説明

橋桁の架替工法

【課題】道路橋や鉄道橋など架け替えにおいて、縦取り工法により安全・迅速・確実・安価に橋梁の架替施工を行うことができ、さらに橋軸方向に細長い狭隘地においても安全・迅速・確実・安価な架替施工が可能となる橋桁の架替工法を提供する。
【解決手段】作業ヤードで組み立てられた新桁3をレールと油圧ジャッキ搭載の自走台車10により橋軸方向に縦移動させて旧桁2上に搬入し、仮受けサンドルと油圧ジャッキからなる仮受け材11で支持し、新桁3に設置した吊り降ろし装置12で旧桁2を吊り下げて支持した状態で、旧桁3を吊り降ろし装置12により運搬台車16上に降下させて撤去し、新桁3を降下させて架設位置に架設し、横取り用の作業構台が設置不可、桁下空間利用制限などの条件がある場合でも架替工事を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路橋、鉄道橋などの橋梁において、旧桁を撤去して新桁を架設する橋桁の架替工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路橋や鉄道橋などにおいては、古くなった既設の橋梁を新しい橋梁に架け替えることが行われており、そのための種々の工法が提案されている。例えば、特許文献1には、2つの橋脚間において旧桁の下に配置した新桁を大型のジャッキでジャッキアップすることで、旧桁を押し上げて2つの橋脚から分離し、旧桁を撤去した後、新桁を2つの橋脚間に架設する工法が提案されている。
【0003】
また、列車や車両の運行を休止させる期間を短縮し、作業の煩雑化を低減する工法として、いわゆる横取り工法が提案されている。例えば、特許文献2には、旧桁は仮設の橋脚により支持させた状態で残しておき、橋脚の部分だけを先に新しく構築し、橋軸直角方向に延設配置した横取り用ガイド装置に沿って旧桁を一体的に横移動させて撤去し、予め別の場所で構築しておいた新桁を横移動させて設置する工法が提案されている。
【0004】
図8に示すのは、従来の横取り工法の一例であり、公道上に架設された鉄道の橋梁部Aに適用した場合である。橋梁部Aの両側の公道上に作業構台50を設置し、旧桁の横移動撤去、新桁の横移動架設が行われる。作業構台50は多数の支持杭51で支持されている。
【0005】
しかし、このような公道上に広範囲にわたって横取り架設用の作業構台を設置する場合、水道本管等の埋設物があり、また車両の進行を阻害するなどの点から、支持杭の打設場所が制限され、構台部材が増大するなどの問題がある。
【0006】
このような問題を解決できるものとして縦取り工法が考えられる。例えば、特許文献3には、旧橋上および旧橋付近に荷卸しされた新橋構成部材を全体またはブロック毎に架設位置に移動して仮設し、旧橋の下部に足場等を構成する仮設材を添設し、新橋・旧橋・仮設材を多数の箇所でチェーンにより包囲して新橋で旧橋を支持した上で、旧橋をブロック毎に切断して搬出した後、新橋を架設位置に降下させて架設する工法等が提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開2004−332222号公報
【特許文献2】特開2006−193978号公報
【特許文献3】特許第3655161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述したように、従来の横取り工法では、作業構台の支持杭の打設場所が制限され、構台部材が増大するなどの問題がある。また、先行技術の縦取り工法の場合、旧桁と新桁を互いに仮設材として利用することにより、桁下空間利用制限などの条件がある場合に有効であるが、より安全で、より迅速で、より確実で、より安価な縦取り工法が望まれている。さらに、鉄道の橋梁部のように橋軸方向に細長い狭隘地においても縦取り工法を適用できることが望まれる。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解消すべくなされたものであり、道路橋や鉄道橋などの橋梁の架け替えにおいて、縦取り工法により安全・迅速・確実・安価に橋梁の架替施工を行うことができ、さらに橋軸方向に細長い狭隘地においても安全・迅速・確実・安価な架替施工が可能となる橋桁の架替工法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1の発明は、橋梁の旧桁を撤去して新桁を架設する橋桁の架替工法であり、新桁を橋軸方向の縦移動により旧桁上に仮設し、新桁の両端部を仮受け材で支持し、かつ、新桁に設置した吊り降ろし装置により旧桁を新桁から吊り下げて支持した状態で、前記吊り降ろし装置により旧桁を吊り降ろして撤去した後、新桁を降下させて架設位置に架設することを特徴とする橋桁の架替工法である。縦移動は、橋軸方向に沿って縦送りするいわゆる縦取りであり、横移動は、橋軸直角方向へ平行移動で横送りするいわゆる横取りである。
