色する。その解決策として、ポリイミド樹脂へフッ素を導入すること、主鎖に屈曲性を与えること、嵩高い側鎖を導入すること等により、電荷移動錯体の形成を阻害することで、透明性を発現させる方法が提案されている(非特許文献1)。また、電荷移動錯体を形成しない半脂環式又は全脂環式ポリイミド樹脂を用いることにより透明性を発現させる方法も提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−348374号公報
【特許文献2】特開2005−15629号公報
【特許文献3】特開2009−286706号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「ポリマー(Polymer)」,(米国),2006年,第47巻,p.2337-2348
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、半脂環式又は全脂環式ポリイミド樹脂は、前駆体であるポリアミド酸樹脂を、300℃以上の高温で成形加工を行うことで得られる為、樹脂の熱分解などが生じ、可視光領域における透明性が著しく損なわれるという問題があった。特に酸素を含む大気雰囲気下では樹脂の熱分解などが促進される傾向があった。
【0007】
近年、ポリアミド酸樹脂の原料となるフッ素化モノマー及び脂環式モノマーの研究が盛んに行われ、高純度で安価なモノマーが開発されている(特許文献3)。
【0008】
しかしこのようなモノマーを用いても、得られた膜は硬く、折り曲げるとすぐに破けてしまうため、電子部品の部材として用いるのに十分な機械特性を得ることは出来なかった。そこで本発明は、これらの課題を解決するために、300℃以上の高温で加熱処理しても十分な透明性を維持することができ、加熱処理後の成形体が十分な耐熱性及び機械特性を有する樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、前記樹脂組成物を加熱処理して得られる成形体、成形体からなるプラスチック基板及び保護膜、該基板及び保護膜を備えた電気・電子部品と、その製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、(a)一般式(I)で示される繰り返し単位で、繰り返し単位中に少なくとも1つは脂環式基を有するポリイミド前駆体及び、(b)エポキシ基、オキセタニル基又はブロックイソシアネート基を有する化合物を含有する樹脂組成物を提供する。
【0011】
【化1】

(一般式(I)中、Rは四価の有機基、Rは二価の有機基を示し、R又はRの少なくとも1つは脂環式基を有する。)
【0012】
また、本発明の樹脂組成物の(b)成分は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジグリシジルエーテル又は3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタンであることが好ましい。
【0013】
また、本発明の樹脂組成物は、(a)成分におけるポリマー末端構造は、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基又はイソシアネート基であることが好ましい。また、(a)成分において、一般式(I)中のRが4価の脂環式基であり、Rが2価の芳香族基あること、又は、一般式(I)中のRが4価の芳香族基であり、Rが2価の脂環式基であることが好ましい。
【0014】
本発明の樹脂組成物は、(a)成分100質量部に対して、前記(b)成分0.01〜15質量部を含有することが好ましい。
【0015】
本発明の樹脂組成物は、さらに(c)有機溶媒を含有することが好ましい。
【0016】
本発明によれば、前記樹脂組成物を架橋反応させ得られるポリイミド成形体を提供する。また、前記ポリイミド成形体からなるプラスチック基板又は保護膜を提供する。さらに、前記プラスチック基板又は保護膜を有する電子部品及び表示装置を提供する。また、前記樹脂組成物を基材上に塗布、乾燥して樹脂膜を形成する工程と、前記乾燥後の樹脂膜を加熱処理する工程とを含むポリイミド成形体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、300℃以上の加熱処理後も十分な透明性を持ち、ポリイミドの本来の特性である耐熱性及び機械強度を兼ね備えた透明ポリイミド成形体を与える、樹脂組成物を提供することが出来る。本発明の透明ポリイミド成形体は、無色で高透明性、高耐熱性を示し、さらには十分な伸びを有するので、フレキシブルディスプレイ基板や保護膜等として好適に用いることができる。該基板又は保護膜を備えた電気・電子部品(各種電子デバイスにおける電気絶縁膜および液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、電子ペーパー、太陽電池など)の提供が可能である。さらに、本発明の製造方法によれば、前記性能を有する透明ポリイミド成形体を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明にかかる樹脂組成物、ポリイミド成形体の製造方法及び電子部品の実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0019】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、(a)一般式(I)で示される繰り返し単位で、繰り返し単位中に少なくとも1つは脂環式基を有するポリイミド前駆体及び、(b)エポキシ基、オキセタニル基又はブロックイソシアネート基を有する化合物を含有する。以下に、その詳細を説明する。
【0020】
【化2】

