説明

樹脂被覆アルミニウム合金板及びその製造方法

【課題】DI成形を施し塗装焼付を行う飲料缶胴用に好適な、強度および成形性の優れた樹脂被覆アルミニウム合金板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】Mgを0.4mass%以上0.8mass%以下、Siを0.5mass%より多く1.5mass%以下、Cuを0.01mass%以上0.4mass%以下及びMnを0.01mass%以上0.4mass%未満含有し、残部Alと不可避的不純物とからなるAl合金から構成されるアルミニウム合金板と、当該アルミニウム合金板の表面に被覆された樹脂フィルムとを備え、200℃で10分間の熱処理を施した後の耐力が260MPa以上であることを特徴とする樹脂被覆アルミニウム合金板、ならびに、その製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料缶胴などに好適に用いられる樹脂被覆アルミニウム合金板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料缶等には、アルミニウム合金板に塗油を施し、カッピング、DI(Drawingand Ironing:深絞りとしごき)成形を施して缶胴とし、トリミング、洗浄、乾燥、外面及び内面の塗装焼付処理、ネッキング、ならびに、フランジ加工を行い、これに飲料を充填し、缶蓋の巻き締めを行った2ピ−ス缶が多く用いられている。また、最近では、生産性向上及び作業環境改善を目的として、DI成形前のアルミニウム合金板に樹脂フィルムを被覆し、DI成形後の洗浄、乾燥、外面及び内面の塗装焼付処理工程を省略する方法がとられるようになっている。前述のアルミニウム合金板はアルミニウム合金鋳塊を均質化処理後に熱間圧延を行い、必要に応じて焼鈍を施し、次いで冷間圧延を行うことで製造される。
【0003】
近年、飲料缶のコストダウンの必要性から、飲料缶胴用アルミニウム合金板については薄肉化と高強度化が進んでいる。加えて、成形加工時には成形加工性が良好で、さらに塗装焼付処理時における加熱による強度低下がない等の特性が要求されている。
【0004】
従来、飲料缶胴の用途には、Al−Mn−Mg系のJIS3004合金等の非熱処理型アルミニウム合金が用いられていた。しかしながら、JIS3004合金では塗装焼付処理時の加熱により強度低下が生じるという欠点があった。
【0005】
このため、時効硬化により塗装焼付処理後の強度向上を図ることができるAl−Mg−Si系合金を使用した飲料缶胴用アルミニウム合金板とその製造方法が、例えば、特許文献1に提案されている。この製造方法では、アルミニウム合金板の必須元素としてのMg、Si、Cu、Mn、Znの各含有量を規定するとともに、最終の冷間圧延の温度、ならびに、中間焼鈍後から最終の冷間圧延前までの冷間圧延温度を規定することが記載されている。しかしながら、最終の冷間圧延温度が100〜200℃と高く、塗装焼付処理後の強度に優れるアルミニウム合金板を製造する点では未だ不十分であり改善の余地を残していた。
【0006】
特許文献2には、従来のAl−Mn−Mg系のアルミニウム合金を通常のDI缶胴用材料として使用する場合、DI成形時の成形性向上のために伸び率を確保する目的で、アルミニウム合金板の回復が進むように冷間圧延後の温度を規定することが記載されている。
【0007】
しかしながら、本発明のような樹脂被覆アルミニウム合金板においては、樹脂フィルムをアルミニウム合金板に被覆する際に加熱処理が施されることが多く、そのため冷間圧延後の温度による回復が進まなくとも、樹脂被覆の際の加熱により回復が進み、DI成形時の成形性は十分に確保できる。むしろ、DI成形時の成形性向上を目的としてアルミニウム合金板の回復が進むような温度に冷間圧延後の温度を制御した場合、塗装焼付処理前に時効し、本来の塗装焼付処理時の時効硬化による強度向上が不十分となる問題が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭61−261466号公報
【特許文献2】特開2004−300537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願発明は、上記従来技術における問題に鑑み、DI成形後に塗装焼付処理を施す飲料缶胴用に好適な、強度及び成形性に優れた樹脂被覆アルミニウム合金板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究の結果、Al−Mg−Si系の熱処理型アルミニウム合金を用い、溶体化処理を施した後の冷間圧延後の温度履歴を適正化することにより、強度及び成形性に優れ、更に従来の合金よりも塗装焼付処理後の強度に優れる樹脂被覆アルミニウム合金板とその製造方法を見出し、本願発明を完成するに至ったものである。
【0011】
