機能性ステンレスナノボール及びステンレスナノボール触媒
【課題】低コストで抗酸化特性に優れたステンレスナノボールから成る、大表面積吸着剤などとして使用できる機能性ステンレスナノボール及び高効率の酸化触媒などとして使用できるステンレスナノボール触媒を提供する。
【解決手段】機能性ステンレスナノボールは液中放電プラズマ法によりステンレス鋼からなる陰極を溶解させて形成されたステンレス微粒子を分級して得られる粒径が20nm以下のステンレス微粒子からなり、ステンレスナノボール触媒は液中放電プラズマ法によりステンレス鋼からなる陰極を溶解させて形成されたステンレス微粒子からなり且つ粒径が20nm以下で酸化被膜を有さないステンレス微粒子と粒径が20nm以上のステンレス微粒子との混合物からなる。
【解決手段】機能性ステンレスナノボールは液中放電プラズマ法によりステンレス鋼からなる陰極を溶解させて形成されたステンレス微粒子を分級して得られる粒径が20nm以下のステンレス微粒子からなり、ステンレスナノボール触媒は液中放電プラズマ法によりステンレス鋼からなる陰極を溶解させて形成されたステンレス微粒子からなり且つ粒径が20nm以下で酸化被膜を有さないステンレス微粒子と粒径が20nm以上のステンレス微粒子との混合物からなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚水処理・水質浄化、排水・排煙処理、環境、バイオテクノロジー、バイオマス利用、医療などの各種分野において用いることができる機能性ステンレスナノボール及びステンレスナノボール触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
金属のナノ粒子とりわけ高真球度を有するナノボールに対し、例えば高光反射能などの特別な機能を持たせて機能性微粒子として利用するに当たり、金属ナノ粒子表面が酸化されて酸化被膜が形成され易くそれが障害となり機能性微粒子としての有効性に問題があった。この問題を解決するために、有効な酸化防止法、酸化防止剤を見出すか或いは根本的な解決策として酸化しない金属ナノ粒子を開発し、大きな体積対表面積比やナノ効果を最大限に活かした機能性微粒子とすることが求められている。
【0003】
一方、近年、池、湖沼の水や水道水に利用される原水等の水質の汚染・汚濁が問題となっている。この水質汚濁の主な原因物質としてフミン物質が挙げられる。フミン物質は、植物などの微生物最終分解生成物で土壌と同じ褐色のフミン酸やフルボ酸等からなり、これらは直鎖炭化水素と多環芳香族化合物の分子量数千から一万程度の難分解性高分子化合物である。フミン酸の多くは凝集沈殿・急速ろ過する浄水処理法で除去できるが、フルボ酸等は除去できず、殺菌・消毒処理に添加した塩素と化学反応し、有害なトリハロメタン、VOC(揮発性有機化合物:クロロホルムや、ブロモジクロロメタン、ジブロモクロロメタン、ブロモホルム等)やアルデヒド類を生成する場合があり、その有効な除去・処理法が求められてきた。
【0004】
フミン物質は、従来、オゾン又は紫外線照射による酸化分解後、活性炭により吸着することにより除去していた。しかしながら、この除去方法では、大型の施設、設備が必要なためコストがかかるという問題があった。
【0005】
そこで、超音波により水中のフミン質を物理的に分解して、フミン質およびフミン質分解生成物の除去を行う方法が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1の除去方法では、超音波照射のみで簡便にフミン酸の沈殿固形物を得ることができるが、濃度20mg/lのフミン酸水溶液1720mlのフミン酸を96.1%除去するために、周波数200kHz,出力300Wの超音波を2時間照射し、照射後24時間静置を要している。すなわち、電力利用効率に問題があり、大規模化することが困難であった。
【0006】
前記二者とは別に、表面が針状結晶化しているヒドロキシアパタイトシリカ複合多孔質体からなるフミン物質吸着剤が提案されている(特許文献2参照)。特許文献2のフミン物質吸着剤は、フミン物質の吸着に適した数〜十数nmの細孔を多くもち細孔容積が大きいので、フミン物質構成分子の分子量の高低を問わず、速い吸着速度かつ大吸着容量で吸着することができる。しかしながら、このフミン物質吸着剤は、製造工程、特に針状結晶化の過程において、厳しい原料の品質と工程の管理が求められ、高コストになることが問題となっていた。
【0007】
以上のように、フミン物質の除去・処理に当たり、フミン物質を低コストで且つ高い効率で分解処理できる手段の獲得が求められていて、その一つに高い有効性をもつ分解触媒の開発が挙げられる。
【0008】
また、フミン物質のような難分解性物質の処理分野だけではなく、汚水処理・水質浄化、排水・排煙処理、医療分野等の広範囲な分野において、液体以外の形態の高効率酸化触媒が求められている。
【0009】
一方、本発明者らは、先に、粒径数nm〜約500nmのオーステナイト綱のナノ粒子が比較的容易に製造でき、粒径300nm大の同ナノ粒子は母材と同様な組成を有する粒子であることを報告した(特許文献3参照)。しかしながら、導電材料以外の用途については言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−336852号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】特開2007−296464号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献3】WO2008/099618(実施例)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこのような事情に鑑み、低コストで抗酸化特性に優れたステンレスナノボールから成る、大表面積吸着剤などとして使用できる機能性ステンレスナノボール及び高効率の酸化触媒などとして使用できるステンレスナノボール触媒を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、粒径が20nm以下のステンレス微粒子からなることを特徴とする機能性ステンレスナノボールにある。
【0013】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載のステンレスナノボールにおいて、前記ステンレス微粒子は結晶性を有することを特徴とする機能性ステンレスナノボールにある。
【0014】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様に記載の機能性ステンレスナノボールにおいて、前記ステンレス微粒子は酸化被膜を有していないことを特徴とする機能性ステンレスナノボールにある。
【0015】
本発明の第4の態様は、第1〜3のいずれか一つの態様に記載の機能性ステンレスナノボールにおいて、液中放電プラズマ法によりステンレス鋼からなる陰極を溶解させて形成されたものであることを特徴とする機能性ステンレスナノボールにある。
【0016】
本発明の第5の態様は、第1〜4のいずれか一つの態様に記載の機能性ステンレスナノボールにおいて、前記ステンレス微粒子は、陽極とオーステナイトステンレス鋼を含むステンレス鋼からなる陰極とを導電性液体中に配置し、前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加して前記陰極近傍にプラズマを発生させ、前記陰極を局所的に融解させた後に再凝固することにより形成したものであることを特徴とする機能性ステンレスナノボールにある。
【0017】
本発明の第6の態様は、第1〜5のいずれか一つの態様に記載の機能性ステンレスナノボールにおいて、前記ステンレスナノボールは、元素組成比の異なる複数のステンレス微粒子からなることを特徴とする機能性ステンレスナノボールにある。
【0018】
本発明の第7の態様は、第1〜6のいずれか一つの態様に記載のステンレスナノボールにおいて、前記ステンレス微粒子は真球であることを特徴とする機能性ステンレスナノボールにある。
【0019】
本発明の第8の態様は、液中放電プラズマ法によりステンレス鋼からなる陰極を溶解させて形成されたステンレス微粒子からなり、且つ粒径が20nm以下で酸化被膜を有さないステンレス微粒子と粒径が20nm以上のステンレス微粒子との混合物からなることを特徴とするステンレスナノボール触媒にある。
【0020】
本発明の第9の態様は、第8の態様に記載のステンレスナノボール触媒において、前記ステンレス微粒子が結晶性を有することを特徴とするステンレスナノボール触媒にある。
【0021】
本発明の第10の態様は、第8又は9の態様に記載のステンレスナノボール触媒において、前記ステンレス微粒子は、陽極とオーステナイトステンレス鋼を含むステンレス鋼からなる陰極とを導電性液体中に配置し、前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加して前記陰極近傍にプラズマを発生させ、前記陰極を局所的に融解させた後に再凝固することにより形成したものであることを特徴とするステンレスナノボール触媒にある。
【0022】
本発明の第11の態様は、第8〜10のいずれか一つの態様に記載のステンレスナノボール触媒において、前記ステンレス微粒子は真球であることを特徴とするステンレスナノボール触媒にある。
【0023】
本発明の第12の態様は、第8〜11のいずれか一つの態様に記載のステンレスナノボール触媒において、酸化触媒として機能することを特徴とするステンレスナノボール触媒にある。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、低コストで抗酸化特性などに優れ、また、大表面積吸着剤などとして使用できる機能性ステンレスナノボール及び高効率の酸化触媒などとして使用できるステンレスナノボール触媒を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ステンレス微粒子の製造装置を模式的に示す図である。
【図2】ステンレス微粒子の製造過程における電圧と電流の関係を示す図である。
【図3】ステンレス微粒子の製造の際の電流、電圧、浴液温度の時間依存性を示す図である。
【図4】ステンレスナノボールの5nm以上の粒径分布を示す図である。
