説明

樹脂製機能シートの修復方法及び修復装置

【課題】ハンダごてや加熱ロール等の加熱手段により押圧することなく、安定して形状の欠陥部位を修復することができる樹脂製機能シートの修復方法を提供する。
【解決手段】樹脂製機能シート1に発生した形状的な欠陥部位2を修復する樹脂製機能シートの修復方法であって、支持用板材3の上部に弾性シート4を介して樹脂製機能シート1の欠陥部位2を含む領域を配置し、その上方に加圧用板材5を積層する積層工程と、支持用板材3と加圧用板材5間で樹脂製機能性シート1を加圧する加圧工程と、加圧状態を維持しながら加圧用板材5の上方から樹脂製機能性シート1の欠陥部位2を加熱する加熱工程と、加熱後に所定時間加圧状態を維持する養生工程とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製機能シートに発生した形状的な欠陥部位を修復する樹脂製機能シートの修復方法及び修復装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置に用いられる中間転写ベルト等には、導電性物質が配合されたポリイミド、ポリアミドイミド、エチレンとテトラフルオロエチレンとの共重合体(以下、「ETFE」とも記する)、ポリフッ化ビニリデン等の半導電性を示す樹脂製機能シートが用いられている。例えば、中間転写ベルトは感光体上に形成されたトナー像が一次転写され、その後、記録紙に二次転写されるトナー像の担持体として用いられる。
【0003】
これらの樹脂製機能シートは、樹脂、導電性物質、及び、溶剤等を含有する原料液を、円筒金型の内面に流し込んで回転させる遠心成形法等によってシームレスのベルト状フィルムに形成されるが、このような成形品を金型から剥離し、或は検品する際に、ベルト状フィルムに折れ等の形状的な欠陥つまり局所的な凹凸の変形が発生する場合がある。
【0004】
そのような形状の変形が生じた樹脂製機能シートを中間転写ベルトに用いると、欠陥部位にトナー像の欠損等が発生する虞があり、記録紙に二次転写される画像の品質が低下するため、製品として利用できず、歩留まり率が低下するという問題があった。
【0005】
そこで、特許文献1には、樹脂中に導電性物質を含有する半導電性ベルトの形状的な欠陥部分を加熱処理して平坦化させる半導電性ベルトの修復方法が提案されている。
【0006】
具体的には、平滑面を有する平面または曲面形状の板状体でベルト両面を挟持しつつ、その欠陥部分を加熱処理することにより、欠陥部分を修正するもので、欠陥部分の内側から例えばフッ素樹脂等の板で保持し、その欠陥部分の上にフィルムをあてがい、このフィルムの上からハンダごてや加熱ロール等の加熱手段で押さえながら加熱処理する方法が例示されている。
【特許文献1】特開2002−365926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載された修正方法によれば、欠陥部分を加熱処理する際に加熱手段で押圧する必要があるが、押圧力が強すぎると欠陥部分の周囲にまで変形し、却って状態が悪化する虞があり、押圧力が弱すぎると十分に修復できないといった問題があった。
【0008】
本発明の目的は、上述の問題点に鑑み、ハンダごてや加熱ロール等の加熱手段により押圧することなく、安定して形状の欠陥部位を修復することができる樹脂製機能シートの修復方法及び修復装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、本発明による樹脂製機能シートの修復方法の特徴構成は、樹脂製機能シートに発生した形状的な欠陥部位を修復する樹脂製機能シートの修復方法であって、支持用板材の上部に弾性シートを介して前記樹脂製機能シートの欠陥部位を含む領域を配置し、その上方に加圧用板材を積層する積層工程と、前記支持用板材と前記加圧用板材間で前記樹脂製機能シートを加圧する加圧工程と、加圧状態を維持しながら前記加圧用板材の上方から前記樹脂製機能シートの欠陥部位を加熱する加熱工程と、加熱後に所定時間前記加圧状態を維持する養生工程とからなること点にある。
【0010】