すなわち、本発明は請求項1において、Mgを0.4mass%以上0.8mass%以下、Siを0.5mass%より多く1.5mass%以下、Cuを0.01mass%以上0.4mass%以下及びMnを0.01mass%以上0.4mass%未満含有し、残部Alと不可避的不純物とからなるAl合金から構成されるアルミニウム合金板と、当該アルミニウム合金板の少なくとも一方の表面に被覆された樹脂フィルムとを備え、200℃で10分間の熱処理を施した後の耐力が260MPa以上であることを特徴とする樹脂被覆アルミニウム合金板とした。
【0012】
本発明は請求項2において、前記Al合金が、Tiを0.0001%以上0.1%以下、或いは、Tiを0.0001%以上0.1%以下及びBを0.0001%以上0.01%以下のいずれかを更に含有するものとした。また、本発明は請求項3において、前記樹脂フィルムをポリエステル系樹脂とした。
【0013】
本発明は請求項4において、Mgを0.4mass%以上0.8mass%以下、Siを0.5mass%より多く1.5mass%以下、Cuを0.01mass%以上0.4mass%以下及びMnを0.01mass%以上0.4mass%未満含有し、残部Alと不可避的不純物とからなるAl合金の鋳塊に均質化処理を施す工程と、当該均質化処理工程後に熱間圧延を施す工程と、当該熱間圧延工程後に1パス以上の第1の冷間圧延を施す工程と、当該第1の冷間圧延工程後に溶体化処理を施す工程と、当該溶体化処理工程後に1パス以上の第2の冷間圧延を施す工程と、当該第2の冷間圧延工程において最終板厚としたアルミニウム合金板の少なくとも一方の表面に樹脂フィルムを被覆する工程とを含み、前記第2の冷間圧延工程の各パスにおいて冷間圧延後のアルミニウム合金板の出側温度を100℃未満としその少なくとも一方の表面に樹脂フィルムを被覆することを特徴とする樹脂被覆アルミニウム合金板の製造方法とした。
【0014】
本発明は請求項5において、Mgを0.4mass%以上0.8mass%以下、Siを0.5mass%より多く1.5mass%以下、Cuを0.01mass%以上0.4mass%以下及びMnを0.01mass%以上0.4mass%未満含有し、残部Alと不可避的不純物とからなるAl合金の鋳塊に均質化処理を施す工程と、当該均質化処理工程後に熱間圧延を施す工程と、当該熱間圧延工程後に1パス以上の第1の冷間圧延を施す工程と、当該第1の冷間圧延工程後に溶体化処理を施す工程と、当該溶体化処理工程後に1パス以上の第2の冷間圧延を施す工程と、当該第2の冷間圧延工程において最終板厚としたアルミニウム合金板の少なくとも一方の表面に樹脂フィルムを被覆する工程とを含み、前記第2の冷間圧延工程の各パスにおいて冷間圧延後のアルミニウム合金板の出側温度を100℃以上140℃以下とし2時間以内の間に100℃未満まで冷却した後に、その少なくとも一方の表面に樹脂フィルムを被覆することを特徴とする樹脂被覆アルミニウム合金板の製造方法とした。
【0015】
本発明は請求項6において、Mgを0.4mass%以上0.8mass%以下、Siを0.5mass%より多く1.5mass%以下、Cuを0.01mass%以上0.4mass%以下及びMnを0.01mass%以上0.4mass%未満含有し、残部Alと不可避的不純物とからなるAl合金の鋳塊に均質化処理を施す工程と、当該均質化処理工程後に熱間圧延を施す工程と、当該熱間圧延工程後に溶体化処理を施す工程と、当該溶体化処理工程後に1パス以上の冷間圧延を施す工程と、当該冷間圧延工程において最終板厚としたアルミニウム合金板の少なくとも一方の表面に樹脂フィルムを被覆する工程とを含み、前記冷間圧延工程の各パスにおいて冷間圧延後のアルミニウム合金板の出側温度を100℃未満としその少なくとも一方の表面に樹脂フィルムを被覆することを特徴とする樹脂被覆アルミニウム合金板の製造方法とした。
【0016】
本発明は請求項7において、Mgを0.4mass%以上0.8mass%以下、Siを0.5mass%より多く1.5mass%以下、Cuを0.01mass%以上0.4mass%以下及びMnを0.01mass%以上0.4mass%未満含有し、残部Alと不可避的不純物とからなるAl合金の鋳塊に均質化処理を施す工程と、当該均質化処理工程後に熱間圧延を施す工程と、当該熱間圧延工程後に溶体化処理を施す工程と、当該溶体化処理工程後に1パス以上の冷間圧延を施す工程と、当該冷間圧延工程において最終板厚としたアルミニウム合金板の少なくとも一方の表面に樹脂フィルムを被覆する工程とを含み、前記冷間圧延工程の各パスにおいて冷間圧延後のアルミニウム合金板の出側温度を100℃以上140℃以下とし2時間以内の間に100℃未満まで冷却した後に、その少なくとも一方の表面に樹脂フィルムを被覆することを特徴とする樹脂被覆アルミニウム合金板の製造方法とした。
【0017】
