説明

樹脂製容器及び複合容器、並びに樹脂製容器の製造方法

【課題】樹脂製ドラム缶のような樹脂製容器の残留量低減の為の樹脂製容器、並びに製造方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂をブロー成形することで作製される樹脂製ドラム缶で、天板105に成形された口部106aから缶内へ挿入される排出用チューブ102を通して収容物3が排出される樹脂製ドラム缶101において、底板104において缶内側に向かい凸にて成形される残留量低減用凸部であって、上記口部の直下に対応して位置し、かつ上記排出用チューブの先端102aが当接し、かつ上記先端を缶内の残留収容物側へ案内する傾斜面111を有する残留量低減用凸部110を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばポリエチレン材等にて製造される例えば樹脂製ドラム缶のような樹脂製容器、及び内装容器を外装容器内に装填した複合容器、並びに上記樹脂製容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばポリエチレン材等の熱可塑性樹脂材を用いブロー成形にて作製される、例えばポリドラムやプラスチックドラム等の名称が付された樹脂製のドラム缶が存在する。このような樹脂製ドラム缶は、鋼製のドラム缶に比べると、耐薬液性、耐腐食性等に優れるため、例えば半導体分野及び液晶分野における薬液等を収容する容器として用いられることが多い。尚、上記薬液の例としては、半導体分野では、例えばCMPスラリー、フォトレジスト、現像液、エッチング液、洗浄液等であり、液晶分野では、フォトレジスト、カラーレジスト、カラーフィルタ材料等である。
【0003】
上述のような樹脂製ドラム缶のサイズは、様々であるが、大型のものとして内容量で例えば200リットルのタイプもある。このような大型の樹脂製ドラム缶では、収容物を排出するとき、缶自体を傾けて収容物を排出することは困難である。よって、排出方法としては、当該缶の天板に形成されている開口部分である口部から缶内へ排出用のチューブを挿入し、該排出用チューブを通して排出する方法が採られ、収容物をポンプで吸い上げるポンプアップ方式、あるいは、缶内に窒素ガス等を注入し5〜200kPa程度の圧力まで缶内を加圧することで収容物を押し出す加圧方式が採られる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】積水成型工業(株)カタログ「セキスイポリドラム」、(2006年9月発行)
【非特許文献2】積水成型工業(株)カタログ「プラスチックジェリカンポリコン プラスチックドラム 複合容器」、(2007年10月発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したポンプアップ方式及び加圧方式のいずれの場合においても、収容物の排出には排出用チューブが用いられる。このとき、排出用チューブの吸込口と樹脂製ドラム缶の底内面との間に隙間が全く無い状態は、上記吸込口は上記底内面にて塞がれた状態であるので、排出動作はできない。よって、上記吸込口と上記底内面との間に幾分かの隙間を設けるため、上記口部から底板までの深さよりも短めの排出用チューブ2を用いることができる。しかしながらこの場合には、収容物の排出時には、図16に示すように、樹脂製ドラム缶1の底部には、その隙間分、必ず収容物3が残留し、全量を排出することはできない。尚、ポンプアップ方式においても、収容物3の排出に伴い缶内が負圧になるのを防止するため、缶内には、例えば窒素ガス等が注入される。
【0006】
また、特に上述した大型の樹脂製ドラム缶では、図16に示すように、収容物3を収納したときの剛性を確保するため、樹脂製ドラム缶の底板4は、その中央部分が缶内側に凸状又は円弧状に膨らんだ形状4aを有して成形されている。尚、図16では、缶の外周から中央に向かって2段階にて凸形状4aを形成した樹脂製ドラム缶1を示している。したがって、収容物排出終了時点では、底板4の周縁部分4bに収容物3が集まり、少なくとも上記凸又は膨らんだ形状4aの高さ分、缶内に収容物3が残留してしまう。
【0007】
このとき、上記口部から底板までの深さよりも長めの排出用チューブ2を用いることで、収容物3が集まった周縁部分4b側に、偶然に、排出用チューブ2の先端が位置したときには、残留量は減少する。しかしながら、上記口部への排出用チューブ2の取り付け方法、及び排出用チューブ2の硬さ等の諸条件から、排出用チューブ2の先端が常に残留収容物側に配置されるとは限らず、単に、長めの排出用チューブ2を用いれば良いという発想は、解決策にはならない。
【0008】
また、上記加圧方式の場合には、樹脂製ドラム缶1の内圧が上昇することから、図17に示すように、排出時に収容物3が残留する底板4も外側に膨らみ、底板4には凹部4cが形成される。よって、加圧方式の場合には、この凹部4cにも収容物3が残留することになり、一般的に、ポンプアップ方式に比べて加圧方式の方が収容物3の缶内残留量は多くなる。よって、加圧方式を採る樹脂製ドラム缶ユーザーでは、樹脂製ドラム缶1に接続する収容物排出用装置側にて、残留量低減の工夫が必要となるという問題がある。
【0009】
一方、上述した半導体分野及び液晶分野における薬液等は、非常に高価であり、コスト面から、樹脂製ドラム缶ユーザーは、残留量を極力低減したい。よって、樹脂製ドラム缶ユーザーからは、缶メーカーに対して非常に強い残留量の低減要求がある。
【0010】
さらにまた、近年の、資源及び環境に対する意識の向上に伴い、使用後の樹脂製ドラム缶のリサイクル要求が高まってきている。当該樹脂製ドラム缶のリサイクルにおいて、缶内の残存物は、不要物であり、廃液処理が必要であり、処理費用が発生する。よって、この点からも、残留量の低減要求がある。
【0011】
さらにまた、樹脂製ドラム缶は、上述したようにブロー成形にて作製され、当該缶の内面には、一対の金型同士の直線状の継ぎ目に沿ってパーティングライン(PL)が形成され、該パーティングラインに沿って缶内側へ樹脂材が盛り上がった肉塊(突起)が発生する。したがって、上記肉塊により、収容物3の残留量が少なくなった時点では、収容物3が2分される状態も発生する。これに対して排出用チューブは、1本であることから、2分された片側の収容物3のみしか排出できない事態も発生する。このような樹脂製ドラム缶に特有の構造に起因した残留量低減の必要性もある。尚、上記肉塊の高さは、樹脂製ドラム缶の肉厚に比例する。よって、100〜200リットル程度の比較的大きな内容量を有する大型の樹脂製ドラム缶では、上述の、構造に起因した残留量低減の必要性が増す。
