説明

機械ライン用の伝動ターボ機械、機械ライン、および伝動ターボ機械用の伝動機

【課題】蒸気タービンの効率および設置寸法を改善した機械ラインを提供する。
【解決手段】機械ラインが、駆動ユニット、特に軸方向の排流を備えた蒸気タービン(1)と、伝動ターボ機械(2)と、さらなる圧縮機(4)とを含んでおり、その際、伝動機を内蔵した伝動ターボ機械(2)が、大歯車(2.2)を介してターボ機械ロータ(3.10,3.20,3.30)を駆動し、かつさらなる圧縮機(4)の駆動のために回転数低減型の負荷伝動機の従動小歯車(2.3)を駆動するための駆動小歯車(2.1)を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械ライン用の、負荷伝動機を内蔵した伝動ターボ機械、特に半径流伝動ターボ機械と、そのような伝動ターボ機械用の内蔵された負荷伝動機と、そのような伝動ターボ機械およびさらなる圧縮機、特に主圧縮機を備えた機械ラインとに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に機械ラインは、蒸気タービン、ガスタービン、もしくは膨張機、特に応力緩和タービンまたは残留ガスタービンなどの駆動ユニットと、この駆動ユニットによって駆動される例えば空気または別の気体を圧縮するための1つまたは複数の圧縮機とを有している。
【0003】
実際の運用から特に知られている機械ラインは、二重に駆動する蒸気タービンが、一方の側では複数の圧縮機段を備えた昇圧圧縮機を駆動し、かつこの蒸気タービンの反対側では主圧縮機を駆動しており、この主圧縮機は、媒体を吸い込み、圧縮し、かつそのうちの部分質量流量を昇圧圧縮機に送り込み、昇圧圧縮機はこの部分質量流量を例えば1つ〜3つの圧力段までさらに圧縮する。
【0004】
この場合、蒸気タービン、主圧縮機、および昇圧圧縮機の回転数は、互いに同調していなければならない。熱力学上の理由から蒸気タービンおよび昇圧圧縮機の圧縮機段の回転数は相対的に高いべきである一方で、しかしながら主圧縮機のための回転数は、主圧縮機の大きな直径およびそれと結びついた高い遠心力に基づき比較的低く、かつ従来は特に蒸気タービンの回転数を制限し、これは蒸気タービンの効率およびその設置寸法に対して不利である。
【0005】
このため実際の運用によれば、昇圧圧縮機の圧縮機段を主圧縮機より高い回転数で稼働させるため、例えば、伝動機を内蔵した伝動圧縮機を請求項1のプリアンブルによって開示する特許文献1から、または特許文献2から既知のように、昇圧圧縮機を伝動圧縮機として形成することが知られている。特許文献3から既知の3段式伝動圧縮機内でも、圧縮機段内で駆動回転数をより高い回転数へと速く変速させる。
【0006】
例えば特許文献4からは原則的に、蒸気タービンの回転数を、主圧縮機の前の別個の平歯車伝動機によって減少させることも知られており、ただしこれは別個の伝動機により、製造および組立ての労力だけでなく、機械ラインの軸方向の設置長さを増大させ、したがって搬送および建物の費用も増大させる。
【0007】
既知の機械ラインは、またさらなる欠点を有している。これまでの、蒸気タービンの両側での主圧縮機および昇圧圧縮機の配置は、例えば蒸気タービンからの径方向の排流を必要とする。これは効率を悪化させる。蒸気タービンの後ろにコンデンサを接続する場合、径方向に排流される蒸気が送り込まれるこのコンデンサは、蒸気タービンより上または下の水平面において配置されなければならず、これは機械ライン全体の設置高さを、したがって特に機械ラインを収容する土台または建物のための費用を著しく増大させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1 691 081号明細書(EP 1 691 081 A2)
【特許文献2】独国特許出願公開第42 41 141号明細書(DE 42 41 141 A1)
【特許文献3】独国特許発明第24 13 674号明細書(DE 24 13 674 C2)
【特許文献4】DE-GM 7122098
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、上記欠点を少なくとも1つ減らすこと、および機械ラインを改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1の特徴を備えた内蔵された伝動機、請求項10に記載の伝動ターボ機械、もしくは請求項12または18の特徴を備えた機械ラインによって解決される。有利な変形形態は従属請求項の主題である。
【0011】
本発明の第1の観点に基づき、駆動ユニットと圧縮機の間に配置される回転数低減型の負荷伝動機を、伝動ターボ機械の伝動機内に内蔵すること、およびこうして同時に圧縮機から分離することを提案する。
【0012】
このため機械ライン用の伝動ターボ機械は、駆動軸と回転しないように結合された駆動小歯車と、この駆動小歯車と噛み合う大歯車と、1つまたは複数の、好ましくは少なくとも2つの、特に3つまたは4つのターボ機械ロータとを含んでいる。伝動ターボ機械のこのターボ機械ロータは、それぞれ1つのターボ機械軸と、ターボ機械軸と回転しないように結合された1つまたは複数の、好ましくは2つの羽根車と、ターボ機械軸と回転しないように結合されたターボ機械小歯車とを含んでおり、その際、1つまたは複数のターボ機械ロータのターボ機械小歯車が大歯車と噛み合う。
【0013】
その際、ターボ機械ロータの羽根車は、圧縮機羽根車または膨張機羽根車として形成することができる。特に、同じターボ機械ロータの2つ以上の圧縮機羽根車および/または幾つかのターボ機械ロータの圧縮機羽根車が、伝動ターボ機械の、好ましくは半径流圧縮機として形成された圧縮機段を構成することができ、この伝動ターボ機械は伝動圧縮機として作用する。代替案として、同じターボ機械ロータの2つの膨張機羽根車および/またはいくつかのターボ機械ロータの膨張機羽根車が、伝動ターボ機械の、好ましくは半径流膨張機として形成された膨張機段を構成することができ、この伝動ターボ機械は伝動膨張機として作用する。両方の実施形態を組み合わせてもよく、これは例えば1つまたは複数の圧縮機羽根車を装備した少なくとも1つのターボ機械ロータが1つまたは複数の圧縮機段を構成し、かつ1つまたは複数の膨張機羽根車を装備した別の少なくとも1つのターボ機械ロータが、同じ伝動ターボ機械の1つまたは複数の膨張機段を構成することにより行われる、および/または1つまたは複数のターボ機械ロータが、それぞれ少なくとも1つの圧縮機羽根車およびそれぞれ少なくとも1つの膨張機羽根車を装備しており、かつそれによって圧縮機段も膨張機段も構成することにより行われる。このため本願では、少なくとも1つの圧縮機羽根車を装備した1つまたは複数の圧縮機軸を備えた純粋な単段または多段式伝動圧縮機、少なくとも1つの膨張機羽根車を装備した1つまたは複数の膨張機軸を備えた純粋な単段または多段式伝動膨張機も、組み合わされた伝動圧縮機/膨張機(「伝動圧縮膨張機」)も、総じて伝動ターボ機械と呼び、この伝動ターボ機械の、圧縮機羽根車および/または膨張機羽根車を装備したロータをターボ機械ロータと呼ぶ。
