説明

橋脚上の道路継目部構築工法

【課題】道路継目部における段差の発生を少なくして車両走行時における振動及び騒音を抑え、かつ、温度変化等による道路橋軸方向の伸縮を十分に吸収することができる構造にする。
【解決手段】左右1対の前側主桁12a,12a間に掛け渡された前側横桁15a及び左右1対の後側主桁12b,12b間に掛け渡された後側横桁15bと、道路のほぼ全幅にわたって前側横桁15aと後側横桁15bとの間に掛け渡された通し桁18とを備えるとともに、通し桁18を基盤として該通し桁18上に前後の延長床版32a,32b及び伸縮装置33を配設してなる橋脚上の道路継目部構築工法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は橋脚上の道路継目部構築工法に関するものであり、特に、橋脚上に道路の橋軸方向に間隔をおいて配置された前後1対の支承によってそれぞれ支持されている前後の延長床版との間に、走行車両の輪荷重を伝達し、かつ、温度変化等による道路橋軸方向の伸縮を吸収する伸縮装置を設けて、該前後の延長床版との間を接続する橋脚上の道路継目部構築工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、橋脚上の前後の支承によりそれぞれ支持されている前後の床版との間に伸縮装置を設け、該伸縮装置により走行車両の輪荷重を支持し、かつ、温度変化等による道路橋軸方向の伸縮を吸収するようにした橋脚上の道路継目部構築工法は知られている(例えば、特許文献1参照)。該特許文献1に示される道路継目部の構造は、前後の支承にそれぞれ載置された隣接している前後の橋桁間に伸縮装置を設けているため、橋桁の相対移動を十
分に吸収することができない。
【0003】
そこで、例えば図3に示すように、橋脚101上において、道路の橋軸方向(前後方向)に間隔おいて1対の支承102a,102bを配置し、一方の支承102aで左右1対の前側主桁103aを受けるとともに他方の支承102bで左右1対の後側主桁103bを受け、該前側主桁103aから延ばされた前側床版104aと該後側主桁103bから延ばされた後側床版104bとの間に、走行車両の輪荷重を支持し、かつ、温度変化等による道路長手方向の伸縮を吸収する伸縮装置105を設けた橋脚上の道路継目部の構造も知られている。該伸縮装置105を保持している前後の床版104a,104bはそれぞれ片持ち状に構成されている。この道路継目部の構造では、主桁間が大きく離れているので、主桁の相対移動を十分に吸収することができない。
【特許文献1】特開2004−339934号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図3に示す接続構造は、前後方向から延びる前後主桁103a,103bが走行車両の輪荷重(活荷重)によって支承102a,102bを支点に回転を起こす変形を生じることから道路継目部に段差を発生させる。道路継目部の段差は車両走行時における振動及び騒音発生をさせて周辺環境を悪化させ、また、二輪走行車の走行性にも極度に悪い影響を与える。さらに、床版104a,104b等にひび割れを生じさせて維持管理コストを高める原因にもなっている。そこで、道路継目部の段差を小さくするために、伸縮装置105の遊間を小さくすると、温度変化等による道路橋軸方向の伸縮を十分に吸収することができなくなるという新たな問題点が発生する。
【0005】