【0012】
本発明は、上述したような問題点及び要求に応えるためになされたもので、従来に比べて収容物の容器内残留量を低減可能な樹脂製容器及び複合容器、並びに上記樹脂製容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明は以下のように構成する。
即ち、本発明の第1態様における樹脂製容器は、一対の金型にて熱可塑性樹脂をブロー成形することで作製される樹脂製容器で、天板に成形された口部から容器内へ挿入される排出用チューブを通して収容物が排出される樹脂製容器において、
当該樹脂製容器の底板において容器内側に向かい凸にて成形され、上記排出用チューブを配向させて上記収容物の容器内残留量を低減する残留量低減用凸部であって、少なくとも上記口部の直下に対応して位置し、かつ上記排出用チューブの先端が当接し、かつ上記先端を容器内の残留収容物側へ案内する傾斜面を有する残留量低減用凸部を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、上記残留収容物は、上記底板の周縁部分に位置し、上記傾斜面は、上記底板の全周にわたり成形され、上記残留量低減用凸部は、上記底板の中央部まで延在し、該中央部は、平坦面にて構成してもよい。
【0015】
また、上記残留収容物は、上記底板の周縁部分又は上記底板の中央部に位置し、上記傾斜面及び上記残留量低減用凸部は、上記口部の直下に対応した位置にのみ成形してもよい。
【0016】
また、上記残留収容物は、上記底板の中央部に位置し、上記傾斜面は、上記底板の全周にわたり成形され、上記底板の中央部は、上記残留量低減用凸部に対して凹状にて構成してもよい。
【0017】
また、上記残留量低減用凸部は、上記ブロー成形により上記底板に形成されるパーティングラインの近傍に上記排出用チューブの先端を位置決めする位置規制部を有するコ字形状にて構成してもよい。
【0018】
また、上記残留量低減用凸部は、上記ブロー成形により上記底板に形成されるパーティングラインに沿って延在する中央突出部を有することができる。
【0019】
また、上記底板は、上記ブロー成形により上記底板に形成されるパーティングライン上の突起の内、上記残留収容物が存在する部分について、上記突起の無い非突起領域を有することができる。
【0020】
さらに、本発明の第2態様における複合容器は、金型にて熱可塑性樹脂をブロー成形することで作製され、収容物を収容する内装容器と、上記内装容器よりも剛性が高い材料にて作製され、上記内装容器を内側に装填する外装容器とを備え、上記外装容器及び上記内装容器の口部から上記内装容器内へ挿入される排出用チューブを通して上記収容物が排出される複合容器において、
上記内装容器は、当該内装容器の底板において容器内側に向かい凸にて成形される残留量低減用凸部であって、傾斜面を有し上記排出用チューブを配向させて上記収容物の残留量を低減する残留量低減用凸部を備え、上記傾斜面は、少なくとも上記口部の直下に対応して位置し、かつ上記排出用チューブの先端が当接し、かつ上記先端を上記内装容器内の残留収容物側へ案内することを特徴とする。
【0021】
また、本発明の第3態様における樹脂製容器は、一対の金型にて熱可塑性樹脂をブロー成形することで作製される樹脂製容器で、天板に成形された口部から容器内へ挿入される排出用チューブを通して収容物が排出される樹脂製容器において、
当該樹脂製容器の底板は、上記ブロー成形により上記底板に形成されるパーティングライン上の突起の内、容器内の残留収容物が存在する部分について、上記突起の無い非突起領域を有することを特徴とする。
【0022】
また、本発明の第4態様における樹脂製容器は、一対の金型にて熱可塑性樹脂をブロー成形することで作製される樹脂製容器で、天板に成形された口部から容器内へ挿入される排出用チューブを通して収容物が排出される樹脂製容器において、
当該樹脂製容器の底板は、当該底板の周縁部分において、上記口部の直下部分に対して下り傾斜となる集液用斜面を有することを特徴とする。
【0023】
上記第4態様において、上記底板は、上記ブロー成形により上記底板に形成されるパーティングライン上の突起の内、容器内の残留収容物が存在する部分について、上記突起の無い非突起領域をさらに有するように構成してもよい。
【0024】
また、上記第4態様において、上記底板において容器内側に向かい凸にて成形され、上記排出用チューブを配向させて上記収容物の容器内残留量を低減する残留量低減用凸部であって、少なくとも上記口部の直下に対応して位置し、かつ上記排出用チューブの先端が当接し、かつ上記先端を容器内の残留収容物側へ案内する集液用斜面を有する残留量低減用凸部をさらに備えるように構成してもよい。
【0025】
さらにまた、本発明の第5態様における樹脂製容器の製造方法は、一対の金型にて熱可塑性樹脂をブロー成形することで作製される樹脂製容器で、天板に成形された口部から容器内へ挿入される排出用チューブを通して収容物が排出される樹脂製容器の製造方法において、
上記ブロー成形にて当該樹脂製容器を作製した後、上記熱可塑性樹脂が硬化する前に、上記ブロー成形により当該樹脂製容器の底板に形成されるパーティングライン上の突起の内、容器内の残留収容物が存在する部分を押し潰して上記突起の無い非突起領域を形成することを特徴とする。
【0026】
また、本発明の第6態様における樹脂製容器の製造方法は、一対の金型にて熱可塑性樹脂をブロー成形することで作製される樹脂製容器で、天板に成形された口部から容器内へ挿入される排出用チューブを通して収容物が排出される樹脂製容器の製造方法において、
上記ブロー成形にて当該樹脂製容器を作製した後、上記熱可塑性樹脂が硬化する前に、当該樹脂製容器の底板の周縁部分において上記口部の直下部分に対して下り傾斜となる集液用斜面を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
上記第1態様における樹脂製容器によれば、残留量低減用凸部を底板に備えたことにより、樹脂製容器の口部から挿入される排出用チューブの先端を、樹脂製容器の底板における残留収容物側へ案内することができる。したがって、従来に比べて収容物の容器内残留量を低減することができる。