【0014】
ところで本発明によれば伝動ターボ機械は、これに加え、回転数低減型の負荷伝動機の従動小歯車を有しており、この従動小歯車は、従動軸と回転しないように結合されており、この従動軸は、従動軸と連結可能で伝動ターボ機械から分離されているさらなる圧縮機、特に機械ラインの主圧縮機の圧縮機駆動軸を駆動し、この主圧縮機は、特に単軸圧縮機として形成することができ、好ましくは、軸流圧縮機、半径流圧縮機として詳しくは例えば水平および/または垂直な分割線を備えて形成することができ、または等温圧縮機として、または組み合わされた軸流‐半径流圧縮機として形成することができる。
【0015】
この従動小歯車は、大歯車のように、好ましくは駆動小歯車の、大歯車とは反対の側で、駆動小歯車と噛み合う。これにより本発明による伝動ターボ機械は、伝動ターボ機械の多軸伝動機と、伝動ターボ機械から分離された圧縮機のための負荷伝動機とを初めて組み合わせる。
【0016】
内蔵された伝動機、そのような伝動機を内蔵した伝動ターボ機械、もしくは本発明の第1の観点に基づく機械ラインは、一連の利点を有しており、つまり駆動軸を駆動する駆動ユニット、例えば蒸気タービン、ガスタービン、もしくは膨張機、特に応力緩和タービンまたは残留ガスタービンは、回転数低減型の負荷伝動機により、さらなる圧縮機、特に主圧縮機と、伝動ターボ機械のターボ機械ロータとを、それぞれに有利な回転数範囲内で稼働させ得る。
【0017】
例えば、回転数低減型の負荷伝動機は、駆動小歯車の回転数を、1.25〜1.45の範囲内、好ましくは1.3〜1.4の範囲内、および特に1.32〜1.38の範囲内にある変速比で、従動小歯車の回転数まで減少させ得る。変速比は、本願ではこの分野で通常のやり方において、従動回転数に対する駆動回転数の比率の値として、つまりここでは、従動小歯車回転数で割った駆動小歯車回転数によって定義され、このため回転方向の反転も、正数の変速比で表される。相応にターボ機械小歯車は、駆動小歯車により、0.28〜0.54の範囲内、好ましくは0.30〜0.52の範囲内、および特に0.32〜0.50の範囲内にある変速比を有することができ、その際、この変速比は、ターボ機械小歯車回転数で割った駆動小歯車回転数の比率の値から明らかである。
【0018】
これにより一実施形態では、例えば蒸気タービンは、定格回転数の場合1分間に4000〜7000回転(U/min)の範囲内で、伝動ターボ機械として形成された昇圧圧縮機のターボ機械ロータは、定格回転数の場合10000〜17000U/minの範囲内で、および単軸圧縮機として形成された主圧縮機は、定格回転数の場合2000〜6000U/minの範囲内で稼働することができる。これは蒸気タービンの効率を上昇させ、さらに蒸気タービンは有利にもより小さく構造され得る。
【0019】
その際、駆動小歯車および従動小歯車が負荷伝動機を構成しており、この負荷伝動機を介して、駆動ユニットによって供給され、蒸気タービンでは例えば40〜80MWの範囲内にあり得る出力の大部分を、さらなる圧縮機に伝達することができ、このさらなる圧縮機は、例えば30〜50MWの範囲内の出力で印加される。好ましくは出力の少なくとも半分、特に好ましくは少なくとも60%が、駆動軸から従動軸に伝達される。大歯車は、残りの差分出力を大歯車と噛み合うターボ機械ロータに相応に分配する。このためターボ機械小歯車および大歯車の歯幅が比較的小さく形成され得ることが有利であり、かつ駆動小歯車の歯幅の多くとも0.91倍であることが好ましい。
【0020】
さらなる重要な利点として、駆動ユニット回転数をさらなる圧縮機の回転数まで低下させるために別個の伝動機を必要とすることもなくなり、これは製造および組立ての労力ならびに設置スペースを削減させる。
【0021】
さらなる圧縮機は、伝動ターボ機械のハウジングから分離されたハウジング内に収容されることが好ましい。これにより、伝動ターボ機械とさらなる圧縮機の間の振動に関する連結の切断が達成され得ることが特に有利である。このためにさらなる圧縮機は、伝動ターボ機械から軸方向に間隔を開けていることが好ましく、これは特に、さらなる圧縮機が主圧縮機として大きく構造される場合にも利点となる。
【0022】
本発明による、さらなる圧縮機、特に主圧縮機の回転数低減型の負荷伝動機の、伝動ターボ機械内への内蔵によって、負荷伝動機は、さらなる圧縮機または主圧縮機のハウジング内には収容されず、これは振動技術的に有利であり得る。
【0023】
上述したように伝動ターボ機械は、1つまたは複数のターボ機械ロータが、それぞれ少なくとも1つの、2つ以上の膨張機羽根車を装備することによって、1つまたは複数の膨張機段を有し得る。これにより例えば、機械ライン内で変換されたプロセスの廃棄媒体を、および/または予め主圧縮機内で圧縮されたプロセス媒体、好ましくはこのうちの部分質量流量を、応力緩和することができ、かつ媒体のエンタルピーを、さらなる圧縮機および/または伝動ターボ機械の圧縮機段の駆動のために利用できることが有利である。追加案または代替案として、この場合、機械ラインの昇圧圧縮機として作用する伝動ターボ機械は、1つまたは複数のターボ機械ロータが、それぞれ少なくとも1つの、2つ以上の圧縮機羽根車を装備することによって、1つまたは複数の圧縮機段を有し得る。これにより例えば、さらなる圧縮機内で圧縮された媒体、好ましくは主圧縮機からの部分質量流量を、さらに圧縮することができ、これにより例えば再冷却および応力緩和の後に冷却剤として機能する。追加案または代替案として、伝動ターボ機械の圧縮機段内では、さらなる圧縮機を貫流しない別の媒体も圧縮され得る。つまり伝動ターボ機械は、作業機械および/または原動機としても作用することができ、その際、ターボ機械軸は、羽根車に回転モーメントをかける、または羽根車によって回転モーメントを印加される。
【0024】
追加案または代替案として、駆動ユニットを補助する、および/または駆動ユニットによって駆動可能な、電気機械、特にモータ、発電機、またはモータ/発電機を企図することができ、その電気機械入力軸は、駆動小歯車、大歯車、従動小歯車、またはターボ機械小歯車と噛み合う、もしくは駆動軸、従動軸、大歯車の軸、またはタービンロータと連結される、または回転しないように結合される。このやり方で例えば、電気モータによる追加的な駆動回転モーメントを伝動ターボ機械内に導入することができる、もしくはその伝動ターボ機械内で、発電機において提供される機械的出力を電気的出力に変換し、かつ例えば蓄える、機械ラインに提供する、または電力網内に供給することができる。
