説明

橋梁の柱頭部または桁端部の複合中空構造

【課題】PC橋などの柱頭部または桁端部において、コンクリート数量や鉄筋数量の大幅な低減により工期の短縮を図ることができ、自重低減により耐震性能の向上および耐震補強の低減を図ることができる橋梁の柱頭部または桁端部の複合中空構造を提供する。
【解決手段】ラーメン型式の柱頭部2において、横桁4を床版部10と底版部11と橋端直角方向の左右に一対のウェブ12から構成し、橋軸方向に貫通する中空部13を形成し、横桁4を中空構造とし、中空部13の内部に正面視で直角三角形の引張力伝達補強鋼板20を左右一対で配置し、底版部11の上面とウェブ12の内面とに定着させ、引張力伝達補強鋼板20の下部辺は橋脚1からの定着鉄筋7に定着し、定着鉄筋7の引張力をウェブ12に伝達し、柱頭部2の剛結状態が保持されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路、鉄道、歩道、その他の橋梁でPC橋などの柱頭部または桁端部の複合中空構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PC(プレストレストコンクリート)橋の施工方法として、移動作業車による張出架設工法が一般に知られている。この種の施工方法は、図4、図5に示すように、橋脚1の上に柱頭部2を築造し、この上に左右の移動作業車を設置し、この移動作業車を前方に順次送り出して主桁3を架設するものである。柱頭部2の横桁4から橋軸方向の左右に張り出す張出部分5は主桁の一部を構成し、この主桁の張出部分5から隣接する区分に張り出すように移動作業車を設置し、この移動作業車の先端部において、型枠の組立、鉄筋の組立、PC鋼材の配置、そしてコンクリート打設・養生を行って1ブロックずつ施工するものである。
【0003】
図4は連続桁橋の柱頭部の例であり、橋脚1と充実断面の柱頭部2との間に支承6が設置されている。図5はラーメン橋の柱頭部の例であり、橋脚1と2枚壁形式の柱頭部2とが剛結されている。横桁4には橋軸方向に間隔をおいて一対の隔壁4aが設けられ、橋脚1から突出する定着鉄筋7が隔壁4a内に埋設される。
【0004】
図4の連続桁型式の場合、柱頭部2は、主桁3と横桁4の補強鉄筋および支点反力による補強鋼材が高密度に配置されているため、施工が困難であり、工期も長期間を必要とする。図5のラーメン型式の場合、柱頭部2は、橋脚1と主桁3と横桁4の交差部であり、それぞれの補強鉄筋が高密度に配置されているため、施工が困難であり、工期も長期間を必要とする。
【0005】
また、いずれの場合も、柱頭部2は充実断面または2枚壁形式が一般的であり、コンクリート数量が多いため、施工時の温度応力に対して補強筋を配置するなど検討を必要とする。さらに、上部工の重量が大きくなることで地震時の慣性力が大きくなり、柱頭部付近、主桁、橋脚に発生する応答値が大きくなるため、相応の補強を必要とする。
【0006】
上記のような課題に対して従来においては次のような技術で対応している。柱頭部の複雑な補強鉄筋に対しては、時間をかけて配筋を行っている。施工時の温度応力に対しては、リフト割を多くして1回のコンクリート打込み量を少なくし、硬化に伴う発熱量を抑えて発生応力を小さくするなど、作業工程を多くして施工を行っている。地震時の検討を行い、必要に応じた補強を行っている。
【0007】
なお、橋梁の柱頭部に関する先行技術文献として、特許文献1〜3、非特許文献1がある。特許文献1の発明は、波形鋼板ウェブ橋の張出架設工法における柱頭部の施工方法であり、柱頭部の横桁部分と左右各1ブロック分の張出部分の波形鋼板ウェブ連結体を橋脚上に設置し、横桁部分のコンクリートと左右各1ブロック分の張出部分の下床版コンクリートを施工し、柱頭部の構築作業を簡易化するものである。
【0008】
特許文献2の発明は、柱頭部の構築方法及び架設作業車であり、橋脚上に小面積の柱頭部(横桁部分)を構築し、この上に左右の張出架設作業車を入り組ませて設置し、この作業車を用いて柱頭部の左右の橋体(張出部分)を張り出し施工し、柱頭部の大きさを小さくし、橋脚側面に設けるブラケットを不要とするものである。
【0009】