(一般式(I)中、Rは四価の有機基、Rは二価の有機基を示し、R又はRの少なくとも1つは脂環式基を有する。)
【0021】
[(a)ポリイミド前駆体]
本発明に係る(a)ポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸二無水和物及びその誘導体から選ばれる少なくとも一種のテトラカルボン酸類と、少なくとも一種のジアミン類とを重合させることにより得られるポリアミド酸である。
【0022】
本発明で用いるポリイミド前駆体の合成に用いられるテトラカルボン酸類としては、芳香族テトラカルボン酸、脂肪族テトラカルボン酸及び脂環式テトラカルボン酸が挙げられる。具体的には、(トリフルオロメチル)ピロメリット酸、ジ(トリフルオロメチル)ピロメリット酸、ジフェニルピロメリット酸、ジメチルピロメリット酸、ビス[3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェノキシ]ピロメリット酸、2,3,3′,4′−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3′,4,4′−テトラカルボキシジフェニルエーテル、2,3′,3,4′−テトラカルボキシジフェニルエーテル、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,6,7−テトラカルボキシナフタレン、1,4,5,7−テトラカルボキシナフタレン、1,4,5,6−テトラカルボキシナフタレン、3,3′,4,4′−テトラカルボキシジフェニルメタン、3,3′,4,4′−テトラカルボキシジフェニルスルホン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、5,5′−ビス(トリフルオロメチル)−3,3′,4,4′−テトラカルボキシビフェニル、2,2′,5,5′−テトラキス(トリフルオロメチル)−3,3′,4,4′−テトラカルボキシビフェニル、5,5′−ビス(トリフルオロメチル)−3,3′,4,4′−テトラカルボキシジフェニルエーテル、5,5′−ビス(トリフルオロメチル)−3,3′,4,4′−テトラカルボキシベンゾフェノン、ビス〔(トリフルオロメチル)ジカルボキシフェノキシ〕ベンゼン、ビス(ジカルボキシフェノキシ)ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、ビス(ジカルボキシフェノキシ)テトラキス(トリフルオロメチル)ベンゼン、3,4,9,10−テトラカルボキシペリレン、2,2−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、2,2−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)テトラメチルジシロキサン、ジフルオロピロメリット酸、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)オクタフルオロビフェニル、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、1,2,3,4,−シクロペンタンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、3,6−ジメチル−1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、3,6−ジフェニル−1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、1,2,3,3,4,5,6,6−オクタフルオロ−1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸等が挙げられる。これらのテトラカルボン酸は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0023】
これらの中でも、透明性の観点から1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、4,4′−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸を用いることが好ましく、耐熱性の観点から、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸、ピロメリット酸を用いることが好ましい。
【0024】
本発明で用いるポリイミド前駆体の合成において用いられるジアミン類としては、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン及び脂環式ジアミンが挙げられる。具体的には、p−フェニレンジアミン、ベンジジン、o−トリジン、m−トリジン、ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、オクタフルオロベンジジン、3,3′−ジヒドロキシ−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジメトキシ−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジフルオロ−4,4′−ジアミノビフェニル、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフロオロプロパン、4,4′−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフォン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルフォン、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4′−ジアミノベンゾフェノン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、3,3′−ジアミノ−ジフェニルエーテル、3,3′−ジアミノ−ビフェニル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ピペラジン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、2,2−ジメチル−プロピレンジアミン、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロへキサンメチルアミン、3(4),8(9)−ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.0]デカン等が挙げられる。これらのジアミン成分は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0025】
これらの中でも、透明性や耐熱性の観点からビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、及び2,2−ジメチルベンジジンを用いることが好ましい。
【0026】
ここで、良好な透明性を与える観点から、(a)成分において、一般式(I)中のRが4価の脂環式基であり、Rが2価の芳香族基であること、又は一般式(I)中のRが4価の芳香族基であり、Rが2価の脂環式基であることが好ましい。このような(a)成分を合成するためには、テトラカルボン酸成分が芳香族基である場合には脂環式基含有ジアミンを、テトラカルボン酸成分が脂環式基である場合には芳香族基含有ジアミンを用いる。
【0027】
また、本発明に係る(a)ポリイミド前駆体は、ポリマー末端構造が、後に記述する(b)成分と架橋反応を起こし得る官能基を有することが好ましい。この官能基は、樹脂の繰り返し単位を構成するテトラカルボン酸成分や、ジアミン成分由来のもので、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基又はイソシアネート基等である。この(a)成分のポリマー末端と(b)成分との架橋反応が、加熱成形後の樹脂組成物に良好な機械特性を与えると考えられる。ここで、末端カルボキシル基がアミノ基よりもモル比率で5倍以上あるものを『カルボキシル基末端である(a)成分』とし、末端アミノ基がカルボキシル基よりもモル比率で5倍以上あるものを『アミノ基末端である(a)成分』とする。カルボキシル基末端である(a)成分は、合成時のジカルボン酸/ジアミン(ビスアミノフェノール)の比率を50/49より大きくすることにより得られ、アミノ基末端である(a)成分は合成時のジアミン(ビスアミノフェノール)/ジカルボン酸の比率を50/49よりも大きくすることにより得られる。ジカルボン酸及びジアミンを当量用いて(a)の合成を行った場合、カルボキシル基末端である(a)成分とアミノ基末端である(a)成分が合成され、末端基同士が反応してしまうため、安定性が低下し、さらに耐薬品性、耐熱性及び機械特性が低下する傾向がある。(a)成分中のアミノ基の存在はH NMRの積分値により容易に定量することが出来る。
【0028】
[(a)ポリイミド前駆体合成)]