【0025】
昇圧圧縮機が、予め主圧縮機内で圧縮された媒体によって貫流される場合、比較的高い圧力により、特に主圧縮機からの部分質量流量のみの貫流の際は、貫流される断面、したがって伝動ターボ機械のハウジング直径、羽根車直径、または翼配列直径を、さらなる圧縮機のそれより小さく形成することができる。このため好ましくは、さらなる圧縮機の最小貫流断面が、伝動ターボ機械の最小貫流断面の少なくとも1.05倍、好ましくは少なくとも1.1倍、および特に少なくとも1.2倍を有する。
【0026】
例えば駆動小歯車と駆動軸、ターボ機械小歯車とターボ機械軸、または従動小歯車と従動軸の間の回転しない結合とは、本願では、例えばスプライン軸および/またはネジを含み得る取外し可能な結合も、取外し不能な結合、特に溶接結合、または統合的な形成、例えば一体的な原型部品および/または成型部品も、含んでいる。
【0027】
従動軸と、それに連結可能な分離された圧縮機駆動軸との間の連結は、例えばフランジ接続、軸方向変位および/または角度変位を調整するための連結、および/または過負荷クラッチなどの切替え可能または自動切替え式の連結を介して実現することができる。これに関しては特に、取外し可能でも取外し不能でも、互いに結合される従動軸および圧縮機駆動軸を連結可能と言う。従動軸と圧縮機駆動軸の間の連結は、回転振動、軸方向の衝撃、またはそれに類するものを和らげ得ることが有利である。
【0028】
本発明の意味において噛み合うとは、一方では直接的な噛み合い、すなわち両方の互いに噛み合う要素、例えば単斜歯または二重斜歯の歯の互いの噛み合いを含む。ただしこれに関しては、1つまたは複数の伝動段、特に平歯車伝動段および/または遊星歯車伝動段の介在の下での間接的な噛み合いも同様に含まれ、これは例えば特許文献2から知られており、これに関してその開示を明示的に本明細書に援用する。
【0029】
本発明の第1の観点に基づく伝動ターボ機械が2つ以上のターボ機械ロータを有する場合、全てのターボ機械小歯車は大歯車と噛み合うことができ、これは大歯車の均一な作用ならびに伝動ターボ機械の比較的幅の狭い構造を可能にする。しかしながら同様に、1つまたは複数のターボ機械小歯車が従動小歯車と噛み合ってもよい。これにより、このターボ機械ロータの、大歯車によって駆動されたターボ機械ロータに対する間隔が拡大され、これは、個々のターボ機械ロータまたはそれによって構成された圧縮機段および/または膨張機段の構造的な形成自由度を有利に上昇させる。
【0030】
好ましい実施形態では、駆動小歯車の回転軸、大歯車の回転軸、および従動小歯車の回転軸が、共通の好ましくは基本的に水平な面内に配置されている。これは有利にも、この面に垂直な伝動ターボ機械の設置高さを減少させる。大歯車と噛み合うターボ機械小歯車の回転軸および/または従動小歯車と噛み合うターボ機械小歯車の回転軸を、同様に、この面内に配置することができ、かつこうして設置高さをさらに減少させ得る。さらなるターボ機械小歯車が大歯車と噛み合う場合、そのターボ機械小歯車の回転軸は、大歯車の回転軸がある面に平行なさらなる共通の面内に配置されることが好ましい。
【0031】
伝動ターボ機械は、駆動小歯車、大歯車、従動小歯車、およびターボ機械小歯車を収容する複数の部分からなるハウジングを有することが好ましい。特に、回転軸が上で詳述したように1つまたは2つの互いに平行な、好ましくは水平な面内にある場合、ハウジングがこの1つまたは2つの面で分割されていることが好ましい。これは組立ておよび整備を簡単にする。
【0032】
従動小歯車および大歯車は、駆動小歯車と同じ横断面内に配置されることが好ましい。これにより伝動ターボ機械が軸方向に特に短く構造されることが有利である。同様に、大歯車および従動小歯車は、軸方向に変位した面内に配置されてもよく、その際、大歯車または駆動小歯車は、有利には2段式に形成され、かつ駆動小歯車およびターボ機械小歯車と噛み合うため(2段式の大歯車の場合)もしくは大歯車および従動小歯車と噛み合うため(2段式の駆動小歯車の場合)に2つの異なるピッチ円直径を有している。このような配置は、特に、駆動小歯車および大歯車の回転軸の面において幅を比較的狭く構造することができる。
【0033】
駆動小歯車、大歯車、ターボ機械小歯車、および従動小歯車のうちの全てではなく、いくつかだけが、伝動ターボ機械のハウジング内で軸方向に支持されることが好ましく、このためハウジングは、例えば2つ〜6つのスラスト軸受を有している。その際、駆動小歯車、大歯車、ターボ機械小歯車、および従動小歯車のうちの他の歯車は、伝動ターボ機械のハウジング内で軸方向に支持されている要素に、特にスラストカラーを介して、軸方向に支えられ得、これは特許文献2から知られており、これに関してその開示を明示的に本明細書に援用する。これにより構造上、比較的少ない労力で、羽根車または駆動ユニットの軸方向の推力を受けることができる。
【0034】
本発明による機械ライン内では、伝動ターボ機械の、駆動ユニットとは反対の側に、さらなる圧縮機を配置できることが特に有利である。特に、このやり方では、これにより伝動ターボ機械と反対の側が空いている駆動ユニットを、軸方向の排流での蒸気タービンとして形成することができる。これによって、径方向の排流での蒸気タービンを備えた従来の機械ラインとは異なり、効率を改善するというだけではない。蒸気タービンの後ろに接続されるコンデンサも、基本的に同じ水平面に配置することができ、これは、そのような機械ラインの設置高さを明らかに減少させる。このため本発明の第2の観点に基づき、伝動ターボ機械およびさらなる圧縮機、特に主圧縮機を備えた機械ラインでは、軸方向の排流での蒸気タービンが駆動ユニットとして企図される。請求項1、10、および12または18に記載の本発明の上述の第1および第2の観点はそれぞれ、機械ラインを改善するという冒頭に挙げた課題を解決する。両方の観点が互いに組み合わされることが特に有利であるが、これは必須ではない。
【0035】
このため以下に、両方の観点が適用された本発明の例示的実施形態に基づき、両方の観点を共に説明し、その際、本発明が少なくとも第1または第2の観点の特徴だけは不可欠に有していることが明確に強調される。それに応じ、両方の観点のさらなる特徴および利点は従属請求項および例示的実施形態から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施形態に基づく伝動機を内蔵した伝動ターボ機械を有する機械ラインを上から見た部分概略図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に基づく伝動機を内蔵した伝動ターボ機械を有する機械ラインを上から見た部分概略図である。