樹脂製機能シートの欠陥部位を含む領域が、支持用板材の上部に配置された弾性シートを介して加圧用板材との間で挟持された後に加圧されるため、欠陥部位の周囲は平坦な状態が維持されるように加圧される。この状態で加圧用板材の上方から欠陥部位が加熱されると、欠陥部位が軟化して収縮しようとする。このとき、前記樹脂製機能シートの欠陥部位を含む領域には、弾性シートによる弾性力が加圧用板材に向けて作用しているので、収縮による欠陥部位の周囲に歪が発生することなく凹凸の欠陥部位が平坦に修復される。さらにその後、加圧状態が維持されたまま養生される間に温度が低下して、修復状態がその後も安定的に維持されるようになるのである。
【0011】
前記弾性シートが、硬度が90A(JIS K 6253)以下であることが好ましく、さらには、前記弾性シートが、耐熱シートであることが好ましい。シリコーンゴム系またはフッ素系の耐熱シートが好適である。
【0012】
前記加圧工程で、前記樹脂製機能シートを0.1kPa以上の圧力範囲で加圧することが好ましい。
【0013】
前記加圧用板材が透明ガラス板であれば、樹脂製機能シートの欠陥部位の位置を目視確認しながら積層工程、加圧工程、加熱工程を実行することができる点で好ましい。
【0014】
前記樹脂製機能シートがポリイミド、ポリアミドイミド、エチレンとテトラフルオロエチレンとの共重合体のうちの何れか一種の樹脂製であることが好ましい。
【0015】
前記樹脂製機能シートが、樹脂中に導電性物質を含有し、表面抵抗率1×10から1×1015Ω/□、または体積抵抗率1×10から1×1014Ω・cmの半導電性ベルトであることが好ましい。
【0016】
本発明による樹脂製機能シートの修復装置の特徴構成は、樹脂製機能シートに発生した形状的な欠陥部位を修復する樹脂製機能シートの修復装置であって、支持用板材の上部に弾性シートが配置され、前記樹脂製機能シートの欠陥部位を含む領域を載置する支持部と、前記支持部に載置された前記樹脂製機能シートを被覆する加圧用板材の上方から前記樹脂製機能シートを加圧する加圧機構と、前記加圧機構により加圧した状態で前記加圧用板材の上方から前記欠陥部位を加熱する加熱機構を備えている点にある。
【0017】
前記弾性シートの硬度が90A(JIS K 6253)以下であることが好ましく、さらに前記加圧機構は、前記樹脂製機能シートを0.1kPa以上の圧力範囲で加圧するように構成されていることが好ましい。
【0018】
前記加熱機構は、前記加圧用板材の上方から熱風を吹き出すノズルを備えていることが好ましい。さらに、前記加圧用板材が透明ガラス板であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
以上説明した通り、本発明によれば、ハンダごてや加熱ロール等の加熱手段により押圧することなく、安定して形状の欠陥部位を修復することができる樹脂製機能シートの修復方法及び修復装置を提供することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明による樹脂製機能シートに発生した形状的な欠陥部位の修復方法を説明する。
【0021】
樹脂製機能シートの一例である電子写真方式の画像形成装置に用いられる中間転写ベルトは、樹脂、導電性物質、及び、溶剤等を含有する原料液を、成型ドラムを回転させながら内面に成型溶液を塗布し高温で成型する方法や、樹脂、導電性物質等を溶融混合してペレット化したものを押出成形する方法等によってシームレスのベルト状フィルムに形成される。
【0022】
成形後にベルトを金型から剥離し、或は検品する際に、湾曲したベルト状フィルムの一部が折れたり装置の一部に接触すると、当該折れ部位や接触部位に数mmの凹凸の線状等の形状的な欠陥部位が発生する場合がある。
【0023】
本発明は、このような樹脂製機能シートに発生した形状的な歪を修復するために発案されたものであり、以下、図面に基づいて具体的に説明する。尚、図面では、シームレス状のベルトに替えて平坦な平面状のシートに発生した形状的な欠陥部位を修復する場合を例示している。
【0024】
図1(a)は、樹脂製機能シート1の中央部に、折れによる凹凸の歪2が発生した状態を示している。このような形状的な欠陥部位が生じた樹脂製機能シート1は、以下に説明する積層工程、加圧工程、加熱工程、養生工程の各工程を経て平坦な面形状に修復される。