【0028】
また、上記第2態様における複合容器によれば、内装容器は、残留量低減用凸部を底板に備えた。よって、口部から挿入される排出用チューブの先端を、複合容器に備わる内装容器の底板における残留収容物側へ案内することができる。したがって、従来に比べて収容物の容器内残留量を低減することができる。
【0029】
また、上記第3態様における樹脂製容器、及び上記第5態様における樹脂製容器の製造方法によれば、パーティングライン上の突起に非突起領域を備えたことで、容器内の残留収容物が底板の周縁部分において、パーティングライン上の突起により2分割されることは無くなる。よって、上記周縁部分における残留収容物は、1本の排出用チューブにて排出可能となり、従来に比べて収容物の容器内残留量を低減することができる。
【0030】
また、上記第4態様における樹脂製容器、及び上記第6態様における樹脂製容器の製造方法によれば、底板は、口部の直下部分に対して下り傾斜となる傾斜面を有することから、底板の周縁部分における残留収容物は、口部の直下部分、つまり排出用チューブの先端が位置する部分に集まる。よって、従来に比べて収容物の容器内残留量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態における樹脂製容器の断面図である。
【図2】図1に示す樹脂製容器の底板に成形した残留量低減用凸部を示す斜視図である。
【図3】図1に示す樹脂製容器の一変形例における断面図である。
【図4A】図1に示す樹脂製容器の底板に成形した残留量低減用凸部の作用を説明するための図である。
【図4B】図1に示す樹脂製容器の底板に成形した残留量低減用凸部の作用を説明するための図である。
【図4C】図1に示す樹脂製容器の底板に成形した残留量低減用凸部の作用を説明するための図である。
【図5A】図1に示す樹脂製容器の底板に成形した残留量低減用凸部の一変形例を示す斜視図である。
【図5B】図1に示す樹脂製容器の底板に成形した残留量低減用凸部の他の変形例を示す斜視図である。
【図6】図1に示す樹脂製容器の底板に成形した残留量低減用凸部のさらに別の変形例を示す斜視図である。
【図7】本発明の第2実施形態における樹脂製容器の断面図である。
【図8】図7に示す第2実施形態における樹脂製容器の変形例における断面図である。
【図9A】図1に示す樹脂製容器において、パーティングラインの突起にて残留収容物が分断される状態を説明するための斜視図である。
【図9B】本発明の第3実施形態における樹脂製容器の底板を示す斜視図である。
【図10】本発明の第4実施形態における複合容器を示す断面図である。
【図11A】本発明の第5実施形態における樹脂製容器の底板を示す斜視図である。
【図11B】図11Aに示す樹脂製容器の底板における変形例を示す斜視図である。
【図12】図11Aに示す樹脂製容器における非突起領域を作製する方法を説明するための図である。
【図13A】本発明の第5実施形態における樹脂製容器の底板を示す斜視図である。
【図13B】図13Aに示すA−A部の断面図である。
【図13C】図13Aに示す樹脂製容器の変形例における底板を示す斜視図である。
【図14】図13Aに示す樹脂製容器を作製するための治具の斜視図である。
【図15】本発明の第5実施形態及び第6実施形態を組み合わせた樹脂製容器の底板を示す斜視図である。
【図16】従来の樹脂製ドラム缶の断面図で、ポンプアップ方式の場合を示す図である。
【図17】従来の樹脂製ドラム缶の断面図で、加圧方式の場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施形態である樹脂製容器、及び複合容器、並びに上記樹脂製容器の製造方法について、図を参照しながら以下に説明する。尚、各図において、同一又は同様の構成部分については同じ符号を付している。また、上記複合容器とは、樹脂製の内装容器を、該内装容器よりも剛性が高い外装容器内に装填した、二重容器が相当する。
【0033】
第1実施形態;
図1には、本実施形態における樹脂製ドラム缶101が示されている。ここで、樹脂製ドラム缶101は、樹脂製容器の一例に相当する。また、当該樹脂製容器は、樹脂製ドラム缶101のような円筒形状に限定されず、例えば角形状等であってもよく、その形状は問わない。
樹脂製ドラム缶101は、上述した従来の樹脂製ドラム缶1と同様に、例えばポリエチレン材等の熱可塑性樹脂材を一対の金型を用いてブロー成形により作製される。また、ブロー成形されることから、缶内面には、当該樹脂製ドラム缶101を縦方向に2等分し上記一対の金型同士の接合部分に対応する直線状のパーティングライン(PL)107(図2)が形成される。該パーティングライン107では、パーティングライン107以外の缶内面に比べて缶内側に凸形状の肉塊がパーティングライン107に沿って形成されている。
【0034】
また、図16を参照して説明したように、従来の樹脂製ドラム缶1の底板4は、収容物収容時における剛性を確保するため、その中央部分が缶内側に凸状又は円弧状に膨らんだ形状4aにて成形されている。図1に示すように、本実施形態における樹脂製ドラム缶101における底板104でも同様に、底板中央部分が缶内側101aに凸状又は円弧状に膨らんだ形状104aにて成形されている。
【0035】
本実施形態における樹脂製ドラム缶101では、底板104には上記形状104aに加えてさらに、当該樹脂製ドラム缶101における特徴的構成部分の一つである残留量低減用凸部110を成形している。残留量低減用凸部110について、以下に詳しく説明する。
【0036】
樹脂製ドラム缶101の天板105には、従来の樹脂製ドラム缶1と同様に、天板105における直径方向に沿った2カ所に口部106a、106bが成形されている。口部106a、106bは、収容物の注入及び排出を行うための天板105における開口部であり、収容物を排出するために排出用チューブ102を使用する場合には、口部106a、106bのいずれか一方に、図1に示すように例えば口部106aに、排出用チューブ102が挿入され、他方には、例えば窒素ガス注入管が取り付けられる。尚、口部106a、106bは、缶内側101aを気密に保持するような構造を有する。また、本実施形態における樹脂製ドラム缶101において、排出用チューブ102を用いた収容物の排出方法は、従来と同様に、上述したポンプアップ方式又は加圧方式が採られる。また、口部106a、106bのいずれか一方に、排出用チューブ102及び上記窒素ガス注入管の両方を取り付けるように構成してもよい。この場合、他方の口部は、密栓される。