【図3A】図1に基づく伝動ターボ機械の伝動構成を軸方向に見た部分概略図である。
【図3B】図3Aに基づく伝動構成を上から見た部分概略図である。
【図4A】図2に基づく伝動ターボ機械の伝動構成を軸方向に見た部分概略図である。
【図4B】図4Aに基づく伝動構成を上から見た部分概略図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に基づく伝動機を内蔵した伝動ターボ機械の伝動構成を上から見た部分概略図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に基づく伝動機を内蔵した伝動ターボ機械の伝動構成を上から見た部分概略図である。
【図7】本発明の第5の実施形態に基づく伝動機を内蔵した伝動ターボ機械の伝動構成を上から見た部分概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1、図3は、本発明の第1の実施形態に基づく機械ラインの本質的な要素を示しており、この場合、本発明の第1および第2の観点が共に実現されている。
【0038】
まず図1に関しては、軸方向に吸い込む単軸圧縮機として形成された主圧縮機が4で表されており、この主圧縮機は、矢印で示唆されたやり方において空気を吸い込み、かつ例えば7barまで圧縮する。
【0039】
この圧縮された空気の部分質量流量はその後、詳しくは図示されていないやり方において昇圧圧縮機の第1のターボ機械ロータ3.10に送られ、この昇圧圧縮機は、以下に詳しく説明する伝動ターボ機械2として形成されている。
【0040】
その際、第1のターボ機械ロータ3.10は、三角形で示唆された2つの圧縮機羽根車3.12,3.13(図3B)を含んでおり、この圧縮機羽根車は、共通のターボ機械軸に付いており、かつ主圧縮機から送られた空気をさらに圧縮するため、図示されていない渦室内で回転しており、かつこうして昇圧圧縮機2の2つの圧縮機段を構成している。その後、この圧縮機段から、詳しくは図示されていないやり方において昇圧圧縮機2の第2のターボ機械ロータ3.20に空気が送られ、この第2のターボ機械ロータの、同様に三角形として示唆された2つの圧縮機羽根車3.22,3.23(図3B)は、空気をさらに圧縮するため、第1のターボ機械ロータ3.10の羽根車より小さい直径を有し、かつより速く回転しており、かつこうして昇圧圧縮機2の2つのさらなる圧縮機段を構成している。その中でさらに圧縮された空気はその後、ここでも詳しくは図示されていないやり方において、昇圧圧縮機2の第3のターボ機械ロータ3.30に送られ、この第3のターボ機械ロータの2つの圧縮機羽根車3.32,3.33(図3B)は、空気を最終的に所望の75barの終圧まで圧縮するため、再び、第2のターボ機械ロータ3.20の羽根車より小さい直径を有し、かつより速く回転しており、かつこうして、全体としてはこれで6段の昇圧圧縮機2のさらなる2つの圧縮機段を構成している。ただしその他の点では、昇圧圧縮機2の3つのターボ機械ロータ3.10,3.20および3.30は、構造的に類似に形成されている。
【0041】
図3A、図3Bで、軸方向に見た図または上から見た図において詳しく示したように、3つのターボ機械ロータ3.10,3.20および3.30の、羽根車3.12および3.13,3.22および3.23または3.32および3.33が付いているターボ機械軸と、それぞれ1つのターボ機械小歯車3.11,3.21、または3.31とは、回転しないように結合されており、例えばターボ機械軸に切り込みを入れられた小歯車または別個のものとしての小歯車が軸‐ボス結合を介して、ターボ機械軸に固定されている。全ての3つのターボ機械小歯車3.11,3.21および3.31は、これにより多軸圧縮機として形成された昇圧圧縮機2の共通の大歯車2.2と噛み合う。その際、3つのターボ機械ロータの回転数が違うことを実現するため、最も遅く回転する第1のターボ機械ロータ3.10のターボ機械小歯車3.11が最大の直径を有しており、最も速く回転する第3のターボ機械ロータ3.30のターボ機械小歯車3.31が最小の直径を有している。もちろん例示的実施形態の変形形態においては、それぞれ1つの、2つ以上の羽根車を備えたより多い、例えば4つまたは5つのターボ機械ロータも可能である。
【0042】
大歯車2.2自体は、より小さな直径の駆動小歯車2.1によって駆動されており、この駆動小歯車は、詳しくは図示されていないやり方において、蒸気タービン1(図1)の駆動回転軸と、もしくは別の駆動ユニット、例えばガスタービンまたは膨張機と、回転しないように結合されており、これによりタービン回転数が、3つのターボ機械ロータのターボ機械軸へ、さまざまな変速比で速く変速される。
【0043】
本発明の第1の観点に基づき、駆動小歯車2.1、大歯車2.2、およびターボ機械小歯車3.11の回転軸が配置されているのと同じ水平面内に、従動小歯車2.3の回転軸も配置されており、この従動小歯車は、大歯車2.2とは反対の側で駆動小歯車2.1と噛み合っている。その際、駆動小歯車2.1、大歯車2.2、および従動小歯車2.3は、同じ横断面(図3Aの図面)内に配置されており、これにより駆動小歯車2.1の同じ歯が、大歯車2.2とも従動小歯車2.3とも噛み合う。図3Bで概略的に示唆したように、異なる回転モーメントの流れに基づき、ターボ機械小歯車3.11,3.21,3.31の歯幅は、駆動小歯車および従動小歯車2.1,2.3の歯幅より小さい。
【0044】
従動小歯車2.3の直径は駆動小歯車2.1の直径より大きく、これにより、蒸気タービンの駆動軸に付いている駆動小歯車2.1を駆動する蒸気タービン1の回転数が、従動軸へと、従動小歯車2.3によって遅く変速される。従動小歯車2.3を備えた従動軸は、図1に示唆した連結器によって、単軸圧縮機として形成された主圧縮機4の圧縮機駆動軸4.1(図1)と結合されており、これによりタービンは、遅く変速することを伴って主圧縮機を駆動する。したがって駆動小歯車および従動小歯車2.1,2.3は、回転数低減型の負荷伝動機を構成しており、この負荷伝動機を介して、タービン出力の大部分が主圧縮機4に伝達される。
【0045】
タービン回転数または駆動小歯車回転数を、より遅い従動小歯車回転数またはより速いターボ機械小歯車回転数に低減または上昇させることにより、蒸気タービン1、昇圧圧縮機2、および主圧縮機4を同時に最良の回転数範囲内で稼働することができる。特に、主圧縮機回転数が比較的低い場合に、蒸気タービン1の回転数が比較的高いことが可能であり、これは、蒸気タービン1の効率を改善し、かつ比較的速く回転する比較的小さな蒸気タービンの使用を可能にする。これに加え、統合的な伝動機としての形成により、別個の負荷伝動機が必要なく、構造上、機械ラインおよび土台を比較的コンパクトに保ち得ることが有利である。
