説明

機能性消化不良を治療するための化学化合物の使用

本発明は、機能性消化不良を治療するための、NK1受容体アンタゴニストの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性消化不良を治療するための、NK1受容体アンタゴニストの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
NK1受容体アンタゴニストは、不安と抑鬱、化学療法誘発性悪心・嘔吐、および、手術後の悪心・嘔吐の治療に有用であることが知られている。前臨床データにより、NK1受容体アンタゴニストが、痛み、炎症性疾患、アレルギー性障害、CNS障害、皮膚障害、咳、胃腸障害などのその他の様々な障害に有用である可能性があることが示唆されている。
【発明の開示】
【0003】
驚くべきことに、NK1受容体アンタゴニストが、機能性消化不良を治療するのに有用であることが判った。
【0004】
機能性消化不良(FD; functional dyspepsia)は、消化不良の1つの明確なタイプである。「消化不良」は、一般的な消化障害の状態と定義されるので、それには種々の明確に区別される消化不良の状態が含まれる。消化不良にはいくつかの認められたタイプがあり、その一般的なものは酸が関わる消化不良であり、これには過剰胃酸が関与し、これは、消化性潰瘍、胃食道逆流疾患(GERD)、および、過剰胃酸により特徴づけられるその他の病態に至り得る。FDには、過剰胃酸は関与していない。というより、FDの病態生理学的な主要原因は明らかでない。
【0005】
FDは、消化性潰瘍化、胃癌、慢性膵炎、GERDなどの特定可能な器官病態が存在しない慢性または再発性上腹部症状を特徴とする内臓の過敏状態である。特定可能な器官病態が存在しないことは、内視鏡検査、X線撮影検査、組織病理検査、当業者が知るその他の手法などの通常の手法により確かめられる。
【0006】
FDの一般的な症状は、上腹部に集中する持続性、再発性の痛みまたは不快感、早期の満腹感、悪心および嘔吐、鼓腸(腹部膨満)、おくび、食事して直ぐの満腹感である。
【0007】
FDは、患者に認められる支配的な症状に基づきサブタイプに分けられている。「潰瘍様」FDは、基本的に痛みを特徴とする。「逆流様」FDは、基本的に胸やけ(これは多くの場合制酸剤により軽減される)を特徴とする。逆流様FDのほとんどは、この状態を器官病態と関連づけることができるので、実際はGERDによるものであるとすることができ、実際にはFDではないと考えられる。
【0008】
「運動不全様」FDは、基本的に不快感、鼓腸、悪心、嘔吐、早すぎる満腹感、食事して直ぐの満腹感を特徴とする。「未確定」FDは、上記範疇の中に入らない症状をもつFD患者を意味する。典型的には、患者は様々なサブタイプにわたる症状を呈する。
【0009】
従って本発明は、機能性消化不良を治療するための、NK1受容体アンタゴニストの使用を提供する。
【0010】
さらなる態様では、本発明は、機能性消化不良の治療に使用するための医薬の調製におけるNK1受容体アンタゴニストの使用を提供する。
【0011】
さらなる態様では、本発明は、機能性消化不良の患者にNK1受容体アンタゴニストの有効量を投与することを含んでなる、機能性消化不良の治療方法を提供する。
【0012】
さらなる態様では、本発明は、少なくとも1種のNK1受容体アンタゴニストを含み、適切な経路で投与するために製剤化された、機能性消化不良用医薬組成物を提供する。そのような組成物は、好ましくは、ヒト用医薬品での使用に適合された剤形にあり、1種以上の医薬的に許容される担体または賦形剤を用いて通常の方法で都合良く製剤化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本明細書では、機能性消化不良という用語には、「潰瘍様」FD、「運動不全(dysmotility)様」FD、および「未確定(unspecified)」FDが含まれる。
【0014】
本発明で使用されるNK1受容体アンタゴニストには、以下の特許明細書に一般的ならびに特定的に開示されているものが含まれる(これらの開示内容は、ここに参照で組み入れる)。
【0015】
以下の番号の欧州特許明細書: 284942、327009、333174、336230、360390、394989、428434、429366、436334、443132、446706、482539、484719、499313、512901、512902、514273、514275、517589、520555、522808、525360、528495、532456、533280、577394、591040、615751、684257、1176144、1110958、1176144、1172106、1103545,および1256578;