【0011】
本発明は、道路橋や鉄道橋などに適用されるものであり、従来の横取り作業構台が設置不可、桁下空間利用制限などの条件がある橋桁架替工事に特に有効である。図1に例示するように、新桁を縦取りによって旧桁上に仮設し(旧桁を仮設材として利用)、旧桁を新桁に反力を取って降下撤去し(新桁を仮設材として利用)、新桁を降下させて所定の架設位置にセットする。
【0012】
縦取りには、レールと油圧ジャッキ付き自走台車を用いることができる。なお、後述する横取りには、仮受けサンドル等で支持された横取りレールと自走台車を用いることができる。新桁の両端部には支持端部を付加し、この支持端部を油圧ジャッキ付き自走台車や仮受け材(仮受けサンドルと油圧ジャッキなど)で支持し、旧桁を降下撤去できるようにする(図1、図2参照)。吊り降ろし装置には、油圧ジャッキと吊りロッド等を用いることができる。旧桁の橋脚または橋台上に位置する両端部は降下に先立って切断除去しておき、旧桁は橋軸方向に沿って複数のブロックに分割し、ブロック毎に降下撤去する(図1、図2参照)。
【0013】
本発明では、橋軸方向の作業導線を活用し、新旧桁を互いに仮設材利用しているため、安全・迅速・確実・安価な架替施工が可能となる。特に、従来の横取り用の作業構台が設置不可、桁下空間利用制限などの条件がある橋桁架替工事に極めて有効に適用できる。さらに旧桁は新桁に反力を取って降下撤去するため、さらに安全・迅速・確実・安価な架替施工が可能となる。
【0014】
本発明の請求項2の発明は、請求項1に記載の橋桁の架替工法において、橋軸方向に沿って作業構台が設けられ、作業構台上で組み立てられた新桁を橋軸方向の縦移動により旧桁上に搬入することを特徴とする橋桁の架替工法である。
【0015】
鉄道の橋梁部などのように橋軸方向に細長い狭隘地では、線路等の脇に橋軸方向に細長い作業構台を設置し、この作業構台において新桁を組み立て、線路等の上に横取りし、次いで縦取りにより旧桁上に配置する。また、後述するように縦取りにより作業構台の横に搬送されてきた旧ホーム桁を作業構台上に横取りし、作業構台上で旧ホーム桁をブロック毎に切断して搬出する。
【0016】
本発明の請求項3の発明は、請求項1または請求項2のいずれかに記載の橋桁の架替工法において、橋桁の架け替えに先立って、旧桁の両端部を仮支承部材により支持した状態で既設の橋脚または橋台を撤去し、新たに橋脚または橋台を構築することを特徴とする橋桁の架替工法である。
【0017】
橋脚や橋台等の新設も併せて行う場合である。仮支承部材には仮受杭などを用い、橋脚等の新設後、新桁と旧桁とを吊り降ろし装置で連結した後、仮支承部材を撤去し、旧桁を降下撤去する(図2参照)。
【0018】
本発明の請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか一つに記載の橋桁の架替工法において、旧桁の横に旧ホーム桁が架設されており、新桁の旧桁上への縦移動に先立って、旧ホーム桁を横移動により旧桁上へ配置し、旧桁上の旧ホーム桁を縦移動により橋軸方向に搬出し、旧桁の撤去及び新桁の架設が終了した後、新ホーム桁を縦移動により新桁上に配置し、横移動により新桁の側方に架設することを特徴とする橋桁の架替工法である。
【0019】
本発明は、鋼製やコンクリート製などの旧桁と鋼製やコンクリート製などの新桁の架け替えに適用することができるが、鉄道の橋梁部ではホーム桁の架け替えも併せて行うことができる。新桁の旧桁上への縦取りに先立って、旧ホーム桁を旧桁上に横取りし、次いで作業構台等へ縦取りすることにより撤去する(図3参照)。新ホーム桁は、新桁の架設・旧桁の撤去が終了した後、作業構台等から縦取りにより新桁上に配置し、次いで横取りにより新桁の横に架設する(図7参照)。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、以上のような構成からなるので、次のような効果が得られる。
【0021】
(1)新桁を縦取りによって旧桁上に仮設し、旧桁を新桁に反力を取って降下撤去するため、橋軸方向の作業導線の活用、新旧桁の双方仮設材利用により、安全・迅速・確実・安価な架替施工が可能となる。特に、従来の横取り用の作業構台が設置不可、桁下空間利用制限などの条件がある橋桁架替工事に極めて有効に適用できる。