【0046】
駆動小歯車および従動小歯車2.1,2.3、大歯車2.2、ならびに大歯車と噛み合うターボ機械小歯車3.11,3.21および3.31は、共通のハウジング(図示されていない)内に収容されている。3つの部分から成るこのハウジングは、駆動小歯車および従動小歯車2.1,2.3、大歯車2.2、およびターボ機械小歯車3.11の回転軸がある図3Aに一点鎖線で示唆した面で、水平に分割されており、これにより、これらの歯車を簡単なやり方で第1の下のハウジング部分内で組み立てることができ、この第1のハウジング部分の上に、第2の真ん中のハウジング部分が載せられる。
【0047】
第2および第3のターボ機械ロータ3.20または3.30のターボ機械小歯車3.21,3.31の回転軸は、駆動小歯車および従動小歯車2.1,2.3、大歯車2.2、およびターボ機械小歯車3.11の回転軸がある面に平行な、図3Aに一点鎖線で示唆したさらなる水平面内にある。ハウジングは、この面でも水平に分割されており、これにより、真ん中のハウジング部分を載せた後、ターボ機械小歯車3.21,3.31を簡単なやり方で真ん中のハウジング部分内で組み立てることができ、この第2のハウジング部分の上に、第3の上のハウジング部分が載せられる。駆動小歯車回転軸、従動小歯車回転軸、および大歯車回転軸の面の垂直の上方にあるさらなる水平面内に両方のターボ機械小歯車3.21,3.31を配置することにより、大歯車2.2の下の設置スペースが、ターボ機械ロータの配置のために必要とされないことが有利である。
【0048】
主圧縮機4は、昇圧圧縮機2から分離したハウジングを有しており、かつ圧縮機駆動軸4.1を介してのみ、昇圧圧縮機と結合されている。これにより主圧縮機および昇圧圧縮機の、例えば図示されていないコンクリート土台または金属土台の上にある両方のハウジングが、振動技術的にはほぼ連結を切り得ることが有利である。
【0049】
特に図1で認識できるように、蒸気タービン1は、昇圧圧縮機2と、蒸気タービンとは反対の側に配置された主圧縮機4とを、1つだけの駆動軸によって駆動する。これまでの二重に駆動するタービンとは異なり、このような1つだけの軸端を備えた蒸気タービンは、別の固有振動数または臨界回転数を有することが有利であり、特に、共振の問題を避けるために稼働中は十分な間隔を保つべきである隣の固有振動数または臨界回転数との間の範囲を拡大させ得、かつこうして許容される稼働範囲を広げ得ることが有利である。
【0050】
昇圧圧縮機2および主圧縮機4を、蒸気タービン1の同じ側に配置することが、図1に矢印で示唆した、本発明の第2の観点に基づく、主圧縮機4および昇圧圧縮機2と反対の側へ(図1では左へ)の、蒸気タービン1からの軸方向の排流を可能にする。これにより蒸気タービン1の効率が改善されることが有利である。
【0051】
蒸気タービン1からの軸方向の排気は、蒸気タービンの後ろに接続されたコンデンサ(図示されていない)内に流れる。昇圧圧縮機および主圧縮機が蒸気タービンの両側に配置されており、それが径方向の排流と、それにより蒸気タービンの面より上または下に垂直な方向において後ろに配置されたコンデンサの配置と、それに応じ、相応の垂直な設置高さでの2階建ての土台構造と、を意味する従来の機械ラインとは違い、本発明の第2の観点に基づく機械ラインのコンデンサは、蒸気タービン1の軸方向の排流により、基本的に蒸気タービンと同じ水平面に配置することができる。これは有利にも、機械ラインの1階建て構造を可能にし、これは、比較的コンパクトな土台、および比較的低い設置高さ、したがって建物高さに基づき、かなりの費用削減に至る。同じ面、またはこの面に平行で垂直の上方に配置されたさらなる水平面内での、駆動小歯車、従動小歯車、大歯車、およびターボ機械小歯車の回転軸の配置も、費用削減に寄与することが有利である。
【0052】
図2、図4は、図1、図3に相応する表示において、本発明の第2の実施形態に基づく機械ラインの本質的な要素を示しており、この第2の実施形態は、基本的には第1の実施形態と同じであり、かつ第2の実施形態でも同様に、本発明の第1および第2の観点が共に実現されている。第1の実施形態と同じ要素は同一の符号で表しており、したがってその点では、基本的に同じ構造の第1の実施形態に対する上述の説明を参照されたく、以下には第1と第2の実施形態の相違点だけを取り上げる。
【0053】
図2に矢印で示唆したように、第2の実施形態での主圧縮機4は径方向に吸い込む。第2の実施形態の昇圧圧縮機2は、第2および第3のターボ機械ロータ3.20,3.30の配置において、第1の実施形態の昇圧圧縮機2と異なっている。第2および第3のターボ機械ロータのターボ機械小歯車3.21,3.31の回転軸が、図3Aに示したように、駆動小歯車、従動小歯車、および大歯車の回転軸の面に平行な共通のさらなる水平面内にあるのに対して、図4に基づく第2の実施形態では、第1および第2のターボ機械ロータ3.10,3.20のターボ機械小歯車3.11,3.21だけが大歯車2.2と噛み合っており、その際、第1および第2のターボ機械ロータ3.10,3.20のターボ機械小歯車3.11,3.21および駆動小歯車2.1は、周方向において好ましくは90°ずつ変位されて、大歯車2.2と噛み合っており、すなわち第2のターボ機械小歯車3.21の回転軸は、駆動小歯車2.1と第1のターボ機械ロータのターボ機械小歯車3.11の回転軸の間で、かつ駆動小歯車、従動小歯車2.1,2.3、大歯車2.2、およびターボ機械小歯車3.11の共通の水平面より垂直の上方で、水平にある。第3のターボ機械ロータ3.30のターボ機械小歯車3.31の回転軸は、駆動小歯車、従動小歯車2.1,2.3、大歯車2.2、およびターボ機械小歯車3.11の回転軸の共通の水平面内にあり、第3のターボ機械小歯車は、従動小歯車2.3の、駆動小歯車2.1とは反対の側で、従動小歯車と噛み合っており、これにより第3のターボ機械小歯車は、大歯車2.2ではなく従動小歯車2.3を介して、駆動小歯車2.1によって駆動される。
【0054】
第1の実施形態の場合のように、大歯車2.2または従動小歯車2.3の介在によって、駆動軸の回転方向をターボ機械軸で保つことができ、これに対して従動軸では反転されている。もちろんそれが有利である場合には、駆動小歯車、従動小歯車、大歯車、および/またはターボ機械小歯車の間にさらなる伝動段を介在させることによって、回転方向を別のように方向付けることも可能である。特に、ターボ機械小歯車を、ターボ機械軸を駆動する遊星歯車伝動機の内歯車として形成することが可能であり、これは特許文献2に記載されており、これに関してその開示を明示的に本明細書に援用する。
【0055】
