説明

樹脂製キャビネット、及び薄型表示装置用キャビネット

【課題】 液晶テレビなどの薄型表示装置を構成するキャビネット内面に該キャビネットと一体に成形されたボスの強度向上および該ボスの配設位置に対応する該キャビネットの反対面である外観面に発生するヒケ防止手段を提供する。
【解決手段】 熱可塑性樹脂の成形加工により形成された薄型表示装置用キャビネット2のスピーカパネル部2a背面に形成されたボス11および12に取り付けられた端子板ユニット14の端子14aや14bへのケーブルプラグ挿抜時には大きな挿抜応力が加えられるため、該応力と平行方向にガスアシスト成形加工による補強用リブ10を該スピーカパネル2aに形成すると共にガスアシスト成形部13を該ボス11下部の根元の外半周位置に巻回するように形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶テレビなどの薄型表示装置を構成するキャビネットの構造に関し、詳しくは該薄型表示装置内部に構成部品を支持するために形成されたボスの強度向上を図り、且つ、該ボスが形成された該キャビネットの反対面である外観面に発生する凹痕状のヒケを防止する手段に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂材料により構成される薄型表示装置用キャビネット内面に部品を支持するため該薄型表示装置用キャビネットと一体に成形した該ボスが、該薄型表示装置用キャビネットの内面から立ち上がる根元部分は他の部位に比し厚肉構造となるため、射出成形後の該薄型表示装置用キャビネット冷却中の部分的な材料収縮に起因し該立ち上がりの根元部分に対応する該薄型表示装置用キャビネットの反対面である外観面に凹痕状のヒケが発生し、該薄型表示装置用キャビネットの外観品位を著しく低下させる原因となることがある。
【0003】
図7は液晶テレビを構成する前キャビネット30の左スピーカパネル部30a背面の従来例を示す拡大斜視図である。該左スピーカパネル部30aの一部には画像表示装置としての該液晶テレビおよびデジタルカメラやテレビゲーム機などの外部映像周辺機器からの映像や音声の出力信号接続用の端子板ユニット14を取り付けるための第1のボス31および第2のボス32が該左スピーカパネル部30aと一体に形成され、該端子板ユニット14は該第1のボス31および該第2のボス32を介し該左スピーカパネル部30a背面に螺着される。
【0004】
図7に示す端子板ユニット14には複数のコネクタ14aや14bが配設され、外部映像周辺機器からのケーブルプラグを該液晶テレビの該端子板ユニット14の該コネクタ14aや14bに挿抜時に強い機械的ストレスが該コネクタ14aや14bを介し該端子板ユニット14に加えられる。このため該左スピーカパネル30aへの該端子板ユニット14の取り付け部である第2のボス32および第1のボス31は充分な機械的強度を有する必要があり、該第1のボス31および該第2のボス32は必然的に大型で厚肉構造となる。部分的に樹脂材料の肉厚が不均一な部分を有する成形品は射出成形直後の冷却時に発生する不均一な材料収縮により部分的な変形や寸法精度の低下の原因となるほか、不均一な肉厚部分の反対面が外観面である場合にはヒケの発生により外観品位を低下させる原因ともなる。
【0005】
前記問題への対応のため、近時、熱可塑性樹脂材料により構成される射出成形品のヒケや反りなどの変形発生の防止、強度改善、薄肉化、および軽量化手段として射出成形金型内に充填した溶融樹脂材料を保圧中に高圧の窒素ガスを注入し、該高圧ガスにより該樹脂材料中に中空状のガスチャンネルを形成し保圧をすることにより樹脂材料の均一化と薄肉化を図ることが可能となり、樹脂材料の不均一により成形後の冷却中の材料収縮に起因し発生するヒケや反りなどの変形を防止することが可能なガスアシスト成形技術が実用化され、さらには特許文献1に見られるごとく該ガスアシスト成形技術の適用により発生する外観面の光沢班を目立たなくする改良技術も発明されている。
【特許文献1】特開2002−331553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
樹脂製のキャビネットには装置の内部構成部材を固定するためのボスが複数設けられる。特に、液晶テレビなどの薄型表示装置を構成するキャビネットの内面には、重量物である液晶表示パネルユニットや印刷配線基板ユニットなどの多数の内部構成部材の該キャビネットへの取り付け用として該キャビネットの内面にボスが該キャビネットと一体に成形される。しかしながら該ボスの配設位置に対応する該キャビネットの反対面となる外観面には成形樹脂材料の肉厚の不均一に起因する凹痕状のヒケが発生するため該ボスが該キャビネットから立ち上がる部分の樹脂材料の肉厚を不均一に厚くすることが出来ず、従ってボスの強度を確保することが困難な場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