【図5】ステンレスナノボールのTEM像を示す写真である。
【図6】ステンレスナノボールの電子線回折パターンの写真である。
【図7】ステンレスナノボール全体の透過型電子顕微鏡−エネルギー分散型スペクトル(TEM−EDS)分析による構成元素スペクトルの図である。
【図8】ステンレス微粒子内の透過型電子顕微鏡-エネルギー分散型スペクトル(TEM−EDS)分析による各元素の濃度マップの写真である。
【図9】異なる母材から生成したステンレス微粒子の組成分析の結果を示す。
【図10】試験例1の結果を示す図である。
【図11】試験例2の結果を示す図である。
【図12】フミン物質を含む汚水に対し、本発明の触媒を酸性度の制御によるフミン質の成分分離と組合せて用いる場合に想定される処理工程例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明にかかる機能性ステンレスナノボールは、粒径が20nm以下、好ましくは、10nm以下(シングルナノ)のほぼ真球状のステンレス微粒子からなるものである。本発明でステンレス微粒子とは、ステンレス鋼と同一又は類似の組成を有するステンレス綱様微粒子をいう。すなわち、本発明の機能性ステンレスナノボールは、ステンレス鋼を母材として作られ、粒径が20nm以下のステンレス鋼様微粒子(本件では、ステンレス鋼様微粒子をステンレス微粒子と記す)からなるものである。
【0027】
また、本発明のシングルナノ、又は実質的にシングルナノサイズのステンレス微粒子は、例えば、数十、数百ナノサイズのステンレス微粒子とは異なり、酸化被膜を有さず、表面活性が非常に高いものである。すなわち、20nm以下のステンレス微粒子では、通常のステンレス表面では一般的に認められる1〜2nm以下の極薄の不働態層がナノ効果により形成されず、すなわち、表面に酸化物層が固定的に形成されない状態が保たれている。かかる効果により表面活性が非常に高い。かかる機能性ステンレスナノボールは、詳細は後述するように、特に、液中放電プラズマ法によりステンレス鋼からなる陰極を溶解させて形成されたものである。
【0028】
また、本発明のステンレスナノボール触媒は、液中放電プラズマ法によりステンレス鋼からなる陰極を溶解させて形成され、且つ粒径が20nm以下で酸化被膜を有さないステンレス微粒子と粒径が20nm以上のステンレス微粒子とからなり、有機物等の酸化触媒として機能することが知見された。
【0029】
本発明は、このような新たな知見に基づいて完成されたものである。
【0030】
このような本発明の粒径が20nm以下、好ましくは、10nm以下(シングルナノ)のほぼ真球状のステンレスナノボールは、真球状で酸化被膜を有さず、表面活性が高いので、種々の用途に使用できる。これらを混合物成分として一部または全て含むステンレスナノボールは、例えば、酸化触媒、還元触媒、環境触媒、環境光触媒などの機能性触媒もしくは酸化触媒の担持金属として使用できる可能性がある。
【0031】
本発明の機能性ステンレスナノボールであるステンレス微粒子の製造方法の一例を以下に説明する。
【0032】
機能性ステンレスナノボールとなるステンレス微粒子は、例えば、陽極とステンレス鋼からなる陰極とを導電性液体中に配置し、陽極と陰極との間に電圧を印加して陰極近傍にプラズマを発生させ、陰極を局所的に融解させた後に再凝固することにより形成することができる。具体的には、対電極(陽極と陰極)に電圧を印加し、陰極の周りの導電性液体の温度を沸点以上に上昇させてガス化させ、陰極の近傍、すなわち陰極の周りに生じたガス相にプラズマを発生させ、陰極のステンレス微粒子の材料であるステンレス鋼を局所的に融解させ、融解した材料を再凝固させることによって、微粒子を形成する。
【0033】
陰極周辺のガス相においてプラズマが発生すると、電極/溶液界面での電流集中現象が起こる。そのため、陰極を構成する材料の表面の温度が、局所的にその材料の融点を超え、材料を局所的に融解する。融解して液滴状態で陰極表面から遊離した材料は、表面張力によって、例えば、真球状微粒子(ナノボール)となる。その後、融解した材料が、プラズマ・中性気体および周辺の導電性液体によって冷却されて再凝固し、微粒子が生成される。
【0034】
このとき、後述のように陰極近傍に磁場を印加することにより、フルプラズマを起こりやすくし、集中電流現象を促進させてもよい。
【0035】
電圧の印加により、陰極表面での電力損失によって電極温度が上昇し、陰極周りの導電性液体が沸点以上に上昇してガス化されるが、好ましくは、陰極の周りにシース(さや)状のガス相を発生させる。ガス相を発生させるには、少なくとも陰極近傍の溶液温度が沸点を超えればよい。また、陰極近傍の溶液温度が沸点を超えやすいように、溶液全体の温度を高めに設定しておいてもよい。
【0036】
発生したガス相でグロー放電が生じて、プラズマが発生する。すなわち、ここでいうプラズマはグロー放電プラズマである。プラズマからの発光を観察することにより、プラズマが発生したかどうかを確認すればよい。
【0037】
生成された微粒子を回収する方法は特に限定されないが、例えば、陰極の長軸を軸として導電性液体を回流し、一定の粒径(重量)を持つ微粒子を装置の底部に沈殿させ、沈殿した微粒子を回収してもよい。
【0038】
陽極から陰極に流れる電流に直交する成分を有する磁場を印加すれば、ローレンツ力により、セル内に回流を生じさせることができる。
【0039】
ここで、導電性液体の溶媒は、電解質物質を溶かしうる液体であればよく、特に限定されないが、例えば、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、炭酸ジメチル等の有機溶媒や、水、イオン性液体などが挙げられる。また、導電性液体は、電解質を溶質として含む電解水溶液であってもよく、導電性を有する溶融塩であってもよい。電解質は、中性、アルカリ性、酸性いずれであってもよく、アルカリ性の電解質としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどの炭酸塩が挙げられる。
【0040】
導電性液体の温度は、液体が全面的に気体化するような沸点よりも高い温度以下であればよいが、常温程度であってもよい。導電性液体の温度が常温程度であれば、陰極から溶融したステンレスが再凝固しやすく、一方、比較的温度が高い場合、陰極の周辺にガス相を発生させやすい。導電性液体が電解水溶液の場合は、導電性液体の温度は、大気圧下で70〜90℃程度であるのが好ましく、加圧環境下では100℃を超えていてもよい。
【0041】
陰極に用いるステンレス鋼は、ステンレス微粒子の原料となるものであり、製造したいステンレス微粒子に合わせて、組成は適宜選択する。陰極の形状は特に限定されないが、平均電界の一様性の観点から、高い対称性を有するのが好ましく、円柱状、円筒状、球状であるのが好ましい。
【0042】
陽極の材料は特に限定されず、通電していない状態において導電性液体中で安定であればよく、例えば、プラチナが挙げられる。陽極の表面積は、陰極の表面積に対して、25〜1000倍であるのが好ましい。これにより、陰極の周囲で一様な電界を発生させることができ、また、陰極近傍に電圧低下、電力損失及び温度上昇を集中させることができる。陽極の表面積を高めるには、例えば、陽極の大きさを大きくしたり、陽極を、陰極を取り囲む網目電極としたりすればよい。
【0043】
上述した陽極と陰極は、導電性液体中に互いに接触することなく配置する。陽極及び陰極間には導電性液体のみが存在するのが好ましい。陰極の周囲を均等に囲むように、同心円的に陽極を配置することが好ましいが、陰極が陽極に囲まれていなくてもよい。
【0044】
陽極と陰極との距離は、電圧の印加により陰極表面近傍で安定なグロー放電が生じてプラズマが発生し、且つ陽極と陰極とが高電流密度の放電ロで直接つながってアーク放電が生じることがないように、適宜調整する。陽極と陰極との距離は、例えば、20〜1000mmである。
【0045】
印加する電圧は、陰極の近傍でプラズマを発生させ得る電圧であればよいが、導電性液体が電解水溶液である場合は、16V〜1000V、好ましくは80V〜1000V、より好ましくは140V〜300Vである。電圧が低すぎると、陰極近傍でプラズマが発生せず、水の電気分解だけが生起し、ステンレス微粒子が得られない。140V以上であれば、電極全面からプラズマ発光が生じる完全プラズマ領域であり、電極の材質やサイズ、導電性液体の成分や濃度などにほとんど依存することなく、プラズマを発生させることができる。また、電圧が高すぎると、陽極及び陰極間にアーク放電が生起するため、所望のステンレス微粒子が得られない。
【0046】
印加する電圧を制御することにより、ステンレス微粒子の大きさを調整することができる。印加する電圧を上げると、ステンレス微粒子の大きさを小さくすることができる。
【0047】
また、陰極近傍には、磁場を印加してもよい。陰極近傍に印加された磁場は、陰極の一部の近傍で発生したプラズマ(部分プラズマ)を、陰極の全体を覆うプラズマ(フルプラズマ)に成長させることができる。陰極近傍に磁場を印加することにより、部分プラズマがフルプラズマになるまでの時間を短くすることができる。
【0048】
なお、フルプラズマが生じると、陰極表面での電流集中現象が部分プラズマより卓越して出現する。電流集中現象とは、プラズマ中を流れる電流が陰極表面の多箇所において一様な流れから間欠的に局所集中的な流れに変ずる常圧弱電離プラズマ特有の現象である。電流集中現象により、電極表面が融解されてステンレス微粒子が形成される。すなわち、磁場を印加することで、電流集中現象が生じ易くなり、印加する電圧を低くすることができ、低コストでステンレス微粒子を製造することができる。
【0049】
陰極近傍に印加された磁場は、プラズマの発生および成長を制御することができるので、プラズマによる水素ガスの生成プロセスも制御することができる。
【0050】
一方、陰極近傍に印加された磁場は、電子挙動を妨害し、プラズマの発生を妨害することがあるので、磁場の印加は、プラズマが発生した後に行うことがより好ましい。
【0051】