図5は、図3B、図4Bに相応する表示において、本発明の第3の実施形態に基づく伝動機を内蔵した伝動ターボ機械の伝動構成の本質的な要素を示しており、この第3の実施形態は、基本的には第1および第2の実施形態と同じであり、かつ第3の実施形態でも同様に、本発明の第1および第2の観点が共に実現されている。第1および第2の実施形態と同じ要素は同一の符号で表しており、したがってその点では、基本的に同じ構造の第1および第2の実施形態に対する上述の説明を参照されたく、以下には第1、第2、および第3の実施形態の相違点だけを取り上げる。
【0056】
第3の実施形態では、第1のターボ機械ロータ3.10が電気機械入力軸5.1と取り替えられており、この電気機械入力軸は、連結器を介して電気機械5、例えば電気モータまたは発電機と結合されている。電気機械入力軸5.1は、電気機械小歯車2.4を有しており、この電気機械小歯車は、ターボ機械小歯車3.11の代わりに、大歯車2.2と噛み合っている。電気機械小歯車2.4と大歯車2.2の間の変速比を相応に選択することにより、例えば駆動小歯車2.1の比較的高い回転数を、電気機械小歯車の比較的低い回転数へと下げることができ、この比較的低い回転数は、配電網周波数に依存して、例えば3000または3600U/minである。
【0057】
電気機械5が発電機またはモータ/発電機として形成される場合、蒸気タービン1の、主圧縮機4および伝動ターボ機械2の圧縮機段の駆動には必要ない機械的出力を、電気エネルギーに変換することができ、かつ例えば電力供給網に供給することができる。
【0058】
電気機械5がモータまたはモータ/発電機として形成される場合は逆に、主圧縮機4および伝動ターボ機械2の圧縮機段の駆動のための追加的な回転モーメントを、伝動ターボ機械2内に供給することができる。
【0059】
これに関し、上で説明した第1および第2の実施形態に対するさらなる相違点として、図5に基づく第3の実施形態では、第3のターボ機械ロータ3.30の一方の羽根車が膨張機羽根車3.34として形成されており、もう一方は第1および第2の実施形態の場合のように圧縮機羽根車3.33として形成されており、これは図5では同方向の三角形で示唆されている。このため伝動ターボ機械2は、3つの圧縮機段および1つの膨張機段を有しており、かつ同時に作業機械および原動機(圧縮膨張機)として作用する。圧縮機段では、主圧縮機4内で圧縮された空気の部分質量流量をさらに圧縮する一方で、膨張機羽根車3.34の膨張機段内では、プロセス内で発生する残留ガスなどの媒体を応力緩和することができ、かつこうして主圧縮機4および伝動ターボ機械2の圧縮機段の駆動のための追加的な回転モーメントを、伝動ターボ機械2内に供給することができる。
【0060】
図6は、図5に相応する表示において、本発明の第4の実施形態に基づく伝動機を内蔵した伝動ターボ機械の伝動構成の本質的な要素を示しており、この第4の実施形態は、基本的には第3の実施形態と同じであり、かつ第4の実施形態でも同様に、本発明の第1および第2の観点が共に実現されている。第3の実施形態と同じ要素は同一の符号で表しており、したがってその点では、基本的に同じ構造の第3の実施形態に対する上述の説明を参照されたく、以下には第3と第4の実施形態の相違点だけを取り上げる。
【0061】
第3の実施形態では第2および第3のターボ機械ロータ3.20,3.30のターボ機械小歯車3.21,3.31の両方が大歯車2.2と噛み合っており、かつこのために、これらのターボ機械小歯車の回転軸が共通の水平面内に配置されており、この水平面に、伝動ターボ機械2のハウジングの分割または分離の継目もあるのに対し、第4の実施形態では、ターボ機械ロータ3.20のターボ機械小歯車3.21だけが大歯車2.2と噛み合っており、その一方で圧縮機羽根車3.33および膨張機羽根車3.34を装備するターボ機械ロータ3.30のターボ機械小歯車3.31は、第2の実施形態(図4Bを参照)でもそうであるように、従動小歯車2.3と噛み合っている。
【0062】
図7は、図6に相応する表示において、本発明の第5の実施形態に基づく伝動機を内蔵した伝動ターボ機械の伝動構成の本質的な要素を示しており、この第5の実施形態は、基本的には第4の実施形態と同じであり、かつ第5の実施形態でも同様に、本発明の第1および第2の観点が共に実現されている。第4の実施形態と同じ要素は同一の符号で表しており、したがってその点では、基本的に同じ構造の第4の実施形態に対する上述の説明を参照されたく、以下には第4と第5の実施形態の相違点だけを取り上げる。
【0063】
大歯車2.2と噛み合うターボ機械小歯車3.21を備えたターボ機械ロータ3.20および従動小歯車2.3と噛み合うターボ機械小歯車3.31を備えたターボ機械ロータ3.30に加えて、図7に基づく第5の実施形態では、2つの圧縮機羽根車3.12,3.13を備えたさらなるターボ機械ロータ3.10が企図されており、このターボ機械ロータ3.10のターボ機械小歯車3.11は、大歯車2.2とは反対の側で、電気機械小歯車2.4と噛み合っている。
【0064】
上で説明した第4の実施形態に対するさらなる相違点として、図7に基づく第5の実施形態では、第3のターボ機械ロータ3.30の両方の羽根車3.34,3.35が膨張機羽根車として形成されており、これは図7では、圧縮機羽根車3.12,3.13,3.22および3.23とは反対に、対向方向の三角形で示唆されている。このため伝動ターボ機械2は、4つの圧縮機段および2つの膨張機段を有しており、かつ同様に圧縮膨張機として作用する。圧縮機段内では、主圧縮機4内で圧縮された空気の部分質量流量をさらに圧縮する一方で、膨張機段内では、プロセス内で発生する残留ガスなどの媒体を応力緩和することができ、かつこうして主圧縮機4および伝動ターボ機械2の圧縮機段の駆動のための追加的な回転モーメントを、伝動ターボ機械2内に供給することができる。
【0065】
図2、図4に基づく第2の実施形態でのように、ターボ機械小歯車3.11,3.31、電気機械小歯車2.4、大歯車2.2、駆動小歯車2.1、および従動小歯車2.3の回転軸が全て、同じ水平の、伝動ターボ機械2のハウジングの分割面内にあることが好ましい。
【0066】
上に記載した実施形態の場合もそうであるように、伝動ターボ機械2のいくつかまたは全ての圧縮機羽根車は、主圧縮機を貫流した媒体を、好ましくはそのうちの部分質量流量を、またはさらなるプロセスガスなどの別の媒体を圧縮することができる。伝動ターボ機械2は、その異なる圧縮機羽根車で違う媒体を圧縮してもよい。
【0067】