本発明は請求項8において、前記Al合金が、Tiを0.0001%以上0.1%以下、或いは、Tiを0.0001%以上0.1%以下及びBを0.0001%以上0.01%以下のいずれかを更に含有するものとした。また、本発明は請求項9において、前記樹脂フィルムをポリエステル系樹脂とした。
【発明の効果】
【0018】
本発明に用いるアルミニウム合金は、Mg、Si及びCuを適量含有することにより、DI成形後の塗装焼付処理によりMg−Si系化合物やMg−Cu系化合物をアルミニウム合金板中に微細析出させ、塗装焼付処理後における強度の優れた缶胴とすることができる。また、本発明では最終板厚まで冷間圧延を行い、その後樹脂フィルムを被覆したアルミニウム合金板に熱処理を施したときの耐力、ならびに、溶体化処理を施した後の冷間圧延後の温度履歴を規定することにより、DI成形時における成形性に優れ、塗装焼付処理後に所望の強度を具備する樹脂被覆アルミニウム合金板が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
A.樹脂被覆アルミニウム合金板
本発明に係る樹脂被覆アルミニウム合金板は、所定の合金組成を有するアルミニウム合金板とその表面に被覆された樹脂フィルムとを備え、熱処理後において所定の耐力を有する。以下に、樹脂被覆アルミニウム合金板について詳述する。
【0020】
A−1.Al合金の組成
Al合金は、Mgを0.4mass%以上0.8mass%以下、Siを0.5mass%より多く1.5mass%以下、Cuを0.01mass%以上0.4mass%以下及びMnを0.01mass%以上0.4mass%未満含有し、残部Alと不可避的不純物とからなる。以下において、「mass%」を単に「%」と記す。各成分の限定理由について説明する。
【0021】
Mg:Mg含有量は、0.4%以上0.8%以下とする。MgはAlマトリックス中に固溶し強度を高めるとともに、Si及びCuとの共存によりMg−Si系化合物あるいはMg−Cu系化合物を析出し、析出硬化による強度向上が図られる。本発明のように塗装焼付処理を施す用途においては、塗装焼付処理前の成形時には軟らかく、成形後の塗装焼付処理による加熱によりMg−Si系化合物やMg−Cu系化合物が微細に析出し強度を高める。Mgの含有量が0.4%未満では強度を高める効果が十分ではなく、0.8%を超えると強度が高くなり過ぎるとともに、加工硬化が強くなり過ぎて成形性が低下する。
【0022】
Si:Si含有量は、0.5%より多く1.5%以下とする。SiはMgとともにMg−Si系化合物を析出させて強度を向上させる効果がある。Siの含有量が0.5%以下では強度を向上させる効果が十分ではなく、1.5%を超えると強度が高くなり過ぎるとともに、Mg−Si系化合物に加えて、化合物を形成しない単体のSiの析出が多くなり過ぎて成形性が低下する。
【0023】
Cu:Cu含有量は、0.01%以上0.4%以下とする。CuはMgとの共存によりMg−Cu系化合物を析出させて強度を向上させる効果がある。Cuの含有量が0.01%未満では、強度を向上させる効果が不十分である。一方、0.4%を超えると、強度が高くなり過ぎて成形性を阻害するとともに耐食性が劣化する。
【0024】
Mn:Mn含有量は、0.01%以上0.4%未満とする。Mnは強度向上に寄与するとともに、再結晶粒の微細化により成形性を向上させるのに有効な元素である。Mnの含有量が0.01%未満では、強度向上や成形性向上の効果が不十分である。一方、0.4%以上では、晶析出物が多くなり過ぎて成形性を阻害するとともに、晶析出物を形成するためにSiが消費され、マトリックス中に固溶するSi量が減少するため時効硬化による強度の向上が図れない。
【0025】
一般のアルミニウム合金では、鋳造組織を微細化するためにTi、或いは、Ti及びBを微量添加することがあり、本発明においても微量のTi、或いは、Ti及びBを含有していてもよい。但し、Tiの含有量が0.0001%未満では、鋳造組織の微細化効果が得られず、0.1%を超えると粗大なTiAl晶出物が生じて成形性を阻害する。したがって、Ti含有量は0.0001%以上0.1%以下の範囲内とすることが好ましい。また、結晶粒微細化効果向上のためにTiとともにBを添加する場合、Bの含有量が0.0001%未満では鋳造組織の微細化効果が得られず、0.01%を超えるとTiBの粗大粒子が混入して成形性を阻害する。従って、Bの含有量は0.0001%以上0.01%以下の範囲内とすることが好ましい。
【0026】
なお、本発明において、Feが含有される場合は0.01〜0.5%とする。0.5%を超えると、晶出物が多くなりすぎて成形性を阻害するとともに、晶析出物を形成するためにSiが消費され、マトリックス中に固溶するSi量が減少するため時効硬化による強度の向上が不十分となるからである。Ti、B、及びFeの他に、Cr、Znなどの不可避的不純物元素を、それぞれ0.1%以下でかつ合計で0.5%以下含有していてもよい。
【0027】
A−2.樹脂フィルム