本発明に係わる(a)成分のポリイミド前駆体であるポリアミド酸は、従来公知の合成方法で合成することができる。例えば、溶媒に所定量のジアミン類を溶解させた後、得られたジアミン溶液に所定量のテトラカルボン酸無水物を添加し、撹拌する。各モノマー成分を溶解させるときには、必要に応じて加熱してもよい。反応温度は−30〜200℃であることが好ましく、20〜180℃であることがより好ましく、30〜100℃であることが特に好ましい。そのまま室温、あるいは適当な反応温度で撹拌を続け、ポリアミド酸の粘度が一定になった時点を反応の終点とする。粘度はE型粘度計(東機産業株式会社製、回転式粘度系)を用い、25℃にて測定した。前記反応は、使用するテトラカルボン酸無水物とジアミン類の種類にもよるが、通常3〜100時間で完了できる。得られたポリアミド酸を含有する溶液(ポリイミド前駆体、以下、ポリアミド酸溶液という)の全量に対するポリアミド酸成分(以下、溶質という)の含有量(以下、残存固形分という)は、塗膜形成性の観点から5〜60質量%であることが好ましく、10〜50質量%であることがさらに好ましく、10〜40質量%であることが特に好ましい。このポリアミド酸溶液中の溶質の含有量は、あらかじめ質量の分かっている金属シャーレにポリアミド酸溶液をとり質量(金属シャーレ及びポリアミド酸の質量、以下、加熱前の質量という)を測定し、その後200℃のホットプレート上で2時間加熱して溶媒が十分に揮発したあとの質量(金属シャーレ及び溶質の質量、以下、加熱後の質量という)を測定し、(加熱後の質量−金属シャーレの質量)÷(加熱前の質量−金属シャーレの質量)×100を計算することで求められる。
【0029】
本発明に係わるポリアミド酸を合成する場合に用いられる有機溶媒は、ジアミン類とテトラカルボン酸類、および生じたポリアミド酸(ポリイミド前駆体)を溶解することのできる溶媒であれば特に制限はされない。このような有機溶媒の具体例としては、非プロトン性溶媒、フェノール系溶媒、エーテル及びグリコール系溶媒等が挙げられる。具体的には、非プロトン性溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、テトラメチル尿素等のアミド系溶媒;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等のラクトン系溶媒;ヘキサメチルホスホリックアミド、ヘキサメチルホスフィントリアミド等の含りん系アミド系溶媒;ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ピコリン、ピリジンなどの3級アミン系溶媒;酢酸などのエステル系溶媒等が挙げられる。フェノール系溶媒としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール等が挙げられる。エーテル及びグリコール系溶媒としては、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン、ビス[2−(2−メトキシエトキシ)エチル]エーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。なかでも、溶解性や塗膜形成性の観点からN−メチル−2−ピロリドンが好ましい。これらの反応溶媒は単独で又は2種類以上混合して用いてもよい。
【0030】
本発明に係わるポリアミド酸の分子量は、重量平均分子量で10000〜500000であることが好ましく、10000〜300000であることがより好ましく、20000〜200000であることが特に好ましい。ここで、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC、装置は株式会社日立製作所製、カラムは日立化成工業株式会社製ゲルパック)を用いて、標準ポリスチレン換算により求めた。分子量が10000未満では、加熱成形により膜を成形しにくく、膜を成形できても機械特性に乏しくなる。分子量が500000を超えて大きいと、ポリアミド酸の合成時に分子量をコントロールするのが難しく、また適度な粘度の樹脂組成物を得ることが難しくなる。
【0031】
本発明に係わるポリアミド酸溶液の粘度は、25℃で500〜200000mPa・sであることが好ましく、2000〜100000mPa・sであることがより好ましく、5000〜30000mPa・sであることが特に好ましい。粘度が500mPa・s未満では膜形成の際の塗布がしにくく、200000mPa・sを超えると合成の際の撹拌が困難になるという問題が生じる。ポリアミド酸合成の際に200000mPa・sよりも高い粘度となった場合、反応終了後に溶媒を添加して撹拌し希釈することで、作業性のよい粘度のポリアミド酸を得ることができる。
【0032】
[(b)エポキシ基、オキセタニル基又はブロックイソシアネート基を有する化合物]
(b)成分は、(a)ポリイミド前駆体の末端の官能基と架橋反応し高分子量化して、加熱成形後の樹脂組成物の耐熱性や機械的物性の向上等に寄与しているものと推測している。このような(b)成分としては、オキセタニル基含有化合物、エポキシ基含有化合物、ブロックイソシアネート基含有化合物等が挙げられる。中でも、ポリイミド前駆体の官能基との反応性の観点から、エポキシ基含有化合物を用いることが好ましい。
【0033】
エポキシ基含有化合物としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、フェノールノボラック型グリシジルエーテル化物、クレゾールノボラック型グリシジルエーテル化物等のポリフェノール型エポキシ化合物;アニリン、トルイジン、メチレンジアミン、アミノフェノール等のアニリン誘導体のグリシジルアミン型エポキシ化合物;フタル酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル、トリメシン酸トリグリシジルエステル、ピロメリット酸テトラグリシジルエステル等のグリシジルエステル型エポキシ化合物;1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジグリシジルエステル、3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジグリシジルエステル、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジクリジシルエステル、3−メチルヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、4−メチルヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸トリグリシジルエステル、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸テトラグリシジルエステル等の脂環式ポリカルボン酸グリシジルエステル;グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールテトラグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル型エポキシ化合物;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のイソシアヌル型エポキシ化合物;水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル等の水添ポリフェノール型エポキシ化合物;1−ビニル−3−シクロヘキセンジオキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルヘキシル)アジペート、テトラキス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)ブタンテトラカルボキシレート、ジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)−4,5−エポキシテトラヒドロフタレート)、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エチレンビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート)、リモネンジオキサイド、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)、1,2,5,6−シクロオクタジエンジオキサイド、ジシクロペンタジエンジオキサイド等の脂環式エポキシ化合物が挙げられる。
【0034】
(b)成分としてエポキシ基含有化合物を用いる場合は、ポリフェノール型エポキシ基含有化合物が反応性の観点から好ましく、ビスフェノールAジグリシジルエーテルが好ましい。特に、膜の機械特性(特に伸び)の観点から2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジグリシジルエーテルが好ましい。これらは、単独で又は2種以上併用して使用することができる。
【0035】
オキセタニル基含有化合物としては、1分子中に2個以上のオキセタニル基を含有する化合物が好ましい。1分子中に2個のオキセタニル基を有する化合物としては、下記一般式(2)で示される化合物等が挙げられる。
【0036】
【化3】