また、口部106a、106bは、上記一対の金型の接合部分に位置する。よって、口部106a、106bは、上記パーティングライン107上に位置する。
【0037】
排出用チューブ102は、本実施形態では樹脂製であり可撓性を有するパイプである。尚、排出用チューブ102は、少なくとも先端部分において可撓性を有すれば良く、その全体が樹脂材で作製されなくてもよく、全体が可撓性を有しなくてもよい。
【0038】
残留量低減用凸部110は、底板104において、上述した口部の内、排出用チューブ102が挿入される口部(以下では、説明の便宜上、図1に対応して「106a」を付す。)の直下に対応した位置にて、図2に示すように、底板104の一部分に、缶内側101aに向かい凸にて成形される。尚、図2では、口部106a、106bに対応して、底板104には、2つの残留量低減用凸部110を成形した形態を示しているが、少なくとも、排出用チューブ102が挿入される口部106aに対応して、一つの残留量低減用凸部110が成形されればよい。
【0039】
尚、図2に示す残留量低減用凸部110、並びに以下で説明する、図5Aに示す残留量低減用凸部118及び図5Bに示す残留量低減用凸部119は、いずれもパーティングライン107を中心として左右対称な形状で成形しているが、これに限定されず、左右非対称な形状にて形成してもよい。
【0040】
このような残留量低減用凸部110は、傾斜面111を有する。該傾斜面111は、口部106aを通り挿入された排出用チューブ102の先端102aが当接し、かつ上記先端102aを缶内の残留収容物3側へ案内する斜面である。収容物排出終了直前において、例えば、底板104の周縁部分104b側に残留収容物3が集まる場合には、図1に示すように、排出用チューブ102の先端102aを周縁部分104b側に案内するように、上記傾斜面111は配置される。尚、周縁部分104bは、底板104において、上記膨らんだ形状104a以外の部分に相当する。
一方、既に説明したように、上記加圧方式にて収容液の排出が行われるときには、底板104の中央部104cが缶外側に膨らんで凸となり、中央部104c側に残留収容物3が集まる場合もある。この場合には、図3に示すように、排出用チューブ102の先端102aを中央部104c側に案内するように、傾斜面111が配置される。
【0041】
尚、収容物排出終了直前において、残留収容物3が周縁部分104b側あるいは中央部104c側に集まるかは、予め、予測可能である。即ち、ポンプアップ方式の場合には、周縁部分104b側であり、加圧方式の場合には、底板104における上記形状4aの形態及びサイズ等、並びに加圧圧力に基づいて予測可能である。よって、傾斜面111の設置位置は、設計可能である。
【0042】
排出用チューブ102の先端102aにおける、底板104の周縁部分104b側又は中央部104c側への案内方向は、傾斜面111の設置位置により決定可能である。即ち、上述のように排出用チューブ102が挿入される口部106aの直下に傾斜面111は設置され、口部106aを通過した排出用チューブ102は、鉛直線又は略鉛直線に沿って缶内を降りてくる。よって、排出用チューブ102の先端102aを底板104の周縁部分104b側へ配向させたい場合には、図4Aに示すように、残留量低減用凸部110の頂上部112を、排出用チューブ102の降下位置102bよりも中央部104c側に位置させればよい。一方、排出用チューブ102の先端102aを底板104の中央部104c側へ配向させたい場合には、図3に示すように、上記頂上部112を上記降下位置102bよりも底板104の周縁部分104b側に位置させればよい。このようにして、排出用チューブ102の案内方向は、設計可能である。
【0043】
残留量低減用凸部110の形状は、一例として、図2に示すような形状であり、上記傾斜面111及び上記頂上部112は、底板104における周方向に沿って湾曲して延在する。また、図2に示すような残留量低減用凸部110の一実施例において、長さLは少なくとも40mm程度必要である。長さLがこれよりも短い場合には、排出用チューブ102の先端102aを残留収容物3側へ確実に配向できない可能性が生じるからである。また、底板104の最下面から頂上部112までの高さHは、6〜50mm程度である。高さHが、6mmより低い場合には、排出用チューブ102の先端102aを残留収容物3側へ確実に配向できない可能性があることから好ましくなく、一方、50mmより高い場合には、残留量低減用凸部110の形状が大型化するため、ブロー成形の際、残留量低減用凸部110の成形性に支障が生じる、樹脂製ドラム缶101の基本的な強度の低下等の不具合が発生する可能性があることから好ましくない。
【0044】
また、傾斜面111の角度は、底板104の水平部分に対して約10度から約80度であり、好ましくは45度から60度程度である。傾斜面111が約10度から約80度の傾斜角度を有することで、排出用チューブ102の先端102aをより確実に残留収容物3側へ配向させることができる。
【0045】
また、残留量低減用凸部110の形状は、図2に示すものに限定されない。例えば、図5Aに示す残留量低減用凸部117、及び図5Bに示す残留量低減用凸部118のような形状を採ることもできる。
【0046】
図5Aの残留量低減用凸部117は、パーティングライン107の近傍に排出用チューブ102の先端102aを配置させるように、C字状あるいはコ字状の平面形状を有する。つまり、残留量低減用凸部117は、パーティングライン107の近傍に排出用チューブ102の先端102aを位置決めする位置規制部117a、117bを有する。
尚、排出用チューブ102の先端102aを底板104の中央部104c側に配向させる場合には、位置規制部117a、117bは、図5Aの場合とは逆に、中央部104c側へ配向される。
【0047】
図5Bの残留量低減用凸部118は、パーティングライン107を避けて排出用チューブ102の先端102aを配置させるように、パーティングライン107に沿って延在する中央突出部118aを有する。
【0048】