以下の番号の国際特許出願明細書:90/05525、90/05729、91/02745、91/12266、91/18016、91/18899、92/01688、92/06079、92/15585、92/17449、92/20676、92/21677、92/22569、93/00331、93/01159、93/01160、93/01165、93/01169、93/01170、94/01402、94/26735、95/06645、95/08549、95/14017、95/16679、95/18124、95/23798、95/28389、95/33744、96/05181、96/18643、96/21661、96/29326、96/32386、96/34857、96/37489、97/02824、97/05110、97/08166、97/13514、97/14671、97/16440、97/17362、97/19074、97/19084、97/19942、97/21702、97/22597、97/22604、97/23455、97/24324、97/24350、97/25322、97/25988、97/27185、97/30989、97/30990、97/30991、97/32865、97/38692、97/44035、97/49393、97/49710、98/02158、98/04561、98/07694、98/07722、98/08826、98/13369、98/17276、98/18761、98/18785、98/18788、98/20010、98/24438、98/24439、98/24440、98/24441、98/24442、98/24442、98/24443、98/24444、98/24445、98/24446、98/24447、98/28297、98/43639、98/45262、98/49170、98/54187、98/57954、98/57972、99/00388、99/01444、99/01451、99/07677、99/07681、99/09987、99/21823、99/24423、99/25364、99/26924、99/27938、99/36424、99/52903、99/59583、99/59972、99/62893、99/62900、99/64000、00/02859、00/06544、00/06571、00/06572、00/06578、00/06580、00/15621、00/20003、00/21512、00/21564、00/23061、00/23062、00/23066、00/23072、00/20389、00/25745、00/26214、00/26215、00/34243、00/34274、00/39114、00/47562、01/77069、01/25233、01/30348、01/87866、01/94346、01/90083、01/87838、01/85732、01/77100、01/77089、01/77069、01/46176、01/46167、01/44200、01/32625、01/29027、01/25219、02/32865、02/00631、02/81461、02/92604、02/38575、02/57250、02/22574、02/74771、02/26710、02/28853、02/102372、02/85458、02/81457、02/74771、02/62784、02/60898、02/60875、02/51848、02/51807、02/42280、02/34699、02/32867、02/32866、02/26724、02/24673、02/24629、02/18346、02/16344、02/16343、02/16324、02/12168、02/08232および02/06236;
以下の番号の米国特許明細書:4839465、5338845、5594022、6169097、6197772、6222038、6204265、6329392、6316445、2001039286、2001034343、2001029297、2002193402、2002147212、2002147207、2002143003および2002022624;
以下の番号の英国特許明細書:2216529、2266529、2268931、2269170、2269590、2271774、2292144、2293168、2293169および2302689;および
