説明

機能建築パネル及びその製造方法

【課題】簡単な内装工事としてパネル施工することができ、リフォームにも対応可能であり、調湿、消臭、芳香等の機能も低下することなく良好に発揮され、構造的にも強固となる機能建築パネル及びその簡単で確実な製造方法を提供する。
【解決手段】表面に機能剤収容溝1を複数並設してなる無機質繊維板2の同表面に、細長板片3が細長貫通溝4を介して複数並設された格子状板5を、機能剤収容溝1と細長貫通溝4とが交差するように積層し、パネルとして一体化してなる機能建築パネルAとしたものであり、この場合、板基材51の表面側から切削加工を施して細長貫通溝4を形成することにより、細長板片3が同細長貫通溝4を介して複数並設された格子状板5を無機質繊維板2の表面に積層形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、建物の内装材等として施工され、調湿、消臭、芳香等の機能を発揮する機能建築パネル及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、図7に示すように、対向配置された壁面材12、13からなる壁体構造において、一方の壁面材12をルーバー壁面材により形成し、両壁面材12、13間のスペースSに木炭14を収納配置してなる壁体構造は知られている(特許文献1:特開平10−61047号公報)。この場合、木炭14は通気性を有する袋体内に袋詰めされ、同袋体が前記スペースSに収納配置されている。
【0003】
したがって、この壁体構造にあっては、ルーバー壁面材でなる壁面材12を介して室内との空気流通作用がなされ、木炭14のもつ調湿、防蟻、脱臭、防虫、防かび等の効果が良好に奏されるとされている。また、この場合、木炭14が袋詰めされているので、これを前記スペースSに収納配置する施工は容易であるともされている。
【特許文献1】特開平10−61047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来例である壁体構造は、現場において施工されるものであり、壁そのものとして形成されるものであるため、簡単な内装工事としては施工されないものであって、リフォーム等の施工には不適である。また、木炭14が袋詰めされていてこれを収納配置する施工は容易であるが、収納配置された木炭14は確実に保持され難くてその自重で下方へ移動し易く、経時に伴って機能が低下する恐れもある。しかも、壁の中央部位が袋詰めされた木炭14で構成されることになるので、構造的に弱くなるという問題もある。
【0005】
本願発明は、上記背景技術に鑑みてなされたもので、その課題は、簡単な内装工事としてパネル施工することができ、リフォームにも対応可能であり、調湿、消臭、芳香等の機能も低下することなく良好に発揮され、構造的にも強固となる機能建築パネル及びその簡単で確実な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願請求項1記載の発明は、表面に機能剤収容溝を複数並設してなる無機質繊維板の同表面に、細長板片が細長貫通溝を介して複数並設された格子状板を、機能剤収容溝と細長貫通溝とが交差するように積層し、パネルとして一体化してなる機能建築パネルとしたものである。
【0007】
また、本願請求項2記載の発明は、請求項1記載の機能建築パネルにおいて、機能剤収容溝の内面に機能剤を塗布することにより収容して設けたことを特徴とする。
【0008】
また、本願請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の機能建築パネルにおいて、無機質繊維板を保持枠内に収納し、保持枠の裏側に背板を固定して無機質繊維板の裏面を覆うと共に、保持枠の表側に格子状板を固定したことを特徴とする。
【0009】
また、本願請求項4記載の発明は、請求項3記載の機能建築パネルにおいて、保持枠の外周に実部を設けたことを特徴とする。
【0010】