特許文献3の発明は、プレキャスト柱頭部及び橋脚柱頭部の施工方法であり、プレキャスト柱頭部(横桁部分と左右の張出部分)を下床版と上床版とウェブで構成し、その下部開口部に、橋脚の頭部から突出した橋脚用主鉄筋を貫通させ、コンクリートを打設して橋脚とプレキャスト柱頭部を一体化させ、工期の短縮を図るものである。
【0010】
非特許文献1には、柱頭部を重量軽減のため2セグメントで構成し、柱頭部鋼管ストラット構造を採用して施工性の向上を図る技術が記載されている。鋼管ストラットは左右一対で正面視ハ字状となるように配置し、鋼管ストラットの上下端をそれぞれ床版部の下面、底版部の上面に当接させ、ボルト等で接合している。鋼管ストラット構造は、通常の充実な横桁に比べ、応力の流れが明確で重量軽減の効果が大きい。
【0011】
また、本発明に関連する先行技術文献として特許文献4、5がある。特許文献4の発明は、多室型の箱桁橋の仕切り壁に代えて、梁部を介して柱体を垂直に立設し、部材厚さを可及的に薄くするものである。また、従来技術の図12には、箱桁橋の室内にストラットをハ字状に配置することが記載されている。
【0012】
特許文献5の発明は、上床版と下床版と左右一対の波形鋼版ウェブからなる波形鋼板ウェブにおいて、橋軸直角方向に延びるプレキャストリブを橋軸方向に間隔をおいて配置すると共に各プレキャストリブ間にプレキャスト板を架け渡し、これらプレキャスト板の上にコンクリートを打設することにより、上床版を形成し、各プレキャストリブを含む橋軸直交面断面内に、上端部がプレキャストリブに連結され、下端部が下床版に連結された3本のストラットを設け、所要の強度を確保するものである。
【0013】
【特許文献1】特開2005−171521号公報
【特許文献2】特開2004−218316号公報
【特許文献3】特開2003−328320号公報
【非特許文献1】「橋梁&都市」、1999年5月号、p.40-49 TGV Avignon 高架橋の視察
【特許文献4】特許第2922749号公報
【特許文献5】特開2006−322182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前述のような従来の柱頭部の構造の場合、次のような課題があった。
【0015】
(1)構造成立性に関する課題
充実断面または2枚壁形式横桁に発生する引張力に対して、PC鋼材による柱頭部横締めの配置や鉄筋による補強の必要がある。また、柱頭部コンクリートの硬化に伴う温度応力に対しては、鉄筋による追加補強を実施している。
【0016】
(2)施工性に関する課題
主桁や橋脚の補強鉄筋が柱頭部では錯綜するため、組立が複雑であり、1回当たりのコンクリート打込み数量も多く、施工に時間を要している。
【0017】
(3)耐震性に関する課題
柱頭部は横桁の重量が大きく、かつ、橋脚基礎からの位置が高いことから、地震時の慣性力が大きくなり、橋梁全体の耐震性に影響を与えている。
【0018】
本発明は、上記の従来技術の課題を解決すべくなされたもので、PC橋などの柱頭部または桁端部において、コンクリート数量や鉄筋数量の大幅な低減により工期の短縮を図ることができ、自重低減により耐震性能の向上および耐震補強の低減を図ることができる橋梁の柱頭部または桁端部の複合中空構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の請求項1は、橋梁の柱頭部または桁端部の構造であって、柱頭部横桁または桁端部横桁に床版部と底版部と左右両側のウェブにより橋軸方向に貫通する中空部が形成され、前記中空部内に底版部上面とウェブ内面とを連結するように作用力伝達補強部材が配置され、前記作用力伝達補強部材の端部がそれぞれ床版部上面、ウェブ内面に定着されていることを特徴とする柱頭部または桁端部の複合中空構造である。
【0020】
本発明の請求項2は、橋梁の柱頭部または桁端部の構造であって、柱頭部横桁または桁端部横桁に床版部と底版部と左右両側のウェブにより橋軸方向に貫通する中空部が形成され、前記中空部内に、底版部上面、ウェブ内面にそれぞれ下部辺、側部辺が位置するように、作用力伝達補強板が配置され、前記作用力伝達補強板の下部辺、側部辺がそれぞれ底版部上面、ウェブ内面に定着されていることを特徴とする柱頭部または桁端部の複合中空構造である。
