説明

機械的特性の向上した徐放性錠剤配合物

pH依存性放出プロフィールを有する少なくとも1種の薬学的活性剤、少なくとも1種の非pH依存性徐放剤、および有効量のオイドラギット(Eudragit)L100−55を含有する、特定の硬度の固体剤形の薬物を配合する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照

本出願は、米国仮特許出願第60/703,000号明細書(2005年7月28日出願)の出願日の利益を主張し、この文献は参照により本明細書に援用される。
【0002】
本出願はまた、以前に出願した米国仮特許出願第60/702,982号明細書(2005年7月28日出願)にも関する。前記特許出願の全内容は、参照によりその全体が明示的に援用される。

技術分野
本発明は、強固な(圧縮性に関して)製薬マトリックス錠剤を提供する配合物に関する。この強固さは、錠剤の機械的特性を向上させることがこれまで知られていなかった賦形剤の使用によって得られる。配合物は、1種または複数の薬学的活性剤を徐放して(本文中、徐放(modified release)と徐放(sustained release)は同義的に使用される)送達するのに適している。
【背景技術】
【0003】
背景技術
マトリックス錠剤は通常、錠剤のある一定の特性、例えば、圧縮性、流動性、摩損度、および徐放性のために機能的に必要な賦形剤を含有する。賦形剤は、錠剤の特性に予想外に影響を与えることにより特有の方式で作用する場合がある。
【0004】
この現象は当該技術分野で認識されている。例えば、米国特許第6,358,525号明細書は、ヒドロキシプロピルセルロースおよびメチルセルロースなどの徐放性ポリマーとして使用される幾つかの賦形剤が徐放を提供するだけでなく、錠剤の硬度を改善することもできると記載している。他の特許は、圧縮性充填剤として糖を(米国特許第6,221,392号明細書)、並びに、圧縮性賦形剤として二酸化ケイ素およびメチルセルロースを(米国特許第6,358,533号明細書)記載している。
【0005】
グアンファシンに関する米国特許第6,287,599号明細書および米国特許第6,811,794号明細書(参照により本明細書に援用される)は、pH依存性が最小限のまたはpH非依存性の溶解プロフィールを有する徐放性医薬組成物を開示している。該組成物は、良好な徐放プロフィールを得るためにpH依存性の薬学的活性剤に有用である。特定のメタクリル酸共重合体を含有する配合物が示されている(オイドラギット(Eudragit)L(登録商標)100−55)が、この特定のポリマーを使用して、マトリックス錠剤の十分なまたは好ましい硬度を達成できる強固な錠剤を得ることができることは示されておらず、そのように使用されていない。
【0006】
塩酸グアンファシンの化学名は、塩酸N−アミジノ−2−(2,6−ジクロロフェニル)アセトアミドであり、分子式C10ClOで表される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要約
本発明は、一態様において、pH依存性放出プロフィールを有する少なくとも1種の薬学的活性剤と、少なくとも1種の非pH依存性徐放剤とを含む特定の硬度の固体剤形に薬物を配合する方法に関し、本方法は、具体的には前記特定の硬度を達成するオイドラギット(Eudragit)L100−55の量を選択すること、および前記量のオイドラギット(Eudragit)L100−55を薬物に組み込むことを含む。
【0008】
別の態様では、本発明は、pH依存性放出プロフィールを有する少なくとも1種の薬学的活性剤と、少なくとも1種の非pH依存性徐放剤とを含む製薬配合物の硬度を調節する方法に関し、本方法は、(a)前記製薬配合物に第1の量のオイドラギット(Eudragit)L100−55を添加し、錠剤を形成した後、錠剤の硬度を試験して第1の硬度値を得ること、(b)前記製薬配合物に少なくとも1つの第2の量のオイドラギット(Eudragit)L100−55を添加し、少なくとも1つの第2の錠剤を形成した後、少なくとも1つの第2の錠剤の硬度を試験して少なくとも1つの第2の硬度値を得ること、続いて(c)配合物から製造される錠剤に望ましい硬度を達成するオイドラギット(Eudragit)L100−55の量を前記製薬配合物に対して選択すること、を含む。
【0009】
本発明は更に、薬学的活性剤と特定のメタクリル酸共重合体とを含む医薬組成物に関する。メタクリル酸共重合体は、製品の必要とされる徐放性だけではなく、十分な圧縮性のためにも有用である。
【0010】
錠剤配合物は、高い強度または硬度と許容可能な溶解などの、しばしば対立するある一定の性能基準を満たさなければならない。本発明に関する場合、錠剤配合物の目的とする最小限の平均硬度は、少なくとも、例えば4.5kP、例えば6kP、且つ9.5未満でなければならず、これは適切な溶解プロフィールに望ましい硬度となり得る。しかし、含まれる薬物に応じて、本発明により他の値も達成可能である。これらのパラメータは、加工性と拡張性を維持しつつ所望の徐放溶解プロフィールを達成するだけでなく摩損度試験に合格することが期待される、実現性のある製品に必要である。