最終板厚まで冷間圧延を行ったアルミニウム合金板に、樹脂フィルムが被覆される。本発明に用いる樹脂フィルムは、ビスフェノールAなどの有害な環境ホルモンの放出の少ないポリエステル系樹脂が望ましい。ポリエステル系樹脂フィルムは、優れた加工性を有しているため、缶胴成形前のアルミニウム合金板に予め施すことが可能であり、DI成形性の向上も期待できる。また、缶胴成形後に防食性の保護塗装を施す場合に比して、塗装工程の能率化及び簡略化が可能となり、生産性の向上の点からも望ましい。なお、本発明において、ポリエステル系樹脂以外の樹脂フィルムとしては、ポリオレフィン系樹脂及びポリアミド系樹脂の1種又は2種以上を含んでいてもよい。
樹脂フィルムの厚さは、10〜30μmとするのが好ましい。樹脂フィルムの厚さが10μm未満では、薄過ぎて成形加工時に破損するおそれがある。一方、30μmを超えるとコスト高になってしまう。
【0028】
A−3.熱処理後における耐力
本願発明の樹脂被覆アルミニウム合金板は、前記合金組成のみならず、熱処理を施した後の耐力によっても規定される。
【0029】
樹脂被覆アルミニウム合金板を缶胴材として使用する際の缶体強度(耐圧強度)としては、樹脂被覆アルミニウム合金板に対して塗装焼付処理を施す際の熱処理条件に相当する200℃で10分間の熱処理を施した後の耐力が重要な指標となる。すなわち、樹脂被覆アルミニウム合金板にこのような熱処理を施したときの耐力が260MPa未満では、缶胴材の缶体強度が不足する。従って、本発明に係る樹脂被覆アルミニウム合金板では、200℃で10分間の熱処理を施した後における耐力を260MPa以上と規定する。
【0030】
B.樹脂被覆アルミニウム合金板の製造方法
次に、本発明に係る樹脂被覆アルミニウム合金板の製造方法について詳述する。まず、上述の合金組成を有するアルミニウム合金溶湯は、常法に従ってDC鋳造(半連続鋳造)される。
【0031】
B−1.均質化処理工程
DC鋳造により得られた鋳塊は、均質化処理が施される。均質化処理は、鋳塊の偏析を均質化する目的で行なわれる。本発明における均質化処理工程では、Mg、Si、Cuの固溶を促進させ、後工程の溶体化処理工程における溶体化を容易にする。均質化処理条件は特に規定されるものではないが、均質化処理温度が500℃未満では、前述のMg、Si、Cuの固溶が不十分となるとともに、これら元素の粗大化合物が析出する。その結果、固溶しきれないこれら元素やその化合物により、後工程の溶体化処理工程において十分な溶体化効果が得られない。一方、均質化処理温度が560℃を超えると、鋳塊内部に局部的な共晶溶融が生じるので好ましくない。均質化処理工程での保持時間については、1時間未満では鋳塊偏析を均質化することができず、48時間を超えるとコストの点で好ましくない。したがって、均質化処理条件は、500℃以上560℃以下の温度範囲で、1時間以上48時間以内、好ましくは3時間以上6時間以内の保持時間が好ましい。
【0032】
B−2.熱間圧延工程
均質化処理工程の後に引き続いて、熱間圧延が施される。熱間圧延工程は、リバース式の圧延機により粗圧延を行う工程と、その後に、シングルリバース式又はタンデム式の圧延機により、コイル状に巻き取るまでの仕上げ圧延を行う工程とからなる。本発明では、設備や条件を特に規定するものではない。しかしながら、熱間圧延工程の終了温度が300℃以上では、熱間圧延終了時において余熱によりMg−Si系化合物やMg−Cu系化合物の粗大化合物が析出する。その結果、これら粗大化合物が後工程の溶体化処理工程において固溶しきれずに十分な溶体化効果が得られない。一方、熱延性を考慮すると200℃以上とすることが好ましい。したがって、熱間圧延工程の終了温度は、200℃以上300℃以下とするのが好ましい。なお、このような温度範囲は、潤滑油の使用量、クーラントと各圧下率の配分、圧延速度等を調整することによって達成される。また、熱間圧延上がりの板厚は、巻取性を考慮すると10mm以下とするのが好ましい。
【0033】
B−3.溶体化処理工程
熱間圧延されたアルミニウム合金板は、後述する冷間圧延工程にかけられる。ここで、冷間圧延工程の途中の段階、或いは、冷間圧延工程の前段階において溶体化処理が施される。溶体化処理方法は急速加熱、急速冷却する連続焼鈍が、コイル状の板を効率よく溶体化でき、結晶粒微細化による成形性向上の点と生産性向上の点から望ましい。溶体化処理条件を特に規定するものではないが、溶体化処理は合金中へのMg、Si及びCuの固溶促進のため、加熱温度を450℃以上580℃以下とするのが好ましい。450℃未満ではMg、Si及びCuの固溶が十分に行われず強度向上に寄与しなくなるとともに、塗装焼付処理時の時効硬化性が低下する。一方、580℃を超える温度ではバーニングによるMgの局部的な溶融が起こるとともに、強度が高くなり過ぎ成形性が低下してしまう。加熱保持時間は2分間以内が好ましい。2分間を超える保持を行っても、溶体化処理の効果が飽和してしまうため不経済となる。また、過度に長い時間の保持を行うと結晶粒の粗大化によって最終板の外観劣化、或いは、成形性が低下する等の不具合が発生する場合がある。溶体化加熱後の冷却過程でのMg−Si系化合物やMg−Cu系化合物の析出を防止し最終板の強度を確保する見地から、1℃/秒以上の冷却速度で100℃以下まで冷却することが好ましい。