そこで、道路継目部における段差の発生を少なくして車両走行時における振動及び騒音を抑え、かつ、温度変化等による道路橋軸方向の伸縮を十分に吸収することができる構造にするために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、橋脚上に道路橋軸の方向に間隔をおいて配設された前後1対の支承と、前側の前記支承上に載置された左右1対の前側主桁及び後側の前記支承上に載置された左右1対の後側主桁と、前記前側主桁から前記後側主桁側へ延設された前側延長床版と、前記後側主桁から前記前側主桁側へ延設された後側延長床版、及び、該前後の延長床版との間に設けられた伸縮装置とを備え、該伸縮装置により走行車両の輪荷重を伝達し、温度変化等による道路橋軸方向の伸縮を吸収する構成にした橋脚上の道路継目部構築工法であって、前記左右1対の前側主桁間に掛け渡された前側横桁及び前記左右1対の後側主桁間に掛け渡された後側横桁と、道路のほぼ全幅にわたって前記前側横桁と後側横桁との間に掛け渡された通し桁を備えるとともに、前記通し桁を基盤として該通し桁上に前記前後の延長床版及び前記伸縮装置を配設してなる橋脚上の道路継目部構築工法を提供する。
【0007】
この構成によれば、前後の延長床版と伸縮装置は、前後の横桁間に掛け渡された通し桁を基盤として該通し桁上に配設され、基盤となる通し桁によって下側から支えられることになり、前後の延長床版及び伸縮装置の実効上の耐荷重強度が増す。これにより、走行車両の輪荷重を受けても道路継目部に段差を減少させる。また、伸縮装置の隙間を大きく確保しても道路継目部の段差はさほど大きくならないので、伸縮装置の隙間を大きく確保して道路橋軸方向の伸縮を十分に吸収することができる。
【0008】
請求項2記載の発明は、上記通し桁は前記前後の横桁に対して道路橋軸方向に移動可能に設けられている橋脚上の道路継目部構築工法を提供する。
【0009】
この構成によれば、通し桁が道路橋軸方向に移動可能に設けられているので、前後の延長床版及び伸縮装置にそれぞれ温度変化による道路橋軸方向の伸縮が発生したとき、該前後の延長床版及び伸縮装置が通し桁と共に移動して伸縮を吸収する。
【0010】
請求項3記載の発明は、上記通し桁上に、上記伸縮装置を通って上記通し桁上に侵入した雨水を排水する排水路を設けてなる橋脚上の道路継目部構築工法を提供する。
【0011】
この構成によれば、伸縮装置を通って通し桁上に流れ込んだ雨水は、通し桁上に設けら
れている排水路を通して所定の場所に排水できる。
【0012】
請求項4記載の発明は、上記延長床版の中間部に、前記通し桁の上下方向の動きを許容する接続部を設けた橋脚上の道路継目部構築工法を提供する。
【0013】
この構成によれば、主桁の回転変形に伴い通し桁が上下方向に動くと接続部が撓んで動きを吸収し、道路継目部の段差を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明は、道路継目部において、前後の横桁に掛け渡された通し桁を基盤とし、該通し桁上に前後の延長床版及び伸縮装置を配設し、これら前後の延長床版及び伸縮装置の実効上の耐荷重強度を増加させているので、走行車両の輪荷重を受けても発生する段差を減少させることができる。これにより、車両走行時における振動及び騒音が無くなり、周辺環境及び二輪車等の安全走行性を改善することができる。また、道路継目部におけるひび割れを防いで維持管理コストを低減することもできる。さらに、伸縮装置の隙間を大きく確保しても道路継目部の段差はさほど大きくならないので、該隙間を大きく確保して道路橋軸方向の伸縮を十分に吸収することが可能になる。
【0015】
請求項2記載の発明は、前後の延長床版及び伸縮装置にそれぞれ温度変化による道路長手方向の伸縮が発生したとき、これら前後の延長床版及び伸縮装置が通し桁と共に道路長手方向に移動して伸縮を吸収するので、請求項1記載の発明の効果に加えて、さらに道路橋軸方向の伸縮を十分に吸収することができる。
【0016】
請求項3記載の発明は、伸縮装置を通って通し桁上に流れ込んだ雨水を、通し桁上に設けている排水路を通して所定の場所に排水させることができるので、請求項1または2記載の発明の効果に加えて、橋梁上に溜まる雨水を所定の場所へ速やかに排水することにより,桁端や支承の劣化を防止できる.