【0011】
徐放性ポリマーは、生体内での適切な放出プロフィールを付与するために、本発明による配合物に必要である。小腸の十二指腸部分(即ち、約pH5.5)で放出を標的化するため、メタクリル酸共重合体、より具体的にはオイドラギット(Eudragit)L100−55(ローム・アメリカ社(Rohm America,Inc.))が使用される。ここで、本発明の製薬配合物中にこの賦形剤が存在すると、必要な硬度範囲の錠剤が製造されることが分かった。
【0012】
本発明は、また、グアンファシンを含有する本明細書に記載の徐放錠剤配合物で行動障害を治療する方法に関する。米国特許第5,854,290号明細書(参照により本明細書に援用される)によれば、グアンファシンは、注意欠陥多動性障害、行為障害、反抗挑戦性障害、トゥーレット症候群、レッシュ−ナイハン症候群、並びに心的外傷後ストレス症候群および痴呆に関連する脱抑制症候の治療に有用である。本発明の徐放配合物は、1日1回の投与を可能にし、簡便さと被験者の服薬順守を向上させ、最高と最低の変動を著しく低減させ、それによって被験者の耐性を改善し、効果の延長された有効持続期間を提供する。
【0013】
最後に、本発明は、本明細書に記載される錠剤の調製方法を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、徐放性医薬組成物に関する。より詳細には、本発明は、pH非依存性のまたはpH依存性が最小限の溶解プロフィールを有する徐放性医薬組成物中での特定のメタクリル酸共重合体の存在に関する。詳細には、本発明の組成物は、メタクリル酸共重合体、オイドラギット(Eudragit)L100−55を含む。オイドラギット(Eudragit)L(登録商標)100−55は、ローム・アメリカ社(Rohm America,Inc.)によって販売されている(ポリ(メタクリル酸、アクリル酸エチル))、(メタクリル酸およびメタクリレートのアニオン性ポリマー−メタクリル共重合体タイプC、NF)である。オイドラギット(Eudragit)L(登録商標)100−55についての本出願の出願日までのローム・アメリカ社(Rohm America,Inc.)から入手可能な仕様書シートは全て、参照により本明細書に援用される。
【0015】
本発明は、pH依存性放出プロフィールを有する少なくとも1種の薬学的活性剤と、少なくとも1種の非pH依存性徐放剤とを含む特定の硬度の固体剤形の薬物を配合する方法に関し、本方法は、前記特定の硬度を達成するように特に設計されたオイドラギット(Eudragit)L100−55の量を選択すること、および前記量のオイドラギット(Eudragit)L100−55を薬物に組み込むことを含む。
【0016】
詳細には、このような徐放性医薬錠剤組成物は、pH依存性放出プロフィールを有する少なくとも1種の薬学的活性剤、少なくとも1種の非pH依存性徐放剤、およびオイドラギット(Eudragit)L100−55を含み、オイドラギット(Eudragit)L100−55は全組成物の約25〜約45重量%、好ましくは約25%〜約40%、最も好ましくは約26、27、28%など〜約32、33、34、35%(w/w)などの範囲で存在する。これより少ないまたは多い量も様々な薬物に関連して有用であろう。活性剤は、塩基性媒体に対する溶解性よりも酸性媒体に対する溶解性の方がより高い溶解度プロフィールを有する。
【0017】
薬物を媒体中に溶解させるとき薬物が溶液に溶解する速度は、薬物の媒体に対する溶解度に比例する。多くの薬物は異なるpHで異なる溶解度を有する。これらのpH依存性溶解度差は、pH依存性溶解プロフィールに繋がる。一般に、pH依存性溶解は、望ましくない製品特性である。
【0018】
塩基性薬物を含有する圧縮されたマトリックス錠剤では、模擬腸液(pH6.8〜7.4)中よりもpH約1.0の模擬胃液中の方がより速い溶解プロフィールが得られることが多い。
【0019】
本発明の目的は、pH依存性が最小限のまたはpH非依存性の溶解プロフィールを有し、許容可能な錠剤製品を製造するのに十分な硬度を示す医薬組成物を提供することである。
【0020】
本発明の錠剤組成物は、pH依存性放出プロフィールを有する少なくとも1種の薬学的活性剤、少なくとも1種の非pH依存性徐放剤、および、約25〜約40重量%のオイドラギット(Eudragit)L100−55を含む。低い方のパーセンテージは、適切な溶解プロフィールを維持するとともに十分な硬度を達成するのに必要な最小限の量である。好ましくは、オイドラギット(Eudragit)L100−55は、配合物の約33%即ち3分の1で錠剤組成物中に存在する。
【0021】