【0034】
B−4.冷間圧延工程
上述のように、冷間圧延工程としては、その途中の段階において溶体化処理が施される態様(以下、「第1の態様」と記す)と、その前段階において溶体化処理が施される態様(以下、「第2の態様」と記す)が採用される。第1の態様では、溶体化処理工程の前の冷間圧延工程を第1の冷間圧延工程とし、溶体化処理工程の後の冷間圧延工程を第2の冷間圧延工程とする。第1の態様では、第1及び第2の冷間圧延工程のそれぞれにおいて1パス以上の冷間圧延が行なわれる。第1の態様の第1及び第2の冷間圧延工程を合わせて、3パス程度の冷間圧延を行なうのが好ましい。一方、第2の態様では、溶体化処理工程後に1パス以上の冷間圧延工程が施される。第2の態様においても、全部で3パス程度の冷間圧延を行なうのが好ましい。
【0035】
第1の態様における第1の冷間圧延工程では、各パスにおける冷間圧延の出側温度は
80〜140℃である。80℃未満では、圧延速度が異常に遅くなり生産性を阻害するため工業的に好ましくなく、140℃を超えるとMg−Si系化合物やMg−Cu系化合物が析出し、後工程の溶体化処理工程において固溶しきれずに十分な溶体化効果が得られない。各パスにおける冷間圧延の出側温度が100℃以上の場合には、2時間以内に100℃未満まで冷却するのが好ましい。
【0036】
次に、第1の態様における第2の冷間圧延工程、ならびに、第2の態様における冷間圧延工程では、各パスにおける冷間圧延後のアルミニウム合金板の出側温度が100℃以上となると、冷間圧延後に前記Mg−Si系化合物やMg−Cu系化合物が析出してしまい、塗装焼付処理時の時効硬化性に劣り、十分な強度向上が図れない。また、成形前にこれら化合物の析出量が多くなると成形性が低下する場合もある。したがって、各パスにおける冷間圧延の出側温度は100℃未満とする。但し、出側温度が100℃以上140℃以下の場合には、100℃未満に至るまでの冷却時間が2時間以内であれば、上記Mg−Si系化合物やMg−Cu系化合物の析出が抑制できる。一方、冷却時間が2時間を超えると、塗装焼付処理時の時効硬化性が劣り十分な強度向上が図れない。なお、各パスにおける冷間圧延の出側温度が80℃未満では、圧延速度が異常に遅くなり生産性を阻害するため工業的に好ましくない。このため、本発明では、第1の態様における第2の冷間圧延工程、ならびに、第2の態様における冷間圧延工程では、各パスでの冷間圧延後のアルミニウム合金板の出側温度を100℃未満とし、或いは、出側温度が100℃以上140℃以下の場合は、100℃未満に至るまでの冷却時間を2時間以内とする。このように冷間圧延後の出側温度を適性に制御することにより、前記Mg−Si系化合物やMg−Cu系化合物の析出を抑制することが可能となり、塗装焼付処理時の良好な時効硬化性と成形性を確保することができる。
なお、第1の態様における第2の冷間圧延工程、ならびに、第2の態様における冷間圧延工程では、最終板厚までの最終圧延率を30%以上とするのが好ましい。30%未満では十分な加工硬化が得られず強度を確保できないからである。
【0037】
B−5.前処理
樹脂フィルムの密着性を向上させるため、アルミニウム合金板に前処理を施すのが好ましい。前処理としては、化成処理や陽極酸化処理が挙げられる。化成処理又は陽極酸化処理によって化成皮膜又は陽極酸化皮膜を形成することで、樹脂フィルムの密着性向上が図られる。特に化成皮膜は、簡略な設備で形成できコスト的にも有利なため、工業上特に望ましい。化成皮膜は、リン酸亜鉛法、ベーマイト法、MBV法又はEW法(アルカリ−クロム酸塩系)、アロヂン法(クロム酸塩系、リン酸−クロム酸塩系)などの各化成処理により形成される。陽極酸化皮膜は、硫酸、シュウ酸、クロム酸、有機酸などの電解液を用いた陽極酸化処理により形成される。
【0038】
B−6.樹脂フィルムの被覆
樹脂フィルムの被覆方法としては、樹脂フィルムをその融点以上に加熱してアルミニウム合金板に熱圧着する方法が好適に用いられる。熱圧着温度が200℃未満では十分な密着性が得られず、DI成形時に剥離が生じるおそれがある。一方、熱圧着温度が300℃を超える温度では、樹脂フィルムが変質してしまう。したがって、樹脂フィルムを熱圧着する温度は、200℃以上300℃以下が好ましい。
【0039】