これまでの実施形態でのように、蒸気タービン、主圧縮機、および伝動ターボ機械のターボ機械ロータをそれぞれ最良の回転数範囲内で稼働することができ、この回転数範囲は、伝動ターボ機械2の伝動機および負荷伝動機2.1,2.3における変速を相応に選択することによって互いに同調させ得る。特に蒸気タービンは、回転数低減型の負荷伝動機を介して、比較的遅く回転する主圧縮機4と連結させることにより、比較的速く回転することができ、これにより蒸気タービンの効率を改善することができ、かつ比較的小さな設置寸法の蒸気タービンを使用することができる。
【0068】
伝動ターボ機械2内に負荷伝動機を内蔵することにより、別個の負荷伝動機が必要ないことが有利であり、これは、機械ラインを比較的コンパクトにし、かつ製造および組立ての労力を比較的少なくする。主圧縮機ハウジングを伝動ターボ機械から分離することにより、主圧縮機と伝動ターボ機械の振動技術的な連結を部分的に切ることが可能である。
【0069】
排流に面していない側へのみ従動する蒸気タービンの、軸方向の排流により、後ろに接続されるコンデンサを、基本的に蒸気タービン1と同じ水平面に配置することが可能であり、これは従来の、径方向に排流する蒸気タービンの垂直の下方にコンデンサが配置される2階建ての機械ラインとは違い、1階建ての機械ライン構造を、したがってそのようなラインを収容するための比較的コンパクトな土台および建物を可能にすることが有利である。
【0070】
上では、駆動ユニットとしての蒸気タービンを備えた機械ラインに基づき本発明を説明した。しかしながら同様に別の流体機械、特にガスタービン、もしくは応力緩和タービンまたは残留ガスタービンのような膨張機も使用可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 蒸気タービン
2 昇圧圧縮機
2.1 駆動小歯車
2.2 大歯車
2.3 従動小歯車
2.4 電気機械小歯車
3.10,3.20,3.30 ターボ機械ロータ
3.11,3.21,3.31 ターボ機械小歯車
3.12,3.13,3.22,3.23,3.32,3.33 圧縮機羽根車
3.34,3.35 膨張機羽根車
4 単軸圧縮機(主圧縮機)
4.1 圧縮機駆動軸
5 電気機械
5.1 電気機械軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械ラインの伝動ターボ機械(2)用の内蔵された伝動機であって、
駆動軸と回転しないように結合された駆動小歯車(2.1)と、
前記駆動小歯車と噛み合う大歯車(2.2)と、
少なくとも1つのターボ機械ロータ(3.10,3.20,3.30)であり、
前記伝動ターボ機械の、少なくとも1つの羽根車(3.12,3.13,3.22,3.23,3.32,3.33,3.34)により回転モーメントを伝達するためのターボ機械軸と、
前記ターボ機械軸と回転しないように結合されており、前記大歯車と噛み合うターボ機械小歯車(3.11,3.21,3.31)とを備えた前記ターボ機械ロータ(3.10,3.20,3.30)と、
を備えた、内蔵された伝動機において、
回転数低減型の負荷伝動機の従動小歯車(2.3)が前記駆動小歯車(2.1)と噛み合っており、前記従動小歯車が、回転しないように従動軸と結合しており、前記従動軸が、前記伝動ターボ機械から分離されたさらなる圧縮機(4)、特に前記機械ラインの主圧縮機の、前記従動軸と連結可能な圧縮機駆動軸(4.1)を駆動するようになっていることを特徴とする内蔵された伝動機。
【請求項2】
それぞれ1つのターボ機械軸と、前記ターボ機械軸と回転しないように結合されたターボ機械小歯車(3.11,3.21,3.31)とを備えた、少なくとも2つ、特に3つまたは4つのターボ機械ロータ(3.10,3.20,3.30)を有しており、その際、少なくとも1つのターボ機械ロータ(3.10,3.20,3.30)のターボ機械小歯車(3.11,3.21,3.31)が、前記大歯車(2.2)と噛み合い、かつ/またはターボ機械ロータ(3.30)のターボ機械小歯車(3.31)が、前記従動小歯車(2.3)と噛み合うようになっていることを特徴とする請求項1に記載の内蔵された伝動機。
【請求項3】
前記駆動小歯車(2.1)、前記大歯車(2.2)、少なくとも1つのターボ機械小歯車(3.11;3.21,3.31)、および前記従動小歯車(2.3)の回転軸が、基本的に共通の面内に配置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内蔵された伝動機。
【請求項4】
前記大歯車(2.2)および前記従動小歯車(2.3)が、前記駆動小歯車(2.1)と共通の横断面内に配置されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の内蔵された伝動機。
【請求項5】
前記駆動小歯車(2.1)、前記大歯車(2.2)、前記従動小歯車(2.3)、および前記少なくとも1つのターボ機械小歯車(3.11,3.21,3.31)を収容している複数の部分から成るハウジングを有しており、その際、前記ハウジングが、前記駆動小歯車、前記大歯車、ターボ機械小歯車、および/または前記従動小歯車の回転軸が配置される面で分割されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の内蔵された伝動機。
【請求項6】
前記駆動小歯車、前記大歯車、前記ターボ機械小歯車、および前記従動小歯車のうちの少なくとも1つが、前記伝動ターボ機械のハウジング内で軸方向に支持されており、かつ前記駆動小歯車、前記大歯車、前記ターボ機械小歯車、および前記従動小歯車のうちの別の少なくとも1つが、前記駆動小歯車、前記大歯車、前記ターボ機械小歯車、および前記従動小歯車のうちの、前記伝動ターボ機械の前記ハウジング内で軸方向に支持されている1つの歯車に、特にスラストカラーを介して、軸方向に支えられることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の内蔵された伝動機。
【請求項7】
前記回転数低減型の負荷伝動機が、前記駆動小歯車(2.1)の回転数を、1.25〜1.45の範囲内、好ましくは1.3〜1.4の範囲内、および特に1.32〜1.38の範囲内にある変速比(i2.1/2.3)で、前記従動小歯車(2.3)の回転数まで減少させ、その際、前記変速比(i2.1/2.3)が、従動小歯車回転数で割った駆動小歯車回転数の比率として規定されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の内蔵された伝動機。
【請求項8】
ターボ機械小歯車(3.11,3.21,3.31)が、前記駆動小歯車(2.1)により、0.28〜0.54の範囲内、好ましくは0.30〜0.52の範囲内、および特に0.32〜0.50の範囲内にある変速比(i2.1/3.n1)を有しており、その際、前記変速比(i2.1/3.n1)が、ターボ機械小歯車回転数で割った駆動小歯車回転数の比率として規定されることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の内蔵された伝動機。