【0037】
一般式(2)において、R11は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基或いはブチル基等の炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数1〜6個のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基又はチエニル基である。R13は、例えば、エチレン基、プロピレン基或いはブチレン基等の線状或いは分枝状アルキレン基、ポリ(エチレンオキシ)基或いはポリ(プロピレンオキシ)基等の線状或いは分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基、プロペニレン基、メチルプロペニレン基或いはブテニレン基等の線状或いは分枝状不飽和炭化水素基、カルボニル基、カルボニル基を含むアルキレン基、カルボキシル基を含むアルキレン基又はカルバモイル基を含むアルキレン基等である。
【0038】
また、R13は、下記一般式(3)〜(14)で示される基から選択される多価基でもある。
【0039】
【化4】

【0040】
一般式(3)において、R14は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基或いはブチル基等の炭素数1〜4個のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基或いはブトキシ基等の炭素数1〜4個のアルコキシ基、塩素原子或いは臭素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルキルカルボキシル基、カルボキシル基、又はカルバモイル基である。
【0041】
【化5】

【0042】
一般式(4)において、R15は、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、
【0043】
【化6】

である。
【0044】
【化7】

【0045】
一般式(5)において、R16は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基或いはブチル基等の炭素数1〜4個のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基或いはブトキシ基等の炭素数1〜4個のアルコキシ基、塩素原子或いは臭素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルキルカルボキシル基、カルボキシル基、又はカルバモイル基である。
【0046】
【化8】

【0047】
一般式(6)において、R17は、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、
【0048】
【化9】


である。
【0049】
【化10】

【0050】
一般式(7)及び一般式(8)において、R18は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基或いはブチル基等の炭素数1〜4個のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基或いはブトキシ基等の炭素数1〜4個のアルコキシ基、塩素原子或いは臭素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルキルカルボキシル基、カルボキシル基又はカルバモイル基である。さらにR18は、ナフタレン環に2〜4ヶ置換していてもよい。
【0051】
【化11】

【0052】
2個のオキセタニル基を有する化合物において、上記した化合物以外の好ましい例としては、下記一般式(15)で示される化合物がある。なお、一般式(15)において、R11は、前記一般式(2)におけるものと同様の基である。
【0053】
【化12】

【0054】
3〜4個のオキセタニル基を有する化合物としては、下記一般式(16)で示される化合物等が挙げられる。
【0055】
【化13】

【0056】
一般式(16)において、R11は、前記一般式(2)におけるものと同様の基であり、mは3又は4である。R19は、例えば、下記一般式(17)式(18)及び式(19)で示される基等の炭素数1〜12の分枝状アルキレン基、下記一般式(20)で示される基等の分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基が挙げられる。
【0057】
【化14】


〔一般式(17)において、R20はメチル基、エチル基又はプロピル基等の低級アルキル基である〕
【0058】
【化15】

【0059】
【化16】

【0060】
【化17】


〔一般式(20)において、nは1〜10の整数である〕
【0061】
本発明で用いるオキセタニル基を含有する化合物の好ましい具体例としては、以下に示す化合物が例示される。
【0062】
【化18】

【0063】
【化19】

【0064】
また、これら以外にも、分子量1000〜5000程度の比較的高分子量の1〜4個のオキセタニル基を有する化合物も挙げられる。さらにオキセタニル基を含むポリマーとして、側鎖にオキセタニル基を有するポリマー(例えば、K.Sato,A.Kameyama and T.Nishikubo,Macromolecules,25,1198(1992)を参照)等も同様に用いることが出来る。なお、本発明では2種類以上のオキセタニル基を有する化合物を組み合わせて使用することができる。
(b)成分としてオキセタニル基含有化合物を用いる場合は、一般式(15)で、R11が水素である3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタンがより好ましい。
【0065】
ブロックイソシアネート基含有化合物は、ポリイソシアネート化合物にある種の活性水素を有する化合物(ブロック剤)を反応させた常温で安定な化合物である。
ポリイソシアネート化合物として、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルスルホンジイソシアネート、トリフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、3−イソシアネートエチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、3−イソシアネートエチル−3,5,5−トリエチルシクロヘキシルイソシアネート、ジフェニルプロパンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、3,3′−ジイソシアネートジプロピルエーテル、トリフェニルメタントリイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4′−ジイソシアネート等が挙げられ、これを活性水素を有する化合物として、フェノール、キシレノール等のフェノール類、オキシム類、イミド類、ピラゾール類、メルカプタン類、アルコール類、ε−カプロラクタム、エチレンイミン、α−ピロリドン、マロン酸ジエチル、亜硫酸水素ナトリウム、ホウ酸などでブロック化したものなどが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
本発明では、ブロックイソシアネート基含有化合物は、一般式(II)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0066】
【化20】