日本国特許明細書第6040995号。
【0016】
本発明で使用される特に有用なNK1受容体アンタゴニストの群は、WO 0125219に記載されている次の一般式(I)
【化1】

【0017】
[上記式中:
Rは、ハロゲン原子またはC1-4アルキル基を表わし;
R1は、水素またはC1-4アルキル基を表わし;
R2は、水素、C1-4アルキル、C2-6アルケニルまたはC3-7シクロアルキル基を表わし;または、R1およびR2は、それぞれが結合している窒素原子および炭素原子と一緒になって5〜6員ヘテロ環式基を表わし;
R3は、トリフルオロメチル基、C1-4アルキル基、C1-4アルコキシ基、トリフルオロメトキシ基またはハロゲン基を表わし;
R4は、水素、(CH2)qR7基または(CH2)rCO(CH2)pR7基を表わし;
R5は、水素、C1-4アルキル基またはCOR6基を表わし;
R6は、水素、ヒドロキシ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ;酸素、硫黄および窒素から選択されるヘテロ原子1〜3個を含む5員ヘテロアリール基;または、窒素原子1〜3個を含む6員ヘテロアリール基を表わし;
R7は、水素、ヒドロキシまたはNR8R9[式中R8およびR9は独立に水素、または、ヒドロキシまたはアミノで置換されていてもよいC1-4アルキルを表わす]を表わし;
R10は、水素、C1-4アルキル基を表わし、または
R10は、R2と一緒になってC3-7シクロアルキル基を表わし;
mは、0または1〜3の整数であり;
nは、0または1〜3の整数であり;
pおよび rはいずれも独立に0または1〜4の整数であり;
qは、1〜4の整数であり;
但し、R1およびR2が、それぞれが結合している窒素原子および炭素原子と一緒になって5〜6員ヘテロ環式基を表わす場合は:
i) mは、1または2であり;
ii) mが1である場合は、Rはフッ素ではなく、また
iii) mが2である場合は、その2つの置換基Rはいずれもフッ素ではない]
で表わされる化合物ならびにその医薬的に許容される塩および溶媒和物の化合物群によって代表される。
【0018】
この群内では、特に好ましい化合物としては、Rがハロゲンまたはメチルから独立に選択され、R3が3位および5位のいずれにおいてもトリフルオロメチルであり、R1が水素またはメチルであり、R2が水素、メチル、2-プロペニル、またはシクロプロピル基であるか、または、R1と一緒になって3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1-イル基、ピペリジン-1-イル基またはピロリジン-1-イル基であり、R10が水素、メチルを表わすか、または、R10がR2と一緒になってシクロプロピル基であり、R4が水素、アミノアセチル基またはアミノ エチル基であり、R5が水素またはメチル基である化合物が挙げられる。
【0019】
本発明で使用される特に好ましい式(I)の化合物は、
2-(S)-(4-フルオロ-2-メチル-フェニル)-ピペラジン-1-カルボン酸 [1-(R)-(3,5-ビス-トリフルオロメチル-フェニル)-エチル]-メチル-アミドおよびその生理学的に許容される塩(例えばメタンスルホン酸塩または塩酸塩)である。
【0020】
本発明で使用される好適なNK1受容体アンタゴニストのさらなる例としては、WO 0232867に記載されている次の一般式(II)
【化2】

【0021】
[上記式中:
Rは、ハロゲン原子またはC1-4アルキル基を表わし;
R1は、C1-4アルキル基を表わし;
R2は、水素またはC1-4アルキル基を表わし;
R3は、水素、またはC1-4アルキル基を表わし;
R4は、トリフルオロメチル基を表わし;
R5は、水素、C1-4アルキル基またはC(O)R6を表わし;
R6は、C1-4アルキル、C3-7シクロアルキル、NH(C1-4アルキル)またはN(C1-4アルキル)2を表わし;
mは、0または1〜3の整数であり;
nは、1〜3の整数である]
で表わされる化合物が挙げられる。
【0022】
本発明で使用される特に好ましい式(II)の化合物は、
4-(S)-(4-アセチル-ピペラジン-1-イル)-2-(R)-(4-フルオロ-2-メチル-フェニル)-ピペリジン-1-カルボン酸、[1-(R)-(3,5-ビス-トリフルオロメチル-フェニル)-エチル]-メチルアミドならびにこれらの医薬的に許容される塩(例えば塩酸塩、メタンスルホン酸塩、硫酸塩、p-トルエンスルホン酸塩)および溶媒和物である。
【0023】