上述の通り陰極近傍に印加された磁場は、陽極から陰極に向かって流れる電流と直交する成分を有することが好ましい。部分プラズマを、陰極全体を覆うフルプラズマに成長させやすいからである。電流と直交する成分を有する磁場を印加すると、磁場の方向に直角な向きの熱流束の発生が抑えられるので、陰極近傍で発生した熱が拡散しにくくなり、プラズマが陰極を覆いやすくなる。また、プラズマの温度が上昇することによりプラズマが安定して維持される。具体的には、印加する磁場は陰極の長軸方向に平行な成分を有することが好ましい。さらに好ましくは、印加する磁場は、陰極の表面に平行な成分を有する。また、陰極近傍に印加された磁場の磁束密度(強度)は0.05テスラ(500ガウス)以上であることが好ましい。
【0052】
陰極近傍に磁場を印加する手段は特に限定されないが、例えば電磁石を用いて発生させればよい。電磁石としては、例えば、ヘルツホルムコイルが挙げられる。また、陰極の近傍に透磁率の高い磁性金属を配置して、磁場を局部的に強くしてもよい。磁性金属としては、例えば、フェライトが挙げられる。
【0053】
陰極近傍に印加される磁場の磁束密度(強度)は、1テスラ以上であってもよい。印加される磁場の強度が1テスラ以上であると、ホール効果により、電流集中現象が微細化される。電流集中現象が微細化されるとは、電流集中現象が時間的により頻繁に、空間的により密に起きることを意味する。電流集中現象が微細化されることで、より微小なステンレス微粒子を大量に製造することができる。
【0054】
ステンレス微粒子の形状、大きさ(直径)、その粒径分布、組成、結晶性などの物性は、放電の条件によって変化する。放電の条件には、印加する電圧、電流の大きさ、これらの変動、放電時間、導電性液体の種類、導電性液体の濃度、導電性液体の温度、電極を構成する元素組成、電極形状、電極の初期表面粗さ、電極温度、電極材料中の不純物または添加元素の種類や濃度が挙げられる。例えば、印加する電圧を上げると、ステンレス微粒子の大きさを小さくすることができる。 このように、放電の条件をすることによって、ステンレス微粒子の形状、大きさ(直径)、その粒径分布、組成、結晶性などの物性を制御すればよい。
【0055】
また、ステンレス微粒子の物性は、陰極近傍に印加する磁場の向き、強度および分布によっても制御できる。例えば、磁場以外の放電の条件が一定である場合、印加する磁場の強度を強くすると(磁束密度を増大させると)電流集中現象が促進され、より粒径の小さい微粒子を多く製造することができる。また、陰極材料が鉄などの強磁性体である場合、陰極近傍に磁場を印加して製造された微粒子は、磁性を保持した微粒子となりうる。また、磁場を印加することで、微粒子の粒度分布を制御することができる。
【0056】
ステンレス微粒子の形状を制御するには、電流集中の成長率を高めればよい。電流集中の成長率を高めるには、陰極から熱が逃げることを防止したり、印加する電圧および磁場の強度を上げたりすればよい。陰極から熱が逃げることを防止するには、陰極の形状や物性などを適宜選択したり、陰極と陰極リードとの接続方法を適宜選択したりすればよい。印加する電圧を上げることで、電子の温度(エネルギー)を高めることができ、電流集中の成長率を高めることができる。また、印加する磁場の強度を上げることで、ホール効果により電流集中の成長率を高めることができる。
【0057】
上述のように製造されたステンレス微粒子の粒径は放電の条件によって変化し、1〜1000nmの間で分布するが、粒径が大きなものを除去して粒径が20nm以下、好ましくは10nm以下のステンレス微粒子を分級して本発明の機能性ステンレスナノボールとする。なお、微粒子の粒径は、例えば微粒子のSEM写真を用いて測定された微粒子の面積から面積相当径を算出することで得られる。
【0058】
粒径20nm以下、好ましくは10nm以下のステンレス微粒子を分級する方法としては、沈殿法によって比較的大きな粒子を除去した後、例えば、シリンジフィルターで分級し、さらに、ビバスピンなどの遠心濃縮を行うことにより、本発明の機能性ステンレスナノボールとすることができる。
【0059】
このように製造される機能性ステンレスナノボールは、特に、球状化処理などの後処理をすることなく、実質的に真球(ナノボール)であるという特徴を有する。ここで、真球とは粒子の断面において1の方向の直径と、その1の方向と直交する他の方向の直径との比が95%〜105%以内、より好ましくは、98%〜102%以内の範囲にあることを意味する。
【0060】
上述した方法によれば、安定に制御した状態で、且つ短時間に大量の機能性ステンレスナノボールを低コストで製造することができる。
【0061】
また、上述した方法によれば、後処理をすることなく、球状で且つ粒径が1〜1000nmのステンレス微粒子を得ることができる。また、得られるステンレス微粒子のうち粒径がおよそ20nm以下のものは、酸化被膜を有していないものである。このステンレス微粒子は、酸化被膜がない状態で母材が有していたステンレス鋼としての耐酸化特性を有するものである。
【0062】
また、本発明のステンレスナノボール触媒は、上述したような液中放電プラズマ法によりステンレス鋼からなる陰極を溶解させて形成されたステンレス微粒子を特に分級せず、粒径が20nm以下で酸化被膜を有さないステンレス微粒子を含むと共に粒径が20nmを越えるものも含むものである。すなわち、本発明のステンレスナノボール触媒は、液中放電プラズマ法により、粒径が20nm以下の微粒子が含有されるような条件下で製造されたステンレス微粒子であり、粒径が20nm以下で酸化被膜を有さないステンレス微粒子と、粒径が20nmを越えるステンレス微粒子との混合物である。
【0063】
さらに、上述した液中プラズマ放電法によれば、元素組成比の異なる複数の陰極を用いることにより、元素組成比の異なる複数の機能性ステンレスナノボールまたはステンレスナノボール触媒を同時に得ることができる。元素組成比の異なる複数のステンレス微粒子からなる機能性ステンレスナノボール及びステンレスナノボール触媒は、さらに優れた機能を有するものと期待できる。
【0064】
本発明の機能性ステンレスナノボール及びステンレスナノボール触媒は、汚水処理・水質浄化、排水・排煙処理、環境、バイオテクノロジー、バイオマス利用、医療などの各分野において好適に用いることができる。
【0065】
本発明のステンレスナノボール触媒は、難分解性有機物質の分解触媒、例えば、フミン物質の分解触媒として使用することができる。かかるフミン物質分解触媒は、高い効率でフミン物質を分解処理することができる。フミン物質は、フミン酸やフルボ酸等からなり、これらは直鎖炭化水素と多環芳香族化合物の分子量数千から一万程度の難分解性高分子化合物である。このフミン物質は、腐植物、土壌、湖沼、天然水、泥炭、石炭、海洋堆積物等にも含まれ、有害または非有効活用物質とされてきたものである。
【0066】
ここで、図12を用いて、本発明のステンレスナノボール触媒をフミン物質分解触媒として用いた場合のフミン物質の分解処理工程の一例について説明する。
【0067】
まず、フミン物質を含む水溶液である汚水に酸性水を添加することにより(S1)、酸性状態となり(S2)、フミン酸物質が沈殿する(S3)。水溶液には非沈殿水溶性物質であるフルボ酸が残存した状態となる(S5)。
【0068】
この水溶液に対し、フミン物質分解触媒を添加・攪拌することにより、フミン物質分解触媒がフルボ酸を分解する。すなわち、フミン物質分解触媒がフルボ酸の自発分解を触媒する。これにより、分解物である糖、セルロールなどが溶解物質として生成し、フルボ酸物質が沈殿する。
【0069】
以上の方法により、水溶液からフミン物質が除去される。なお、沈殿したフミン酸物質は、乾燥固化後に廃棄又は化学工業の原料物質として活用される(S4)。また、沈殿したフルボ酸分質は、廃棄又は産業原料物質として活用される(S6)。
【0070】
このように、フミン物質を含む難分解性物質水溶液に対し、フミン物質分解触媒を添加・攪拌するのみで高い効率でフミン物質を分解処理することができる。
【0071】
なお、フミン物質分解触媒の使用方法は、上述したものに限定されず、例えば、フミン物質分解触媒を付着させた膜に、フミン物質を含む難分解性物質水溶液を通すことにより、フミン物質を分解処理してもよい。このとき、光照射を行うと分解触媒効果が促進される。
【0072】
本発明のステンレスナノボール触媒をフミン物質分解触媒として用いることにより、比較的簡単な装置構成でフミン物質の処理システムを実現することができる。すなわち、本発明のフミン物質分解触媒によれば、低コストでフミン物質を分解することができる。また、フミン物質の処理システムの大規模化に好適である。
【実施例】
【0073】
(実施例1)
図1は、ステンレス微粒子の製造装置を模式的に示す図である。図1に示すように、ステンレス微粒子の製造装置は、導電性液体を収容するためのセル1、セル1内に配置された互いに非接触の対電極(陰極2と陽極3)、対電極に電圧を印加する直流電源を備えるものである。この装置は、主に電気絶縁体から成るセル被覆部4を有し、セル被覆部4には水素ガスなどの生体気体を排気や給水を行なう開口部5が設けられている。また、導電性液体の温度を維持する手段すなわち制御機構を持つ加熱または冷却手段(熱電対6)と温度センサーが設けられている。なお、陰極2として、ステンレス細線(オーステナイトステンレス鋼:SUS316、直径1.0mm,長さ15〜20mm,電極表面積0.5cm2)を用いた。なお、金属細線の放電部以外の部分はテフロン(登録商標)で被覆した。また、陽極3として、網状の白金電極(50×100mm)を用いた。
【0074】
まず、ガラス製のセル1に炭酸カリウムK2CO3水溶液(0.005mol%−0.5mol%)を400cc収容した後、水溶液中の液面から100mm以内の深さに、対電極を配置する。なお、本実施形態では、炭酸カリウムK2CO3水溶液(0.01mol%)を用い、陽極と陰極の間の距離を50mmとした。
【0075】
その後、電圧を100〜250Vとし、放電時間を30〜70分として、陰極放電電解を行う。なお、本実施形態では、直流電圧180〜200Vとし、放電時間を30分とした。これにより、陰極表面での電力損失により、電極温度が上昇して溶液沸点を超え、陰極/溶液界面に水蒸気を含むガス相がシース状に形成された。セル電圧が十分高いので、ガス相内部でグロー放電が生起した(放電は陰極の近傍においてのみ確認された)。なお、図2に、これらの過程の電圧と電流の関係、図3に、ステンレス微粒子の製造の際の電流、電圧、浴液温度の時間依存性を示す。
【0076】