また、本願請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項記載の機能建築パネルの製造方法であって、表面に機能剤収容溝を複数並設してなる無機質繊維板の同表面に板基材を貼着し、板基材の表面側から切削加工を施して細長貫通溝を形成することにより、細長板片が同細長貫通溝を介して複数並設された格子状板を無機質繊維板の表面に積層形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本願請求項1記載の発明である機能建築パネルにおいては、パネルとして一体化されているので、現場で簡単な内装工事としてパネル施工することができ、リフォームにも容易に対応可能となる。また、表面に機能剤収容溝を複数並設してなる無機質繊維板の同表面に、細長板片が細長貫通溝を介して複数並設された格子状板を、機能剤収容溝と細長貫通溝とが交差するように積層しているので、機能剤収容溝は格子状板の細長板片の裏側で連通し、機能剤収容溝に収容される調湿、消臭、芳香等の機能を有した機能剤が、格子状板の細長貫通溝を通して表側へと支障無く有効に作用する。
【0012】
しかも、この場合、機能剤は機能剤収容溝に収容されて確実に保持されるので、機能剤による作用が長期にわたって良好に発揮される。また、無機質繊維板はそれ自体でも調湿作用を有しており、これに機能剤も保持されるので、機能が向上されて構造的にも強固となる。
【0013】
また、本願請求項2記載の発明である機能建築パネルにおいては、特に、機能剤収容溝の内面に機能剤を塗布することにより収容して設けたので、機能剤が機能剤収容溝の内面から無機質繊維板に含浸されて強固に保持される。しかも、この場合、機能剤は塗布作業によって簡単に設けられる。
【0014】
また、本願請求項3記載の発明である機能建築パネルにおいては、特に、無機質繊維板を保持枠内に収納し、保持枠の裏側に背板を固定して無機質繊維板の裏面を覆うと共に、保持枠の表側に格子状板を固定したので、無機質繊維板がその周囲の保持枠と裏側の背板とで保護されると共にパネル全体として補強され、機能剤による作用は表側以外へ漏出することなく有効に発揮される。
【0015】
また、本願請求項4記載の発明である機能建築パネルにおいては、特に、保持枠の外周に実部を設けたので、隣接するもの同士を実部によって接続することができ、現場でのパネル施工は容易且つ確実に行われるようになる。
【0016】
また、本願請求項5記載の発明である機能建築パネルの製造方法においては、特に、板基材の表面側から切削加工を施して細長貫通溝を形成することにより、細長板片が同細長貫通溝を介して複数並設された格子状板を無機質繊維板の表面に積層形成するので、細長板片を個別に貼着するのではなく板基材としてまとめて貼着することができ、貼着後に切削加工によって細長貫通溝を容易且つ正確に形成することもできて、簡単で確実な製造方法となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1〜6は、本願請求項1〜5全てに対応した一実施形態を示している。この実施形態の機能建築パネルAは、表面に機能剤収容溝1を複数並設してなる無機質繊維板2の同表面に、細長板片3が細長貫通溝4を介して複数並設された格子状板5を、機能剤収容溝1と細長貫通溝4とが交差するように積層し、パネルとして一体化してなる。
【0018】
また、この実施形態の機能建築パネルでは、図2、3に示すように、機能剤収容溝1の内面に機能剤6を塗布することにより収容して設けている。そして、無機質繊維板2を保持枠7内に収納し、保持枠7の裏側に背板9を固定して無機質繊維板2の裏面を覆うと共に、保持枠7の表側に格子状板5を固定しており、この場合、図2〜5に示すように、保持枠7の外周に実部9a、9bを設けてもいる。
【0019】
また、この実施形態の機能建築パネルの製造方法では、表面に機能剤収容溝1を複数並設してなる無機質繊維板2の同表面に板基材51を貼着し、板基材51の表面側から切削加工を施して細長貫通溝4を形成することにより、細長板片3が同細長貫通溝4を介して複数並設された格子状板5を無機質繊維板2の表面に積層形成している。
【0020】
以下、この実施形態の機能建築パネル及びその製造方法をより具体的に説明する。この実施形態の機能建築パネルでは、無機質繊維板2がロックウール板或いはガラス繊維板で長方形状に形成されている。無機質繊維板2の表面には多数の機能剤収容溝1が、同無機質繊維板2の短手巾方向で相互に平行で等間隔にして並設されている。機能剤収容溝1は角型溝状で切削加工やプレス加工によって形成されたものであり、その溝深さ寸法は無機質繊維板2の厚さ寸法の半分程度である。