さらにまた、口部106a,106bに対応して底板104に2つの残留量低減用凸部110を成形する形態では、図6に示すように、両残留量低減用凸部110の頂上部112を連結し、かつ、凸状又は円弧状に膨らんだ形状104aと同じ高さにて、形状104aと一体的に成形してもよい。
【0049】
以上説明したように構成される残留量低減用凸部110における動作について、図1、及び図4A〜図4Cを参照して説明する。尚、ここでは、残留量低減用凸部110は、排出用チューブ102の先端102aを底板104の周縁部分104b側へ配向させるように、底板104に成形されている場合を例に採る。
【0050】
樹脂製ドラム缶101の口部106aに挿入され、口部106aを通過して鉛直方向又は略鉛直方向に沿って降下してくる排出用チューブ102の先端102aは、図4Aに示すように、残留量低減用凸部110の頂上部112に対して底板104の周縁部分104b側に位置する残留量低減用凸部110の傾斜面111に当接する。その後、さらに排出用チューブ102が挿入されることで、図4B及び図4Cに示すように、排出用チューブ102の先端102aは、傾斜面111に案内されながら降下し、底板104の周縁部分104b側に位置決めされる。
【0051】
よって、収容物排出終了直前において、底板104の周縁部分104b側に残留収容物3が集まる場合に、排出用チューブ102の先端102aを周縁部分104b側に位置決めすることができる。
【0052】
このように、本実施形態の樹脂製ドラム缶101によれば、収容物排出終了直前において残留収容物3が集まる底板104の場所、つまり周縁部分104b側あるいは中央部104c側に、排出用チューブ102の先端102aを、確実に配置させることができ、残留収容物3を排出させることができる。したがって、本実施形態の樹脂製ドラム缶101によれば、従来に比べて収容物3の缶内残留量を低減することができる。
【0053】
尚、図4B及び図4Cに示すように、排出用チューブ102は、残留量低減用凸部110に当接することで、若干湾曲する。さらに、極力、缶内における収容物3の残留量を低減するため、図4Cに示すように、排出用チューブ102の先端102aを可能な限り底板104の内面に近接させる必要がある。よって、残留量低減用凸部110を設けた場合における排出用チューブ102の長さは、出願人の実験によれば、口部106aから底板104の内面までの規定の鉛直方向深さに対して、5〜60mm程度長めに設定するのが好ましい。
【0054】
また、本実施形態の樹脂製ドラム缶101において、残留量低減用凸部110の成形は、ブロー成形を行う従来の金型に、残留量低減用凸部110を成形するための凸状の部材を取り付けるだけで済み、金型全体を新調する必要はない。したがって、本実施形態の樹脂製ドラム缶101は、非常に低コストで高い効果を得ることができ、好ましい。
【0055】
第2実施形態;
上述した第1実施形態における樹脂製ドラム缶101では、口部106aに対向した底板104の一部分のみに残留量低減用凸部110を成形した形態であった。これに対し、図7に示す本第2実施形態における樹脂製ドラム缶101−2は、底板104−2の全周にわたり成形された残留量低減用凸部131を有する。尚、樹脂製ドラム缶101−2において、底板104−2以外の構成部分は、上述した樹脂製ドラム缶101における構成と変わる部分はない。よって、以下では、底板104−2に成形される残留量低減用凸部131についてのみ、説明を行う。
【0056】
底板104−2は、図7に示すように、底板104−2の全周にわたり成形された傾斜面111−2を有する。傾斜面111−2は、上述の傾斜面111と比べて長さが異なるだけであり、その機能は、上述の傾斜面111の場合と同じである。第2実施形態における樹脂製ドラム缶101−2は、収容物排出終了直前において、底板104−2の周縁部分104b−2側に残留収容物3が集まるタイプを想定している。よって、傾斜面111−2の頂上部112−2は、口部106aから降下してくる排出用チューブ102の先端102aに対して底板104−2の中央部104c−2側に位置する。したがって、上記降下してきた排出用チューブ102は、上記周縁部分104b−2側へ配向される。また、傾斜面111−2の底面からの高さHは、第1実施形態の場合における傾斜面111の高さHと同じ値を採ることができる。
【0057】
本樹脂製ドラム缶101−2では、図7に示すように、上記頂上部112−2は、底板104−2の中央部104c−2にかけて平坦面にて成形されている。しかしながら、この形態に限定されず、上記中央部104c−2を凹状に成形してもよい。
【0058】
また、本第2実施形態における樹脂製ドラム缶101−2が、収容物排出終了直前において、底板104−2の中央部104c−2側に残留収容物3が集まるタイプである場合には、図8に示すように、上記降下してくる排出用チューブ102の先端102aに対して、頂上部112−2を底板104−2の周縁部分104b−2側に位置させて、傾斜面111−2が底板104−2の全周にわたり成形される。また、中央部104c−2は、凹状に成形される。
【0059】
第3実施形態;
第1実施形態及び第2実施形態のいずれの場合においても、製造方法に起因して上述したように、樹脂製ドラム缶101,101−2の内面には、パーティングライン107に沿って、缶内側101aに向かって凸状にて形成された肉塊(突起)が形成されている。よって、例えば図1に示す樹脂製ドラム缶101の場合、図9Aに示すように、底板104の周縁部分104b側に集まった残留収容物3は、底面104を直径方向に沿って延在する上記突起107aによって、残留収容物3aと残留収容物3bとに分断されることになる。尚、このような現象は、上述した他の形態におけるいずれの樹脂製ドラム缶の底板でも発生する。
【0060】
このように残留収容物3が2つに分断されると、残留量低減用凸部110等を用いて排出用チューブ102の先端102aの配向を行ったとしても、片側分の残留収容物3しか排出できない状態の発生が危惧される。
【0061】
そこで本実施形態の樹脂製ドラム缶101−3は、図9Bに示すように、底板104の周縁部分104bに、突起107aの無い非突起領域141を有する。尚、本実施形態では、底板104の周縁部分104bに残留収容物3が集まる樹脂製ドラム缶101を例に採っていることから、周縁部分104bに非突起領域141を形成したが、要するに、収容物排出終了直前において、底板104で残留収容物3が集まる箇所に対応して非突起領域141を形成すればよい。
