説明

機械操作支援システム

【課題】ICタグを利用した機械操作支援システムの提供。
【解決手段】ICタグ50を用いて移動式ガス発生装置20の作業手順を補助する機械操作支援システム10において、移動式ガス発生装置20が備える操作を必要とする操作機器55に、操作機器55ごとに固有の識別子が記憶されたICタグ50を備え、移動式ガス発生装置20を操作する際に、ICタグ50の情報を読み込むICタグリーダ30を、作業者90の手に装着し、ICタグリーダ30と通信する情報操作端末40を起動した状態で、操作機器55に触れることで、ICタグリーダ30が操作機器55に付されたICタグ50の情報を読み取り、ICタグリーダ30からICタグ50の情報を情報操作端末40に伝え、情報操作端末40が、情報を元に作業手順が適切であるかどうかを判断し、情報操作端末40に備える表示部41に、作業者90の行う作業手順が適切かどうかを表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、機械操作を支援するシステムに関し、具体的にはICタグ及びPDAを利用して熟練者でなくとも機械の操作をスムーズに行える技術に関する。
【背景技術】
【0002】
機械装置の操作を補助する方法については、様々な方法が検討されている。しかし、大抵の操作補助方法は、機械装置の操作部に視覚的に表示された説明であったり、若しくは印刷などによって簡単に表示された説明であったり、音声ガイダンスによって示された説明であったり、これらの複合であったりする。
しかし、機械装置の操作部が小さい等の事情により、視覚的に情報が取得できない場合や、機械装置の操作に不慣れなユーザーが操作するには情報量が乏しい場合があり、操作方法が容易に把握できないこともあった。
【0003】
ところで、近年ICタグを用いる技術が盛んに開発されている。特許文献1が開示する技術も、ICタグを用いて操作部情報を取得するシステムについてである。
機械装置に取り付けられた無線ICタグを、ユーザーの指に取り付けられたICタグリーダで無線ICタグ内に格納された操作説明を行う動画情報や操作方法マニュアル、保守管理確認マニュアルなどの説明書などを読み取る。この情報をユーザーが保持する操作者用個人端末に転送し、操作情報をユーザーに伝える仕組みとなっている。
【0004】
【特許文献1】特開2008−33770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来技術1には以下に記載するような問題点があった。
まず、ICタグにどの程度の情報を詰め込むのかという問題がある。ICタグの記憶容量は現状の所それ程大きくはないため、操作説明や操作方法マニュアルなどの情報を詰め込むことが困難である。特に音声ファイルや画像ファイルなどはデータの容量が大きくなりがちであるため、ICタグ内に必要な量のデータを格納することは困難であることも想定され、また大容量データを非接触で通信するには時間がかかるという問題もある。
【0006】
もっとも、データは操作者個人端末に保存して、ICタグ内に格納するデータは機械装置の種別を識別する個体認識信号だけにすることも考えられる。しかし、具体的には操作マニュアルを例えば液晶ディスプレイなどに表示しながら操作を指示することとなり、それでは紙媒体のマニュアルを用意するのと大差ないと考えられる。
機械装置を操作する上でヒューマンエラーが最も問題となるが、作業者が行った操作が誤ったものであったことを検出してすることは、従来技術1の方法では困難である。
【0007】
このようなヒューマンエラーは、機械装置に安全設備を設けて対応するのが一般的ではあるが、単純な機械装置ではポカヨケを設けるにも限界がある。しかし、作業者のミスによって重大な問題が発生するようなケースでは、こうしたヒューマンエラーは可能な限り排除したいという要望がある。例えば、ガスの設備の場合、可燃性の気体を扱うためにガス漏れは極力避けたいし、ガスボンベなどを扱う場合は高圧気体をボンベの中に閉じこめておく関係で、間違った手順で操作すると高圧ガスが吹き出してしまう虞もあり、このようなミスを極力減らす必要がある。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、ICタグを利用して機械操作支援システムを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の問題点を解決するために本発明の機械操作支援システムは次の構成を有している。
(1)ICタグを用いて機械装置の作業手順を補助する機械操作支援システムにおいて、