陰極グロー放電プラズマの持続的形成後、陰極と溶液界面間のシース状プラズマ中での電流集中現象により、陰極表面の局所温度がSUS316Lの融点(1,371〜1,400℃)を超えるために、局所的な融解が生じてその一部が水溶液中に飛び出し、熔融物が表面張力によって真球状に整形された後、急冷され、真球状の超微粒子、すなわち、ステンレス微粒子が得られた。これを以下の試験例で使用するステンレスナノボール触媒とする。
【0077】
また、この浴液から粒径20nm以下のステンレス微粒子を分級し、分級された機能性ステンレスナノボールを得た。具体的には、浴液の上澄み液から100nmのシリンジフィルター(sartorius社製)で前分級し、さらに、10nmのビバスピン(sartorius社製)を用いて分級し、機能性ステンレスナノボール水溶液を得た。
【0078】
(試験例1)
製造後に分級された機能性ステンレスナノボール及びステンレスナノボール触媒(以下、一括してSUSナノボールともいう)の平均粒度分布と粒子総体積を測定した。図4にレーザー粒度計により測定したステンレス微粒子の粒径分布の一例を示す。
【0079】
また、機能性ステンレスナノボールを透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果を図5に示す。これは比較し易いように、分級前のステンレス微粒子を用い、粒径が約20nmのものと、粒径が数十nmのものとを同時に観察したものである。この結果より、粒径が20nmのSUSナノボールは、酸化被膜がないが、粒径がそれより大きいと酸化被膜が観察されることがわかった。すなわち、得られたSUSナノボールは、表面が酸化されていないものであった。一般に、ステンレス微粒子は粒径が小さくなるほどその表面積:体積の比の値が大きくなり、表面が酸化されやすいと考えられていたが、生成したSUSナノボールの表面にはそのような酸化物被膜は形成されていないものであった。これにより、SUSナノボールは表面の活性が非常に高く、種々の用途に使用できる機能性材料であることが推察された。
【0080】
図6はSUSナノボールの電子線回折像である。図6では、図の左半分がステンレス微粒子の原料である陰極材の結晶構造に由来する回折パターンの理論値を示しており、右半分がSUSナノボールの実際の測定値を示しているが、図から明らかなように、SUSナノボールの測定値は、SUSナノボールの材質の理論値とほぼ対応している。これより、SUSナノボールが結晶性を有することがわかった。
【0081】
本発明のSUSナノボールの組成分析結果を図7〜図9に示す。
【0082】
図7は、ステンレス微粒子全体の透過型電子顕微鏡-エネルギー分散型スペクトル(TEM−EDS)分析による構成元素スペクトルである。図7における横軸は、特性X線のエネルギーをkeV単位で示している。酸素元素が検出されておらず、SUSナノボールそのものが酸化していないことがわかった。
【0083】
図8は、SUSナノボール内の透過型電子顕微鏡-エネルギー分散型スペクトル(TEM−EDS)分析による各元素の濃度マップである。図8は、それぞれの原子の特性X線による各元素の分布を示している。CrK、MnK、FeK、NiKおよびMoKでは、それぞれの原子において外殻軌道から電子がK殻に落ちる際に発生する特性X線による各元素の分布を示している。FeLでは、鉄原子において外殻軌道から電子がL殻に落ちる際に発生する特性X線によるFeの分布を示している。図8より各元素は微粒子内に濃密に存在することが認められる。
【0084】
また、表1にステンレス微粒子の元素組成比を示す。a〜dは、図8Greyに示されたものである。
【0085】
【表1】
【0086】
表1より、母材のSUS316L(Cr16−18%,Ni10−14%,Mn0−2%,Mo2−3%,Fe-bal.)の近傍組成を有する5元系ステンレス微粒子が生成できたことがわかる。
【0087】
図9に、母材であるSUS316Lに予め加熱アニール処理を加え材料組織・組成分布を一様にする場合と、アニール処理を行わなかった場合のそれぞれにつき、生成したステンレス微粒子の組成を調べ比較した結果を示す。両者に明確な違いは認められず、母材状態には大きく影響されずにSUSナノボールを得ることができることがわかった。
【0088】
(応用例)
以下、本発明のSUSナノボールを触媒として用いる実施例を示す。
【0089】
(比較例1)
炭酸カリウム水溶液に実施例1と同様の方法により得たFeナノボールを添加して、Fe微粒子水溶液を得た。
【0090】
(比較例2)
炭酸カリウム水溶液に実施例1と同様の方法により得たNiナノボールを添加して、Ni微粒子水溶液を得た。
【0091】
(比較例3)
炭酸カリウム水溶液に実施例1と同様の方法により得たCrナノボールを添加して、Cr微粒子水溶液を得た。
【0092】
(試験例2)
フミン物質を含む土壌抽出液に、実施例1のうち分級を行っていない水溶液及び比較例1〜3のうち分級を行っていない水溶液を中和後、それぞれ添加した。その後、溶液添加前後の土壌抽出液の吸光度変化を調べた。結果を図10に示す。
【0093】
図10に示すように、ステンレス微粒子水溶液の添加前後で、吸光度がすべての波長にわたって低下した。これに対し、比較例1〜3の水溶液を添加しても吸光度に変化は見られなかった。これにより、分級されていないステンレスナノボール触媒を含むステンレス微粒子水溶液を添加した場合のみに、土壌抽出液の透明度が明らかに改善されることが確認できた。
【0094】
(実施例2)
上記実施例1の炭酸カリウムK2CO3水溶液をクエン酸ナトリウム水溶液に代え、他は同じ条件・方法により製造したステンレス微粒子を分級せずに、ステンレスナノボール触媒に使われる水溶液を得た。
【0095】
(試験例3)
フミン物質を含む土壌抽出液に、実施例2の水溶液を添加し、添加前後の硝酸イオン(NO3−)、亜硝酸イオン(NO2−)を測定した。結果を図11に示す。
【0096】
図11に示すように実施例2の水溶液添加前の土壌抽出液からは、硝酸イオン(NO3−)及び亜硝酸イオン(NO2−)のいずれも検出されなかったが、実施例2の水溶液添加後の混合液から硝酸イオン(NO3−)が検出された。土壌抽出液のアンモニア化合物、有機窒素化合物が酸化(分解)されて硝酸イオンになったと考えられる。すなわち、ステンレス微粒子が酸化触媒として機能し、フミン物質の分解を促したことがわかった。
【0097】
以上のことから、粒径が20nmを越えるステンレスナノボールと、本発明のシングルナノ、又は実質的にシングルナノサイズのステンレスナノボールとの混合物からなるステンレスナノボール触媒は、フミン物質を分解し(自発分解を触媒し)フミン物質濃度を低下させたことがわかった。すなわち、ステンレスナノボール触媒は、その機能特性の一つである触媒効果として、フミン物質等に対する酸化触媒機能を有することが確認された。
【符号の説明】
【0098】
1 セル
2 陰極
3 陽極
4 セル被覆部
5 開口部
6 熱電対
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚水処理・水質浄化、排水・排煙処理、環境、バイオテクノロジー、バイオマス利用、医療などの各種分野において用いることができる機能性ステンレスナノボール及びステンレスナノボール触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
金属のナノ粒子とりわけ高真球度を有するナノボールに対し、例えば高光反射能などの特別な機能を持たせて機能性微粒子として利用するに当たり、金属ナノ粒子表面が酸化されて酸化被膜が形成され易くそれが障害となり機能性微粒子としての有効性に問題があった。この問題を解決するために、有効な酸化防止法、酸化防止剤を見出すか或いは根本的な解決策として酸化しない金属ナノ粒子を開発し、大きな体積対表面積比やナノ効果を最大限に活かした機能性微粒子とすることが求められている。
【0003】
一方、近年、池、湖沼の水や水道水に利用される原水等の水質の汚染・汚濁が問題となっている。この水質汚濁の主な原因物質としてフミン物質が挙げられる。フミン物質は、植物などの微生物最終分解生成物で土壌と同じ褐色のフミン酸やフルボ酸等からなり、これらは直鎖炭化水素と多環芳香族化合物の分子量数千から一万程度の難分解性高分子化合物である。フミン酸の多くは凝集沈殿・急速ろ過する浄水処理法で除去できるが、フルボ酸等は除去できず、殺菌・消毒処理に添加した塩素と化学反応し、有害なトリハロメタン、VOC(揮発性有機化合物:クロロホルムや、ブロモジクロロメタン、ジブロモクロロメタン、ブロモホルム等)やアルデヒド類を生成する場合があり、その有効な除去・処理法が求められてきた。
【0004】
フミン物質は、従来、オゾン又は紫外線照射による酸化分解後、活性炭により吸着することにより除去していた。しかしながら、この除去方法では、大型の施設、設備が必要なためコストがかかるという問題があった。
【0005】
そこで、超音波により水中のフミン質を物理的に分解して、フミン質およびフミン質分解生成物の除去を行う方法が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1の除去方法では、超音波照射のみで簡便にフミン酸の沈殿固形物を得ることができるが、濃度20mg/lのフミン酸水溶液1720mlのフミン酸を96.1%除去するために、周波数200kHz,出力300Wの超音波を2時間照射し、照射後24時間静置を要している。すなわち、電力利用効率に問題があり、大規模化することが困難であった。
【0006】
前記二者とは別に、表面が針状結晶化しているヒドロキシアパタイトシリカ複合多孔質体からなるフミン物質吸着剤が提案されている(特許文献2参照)。特許文献2のフミン物質吸着剤は、フミン物質の吸着に適した数〜十数nmの細孔を多くもち細孔容積が大きいので、フミン物質構成分子の分子量の高低を問わず、速い吸着速度かつ大吸着容量で吸着することができる。しかしながら、このフミン物質吸着剤は、製造工程、特に針状結晶化の過程において、厳しい原料の品質と工程の管理が求められ、高コストになることが問題となっていた。
【0007】
以上のように、フミン物質の除去・処理に当たり、フミン物質を低コストで且つ高い効率で分解処理できる手段の獲得が求められていて、その一つに高い有効性をもつ分解触媒の開発が挙げられる。