【0062】
非突起領域141を形成することで、残留収容物3を2箇所に分断する堰が無くなる。よって、本実施形態の樹脂製ドラム缶101−3によれば、残留収容物3は、底板104のいずれの場所にも流動することが可能となり、1本の排出用チューブ102によって残留収容物3を排出することができる。このように本実施形態の樹脂製ドラム缶101−3によれば、残留量低減用凸部110等との相乗効果により、収容物3の缶内残留量をさらに低減することができる。
【0063】
第4実施形態;
以上説明した第1実施形態から第3実施形態では、樹脂材のブロー成形により成形された単体の容器である樹脂製ドラム缶101等について説明を行った。一方、従前より、樹脂製でブロー成形される内装容器を、該内装容器よりも剛性が高い、例えば鋼製の外装容器内に装填した二重容器にてなる、複合容器と呼ばれる容器も存在する。例えば、主に10〜20リットル用の複合ペール缶、及び主に60〜200リットル用の、一般的にケミドラム等の名称で呼ばれる缶が存在する。これらの複合容器においても、上部に設けた口部から排出用チューブを挿入し、上記加圧方式又は上記ポンプアップ方式にて内容物が排出される。尚、上記内装容器の底板には、樹脂製ドラム缶101等のように、底板104において底板中央部分が缶内側101aに凸状又は円弧状に膨らんだ形状104aは、成形されていない。また、上記内装容器は、円筒形状に限定されず、その形状を問わない。
【0064】
そこで、第1実施形態から第3実施形態において説明した残留量低減用凸部110、131を、図10に示すように、上記複合ペール缶及び上記ケミドラム缶における、樹脂製でブロー成形される上記内装容器に適用することも可能であり、第1実施形態から第3実施形態と同様の効果を得ることが可能である。
【0065】
図10に示す複合容器150では、樹脂製でブロー成形された内装容器151は、残留量低減用凸部110、131に相当する残留量低減用凸部152を底板部分に有する。尚、複合容器150は、一例として上記複合ペール缶に相当する容器を図示したものである。また、複合容器150では、口部106aのみが成形されているが、勿論、2つの口部が成形されてもよい。また、図10に示す上記複合ペール缶では、上記加圧方式にて収容物の排出が行われることが多い。よって、図10に示す残留量低減用凸部152は、排出用チューブ102を容器中央部側へ配向するように成形した場合を示している。しかしながら、残留量低減用凸部152は、勿論、排出用チューブ102を容器の周縁側へ配向するように成形してもよい。
また、残留量低減用凸部152について、第1実施形態から第3実施形態にて説明した残留量低減用凸部の変形例を適用することも可能であり、同様の効果を得ることができる。
【0066】
上述した第1実施形態から第4実施形態では、底板は、残留量低減用凸部110、117,118,131、152を備えている。一方、以下に説明する第5実施形態、及び第6実施形態では、底板に残留量低減用凸部を設けることなく、従来に比べて収容物の缶内残留量を低減可能な樹脂製ドラム缶について記述する。ここで、第5実施形態及び第6実施形態では、上述した第1実施形態から第3実施形態で説明した単体の容器である樹脂製ドラム缶から上記残留量低減用凸部を除外した形態の樹脂製ドラム缶を例に採る。よって、第1実施形態から第3実施形態における樹脂製ドラム缶と同じ構成部分については、同じ符号を付し、ここでの説明を省略する。
また、第5実施形態及び第6実施形態における樹脂製ドラム缶では、収容物3をポンプアップ方式にて排出する方式を採る。よって収容物3は、底板104の周縁部分104bに残留することになる。
【0067】
第5実施形態;
図11Aに示す本第5実施形態における樹脂製ドラム缶201は、例えば第1実施形態における樹脂製ドラム缶101と同様に、例えばポリエチレン材等の熱可塑性樹脂材を一対の金型を用いてブロー成形により作製される。よって缶内面には、上記パーティングライン(PL)107が形成される。該パーティングライン107では、上述したように、パーティングライン107以外の缶内面に比べて缶内側に凸形状の肉塊つまり突起107aがパーティングライン107に沿って形成されている。また、底板104についても、第1実施形態等と同様に、底板中央部分が缶内側101aに凸状又は円弧状に膨らんだ形状104aにて成形されている。
一方、樹脂製ドラム缶201の底板104には、上述のように、残留量低減用凸部は、形成されていない。
【0068】
このような構成を有する樹脂製ドラム缶201は、上述の第3実施形態における構成と同様に、図11Aに示すように、底板104の周縁部分104bに、突起107aの無い非突起領域141を有する。尚、本実施形態では、底板104の周縁部分104bに残留収容物3が集まる樹脂製ドラム缶201を例に採ることから、周縁部分104bに非突起領域141を形成したが、要するに、収容物排出終了直前において、底板104で残留収容物3が集まる箇所に対応して非突起領域141を形成すればよい。また、図11Aに示すように本実施形態では、非突起領域141は、パーティングライン107に沿って周縁部分104bの全域にわたり形成したが、図11Bに示すように、周縁部分104bの一部分にのみ形成してもよい。
【0069】
このように非突起領域141を形成することで、第3実施形態にて説明したように、残留収容物3は、底板104にて2分割されることなく底板104のいずれの場所にも流動することが可能となり、1本の排出用チューブ102によって残留収容物3を排出することができる。よって、収容物3の缶内残留量を従来に比べて低減することが可能となる。
【0070】
非突起領域141の形成は、本実施形態では以下のように行われる。
即ち、一対の金型を用いて熱可塑性樹脂材をブロー成形することにより樹脂製ドラム缶201が作製される。作製後、上記熱可塑性樹脂材が冷えて硬化する前に、図12に示すように、パーティングライン107の真上に位置し、排出用チューブ102が挿入される口部106aを通過してプレス部材250を降下させ、突起107aに当接、押下して押し潰して非突起領域141を形成する。これにて非突起領域141は、底板104の周縁部分104bとほぼ同じ平面となる。