本発明で使用されるもう1つのさらなる好ましいNK1受容体アンタゴニストの群は、WO03/066635に記載されている次の一般式(III)
【化3】

【0024】
[式中:
Rは、ハロゲンまたはC1-4アルキルを表わし;
R1は、C1-4アルキルを表わし;
R2またはR3は独立に水素またはC1-4アルキルを表わし;
R4は、トリフルオロメチル、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、トリフルオロメトキシまたはハロゲンを表わし;
R5は、水素、C1-4アルキルまたはC3-7シクロアルキルを表わし;
R6は、水素であり、R7は、式(W):
【化4】

【0025】
で表わされる基であるか、または
R6は、式(W)で表わされる基であり、R7は、水素であり;
Xは、CH2、NR5またはOを表わし;
Yは窒素を表わし、ZはCHであるか、または、YはCHを表わし、Zは窒素であり;
AはC(O)またはS(O)qを表わし(但し、Yが窒素であり、ZがCHである場合は、AはS(O)qではない);
mは、0または1〜3の整数であり;
nは、1〜3の整数であり;
pおよびqは独立に1〜2の整数である]
の化合物ならびにその医薬的に許容される塩および溶媒和物である。
【0026】
特に好ましい式(III)の化合物としては、R6が水素であり、R7が式(W)で表わされる基であり、YがCHでありZが窒素であるか、または、R6が式(W)で表わされる基であり、R7が水素であり、Yが窒素でありZがCHであり;AがC(O)であり、XがCH2である化合物が挙げられる。
【0027】
本発明で使用される特に好ましい式(III)の化合物は、
2-(R)-(4-フルオロ-2-メチル-フェニル)-4-(S)-((8aS)-6-オキソ-ヘキサヒドロ-ピロロ[1,2-a]-ピラジン-2-イル)-ピペリジン-1-カルボン酸 [1-(R)-(3,5-ビス-トリフルオロメチル-フェニル)-エチル]-メチルアミドならびにその医薬的に許容される塩(例えば塩酸塩、メタンスルホン酸塩またはマレイン酸塩)および溶媒和物である。
【0028】
上記で特定された特許出願明細書の記載内容を本明細書に参照で組み入れる。
【0029】
本発明で用い得るNK1アンタゴニストの調製についての完全な解説は、本明細書で引用した文献中に見ることができる。特に、式(I)、(II)および(III)の化合物は、それぞれWO 01/25219、WO 02/32867およびWO 03/066635に記載されている手順に従って調製することができる。
【0030】
本発明の好ましい実施形態で、ヒトなどの哺乳動物における機能性消化不良の治療方法が提供され、その方法は、以下
2-(S)-(4-フルオロ-2-メチル-フェニル)-ピペラジン-1-カルボン酸 [1-(R)-(3,5-ビス-トリフルオロメチル-フェニル)-エチル]-メチル-アミドおよびその医薬的に許容される塩( 例えばメタンスルホン酸塩、塩酸塩);
2-(R)-(4-フルオロ-2-メチル-フェニル)-4-(S)-((8aS)-6-オキソ-ヘキサヒドロ-ピロロ[1,2-a]-ピラジン-2-イル)-ピペリジン-1-カルボン酸 [1-(R)-(3,5-ビス-トリフルオロメチル-フェニル)-エチル]-メチルアミドの医薬的に許容される塩(例えば塩酸塩、メタンスルホン酸塩、マレイン酸塩);
2-(R)-(4-フルオロ-2-メチル-フェニル)-4-(S)-((8aS)-6-オキソ-ヘキサヒドロ-ピロロ[1,2-a]-ピラジン-2-イル)-ピペリジン-1-カルボン酸 [1-(R)-(3,5-ビス-トリフルオロメチル-フェニル)-エチル]-メチルアミドの医薬的に許容される塩(例えば塩酸塩、メタンスルホン酸塩、マレイン酸塩);
2-メトキシ-5-(5-トリフルオロメチル-テトラゾール-1-イル-ベンジル)]-(2S-フェニル-ピペリジン-3S-イル)-アミン);
から選択されるNK1受容体アンタゴニストの治療的に有効な量で該動物を治療することを含んでなる。
【0031】
さらに、驚くべきことに、式(I)、(II)および(III)の化合物ならびにその医薬的に許容される塩および溶媒和物は胃食道逆流疾患の治療に有用であることが見出され、これは本発明のさらなる態様である。
【0032】
本発明により使用されるNK1受容体アンタゴニストはそのままの化学物質として投与することもできるが、本活性成分は好ましくは医薬製剤として提供される。好適な医薬製剤は、上記で引用した特許明細書中に解説されている。
【0033】
つまり、本発明により使用されるNK1受容体アンタゴニストは、経口投与、経口腔投与、非経口投与、デポーまたは経直腸投与用に製剤化することができ、あるいは、吸入または通気による投与(口または鼻経由)に適した形態に製剤化することもできる。経口用製剤および非経口用製剤が好ましい。