(式中、R11、R12、R13は、それぞれ独立してアルキレン基、置換アルキレン基、アルキレンオキサイド基、アリーレン基又は置換アリーレン基を示し、R14、R15及びR16は、それぞれ独立してイソシアネート基と活性水素を有する化合物が反応した際に得られる残基を示す。)
【0067】
前記一般式(II)において、R11、R12及びR13における炭素数1〜12のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、t−ブチレン基、ペンチレン基、ネオペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、2−エチルヘキシレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基等が挙げられる。
また、炭素数1〜12のアルキレン基は、脂環を含んでいてもよく、また、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子で置換されていてもよい。また、R11、R12及びR13における炭素数6〜14のアリーレン基としては、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基、ジエチルナフチレン基等が挙げられる。また、炭素数6〜14のアリーレン基は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子で置換されていてもよい。上記活性水素を有する化合物(ブロック剤)としては、ジメチルケトンオキシム、ジエチルケトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム等のオキシム類、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン等のβ−ジケトン類、フェノール類、アルカノール類、ε−カプロラクタム等が挙げられる。
【0068】
前記一般式(II)で表されるブロックイソシアネート基含有化合物としては、スミジュールBL3175(一般式(I)でR11、R12及びR13がすべてヘキシレン基、R14、R15及びR16がメチルエチルオキシムのヒドロキシル基から水素原子を取り去った基である化合物;活性水素を有する化合物(ブロック剤)はメチルエチルケトオキシム)、スミジュールCTステーブル(stable)(一般式(II)でR11、R12及びR13がすべてトリレン基、R14、R15及びR16がフェノール類のヒドロキシル基から水素原子を取り去った基である化合物;活性水素を有する化合物(ブロック剤)はフェノール類)、スミジュールTPLS−2704(一般式(II)でR11、R12及びR13がすべてイソホロンジイソシアネートから2個のイソシアネート基を取り去った基、R14、R15及びR16がε−カプロラクタムから水素原子を取り去った基である化合物;活性水素を有する化合物(ブロック剤)はε−カプロラクタム)(すべて住化バイエルウレタン株式会社製、商品名)等が商業的に入手可能である。
【0069】
本発明において、(b)成分としてブロックイソシアネート基含有化合物を用いる場合は、スミジュールBL3175を用いることが好ましい。
【0070】
(b)成分の含有量は、(a)ポリアミド酸(溶質、ポリイミド前駆体)100質量部に対して、0.001〜20質量部であることが好ましく、0.005〜18質量部であることがより好ましく、0.01〜15質量部であることが特に好ましい。(b)成分が0.001質量部未満では機械特性が劣る傾向にあり、20質量部を超えて多いと膜が硬く脆くなり、機械特性に劣る傾向がある。
【0071】
本発明の樹脂組成物は、塗膜形成性や保存安定性向上の目的で、ポリアミド酸合成溶媒以外の(c)有機溶媒を含有することが好ましい。
【0072】
(c)有機溶媒は、本発明のポ樹脂組成物を溶解できるものであれば特に制限はなく、このような溶媒としては前記(a)ポリアミド酸(ポリイミド前駆体)の合成時に用いることのできる溶媒として記載したものを用いることができる。(a)ポリアミド酸の合成時に用いられる反応溶媒と同一でも異なってもよい。(c)成分の含有量は樹脂組成物の25℃における粘度が、0.5Pa・s〜100Pa・sとなるように調整して加える。
【0073】
また、(c)有機溶媒の常圧における沸点は、60〜210℃が好ましく、100〜205℃がより好ましく、140〜180℃が特に好ましい。沸点が210℃を超えて高いと、乾燥工程が長時間必要となり、60℃未満の温度では、乾燥工程において気泡が入りやすくなり、膜の表面が荒れる傾向がある。
【0074】
〔その他の成分〕
本発明による樹脂組成物は、上記(a)成分〜(c)成分の他に、(1)接着性付与剤、(2)界面活性剤又はレベリング剤等を含有しても良い。
【0075】
〔その他の成分:(1)接着性付与剤〕
本発明の樹脂組成物は、硬化膜の基板との接着性を高めるために、有機シラン化合物、アルミキレート化合物、チタネート化合物等の(1)接着性付与剤を含有しても良い。
【0076】
有機シラン化合物としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、尿素プロピルトリエトキシシラン、メチルフェニルシランジオール、エチルフェニルシランジオール、n−プロピルフェニルシランジオール、イソプロピルフェニルシランジオール、n−ブチルフェニルシランジオール、イソブチルフェニルシランジオール、tert−ブチルフェニルシランジオール、ジフェニルシランジオール、エチルメチルフェニルシラノール、n−プロピルメチルフェニルシラノール、イソプロピルメチルフェニルシラノール、n−ブチルメチルフェニルシラノール、イソブチルメチルフェニルシラノール、tert−ブチルメチルフェニルシラノール、エチルn−プロピルフェニルシラノール、エチルイソプロピルフェニルシラノール、n−ブチルエチルフェニルシラノール、イソブチルエチルフェニルシラノール、tert−ブチルエチルフェニルシラノール、メチルジフェニルシラノール、エチルジフェニルシラノール、n−プロピルジフェニルシラノール、イソプロピルジフェニルシラノール、n−ブチルジフェニルシラノール、イソブチルジフェニルシラノール、tert−ブチルジフェニルシラノール、フェニルシラントリオール、1,4−ビス(トリヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(メチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(エチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(プロピルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ブチルジヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジメチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジエチルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジプロピルヒドロキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジブチルヒドロキシシリル)ベンゼン等が挙げられる。
アルミキレート化合物としては、例えば、トリス(アセチルアセトネート)アルミニウム、アセチルアセテートアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
チタネート化合物としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等が挙げられ、これらの1種を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
これらの(1)接着性付与剤を用いる場合は、(a)成分100質量部に対して、0.1〜20質量部含有させるのが好ましく、0.5〜10質量部含有することがより好ましい。
【0078】
〔その他の成分:(2)界面活性剤又はレベリング剤〕
また、本発明の樹脂組成物は、塗布性、例えばストリエーション(膜厚のムラ)を防いだりするために、適当な(2)界面活性剤あるいはレベリング剤を添加することができる。このような界面活性剤あるいはレベリング剤としては、例えば、ポリオキシエチレンウラリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル等が挙げられる。
【0079】
市販品としては、メガファックスF171、F173、R−08(大日本インキ化学工業株式会社(DIC株式会社)製、商品名)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム株式会社製、商品名)、オルガノシロキサンポリマーKP341、KBM303、KBM403、KBM803(信越化学工業株式会社製、商品名)等が挙げられる。
【0080】
樹脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、(a)ポリアミド酸(ポリイミド前駆体)を合成した時の反応溶媒と(c)有機溶媒が同一の場合には、(a)ポリアミド酸溶液に、室温(25℃)〜80℃の温度範囲で、(b)成分及び必要に応じて他の添加剤を添加して、攪拌混合する方法が挙げられる。この攪拌混合は撹拌翼を備えたスリーワンモータ(新東科学株式会社)、自転公転ミキサー等の装置を用いることができる。また必要に応じて40〜100℃の熱を加えても良い。(a)ポリアミド酸を合成した時の反応溶媒と(c)有機溶媒が異なる場合には、合成したポリアミド酸溶液中の反応溶媒を、再沈殿や溶媒留去の方法により除去し、(a)ポリアミド酸を得た後に、室温〜80℃の温度範囲で、(b)成分、(c)有機溶媒及び必要に応じて他の添加剤を添加して、攪拌混合することにより得る方法が挙げられる。
【0081】