【0025】
図1(b)に示すように、積層工程では、支持用板材3の上部に配置された弾性シート4の上面に、樹脂製機能シート1の欠陥部位2を含む領域の裏面が接触するように配置して、樹脂製機能シート1の上面に加圧用板材5を積層する。
【0026】
加圧用板材5として平坦なガラス板、特に透明ガラス板を用いることが好ましく、積層工程及び加熱工程で欠陥部位を確認しながら作業できるようになる。尚、ガラス板に替えて樹脂製機能シート1との接合面が平滑な表面を備えた板状体であってもよい。支持用板材3は平坦な表面形状を備えた板材であればよく、ガラス板や金属板を用いることができる。
【0027】
次に、図1(c)に示すように、加圧工程では、支持用板材3と加圧用板材5間に弾性シート4を介して積層された樹脂製機能シート1の欠陥部位2の周囲を加圧体6により所定圧力で加圧する。
【0028】
ここで、弾性シート4は、その硬度が、90A(JIS K 6253)以下であることが好ましく、10Aから90Aの範囲が好適であり、さらには、30Aから80Aの範囲がより好適である。
【0029】
さらに、弾性シート4は、最高連続使用温度が150℃以上、好ましくは180度以上、さらに好ましくは200℃以上である耐熱性のよい、シリコーンゴム系又はフッ素ゴム系の耐熱シートであることが好ましい。
【0030】
加圧工程では、0.05kPa以上の圧力範囲で加圧することが好ましく、さらに、0.1kPa以上の圧力範囲で加圧することが好ましく、さらに、1kPa以上の圧力範囲が好適である。ただし、ガラス板、ベルト、ベルト修復装置等の耐圧力を考慮すると、1kPaから100kPaの範囲が好ましい。
【0031】
図2(a)に示すように、加熱工程では、加圧体6による加圧状態を維持しながら、加圧用板材5の上方に配置した加熱ノズル7から加熱流体7aを吹き付けることにより、樹脂製機能シート1の欠陥部位2を間接的に加熱する。
【0032】
加圧用板材5を介して欠陥部位2が加熱されると、欠陥部位2及びその周辺部位が次第に軟化してやや収縮するようになる。このとき弾性シート4による弾性力が相対的に加圧用板材5に向けて作用しているため、欠陥部位2の周囲に歪が発生することなく凹凸の欠陥部位2が平坦に修復されるようになる。
【0033】
加熱工程で欠陥部位2を間接加熱する温度の具体的範囲は、樹脂製機能シートを構成する樹脂の性質に応じて適宜決定され、このときの加熱工程で欠陥部位2を間接加熱する時間は、加熱用板材5の材質や厚さ、加熱機構14の熱源の強さ、樹脂の種類にもよるが、1秒から300秒程度である。
【0034】
例えば、樹脂製機能シートが半導電性ポリイミドベルトである場合は、欠陥部位を加熱した際の最高温度は、ガラス転移温度である280℃以下であって、90℃以上且つ190℃以下に含まれる温度となるように加熱することが好ましく、さらには、100℃以上且つ180℃以下に含まれる温度となるように加熱するのが好ましく、さらには、120℃以上且つ150℃以下に含まれる温度となるように加熱するのが好ましい。加熱ノズル7から約400℃の加熱流体7aを、厚さ5.0mmのガラス製加熱用板材5の表面から吹き付けると、約30秒で欠陥部位が150℃程度に加熱され、この状態を約60秒間維持することにより、折れが視認できる程度残っているが使用上問題ない程度まで修復されるようになる。
【0035】
樹脂製機能シートが半導電性ポリアミドイミドベルトである場合は、欠陥部位を加熱した際の最高温度は、ガラス転移温度である285℃以下であって、80℃以上且つ170℃以下に含まれる温度となるように加熱することが好ましく、さらには、90℃以上且つ160℃以下に含まれる温度となるように加熱するのが好ましく、さらには、120℃以上且つ150℃以下に含まれる温度となるように加熱するのが好ましい。加熱ノズル7から約400℃の加熱流体7aを、厚さ5.0mmのガラス製加熱用板材5の表面から吹き付けると、約30秒で欠陥部位が150℃程度に加熱され、この状態を約60秒間維持することにより、折れが視認できる程度残っているが使用上問題ない程度まで修復されるようになる。
【0036】