【0008】
また、フミン物質のような難分解性物質の処理分野だけではなく、汚水処理・水質浄化、排水・排煙処理、医療分野等の広範囲な分野において、液体以外の形態の高効率酸化触媒が求められている。
【0009】
一方、本発明者らは、先に、粒径数nm〜約500nmのオーステナイト綱のナノ粒子が比較的容易に製造でき、粒径300nm大の同ナノ粒子は母材と同様な組成を有する粒子であることを報告した(特許文献3参照)。しかしながら、導電材料以外の用途については言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−336852号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】特開2007−296464号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献3】WO2008/099618(実施例)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこのような事情に鑑み、低コストで抗酸化特性に優れたステンレスナノボールから成る、大表面積吸着剤などとして使用できる機能性ステンレスナノボール及び高効率の酸化触媒などとして使用できるステンレスナノボール触媒を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、粒径が20nm以下のステンレス微粒子からなることを特徴とする機能性ステンレスナノボールにある。
【0013】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載のステンレスナノボールにおいて、前記ステンレス微粒子は結晶性を有することを特徴とする機能性ステンレスナノボールにある。
【0014】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様に記載の機能性ステンレスナノボールにおいて、前記ステンレス微粒子は酸化被膜を有していないことを特徴とする機能性ステンレスナノボールにある。
【0015】
本発明の第4の態様は、第1〜3のいずれか一つの態様に記載の機能性ステンレスナノボールにおいて、液中放電プラズマ法によりステンレス鋼からなる陰極を溶解させて形成されたものであることを特徴とする機能性ステンレスナノボールにある。
【0016】
本発明の第5の態様は、第1〜4のいずれか一つの態様に記載の機能性ステンレスナノボールにおいて、前記ステンレス微粒子は、陽極とオーステナイトステンレス鋼を含むステンレス鋼からなる陰極とを導電性液体中に配置し、前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加して前記陰極近傍にプラズマを発生させ、前記陰極を局所的に融解させた後に再凝固することにより形成したものであることを特徴とする機能性ステンレスナノボールにある。
【0017】
本発明の第6の態様は、第1〜5のいずれか一つの態様に記載の機能性ステンレスナノボールにおいて、前記ステンレスナノボールは、元素組成比の異なる複数のステンレス微粒子からなることを特徴とする機能性ステンレスナノボールにある。
【0018】
本発明の第7の態様は、第1〜6のいずれか一つの態様に記載のステンレスナノボールにおいて、前記ステンレス微粒子は真球であることを特徴とする機能性ステンレスナノボールにある。
【0019】
本発明の第8の態様は、液中放電プラズマ法によりステンレス鋼からなる陰極を溶解させて形成されたステンレス微粒子からなり、且つ粒径が20nm以下で酸化被膜を有さないステンレス微粒子と粒径が20nm以上のステンレス微粒子との混合物からなることを特徴とするステンレスナノボール触媒にある。
【0020】
本発明の第9の態様は、第8の態様に記載のステンレスナノボール触媒において、前記ステンレス微粒子が結晶性を有することを特徴とするステンレスナノボール触媒にある。
【0021】
本発明の第10の態様は、第8又は9の態様に記載のステンレスナノボール触媒において、前記ステンレス微粒子は、陽極とオーステナイトステンレス鋼を含むステンレス鋼からなる陰極とを導電性液体中に配置し、前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加して前記陰極近傍にプラズマを発生させ、前記陰極を局所的に融解させた後に再凝固することにより形成したものであることを特徴とするステンレスナノボール触媒にある。
【0022】
本発明の第11の態様は、第8〜10のいずれか一つの態様に記載のステンレスナノボール触媒において、前記ステンレス微粒子は真球であることを特徴とするステンレスナノボール触媒にある。
【0023】
本発明の第12の態様は、第8〜11のいずれか一つの態様に記載のステンレスナノボール触媒において、酸化触媒として機能することを特徴とするステンレスナノボール触媒にある。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、低コストで抗酸化特性などに優れ、また、大表面積吸着剤などとして使用できる機能性ステンレスナノボール及び高効率の酸化触媒などとして使用できるステンレスナノボール触媒を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ステンレス微粒子の製造装置を模式的に示す図である。
【図2】ステンレス微粒子の製造過程における電圧と電流の関係を示す図である。
【図3】ステンレス微粒子の製造の際の電流、電圧、浴液温度の時間依存性を示す図である。
【図4】ステンレスナノボールの5nm以上の粒径分布を示す図である。
【図5】ステンレスナノボールのTEM像を示す写真である。
【図6】ステンレスナノボールの電子線回折パターンの写真である。
【図7】ステンレスナノボール全体の透過型電子顕微鏡−エネルギー分散型スペクトル(TEM−EDS)分析による構成元素スペクトルの図である。
【図8】ステンレス微粒子内の透過型電子顕微鏡-エネルギー分散型スペクトル(TEM−EDS)分析による各元素の濃度マップの写真である。
【図9】異なる母材から生成したステンレス微粒子の組成分析の結果を示す。
【図10】試験例1の結果を示す図である。
【図11】試験例2の結果を示す図である。
【図12】フミン物質を含む汚水に対し、本発明の触媒を酸性度の制御によるフミン質の成分分離と組合せて用いる場合に想定される処理工程例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明にかかる機能性ステンレスナノボールは、粒径が20nm以下、好ましくは、10nm以下(シングルナノ)のほぼ真球状のステンレス微粒子からなるものである。本発明でステンレス微粒子とは、ステンレス鋼と同一又は類似の組成を有するステンレス綱様微粒子をいう。すなわち、本発明の機能性ステンレスナノボールは、ステンレス鋼を母材として作られ、粒径が20nm以下のステンレス鋼様微粒子(本件では、ステンレス鋼様微粒子をステンレス微粒子と記す)からなるものである。
【0027】
また、本発明のシングルナノ、又は実質的にシングルナノサイズのステンレス微粒子は、例えば、数十、数百ナノサイズのステンレス微粒子とは異なり、酸化被膜を有さず、表面活性が非常に高いものである。すなわち、20nm以下のステンレス微粒子では、通常のステンレス表面では一般的に認められる1〜2nm以下の極薄の不働態層がナノ効果により形成されず、すなわち、表面に酸化物層が固定的に形成されない状態が保たれている。かかる効果により表面活性が非常に高い。かかる機能性ステンレスナノボールは、詳細は後述するように、特に、液中放電プラズマ法によりステンレス鋼からなる陰極を溶解させて形成されたものである。
【0028】
また、本発明のステンレスナノボール触媒は、液中放電プラズマ法によりステンレス鋼からなる陰極を溶解させて形成され、且つ粒径が20nm以下で酸化被膜を有さないステンレス微粒子と粒径が20nm以上のステンレス微粒子とからなり、有機物等の酸化触媒として機能することが知見された。
【0029】
本発明は、このような新たな知見に基づいて完成されたものである。
【0030】
このような本発明の粒径が20nm以下、好ましくは、10nm以下(シングルナノ)のほぼ真球状のステンレスナノボールは、真球状で酸化被膜を有さず、表面活性が高いので、種々の用途に使用できる。これらを混合物成分として一部または全て含むステンレスナノボールは、例えば、酸化触媒、還元触媒、環境触媒、環境光触媒などの機能性触媒もしくは酸化触媒の担持金属として使用できる可能性がある。
【0031】
本発明の機能性ステンレスナノボールであるステンレス微粒子の製造方法の一例を以下に説明する。
【0032】
機能性ステンレスナノボールとなるステンレス微粒子は、例えば、陽極とステンレス鋼からなる陰極とを導電性液体中に配置し、陽極と陰極との間に電圧を印加して陰極近傍にプラズマを発生させ、陰極を局所的に融解させた後に再凝固することにより形成することができる。具体的には、対電極(陽極と陰極)に電圧を印加し、陰極の周りの導電性液体の温度を沸点以上に上昇させてガス化させ、陰極の近傍、すなわち陰極の周りに生じたガス相にプラズマを発生させ、陰極のステンレス微粒子の材料であるステンレス鋼を局所的に融解させ、融解した材料を再凝固させることによって、微粒子を形成する。
【0033】
陰極周辺のガス相においてプラズマが発生すると、電極/溶液界面での電流集中現象が起こる。そのため、陰極を構成する材料の表面の温度が、局所的にその材料の融点を超え、材料を局所的に融解する。融解して液滴状態で陰極表面から遊離した材料は、表面張力によって、例えば、真球状微粒子(ナノボール)となる。その後、融解した材料が、プラズマ・中性気体および周辺の導電性液体によって冷却されて再凝固し、微粒子が生成される。
【0034】
このとき、後述のように陰極近傍に磁場を印加することにより、フルプラズマを起こりやすくし、集中電流現象を促進させてもよい。
【0035】
電圧の印加により、陰極表面での電力損失によって電極温度が上昇し、陰極周りの導電性液体が沸点以上に上昇してガス化されるが、好ましくは、陰極の周りにシース(さや)状のガス相を発生させる。ガス相を発生させるには、少なくとも陰極近傍の溶液温度が沸点を超えればよい。また、陰極近傍の溶液温度が沸点を超えやすいように、溶液全体の温度を高めに設定しておいてもよい。