【0034】
経口投与用には、本医薬組成物は、例えばタブレットまたはカプセルの形態をとることができ、これは、医薬的に許容される賦形剤例えば結合剤(例えばゼラチン化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース);増量剤(例えばラクトース、微結晶セルロース、リン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ);崩壊剤(例えばジャガイモデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム);湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)などと一緒にして通常の方法により調製される。タブレットは、当技術分野で周知の方法によりコーティングすることもできる。経口投与用の液体製剤は、例えば溶液、シロップ、懸濁液などの形態をとることができ、あるいは、タブレットは、使用前に水または他の適切なビークル(媒体)で再構成される乾燥製品として提供することもできる。このような液体製剤は、医薬的に許容される添加剤例えば懸濁化剤(例えばソルビトールシロップ、セルロース誘導体、水素化食用脂);乳化剤(例えばレシチン、アカシア);非水性ビークル(例えばアーモンドオイル、油状エステル、エチルアルコール、精製植物油);防腐剤(例えばメチル-またはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエート、ソルビン酸);と一緒にして通常の方法により調製することができる。製剤には適宜、緩衝塩、香味剤、着色剤、甘味剤を入れることもできる。
【0035】
経口投与用製剤を適切に製剤化して、本活性化合物の制御放出ができるようにすることもできる。
【0036】
経口腔投与用には、本組成物は、通常の方法で製剤化されたタブレットまたはロゼンジの形態をとるこができる。
【0037】
本発明により使用されるNK1受容体アンタゴニストは、ボーラスインジェクション(注射)または連続インフュージョン(注入)による非経口投与用に製剤化することができる。インジェクション用製剤は、防腐剤を加えて、単位投薬形態例えばアンプルに入れて、あるいは、複数回投薬用容器に入れて提供することができる。この場合の組成物は、油性または水性ビークル中の懸濁液、溶液、または乳液の形態をとることができ、製剤用調合剤例えば懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤を含み得る。あるいは、本活性成分は、適切なビークル、例えばパイロジェンフリー(発熱物質なし)の滅菌水により使用前に再構成される粉末形態にあってもよい。
【0038】
本発明により使用されるNK1受容体アンタゴニストは、軟膏、クリーム、ジェル、ローション、ペッサリー、エアロゾル、あるいは点液(例えば点眼液、点鼻液)の形態で局所投与用に製剤化することができる。軟膏およびクリームは例えば、適切な増粘剤および/またはジェル化剤を加えて水性または油性基剤で製剤化することができる。目への投与用の軟膏は、滅菌された成分を使用して、無菌的な方法で製造することができる。
【0039】
ローションは水性または油性基剤で製剤化することができ、一般に1種または複数種の乳化剤、安定化剤、分散化剤、懸濁化剤、増粘剤、または着色剤も含んでいると思われる。点液は水性または非水性基剤で製剤化することができ、これもまた1種または複数種の分散化剤、安定化剤、可溶化剤、懸濁化剤を含んでいる。これらには防腐剤が入っていてもよい。
【0040】
本発明により使用されるNK1受容体アンタゴニストは、例えば通常の坐剤用基剤例えばココアバターまたはその他のグリセリドが入っている坐剤または停留浣腸などの直腸用組成物の形態で製剤化することもできる。
【0041】
本発明により使用されるNK1受容体アンタゴニストは、デポー製剤として製剤化することもできる。そのような長期間作用する製剤は埋め込み(例えば皮下的または筋内的)により、あるいは筋内インジェクションにより投与することができる。つまり、例を挙げると、本発明の化合物は、適切なポリマー物質または疎水性物質と一緒にして(例えば許容される油中の乳液として)、または、イオン交換樹脂と一緒にして製剤化することができ、あるいは、僅かに溶解可能な誘導体、例えば、僅かに溶解可能な塩として製剤化することもできる。
【0042】