本発明の概念は、塩酸グアンファシンの配合物に特に有用であることが分かるが、本発明は、ポリマーの放出特性並びにそれによって付与される硬度が有利となる薬学的活性剤の他の任意の配合物に適用可能であると考えられる。例えば、これらには、pH依存性があって組成物中に含まれ得る薬学的活性剤が挙げられ、以下に限定されないが、pHレベルが低いほどより溶解度が高くなる弱塩基性薬物およびそれらの塩が挙げられる。このような薬物としては、例えば、塩酸グアンファシン、硫酸グアナドレル、リセルピン(riserpine)、塩酸アナグレライド、プロパノロール(propanolol)、メトプロロール、アテノロール、チモロール、エリスロマイシン(erthyrthromycin)、クロニジン、クロルフェニラミン、ブロモフェニラミン、ジルチアゼム(diltiazen)、およびスコポラミンが挙げられる。一般に、薬学的活性剤は組成物中に約0.1重量%〜約70重量%、好ましくは約1重量%〜約40重量%の量で存在する。
【0022】
一実施形態では、少なくとも1種の薬学的活性剤は塩酸グアンファシンである。好ましくは、グアンファシン遊離塩基は、組成物中に約0.1%〜約5重量%、好ましくは0.25〜5%(w/w)、より好ましくは0.3〜4%(w/w)、0.33〜3.5%(w/w)、0.5〜3%(w/w)、0.75〜2%(w/w)などの量で存在する。より好ましくは、塩酸グアンファシン錠は、1錠当たり塩酸グアンファシン約1.14mg〜約4.6mg、または1錠当たり遊離塩基約1〜約4mgの用量である。最も好ましくは、グアンファシン錠は、遊離塩基1、2、3および4mgの用量である。
【0023】
組成物中に含まれ得る非pH依存性徐放剤としては、エチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、(非pH依存性)アクリレート/メタクリレート共重合体、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カラギーナン、アルギン酸およびその塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カラヤガム、アカシアガム、トラガカントガム、ローカストビーンガム、グアーガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、蜜蝋、カルナウバ蝋、セチルアルコール、硬化植物油、およびステアリルアルコールが挙げられるが、これらに限定されない。一般に、少なくとも1種の非pH依存性徐放剤が、組成物中に約5重量%〜約50重量%、好ましくは約10重量%〜約30重量%の量で存在する。しかし、本発明の範囲は、特定の非pH依存性徐放剤に限定されないと理解されるべきである。
【0024】
5.5より大きいpHでの少なくとも1種の薬学的活性剤の溶解度を増加させる薬剤が、必要に応じて本発明の組成物中に存在する。このような薬剤としては有機酸が挙げられるが、これに限定されない。このような有機酸は錠剤中で酸性の微小環境を維持し、このような有機酸としては、クエン酸、フマル酸、酒石酸、アジピン酸、グルコノデルタラクトン、およびリンゴ酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
本発明の組成物は、増量剤(bulking agents)、崩壊剤、粘着防止剤およびグリダント(glidant)、滑沢剤、および結合剤などの他の材料を更に含んでもよい。
【0026】
増量剤としては、微結晶セルロース(例えば、FMC社(FMC Corp.)のアビセル(Avicel)(登録商標)、メンデル社(Mendell Inc.)のエムコセル(Emcocel)(登録商標)、ペンウエスト社(Penwest Corp.)のプロソルブ(Prosolv)HD90)、マンニトール、キシリトール、リン酸二カルシウム(例えば、メンデル社(Mendell Inc.)のエンコンプレス(Emcompress))、硫酸カルシウム(例えば、メンデル社(Mendell Inc.)のコンパクトロール(Compactrol))、デンプン、ラクトース、スクロース(アムスター(Amstar)のジパック(Dipac)、およびイングレディエント・テクノロジー(Ingredient Technology)のニュータブ(Nutab))、デキストロース(メンデル社(Mendell Inc.)のエムデックス(Emdex))、ソルビトール、セルロース粉末(デグサ(Degussa)のエルセマ(Elcema)、およびメンデル社(Mendell Inc.)のソルカ・フロック(Solka Floc))が挙げられるが、これらに限定されない。増量剤は、組成物中に約5重量%〜約90重量%、好ましくは約10重量%〜約50重量%の量で存在してもよい。
【0027】