本発明においては、樹脂フィルムを熱圧着する際の加熱により、前記Mg−Si系化合物やMg−Cu系化合物の微細な析出物が生じる。しかしながら、前述のように第1の態様における第2の冷間圧延工程、ならびに、第2の態様における冷間圧延工程での出側温度や冷却時間を規定することにより、塗装焼付処理時の時効硬化性は損なわれない。なお、樹脂フィルムを被覆する際の加熱により、DI成形前にMg−Si系化合物やMg−Cu系化合物の析出量が多少多くなっても、上述の通り樹脂フィルムを被覆することによってDI成形時の成形性が向上するため、樹脂被覆アルミニウム合金板をDI成形する際に成形性が損なわれることはない。
【0040】
B−7.塗装焼付処理
飲料缶等では、DI成形後に150℃以上250℃以下で3〜10分間程度加熱する塗装焼付処理を行うのが通常である。前記溶体化処理によりMg、Si及びCuが十分に固溶されているため、塗装焼付処理によってMg−Si系化合物やMg−Cu系化合物の微細析出が起こり、時効硬化による強度の向上が図られる。
【実施例】
【0041】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0042】
実施例1〜16及び比較例17〜34
表1に示す組成のアルミニウム合金をDC鋳造法により厚さ500mmの鋳塊とした。なお、表1に示す組成において、成分の含有量が0.001mass%未満の場合は「−」と表記した。
【0043】
【表1】

【0044】
製造工程a(第1の態様)
製造工程aでは、上記合金鋳塊を560℃で6時間の均質化処理工程にかけた後に熱間圧延の終了温度を280℃とし、厚さ2mmのアルミニウム合金板に圧延した。次いで、表2に示す第1の冷間圧延工程で1パス目とそれに続く2パス目の冷間圧延を施し、厚さ0.56mmのアルミニウム合金板に圧延した。次いで、連続焼鈍炉により表2に示す条件で溶体化処理を施した。次いで、溶体化処理を施したアルミニウム合金板を室温で空冷した後に、表2に示す第2の冷間圧延工程で3パス目の冷間圧延を施し、最終板厚0.28mmのアルミニウム合金板に圧延した。次いで、アルミニウム合金板の両面に前処理としてアルカリエッチングを施した。更に、アルカリエッチング面に化成処理としてリン酸クロメート処理を施して、Cr含有量15mg/cmの厚さの化成皮膜を形成した。最後に、化成処理を施したアルミニウム合金板の両面に、樹脂フィルムとして厚さ15μmのポリエステル系樹脂フィルムを270℃で熱圧着し、樹脂被覆アルミニウム合金板を作製した。
【0045】
【表2】

【0046】
製造工程b(第2の態様)
製造工程bでは、上記合金鋳塊を560℃で6時間の均質化処理工程にかけた後に熱間圧延の終了温度を280℃とし、厚さ2mmのアルミニウム合金板に圧延した。次いで、連続焼鈍炉により表2に示す条件で溶体化処理を施した。次いで、溶体化処理を施したアルミニウム合金板を室温で空冷した後に、表2に示す冷間圧延工程で1パス目〜3パス目の冷間圧延を施し、最終板厚0.28mmのアルミニウム合金板に圧延した。次いで、アルミニウム合金板の両面に前処理としてアルカリエッチングを施した。更に、アルカリエッチング面に化成処理としてリン酸クロメート処理を施して、Cr含有量15mg/cmの厚さの化成皮膜を形成した。最後に、化成処理を施したアルミニウム合金板の両面に、樹脂フィルムとして厚さ15μmのポリエステル系樹脂フィルムを270℃で熱圧着し、樹脂被覆アルミニウム合金板を作製した。
【0047】
製造工程c
製造工程cは、本発明の比較例としての製造工程である。すなわち、最終板厚に冷間圧延を行うまでは製造工程aと同様であるが、その後の樹脂フィルム被覆工程を備えていない。
【0048】
製造工程a、cでの第1及び第2の冷間圧延工程における各パスの出側温度、ならびに、製造工程bでの冷間圧延工程における各パスの出側温度を表2に示した。更に、製造工程a、cでの第1及び第2の冷間圧延工程における出側温度が100℃以上の場合、ならびに、製造工程bでの冷間圧延工程における各パスの出側温度が100℃以上の場合には、100℃未満までの冷却時間も表2に示した。なお、表2において、冷間圧延の出側温度が100℃未満の場合は、100℃未満までの冷却は行なわないので冷却時間を「−」で表した。
【0049】
上記のようにして作製した樹脂被覆アルミニウム合金板試料について、熱処理後の強度、しごき成形性及び耐圧強度を下記のように評価した。結果を表3に示す。
【0050】
【表3】

【0051】
熱処理後の耐力
上記のようにして作製した樹脂被覆アルミニウム合金板試料に、200℃で10分間の塗装焼付処理相当の熱処理を施した。次いで、JIS5号試験方法の引張試験に基づいて、熱処理後の樹脂被覆アルミニウム合金板試料の耐力を測定した。耐力が260MPa以上を合格(○)とし、260MPa未満を不合格(×)とした。
【0052】
しごき成形性