鼻内投与には、本発明により使用されるNK1受容体アンタゴニストは、適切な計量または単位投薬デバイス(装置)により投与される液体として製剤化することができ、あるいは別の方法として、適切な送達デバイスを使用して投与される、適切な担体と一緒にした粉末混合物として製剤化することもできる。
【0043】
好適な投薬量範囲は上記で引用した特許明細書にも書かれている。つまり、機能性消化不良の治療で使用するには、化合物は、NK1受容体アンタゴニストが有用であると知られている本発明以外の病態に適切である投薬量で使用することができる。患者の年齢や病態に応じて、投薬量に常識的な変更を加えることが必要かも知れないこと、また、その厳密な投薬量は最終的には担当の医師の判断によるものであることは理解されると思われる。投薬量は、その投与の経路、および、選択されたその特定の化合物によっても変わるものである。好適な経口投薬量範囲は典型的には1〜300 mg、例えば1〜100 mgになると思われる。
【0044】
本NK1受容体アンタゴニストは、1日1回か2回、好ましくは1日2回投与される。
【0045】
本発明により使用されるNK1受容体アンタゴニストは、所望なら、他の治療用薬剤の1種または複数種との組み合せで投与することができ、都合の良い投与経路用に通常の方法で製剤化することができる。適切な投薬量および処方は、当業者なら直ぐ分かると思われる。
【0046】
FDの治療におけるNK1アンタゴニストの使用は適切な臨床試験により裏付けをとる。特に、FDの治療における次の化合物
2-(S)-(4-フルオロ-2-メチル-フェニル)-ピペラジン-1-カルボン酸 [1-(R)-(3,5-ビス-トリフルオロメチル-フェニル)-エチル]-メチル-アミドおよびその医薬的に許容される塩のメタンスルホン酸塩、
2-(R)-(4-フルオロ-2-メチル-フェニル)-4-(S)-((8aS)-6-オキソ-ヘキサヒドロ-ピロロ[1,2-a]-ピラジン-2-イル)-ピペリジン-1-カルボン酸 [1-(R)-(3,5-ビス-トリフルオロメチル-フェニル)-エチル]-メチルアミドのメタンスルホン酸塩、および
2-メトキシ-5-(5-トリフルオロメチル-テトラゾール-1-イル-ベンジル)]-(2S-フェニル-ピペリジン-3S-イル)-アミン)
の使用は、3つの薬量範囲に亘る有効性および安全性に関する評価を引き出すよう設計されている。一次エンドポイント(終点)は、FDの痛みまたは不快感の十分な軽減である。二次エンドポイントとしては、1) 毎日の上腹部の痛みの程度の評価の変化、2) 痛みのない日の割合、3) 吐気、早すぎる満腹感、鼓腸または膨満、食事して直ぐの満腹感、げっぷまたはおくびの自己評価の変化、4) 生活の質の変化、が挙げられる。この試験は、ダブルブラインド(二重盲検)およびプラセボマッチ(placebo-matched)で行う。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性消化不良を治療するための、NK1受容体アンタゴニストの使用。
【請求項2】
機能性消化不良を治療するための医薬の調製におけるNK1受容体アンタゴニストの使用。
【請求項3】
前記NK1受容体アンタゴニストが、式(I)
【化1】

[上記式中:
Rは、ハロゲン原子またはC1-4アルキル基を表わし;
R1は、水素またはC1-4アルキル基を表わし;
R2は、水素、C1-4アルキル、C2-6アルケニルまたはC3-7シクロアルキル基を表わし;または、R1およびR2は、それぞれが結合している窒素原子および炭素原子と一緒になって5〜6員ヘテロ環式基を表わし;
R3は、トリフルオロメチル基、C1-4アルキル基、C1-4アルコキシ基、トリフルオロメトキシ基またはハロゲン基を表わし;
R4は、水素、(CH2)qR7基または(CH2)rCO(CH2)pR7基を表わし;
R5は、水素、C1-4アルキル基またはCOR6基を表わし;
R6は、水素、ヒドロキシ、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ;酸素、硫黄および窒素から選択されるヘテロ原子1〜3個を含む5員ヘテロアリール基;または、窒素原子1〜3個を含む6員ヘテロアリール基を表わし;
R7は、水素、ヒドロキシまたはNR8R9[式中R8およびR9は独立に水素、または、ヒドロキシまたはアミノで置換されていてもよいC1-4アルキルを表わす]を表わし;
R10は、水素、C1-4アルキル基を表わし、または
R10は、R2と一緒になってC3-7シクロアルキル基を表わし;
mは、0または1〜3の整数であり;
nは、0または1〜3の整数であり;