【0022】
(2)旧桁を新桁に反力を取って降下撤去するため、さらに安全・迅速・確実・安価な架替施工が可能となる。
【0023】
(3)作業構台を橋軸方向に沿って設置することができるため、橋軸方向に細長い狭隘地においても安全・迅速・確実・安価な架替施工が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。図1は、本発明の架替工法の基本構成を工程順に示したものである。図2〜図7は、具体的な例を工程順に示したものである。
【0025】
図1に示すように、橋脚(または橋台)1、1間に旧桁2が架設されており、この旧桁2から橋軸方向に所定の距離だけ離れた作業ヤードで新桁3を組み立てる。新桁3の両端部には、支持端部3aが接続されており、レール上等を自走できる油圧ジャッキ搭載の自走台車10により支持端部3aを支持し、組み立てられた新桁3を橋軸方向に縦移動させて旧桁2上に搬入し、新桁3を旧桁2の上に旧桁2と平行に仮設する。
【0026】
旧桁2の上方に位置した新桁3の両端の支持端部3aを仮受けサンドルと油圧ジャッキからなる仮受け材11で支持する。この状態で、新桁3の橋軸方向に所定の間隔をおいて配置した複数台の吊り降ろし装置12により旧桁2を吊り下げて支持する。吊り降ろし装置12には、例えばセンターホールジャッキ等の油圧ジャッキ13と吊りロッド14を用いる。油圧ジャッキ13は新桁3の上面に橋軸直角方向に一対で配置し、吊りロッド14の下部を旧桁2に接続し、油圧ジャッキ13で吊りロッド14を降下させる。
【0027】
旧桁2を吊り降ろす前に、旧桁2の端部2a、2aを切断し橋脚1上から撤去する。旧桁2は、図示例の場合、橋軸方向に沿って2分割されており、片側の旧桁2を吊り降ろし装置12により運搬台車(ユニットキャリア)16上に吊り降ろし、搬出する。残りの旧桁2も同様に降下撤去し、搬出する。
【0028】
次いで、新桁3の両端の支持端部3aを取り去り、新桁3を仮受けサンドルと油圧ジャッキで降下させて架設位置に架設する。新桁3の両端部は橋脚1上に支承で支持される。これにより、新旧桁の架け替えが終了する。
【0029】
図2〜図7の具体例は、公道上に架設された鉄道の橋梁部に適用した場合である。また、高架駅における橋桁とホーム桁を架け替えする場合である。
【0030】
さらに、図2に示すように、既設橋脚等も新しくする場合には、旧桁2の両端部を仮受杭20で支持し、既設橋脚1等を撤去し、新設橋脚6等を構築する。新桁3と旧桁2とを吊り降ろし装置12により連結し、旧桁2の両端部2aは切断して橋脚1上から撤去し、新桁2の両端部を橋脚1上の仮受けサンドルと油圧ジャッキからなる仮受け材11で支持する。その後、仮受杭20を撤去する。
【0031】
図3に示すように、公道上の橋梁部Aは、高架駅の端部であり、旧桁2−1、2−2と、旧ホーム桁4−1、4−2が架設されており、旧桁2の橋軸方向に隣接する敷地内における線路の脇に線路と平行に縦取り架設用の作業構台30−1、30−2を設置する。この作業構台30には、門型クレーン31が設置されており、新桁の組み立て、旧桁の切断等が行われる。
【0032】
次のような手順で新旧桁の架け替えが行われる。なお、架け替えは、片線のみを閉鎖して片側ずつ行われる。図示例では、線路1側が先に施工される。また、公道が線路に対して傾斜しているため、横取りは公道に沿って斜めに平行移動させて行われる。
【0033】
(1)図3に示すように、線路1側の作業構台30−1で新桁3−1を組み立てる。これと並行して、旧ホーム桁4−1をサンドル等で所定の高さまで上昇させ、横取りレールと自走台車により旧桁2−1上に横移動させる。旧桁2−1上の旧ホーム桁4−1を線路のレールと自走台車により作業構台側へ縦移動させ、線路2側の空いている作業構台30−2へ横取りレールと自走台車により横移動させる。作業構台30−2上で旧ホーム桁4−1をブロックに切断し、搬出する。
【0034】
(2)図4に示すように、作業構台30−1上で組み立てた新桁3−1を横取りレールと自走台車により線路のレール上に横移動させ、線路のレールと自走台車10により縦移動させて旧桁2−1上に搬入し、両端部を仮受けサンドルと油圧ジャッキで支持することで仮設する(図2(c)参照)。
【0035】
(3)図5に示すように、新桁3−1の上に設置した吊り降ろし装置12により旧桁2−1を吊り下げて支持する。新桁3−1の上には、橋軸直角方向に沿う支持架台15を設置し、この上に油圧ジャッキ13を設置する。吊りロッド14は、新桁3−1を貫通させて旧桁2−1に接続する。旧桁2−1を吊り降ろし装置12により吊り降ろして撤去する。作業構台30−1では新ホーム桁5−1が組み立てられている。