前記機械装置が備える操作を必要とする各機器に、固有の識別子が記憶された前記ICタグを備え、前記機械装置を操作する際に、前記ICタグの情報を読み込むリーダを作業者の手に装着し、前記リーダと通信する情報処理端末を起動した状態で、前記機械装置の前記機器に触れることで、前記リーダが前記機器に付された前記ICタグの情報を読み取り、前記リーダから前記ICタグの情報を前記情報処理端末に伝え、前記情報処理端末が、前記情報を元に前記機械装置の作業手順が適切であるかどうかを判断し、前記情報処理端末に備える表示部に、前記作業者の行う作業手順が適切かどうかを表示することを特徴とする。
【0010】
(2)(1)に記載の機械操作支援システムにおいて、
前記リーダが、前記作業者の手の甲側に配置されるよう装着されるものであり、前記リーダの読み取り方向が前記作業者の掌側であり、前記作業者の手の甲側に配置された前記ICタグを前記リーダが検知できないように前記リーダに検知制限手段が設けられ、前記ICタグは前記機器の操作部に取り付けられ、前記作業者が、前記機器の前記操作部に触れた際に、前記リーダが前記操作部に取り付けられた前記ICタグの情報を読み込むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記構成を有する機械操作支援システムの作用効果について説明する。
まず、(1)に記載する発明は、ICタグを用いて機械装置の作業手順を補助する機械操作支援システムにおいて、機械装置が備える操作を必要とする各機器に、固有の識別子が記憶されたICタグを備え、機械装置を操作する際に、ICタグの情報を読み込むリーダを作業者の手に装着し、リーダと通信する情報処理端末を起動した状態で、機械装置の機器に触れることで、リーダが機器に付されたICタグの情報を読み取り、リーダからICタグの情報を情報処理端末に伝え、情報処理端末が、情報を元に機械装置の作業手順が適切であるかどうかを判断し、情報処理端末に備える表示部に、作業者の行う作業手順が適切かどうかを表示することを特徴とするものである。
【0012】
ICタグは機械装置に備える操作を必要とする各機器に取り付けられる。例えば機械装置に備えられるバルブや出力調整用のコック等がこれに相当する。
そして、作業者の手に装着されたリーダによって、機器に取り付けられたICタグを読み、ICタグの情報から作業手順通りの機器を作業者が触れているかどうかを情報処理端末が判断する。判断結果はPDA等の携帯型の情報処理端末の表示部に表示されることで、作業者は自分の作業手順が正しいかどうかを認識することが可能になる。
このような機械操作支援システムを用いることで、作業者が機器に触れた段階で正しい手順で触れたかどうかの確認が可能となるため、機械装置の操作ミスを減らすことが可能となる。
【0013】
また、(2)に記載の発明は、(1)に記載の機械操作支援システムにおいて、リーダが、作業者の手の甲側に配置されるよう装着されるものであり、リーダの読み取り方向が作業者の掌側であり、作業者の手の甲側に配置されたICタグをリーダが検知できないようにリーダに検知制限手段が設けられ、ICタグは機器の操作部に取り付けられ、作業者が、機器の操作部に触れた際に、リーダが操作部に取り付けられたICタグの情報を読み込むものである。
【0014】
機械操作の作業性という観点から、作業者の手の甲にリーダを取り付けて、掌側だけ検出するように構成することで、例えばバルブ等の操作の場合、バルブのコックを触ることで作業手順通りかどうかの判断が可能となる。
この場合において、使用機器が近い位置にありICタグの誤検出が問題となるが、掌側のICタグの検出を実現することで、このような誤検出を防ぐことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明にかかる機械操作支援システムについて、具体化した形態をあげ、図面に基づいて詳細に説明する。
まず本発明の実施形態について説明する。
図1には、本実施形態のシステム概要図を示す。
機械操作支援システム10は、移動式ガス発生装置20と、ICタグリーダ30とPDAと呼ばれる情報操作端末40とを備えている。
移動式ガス発生装置20は、例えば災害時等に都市ガス供給を一時的、臨時的に停止された際の仮復旧設備として用いられる。例えば、図2に示したようなケースでは、ガスの供給を臨時的に復旧する役割を果たす。
【0016】
図2には、災害時にガス発生装置を用いるイメージ図を示す。
本支管100から分岐して供内管101が複数分岐してメータ102を備える各住宅103に都市ガスを供給している。災害等で例えば本支管100が破断する等、部分的にガスを遮断する必要がある場合には、移動式ガス発生装置20を必要な箇所に設置する。