【0021】
本発明は、連続桁型式やラーメン型式の橋梁において、橋梁の柱頭部の場合、従来の充実断面または2枚壁形式に代えて、適用されるものである。橋梁の桁端部にも適用することができる。柱頭部横桁または桁端部横桁を橋軸方向に中空部が貫通する中空構造とし、中空部内における橋軸直角方向に平行な鉛直面内に、ストラット等の作用力伝達補強部材または鋼板等の作用力伝達補強板を配置して底版部上面と両側のウェブ内面に定着する(図1参照)。この作用力伝達補強部材または作用力伝達補強鋼板により中空の柱頭部横桁または桁端部横桁の剛性が高められ、十分な剛性を有する複合中空構造の柱頭部または桁端部が得られる。
【0022】
本発明の請求項3は、請求項1または請求項2のいずれかに記載の複合中空構造において、ラーメン型式の橋梁における橋脚または橋台の定着鉄筋に作用力伝達補強部材の下端部または作用力伝達補強板の下部辺が定着されていることを特徴とする柱頭部または桁端部の複合中空構造である。
【0023】
橋脚または橋台に主桁が剛結されるラーメン型式に適用する場合である。ラーメン型式の柱頭部または桁端部の場合、橋脚や橋台からの作用力を主桁に伝達する剛結構造であることが重要である。従って、作用力伝達補強部材または作用力伝達補強板は、橋桁や橋台から立ち上がる定着鉄筋に定着し、鉄筋の引張力をウェブに伝達させる引張力伝達補強として機能させる(図1、図2参照)。これにより、柱頭部や桁端部の剛結状態が保持される。
【0024】
作用力伝達補強板の場合、図1に例示されるように、橋軸方向から見た正面視で直角三角形の引張力伝達補強板を底版部とウェブとの隅角部に左右一対で配置するのが好ましい。直角三角形の側部辺の上端は床版部の下面近くに位置するようにし、ウェブに対する十分な定着長を確保する。
【0025】
本発明の請求項4は、請求項1または請求項3までのいずれか一つに記載の複合中空構造において、作用力伝達補強部材の上端部または作用力伝達補強板の側部辺にずれ止めを設け、このずれ止め部分をウェブに埋め込むことにより、定着されていることを特徴とする柱頭部または桁端部の複合中空構造である。
【0026】
ウェブへの定着部に孔空き鋼板やスタッドなどのずれ止めを設け、これをコンクリートに埋め込むことにより、作用力伝達補強部材または作用力伝達補強板とコンクリートとの一体化を図る(図1参照)。
【0027】
本発明の請求項5は、請求項1から請求項4までのいずれか一つに記載の複合中空構造において、橋軸直角方向に平行な作用力伝達補強部材または作用力伝達補強板が橋軸方向に間隔をおいて複数配置されていることを特徴とする柱頭部または桁端部の複合中空構造である。
【0028】
作用力伝達補強部材または作用力伝達補強板を橋軸方向に間隔をおいて複数設置することにより、従来の充実断面または2枚壁形式の柱頭部横桁または桁端部横桁の代わりとする。2枚壁形式の隔壁位置にそれぞれ作用力伝達補強部材または作用力伝達補強板を複数設置するのが好ましい(図1参照)。
【0029】
本発明の請求項6は、請求項5に記載の複合中空構造において、作用力伝達補強部材または作用力伝達補強板の間に間詰材が充填されていることを特徴とする柱頭部または桁端部の複合中空構造である。
【0030】
圧縮が作用した場合の座屈防止であり、橋軸方向に隣接する作用力伝達補強部材間または作用力伝達補強板間にコンクリート等の間詰材を充填する(図3参照)。例えば作用力伝達補強部材または作用力伝達補強板とPCケーブルの偏向部を一体化し、偏向部から鉛直下向きの力を受ける場合に有効である。また、間詰材を挟んだ作用力伝達補強部材または作用力伝達補強板を変形防止ボルトで締結するようにしてもよい。
【0031】
以上のような複合中空構造の柱頭部または桁端部は、プレキャストコンクリート、現場打設コンクリート、あるいはプレキャストコンクリートと現場打設コンクリートの組み合わせで製作することができる。プレキャストの場合には、引張力伝達補強部材または引張力伝達補強板を製作時に取り付けておくことができる。