樹脂製機能シートが半導電性ETFEベルトである場合は、欠陥部位を加熱した際の最高温度は、ガラス転移温度である120℃以下であって、40℃以上且つ100℃以下に含まれる温度となるように加熱することが好ましく、さらには、50℃以上且つ90℃以下に含まれる温度となるように加熱するのが好ましく、さらには、60℃以上且つ80℃以下に含まれる温度となるように加熱するのが好ましい。加熱ノズル7から約200℃の加熱流体7aを、厚さ5.0mmのガラス製加熱用板材5の表面から吹き付けると、約20秒で欠陥部位が80℃程度に加熱され、この状態を約60秒間維持することにより、折れが視認できる程度残っているが使用上問題ない程度まで修復されるようになる。
【0037】
図2(b)に示すように、養生工程では、加熱工程の後の所定時間、加圧状態を維持する。加圧状態が維持されたまま養生される間に温度が低下して、修復状態がその後も安定的に維持されるようになる。その後、加圧状態を解除して積層された加圧用板材5を取り除き、樹脂製機能シート1を取り出すことにより一連の修復工程が終了する。養生工程に要する時間は、加熱された欠陥部位の温度が、加熱による最大温度より約30℃以上低下するまでの時間であり、概ね20秒以上である。
【0038】
上述した修復方法により折れが視認できる程度残っているが使用上問題ない程度まで修復可能な樹脂製機能シート1として、樹脂中に導電性物質を含有し、表面抵抗率1×10から1×1015Ω/□、または体積抵抗率1×10から1×1014Ω・cmの半導電性ベルトが挙げられ、ポリイミド、ポリアミドイミド、ETFEのうちの何れか一種の樹脂製の半導電性ベルトに発生した形状的な欠陥を良好に修復することができる。
【0039】
導電性物質として、ポリアセチレン等の導電性ポリマー、ケッチンブラック等のカーボンやグラファイト、銀、ニッケル、銅等の金属またはこれらの合金等、公知の材料を用いることができ、半導電性ベルトにその他の充填剤等を含有するものであってもよい。
【0040】
同様に、中間転写ベルト等に用いられるポリエーテルイミド、ポリアミドエラストマー、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフォン、ポリアミド、ポリ弗化ビニリデン、ポリブチレンテレフタレート等の耐熱性樹脂を樹脂成分とする公知の樹脂製機能シートにも適用可能であり、さらに、導電性物質を含有せず、耐熱性シートや耐熱性テープとして用いられる樹脂製機能シートにも適用可能である。
【0041】
次に、上述の修復方法を実現する修復装置について説明する。図3(a),(b)に示すように、樹脂製機能シートの修復装置20は、支持用板材3の上部に弾性シート4が配置され、樹脂製機能シート1の欠陥部位を含む領域を載置する支持部11と、支持部11に載置された樹脂製機能シート1を被覆する加圧用板材5の上方から樹脂製機能シート1を加圧する加圧機構12と、加圧機構12により加圧した状態で加圧用板材5の上方から欠陥部位を加熱する加熱機構14を備えている。
【0042】
詳述すると、基台21の端部に立設された縦フレーム22に、一端が片持ち状に支持された作業台23が水平姿勢で延出するように配置され、作業台23にはスライド機構24を介して支持部11が作業台23の延出方向に沿ってスライド自在に固定されている。
【0043】
支持部11は、スライド機構24により作業台23上を移動可能な金属製の基盤と、基盤上に固定されたガラス板でなる支持用板材3と、支持用板材3の上部に載置された弾性シート4を備え、基盤と支持用板材3の間に圧力センサが配置されている。
【0044】
さらに、基台21に固定された下フレーム25に、スライド機構26を介して作業台23の延出方向に沿って移動可能に固定された上フレーム27が取り付けられ、当該上フレーム27に加熱機構14が作業台23の幅方向中央部に位置するように固定され、幅方向に沿ってその両側部に一対の加圧機構12が固定されている。
【0045】
加圧機構12は、先端にゴムプレートが貼り付けられた加圧体6と、加圧体6を上下方向に駆動するモータを備えた駆動機構を備えて構成され、上述した圧力センサの値をモニタしながら入力部から設定入力された所定圧力となるように加圧体6を介して加圧する制御部を備えている。