この図2の事例では遮断部分105で本支管100に亀裂が発生し、遮断弁106によって遮断部分105を本支管100及び供内管101から遮断している。
この結果、本支管100の遮断部分105が、図2のような状態だとすると、ガス供給の上流側に配置される第1供内管101a及び第2供内管101bに接続する住宅103へは供給を継続できるが、第3供内管101c、第4供内管101dは遮断部分105に接続する部分なので、それぞれにガス供給を受けている住宅103ではガス供給がストップしてしまう。また、遮断部分105の下流に位置する第5供内管101e、第6供内管101fからガス供給を受けている住宅103でもガスの供給はストップする。
【0017】
このため、図2に示すように移動式ガス発生装置20を必要箇所に配置することで、臨時的に都市ガスを復旧させることが可能となる。
移動式ガス発生装置20には、サクションタンク21と、低圧ガバナ22、遮断弁23、中圧ガバナ24、開閉弁コントローラ25、昇圧防止弁26、開閉弁27、空気弁28等が備えられている。この他に、外部に用意する図示しない原料ガスボンベ29が入口側に接続されて設けられる。原料ガスボンベ29にはLPGが高圧に保存されており、移動式ガス発生装置20を通して都市ガスとして調整し、供給することができる。以降、これらを総称して操作機器55と称する。
そして、移動式ガス発生装置20に用意される、サクションタンク21乃至空気弁28の機器にはICタグ50が設けられる。
【0018】
図3に、システムの概略構成図を示す。
ICタグ50は、各操作機器55に取り付けられている。図示しないが、ICタグ50はプレートタイプ或いはラベルタイプ或いはカバリングタイプの3パターンがある。プレートタイプはキーホルダー状に取り付け穴が設けられた樹脂製のプレートにICチップが埋め込まれており、結束バンド等で操作機器55に取り付けるタイプである。ラベルタイプは、裏側が接着面になったシート状に形成されるタグであり、ICチップはシートの間に挟まれて設けられ、操作機器55に貼り付けて用いられる。カバリングタイプはラベルタイプとほぼ同じで、裏側が接着面になったシート状に形成されており、ICチップもシートに挟まれて形成されている。シールタイプとの違いは、材質の柔軟性であり、シールタイプの方が柔らかくできている。
なお、ICタグ50はこの他の方法で操作機器55に取り付けられても良い。
【0019】
図4に、ICタグリーダの模式図を示す。
ICタグリーダ30はICタグ50の情報を検出するリーダであり、作業者の手首にバンドとして巻き、手の甲にICタグリーダ30のアンテナ31が来るように形成されている。詳しくは、実用新案登録第3139565号を参照のこと。
アンテナ31から出る配線はケース本体32内部に格納される電子リーダライタモジュールや制御用のCPUモジュールなどに電気的に接続されている。また、アンテナ31は布で挟まれて保持され、アンテナ31の上側、すなわち装着者の手の甲から遠い側には、検知制限手段となる金属製の遮蔽板33が絶縁部材を介して配置される。
【0020】
情報操作端末40は、所謂PDA(Personal Digital Assistant)と呼ばれる表示部41を備えた端末であり、ICタグリーダ30とはBluetoothで通信する。なお、通信手段はBluetoothに限らず無線通信手段であれば代替可能である。また、作業性に影響のないように線を身体に沿って配線すれば有線とすることも可能である。
情報操作端末40には、操作手順を補助するためのプログラムがインストールされており、ICタグリーダ30と通信しながら作業員に対して操作手順を表示部41で示す。なお、この際には音声も用いて教示する。
【0021】
作業者90は、操作機器55を操作するにあたり、情報操作端末40を起動してICタグリーダ30を装着した手で作業を行う。
この際に、操作機器55に備えられるICタグ50を、作業者90がICタグリーダ30を装着した手で触れることで、正しい手順で操作が行われているかどうかをチェックする。
チェックは情報操作端末40が行い、手順通りでなければ情報操作端末40の表示部41に表示、あるいは音声にて警告を行う。
【0022】
次に情報操作端末40の内部に備えられるプログラムについて簡単に説明する。
図5に、メインのフローを示す。
情報操作端末40にインストールされているプログラムは、図5に示す様な流れで実行される。
まず、作業者90が機械操作支援システム10の移動式ガス発生装置20を操作する際にあたり、情報操作端末40を起動するところから始める。