【0071】
プレス部材250は、その先端に、鋼製にてなる押し潰し部251を有する。該押し潰し部251は、口部106aを通過可能な大きさで、かつ少なくとも突起107aを覆う大きさを有し、非突起領域141を形成するための部材である。このようなプレス部材250は、押圧装置255に接続され、押圧装置255により、樹脂製ドラム缶201への挿入、降下、押し潰し、樹脂製ドラム缶201からの除去の各動作が自動的に行われる。また、押し潰し動作に当たり、プレス部材250は、樹脂製ドラム缶201の温度と同程度まで加温されるのが好ましい。尚、押し潰し動作に当たっては、樹脂製ドラム缶201の外側で底板104には、例えば鋼製にてなる当て板252が配置される。
【0072】
尚、上述のように非突起領域141は、本実施形態では、底板104の周縁部分104bとほぼ同じ平面として形成されるが、周縁部分104bに比べて凹となるように形成してもよい。このように凹部として非突起領域141を形成した場合には、収納物3の残留物を非突起領域141部分に集めることができ、非突起領域141に排出用チューブ102の先端を配置することで、より効率的に残液排出が可能となるというメリットがある。
【0073】
また、口部106aに加えて口部106bに対応してさらに非突起領域141を形成してもよい。
【0074】
第6実施形態;
上述したように、本第6実施形態における樹脂製ドラム缶も第5実施形態の樹脂製ドラム缶201と同様に、底板104には残留量低減用凸部は、形成されていない。
一方、図13Aに示す本第6実施形態における樹脂製ドラム缶202において、底板104の周縁部分104bには、集液用斜面213a−1,213a−2,213b−1,213b−2(総括して、集液用斜面213と記す場合もある)が形成されている。これらの集液用斜面213は、パーティングライン107に対して直角に交わる直径位置211a,211b(総括して、直径位置211と記す場合もある)からパーティングライン位置212a,212b(総括して、パーティングライン位置212と記す場合もある)に向けて下り傾斜となる斜面である。尚、本実施形態では、図13A及び図13Bに示すように、直径位置211は、膨らんだ形状104a部分と同じ又は略同じ高さレベルに位置するが、これに限定されるものではなく、形状104a部分以下で、パーティングライン位置212の高さレベルよりも高く位置すればよい。
【0075】
このように、底板104の周縁部分104bに集液用斜面213を形成することで、周縁部分104bにおける残留収容物3は、パーティングライン位置212a,212b、つまり口部106a,106bに対応した位置に集まる。よって、排出用チューブ102によって残留収容物3を効率的に排出することができ、収容物3の缶内残留量を従来に比べて低減することができる。
【0076】
尚、本実施形態では樹脂製ドラム缶202の成型上の理由から、直径位置211a,211bを頂上部分として、上述のようにパーティングライン位置212a,212bのそれぞれに残留収容物3が集まるように集液用斜面213を形成した。しかしながら、底板104の周縁部分104bにおいて、頂上部分は、上記直径位置211a,211bに限らず、いずれの位置に形成してもよい。一方、上述のように排出用チューブ102は、口部106aに設けられる場合が多い。よって、口部106aに対応したパーティングライン位置212aにのみ残留収容物3が集まるように、集液用斜面213を形成するのがより好ましい。即ち、図13Cに示すように、パーティングライン位置212bを頂上部分としてパーティングライン位置212aが最下部分となるように、集液用斜面213を形成するのがより好ましい。
【0077】
集液用斜面213の形成は、本実施形態では以下のように行われる。尚、ここでの説明は、図13Aに示すように上記直径位置211a,211bを頂上部分として集液用斜面213を形成する場合を例に採る。
即ち、一対の金型を用いて熱可塑性樹脂材をブロー成形することにより樹脂製ドラム缶202が作製される。作製後、上記熱可塑性樹脂材が冷えて硬化する前に、樹脂製ドラム缶202の外側で底板104の周縁部分104bには、図14に示すように、円周上の2箇所261a,261bを凸とした矯正用治具260を配置する。尚、2箇所261a,261bが直径位置211a,211bにそれぞれ対応する。そして、2箇所261a,261bを底板104の外側に接した状態で、矯正用治具260を缶内側へ押圧する。これにより、底板104の周縁部分104bには、集液用斜面213が形成される。
【0078】
尚、第6実施形態と第5実施形態と組み合わせることで、図15に示す樹脂製ドラム缶203のように、底板104の周縁部分104bにおいて、パーティングライン位置212に非突起領域141を有し、かつ集液用斜面213を備えた樹脂製ドラム缶を作製することもできる。
また、この形態にさらに第1実施形態を組み合わせることで、集液用斜面213、非突起領域141、及び残留量低減用凸部110を備えた樹脂製ドラム缶を作製してもよい。
【0079】
また、上述した各実施形態を適宜、組み合わせた構成を採ることもできる。そのような構成では、組み合わされた各実施形態が奏するそれぞれの効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、樹脂製のドラム缶、及び樹脂製の内装容器を外装容器内に装填した複合容器、並びに上記樹脂製のドラム缶の製造方法に適用可能である。
【符号の説明】
【0081】
3…収容物、
101、101−2、101−3…樹脂製ドラム缶、102…排出用チューブ、
102a…先端、104…底板、104b…周縁部分、104c…中央部、
106a…口部、107…パーティングライン、107a…突起、
110、117…残留量低減用凸部、117a,117b…位置規制部、
118…残留量低減用凸部、118a…中央突出部、
131…残留量低減用凸部、141…非突起領域、
150…複合容器、151…内装容器、152…残留量低減用凸部、
213…集液用斜面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の金型にて熱可塑性樹脂をブロー成形することで作製される樹脂製容器で、天板(105)に成形された口部(106a)から容器内へ挿入される排出用チューブ(102)を通して収容物(3)が排出される樹脂製容器において、