【0046】
加熱機構14は、上下方向に伸縮可能な筒状体14aの先端に配置された加熱ノズル7と、ヒータ及び送風機と温度設定部を備えて構成され、温度設定部を介して設定された温度になるようにヒータで加熱された加熱流体が、送風機を介して加熱ノズル7から吹き出されるように構成されている。尚、加熱ノズル7から吹き出される熱風の方向が調整できるように、蛇腹機構等でなる筒状体の先端に加熱ノズル7を取り付けてもよい。
【0047】
作業台23の延出長さは、修復対象となる各種の中間転写ベルトの最大幅と同等またはそれより長くなるように設定され、修復箇所に弾性シート4が位置するように、ベルトの幅方向に沿って支持部11がスライド移動自在に構成されている。さらに、スライド移動された支持部11の直上に加圧機構12及び加熱機構14が位置するように、スライド機構26を介して上フレーム27がスライド移動自在に構成されている。
【0048】
スライド機構24として、作業台23の延出方向に沿って配置された一対のレールと、支持部11の底部に取り付けられ、各レール上を摺動する摺動体または転動するコロ等の公知のスライド機構を用いることができる。上フレーム27に組み込まれたスライド機構26も同様に構成できる。
【0049】
スライド機構24,26に替えて、位置調節機構を備えるものであってもよい。例えば、支持部11の底部に位置決め用のピンを突出配置し、作業台23の延出方向に沿って当該位置決め用のピンが嵌め込まれる複数の穴を配列形成するものであってもよい。
【0050】
以下に、上述した修復装置20を用いて形状の欠陥部位が発生した樹脂製機能シートを修復する手順を説明する。図4(a),(b)に示すように、折れ等によって形状が変形した樹脂製機能シート1の一例であるシームレスの中間転写ベルト1を、作業台23の端部から外挿して、支持部11の弾性シート4上に、欠陥部位を含む領域が加熱機構14のノズル直下に位置するように配置し、さらにその上部に透明ガラス板でなる加圧用板材5を被覆することにより積層工程を実行する。
【0051】
次に、加圧機構12に備えた起動スイッチを操作して制御部を作動させ、加圧体6により中間転写ベルト1が所定圧力で押圧されるように加圧用板材5を加圧する加圧工程を実行する。制御部は、上述した圧力センサによる検出圧力が予め設定された圧力となるように一対の加圧体6を押圧駆動する。
【0052】
この状態で、加熱ノズル7の先端が加圧用板材5の近傍であって、形状の欠陥部位に対応する部位に位置するように筒状体14aを伸張させて、加熱機構14の起動スイッチを操作して加熱ノズル7から加熱流体7aを吹き付け、形状の欠陥部位に対応する部位が所定温度になるように加圧用板材5を介して間接的に加熱する加熱工程を実行する。
【0053】
加熱機構14に、温度設定部により設定された温度に対応して加熱時間を設定する加熱時間設定部を備えるとともに、設定された加熱時間を経過するとヒータをオフするタイマ機能を備えてもよい。
【0054】
加熱工程が終了すると、加熱機構14を停止して、加圧状態で所定時間放置する養生工程を実行し、その後加圧機構12による加圧状態を解除して、加圧用板材5を除去して、作業台23から中間転写ベルト1を引き抜くのである。
【0055】
尚、上述した樹脂製機能シートの修復装置20の構成は一例に過ぎず、作業台23、支持部11、加圧機構12、加熱機構14等の各部を構成する具体的な構造、材質、寸法等は特に制限されるものではなく、少なくとも、支持用板材3の上部に弾性シート4が配置され、樹脂製機能シート1の欠陥部位を含む領域を載置する支持部11と、支持部11に載置された樹脂製機能シート1を被覆する加圧用板材5の上方から樹脂製機能シート1を加圧する加圧機構12と、加圧機構12により加圧した状態で加圧用板材5の上方から欠陥部位を加熱する加熱機構14を備えいればよい。
【実施例】
【0056】
以下に、本発明による樹脂製機能シートに発生した形状的な欠陥部位を修復する樹脂製機能シートの修復方法の実験例を説明する。
【0057】
[実験例1−1]
