説明

樹脂製組立構造体

【課題】左側面壁、背面壁および右側面壁を安定した一体構成として組立作業性の向上を図るとともに堅牢で耐久性にすぐれた樹脂製組立構造体を得る。
【解決手段】中空二重壁構造の背面壁2にそれぞれ連結された中空二重壁構造の左側面壁4および右側面壁5をそれぞれヒンジ部3,3で正面方向に折り曲げて構成する。左側面壁4および右側面壁5の正面寄り内面にわたって固定される側面壁固定部材6を備える。側面壁固定部材6の嵌合凸部12は係合部14とストッパ部15とで成り、左側面壁4および右側面壁5の嵌合凹部13は、側面壁固定部材6の嵌合凸部12の係合部14を仮受けする受け凹部16とそれに続くスライド係合部17とで成っており、係合部14をスライド係合部17に係合させたスライド終端位置でストッパ部15が受け凹部13に入り込んで固定保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空二重壁構造の背面壁にヒンジ部を介してそれぞれ連結された中空二重壁構造の左側面壁および右側面壁板をそれぞれヒンジ部で正面方向に折り曲げて構成する樹脂製組立構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂から成る中空二重壁構造の複数のパネルを立体的に組み立てる組立構造体については、その具体例の洗面台キャビネットとともに特開2001−340146号公報に記載されており、底面パネルを基体としてそれに背面パネルおよび両側面パネルをそれぞれスライド嵌合構造により取り付ける構成も例示されている。また、中空二重壁構造の左側板、背板および右側板を圧縮薄肉化したヒンジにより一連に連結してあって、ヒンジを折り曲げてキャビネットの左側板、背板および右側板の隔壁を構成することについては、特開平9−313262号公報に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−340146号公報
【特許文献2】特開平9−313262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前掲の特許文献1に記載されている技術によれば、底面パネルを基体としてそれに背面パネルおよび両側面パネルをそれぞれスライド嵌合構造により取り付けて組み立てるので、組立工程において底面パネルに取り付けられる背面パネルおよび両側面パネルの支持状態が安定せず、組立作業に支障をきたすことが指摘されていた。そこで前掲の特許文献2に記載されている技術のように、背板に左側板および右側板をヒンジにより連結してあるものを底板に組み付けるようにすれば組立作業上の不具合をかなり改善することはできても、左側板、背板および右側板を一体とした形態が必ずしも安定しないので、依然として組立作業が容易でないのが実情である。
【0005】
そこで本発明は、中空二重壁構造の背面壁板にヒンジ部を介してそれぞれ連結された中空二重壁構造の左側面壁板および右側面壁をそれぞれヒンジ部で正面方向に折り曲げる構成とし、左側面壁および右側面壁の正面寄り内面にわたっていてそれぞれ固定される側面壁固定部材を備えたことにより、左側面壁、背面壁および右側面壁を安定した一体構成として底面壁に容易に取り付けることができるようにして組立作業性の向上を図るとともに堅牢で耐久性にすぐれた樹脂製組立構造体を提供すること目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記目的を達成するため請求項1記載の樹脂製組立構造体の固定構造を提案する。すなわちその構成は、中空二重壁構造の背面壁にヒンジ部を介してそれぞれ連結された中空二重壁構造の左側面壁および右側面壁をそれぞれヒンジ部で正面方向に折り曲げて構成する組立構造体において、左側面壁および右側面壁の正面寄り内面にわたっていてそれぞれ固定される側面壁固定部材を備えており、前記側面壁固定部材の両端面には嵌合凸部が形成されているとともに、前記左側面壁および右側面壁の正面寄り内面には前記側面壁固定部材の嵌合凸部を嵌合させる嵌合凹部が形成されていることを特徴とするものである。
【0007】
そして、本発明に係る樹脂製組立構造体においては、側面壁固定部材の嵌合凸部と左側板および右側面壁の嵌合凹部とは、嵌合凹部に嵌合凸部を仮嵌合したうえ正面方向にスライドさせて固定する構成であること、さらには、側面壁固定部材の嵌合凸部は係合部とストッパ部とで成り、左側面壁および右側面壁の嵌合凹部は、側面壁固定部材の嵌合凸部の係合部を仮受けする受け凹部とそれに続く係合部のスライド係合部とで成っており、係合部をスライド係合部に係合させたスライド終端位置でストッパ部が受け凹部に入り込んで固定保持する構成であることとするのが好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、左側面壁、背面壁および右側面壁を安定した一体構成として底面壁に容易に取り付けることができるようにして組立作業性の向上を図るとともに堅牢で耐久性にすぐれた樹脂製パネルによる組立構造体の固定構造を得ることができる効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施の形態に係る樹脂製組立構造体としてキャビネットを例示する要部斜視図およびその一部の詳細斜視図である。
【図2】本発明に係るキャビネットの全体斜視図である。
【図3】本発明に係るキャビネットの一部斜視図である。
