説明

機械加工された曲線輪郭通路を有するノズル用翼形部

【課題】機械加工された曲線輪郭通路を有するノズル用翼形部を提供すること。
【解決手段】翼形部(10)が正圧面(12)及び負圧面(11)を含み、これらが実質的に対向する翼弦端部で接合して翼形部(10)の前縁(14)と翼形部(10)の後縁(13)とを形成するノズル(1)。後縁通路(50)は、翼形部(10)を貫通して定められ、冷却剤が流れることができる。後縁通路(50)は、翼形部(10)の後縁(13)に近接し、後縁(13)の形状と共形の曲線輪郭形状を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、翼形部後縁(TE)を冷却するための機械加工された曲線輪郭通路に関し、より詳細には、翼形部後縁(TE)を冷却するための、翼形部後縁(TE)の形状に相似した曲線輪郭通路に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、例えばタービンエンジンにおいて翼形部の使用中に、ノズル翼形部の後縁(TE)を冷却するためにTEを貫通して延びる通路を利用できることが認められている。この冷却プロセスには、この通路を通じて水又は蒸気などの冷却剤を高圧で送り込むことを伴う。しかしながら通常はノズル設計には高温を伴い、該高温はTEを加熱するので、TEには翼形部の内部から冷却することができる薄い壁を有することが必要とされる。従って、薄壁の必要性、高い外部温度、及び高い内部圧力が組み合わされることで、TE冷却通路を極めて小さくし、TE冷却通路の壁が特定の寸法及び厚みを有することが必要とされる。
【0003】
ノズル翼形部のTE通路を製作するのに一般に鋳造技術が利用されるが、鋳造では、ノズル及びノズル翼形部の適切な性能を得るのに不可欠となる可能性が高い小さなサイズで正確にTE通路を形成することができない。すなわち、鋳造プロセスは、小さなTE通路に対しては試行的なものであり、その壁厚さの維持管理に対して固有の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4672727号明細書
【特許文献2】米国特許第5609779号明細書
【特許文献3】米国特許第5462405号明細書
【特許文献4】米国特許第6099251号明細書
【特許文献5】米国特許第6102658号明細書
【特許文献6】米国特許第6213714号明細書
【特許文献7】米国特許第6388223号明細書
【特許文献8】米国特許第6717095号明細書
【特許文献9】米国特許第6835046号明細書
【特許文献10】米国特許第6969230号明細書
【特許文献11】米国特許第7134842号明細書
【特許文献12】米国特許第7249934号明細書
【特許文献13】米国特許第7303376号明細書
【特許文献14】米国特許出願公開第2006/0042084号明細書
【発明の概要】
【0005】
本発明の1つの態様によれば、正圧面及び負圧面を含み、これらが実質的に対向する翼弦端部で接合して前縁と後縁とを形成する翼形部と、後縁に近接して翼形部を貫通して延び、且つ冷却剤が流れることができる後縁通路を定める翼形部の壁部分と、を備え、該壁部分が、実質的に均一な厚みを有して翼形部の後縁が該後縁の形状と共形の曲線輪郭形状で画成される、ノズルが提供される。
【0006】
本発明の別の態様によれば、対向するプラットフォームの1以上のペアと、プラットフォームの各ペア間に配置された1以上の翼形部と、を備え、1以上の翼形部が正圧面及び負圧面を有し、これらが翼形部の実質的に対向する翼弦端部で接合して翼形部の前縁と翼形部の後縁とを形成する壁部と、後縁に近接して翼形部を貫通して延び且つ冷却剤が流れることができる後縁通路を定める壁部の一部分とを含み、該壁部の一部分が実質的に均一な厚みを有して翼形部の後縁が該後縁の形状と共形の曲線輪郭形状で画成される、ノズルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の例示的な実施形態に係るノズル翼形部の部分断面図。
【図2】本発明の例示的な実施形態に係る翼形部の後縁の断面図。
【図3】本発明の例示的な実施形態に係る後縁通路を形成する方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のこれら及び/又は他の特徴、態様、並びに利点は、図面全体を通じて同様の参照符号が同様の要素を示す添付図面を参照しながら、以下の詳細な説明を読めばより理解されるであろう。
【0009】