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’―ジアミノジフェニルエーテルとの当モル量を、N−メチルー2−ピロリドン溶媒中で重縮合反応させ、芳香族ポリアミド酸溶液を得た。該溶液に任意量のカーボンブラックを添加して十分に混合したものを成型溶液とし、成型ドラムを回転させながら内面に成型溶液を塗布し、30分間かけて130度に昇温しその後130度で90分間保持して溶媒揮発を行いポリアミドベルトとした。さらに150分間かけて320度に昇温しその後320度で60分間保持してポリイミド転化を行い、半導電性ポリイミドベルトを得た。
【0058】
折れ(長さ:約3.0mm×高さ:約0.5mm)が発生した該半導電性ポリイミドベルト(ガラス転移温度:280℃)について、支持用板材(材質:ガラス、厚さ:5.0mm)の上部に弾性シート(材質:シリコーンゴム、硬度:20A(JIS K 6253)、厚さ:0.5mm、耐熱安全温度200℃)を介して該ポリイミドベルトの欠陥部位を含む領域を配置し、その上方に加圧用板材(材質:ガラス、厚さ:約5.0mm)を積層する積層物に対して、前記支持用板材と前記加圧用板材間で前記ポリイミドベルトの欠陥部位を含む領域を50kPaで加圧し、加圧状態を維持しながら前記加圧用板材の上方から前記ポリイミドベルトの欠陥部位を、最大加熱温度が90℃に達するまで加熱し、加熱後に60秒間前記加圧状態を維持した。結果、折れが視認できる程度残っているが使用上問題ない程度まで修復された。
【0059】
[実験例1−2]
最大加熱温度が100℃に達するまで加熱する以外は実験例1−1と同様に行った。結果、わずかに折れが視認できる程度まで修復された。
【0060】
[実験例1−3]
最大加熱温度が120℃に達するまで加熱する以外は実験例1−1と同様に行った。結果、折れが視認できない程度まで修復された。
【0061】
[実験例1−4]
最大加熱温度が150℃に達するまで加熱する以外は実験例1−1と同様に行った。結果、折れが視認できない程度まで修復された。
【0062】
[実験例1−5]
最大加熱温度が180℃に達するまで加熱する以外は実験例1−1と同様に行った。結果、わずかに折れが視認できる程度まで修復された。
【0063】
[実験例1−6]
最大加熱温度が190℃に達するまで加熱する以外は実験例1−1と同様に行った。結果、折れが視認できる程度残っているが使用上問題ない程度まで修復された。
【0064】
[実験例2−1]
トリメリット酸無水物と4,4’―ジアミノジフェニルメタンとの当モル量を、N−メチルー2−ピロリドン溶媒中で重縮合反応させ、芳香族ポリアミドイミド溶液を得た。該溶液に任意量のカーボンブラックを添加して十分に混合したものを成型溶液とし、成型ドラムを回転させながら内面に成型溶液を塗布し、30分間かけて160度に昇温しその後160度で90分間保持して溶媒揮発を行い、さらに90分間かけて260度に昇温しその後260度で60分間保持してポリイミド転化を行い。半導電性ポリアミドイミドベルトを得た。
【0065】
折れが発生した該半導電性ポリアミドイミドベルト(ガラス転移温度:285℃)について、最大加熱温度が80℃に達するまで加熱する以外は実験例1−1と同様の条件で修復を行った。結果、折れが視認できる程度残っているが使用上問題ない程度まで修復された。
【0066】
[実験例2−2]
最大加熱温度が90℃に達するまで加熱する以外は実験例2−1と同様に行った。結果、わずかに折れが視認できる程度まで修復された。
【0067】
[実験例2−3]
最大加熱温度が120℃に達するまで加熱する以外は実験例2−1と同様に行った。結果、折れが視認できない程度まで修復された。
【0068】
[実験例2−4]
最大加熱温度が150℃に達するまで加熱する以外は実験例2−1と同様に行った。結果、折れが視認できない程度まで修復された。
【0069】
[実験例2−5]
最大加熱温度が160℃に達するまで加熱する以外は実験例2−1と同様に行った。結果、わずかに折れが視認できる程度まで修復された。
【0070】
[実験例2−6]
最大加熱温度が170℃に達するまで加熱する以外は実験例2−1と同様に行った。結果、折れが視認できる程度残っているが使用上問題ない程度まで修復された。