組成物中に含まれ得る崩壊剤としては、微結晶セルロース、デンプン、クロスポビドン(例えば、インターナショナル・スペシャルティ・プロダクツ(International Specialty Products.)のポリプラスドン(Polyplasdone)XL)、デンプングリコール酸ナトリウム(メンデル社(Mendell Inc.)のエクスプロタブ(Explotab))、およびクロスカルメロースナトリウム(例えば、FMC社(FMC Corp.)のアクジソル(Ac−Di−Sol))が挙げられるが、これらに限定されない。崩壊剤は、組成物中に約0.5重量%〜約30重量%、好ましくは約5重量%〜約20重量%の量で存在してもよい。
【0028】
本発明の組成物中に粘着防止剤および滑沢剤を使用してもよい。これらには、タルク、コーンスターチ、二酸化ケイ素、ラウリル硫酸ナトリウム、およびステアリン酸金属塩が挙げられるが、これらに限定されない。粘着防止剤またはグリダントは、組成物中に約0.2重量%〜約10重量%、好ましくは約0.5重量%〜約3重量%の量で存在してもよい。
【0029】
組成物中に存在し得る滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸、ステアリルフマル酸ナトリウム、硬化綿実油(ステロテックス)、タルク、およびワックス類(蜜蝋、カルナウバ蝋、セチルアルコール、ステアリン酸グリセリル、パルミチン酸グリセリル、ベヘン酸グリセリル、硬化植物油、およびステアリルアルコールが挙げられるが、これらに限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない。滑沢剤は、約0.2重量%〜約20重量%、好ましくは約5重量%〜約15重量%の量で存在してもよい。
【0030】
使用され得る結合剤としては、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、スクロース溶液、デキストロース溶液、アカシア、トラガカントおよびローカストビーンガムが挙げられるが、これらに限定されない。結合剤は、組成物中に約0.2重量%〜約20重量%、好ましくは約5重量%〜約15重量%の量で存在してもよい。
【0031】
本発明の組成物は、好ましくは直接圧縮法で、または湿式造粒法で製造される。乾燥ブレンドに続いて直接圧縮すること、または湿式造粒に続いて乾燥し直接圧縮することが、とりわけグアンファシンなどの水分に敏感な薬学的活性剤に好ましい。直接圧縮法では、少なくとも1種の薬学的活性剤および他の成分は、40メッシュスクリーンなどのステンレス鋼スクリーンで篩過される。次いで、篩過された材料を好適なブレンダーに投入し、約10分間ブレンドし、チョッパー(intensifier bar)を装着して約3分間ブレンドする。次いで、ブレンド物を適切な器具を使用してロータリープレスで圧縮して錠剤にする。必要に応じて、圧縮された錠剤をコーティングしてもよい。
【0032】
湿式造粒法では、少なくとも1種の薬学的活性剤および他の成分を造粒液(例えば、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、および水)と一緒にプラネタリーミキサー、高剪断ミキサー、または流動層造粒機中で造粒する。結合剤は造粒液中に含有されてもよく、または乾燥混合物中に存在してもよい。湿潤顆粒をオーブンまたは流動層乾燥機中で乾燥させた後、好適なスクリーンで篩過して自由流動顆粒を得る。得られる顆粒を好適な滑沢剤およびグリダントと一緒にブレンドし、滑沢剤が混合された顆粒を適切な器具を使用してロータリープレスで圧縮し錠剤にする。必要に応じて、圧縮された錠剤にコーティング剤を塗布してもよい。
【0033】
好ましくは、配合物を乾燥ブレンドし、直接圧縮する。配合物中にオイドラギット(Eudragit)L100−55が含まれたときだけ、許容可能な硬度(最小限6kP)の錠剤が製造される。以下に示すように、幾つかの変形を試験した。既知の幾つかの硬度を向上させる賦形剤、即ち、二酸化チタンおよび二酸化ケイ素を使用して、オイドラギット(Eudragit)L100−55の存在しない、実現性のある配合物の製造を試みたが、これは不可能であった。
【0034】
試験のために同一の配合物を使用したが、唯一の差異は、配合物がオイドラギット(Eudragit)L100−55、オイドラギット(Eudragit)RSPO、またはオイドラギット(Eudragit)S100を含有したことであった。制御放出を提供するために配合物中に使用される別の賦形剤であるアンモニオメタクリレート共重合体、オイドラギット(Eudragit)RSPOでは、適切な硬度の圧縮性配合物が製造されなかった。オイドラギット(Eudragit)RSPOは、制御放出配合物に対する透過性が低いpH非依存性ポリマーである。一般に、オイドラギット(Eudragit)RSPOを含有する配合物は流動性と圧縮性が劣る。硬度向上剤はオイドラギット(Eudragit)RSPOを含有する配合物の硬度を改善しなかったが、それらはまたオイドラギット(Eudragit)L100−55を有する配合物の硬度を比例して増加させた。