【0032】
以上のような中空部内において底版部上面とウェブ内面とを連結する作用力伝達補強部材または作用力伝達補強板を用いた複合中空構造の場合、柱頭部構造または桁端部構造を合理化することができ、柱頭部施工や桁端部施工に要する数量を低減し、工期を短縮することができる。具体的には、従来の横桁の充実部または2枚壁が無くなるため、鉄筋、型枠およびコンクリートの数量を低減でき、その作業工程が低減できる。また、コンクリートの温度応力対策として実施していた、施工リフト割の細分化の必要が無くなり、さらなる工程の短縮が可能となる。また、柱頭部重量や桁端部重量が大幅に低減されることにより、耐震性の向上および耐震補強の低減を図ることができる。
【0033】
また、ラーメン型式の柱頭部や桁端部において、左右一対の作用力伝達補強部材や作用力伝達補強板により橋脚からの作用力をウェブに伝達する複合中空構造とすることにより、中空構造と補強部材による比較的簡易で低コストの構造で剛結状態を保持できる柱頭部構造や桁端部構造が得られる。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、以上のような構成からなるので、次のような効果が得られる。
【0035】
(1)PC橋などの柱頭部または桁端部を、中空部内に底版部上面とウェブ内面とを連結する作用力伝達補強部材または作用力伝達補強板を配置した複合中空構造とすることにより、コンクリート数量や鉄筋数量の大幅な低減と、施工リフト割の低減により、工期の短縮を図ることができる。
【0036】
(2)自重低減により耐震性能の向上および耐震補強の低減を図ることができる。
【0037】
(3)ラーメン型式の柱頭部や桁端部においては、橋脚からの作用力をウェブに伝達する複合中空構造とすることにより、中空構造と補強部材による比較的簡易で低コストの構造で剛結状態を保持できる柱頭部構造や桁端部構造が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。この実施形態は、ラーメン型式の橋梁における柱頭部に本発明を適用した例である。図1は、本発明の複合中空構造の一例を示す橋軸直角方向に平行な鉛直断面図と橋軸方向に平行な鉛直断面図である。図2は、本発明で用いる引張力伝達補強鋼板の定着部の一例を示す斜視図である。図3は、本発明の引張力伝達補強鋼板の圧縮が作用した場合の一例を示す橋軸方向に平行な鉛直断面図である。
【0039】
図1のラーメン型式の実施形態においては、PC箱桁橋の橋脚1の上に柱頭部2が築造され、この柱頭部2が橋脚1から突出する定着鉄筋7により橋脚1に剛結される。柱頭部2は、橋脚直上の横桁4と、この橋軸方向の左右に張り出す張出部分5とから構成され、張出部分5は主桁3の一部を構成する。
【0040】
このようなラーメン型式の柱頭部2において、本発明では、横桁4を床版部10と底版部11と橋端直角方向の左右に一対のウェブ12から構成し、橋軸方向に貫通する中空部13を形成し、横桁4を中空構造とする。この中空部13の内部に作用力伝達補強部材としての引張力伝達補強鋼板20を、橋軸直角方向に平行に、かつ、底版部11の上面とウェブ12の内面とを連結するように配置し、この引張力伝達補強鋼板20の下部辺を底版部11の上面に、側部辺をウェブ12の内面に定着し、この引張力伝達補強鋼板20により中空柱頭部2の剛性を高める。これにより、十分な剛性を有する複合中空構造の柱頭部2が得られる。
【0041】
図示例では、橋軸方向から見た正面視で直角三角形の引張力伝達補強鋼板20を底版部11とウェブ12との隅角部に左右一対で配置している。直角三角形の側部辺の上端は床版部10の下面近くに位置するようにし、ウェブ12に対する十分な定着長を確保する。引張力伝達補強鋼板20の形状はこれに限られないが、左右に分離した直角三角形とすることにより、鋼材量の低減を図ることができる。
【0042】
また、橋軸方向に関しては、引張力伝達補強鋼板20を従来の2枚壁形式の隔壁の位置に配置することにより、従来の充実断面または2枚壁形式の柱頭部の代わりとすることができる。また、引張力伝達補強鋼板20は、1つの隔壁位置において、橋軸方向に間隔をおいて複数枚(図示例では2枚)配置して剛性の向上を図るのが好ましい。