【0017】
請求項4記載の発明は、通し桁が上下方向に動くと接続部が通し桁と共に撓み、道路部の段差を防ぐとともに舗装への亀裂を防ぐようにしているので、請求項1,2または3記載の発明の効果に加えて、維持管理コストをより一層低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、道路継目部における段差の発生を少なくして車両走行時における振動及び騒音を抑え、かつ、温度変化等による道路橋軸方向の伸縮を十分に吸収することができる構造にするという目的を達成するために、橋脚上に道路の橋軸方向に間隔をおいて配設された前後1対の支承と、前側の前記支承上に載置された左右1対の前側主桁及び後側の前記支承上に載置された左右1対の後側主桁と、前記前側主桁から前記後側主桁側へ延設された前側延長床版と、前記後側主桁から前記前側主桁側へ延設された後側延長床版、及び、該前後の延長床版との間に設けられた伸縮装置とを備え、該伸縮装置により走行車両の輪荷重を支持し、温度変化等による道路橋軸方向の伸縮を吸収する構成にした橋脚上の道路継目部構築工法であって、前記左右1対の前側主桁間に掛け渡された前側横桁及び前記左右1対の後側主桁間に掛け渡された後側横桁と、道路のほぼ全幅にわたって前記前側横桁と後側横桁との間に掛け渡された通し桁を備えるとともに、前記通し桁を基盤として該通し桁上に前記前後の延長床版及び前記伸縮装置を配設するようにしたことにより実現した。
【実施例】
【0019】
以下、本発明の橋脚上の道路継目部構築工法について、好適な実施例をあげて説明する。図1及び図2は橋脚部付近の道路の構造を示す。同図において、後述する道路継目部30は、橋脚10上に設けられるものであり、該橋脚10上には道路の橋軸方向に間隔をおいて配置された前後1対の支承11a,11bを有し、前側の支承11a上に左右1対の前側主桁12a,12a(図中では左側の前側主桁だけ示されている)の一端部(後端部)を載置して取り付け、後側の支承11b上に左右1対の後側主桁12b,12b(図中では左側の前側主桁だけ示されている)の一端部(前端部)を載置して取り付けている。
【0020】
前記前側主桁12a,12aは、図1に示すように正面視ほぼ断面コ字状をした鋼鉄材で形成されており、その開口部をそれぞれ互いに内側へ向け、道路の一側に沿って配設されている。そして、左右の前側主桁12a,12aの前端部との間には、前側横桁15aが、該前側横桁15aの各端部を対応している左右の前側主桁12a,12a内にそれぞれ掛け止めし、道路を左右に横切る形に掛け渡して設けられている。
【0021】
一方、前記後側主桁12b,12bも、正面視ほぼ断面コ字状をした鋼鉄材で形成されており、その開口部をそれぞれ互いに内側へ向け、道路の一側に沿って配設されている。そして、左右の前側主桁12b,12bの前端部との間には、後側横桁15bが、該後側横桁15bの各端部を対応している左右の後側主桁12b,12b内にそれぞれ掛け止めし、道路を左右に横切る形に掛け渡して設けられている。
【0022】
前記前側横桁15a及び前記後側横桁15bは、各々、H鋼16と該H鋼16をインサートして成形されている巻き立てコンクリート17とで柱状に構成されており、上端部には後述する通し桁18の一端部を収納可能な通し桁収容凹部19が設けられている。そして、前後の横桁15a,15bは通し桁収容凹部19,19を互いに内側へ向けて配置される。該前側横桁15aと後側横桁15b間には、各通し桁収容凹部19,19に一端側を収納係合させて前記通し桁18が掛け渡され、道路基盤として道路の全幅に敷設される。なお、前側横桁15aの通し桁収容凹部19における奥壁19aと後側横桁15bの通し桁収容凹部19における奥壁19aとの間の距離は、通し桁18の道路橋軸方向における長さ寸法よりも大きく形成されており、各通し桁収容凹部19内で通し桁18が道路橋軸方向に移動できるようになっている。その移動量は、図2に示すように通し桁18と鋼材16との間を連結しているアンカー20,20により制限される。
【0023】
また、通し桁18上には、前側主桁12a側の床版21a上に施工された舗装面31aと後側主桁12b側の床版21b上に施工された舗装面31bとの間に道路継目部30を設ける。
【0024】
前記道路継目部30は、前側主桁12a側の床版21aの端部から接続部36aを介して後側主桁12b側に延設されているプレキャスト製の前側延長床版32aと、後側主桁12b側の床版21bの端部から接続部36bを介して前側主桁12a側に延設されているプレキャスト製の後側延長床版32bと、該前側延長床版32aと後側延長床版32bとの間に配設された伸縮装置33とからなり、これらが通し桁18を基盤とし、該通し桁18上に敷き並べられている。また、前側延長床版32aと後側延長床版32bには、前側横桁15a及び後側横桁15bから伸縮装置33側に突き出す境界部分に位置して、例えばメナーゼ継手または角折れ継手、あるいはコッター式継ぎ手を内蔵させた接続部34a,34bを設けている。このため,通常では櫛形伸縮装置33a,33bの爪先端に向けて勾配をつけているがこれを省略しても良い。
【0025】