図1を参照すると、タービン又は他の同様の機械のノズルセグメント1は、互いにほぼ向かい合った内側側壁20及び外側側壁30のセクション間に配置された翼形部10を含む。図示していないが、ノズルセグメント1は、例えば、タービンのノズル段を形成するよう軸線を中心としてアレイ状に配列された複数のノズルセグメント1の1つを形成することができ、更に、内側側壁20及び外側側壁30がそれぞれ、ノズル段の内側及び外側バンドの一部を形成することは理解される。また、内側側壁20と外側側壁30との間には単一の翼形部10が図示されているが、内側側壁20と外側側壁30との間に2以上の翼形部10を配置することができる点は理解される。
【0010】
図1に示すように、翼形部10は、翼形部10の対向する面上に正圧面12及び負圧面11を含む。正圧面12及び負圧面11は、翼形部の実質的に対向する翼弦端部(図1及び3の翼弦ラインWを参照のこと)で接合され、翼形部10の前縁14と後縁13とを形成する。更に、翼形部は、ノズル1の半径方向軸線の周りで弓形に曲がり、ここで半径方向軸線は、後縁13と実質的に平行に延びるものとして定義される。ここで、正圧面12は、弓形部の外面にわたり、負圧面11は弓形部の内面にわたる。
【0011】
内側側壁20及び外側側壁30はそれぞれ内部キャビティ21及び31を有する。同様に、翼形部10は、メイン内部キャビティセクション40と、その内部に定められた後縁通路50とを有する。後縁通路50は単一の特徴部であるが、メイン内部キャビティセクション40は更に、約6つの内部キャビティ41、42、43、44,45、46を含むことができる。ここで内部キャビティ41〜46及び後縁通路50は各々、入口51と出口52(後縁通路50については図1に示す)とを含むことができ、これにより、内部キャビティ41〜46及び後縁通路50が内側側壁20及び外側側壁30の内部キャビティ21及び31と連通可能にすることができる。勿論、内部キャビティ41〜46の全てが必ずしもこのように設計される必要はない点は理解される。
【0012】
この能力において、内部キャビティ41〜46及び後縁通路50は各々、内側側壁20及び外側側壁30の内部キャビティ21及び31間を流れる蒸気又は水などの冷却剤用の通路を提供することができる。これらの通路は、所望の流れ特性に応じてタービュレータを含む場合もあり、含まない場合もある。冷却剤は、ノズルセグメント1の動作中に高温に曝される翼形部10並びに内側側壁20及び外側側壁30を冷却する。
【0013】
ここで図1及び2を参照すると、翼形部10の後縁13は翼形部10の最薄部分に配置され、後縁通路50は、正圧面12及び負圧面11の厚みが実質的に同じであるように後縁13の形状と共形にされる点に留意されたい。すなわち、正圧面12、負圧面11、及び後縁12の少なくとも一部は各々、約0.104cm(±0.03)〜約0.155(±0.02)cmの厚みを有する。
【0014】
詳細には、壁の厚みは、後縁13又はこれに近接した位置での及び翼形部10の種々の断面での翼形部10の厚みT1、T2、及びT3に対応するポイントで測定することができる。このようなセンチメートル単位での測定は、図1の断面A〜Iに対する例示的な実施形態1及び2について行うことができ、以下のように示される。
【0015】
【表1】

すなわち、負圧面11に沿った壁部分は、約0.104(±0.03)cm〜約0.132(±0.03)cmの壁厚T1を有し、正圧面12に沿った壁部分は、約0.117(±0.03)cm〜約0.150(±0.03)cmの壁厚T2を有し、後縁13の周りの壁部分は、約0.127(±0.02)cm〜約0.155(±0.02)cmの壁厚T3を有する。
【0016】
更に図2を参照すると、後縁通路50と隣接内部キャビティ46との間の翼形部10の内部の厚みT4は、翼形部10のスパンに沿って実質的に一貫して維持される点に留意されたい。すなわち、本発明の1つの実施形態において、厚みT4は、約0.251(±0.03)cm〜約0.284(±0.03)cmの間である。
【0017】
図3A〜3Cを参照すると、本発明の別の態様によれば、翼形部10の後縁13の冷却を可能にする後縁通路50を形成する方法は、後縁13と共に翼形部10の本体を鋳造して、例えば、翼形部10の翼弦方向(図1及び3AのラインWに沿って)に垂直に且つ翼形部の弓形部と反対に翼形部10を一時的に平坦化することを含む。次いで、図3Bに示すパイロット孔70が後縁13に近接した翼形部10の領域にドリル穿孔される。ここで、パイロット孔70は、例えば電気化学(ECM)ドリル加工プロセスによってドリル穿孔することができる。
【0018】