【0021】
そして、各機能剤収容溝1の内底面及び両内側面には、調湿、消臭、芳香等の機能を有した機能剤6が塗布することにより収容して設けられている。ここでは、無機質繊維板2が連通した多孔質状で耐薬品性にも優れたものであるため、塗布された機能剤6は浸透して確実に保持される。なお、無機質繊維板2には、機能向上のためにシリカゲルを含有させておいてもよい。
【0022】
保持枠7は木質角材が長方形状に枠組みされたもので、その内周形状は前記無機質繊維板2の外周形状に略合致するように形成されている。保持枠7の外周には雄実形状の実部9aと雌実形状の実部9bとが相互に対向する辺に配設されており、各実部9a、9bは切削加工によって形成されたものである。保持枠7の裏側には背板9が貼着固定されており、背板9の外周形状は同保持枠7の外周形状に略合致するように形成されている。この背板9が貼着固定された保持枠7内に、前記多数の機能剤収容溝1が形成されてその内面には機能剤が塗布された無機質繊維板2を嵌め込んで接着固定するものである。なお、背板9は木質板、石膏ボード等で形成されている。
【0023】
前記多数の機能剤収容溝1が形成されてその内面には機能剤が塗布された無機質繊維板2の表面に、細長板片3が細長貫通溝4を介して多数並設された格子状板5が、機能剤収容溝1と細長貫通溝4とが直交するように積層され、同格子状板5は前記保持枠7の表側に接着固定されている。
【0024】
この場合、背板9が貼着固定された保持枠7内に、前記多数の機能剤収容溝1が形成されてその内面には機能剤が塗布された無機質繊維板2を嵌め込んで接着固定した同無機質繊維板2の表面に板基材51を貼着し、板基材51の表面側からその長手方向に沿った切削加工を施して多数の細長貫通溝4を形成することにより、細長板片3が同細長貫通溝4を介して多数並設された格子状板5を無機質繊維板2の表面に積層形成している。
【0025】
また、この場合、背板9が貼着固定された保持枠7内に無機質繊維板2が嵌め込み固定されてその表面に板基材51が貼着された後に、切削加工によって同板基材51に細長貫通溝4を形成すると共に前記保持枠7に実部9a、9bを形成することもできる。切削加工によって形成される細長貫通溝4の溝深さ寸法は板基材51の厚さ寸法よりも若干深く設定され、同細長貫通溝4の底部41が無機質繊維板2の表面に若干入り込んでいる。なお、板基材51は木質板等で形成され、その表面には塗装が施されたり化粧シートが貼着されたりして内装に適合される。
【0026】
そして、図5に示すように、この実施形態の機能建築パネルAは、前記実部9a、9bが相互に嵌合されることで接続され、図6に示すように、壁下地10上に内装壁面材として上下左右に並設施工される。この場合、機能建築パネルAは横長状態にして設置され、格子状板5の各細長板片3及び細長貫通溝4の溝方向が横方向となり、無機質繊維板2の各機能剤収容溝1の溝方向は縦方向となる。そして、機能建築パネルAが並設施工された部位の上下周辺部位には、機能建築パネルAと外周縁のみが同一形状の通常の内装壁面材であるボーダーパネル11が設置施工されている。
【0027】
したがって、この実施形態の機能建築パネルAにおいては、矩形のパネルとして一体化されているので、現場で簡単な内装工事としてパネル施工することができ、リフォームにも容易に対応可能となる。また、表面に機能剤収容溝1を複数並設してなる無機質繊維板2の同表面に、細長板片3が細長貫通溝4を介して複数並設された格子状板5を、機能剤収容溝1と細長貫通溝4とが直交するように積層しているので、機能剤収容溝1は格子状板5の細長板片3の裏側で連通し、機能剤収容溝1に収容される調湿、消臭、芳香等の機能を有した機能剤6が、格子状板5の細長貫通溝4を通して表側へと支障無く有効に作用する。
【0028】
しかも、この場合、機能剤6は機能剤収容溝1に収容されて確実に保持されるので、機能剤6による作用が長期にわたって良好に発揮される。また、無機質繊維板2はそれ自体でも連通した多孔質状で耐薬品性にも優れたものであって調湿作用を有しており、これに機能剤6も保持されるので、機能が向上されて構造的にも強固となる。
【0029】