オイドラギット(Eudragit)S100は、回腸中での標的化薬物送達のための、pH7.0より上で可溶化するpH依存性アニオン性ポリマーである。このポリマーを配合物に組み込んだとき、錠剤の硬度は加工圧縮の変化に非常に敏感であった。圧縮が少し変化すると硬度は大きく変化した。これは加工中、とりわけスケールアップおよび製造中の問題に繋がる。例えば、6〜7kNの一般的な圧縮設定範囲で、錠剤の硬度は4.5〜7kPまで様々となり得る。このプロセスは制御可能なパラメータを設定することが困難である。許容可能な圧縮範囲では、主な圧縮力調節で錠剤の硬度変化が最小限となる。更に図1を参照されたい。
【0035】
薬学的活性剤が塩酸グアンファシンであるとき、組成物を注意欠陥障害、または注意欠陥多動性障害などの行動障害の治療に使用してもよい。塩酸グアンファシンを含む組成物は、ヒトおよびヒト以外の霊長類を含む哺乳類などの動物に前述の障害の治療に有効な量で投与される。好ましくは、行動障害の治療に有効な量は、1日当たりグアンファシン遊離塩基約1〜約4mgである。
【0036】
本発明の組成物を様々な疾患または障害の治療に使用してもよい。
【0037】
本発明による組成物の一部として塩酸グアンファシンを投与すると、塩酸グアンファシンの投与に関連する副作用の数が減少する、または塩酸グアンファシンの投与に関連する副作用の可能性が減少する。
【0038】
ここで、本発明を以下の実施例に関して説明するが、本発明の範囲がそれによって限定されるものではない。
【実施例】
【0039】
実施例1
錠剤の製造に使用される主な設備部品は、チョッパーを装備した16クォートのV形ブレンダーと16ステーションのロータリー式打錠機である。材料を全て40メッシュのスクリーンを通して16クォートのVブレンダーに投入し、グアンファシンを中央に挟む。混合物を10分間ブレンドし、チョッパーを作動させて5〜8分間ブレンドする。ブレンド物をポリエチレンバッグに投入した後、ストークス(Stokes)打錠機のホッパーに移す。必要な錠剤重量に適切な硬度にブレンド物を圧縮する。シュロイニガー(Schleuniger)硬度試験機で錠剤の硬度を試験する。
【0040】
オイドラギット(Eudragit)L100−55またはオイドラギット(Eudragit)RSPOを含有する配合物の様々な圧縮力における硬度を試験した(図2参照)。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
実施例2
硬度に対する着色剤の効果を調べるため、着色剤を添加することによって配合物を試験した(図2を参照)。表1の配合物の最終ブレンド物に0.5%の緑色顔料を添加した。硬度試験の結果を表3に示す。
【0044】
【表3】

【0045】
実施例3
幾つかの着色剤の構成成分である二酸化チタンを添加することによって配合物を試験した(図2を参照)。
【0046】
【表4】

【0047】
【表5】

【0048】
実施例4
硬度向上剤である二酸化ケイ素を配合物に添加した(図2参照)。
【0049】
【表6】

【0050】
【表7】

【0051】
本発明の範囲は前述の特定の実施形態に限定されるべきではないことを理解されたい。本発明は詳述した以外に実施されてもよく、依然として添付の特許請求の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、異なるオイドラギット(Eudragit)ポリマーを有する配合物について、異なる圧縮力における硬度の範囲を示す。
【図2】図2は、オイドラギット(Eudragit)L100−55またはオイドラギット(Eudragit)RSPOを含有する配合物の様々な圧縮力における硬度試験の結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH依存性放出プロフィールを有する少なくとも1種の薬学的活性剤と、少なくとも1種の非pH依存性徐放剤とを含む特定の硬度の固体剤形の薬物を配合する方法であって、前記特定の硬度を達成するように特に設計されたオイドラギットL100−55の量を選択すること、および前記量のオイドラギットL100−55を前記薬物に組み込むことを含む方法。
【請求項2】
pH依存性放出プロフィールを有する少なくとも1種の薬学的活性剤と、少なくとも1種の非pH依存性徐放剤とを含む製薬配合物の硬度を調節する方法であって、(a)前記製薬配合物に第1の量のオイドラギットL100−55を添加し、錠剤を形成した後、前記錠剤の硬度を試験して第1の硬度値を得ること、(b)前記製薬配合物に少なくとも1つの第2の量のオイドラギットL100−55を添加し、少なくとも1つの第2の錠剤を形成した後、少なくとも1つの第2の錠剤の硬度を試験して少なくとも1つの第2の硬度値を得ること、続いて、(c)前記配合物から製造される錠剤に望ましい硬度を達成するオイドラギットL100−55の量を前記製薬配合物に対して選択することを含む方法。