本発明の樹脂組成物は、熱の作用により(b)成分が、(a)成分のポリイミド前駆体の末端の官能基と架橋反応し高分子量化して、加熱成形後の樹脂組成物の耐熱性や機械的物性の向上等に寄与しているものと推測している。また、熱の作用によりポリイミド前駆体(a)成分と架橋し得る化合物(b)は、通常120℃以上に加熱することにより反応が進行するため、常温及び低温(10℃以下)での保存条件下では、保存安定性が良好であるということもできる。
【0082】
本発明の樹脂組成物の25℃における粘度は、使用用途・目的にもよるが、塗布工程における作業性の観点から、0.5Pa・s〜100Pa・sであることが好ましく、1Pa.s〜30Pa・sであることがより好ましく、5Pa.s〜20Pa.sであることが特に好ましい。
【0083】
<ポリイミド成形体>
本発明のポリイミド成形体は、本発明の樹脂組成物を塗布、乾燥して得られた樹脂膜を形成し、これを加熱処理(イミド化及び架橋)することにより得ることが出来る。また、該ポリイミド成形体は、使用用途・目的により、膜状、フィルム状、シート状等の形態から選ばれる。
【0084】
ポリイミド成形体の製造方法は、(1)本発明の樹脂組成物を基材上に塗布する工程、(2)塗布した樹脂膜を80〜200℃の熱で乾燥し、樹脂膜を形成する工程、(3)300℃以上の加熱により、樹脂組成物中のポリイミド前駆体をイミド化及び架橋する加熱処理する工程からなる。
(1)塗布工程
塗布工程で使用される塗布方法は、特に制限はなく、所望の塗布厚や樹脂組成物の粘度などに応じて、公知の塗布方法を適宜選択して使用できる。具体的には、ドクターブレードナイフコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、ロータリーコーター、フローコーター、ダイコーター、バーコーター等の塗布方法、スピンコート、スプレイコート、ディップコート等の塗布方法、スクリーン印刷やグラビア印刷等に代表される印刷技術を応用することもできる。樹脂組成物を塗布する基材としては、その後の工程の乾燥温度における耐熱性を有し、剥離性が良好であれば特に限定されない。膜状のポリイミド成形体ではステンレス板などの金属板、ガラスやシリコンウエハなどからなる被コーティング物が挙げられ、フィルム状及びシート状のポリイミド成形体ではPET(ポリエチレンテレフタレート)やOPP(延伸ポリプロピレン)などからなるプラスチックフィルム支持体が挙げられる。基材としては他に、ガラス基板、ステンレス、アルミナ、銅、ニッケル等の金属基板、ポリエチレングリコールテレフタレート、ポリエチレングリコールナフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンスルフィド等の樹脂基板などが用いられる。塗布工程は樹脂膜中に残留した有機溶媒が除去され、イミド化反応が進行するとともに、熱の作用により架橋剤とポリアミド酸との反応が進行し始める工程でもある。
【0085】
樹脂組成物の塗布厚は、目的とする成形体の厚さと樹脂組成物中の樹脂不揮発分の割合により適宜調整されるものであるが、通常1〜1000μm程度である。塗布工程は、通常室温で実施されるが、粘度を下げ、作業性を良くする目的で樹脂組成物を40〜80℃の範囲で加温して実施してもよい。
【0086】
(2)乾燥工程
塗布工程に続き、(2)乾燥工程を行う。乾燥工程は、主として有機溶媒除去と、イミド化・架橋反応の目的で行われる。乾燥工程は箱型乾燥機やコンベヤー型乾燥機などの装置を利用することが出来き、80〜200℃で行うことが好ましく、100〜150℃で行うことがより好ましい。
【0087】
(3)加熱工程
続いて(3)加熱工程を行う。この加熱工程は(2)乾燥工程で樹脂膜中に残留した有機溶媒の除去を行うとともに、樹脂組成物中のポリアミド酸のイミド化反応を進行させ、さらに(b)成分と(a)成分との架橋反応を進行させる工程である。加熱工程は、イナートガスオーブンや箱型乾燥機、コンベヤー型乾燥機などの装置を用いて行う。またこの工程は前記(2)乾燥工程と同時に行っても、逐次的に行っても良い。空気雰囲気下でも良いが、安全性及び酸化防止の観点から、不活性ガス雰囲気下で行うことが推奨される。不活性ガスとしては窒素、アルゴンなどが挙げられる。加熱温度は、(C)有機溶媒の種類にもよるが、250〜400℃が好ましく、300〜350℃であることがより好ましい。250℃より低いとイミド化が不十分となり、400℃より高いと膜が着色しやすくなる問題が生じる恐れがある。加熱時間は、通常0.5〜3時間程度である。
【0088】
また、フィルム状及びシート状のポリイミド成形体を製造するためには、(3)加熱工程の後、(4)基材から樹脂組成物を剥離する剥離工程が必要となる。この剥離工程は、基材上の成形体を室温〜50℃程度まで冷却後、実施される。剥離作業を容易に実施するため、本発明の樹脂組成物を塗布する前に、必要に応じて基材へ離型剤を塗布しておいてもよい。係る離型剤としては、植物油系、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系等が挙げられる。また、基材としてポリエチレングリコールテレフタレート(PET樹脂)を使用した場合には、特に離型剤を用いることなく、良好な剥離性を得ることができる。
【0089】
本発明に係るポリイミド成形体の製造方法によれば、膜厚1〜500μmの透明ポリイミド成形体を製造することができる。膜厚1〜100μmのポリイミド成形体を製造することが、本発明の効果をより向上させるため、好ましい。
【0090】
本発明のポリイミド成形体の製造後の残存有機溶媒量は、2質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下が特に好ましい。
【0091】
本発明で得られる透明性ポリイミド成形体の機械的物性は、引張弾性率が幅方向及び操作方向共に1.5GPa以上であることが好ましく、1.7〜2.5GPaであることがより好ましい。引張強さは45MPa以上であることが好ましく、50〜100MPaであることがより好ましい。破断伸びは8%以上であることが好ましい。これらの機械特性は全て引っ張り試験装置の引っ張り試験により求めることができる。ポリイミド成形体がこれらの機械的物性を有していれば、光通信分野、表示装置分野に利用されるフィルム状及びシート状のポリイミド成形体としては十分な靭性を有するとされ、実用的に用いることが出来る。
【0092】
本発明のポリイミド成形体の線熱膨張係数は、幅方向及び操作方向共に、1〜60ppmであることが好ましく、5〜30ppmであることがより好ましい。線熱膨張係数は、市販のTMA(熱機械分析装置)測定を行い求められる。透明性ポリイミド成形体を被コーティング物と一体とした状態で使用される場合、該ポリイミド成形体の線熱膨張係数はその被コーティング物と同程度となるように調整することが好ましい。
【0093】
本発明のポリイミド成形体のガラス転移温度(Tg)は、通常、250〜400℃、好ましくは300〜400℃が推奨される。光通信分野、表示装置分野に利用されるフィルム・シート形態のポリイミド成形体として十分な耐熱性を有すると評される値である。ガラス転移温度は、後述の実施例に記載した方法にて得られた値である。
【0094】
<プラスチック基板及び保護膜/電子部品>
本発明のプラスチック基板及び保護膜は、上記ポリイミド成形体からなることを特徴とする。その製造方法は、上記したポリイミド成形体の製造方法を用いることができる。
【0095】
プラスチック基板及び保護膜は、本発明のポリイミド成形体が耐熱性、透明性及び靭性を有することから、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ等の電子部品に使用することができる。また、電子ペーパーなどの、フレキシブルディスプレイ基板、カラーフィルター用保護膜等として用いることもできる。さらに、透明伝導フィルム基板、TFT基板などのガラス基板代替として、表示装置分野に利用できる。また光ファイバー、光導波路などの光通信分野にも利用可能である。さらに、太陽電池の保護膜としても用いることができる。
【実施例】
【0096】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0097】
合成例1〜4において、合成したポリマーの重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC、装置は、株式会社日立製作所製、カラムは日立化成工業株式会社製ゲルパック)を用いて、標準ポリスチレン換算により求めた。
【0098】
(ポリマーIの合成)
攪拌機、温度計を備えた0.2リットルのフラスコ中に、N−メチルピロリドン(NMP)56g(564mmol)と2,2′−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン14g(43.7mmol)を仕込み、撹拌溶解した後、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物10g(44.6mmol)を添加し、十分攪拌し完全に溶解させた。その後、分子量が一定となるまで約70時間撹拌しカルボキシル基を末端に持つポリアミック酸(ポリイミド前駆体)を得た(以下、ポリマーIとする)。ポリマーIのGPC法標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は89,000、分散度は2.4であった。
【0099】
(ポリマーII〜IVの合成)
ポリマーIと同様に、表1に示すように配合を行い、ポリマーII〜IVを合成した。
用いたアミン1〜3及び酸1、2は、下記のものである。
アミン1:2,2′−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン
アミン2:trans−1,4−ジアミノシクロヘキサン
アミン3:2,2′−ジメチルベンジジン
酸1:シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物
酸2:ビフェニル−3,3′,4,4′−テトラカルボン酸二無水物
【0100】
【表1】