また、この実施形態の機能建築パネルAにおいては、機能剤収容溝1の内側全面に機能剤6を塗布することにより収容して設けたので、機能剤6が機能剤収容溝1の内側全面から無機質繊維板2に含浸されて強固に保持される。しかも、この場合、機能剤6はフローコーター、ロールコーター、スプレー等による塗布作業によって簡単に設けられる。
【0030】
また、この実施形態の機能建築パネルAにおいては、無機質繊維板2を保持枠7内に嵌め込んで収納固定し、保持枠7の裏側に背板8を固定して無機質繊維板2の裏面を覆うと共に、保持枠7の表側に格子状板5を固定したので、無機質繊維板2がその周囲の保持枠7と裏側の背板8とで保護されると共にパネル全体として補強され、機能剤7による作用は表側以外へ漏出することなく有効に発揮される。しかも、この場合、保持枠7の外周に実部9a、9bを設けたので、隣接するもの同士を実部9a、9bによって嵌合接続することができ、現場でのパネル施工は容易且つ確実に行われるようになる。
【0031】
また、この実施形態の機能建築パネルAの製造方法においては、板基材51の表面側から切削加工を施して細長貫通溝4を形成することにより、細長板片3が同細長貫通溝4を介して複数並設された格子状板5を無機質繊維板2の表面に積層形成するので、細長板片4を個別に貼着するのではなく一枚の板基材51としてまとめて貼着することができ、貼着後に切削加工によって細長貫通溝4を容易且つ正確に形成することもできて、簡単で確実な製造方法となる。しかも、この場合、細長貫通溝4の溝巾寸法を変化させることによって、機能剤6による作用効力を簡単に調整することができる。
【0032】
なお、本願発明の機能建築パネルにおいては、機能剤を棒状等の固形物に形成して機能剤収容溝に嵌め込んで収容して設けるようにしてもよい。また、本願発明の機能建築パネルは、保持枠及び背板が省略されて無機質繊維板と格子状板だけで形成されてもよい。また、本願発明の機能建築パネルは、内装天井材として並設施工されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本願発明の一実施形態である機能建築パネルを示す概略分解斜視図。
【図2】同機能建築パネルを示す平面図。
【図3】図2におけるX−X断面図。
【図4】図2におけるY−Y断面図。
【図5】同機能建築パネルの接続状態を示す要部断面図。
【図6】同機能建築パネルの施工状態を示す概略斜視図。
【図7】従来例である壁体構造を示す断面図。
【符号の説明】
【0034】
A 機能建築パネル
1 機能剤収容溝
2 無機質繊維板
3 細長板片
4 細長貫通溝
5 格子状板
51 板基材
6 機能剤
7 保持枠
8 背板
9a、9b 実部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に機能剤収容溝を複数並設してなる無機質繊維板の同表面に、細長板片が細長貫通溝を介して複数並設された格子状板を、機能剤収容溝と細長貫通溝とが交差するように積層し、パネルとして一体化してなる機能建築パネル。
【請求項2】
機能剤収容溝の内面に機能剤を塗布することにより収容して設けたことを特徴とする請求項1記載の機能建築パネル。
【請求項3】
無機質繊維板を保持枠内に収納し、保持枠の裏側に背板を固定して無機質繊維板の裏面を覆うと共に、保持枠の表側に格子状板を固定したことを特徴とする請求項1又は2記載の機能建築パネル。
【請求項4】
保持枠の外周に実部を設けたことを特徴とする請求項3記載の機能建築パネル。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項記載の機能建築パネルの製造方法であって、表面に機能剤収容溝を複数並設してなる無機質繊維板の同表面に板基材を貼着し、板基材の表面側から切削加工を施して細長貫通溝を形成することにより、細長板片が同細長貫通溝を介して複数並設された格子状板を無機質繊維板の表面に積層形成することを特徴とする機能建築パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−174933(P2008−174933A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−7864(P2007−7864)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】