S1で、プログラムを起動させると、S2で操作IDとパスワードを要求する。フローでは省略しているが、パスワードとIDの照合を行い、S3に移行する。
S3で、メニューを表示して、S4に移行する。
【0023】
情報操作端末40の表示部41にはメニューが表示され、「始動前準備」「操作準備」「停止操作」「操作トラブル」「機能説明」等が選択できる。別途「終了」ボタンも用意される。
S4乃至S13で、「始動前準備」「操作準備」「停止操作」「操作トラブル」「機能説明」等のいずれかが選択されたかを確認して、選択されたサブルーチンへと飛ぶ。
S14で、「終了」が選択されたかどうかを確認し、YesならS15へ、NoならS4へと移行する。
S15で、プログラムを終了する。
【0024】
図6に、始動前準備のサブルーチンのフローを示す。図7及び図8に、始動操作のサブルーチンのフローを示す。図9に、停止操作のサブルーチンのフローを示す。
なお、「操作トラブル」と「機能説明」のフローは省略する。
メインメニューから選択された各サブルーチンは、図6乃至図9に示される通りであるが、以下には発明に関する主要な部分だけを説明する。
「始動前準備」は、移動式ガス発生装置20の使用開始の準備を行う作業工程であり、移動式ガス発生装置20の入口側に図示しない原料ガスボンベ29を接続し、供給可能な状態にする工程である。
【0025】
「操作準備」は、移動式ガス発生装置20を使用可能にする作業工程であり、移動式ガス発生装置20に備えられた操作機器55を操作する手順に関する工程である。図6のS30に示すように「始動前準備」の後に直接この「操作準備」に移行する。
「操作トラブル」は、トラブルが発生したときの対応を説明する。情報操作端末40の表示部41に移動式ガス発生装置20の模式図若しくは写真を示しながら、トラブルの対処法を示す。
「機能説明」は、移動式ガス発生装置20に備えるサクションタンク21乃至原料ガスボンベ29等のそれぞれの機能を示す。
【0026】
本実施形態の機械操作支援システム10は上記構成、及び作用を示すので、以下に説明する効果を奏する。
まず、作業者90の作業熟練度が低くても移動式ガス発生装置20の操作手順を間違えずに作業が可能である点が挙げられる。
本実施形態に示す機械操作支援システム10は、ICタグ50を用いて移動式ガス発生装置20の作業手順を補助する機械操作支援システム10において、移動式ガス発生装置20が備える操作を必要とする操作機器55に、操作機器55ごとに固有の識別子が記憶されたICタグ50を備え、移動式ガス発生装置20を操作する際に、ICタグ50の情報を読み込むICタグリーダ30を、作業者90の手に装着し、ICタグリーダ30と通信する情報操作端末40を起動した状態で、移動式ガス発生装置20の操作機器55に触れることで、ICタグリーダ30が操作機器55に付されたICタグ50の情報を読み取り、ICタグリーダ30からICタグ50の情報を情報操作端末40に伝え、情報操作端末40が、情報を元に移動式ガス発生装置20の作業手順が適切であるかどうかを判断し、情報操作端末40に備える表示部41に、作業者90の行う作業手順が適切かどうかを表示するものである。
【0027】
移動式ガス発生装置20に備えられる、サクションタンク21乃至原料ガスボンベ29等の各操作機器55にはICタグ50が取り付けられている。一方、作業者90の手にはICタグリーダ30が装着されており、操作機器55を操作するために作業者90がICタグリーダ30を装着した手で作業をする。この際に、ICタグリーダ30は作業者90が触っている操作機器55を判断する。
具体的に説明すると、例えば図6のS25にて、メクラフランジを取り付ける作業をする際に図示しない集合管の末端フランジ部にメクラフランジを取り付けることになる。この際に集合管にICタグ50が取り付けられているため、作業時に確実にICタグリーダ30がICタグ50を検知する。
【0028】
しかし、情報操作端末40が指示するものとは別の操作機器55を作業者90が操作していた場合には、情報操作端末40は警告を発する。例えば、中圧ガバナ24を操作するべき所を、低圧ガバナ22を操作していた場合には、ICタグリーダ30は低圧ガバナ22に設けられたICタグ50を検知する。この結果、中圧ガバナ24に設けられたICタグ50とは異なる信号をICタグリーダ30が検知する。その情報を情報操作端末40が受け取ることで、作業手順とは異なる手順で作業者90が作業を行っていることを検出する。
情報操作端末40が表示部41に操作が間違っている旨を警告し、音声等で知らせることで、作業者90は自分の操作が誤りであることを認識できる。
【0029】