【0043】
ラーメン型式の場合、柱頭部2は、橋脚1からの作用力を主桁3に伝達する剛結構造であることが重要であり、橋脚1からの定着鉄筋7を引張力伝達補強鋼板20の下部辺に定着させ、定着鉄筋7の引張力をウェブ12に伝達し、柱頭部2の剛結状態が保持されるようにする。地震時の橋脚1の変形を主桁3が拘束し、橋脚1の地震による変形・断面力を小さく抑えることができる。
【0044】
図1に示すように、定着鉄筋7は従来の隔壁の位置に配置されており、この隔壁位置において中空部13に突出する定着鉄筋7の上端を引張力伝達補強鋼板20の下部辺に定着ナット30で定着させる。図2に示すように、例えば、引張力伝達補強鋼板20の下部辺に水平に折曲する定着板21を一体的に設け、この定着板21をリブ22により補強し、定着板21を貫通する定着鉄筋7の上端に定着ナット30をねじ込んで定着し、施工の容易な機械式の定着構造とする。
【0045】
引張力伝達補強鋼板20の側部辺の定着は、図1に示すように、側部板23をウェブ12内に所定深さ埋め込み、この側部板23には、コンクリートに対するずれ止めとして例えば孔空き構造を用い、確実なコンクリート埋め込み定着構造が得られるようにする。また、側部板23の孔31には、主桁の橋軸方向鉄筋を貫通させる構造とする。なお、ずれ止めは孔空き鋼板に限らず、スタッドなどを用いることもできる。
【0046】
図3は、圧縮が作用した場合の引張力伝達補強鋼板20の座屈防止の例であり、引張力伝達補強鋼板20の間に間詰材として例えばコンクリート40を充填する。この構造は、引張力伝達補強鋼板20と柱頭部偏向部一体化し、偏向部から鉛直下向きの力を受ける構造とする場合に適用される。
【0047】
さらに、変形防止ボルト41で引張力伝達補強鋼板20同士を連結する。この変形防止ボルト41は、引張力伝達補強鋼板20の各辺に沿わせて配置し、鉄筋定着部の変形防止及び引張力伝達補強鋼板20の座屈防止を図る。
【0048】
以上のような複合中空構造の柱頭部2は、プレキャストコンクリート、現場打設コンクリート、あるいはプレキャストコンクリートと現場打設コンクリートの組み合わせで製作することができる。プレキャストの場合には、引張力伝達補強鋼板20を製作時に取り付けておくことができる。引張力伝達補強鋼板20は、例えば板厚9mm〜25mmの市販の構造用鋼板を用いることができ、下部辺および側部辺に所定の定着構造を設ける。表面には、腐食防止のため防錆処理を施しておく。
【0049】
以上のような引張力伝達補強鋼板を用いた複合中空構造の場合、柱頭部構造を合理化することができ、柱頭部施工に要する数量を低減し、工期を短縮することができる。具体的には、従来の横桁の充実部または2枚壁が無くなるため、鉄筋、型枠およびコンクリートの数量を低減でき、その作業工程が低減できる。また、柱頭部コンクリートの温度応力対策として実施していた、施工リフト割の細分化の必要が無くなり、さらなる工程の短縮が可能となる。また、柱頭部重量が大幅に低減されることにより、耐震性の向上および耐震補強の低減を図ることができる。
【0050】
図示例のラーメン型式の場合、スパン120mのラーメン橋(柱頭部2枚壁形式)での試算では、柱頭部コンクリート数量が35m減、鉄筋数量が10t減となり、施工リフト割りの変更により、1ヶ月程度の工程の短縮を図ることが可能である。また、柱頭部重量で約の100tの軽量化となることにより、耐震性能の向上または地震時補強の低減を図ることが可能である。
【0051】
本発明の引張力伝達補強鋼板を用いた複合中空構造は連続桁型式の柱頭部にも適用することができる。連続桁型式の場合も、スパン85mの連続桁橋(柱頭部充実断面)での試算では、柱頭部コンクリート数量が55m減、鉄筋数量が2t減となり、施工リフト割りの変更により、1ヶ月程度の工程の短縮を図ることが可能である。また、柱頭部重量で約の130tの軽量化となることにより、耐震性能の向上または地震時補強の低減を図ることが可能である。
【0052】