【0036】
発生したガス相でグロー放電が生じて、プラズマが発生する。すなわち、ここでいうプラズマはグロー放電プラズマである。プラズマからの発光を観察することにより、プラズマが発生したかどうかを確認すればよい。
【0037】
生成された微粒子を回収する方法は特に限定されないが、例えば、陰極の長軸を軸として導電性液体を回流し、一定の粒径(重量)を持つ微粒子を装置の底部に沈殿させ、沈殿した微粒子を回収してもよい。
【0038】
陽極から陰極に流れる電流に直交する成分を有する磁場を印加すれば、ローレンツ力により、セル内に回流を生じさせることができる。
【0039】
ここで、導電性液体の溶媒は、電解質物質を溶かしうる液体であればよく、特に限定されないが、例えば、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、炭酸ジメチル等の有機溶媒や、水、イオン性液体などが挙げられる。また、導電性液体は、電解質を溶質として含む電解水溶液であってもよく、導電性を有する溶融塩であってもよい。電解質は、中性、アルカリ性、酸性いずれであってもよく、アルカリ性の電解質としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどの炭酸塩が挙げられる。
【0040】
導電性液体の温度は、液体が全面的に気体化するような沸点よりも高い温度以下であればよいが、常温程度であってもよい。導電性液体の温度が常温程度であれば、陰極から溶融したステンレスが再凝固しやすく、一方、比較的温度が高い場合、陰極の周辺にガス相を発生させやすい。導電性液体が電解水溶液の場合は、導電性液体の温度は、大気圧下で70〜90℃程度であるのが好ましく、加圧環境下では100℃を超えていてもよい。
【0041】
陰極に用いるステンレス鋼は、ステンレス微粒子の原料となるものであり、製造したいステンレス微粒子に合わせて、組成は適宜選択する。陰極の形状は特に限定されないが、平均電界の一様性の観点から、高い対称性を有するのが好ましく、円柱状、円筒状、球状であるのが好ましい。
【0042】
陽極の材料は特に限定されず、通電していない状態において導電性液体中で安定であればよく、例えば、プラチナが挙げられる。陽極の表面積は、陰極の表面積に対して、25〜1000倍であるのが好ましい。これにより、陰極の周囲で一様な電界を発生させることができ、また、陰極近傍に電圧低下、電力損失及び温度上昇を集中させることができる。陽極の表面積を高めるには、例えば、陽極の大きさを大きくしたり、陽極を、陰極を取り囲む網目電極としたりすればよい。
【0043】
上述した陽極と陰極は、導電性液体中に互いに接触することなく配置する。陽極及び陰極間には導電性液体のみが存在するのが好ましい。陰極の周囲を均等に囲むように、同心円的に陽極を配置することが好ましいが、陰極が陽極に囲まれていなくてもよい。
【0044】
陽極と陰極との距離は、電圧の印加により陰極表面近傍で安定なグロー放電が生じてプラズマが発生し、且つ陽極と陰極とが高電流密度の放電ロで直接つながってアーク放電が生じることがないように、適宜調整する。陽極と陰極との距離は、例えば、20〜1000mmである。
【0045】
印加する電圧は、陰極の近傍でプラズマを発生させ得る電圧であればよいが、導電性液体が電解水溶液である場合は、16V〜1000V、好ましくは80V〜1000V、より好ましくは140V〜300Vである。電圧が低すぎると、陰極近傍でプラズマが発生せず、水の電気分解だけが生起し、ステンレス微粒子が得られない。140V以上であれば、電極全面からプラズマ発光が生じる完全プラズマ領域であり、電極の材質やサイズ、導電性液体の成分や濃度などにほとんど依存することなく、プラズマを発生させることができる。また、電圧が高すぎると、陽極及び陰極間にアーク放電が生起するため、所望のステンレス微粒子が得られない。
【0046】
印加する電圧を制御することにより、ステンレス微粒子の大きさを調整することができる。印加する電圧を上げると、ステンレス微粒子の大きさを小さくすることができる。
【0047】
また、陰極近傍には、磁場を印加してもよい。陰極近傍に印加された磁場は、陰極の一部の近傍で発生したプラズマ(部分プラズマ)を、陰極の全体を覆うプラズマ(フルプラズマ)に成長させることができる。陰極近傍に磁場を印加することにより、部分プラズマがフルプラズマになるまでの時間を短くすることができる。
【0048】
なお、フルプラズマが生じると、陰極表面での電流集中現象が部分プラズマより卓越して出現する。電流集中現象とは、プラズマ中を流れる電流が陰極表面の多箇所において一様な流れから間欠的に局所集中的な流れに変ずる常圧弱電離プラズマ特有の現象である。電流集中現象により、電極表面が融解されてステンレス微粒子が形成される。すなわち、磁場を印加することで、電流集中現象が生じ易くなり、印加する電圧を低くすることができ、低コストでステンレス微粒子を製造することができる。
【0049】
陰極近傍に印加された磁場は、プラズマの発生および成長を制御することができるので、プラズマによる水素ガスの生成プロセスも制御することができる。
【0050】
一方、陰極近傍に印加された磁場は、電子挙動を妨害し、プラズマの発生を妨害することがあるので、磁場の印加は、プラズマが発生した後に行うことがより好ましい。
【0051】
上述の通り陰極近傍に印加された磁場は、陽極から陰極に向かって流れる電流と直交する成分を有することが好ましい。部分プラズマを、陰極全体を覆うフルプラズマに成長させやすいからである。電流と直交する成分を有する磁場を印加すると、磁場の方向に直角な向きの熱流束の発生が抑えられるので、陰極近傍で発生した熱が拡散しにくくなり、プラズマが陰極を覆いやすくなる。また、プラズマの温度が上昇することによりプラズマが安定して維持される。具体的には、印加する磁場は陰極の長軸方向に平行な成分を有することが好ましい。さらに好ましくは、印加する磁場は、陰極の表面に平行な成分を有する。また、陰極近傍に印加された磁場の磁束密度(強度)は0.05テスラ(500ガウス)以上であることが好ましい。
【0052】
陰極近傍に磁場を印加する手段は特に限定されないが、例えば電磁石を用いて発生させればよい。電磁石としては、例えば、ヘルツホルムコイルが挙げられる。また、陰極の近傍に透磁率の高い磁性金属を配置して、磁場を局部的に強くしてもよい。磁性金属としては、例えば、フェライトが挙げられる。
【0053】
陰極近傍に印加される磁場の磁束密度(強度)は、1テスラ以上であってもよい。印加される磁場の強度が1テスラ以上であると、ホール効果により、電流集中現象が微細化される。電流集中現象が微細化されるとは、電流集中現象が時間的により頻繁に、空間的により密に起きることを意味する。電流集中現象が微細化されることで、より微小なステンレス微粒子を大量に製造することができる。
【0054】
ステンレス微粒子の形状、大きさ(直径)、その粒径分布、組成、結晶性などの物性は、放電の条件によって変化する。放電の条件には、印加する電圧、電流の大きさ、これらの変動、放電時間、導電性液体の種類、導電性液体の濃度、導電性液体の温度、電極を構成する元素組成、電極形状、電極の初期表面粗さ、電極温度、電極材料中の不純物または添加元素の種類や濃度が挙げられる。例えば、印加する電圧を上げると、ステンレス微粒子の大きさを小さくすることができる。 このように、放電の条件をすることによって、ステンレス微粒子の形状、大きさ(直径)、その粒径分布、組成、結晶性などの物性を制御すればよい。
【0055】
また、ステンレス微粒子の物性は、陰極近傍に印加する磁場の向き、強度および分布によっても制御できる。例えば、磁場以外の放電の条件が一定である場合、印加する磁場の強度を強くすると(磁束密度を増大させると)電流集中現象が促進され、より粒径の小さい微粒子を多く製造することができる。また、陰極材料が鉄などの強磁性体である場合、陰極近傍に磁場を印加して製造された微粒子は、磁性を保持した微粒子となりうる。また、磁場を印加することで、微粒子の粒度分布を制御することができる。
【0056】
ステンレス微粒子の形状を制御するには、電流集中の成長率を高めればよい。電流集中の成長率を高めるには、陰極から熱が逃げることを防止したり、印加する電圧および磁場の強度を上げたりすればよい。陰極から熱が逃げることを防止するには、陰極の形状や物性などを適宜選択したり、陰極と陰極リードとの接続方法を適宜選択したりすればよい。印加する電圧を上げることで、電子の温度(エネルギー)を高めることができ、電流集中の成長率を高めることができる。また、印加する磁場の強度を上げることで、ホール効果により電流集中の成長率を高めることができる。
【0057】
上述のように製造されたステンレス微粒子の粒径は放電の条件によって変化し、1〜1000nmの間で分布するが、粒径が大きなものを除去して粒径が20nm以下、好ましくは10nm以下のステンレス微粒子を分級して本発明の機能性ステンレスナノボールとする。なお、微粒子の粒径は、例えば微粒子のSEM写真を用いて測定された微粒子の面積から面積相当径を算出することで得られる。
【0058】
粒径20nm以下、好ましくは10nm以下のステンレス微粒子を分級する方法としては、沈殿法によって比較的大きな粒子を除去した後、例えば、シリンジフィルターで分級し、さらに、ビバスピンなどの遠心濃縮を行うことにより、本発明の機能性ステンレスナノボールとすることができる。
【0059】
このように製造される機能性ステンレスナノボールは、特に、球状化処理などの後処理をすることなく、実質的に真球(ナノボール)であるという特徴を有する。ここで、真球とは粒子の断面において1の方向の直径と、その1の方向と直交する他の方向の直径との比が95%〜105%以内、より好ましくは、98%〜102%以内の範囲にあることを意味する。
【0060】
上述した方法によれば、安定に制御した状態で、且つ短時間に大量の機能性ステンレスナノボールを低コストで製造することができる。
【0061】
また、上述した方法によれば、後処理をすることなく、球状で且つ粒径が1〜1000nmのステンレス微粒子を得ることができる。また、得られるステンレス微粒子のうち粒径がおよそ20nm以下のものは、酸化被膜を有していないものである。このステンレス微粒子は、酸化被膜がない状態で母材が有していたステンレス鋼としての耐酸化特性を有するものである。