パイロット孔70がドリル穿孔されると、電気変位機械加工(EDM)プロセスワイヤがパイロット孔70に挿入される。次いで、EDMプロセスワイヤはパイロット孔内に入れられ、翼形部10の本体からパイロット孔70の周りの材料を取り除く。このプロセスは、後縁13の形状に共形の形状を有する曲線輪郭通路として、図3Cに示すような後縁通路50を形成する。後縁通路50が形成されると、翼形部10の弓形部を一時的に平坦化するのに必要な圧力が解除される。
【0019】
本発明の種々の実施形態によれば、鋳造段階は、翼形部10内に内部キャビティ41〜46を形成し、内側側壁20及び外側側壁30内に内部キャビティ21及び31を形成する段階を含むことができる。更に、内部キャビティ41〜46及び後縁通路50が形成されると、内部キャビティ41〜46及び後縁通路50を通る空気流のレベルがチェックされる。
【0020】
本明細書では実施例を利用して、最良の形態を含む本発明を開示し、当業者があらゆるデバイス又はシステムを実施及び利用することを含む、本発明を実施することが可能になる。本発明の特許保護される範囲は、請求項によって定義され、当業者には想起される他の実施例を含むことができる。こうした他の実施例は、請求項の文言と相違しない構造要素を有する場合、又は請求項の文言と僅かな差違を有する均等な構造要素を有する場合には、請求項の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0021】
1 ノズルセグメント
10 翼形部
W 翼弦ライン
11 負圧面
12 正圧面
13 後縁
14 前縁
20 内側側壁
21 内部キャビティ
30 外側側壁
31 内部キャビティ
40 メイン内部キャビティ
41−46 6つの内部キャビティ
50 後縁通路
51 入口
52 出口
T1、T2、T3、T4 厚み
70 パイロット孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正圧面(12)及び負圧面(11)を含み、これらが実質的に対向する翼弦端部で接合して前縁(14)と後縁(13)とを形成する翼形部(10)と、
前記後縁(13)に近接して前記翼形部(10)を貫通して延び、且つ冷却剤が流れることができる後縁通路(50)を定める前記翼形部(10)の壁部分と、
を備え、
前記壁部分が実質的に均一な厚みを有していて、前記翼形部(10)の後縁(13)が該後縁(13)の形状と共形の曲線輪郭形状で画成される、ノズル(1)。
【請求項2】
前記翼形部(10)が、前記後縁(13)に至る方向で先細にされている、
請求項1に記載のノズル。
【請求項3】
前記後縁通路(50)が、前記翼形部(10)の先細に応じて楔形状である、
請求項2に記載のノズル。
【請求項4】
対向するプラットフォームの1以上のペアと、
前記プラットフォームの各ペア間に配置された1以上の翼形部(10)と、
を備え、
前記1以上の翼形部(10)が、
正圧面(12)及び負圧面(11)を有し、これらが前記翼形部(10)の実質的に対向する翼弦端部で接合して、前記翼形部(10)の前縁(14)と前記翼形部(10)の後縁(13)とを形成する壁部と、
前記後縁(13)に近接して前記翼形部(10)を貫通して延び、且つ冷却剤が流れることができる後縁通路(50)を定める前記壁部の一部分と、
を含み、
前記壁部の一部分が実質的に均一な厚みを有していて、前記翼形部(10)の後縁(13)が該後縁(13)の形状と共形の曲線輪郭形状で画成される、ノズル(1)。
【請求項5】
前記対向するプラットフォームがそれぞれ、前記のずる(1)の内側側壁(20)及び外側側壁(30)のセクションを含む、請求項4に記載のノズル。
【請求項6】
前記壁部の一部分が、前記正圧面(12)及び負圧面(11)のそれぞれの一部に沿って前記後縁(13)の周りに延びる、請求項4に記載のノズル。
【請求項7】
前記翼形部(10)が、前記後縁(13)に至る方向で先細にされている、請求項4に記載のノズル。
【請求項8】
前記後縁通路(50)が、前記翼形部(10)の先細に応じて楔形状である、請求項7に記載のノズル。
【請求項9】
前記対向するプラットフォームが各々鋳造材料を含み、前記翼形部(10)は、前記後縁通路(50)が機械加工される鋳造材料を含む、請求項4に記載のノズル。
【請求項10】
前記対向するプラットフォームの鋳造材料と前記翼形部(10)の鋳造材料とが、互いに一体的に組み合わされるように構成される、請求項9に記載のノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−250239(P2009−250239A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89721(P2009−89721)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】