このように情報操作端末40の表示部41では、作業者90に対して移動式ガス発生装置20の操作手順を逐次示すとともに、誤った操作をして別の操作機器55を操作しようとして別の操作機器55に触れることで、その操作機器55のICタグ50の信号を検出して、誤った操作をしようとしている旨の警告を出すことが可能である。
移動式ガス発生装置20は、図2に示したように本支管100が損傷する等の特殊な状況下で使われることを想定している。すなわち、地震災害発生時や本支管100が工事等によって損傷してしまい、直ぐには復旧できないようなケースである。
したがって、移動式ガス発生装置20のような機械装置を用いるケースは稀であり、多くの場合、作業者90の移動式ガス発生装置20の使用に関する習熟度は低い場合が多い。
【0030】
このような場合であっても、機械操作支援システム10を用いることで移動式ガス発生装置20の操作を装置に対して未習熟な作業者90が手順通りに行うことが可能となる。
また、移動式ガス発生装置20のような装置は、手順を誤るとガス漏れに直結する為に、手順を間違えて各操作機器55を操作してしまうことは望ましくない。また、原料ガスボンベ29内部のガス圧は数MPaと高圧であり、一方、出力側の要求する圧力は数KPa程度であるため、万が一にも高圧なまま出口側からガスを供給することは好ましくない。移動式ガス発生装置20には安全設備としての遮断弁23が設けてあるが、多重のインターロックを施す目的でも機械操作支援システム10を運用することにメリットがある。
【0031】
一般的に安全装置を複数設けることは、設備としては当然の措置であるが、移動式ガス発生装置20は図2に示したようなトラブル発生時に迅速にガスを仮供給することを目的としたガス設備であり、出来る限り単純な構造であることが望ましい。このため作業者90のミスによって起きるガス漏れや、移動式ガス発生装置20の故障を防止することが難しい。ガス漏れ警報装置や電気的なインターロックを設けることも考えられるが、移動式ガス発生装置20は基本的に屋外に設置されるため、防水機能なども考慮する必要がある。このため、設備の重量化やコストアップに繋がってしまうことが懸念される。
しかし、機械操作支援システム10を用いれば、従来から用いている移動式ガス発生装置20にICタグ50を取り付けることで作業手順を示す共に、作業者90のミスを警告しミスの防止が可能となるため、安全面での機能を強化することが可能となる。この為、コスト的にもメリットが高い。
【0032】
また、ICタグリーダ30が作業者90の作業の邪魔になりにくい点が挙げられる。
本実施形態では、ICタグリーダ30が、作業者90の手の甲側に配置されるよう装着されるものであり、ICタグリーダ30の読み取り方向が作業者90の掌側であり、作業者90の手の甲側に配置されたICタグ50をICタグリーダ30が検知できないようにICタグリーダ30に検知制限手段となる遮蔽板33が設けられ、ICタグ50は操作機器55の操作部に取り付けられ、作業者90が、操作機器55の操作部に触れた際に、ICタグリーダ30が操作部に取り付けられたICタグ50の情報を読み込むものである。
【0033】
ICタグリーダ30に備えるアンテナ31には遮蔽板33を備えることで、ICタグ50を読み出す方向に指向性を持たせることが可能になる。
操作機器55の間隔が十分に離れていれば問題ないが、操作機器55は隣接して備えられているケースも考えられ、ICタグ50の配置によってはICタグリーダ30で隣に配置されたICタグ50を誤検知してしまう可能性がある。しかし、ICタグリーダ30の読み取り方向に志向性を持たせることで、ICタグ50の誤検出を減らすことが可能である。
なお、操作機器55は例えば低圧ガバナ22や遮断弁23などのバルブ操作を行う必要のあるものが多く、ICタグ50をバルブの取手等に設けることで作業者90が操作機器55を操作する際に取手に触ることでICタグリーダ30がICタグ50を検出する。
【0034】
作業時間は比較的短いと想定されるが、ICタグリーダ30がICタグ50の付近を通過しただけで誤検知するような短い時間に設定する必要はない。したがって、操作機器55に擁する操作時間を想定して、連続的にICタグ50の検出する時間を設定しておけば、確実にその操作機器55を操作していると判断できる。
このようにICタグリーダ30の検出時間に操作機器55に合った操作時間を設定しておくことで、ICタグ50の誤検出を防ぐことに貢献できる。
【0035】
なお、情報操作端末40にてICタグ50の検出した順番を記録しておく機能を有していると、移動式ガス発生装置20の使い勝手の向上にも貢献することが可能である。