【0062】
また、本発明のステンレスナノボール触媒は、上述したような液中放電プラズマ法によりステンレス鋼からなる陰極を溶解させて形成されたステンレス微粒子を特に分級せず、粒径が20nm以下で酸化被膜を有さないステンレス微粒子を含むと共に粒径が20nmを越えるものも含むものである。すなわち、本発明のステンレスナノボール触媒は、液中放電プラズマ法により、粒径が20nm以下の微粒子が含有されるような条件下で製造されたステンレス微粒子であり、粒径が20nm以下で酸化被膜を有さないステンレス微粒子と、粒径が20nmを越えるステンレス微粒子との混合物である。
【0063】
さらに、上述した液中プラズマ放電法によれば、元素組成比の異なる複数の陰極を用いることにより、元素組成比の異なる複数の機能性ステンレスナノボールまたはステンレスナノボール触媒を同時に得ることができる。元素組成比の異なる複数のステンレス微粒子からなる機能性ステンレスナノボール及びステンレスナノボール触媒は、さらに優れた機能を有するものと期待できる。
【0064】
本発明の機能性ステンレスナノボール及びステンレスナノボール触媒は、汚水処理・水質浄化、排水・排煙処理、環境、バイオテクノロジー、バイオマス利用、医療などの各分野において好適に用いることができる。
【0065】
本発明のステンレスナノボール触媒は、難分解性有機物質の分解触媒、例えば、フミン物質の分解触媒として使用することができる。かかるフミン物質分解触媒は、高い効率でフミン物質を分解処理することができる。フミン物質は、フミン酸やフルボ酸等からなり、これらは直鎖炭化水素と多環芳香族化合物の分子量数千から一万程度の難分解性高分子化合物である。このフミン物質は、腐植物、土壌、湖沼、天然水、泥炭、石炭、海洋堆積物等にも含まれ、有害または非有効活用物質とされてきたものである。
【0066】
ここで、図12を用いて、本発明のステンレスナノボール触媒をフミン物質分解触媒として用いた場合のフミン物質の分解処理工程の一例について説明する。
【0067】
まず、フミン物質を含む水溶液である汚水に酸性水を添加することにより(S1)、酸性状態となり(S2)、フミン酸物質が沈殿する(S3)。水溶液には非沈殿水溶性物質であるフルボ酸が残存した状態となる(S5)。
【0068】
この水溶液に対し、フミン物質分解触媒を添加・攪拌することにより、フミン物質分解触媒がフルボ酸を分解する。すなわち、フミン物質分解触媒がフルボ酸の自発分解を触媒する。これにより、分解物である糖、セルロールなどが溶解物質として生成し、フルボ酸物質が沈殿する。
【0069】
以上の方法により、水溶液からフミン物質が除去される。なお、沈殿したフミン酸物質は、乾燥固化後に廃棄又は化学工業の原料物質として活用される(S4)。また、沈殿したフルボ酸分質は、廃棄又は産業原料物質として活用される(S6)。
【0070】
このように、フミン物質を含む難分解性物質水溶液に対し、フミン物質分解触媒を添加・攪拌するのみで高い効率でフミン物質を分解処理することができる。
【0071】
なお、フミン物質分解触媒の使用方法は、上述したものに限定されず、例えば、フミン物質分解触媒を付着させた膜に、フミン物質を含む難分解性物質水溶液を通すことにより、フミン物質を分解処理してもよい。このとき、光照射を行うと分解触媒効果が促進される。
【0072】
本発明のステンレスナノボール触媒をフミン物質分解触媒として用いることにより、比較的簡単な装置構成でフミン物質の処理システムを実現することができる。すなわち、本発明のフミン物質分解触媒によれば、低コストでフミン物質を分解することができる。また、フミン物質の処理システムの大規模化に好適である。
【実施例】
【0073】
(実施例1)
図1は、ステンレス微粒子の製造装置を模式的に示す図である。図1に示すように、ステンレス微粒子の製造装置は、導電性液体を収容するためのセル1、セル1内に配置された互いに非接触の対電極(陰極2と陽極3)、対電極に電圧を印加する直流電源を備えるものである。この装置は、主に電気絶縁体から成るセル被覆部4を有し、セル被覆部4には水素ガスなどの生体気体を排気や給水を行なう開口部5が設けられている。また、導電性液体の温度を維持する手段すなわち制御機構を持つ加熱または冷却手段(熱電対6)と温度センサーが設けられている。なお、陰極2として、ステンレス細線(オーステナイトステンレス鋼:SUS316、直径1.0mm,長さ15〜20mm,電極表面積0.5cm2)を用いた。なお、金属細線の放電部以外の部分はテフロン(登録商標)で被覆した。また、陽極3として、網状の白金電極(50×100mm)を用いた。
【0074】
まず、ガラス製のセル1に炭酸カリウムK2CO3水溶液(0.005mol%−0.5mol%)を400cc収容した後、水溶液中の液面から100mm以内の深さに、対電極を配置する。なお、本実施形態では、炭酸カリウムK2CO3水溶液(0.01mol%)を用い、陽極と陰極の間の距離を50mmとした。
【0075】
その後、電圧を100〜250Vとし、放電時間を30〜70分として、陰極放電電解を行う。なお、本実施形態では、直流電圧180〜200Vとし、放電時間を30分とした。これにより、陰極表面での電力損失により、電極温度が上昇して溶液沸点を超え、陰極/溶液界面に水蒸気を含むガス相がシース状に形成された。セル電圧が十分高いので、ガス相内部でグロー放電が生起した(放電は陰極の近傍においてのみ確認された)。なお、図2に、これらの過程の電圧と電流の関係、図3に、ステンレス微粒子の製造の際の電流、電圧、浴液温度の時間依存性を示す。
【0076】
陰極グロー放電プラズマの持続的形成後、陰極と溶液界面間のシース状プラズマ中での電流集中現象により、陰極表面の局所温度がSUS316Lの融点(1,371〜1,400℃)を超えるために、局所的な融解が生じてその一部が水溶液中に飛び出し、熔融物が表面張力によって真球状に整形された後、急冷され、真球状の超微粒子、すなわち、ステンレス微粒子が得られた。これを以下の試験例で使用するステンレスナノボール触媒とする。
【0077】
また、この浴液から粒径20nm以下のステンレス微粒子を分級し、分級された機能性ステンレスナノボールを得た。具体的には、浴液の上澄み液から100nmのシリンジフィルター(sartorius社製)で前分級し、さらに、10nmのビバスピン(sartorius社製)を用いて分級し、機能性ステンレスナノボール水溶液を得た。
【0078】
(試験例1)
製造後に分級された機能性ステンレスナノボール及びステンレスナノボール触媒(以下、一括してSUSナノボールともいう)の平均粒度分布と粒子総体積を測定した。図4にレーザー粒度計により測定したステンレス微粒子の粒径分布の一例を示す。
【0079】
また、機能性ステンレスナノボールを透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した結果を図5に示す。これは比較し易いように、分級前のステンレス微粒子を用い、粒径が約20nmのものと、粒径が数十nmのものとを同時に観察したものである。この結果より、粒径が20nmのSUSナノボールは、酸化被膜がないが、粒径がそれより大きいと酸化被膜が観察されることがわかった。すなわち、得られたSUSナノボールは、表面が酸化されていないものであった。一般に、ステンレス微粒子は粒径が小さくなるほどその表面積:体積の比の値が大きくなり、表面が酸化されやすいと考えられていたが、生成したSUSナノボールの表面にはそのような酸化物被膜は形成されていないものであった。これにより、SUSナノボールは表面の活性が非常に高く、種々の用途に使用できる機能性材料であることが推察された。
【0080】
図6はSUSナノボールの電子線回折像である。図6では、図の左半分がステンレス微粒子の原料である陰極材の結晶構造に由来する回折パターンの理論値を示しており、右半分がSUSナノボールの実際の測定値を示しているが、図から明らかなように、SUSナノボールの測定値は、SUSナノボールの材質の理論値とほぼ対応している。これより、SUSナノボールが結晶性を有することがわかった。
【0081】
本発明のSUSナノボールの組成分析結果を図7〜図9に示す。
【0082】
図7は、ステンレス微粒子全体の透過型電子顕微鏡-エネルギー分散型スペクトル(TEM−EDS)分析による構成元素スペクトルである。図7における横軸は、特性X線のエネルギーをkeV単位で示している。酸素元素が検出されておらず、SUSナノボールそのものが酸化していないことがわかった。
【0083】
図8は、SUSナノボール内の透過型電子顕微鏡-エネルギー分散型スペクトル(TEM−EDS)分析による各元素の濃度マップである。図8は、それぞれの原子の特性X線による各元素の分布を示している。CrK、MnK、FeK、NiKおよびMoKでは、それぞれの原子において外殻軌道から電子がK殻に落ちる際に発生する特性X線による各元素の分布を示している。FeLでは、鉄原子において外殻軌道から電子がL殻に落ちる際に発生する特性X線によるFeの分布を示している。図8より各元素は微粒子内に濃密に存在することが認められる。
【0084】
また、表1にステンレス微粒子の元素組成比を示す。a〜dは、図8Greyに示されたものである。
【0085】
【表1】
【0086】
表1より、母材のSUS316L(Cr16−18%,Ni10−14%,Mn0−2%,Mo2−3%,Fe-bal.)の近傍組成を有する5元系ステンレス微粒子が生成できたことがわかる。
【0087】
図9に、母材であるSUS316Lに予め加熱アニール処理を加え材料組織・組成分布を一様にする場合と、アニール処理を行わなかった場合のそれぞれにつき、生成したステンレス微粒子の組成を調べ比較した結果を示す。両者に明確な違いは認められず、母材状態には大きく影響されずにSUSナノボールを得ることができることがわかった。
【0088】
(応用例)
以下、本発明のSUSナノボールを触媒として用いる実施例を示す。
【0089】
(比較例1)
炭酸カリウム水溶液に実施例1と同様の方法により得たFeナノボールを添加して、Fe微粒子水溶液を得た。
【0090】
(比較例2)
炭酸カリウム水溶液に実施例1と同様の方法により得たNiナノボールを添加して、Ni微粒子水溶液を得た。