【0036】
(4)図6に示すように、新桁3−1の両端部を支持している橋脚上の仮受け材11(仮受けサンドルと油圧ジャッキ)により降下させ、橋脚上に支承で支持する。これにより新旧桁の架け替えが終了する。
【0037】
(5)図7に示すように、作業構台30−1上で組み立てた新ホーム桁5−1を横取りレールと自走台車により線路のレール上に横移動させ、線路のレールと自走台車10により縦移動させ、新桁3−1上に配置する。新桁3−1上の新ホーム桁5−1を横取りレールと自走台車により新桁3−1の側方に横移動させ、降下させて新桁3−1に沿って架設する。
【0038】
以上により片側の架け替えが完了し、同じ要領で反対側の架け替えが実施される。
【0039】
なお、以上は鉄道橋の橋梁部に適用した例を示したが、これに限らず、道路橋その他の橋桁の架替に本発明を適用できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の架替工法の基本構成を工程順に示す側面図と断面図である。
【図2】本発明の架替工法の具体的な例であり、橋脚の撤去・新設を伴う場合を示す側面図である。
【図3】本発明の架替工法の具体的な例であり、旧ホーム桁の撤去の工程を示す平面図と断面図である。
【図4】本発明の架替工法の具体的な例であり、新桁の縦送りの工程を示す平面図と断面図である。
【図5】本発明の架替工法の具体的な例であり、旧桁の撤去の工程を示す平面図と断面図である。
【図6】本発明の架替工法の具体的な例であり、新桁の架設の工程を示す平面図と断面図である。
【図7】本発明の架替工法の具体的な例であり、新ホーム桁の縦送りの工程を示す平面図と断面図である。
【図8】従来の横取り工法の一例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0041】
1……橋脚(橋台)
2……旧桁
2a…端部
3……新桁
3a…支持端部
4……旧ホーム桁
5……新ホーム桁
6……新設の橋脚
10…自走台車
11…仮受け材
12…吊り降ろし装置
13…油圧ジャッキ
14…吊りロッド
15…支持架台
16…運搬台車
20…仮受杭
30…作業構台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の旧桁を撤去して新桁を架設する橋桁の架替工法であり、
新桁を橋軸方向の縦移動により旧桁上に仮設し、新桁の両端部を仮受け材で支持し、かつ、新桁に設置した吊り降ろし装置により旧桁を新桁から吊り下げて支持した状態で、前記吊り降ろし装置により旧桁を吊り降ろして撤去した後、新桁を降下させて架設位置に架設することを特徴とする橋桁の架替工法。
【請求項2】
請求項1に記載の橋桁の架替工法において、橋軸方向に沿って作業構台が設けられ、作業構台上で組み立てられた新桁を橋軸方向の縦移動により旧桁上に搬入することを特徴とする橋桁の架替工法。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれかに記載の橋桁の架替工法において、橋桁の架け替えに先立って、旧桁の両端部を仮支承部材により支持した状態で既設の橋脚または橋台を撤去し、新たに橋脚または橋台を構築することを特徴とする橋桁の架替工法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一つに記載の橋桁の架替工法において、旧桁の横に旧ホーム桁が架設されており、新桁の旧桁上への縦移動に先立って、旧ホーム桁を横移動により旧桁上へ配置し、旧桁上の旧ホーム桁を縦移動により橋軸方向に搬出し、旧桁の撤去及び新桁の架設が終了した後、新ホーム桁を縦移動により新桁上に配置し、横移動により新桁の側方に架設することを特徴とする橋桁の架替工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−52306(P2009−52306A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−220645(P2007−220645)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(596069911)盟和工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】