【0101】
(重量平均分子量の測定条件)
以下の装置及び条件にて、GPCにより各ポリマーの重量平均分子量を測定した。
測定装置:検出器 株式会社日立製作所製L4000 UV
ポンプ:株式会社日立製作所製L6000
レコーダー:株式会社島津製作所製C−R4A Chromatopac
測定条件:カラム Gelpack GL−S300MDT−5 x2本
溶離液:THF/DMF=1/1(容積比)
LiBr(0.03mol/l)、H3PO4(0.06mol/l)
流速:1.0ml/分、検出器:UV270nm
ポリマー0.5mgに対して溶媒[THF/DMF=1/1(容積比)]1mlの溶液を用いて測定した。
【0102】
(実施例1)
ポリマーIを塗布しやすい粘度までNMPで希釈し、残存固形分(NV)を測定したところ23質量%であった。残存固形分は、あらかじめ質量の分かっている金属シャーレにポリアミド酸溶液をとり質量(金属シャーレ及びポリアミド酸の質量、以下、加熱前の質量という)を測定し、その後200℃のホットプレート上で2時間加熱して溶媒が十分に揮発したあとの質量(金属シャーレ及び溶質の質量、以下、加熱後の質量という)を測定し、(加熱後の質量−金属シャーレの質量)÷(加熱前の質量−金属シャーレの質量)×100を計算することで求められる。これを7.0gとり、そこに2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジグリシジルエーテル(東京化成工業株式会社製)を0.0805g(ポリマーに対し5質量%)添加し、十分撹拌後5μmのフィルターでろ過を行った。得られた樹脂組成物をシリコンウエハ上にスピンコートして、120℃で3分間乾燥し、乾燥膜厚14〜18μmの塗膜を形成した。これをさらにイナートガスオーブンを用いて窒素雰囲気中フルキュアし、キュア膜厚9〜11μmの硬化膜Aを得た。イナートガスオーブンによるフルキュアの条件は以下の通りである。
【0103】
(イナートガスオーブンによるフルキュアの条件)
装置:光洋サーモシステム株式会社製イナートガスオーブン
条件:昇温 室温(25℃)〜200℃(5℃/分)
ホールド 200℃(20分)
昇温 200℃〜300℃(5℃/分)
ホールド 300℃(60分)
冷却 300℃〜室温(60分)
【0104】
次に4.9質量%フッ酸水溶液を用いて、この硬化膜Aをシリコンウエハより剥離し、水洗、乾燥した後、ガラス転移点(Tg)、破断伸び、透過率の膜物性をそれぞれ測定した。Tgはセイコーインスツル株式会社製TMA/SS6000を用い、昇温速度5℃/分にて熱膨張の変曲点より求めた。破断伸びは、株式会社島津製作所製オートグラフAGS−100NHを用いて引っ張り試験より求めた。また、透過率はU-3310 株式会社日立製作所製スペクトロフォトメーターを用いて測定し、Lambert−Beerの法則を用いて10μm換算した値を求めた。
【0105】
(実施例2〜7、比較例1〜2)
実施例1と同様の方法で実施例2〜7及び比較例1〜2の硬化膜を得た。その配合及び測定結果を表2、3に示した。用いた(b)成分のエポキシ基、オキセタニル基又はブロックイソシアネート基を有する化合物(架橋剤)1〜3は、下記のものである。
架橋剤1:2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジグリシジルエーテル(東京化成工業株式会社製)
架橋剤2:3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン(東亞合成株式会社製)
架橋剤3:スミジュールBL3175(製品名、住化バイエルウレタン株式会社製、下記一般式(III))
【0106】
【化21】