DI成形性の代替評価として、しごき成形性を評価した。樹脂被覆アルミニウム合金板試料について、第一しごき及び第二しごきのダイス内径を変化させることで、第三しごきのしごき率を変化させていき、成形できる最大のしごき率を限界しごき率とした。具体的には、しごき率(%)={1−(第三しごき後の缶胴側壁厚さ)/(第二しごき後の缶胴側壁厚さ)}×100を求め、このしごき率の最大値を限界しごき率とした。限界しごき率が46.5%以上を合格(○)とし、46.5%未満を不合格(×)とした。
【0053】
熱処理後の耐圧強度
樹脂被覆アルミニウム合金板試料をDI成形した缶に対し、200℃で10分間の塗装焼付処理相当の熱処理を施した。次いで、エアー式の耐圧試験機にてドーム成形したボトムがバックリングする圧力を測定して耐圧強度とした。耐圧強度が6.3kgf/cm以上のものを合格(○)とし、6.3kgf/cm未満のものを不合格(×)とした。
【0054】
表3から明らかなように、実施例1〜16では、熱処理後の耐力、しごき成形性及び熱処理後の耐圧強度の全てが合格であった。
【0055】
これに対して、比較例17では、アルミニウム合金板のMg含有量が少な過ぎたため、熱処理後の耐力と熱処理後の耐圧強度が不合格であった。
比較例18では、アルミニウム合金板のMg含有量が多過ぎたため、しごき成形性が不合格であった。
比較例19では、アルミニウム合金板のSi含有量が少な過ぎたため、熱処理後の耐力と熱処理後の耐圧強度が不合格であった。
比較例20では、アルミニウム合金板のSi含有量が多過ぎたため、しごき成形性が不合格であった。
比較例21では、アルミニウム合金板のCu含有量が少な過ぎたため、熱処理後の耐力と熱処理後の耐圧強度が不合格であった。
比較例22では、アルミニウム合金板のCu含有量が多過ぎたため、しごき成形性が不合格であった。
比較例23では、アルミニウム合金板のMn含有量が少な過ぎたため、熱処理後の耐力と熱処理後の耐圧強度が不合格であった。
比較例24では、アルミニウム合金板のMn含有量が多過ぎたため、しごき成形性が不合格であった。
比較例25では、アルミニウム合金板のTi含有量が多過ぎたため、粗大な晶出物が生成し、しごき成形性が不合格であった。
比較例26では、アルミニウム合金板のB含有量が多過ぎたため、粗大な晶出物が生成し、しごき成形性が不合格であった。
比較例27では、第2の冷間圧延工程での3パス目の冷間圧延における出側温度が140℃を超え、100℃までの冷却時間が2時間を超えたため時効硬化性が劣り、熱処理後の耐力と熱処理後の耐圧強度が不合格であった。
比較例28では、第2の冷間圧延工程での3パス目の冷間圧延における出側温度が140℃以下であるが、100℃までの冷却時間が2時間を越えたため時効硬化性が劣り、熱処理後の耐力と熱処理後の耐圧強度が不合格であった。
比較例29では、冷間圧延工程での1パス目の冷間圧延における出側温度が140℃を超え、100℃までの冷却時間が2時間を超えたため時効硬化性が劣り、熱処理後の耐力と熱処理後の耐圧強度が不合格であった。
比較例30では、冷間圧延工程での2パス目の冷間圧延における出側温度が140℃を超え、100℃までの冷却時間が2時間を超えたため時効硬化性が劣り、熱処理後の耐力と熱処理後の耐圧強度が不合格であった。
比較例31では、冷間圧延工程での3パス目の冷間圧延における出側温度が140℃を超え、100℃までの冷却時間が2時間を超えたため時効硬化性が劣り、熱処理後の耐力と熱処理後の耐圧強度が不合格であった。
比較例32では、冷間圧延工程での1〜3パス目の冷間圧延における出側温度が140℃以下であるが、3パス目における100℃までの冷却時間が2時間を越えたため時効硬化性が劣り、熱処理後の耐力と熱処理後の耐圧強度が不合格であった。
比較例33では、冷間圧延工程での1〜3パス目の冷間圧延における出側温度が140℃を超え、100℃までの冷却時間がそれぞれ2時間を超えたため時効硬化性が劣り、熱処理後の耐力と熱処理後の耐圧強度が不合格であった。
比較例34では、樹脂フィルムを被覆しなかったため、しごき成形性が不合格であった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係る樹脂被覆アルミニウム合金板及びその製造方法により、塗装焼付処理後の強度と成形性に優れた飲料缶胴が製造可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mgを0.4mass%以上0.8mass%以下、Siを0.5mass%より多く1.5mass%以下、Cuを0.01mass%以上0.4mass%以下及びMnを0.01mass%以上0.4mass%未満含有し、残部Alと不可避的不純物とからなるAl合金から構成されるアルミニウム合金板と、当該アルミニウム合金板の少なくとも一方の表面に被覆された樹脂フィルムとを備え、200℃で10分間の熱処理を施した後の耐力が260MPa以上であることを特徴とする樹脂被覆アルミニウム合金板。
【請求項2】
前記Al合金が、Tiを0.0001%以上0.1%以下、或いは、Tiを0.0001%以上0.1%以下及びBを0.0001%以上0.01%以下のいずれかを更に含有する、請求項1に記載の樹脂被覆アルミニウム合金板。