例えば、同じ手順で作業者90が間違いを犯すようなケースでは、その手順設定に問題があるということが分かるので、ミスを少なくするように移動式ガス発生装置20に設ける操作機器55の位置を工夫したり、その部分だけ強調するように情報操作端末40での説明の方法を変更したり、という対策をすることが可能である。
【0036】
以上において、実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、ICタグ50の取り付け方法を変更する事を妨げない。また、情報操作端末40にはPDAを用いているが、例えばノートパソコンや携帯電話など他の情報処理端末を用いる仕様としても良い。
また、本実施形態の機械操作支援システム10は移動式ガス発生装置20に対応させたものとなっているが、他の機械装置に適用させることを妨げない。
【0037】
また、本実施形態の機械操作支援システム10は移動式ガス発生装置20の機種を1種類と想定してプログラムが形成されているが、複数の移動式ガス発生装置20に対応させることを妨げない。
これは、移動式ガス発生装置20自身にICタグ50を設けて対応するプログラムと照合するという作業を追加すれば実現可能である。したがって、最初に移動式ガス発生装置20の機種を判別して対応するマニュアルを選び、以降そのマニュアルに沿って情報操作端末40の起動を行うというようなプログラムとすれば、複数種類の移動式ガス発生装置20に対応することが可能である。
このような方法を採ると、移動式ガス発生装置20のバージョンによって作業手順が異なるような場合にも対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施形態の、システム概要図である。
【図2】本実施形態の、災害時にガス発生装置を用いるイメージ図である。
【図3】本実施形態の、システムの概略構成図である。
【図4】本実施形態の、ICタグリーダの模式図である。
【図5】本実施形態の、メインのフローである。
【図6】本実施形態の、始動前準備のサブルーチンのフローである。
【図7】本実施形態の、始動操作のサブルーチンのフローの前半である。
【図8】本実施形態の、始動操作のサブルーチンのフローの後半である。
【図9】本実施形態の、停止操作のサブルーチンのフローである。
【符号の説明】
【0039】
10 機械操作支援システム
20 移動式ガス発生装置
30 ICタグリーダ
31 アンテナ
32 ケース本体
33 遮蔽板
40 情報操作端末
41 表示部
50 ICタグ
55 操作機器
90 作業者
100 支管
101 供内管
102 メータ
103 住宅
105 遮断部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICタグを用いて機械装置の作業手順を補助する機械操作支援システムにおいて、
前記機械装置が備える操作を必要とする各機器に、固有の識別子が記憶された前記ICタグを備え、
前記機械装置を操作する際に、前記ICタグの情報を読み込むリーダを作業者の手に装着し、
前記リーダと通信する情報処理端末を起動した状態で、前記機械装置の前記機器に触れることで、前記リーダが前記機器に付された前記ICタグの情報を読み取り、
前記リーダから前記ICタグの情報を前記情報処理端末に伝え、
前記情報処理端末が、前記情報を元に前記機械装置の作業手順が適切であるかどうかを判断し、
前記情報処理端末に備える表示部に、前記作業者の行う作業手順が適切かどうかを表示することを特徴とする機械操作支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の機械操作支援システムにおいて、
前記リーダが、前記作業者の手の甲側に配置されるよう装着されるものであり、
前記リーダの読み取り方向が前記作業者の掌側であり、前記作業者の手の甲側に配置された前記ICタグを前記リーダが検知できないように前記リーダに検知制限手段が設けられ、
前記ICタグは前記機器の操作部に取り付けられ、
前記作業者が、前記機器の前記操作部に触れた際に、前記リーダが前記操作部に取り付けられた前記ICタグの情報を読み込むことを特徴とする機械操作支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−140085(P2010−140085A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313294(P2008−313294)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【出願人】(302005581)株式会社ゴビ (4)
【Fターム(参考)】