【0107】
【表2】

【0108】
【表3】

※膜が脆弱なため、測定不可能だった。
【0109】
実施例1〜7のように、脂環式基の構造を有するポリアミド酸と架橋剤((b)成分)を用いると、透過率、膜物性がともに良好な硬化膜が得られることが分かった。架橋剤1(エポキシ基含有化合物)を用いた実施例1、4及び7では、特に良好な破断伸びを有する硬化膜を得ることができた。一方、比較例1のように脂環式基の構造を有しないポリアミド酸を用いた場合、透過性が低下することが分かった。また、架橋剤を用いない、比較例2では、硬化膜が脆くなることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0110】
以上のように、本発明にかかる樹脂組成物を加熱硬化した膜は、耐熱性、透明性に優れ、さらに伸びなどの機械特性に優れているため、フレキシブルディスプレイ基板や保護膜等として好適に用いることができる。該基板又は保護膜を備えた電気・電子部品(各種電子デバイスにおける電気絶縁膜および液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、電子ペーパー、太陽電池など)の提供が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)一般式(I)で示される繰り返し単位で、繰り返し単位中に少なくとも1つは脂環式基を有するポリイミド前駆体及び、(b)エポキシ基、オキセタニル基又はブロックイソシアネート基を有する化合物を含有する樹脂組成物。
【化1】

(一般式(I)中、Rは四価の有機基、Rは二価の有機基を示し、R又はRの少なくとも1つは脂環式基を有する。)
【請求項2】
前記(b)成分が2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジグリシジルエーテル又は3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタンである請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(a)成分におけるポリマー末端構造が、カルボキシル基、アミノ基、ヒドロキシル基又はイソシアネート基である請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記(a)成分において、一般式(I)中のRが4価の脂環式基であり、Rが2価の芳香族基である請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記(a)成分において、一般式(I)中のRが4価の芳香族であり、Rが2価の脂環式基である請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記(a)成分100質量部に対して、前記(b)成分0.01〜15質量部を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
さらに、(c)有機溶媒を含有する、請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物を架橋反応させ得られるポリイミド成形体。
【請求項9】
請求項8に記載のポリイミド成形体からなるプラスチック基板。
【請求項10】
請求項8に記載のポリイミド成形体からなる保護膜。
【請求項11】
請求項9に記載のプラスチック基板又は請求項10に記載の保護膜を有する電子部品。
【請求項12】
請求項9に記載のプラスチック基板又は請求項10に記載の保護膜を有する表示装置。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物を基材上に塗布、乾燥して樹脂膜を形成する工程と、前記乾燥後の樹脂膜を加熱処理する工程とを含むポリイミド成形体の製造方法。

【公開番号】特開2012−184281(P2012−184281A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46286(P2011−46286)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(398008295)日立化成デュポンマイクロシステムズ株式会社 (81)
【Fターム(参考)】