【請求項3】
前記オイドラギットL100−55の量が、前記全剤形の重量の約26〜40重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種の薬学的活性剤が、塩酸グアンファシン、グアンファシン、アナグレライド、一硫酸グアネチジン、硫酸グアナドレル、ライザーパイン、プロパノロール、メトプロロール、アテノロール、チモロール、エリスロマイシン、クロニジン、クロルフェニラミン、ブロモフェニラミン、ジルチアゼム、またはスコポラミンである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記非pH依存性徐放剤が、エチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、アクリレート/メタクリレート共重合体、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カラギーナン、アルギン酸およびその塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カラヤガム、アカシアガム、トラガカントガム、ローカストビーンガム、グアーガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、蜜蝋、カルナウバ蝋、セチルアルコール、硬化植物油、およびステアリルアルコールからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記薬物が結合剤を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記結合剤が、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、スクロース溶液、デキストロース溶液、アカシア、トラガカントおよびローカストビーンガムからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記薬学的活性剤が、前記組成物中に約0.1重量%〜約5重量%の量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記非pH依存性徐放剤が、前記組成物中に約5重量%〜約50重量%の量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記非pH依存性徐放剤が、前記組成物中に約10重量%〜約30重量%の量で存在する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記オイドラギットL100−55が、前記組成物中に約33重量%の量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記非pH依存性徐放剤が、エチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記薬物が増量剤を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記増量剤が微結晶セルロースである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記薬物が滑沢剤を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記滑沢剤が、ジベヘン酸グリセリル、ステアリン酸マグネシウム、またはステアリルフマル酸ナトリウム(sodium stearyl fumarate)である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記錠剤が少なくとも6kPの平均硬度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記錠剤が6kP〜9.5kPの平均硬度を有する、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−502957(P2009−502957A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524198(P2008−524198)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/029427
【国際公開番号】WO2007/016350
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(506339316)スパーナス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (23)
【Fターム(参考)】