樹脂製のキャビネットの内面に一体に配設されたボス下部の外半周位置に、ガスアシスト成形部を巻回するように形成する。なお、端子板などの挿抜力が加わる部材を固定するためのボスの場合には、少なくとも前記挿抜力が加わる方向のボス下部の外半周位置にガスアシスト成形部を巻回するように形成することで最適な補強が可能となる。
【0008】
薄型表示装置用キャビネットにおいて、内部構成部材の該薄型表示装置用キャビネットへの取り付け用として該薄型表示装置用キャビネットの内面に該薄型表示装置用キャビネットと一体に形成されたボス下部の外半周に巻回するようガスアシスト成形部を形成する。なお、端子板などの挿抜力が加わる部材を固定するためのボスの場合は、少なくとも前記挿抜力が加わる方向のボス下部の外半周位置にガスアシスト成形部を巻回するように形成することで最適な補強が可能となる。また、該ボスに連なり前記挿抜力の方向に延設されたリブと該ボスの両方の下部にガスアシスト成形部を形成することで、更に補強が可能となる。
【0009】
樹脂製のキャビネットや薄型表示装置用キャビネットにおいて、内部構成部材のキャビネットへの取り付け用として該キャビネットの内面に該キャビネットと一体に形成されたボス下部の外半周に該ボスの中心軸を軸対象とするよう該ボス下部の外半周位置に独立した複数のガスアシスト成形部を巻回し形成する。
【発明の効果】
【0010】
樹脂製のキャビネットや薄型表示装置用キャビネットの内面に該キャビネットと一体に形成されたボス下部の外半周位置にガスアシスト成形部を巻回するように形成することにより、樹脂材料厚さの不均一や厚肉部に起因するヒケや反りなどの変形が発生することなく該ボスの機械的強度の向上を図ることが可能となる。
【0011】
樹脂製のキャビネットや薄型表示装置用キャビネットにおいて、該キャビネットと一体に形成されたボスが、端子板などの挿抜力が加わる部材を固定するためのボスの場合は、少なくとも前記挿抜力が加わる方向のボス下部の外半周位置にガスアシスト成形部を巻回するように形成することで最適な補強が可能となる。また、該ボスに連なり前記挿抜力の方向に延設されたリブと該ボスの両方の下部にガスアシスト成形部を形成することで、更に補強が可能となる。
【0012】
薄型表示装置用キャビネットの内面に該薄型表示装置用キャビネットと一体に形成されたボスの中心軸を軸対象とし、該ボス下部の外半周位置に独立した複数のガスアシスト成形部を巻回するように形成することにより、樹脂材料厚さの不均一や厚肉部に起因するヒケや反りなどの変形が発生することなく該ボスの機械的強度の向上を図ることが可能となるとともにボスの中心軸を軸対象とし、同一形状の複数のボスを配設することにより、樹脂材料冷却中に発生する極めて微視的な変形も該複数のガスアシスト成形部が相互に補完的に作用し相殺され極めて高い寸法精度を維持することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図に基づき本発明の実施形態を液晶テレビに適用した場合に関し説明する。図1(a)は本発明に係わる液晶テレビの外観正面図、図1(b)は側面図である。図1において1は画像表示のための液晶表示パネル、2は前キャビネット、3は後ろキャビネット、4は液晶テレビを卓上型として使用する場合のスタンド、5はキャリングハンドル、6はスピーカ部装飾板で該スピーカ部装飾板6は該前キャビネット2の一部を構成するスピーカパネル2aおよび2bに取り付けられている。後ろキャビネット3の左側面の14は端子板ユニットであり、該端子板ユニット14には画像表示装置である該液晶テレビとデジタルカメラやテレビゲーム機などの外部映像周辺機器からの映像や音声信号を接続するための複数のコネクタ14aや14bが配設されている。
【0014】
図2は本発明の第1の実施形態を示す液晶テレビを構成する前キャビネット2の背面の平面図である。図に示すごとく前キャビネット2の一部を構成する左スピーカパネル部2aの一部には画像表示装置である該液晶テレビとデジタルカメラやテレビゲーム機などの外部映像周辺機器からの映像や音声出力信号を接続するための端子板ユニット14を取り付けるための第1のボス11および第2のボス12が該左スピーカパネル部2aと一体に形成されている。