また、ラーメン型式の柱頭部において、左右一対の作用力伝達補強鋼板20により橋脚1からの作用力をウェブ12に伝達する複合中空構造とすることにより、中空構造と補強部材による比較的簡易で低コストの構造で剛結状態を保持できる柱頭部2を得ることができる。
【0053】
なお、以上は、ラーメン型式、柱頭部横桁に適用した場合について説明したが、これに限らず、連続桁型式、桁端部横桁にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明のラーメン橋における柱頭部の複合中空構造の一例であり、(a)は橋軸直角方向に平行な鉛直断面図、(b)は橋軸方向に平行な鉛直断面図である。
【図2】本発明で用いる引張力伝達補強鋼板の定着部の一例を示す斜視図である。
【図3】本発明の引張力伝達補強鋼板の圧縮が作用した場合の一例を示す橋軸方向に平行な鉛直断面図である。
【図4】連続桁橋における従来の柱頭部の一例であり、(a)は橋軸直角方向に平行な鉛直断面図、(b)は橋軸方向に平行な鉛直断面図である。
【図5】ラーメン橋における従来の柱頭部の一例であり、(a)は橋軸直角方向に平行な鉛直断面図、(b)は橋軸方向に平行な鉛直断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1……橋脚
2……柱頭部
3……主桁
4……横桁
5……張出部分
6……支承
7……定着鉄筋
10…床版部
11…底版部
12…ウェブ
13…中空部
20…引張力伝達補強鋼板
21…定着板
22…リブ
23…側部板
30…定着ナット
31…孔
40…コンクリート(間詰材)
41…変形防止ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁の柱頭部または桁端部の構造であって、柱頭部横桁または桁端部横桁に床版部と底版部と左右両側のウェブにより橋軸方向に貫通する中空部が形成され、前記中空部内に底版部上面とウェブ内面とを連結するように作用力伝達補強部材が配置され、前記作用力伝達補強部材の端部がそれぞれ床版部上面、ウェブ内面に定着されていることを特徴とする柱頭部または桁端部の複合中空構造。
【請求項2】
橋梁の柱頭部または桁端部の構造であって、柱頭部横桁または桁端部横桁に床版部と底版部と左右両側のウェブにより橋軸方向に貫通する中空部が形成され、前記中空部内に、底版部上面、ウェブ内面にそれぞれ下部辺、側部辺が位置するように、作用力伝達補強板が配置され、前記作用力伝達補強板の下部辺、側部辺がそれぞれ底版部上面、ウェブ内面に定着されていることを特徴とする柱頭部または桁端部の複合中空構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれかに記載の複合中空構造において、ラーメン型式の橋梁における橋脚または橋台の定着鉄筋に作用力伝達補強部材の下端部または作用力伝達補強板の下部辺が定着されていることを特徴とする柱頭部または桁端部の複合中空構造。
【請求項4】
請求項1または請求項3までのいずれか一つに記載の複合中空構造において、作用力伝達補強部材の上端部または作用力伝達補強板の側部辺にずれ止めを設け、このずれ止め部分をウェブに埋め込むことにより、定着されていることを特徴とする柱頭部または桁端部の複合中空構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一つに記載の複合中空構造において、橋軸直角方向に平行な作用力伝達補強部材または作用力伝達補強板が橋軸方向に間隔をおいて複数配置されていることを特徴とする柱頭部または桁端部の複合中空構造。
【請求項6】
請求項5に記載の複合中空構造において、作用力伝達補強部材または作用力伝達補強板の間に間詰材が充填されていることを特徴とする柱頭部または桁端部の複合中空構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−161905(P2009−161905A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339112(P2007−339112)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】