前記伸縮装置33は、例えば対向する櫛形伸縮装置33a,33bが遊間を挟んで配設され、走行車両の輪荷重を支持し、温度変化による遊間の道路橋軸方向の伸縮を吸収するようにしている。具体的には前側延長床版32aの先端に片持ち状に取り付けられた櫛形伸縮装置33aと後側延長床板32bの先端に片持ち状に取り付けられた櫛形伸縮装置33bとから成る。そして、櫛形伸縮装置33aと櫛形伸縮装置33bとの間に遊間(隙間)が存在し、櫛形伸縮装置33aと櫛形伸縮装置33bとの下側、すなわち伸縮装置33の下側は、通し桁18上を底面とし、前側延長床版32aの先端面と後側延長床板32bの先端面をそれぞれ両側面として成る排水路35が道路幅方向に延びて形成されている。該排水路35は、櫛形伸縮装置33aと櫛形伸縮装置33bとの間の遊間を通って流れ込む雨水等を道路の端に導き、決められた排水部より外部に排水して橋梁から予期しない状態で落下する雨水を無くす。なお、伸縮装置33は、上述した形状以外の例えば歯形タイプ等の構造であっても良い。
【0026】
したがって、この構築工法では、前後の横桁15a,15bに掛け渡された通し桁18上に前後の延長床版32a,32b及び伸縮装置33を配設して、これら前後の延長床版32a,32b、及び、伸縮装置33の各部における実効上の耐荷重強度を増しているので、走行車両の輪荷重を受けてもこれらの部分が沈み込んで発生する道路継目部30の段差を無くすことができる。また、道路継目部30におけるひび割れを防ぐこともできる。さらに、伸縮装置33の遊間を大きく確保しても道路継目部30の段差はさほど大きくならないので、該遊間を大きく確保することが可能になる。
【0027】
斯くして、図1及び図2に示すような橋脚付近の道路継目部30において、車両走行時における振動及び騒音が無くなり、周辺環境及び二輪車等の安全走行性を改善することができる。また、道路継目部30におけるひび割れを防いで維持管理コストを低減することもできる。さらに、伸縮装置33の遊間を大きく確保しても道路継目部30の段差はさほど大きくならないので、該遊間を大きくして道路橋軸方向の伸縮を十分に吸収することが可能になる。
【0028】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る橋脚部付近の道路の斜視図。
【図2】本発明に係る橋脚付近の道路の概略縦断側面図。
【図3】従来の橋脚部付近の道路の概略縦断側面図。
【符号の説明】
【0030】
10 橋脚
11a 前側の支承
11b 後側の支承
12a 前側主桁
12b 後側主桁
15a 前側横桁
15b 後側横桁
18 通し桁
19 通し桁収容凹部
21a 床版
21b 床版
30 道路継目部
31a 舗装面
31b 舗装面
32a 前側延長床版
32b 後側延長床版
33 伸縮装置
34a 接続部
34b 接続部
35 排水路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋脚上に道路の橋軸方向に間隔をおいて配設された前後1対の支承と、前側の前記支承上に載置された左右1対の前側主桁及び後側の前記支承上に載置された左右1対の後側主桁と、前記前側主桁から前記後側主桁側へ延設された前側延長床版と、前記後側主桁から前記前側主桁側へ延設された後側延長床版、及び、該前後の延長床版との間に設けられた伸縮装置とを備え、該伸縮装置により走行車両の輪荷重を支持し、温度変化等による道路橋軸方向の伸縮を吸収する構成にした橋脚上の道路継目部構築工法であって、
前記左右1対の前側主桁間に掛け渡された前側横桁及び前記左右1対の後側主桁間に掛け渡された後側横桁と、道路のほぼ全幅にわたって前記前側横桁と後側横桁との間に掛け渡された通し桁を備えるとともに、前記通し桁を基盤として該通し桁上に前記前後の延長床版及び前記伸縮装置を配設してなることを特徴とする橋脚上の道路継目部構築工法。
【請求項2】
上記通し桁は前記前後の横桁に対して道路橋軸方向に移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1記載の橋脚上の道路継目部構築工法。
【請求項3】
上記通し桁上に、上記伸縮装置を伝わって前記通し桁上に侵入した雨水を排水する排水路を設けてなることを特徴とする請求項1または2記載の橋脚上の道路継目部構築工法。
【請求項4】
上記延長床版の中間部に、前記通し橋梁床版の上下方向の動きを許容する接続部を設けたことを特徴とする請求項1,2または3記載の橋脚上の道路継目部構築工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−71059(P2010−71059A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−243390(P2008−243390)
【出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(592179067)株式会社ガイアートT・K (25)
【出願人】(599165256)
【出願人】(505398952)中日本高速道路株式会社 (94)
【Fターム(参考)】