【0015】
図3は左スピーカパネル部2a背面の拡大斜視図である。端子板ユニット14が第1のボス11および第2のボス12を介し該左スピーカパネル部2aの背面に螺着されている。第1のボス11中心軸の放射方向への強度向上のためには補強リブ11aが、同様に第2のボス12中心軸の放射方向への強度向上のためには補強リブ12aが該左スピーカパネル部2aと共に一体に成形されている。
【0016】
端子板ユニット14には液晶テレビの外部映像周辺機器からの映像や音声信号を接続するための複数のコネクタ14aや14bが配設され、該液晶テレビの外部映像周辺機器からのケーブルプラグを該液晶テレビの該端子板ユニット14に対して挿抜する時に強い挿抜応力が該端子板ユニット14に加えられる。このため該端子板ユニット14を左スピーカパネル2aに螺着するための第1のボス11および第2のボス12には充分な機械的強度を付与する必要がある。
【0017】
図4は左スピーカパネル2aから端子板ユニット14を取り外し、該端子板ユニット14を該左スピーカパネル2aに取り付けるための第2のボス12と補強リブ12aおよび第1のボス11と補強リブ11a、さらには該第1のボス11が該左スピーカパネル2aから立ち上がる根元の外半周に形成された中空状のガスアシスト成形部13を示す拡大斜視図である。図3に示す端子板ユニット14へのケーブルプラグ挿抜力に対応し該左スピーカパネル2aに強度を付与させるため該左スピーカパネル2a内面に形成された補強リブ10の根元に形成されたガスアシスト成形部13を第1のボス11下部の外半周位置にまで延伸させている。従ってガスアシスト成形部13は補強リブ10と共に第1のボス11の強度向上をも可能としている。なお、補強リブ10は、端子板ユニット14へのケーブルプラグ挿抜力が加わる方向に延設されており、最適な補強配置となっている。
【0018】
ガスアシスト成形技術は射出成形品のヒケや反りなどの変形防止、強度改善、樹脂材料の薄肉化および成形品の軽量化手段として射出成形金型内に充填した溶融樹脂材料を保圧中に高圧の窒素ガスを注入し、該高圧ガスにより該樹脂材料中に中空状のガスチャンネルを形成し保圧をすることにより樹脂材料の肉厚の均一化と薄肉化を図ることを可能とする成形技術である。
【0019】
図5(a)は左スピーカパネル部2a背面の平面図、図5(b)は図5(a)中に鎖線X−Xで示す切断線に沿って切断した横断面図、図5(c)は同Y−Yに沿って切断した縦断面図である。図3に示す端子板ユニット14を左スピーカパネル部2a背面に螺着するため、図5に示すごとく第1のボス11および第2のボス12が該左スピーカパネル部2a背面に形成されている。
【0020】
図5(b)に示すごとく、第1のボス11中心軸の放射方向への補強のためには補強リブ11aが、同様に第2のボス12の補強のためには補強リブ12aが形成され、さらに図5(a)に示すごとく左スピーカ部2aを補強するために該左スピーカパネル2aの背面には補強リブ10が左スピーカパネル部2aと一体に形成されている。該ボス12の螺子孔12bに端子板ユニット14を十分な強度で螺着支持するため、同様構成の三組のボスと補強リブが左スピーカパネル部2a背面に一体に形成されている。
【0021】
図6は本発明の第2の実施形態を示し、図6(a)は左スピーカパネル内面に端子板ユニットを螺着するために形成した三組のボス部分の内のひとつを示す平面図、図6(b)は側面図である。図6に示すごとく左スピーカパネルと一体に形成された第1のボス21が該スピーカパネルから立ち上がる根元部分の外周面と一体に略半周に亘り巻回する第1のガスアシスト成形部23および第2のガスアシスト成形部24が形成されている。該第1のガスアシスト成形部23および第2のガスアシスト成形部24の各一端は閉塞され、各他端にはガス注入口23bおよびガス注入口24bが形成されている。
【0022】
射出成形金型内に充填した溶融樹脂材料を保圧中に図6(a)に示す第1のガスアシスト成形部23および第2のガスアシスト成形部24のガス注入口23bおよび24bから図6(a)中に矢印で示すごとく高圧の窒素ガスを注入し、該高圧ガスにより該樹脂材料中に中空状のガスチャンネル23aおよび24aを形成し保圧をすることにより、ガスアシスト成形部23および24の樹脂材料の肉厚の均一化と薄肉化を実現しながら第1のボス21に高い剛性を付与することが出来る。ボス21の根元に該ボス21中心軸と同心円状にガスアシスト成形部を形成することは不可能であるが、複数の半周状のガスアシスト成形部を形成することにより該ボス21の根元に該ボス21中心軸と同心円状にガスアシスト成形部を形成したと同等の効果を発揮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係わる液晶テレビの図1(a)は外観正面図、図1(b)は側面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係わる液晶テレビを構成する前キャビネット2背面の平面図である。