pおよびrはいずれも独立に0または1〜4の整数であり;
qは、1〜4の整数であり;
但し、R1およびR2が、それぞれが結合している窒素原子および炭素原子と一緒になって5〜6員ヘテロ環式基を表わす場合は:
i) mは、1または2であり;
ii) mが1である場合は、Rはフッ素ではなく、また
iii) mが2である場合は、その2つの置換基Rはいずれもフッ素ではない]
で表わされる化合物またはその医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記NK1受容体アンタゴニストが、式(II)
【化2】

[上記式中:
Rは、ハロゲン原子またはC1-4アルキル基を表わし;
R1は、C1-4アルキル基を表わし;
R2は、水素またはC1-4アルキル基を表わし;
R3は、水素、またはC1-4アルキル基を表わし;
R4は、トリフルオロメチル基を表わし;
R5は、水素、C1-4アルキル基またはC(O)R6を表わし;
R6は、C1-4アルキル、C3-7シクロアルキル、NH(C1-4アルキル)またはN(C1-4アルキル)2を表わし;
mは、0または1〜3の整数である]
で表わされる化合物またはその医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項5】
前記NK1受容体アンタゴニストが、式(III)
【化3】

[式中:
Rは、ハロゲンまたはC1-4アルキルを表わし;
R1は、C1-4アルキルを表わし;
R2またはR3は独立に水素またはC1-4アルキルを表わし;
R4は、トリフルオロメチル、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、トリフルオロメトキシまたはハロゲンを表わし;
R5は、水素、C1-4アルキルまたはC3-7シクロアルキルを表わし;
R6は、水素であり、R7は、式(W):
【化4】

で表わされる基であるか、または
R6は、式(W)で表わされる基であり、R7は、水素であり;
Xは、CH2、NR5またはOを表わし;
Yは窒素を表わし、ZはCHであるか、または、YはCHを表わし、Zは窒素であり;
AはC(O)またはS(O)qを表わし(但し、Yが窒素であり、ZがCHである場合は、AはS(O)qではない);
mは、0または1〜3の整数であり;
nは、1〜3の整数であり;
pおよびqは独立に1〜2の整数である]
で表わされる化合物またはその医薬的に許容される塩もしくは溶媒和物である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項6】
NK1アンタゴニストが、
2-(S)-(4-フルオロ-2-メチル-フェニル)-ピペラジン-1-カルボン酸 [1-(R)-(3,5-ビス-トリフルオロメチル-フェニル)-エチル]-メチル-アミドまたはその医薬的に許容される塩(例えばメタンスルホン酸塩または塩酸塩)である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項7】
NK1アンタゴニストが、
2-(R)-(4-フルオロ-2-メチル-フェニル)-4-(S)-((8aS)-6-オキソ-ヘキサヒドロ-ピロロ[1,2-a]-ピラジン-2-イル)-ピペリジン-1-カルボン酸 [1-(R)-(3,5-ビス-トリフルオロメチル-フェニル)-エチル]-メチルアミドまたはその医薬的に許容される塩(例えば塩酸塩、メタンスルホン酸塩またはマレイン酸塩)である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項8】
NK1アンタゴニストが、
2-メトキシ-5-(5-トリフルオロメチル-テトラゾール-1-イル-ベンジル)]-(2S-フェニル-ピペリジン-3S-イル)-アミン)である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項9】
機能性消化不良の患者にNK1受容体アンタゴニストの有効量を投与することを含んでなる、機能性消化不良の治療方法。


【公表番号】特表2006−516581(P2006−516581A)
【公表日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501644(P2006−501644)
【出願日】平成16年1月26日(2004.1.26)
【国際出願番号】PCT/EP2004/000752
【国際公開番号】WO2004/067093
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】