【0091】
(比較例3)
炭酸カリウム水溶液に実施例1と同様の方法により得たCrナノボールを添加して、Cr微粒子水溶液を得た。
【0092】
(試験例2)
フミン物質を含む土壌抽出液に、実施例1のうち分級を行っていない水溶液及び比較例1〜3のうち分級を行っていない水溶液を中和後、それぞれ添加した。その後、溶液添加前後の土壌抽出液の吸光度変化を調べた。結果を図10に示す。
【0093】
図10に示すように、ステンレス微粒子水溶液の添加前後で、吸光度がすべての波長にわたって低下した。これに対し、比較例1〜3の水溶液を添加しても吸光度に変化は見られなかった。これにより、分級されていないステンレスナノボール触媒を含むステンレス微粒子水溶液を添加した場合のみに、土壌抽出液の透明度が明らかに改善されることが確認できた。
【0094】
(実施例2)
上記実施例1の炭酸カリウムK2CO3水溶液をクエン酸ナトリウム水溶液に代え、他は同じ条件・方法により製造したステンレス微粒子を分級せずに、ステンレスナノボール触媒に使われる水溶液を得た。
【0095】
(試験例3)
フミン物質を含む土壌抽出液に、実施例2の水溶液を添加し、添加前後の硝酸イオン(NO3−)、亜硝酸イオン(NO2−)を測定した。結果を図11に示す。
【0096】
図11に示すように実施例2の水溶液添加前の土壌抽出液からは、硝酸イオン(NO3−)及び亜硝酸イオン(NO2−)のいずれも検出されなかったが、実施例2の水溶液添加後の混合液から硝酸イオン(NO3−)が検出された。土壌抽出液のアンモニア化合物、有機窒素化合物が酸化(分解)されて硝酸イオンになったと考えられる。すなわち、ステンレス微粒子が酸化触媒として機能し、フミン物質の分解を促したことがわかった。
【0097】
以上のことから、粒径が20nmを越えるステンレスナノボールと、本発明のシングルナノ、又は実質的にシングルナノサイズのステンレスナノボールとの混合物からなるステンレスナノボール触媒は、フミン物質を分解し(自発分解を触媒し)フミン物質濃度を低下させたことがわかった。すなわち、ステンレスナノボール触媒は、その機能特性の一つである触媒効果として、フミン物質等に対する酸化触媒機能を有することが確認された。
【符号の説明】
【0098】
1 セル
2 陰極
3 陽極
4 セル被覆部
5 開口部
6 熱電対
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径が20nm以下のステンレス微粒子からなることを特徴とする機能性ステンレスナノボール。
【請求項2】
請求項1に記載の機能性ステンレスナノボールにおいて、前記機能性ステンレスナノボールは結晶性を有することを特徴とする機能性ステンレスナノボール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の機能性ステンレスナノボールにおいて、前記ステンレス微粒子は酸化被膜を有していないことを特徴とする機能性ステンレスナノボール。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の機能性ステンレスナノボールにおいて、液中放電プラズマ法によりステンレス鋼からなる陰極を溶解させて形成されたものであることを特徴とする機能性ステンレスナノボール。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の機能性ステンレスナノボールにおいて、前記ステンレス微粒子は、陽極とオーステナイトステンレス鋼を含むステンレス鋼からなる陰極とを導電性液体中に配置し、前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加して前記陰極近傍にプラズマを発生させ、前記陰極を局所的に融解させた後に再凝固することにより形成したものであることを特徴とする機能性ステンレスナノボール。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の機能性ステンレスナノボールにおいて、前記ステンレス微粒子は真球であることを特徴とする機能性ステンレスナノボール。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の機能性ステンレスナノボールにおいて、前記ステンレス微粒子の粒径が1〜10nmであることを特徴とする機能性ステンレスナノボール。
【請求項8】
液中放電プラズマ法によりステンレス鋼からなる陰極を溶解させて形成されたステンレス微粒子からなり、且つ粒径が20nm以下で酸化被膜を有さないステンレス微粒子と粒径が20nm以上のステンレス微粒子との混合物からなることを特徴とするステンレスナノボール触媒。
【請求項9】
請求項8に記載のステンレスナノボール触媒において、前記ステンレス微粒子が結晶性を有することを特徴とするステンレスナノボール触媒。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のステンレスナノボール触媒において、前記ステンレス微粒子は、陽極とオーステナイトステンレス鋼を含むステンレス鋼からなる陰極とを導電性液体中に配置し、前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加して前記陰極近傍にプラズマを発生させ、前記陰極を局所的に融解させた後に再凝固することにより形成したものであることを特徴とするステンレスナノボール触媒。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか一項に記載のステンレスナノボール触媒において、前記ステンレス微粒子は真球であることを特徴とするステンレスナノボール触媒。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれか一項に記載のステンレスナノボール触媒において、酸化触媒として機能することを特徴とするステンレスナノボール触媒。
【請求項1】
粒径が20nm以下のステンレス微粒子からなることを特徴とする機能性ステンレスナノボール。
【請求項2】
請求項1に記載の機能性ステンレスナノボールにおいて、前記機能性ステンレスナノボールは結晶性を有することを特徴とする機能性ステンレスナノボール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の機能性ステンレスナノボールにおいて、前記ステンレス微粒子は酸化被膜を有していないことを特徴とする機能性ステンレスナノボール。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の機能性ステンレスナノボールにおいて、液中放電プラズマ法によりステンレス鋼からなる陰極を溶解させて形成されたものであることを特徴とする機能性ステンレスナノボール。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の機能性ステンレスナノボールにおいて、前記ステンレス微粒子は、陽極とオーステナイトステンレス鋼を含むステンレス鋼からなる陰極とを導電性液体中に配置し、前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加して前記陰極近傍にプラズマを発生させ、前記陰極を局所的に融解させた後に再凝固することにより形成したものであることを特徴とする機能性ステンレスナノボール。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の機能性ステンレスナノボールにおいて、前記ステンレス微粒子は真球であることを特徴とする機能性ステンレスナノボール。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の機能性ステンレスナノボールにおいて、前記ステンレス微粒子の粒径が1〜10nmであることを特徴とする機能性ステンレスナノボール。
【請求項8】
液中放電プラズマ法によりステンレス鋼からなる陰極を溶解させて形成されたステンレス微粒子からなり、且つ粒径が20nm以下で酸化被膜を有さないステンレス微粒子と粒径が20nm以上のステンレス微粒子との混合物からなることを特徴とするステンレスナノボール触媒。
【請求項9】
請求項8に記載のステンレスナノボール触媒において、前記ステンレス微粒子が結晶性を有することを特徴とするステンレスナノボール触媒。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のステンレスナノボール触媒において、前記ステンレス微粒子は、陽極とオーステナイトステンレス鋼を含むステンレス鋼からなる陰極とを導電性液体中に配置し、前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加して前記陰極近傍にプラズマを発生させ、前記陰極を局所的に融解させた後に再凝固することにより形成したものであることを特徴とするステンレスナノボール触媒。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか一項に記載のステンレスナノボール触媒において、前記ステンレス微粒子は真球であることを特徴とするステンレスナノボール触媒。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれか一項に記載のステンレスナノボール触媒において、酸化触媒として機能することを特徴とするステンレスナノボール触媒。
【図12】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−242193(P2010−242193A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94442(P2009−94442)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【出願人】(509101181)合同会社札幌NBT (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【出願人】(509101181)合同会社札幌NBT (2)
【Fターム(参考)】
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