当該樹脂製容器の底板(104)において容器内側に向かい凸にて成形され、上記排出用チューブを配向させて上記収容物の容器内残留量を低減する残留量低減用凸部であって、少なくとも上記口部の直下に対応して位置し、かつ上記排出用チューブの先端(102a)が当接し、かつ上記先端を容器内の残留収容物(3)側へ案内する傾斜面(111)を有する残留量低減用凸部(110、117、118、131)を備えたことを特徴とする樹脂製容器。
【請求項2】
上記残留収容物は、上記底板の周縁部分(104b)に位置し、
上記傾斜面は、上記底板の全周にわたり成形され、
上記残留量低減用凸部は、上記底板の中央部(104c)まで延在し、該中央部は、平坦面にてなる、請求項1記載の樹脂製容器。
【請求項3】
上記残留収容物は、上記底板の周縁部分(104b)又は上記底板の中央部(104c)に位置し、
上記傾斜面及び上記残留量低減用凸部は、上記口部の直下に対応した位置にのみ成形される、請求項1記載の樹脂製容器。
【請求項4】
上記残留収容物は、上記底板の中央部(104c)に位置し、
上記傾斜面は、上記底板の全周にわたり成形され、
上記底板の中央部は、上記残留量低減用凸部に対して凹状である、請求項1記載の樹脂製容器。
【請求項5】
上記残留量低減用凸部(117)は、上記ブロー成形により上記底板に形成されるパーティングライン(107)の近傍に上記排出用チューブの先端を位置決めする位置規制部(117a、117b)を有するコ字形状にてなる、請求項3記載の樹脂製容器。
【請求項6】
上記残留量低減用凸部(118)は、上記ブロー成形により上記底板に形成されるパーティングライン(107)に沿って延在する中央突出部(118a)を有する、請求項3記載の樹脂製容器。
【請求項7】
上記底板は、上記ブロー成形により上記底板に形成されるパーティングライン(107)上の突起(107a)の内、上記残留収容物が存在する部分について、上記突起の無い非突起領域(141)を有する、請求項1から6のいずれかに記載の樹脂製容器。
【請求項8】
金型にて熱可塑性樹脂をブロー成形することで作製され、収容物(3)を収容する内装容器(151)と、上記内装容器よりも剛性が高い材料にて作製され、上記内装容器を内側に装填する外装容器(153)とを備え、上記外装容器及び上記内装容器の口部(106a)から上記内装容器内へ挿入される排出用チューブ(102)を通して上記収容物が排出される複合容器において、
上記内装容器は、当該内装容器の底板において容器内側に向かい凸にて成形される残留量低減用凸部であって、傾斜面(111)を有し上記排出用チューブを配向させて上記収容物の残留量を低減する残留量低減用凸部(152)を備え、上記傾斜面は、少なくとも上記口部の直下に対応して位置し、かつ上記排出用チューブの先端が当接し、かつ上記先端を上記内装容器内の残留収容物側へ案内することを特徴とする複合容器。
【請求項9】
一対の金型にて熱可塑性樹脂をブロー成形することで作製される樹脂製容器で、天板(105)に成形された口部(106a)から容器内へ挿入される排出用チューブ(102)を通して収容物(3)が排出される樹脂製容器において、
当該樹脂製容器の底板(104)は、上記ブロー成形により上記底板に形成されるパーティングライン(107)上の突起(107a)の内、容器内の残留収容物が存在する部分について、上記突起の無い非突起領域(141)を有することを特徴とする樹脂製容器。
【請求項10】
一対の金型にて熱可塑性樹脂をブロー成形することで作製される樹脂製容器で、天板(105)に成形された口部(106a)から容器内へ挿入される排出用チューブ(102)を通して収容物(3)が排出される樹脂製容器において、
当該樹脂製容器の底板(104)は、当該底板の周縁部分において、上記口部の直下部分に対して下り傾斜となる集液用斜面(213)を有することを特徴とする樹脂製容器。
【請求項11】
上記底板(104)は、上記ブロー成形により上記底板に形成されるパーティングライン(107)上の突起(107a)の内、容器内の残留収容物が存在する部分について、上記突起の無い非突起領域(141)をさらに有する、請求項10記載の樹脂製容器。
【請求項12】
上記底板(104)において容器内側に向かい凸にて成形され、上記排出用チューブを配向させて上記収容物の容器内残留量を低減する残留量低減用凸部であって、少なくとも上記口部の直下に対応して位置し、かつ上記排出用チューブの先端(102a)が当接し、かつ上記先端を容器内の残留収容物(3)側へ案内する集液用斜面(111)を有する残留量低減用凸部(110、117、118、131)をさらに備えた、請求項10又は11に記載の樹脂製容器。
【請求項13】
一対の金型にて熱可塑性樹脂をブロー成形することで作製される樹脂製容器で、天板(105)に成形された口部(106a)から容器内へ挿入される排出用チューブ(102)を通して収容物(3)が排出される樹脂製容器の製造方法において、
上記ブロー成形にて当該樹脂製容器を作製した後、上記熱可塑性樹脂が硬化する前に、上記ブロー成形により当該樹脂製容器の底板(104)に形成されるパーティングライン(107)上の突起(107a)の内、容器内の残留収容物が存在する部分を押し潰して上記突起の無い非突起領域(141)を形成することを特徴とする樹脂製容器の製造方法。
【請求項14】
一対の金型にて熱可塑性樹脂をブロー成形することで作製される樹脂製容器で、天板(105)に成形された口部(106a)から容器内へ挿入される排出用チューブ(102)を通して収容物(3)が排出される樹脂製容器の製造方法において、
上記ブロー成形にて当該樹脂製容器を作製した後、上記熱可塑性樹脂が硬化する前に、当該樹脂製容器の底板(104)の周縁部分において上記口部の直下部分に対して下り傾斜となる集液用斜面(213)を形成することを特徴とする樹脂製容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−121645(P2011−121645A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50520(P2010−50520)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000198802)積水成型工業株式会社 (66)
【Fターム(参考)】