【図3】前キャビネットの左スピーカパネル部背面の拡大斜視図である。
【図4】左スピーカパネルに端子板ユニットを取り付けるためのボスおよびリブを示す拡大斜視図である。
【図5】図5(a)は左スピーカパネル部背面の平面図、図5(b)は図5(a)中の切断線X−Xで切断した横断面図、図5(c)は同Y−Yで切断した縦断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態を示す図6(a)は左スピーカパネルに端子板ユニットを螺着するためのボス部分の平面図、図6(b)は側面図である。
【図7】液晶テレビを構成する前キャビネットの左スピーカパネル部背面の従来例を示す拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
1: 液晶表示パネル
2: 前キャビネット
2a: 左スピーカパネル部
2b: 右スピーカパネル部
3: 後ろキャビネット
4: スタンド
5: キャリングハンドル
6: スピーカ部装飾板
10: 補強リブ
11: 第1のボス
11a: 補強リブ
12: 第2のボス
12a: 補強リブ
12b: 螺子孔
13: ガスアシスト成形部
13a: ガスチャンネル
14: 端子板ユニット
14a: コネクタ
14b: コネクタ
21: 第1のボス
22: 第2のボス
22a: 補強リブ
22b: 螺子孔
23: 第1のガスアシスト成形部
23a: ガスチャンネル
23b: ガス注入口
24: 第2のガスアシスト成形部
24a: ガスチャンネル
24b: ガス注入口
30: 前キャビネット
30a: 左スピーカパネル部
31: 第1のボス
32: 第2のボス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製のキャビネットの内面に一体に配設されたボス下部の外半周位置に、ガスアシスト成形部を巻回するように形成したことを特長とする樹脂製キャビネット。
【請求項2】
樹脂製のキャビネットの内面に一体に配設され、端子板などの挿抜力が加わる部材を固定するためのボスの、少なくとも前記挿抜力が加わる方向のボス下部の外半周位置に、ガスアシスト成形部を巻回するように形成したことを特長とする樹脂製キャビネット。
【請求項3】
液晶表示パネルやプラズマディスプレイパネルなどを表示素子とする薄型表示装置用キャビネットにおいて、該キャビネットの内面に一体に配設されたボス下部の外半周位置にガスアシスト成形部を巻回するように形成したことを特長とする薄型表示装置用キャビネット。
【請求項4】
液晶表示パネルやプラズマディスプレイパネルなどを表示素子とする薄型表示装置用キャビネットにおいて、該キャビネットの内面に一体に配設され、端子板などの挿抜力が加わる部材を固定するためのボスの、少なくとも前記挿抜力が加わる方向のボス下部の外半周位置にガスアシスト成形部を巻回するように形成したことを特長とする薄型表示装置用キャビネット。
【請求項5】
液晶表示パネルやプラズマディスプレイパネルなどを表示素子とする薄型表示装置用キャビネットにおいて、該キャビネットの内面に一体に配設され、端子板などの挿抜力が加わる部材を固定するためのボスと、該ボスに連なり前記挿抜力の方向に延設されたリブとの下部にガスアシスト成形部を形成したことを特長とする薄型表示装置用キャビネット。
【請求項6】
請求項1、乃至5の、いづれかに記載の樹脂製キャビネット、または薄型表示装置用キャビネットにおいて、該キャビネットの内面に一体に配設されたボスの中心軸を軸対象とし、該ボス下部の外半周位置に独立した複数のガスアシスト成形部を巻回するように形成したことを特長とする樹脂製キャビネット、または薄型表示装置用キャビネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−110578(P2007−110578A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−301209(P2005−301209)
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】