【0071】
[実験例3−1]
ETFE(エチレンとテトラフルオロエチレンとの共重合体)とカーボンブラックを予備混合して押出機により溶融混練してペレット化し、環状ダイスを付設した一軸押出機に該ペレットを供給する。該押出機のバレル温度を270から320度、ダイス温度を315度とし、インナーサイジングしながら室温で押し出し、実質的に無延伸にて引き取り、任意の長さにカットして半導電性ETFEベルトを得た。
【0072】
折れが発生した該半導電性ETFEベルト(ガラス転移温度:120℃)について、最大加熱温度が40℃に達するまで加熱する以外は実験例1−1と同様の条件で修復を行った。結果、折れが視認できる程度残っているが使用上問題ない程度まで修復された。
【0073】
[実験例3−2]
最大加熱温度が50℃に達するまで加熱する以外は実験例3−1と同様に行った。結果、わずかに折れが視認できる程度まで修復された。
【0074】
[実験例3−3]
最大加熱温度が60℃に達するまで加熱する以外は実験例3−1と同様に行った。結果、折れが視認できない程度まで修復された。
【0075】
[実験例3−4]
最大加熱温度が80℃に達するまで加熱する以外は実験例3−1と同様に行った。結果、折れが視認できない程度まで修復された。
【0076】
[実験例3−5]
最大加熱温度が90℃に達するまで加熱する以外は実験例3−1と同様に行った。結果、わずかに折れが視認できる程度まで修復された。
【0077】
[実験例3−6]
最大加熱温度が100℃に達するまで加熱する以外は実験例3−1と同様に行った。結果、折れが視認できる程度残っているが使用上問題ない程度まで修復された。
【0078】
[実験例4−1]
0.05kPaで加圧する以外は実験例1−4と同様に行った。結果、折れが視認できる程度残っているが使用上問題ない程度まで修復された。
【0079】
[実験例4−2]
0.1kPaで加圧する加熱する以外は実験例1−4と同様に行った。結果、わずかに折れが視認できる程度まで修復された。
【0080】
[実験例4−3]
1kPaで加圧する加熱する以外は実験例1−4と同様に行った。結果、折れが視認できない程度まで修復された。
【0081】
[実験例4−4]
100kPaで加圧する加熱する以外は実験例1−4と同様に行った。結果、折れが視認できない程度まで修復された。
【0082】
[実験例5−1]
弾性シートの硬度が0Aである以外は実験例1−4と同様に行った。結果、折れが視認できる程度残っているが使用上問題ない程度まで修復された。
【0083】
[実験例5−2]
弾性シートの硬度が10Aである以外は実験例1−4と同様に行った。結果、わずかに折れが視認できる程度まで修復された。
【0084】
[実験例5−3]
弾性シートの硬度が30Aである以外は実験例1−4と同様に行った。結果、折れが視認できない程度まで修復された。
【0085】
[実験例5−4]
弾性シートの硬度が80Aである以外は実験例1−4と同様に行った。結果、折れが視認できない程度まで修復された。
【0086】
[実験例5−5]
弾性シートの硬度が90Aである以外は実験例1−4と同様に行った。結果、わずかに折れが視認できる程度まで修復された。
【0087】
上述の実験例1−1から実験例3−6を表1に示す。
【0088】
上述の実験例4−1から実験例5−5を表2に示す。
【0089】
【表1】

【0090】
【表2】

【0091】
表1,2中評価の記号は、◎:折れが視認できない程度まで修復、○:わずかに折れが視認できる程度まで修復、△:折れが視認できる程度残っているが使用上問題ない程度まで修復、を意味する。
【0092】
上記何れの実験例でも、折れを修正後の弾性シートを画像形成装置の中間転写ベルトに用いても、記録紙に二次転写されるトナー像に目視確認できるほどの欠損等が発生せず、良好な画像が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明による樹脂製機能シートの修復方法の説明図
【図2】本発明による樹脂製機能シートの修復方法の説明図
【図3】本発明による樹脂製機能シートの修復装置の説明図
【図4】本発明による樹脂製機能シートの修復装置の使用方法の説明図