【請求項3】
前記樹脂フィルムがポリエステル系樹脂である、請求項1又は2に記載の樹脂被覆アルミニウム合金板。
【請求項4】
Mgを0.4mass%以上0.8mass%以下、Siを0.5mass%より多く1.5mass%以下、Cuを0.01mass%以上0.4mass%以下及びMnを0.01mass%以上0.4mass%未満含有し、残部Alと不可避的不純物とからなるAl合金の鋳塊に均質化処理を施す工程と、当該均質化処理工程後に熱間圧延を施す工程と、当該熱間圧延工程後に1パス以上の第1の冷間圧延を施す工程と、当該第1の冷間圧延工程後に溶体化処理を施す工程と、当該溶体化処理工程後に1パス以上の第2の冷間圧延を施す工程と、当該第2の冷間圧延工程において最終板厚としたアルミニウム合金板の少なくとも一方の表面に樹脂フィルムを被覆する工程とを含み、前記第2の冷間圧延工程の各パスにおいて冷間圧延後のアルミニウム合金板の出側温度を100℃未満としその少なくとも一方の表面に樹脂フィルムを被覆することを特徴とする樹脂被覆アルミニウム合金板の製造方法。
【請求項5】
Mgを0.4mass%以上0.8mass%以下、Siを0.5mass%より多く1.5mass%以下、Cuを0.01mass%以上0.4mass%以下及びMnを0.01mass%以上0.4mass%未満含有し、残部Alと不可避的不純物とからなるAl合金の鋳塊に均質化処理を施す工程と、当該均質化処理工程後に熱間圧延を施す工程と、当該熱間圧延工程後に1パス以上の第1の冷間圧延を施す工程と、当該第1の冷間圧延工程後に溶体化処理を施す工程と、当該溶体化処理工程後に1パス以上の第2の冷間圧延を施す工程と、当該第2の冷間圧延工程において最終板厚としたアルミニウム合金板の少なくとも一方の表面に樹脂フィルムを被覆する工程とを含み、前記第2の冷間圧延工程の各パスにおいて冷間圧延後のアルミニウム合金板の出側温度を100℃以上140℃以下とし2時間以内の間に100℃未満まで冷却した後に、その少なくとも一方の表面に樹脂フィルムを被覆することを特徴とする樹脂被覆アルミニウム合金板の製造方法。
【請求項6】
Mgを0.4mass%以上0.8mass%以下、Siを0.5mass%より多く1.5mass%以下、Cuを0.01mass%以上0.4mass%以下及びMnを0.01mass%以上0.4mass%未満含有し、残部Alと不可避的不純物とからなるAl合金の鋳塊に均質化処理を施す工程と、当該均質化処理工程後に熱間圧延を施す工程と、当該熱間圧延工程後に溶体化処理を施す工程と、当該溶体化処理工程後に1パス以上の冷間圧延を施す工程と、当該冷間圧延工程において最終板厚としたアルミニウム合金板の少なくとも一方の表面に樹脂フィルムを被覆する工程とを含み、前記冷間圧延工程の各パスにおいて冷間圧延後のアルミニウム合金板の出側温度を100℃未満としその少なくとも一方の表面に樹脂フィルムを被覆することを特徴とする樹脂被覆アルミニウム合金板の製造方法。
【請求項7】
Mgを0.4mass%以上0.8mass%以下、Siを0.5mass%より多く1.5mass%以下、Cuを0.01mass%以上0.4mass%以下及びMnを0.01mass%以上0.4mass%未満含有し、残部Alと不可避的不純物とからなるAl合金の鋳塊に均質化処理を施す工程と、当該均質化処理工程後に熱間圧延を施す工程と、当該熱間圧延工程後に溶体化処理を施す工程と、当該溶体化処理工程後に1パス以上の冷間圧延を施す工程と、当該冷間圧延工程において最終板厚としたアルミニウム合金板の少なくとも一方の表面に樹脂フィルムを被覆する工程とを含み、前記冷間圧延工程の各パスにおいて冷間圧延後のアルミニウム合金板の出側温度を100℃以上140℃以下とし2時間以内の間に100℃未満まで冷却した後に、その少なくとも一方の表面に樹脂フィルムを被覆することを特徴とする樹脂被覆アルミニウム合金板の製造方法。
【請求項8】
前記Al合金が、Tiを0.0001%以上0.1%以下、或いは、Tiを0.0001%以上0.1%以下及びBを0.0001%以上0.01%以下のいずれかを更に含有する、請求項4〜7のいずれか一項に記載の樹脂被覆アルミニウム合金板。
【請求項9】
前記樹脂フィルムが、ポリエステル系樹脂であることを特徴とする、請求項4〜8のいずれか一項に記載の樹脂被覆アルミニウム合金板。

【公開番号】特開2011−241433(P2011−241433A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113709(P2010−113709)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000107538)古河スカイ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】