【図4】本発明に係るキャビネットの嵌合構造を示す斜視図およびA−A断面図である。
【図5】本発明に係るキャビネットのスライド嵌合構造を示す斜視図およびB−B、C−C断面図である。
【図6】(A),(B)および(C)はスライド嵌合構造の嵌合操作手順を示す部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るキャビネット1は次のように構成される。すなわち、中空二重壁構造の背面壁2にヒンジ部3,3を介してそれぞれ連結された中空二重壁構造の左側面壁4および右側面壁5を、それぞれ前記ヒンジ部3,3で正面方向に背面壁2に対して直角に折り曲げ、前記左側面壁4および右側面壁5の正面寄り内面に側面壁固定部材6を掛け渡し、その側面壁固定部材6の両端をそれぞれ左側面壁4および右側面壁5に固定して左側面壁4、背面壁2および右側面壁5から成る一体の構成部材7を構成する。そして、この構成部材7を底面壁8に取り付け、かつ天板9を取り付けるとともに引出10、前扉11,11を取り付けてキャビネット1を構成する。
【0011】
前記側面壁固定部材6の両端面には嵌合凸部12が形成されているとともに、前記左側面壁4および右側面壁5の正面寄り内面には前記側面壁固定部材6の嵌合凸部12を嵌合させる嵌合凹部13が形成されている。そして、側面壁固定部材6の嵌合凸部12は係合部14とストッパ部15とで成り、左側面壁4および右側面壁5の嵌合凹部13は、側面壁固定部材6の嵌合部12の係合部14を仮受けする受け凹部16とそれに続く係合部12のスライド係合部17とで成っており、係合部12をスライド係合部17に係合させたスライド終端位置でストッパ部15が受け凹部16に入り込んでスライド方向に対して固定保持する構成と成っている。図6(A)および(B)において白抜き矢印はスライド方向を示している。
【0012】
側面壁固定部材6の嵌合凸部12を成す係合部14は、その凹溝部18が嵌合凹部13を構成するスライド係合部17のレール部19に噛み合って抜け止め状にスライドさせるものであり、ストッパ部15はスライド係合方向に傾斜面20を成してその傾斜上端側が低い平坦面21を成す段部22が嵌合凹部13の内面に係止して、側面壁固定部材6を一旦取り付けた後はその嵌合凸部12の係合部14が嵌合凹部13との嵌合状態を解除できないように作用するものである。
【0013】
本発明に係るキャビネット1は、その左側面壁4、背面壁2および右側面壁5がヒンジ部3,3とともに一体にブロー成形され、底面壁8、天板9などは別途ブロー成形される。そして、これらはポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタート樹脂、ポリブチレンテレフタート樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂あるいはこれらのブレンド物など、剛性にすぐれたブロー成形可能な熱可塑性樹脂で構成される。
【0014】
なお、本発明の樹脂製組立構造体としては、一実施の形態として例示したキャビネット1のほか、洗面台キャビネット、厨房用キャビネット、その他の汎用キャビネットなどである。
【符号の説明】
【0015】
1 キャビネット
2 背面壁
3,3 ヒンジ部
4 左側面壁
5 右側面壁
6 側面壁固定部材
7 左側面壁、背面壁および右側面壁から成る一体の構成部材
8 底面壁
9 天板
10 引出
11,11 前扉
12 嵌合凸部
13 嵌合凹部
14 係合部
15 ストッパ部
16 受け凹部
17 スライド係合部
18 凹溝部
19 レール部
20 傾斜面
21 平坦面
22 段部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空二重壁構造の背面壁にヒンジ部を介してそれぞれ連結された中空二重壁構造の左側面壁および右側面壁をそれぞれヒンジ部で正面方向に折り曲げて構成する組立構造体において、
左側面壁および右側面壁の正面寄り内面にわたっていてそれぞれ固定される側面壁固定部材を備えており、
前記側面壁固定部材の両端面には嵌合凸部が形成されているとともに、
前記左側面壁および右側面壁の正面寄り内面には前記側面壁固定部材の嵌合凸部を嵌合させる嵌合凹部が形成されている
ことを特徴とする樹脂製組立構造体。
【請求項2】
側面壁固定部材の嵌合凸部と左側面壁および右側面壁の嵌合凹部とは、嵌合凹部に嵌合凸部を仮嵌合したうえ正面方向にスライドさせて固定する構成であることを特徴とする請求項1記載の樹脂製組立構造体。
【請求項3】
側面壁固定部材の嵌合凸部は係合部とストッパ部とで成り、左側面壁および右側面壁の嵌合凹部は、側面壁固定部材の嵌合凸部の係合部を仮受けする受け凹部とそれに続く係合部のスライド係合部とで成っており、係合部をスライド係合部に係合させたスライド終端位置でストッパ部が受け凹部に入り込んで固定保持する構成であることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂製組立構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−196415(P2011−196415A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61702(P2010−61702)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】