【請求項9】
前記駆動小歯車(2.1)の歯幅が、前記大歯車(2.2)の歯幅の少なくとも1.1倍であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の内蔵された伝動機。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の伝動機を内蔵した機械ライン用の伝動ターボ機械(2)において、ターボ機械ロータ(3.10,3.20,3.30)のターボ機械軸と、前記伝動ターボ機械の圧縮機段または膨張機段の少なくとも1つの羽根車(3.12,3.13,3.22,3.23,3.32,3.33,3.34)とが、回転しないように結合されることを特徴とする伝動ターボ機械。
【請求項11】
ターボ機械ロータ(3.10,3.20,3.30)の少なくとも1つのターボ機械軸と、前記伝動ターボ機械の圧縮機段または膨張機段の1つの羽根車(3.12,3.22,3.32)および前記伝動ターボ機械の圧縮機段または膨張機段のさらなる1つの羽根車(3.13,3.23,3.33,3.34)とが、回転しないように結合されることを特徴とする請求項10に記載の伝動ターボ機械。
【請求項12】
駆動ユニット、特に蒸気タービン(1)、ガスタービン、または膨張機と、請求項10または請求項11に記載の伝動ターボ機械(2)と、前記伝動ターボ機械から分離されたさらなる圧縮機(4)、特に、前記伝動ターボ機械(2)から軸方向に間隔を開けている主圧縮機とを備えた機械ライン。
【請求項13】
前記さらなる圧縮機が、特に、好ましくは水平および/または垂直な分割線を備えた軸流圧縮機、半径流圧縮機として、半径流等温圧縮機として、または組み合わされた軸流‐半径流圧縮機として形成された単軸圧縮機であることを特徴とする請求項12に記載の機械ライン。
【請求項14】
前記さらなる圧縮機(4)が、前記伝動ターボ機械(2)のハウジングから分離されたハウジング内に収容されることを特徴とする請求項12または請求項13に記載の機械ライン。
【請求項15】
前記伝動ターボ機械が、少なくとも1つの圧縮機段を備えた昇圧圧縮機として形成され、前記昇圧圧縮機に、前記主圧縮機によって圧縮された媒体のうちの多くとも部分質量流量が、および/または前記主圧縮機によっては圧縮されない媒体が送られるようになっていることを特徴とする請求項12から請求項14のいずれか一項に記載の機械ライン。
【請求項16】
前記さらなる圧縮機の最小貫流断面が、前記伝動ターボ機械の最小貫流断面の少なくとも1.05倍、好ましくは少なくとも1.1倍、および特に少なくとも1.2倍を有することを特徴とする請求項12から請求項15のいずれか一項に記載の機械ライン。
【請求項17】
前記さらなる圧縮機(4)が、前記伝動ターボ機械(2)の、前記駆動ユニット(1)とは反対の側に配置されることを特徴とする請求項12から請求項16のいずれか一項に記載の機械ライン。
【請求項18】
蒸気タービン(1)と、伝動ターボ機械(2)と、別個のさらなる圧縮機(4)、特に主圧縮機とを備えた、特に請求項12から請求項17のいずれか一項に記載の機械ラインにおいて、前記蒸気タービン(1)が軸方向の排流を有することを特徴とする機械ライン。
【請求項19】
前記蒸気タービンおよび前記蒸気タービンの後ろに接続されるコンデンサが、基本的に同じ水平面に配置されることを特徴とする請求項18に記載の機械ライン。
【請求項20】
定格運転において、出力の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%が、前記駆動軸から前記従動軸に伝達されることを特徴とする請求項12から請求項19のいずれか一項に記載の機械ライン。
【請求項21】
電気機械入力軸(5.1)を備えた、駆動する電気機械(5)、特にモータまたはモータ/発電機、および/または駆動可能な電気機械、特に発電機またはモータ/発電機を有しており、前記電気機械入力軸が、前記駆動小歯車(2.1)、前記大歯車(2.2)、前記従動小歯車(2.3)、またはターボ機械小歯車(3.11)と噛み合うか、回転しないように結合されるか、または連結されることを特徴とする請求項12から請求項20のいずれか一項に記載の機械ライン。
【請求項22】
前記電気機械入力軸(5.1)が、前記大歯車(2.2)および/またはターボ機械ロータのターボ機械小歯車(3.11)と噛み合う電気機械小歯車(2.4)を有することを特徴とする請求項21に記載の機械ライン。
【請求項23】
前記駆動小歯車(2.1)、前記大歯車(2.2)、少なくとも1つのターボ機械小歯車(3.11,3.31)、前記従動小歯車(2.3)、および前記電気機械小歯車(2.4)の回転軸が、基本的に共通の面内に配置されることを特徴とする請求項22に記載の機械ライン。
【請求項24】
前記駆動小歯車(2.1)、前記大歯車(2.2)、前記従動小歯車(2.3)、少なくとも1つのターボ機械小歯車(3.11,3.21,3.31)、および前記電気機械小歯車(2.4)を収容する複数の部分からなるハウジングを有しており、その際、前記ハウジングが、前記駆動小歯車、前記大歯車、ターボ機械小歯車、前記電気機械小歯車、および/または前記従動小歯車の回転軸が配置される面で分割されることを特徴とする請求項22または請求項23に記載の機械ライン。
【請求項25】
前記駆動小歯車、前記大歯車、前記ターボ機械小歯車、前記電気機械小歯車、および前記従動小歯車のうちの少なくとも1つが、前記伝動ターボ機械のハウジング内で軸方向に支持されており、かつ前記駆動小歯車、前記大歯車、前記ターボ機械小歯車、前記電気機械小歯車、および前記従動小歯車のうちの別の少なくとも1つが、前記駆動小歯車、前記大歯車、前記ターボ機械小歯車、前記電気機械小歯車、および前記従動小歯車のうちの、前記伝動ターボ機械の前記ハウジング内で軸方向に支持されている1つの歯車に、特にスラストカラーを介して、軸方向に支えられることを特徴とする請求項22から請求項24のいずれか一項に記載の機械ライン。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−287555(P2009−287555A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124341(P2009−124341)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(501473888)マン ターボ アーゲー (21)
【氏名又は名称原語表記】MAN TURBO AG
【Fターム(参考)】