【符号の説明】
【0094】
1:樹脂製機能シート(中間転写ベルト)
2:樹脂製機能シートの形状の欠陥部位
3:支持用板材
4:弾性シート
5:加圧用板材
6:加圧体
7:加熱ノズル7
11:支持部
12:加圧機構
14:加熱機構
23:作業台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製機能シートに発生した形状的な欠陥部位を修復する樹脂製機能シートの修復方法であって、
支持用板材の上部に弾性シートを介して前記樹脂製機能シートの欠陥部位を含む領域を配置し、その上方に加圧用板材を積層する積層工程と、前記支持用板材と前記加圧用板材間で前記樹脂製機能シートを加圧する加圧工程と、加圧状態を維持しながら前記加圧用板材の上方から前記樹脂製機能シートの欠陥部位を加熱する加熱工程と、加熱後に所定時間前記加圧状態を維持する養生工程とからなることを特徴とする樹脂製機能シートの修復方法。
【請求項2】
前記弾性シートが、硬度が90A(JIS K 6253)以下であることを特徴とする請求項1記載の樹脂製機能シートの修復方法。
【請求項3】
前記弾性シートが、耐熱シートであることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂製機能シートの修復方法。
【請求項4】
前記加圧工程で、前記樹脂製機能シートを0.1kPa以上の圧力範囲で加圧することを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の樹脂製機能シートの修復方法。
【請求項5】
前記加圧用板材が透明ガラス板であることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の樹脂製機能シートの修復方法。
【請求項6】
前記樹脂製機能シートがポリイミド、ポリアミドイミド、エチレンとテトラフルオロエチレンとの共重合体のうちの何れか一種の樹脂製であることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の樹脂製機能シートの修復方法。
【請求項7】
前記樹脂製機能シートが、樹脂中に導電性物質を含有し、表面抵抗率1×10から1×1015Ω/□、または体積抵抗率1×10から1×1014Ω・cmの半導電性ベルトであることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の樹脂製機能シートの修復方法。
【請求項8】
樹脂製機能シートに発生した形状的な欠陥部位を修復する樹脂製機能シートの修復装置であって、
支持用板材の上部に弾性シートが配置され、前記樹脂製機能シートの欠陥部位を含む領域を載置する支持部と、前記支持部に載置された前記樹脂製機能シートを被覆する加圧用板材の上方から前記樹脂製機能シートを加圧する加圧機構と、前記加圧機構により加圧した状態で前記加圧用板材の上方から前記欠陥部位を加熱する加熱機構を備えていることを特徴とする樹脂製機能シートの修復装置。
【請求項9】
前記弾性シートは、硬度が90A(JIS K 6253)以下であることを特徴とする請求項8記載の樹脂製機能シートの修復装置。
【請求項10】
前記加圧機構は、前記樹脂製機能シートを0.1kPa以上の圧力範囲で加圧するように構成されていることを特徴とする請求項8または9記載の樹脂製機能シートの修復装置。
【請求項11】
前記加熱機構は、前記加圧用板材の上方から熱風を吹き出すノズルを備えていることを特徴とする請求項8から10の何れかに記載の樹脂製機能シートの修復装置。
【請求項12】
前記加圧用板材が透明ガラス板であることを特徴とする請求項8から11の何れかに記載の樹脂製機能シートの修復装置。

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−82851(P2010−82851A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−252102(P2008−252102)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】