機能性積層体及び機能性構造体
【課題】 特定の波長領域の光を選択的に指向反射する一方、その波長領域外の光を透過させる光学機能性フィルムなどとして好適な機能性積層体であって、外力や温度変化による膨張収縮などによって損なわれにくい機能性積層体、及びその機能性積層体を備えた機能性構造体を提供すること。
【解決手段】 機能性積層体として、所定の立体的形状に形成された無機物層を含有する機能性層1と;機能性層の2つの主面のそれぞれに密着し、機能性層1を狭持するように配置された第1の樹脂層2および第2の樹脂層3と;第1の樹脂層2の、機能性層1と接している面とは反対側の面、および第2の樹脂層の、機能性層1と接している面とは反対側の面にそれぞれ接して配置され、第1の樹脂層および前記第2の樹脂層に比べ弾性率が大きい、第1の支持体及び第2の支持体とを有する機能性積層体を形成する。
【解決手段】 機能性積層体として、所定の立体的形状に形成された無機物層を含有する機能性層1と;機能性層の2つの主面のそれぞれに密着し、機能性層1を狭持するように配置された第1の樹脂層2および第2の樹脂層3と;第1の樹脂層2の、機能性層1と接している面とは反対側の面、および第2の樹脂層の、機能性層1と接している面とは反対側の面にそれぞれ接して配置され、第1の樹脂層および前記第2の樹脂層に比べ弾性率が大きい、第1の支持体及び第2の支持体とを有する機能性積層体を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の波長領域の光を選択的に指向反射する一方、その波長領域外の光を透過させる光学機能性フィルムなどとして好適な機能性積層体、及びその機能性積層体を備えた機能性構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高層ビルや住居などの建築用ガラスや車窓ガラスなどに、太陽光の一部を吸収または反射する光学層が設けられる例が増加している。これは、窓から室内に入射した太陽光によって、室内の温度が過度に上昇するのを防止することを目的としている。太陽から注がれる光エネルギーは、主として、波長380〜780nmの可視領域の光のエネルギーと、780〜2100nmの近赤外領域の光のエネルギーとからなる。このうち、近赤外領域の光を遮断しても人間の視覚が損なわれることはないので、高い透明性・視認性と高い熱遮断性とを両立させるためには、近赤外領域の光の透過を制限することが重要である。
【0003】
可視領域の光に対する透明性を維持しながら、近赤外領域の光を遮断する構成として、近赤外領域の光に対して選択的に高い吸収率を有する層を設ける構成と、近赤外領域の光に対して選択的に高い反射率を有する層を設ける構成とがある。
【0004】
吸収層を設ける構成としては、有機系の色素膜を設ける構成が多数提案されている。しかし、このような色素膜を窓ガラスに貼ると、吸収された光が窓表面で熱に変わり、その一部が輻射熱として室内に伝わるので、熱遮断性が不十分になりやすいという問題がある。また、熱応力によりガラスが割れるおそれがあり、また、色素膜の耐候性が低く、頻繁に貼り換えができない高層ビルなどには適用しづらいという問題もある。
【0005】
また、反射層を設ける構成としては、光学多層膜や金属含有膜や透明導電性膜などを設ける構成が多数提案されている。しかし、反射層が平面状の窓ガラスに設けられた場合、上方から入射した太陽光は正反射され、下方に降り注ぐことになり、別の建物や地面に到達し、そこで吸収されて熱に変わり、周囲の気温を上昇させる。このため、このような反射層が窓全体に設けられたビルの周辺では、局所的な温度上昇が起こり、ヒートアイランド現象が助長されたり、反射光の照射面で芝生が生長しなくなったりするなど、熱汚染による、新たな環境問題が引き起こされる。
【0006】
一方、近年、再帰反射シートが、例えば道路標識など、多くの用途に広く用いられている。再帰反射とは、入射光をその発生源の方向に再び導くように反射することを言い、指向反射の1つである。指向反射とは、入射光を正反射(入射角と反射角が等しい反射)の方向以外のある特定の方向へ反射するとともに、その反射強度が、指向性をもたない拡散反射強度よりも十分に強い反射のことである。反射面が一定の方向を向いた1枚の平面である場合には、正反射と、表面の平滑性の乱れに起因する拡散反射とが起こる。これに対し、反射面が、ある規則性をもって異なる方向に配向している多数の小さな面からなる場合には、入射光は小さな面による正反射を複数回繰り返し、その結果、指向反射が起こることがある。
【0007】
再帰反射シート材料には、ビーズ添加シート材料とキューブコーナーシート材料との2種類がある。ビーズ添加シート材料では、複数のガラスまたはセラミックの微小球を用いて、入射光を再帰反射する。一方、キューブコーナーシート材料は、典型的には多数の硬質相互接続キューブコーナー要素を用いて入射光を再帰反射する。
【0008】
図19は、後述の特許文献1に示されているキューブコーナー再帰反射シート材料の一例100を示す断面図(a)、およびキューブコーナー要素の裏面(光入射面の反対側の面)120を示す平面図(b)である。特許文献1には、次のように説明されている。
【0009】
キューブコーナーシート材料100は、多数のキューブコーナー要素112と本体部114とを含んでなる。本体部114は、ランド層116と本体層118とを含む。本体層118は、シート材料100全体の一体性を維持する支持体に相当する。ランド層116は、キューブコーナー要素112のベースに隣接して配置されている層であり、この点で本体層118と区別される。
【0010】
キューブコーナー要素112は、本体部114の裏面120から突出して設けられている。図19(b)に示すように、多数のキューブコーナー要素112は裏面120上に規則的に対称性よく配置されている。各キューブコーナー要素112は、3つの露出平面122a、122b、および122cを有する三方プリズムの形状をもつ。多くの場合、この三方プリズムは、立方体の1つの頂点と、その頂点に最近接の3つ頂点からなる三角錐形で、平面122a、122b、および122cは互いに直交している(これは絶対に必要ということではない。)。入射光は、前面121からキューブコーナーシート材料100に入り、本体部114を通過して、キューブコーナー要素112の1つの平面122にあたる。入射光は、その後、各平面122a、122b、および122cでそれぞれ1回ずつ、合計3回反射を繰り返して、入射方向へ戻る。
【0011】
再帰反射シート材料100は、凹凸面や可撓性面に使用することがある。そこで、特許文献1では、被貼付物に追従させて屈曲させた場合にも良好な再帰反射性を有するように、本体層118が、弾性率が7×108Pa未満である高分子材料を含有し、キューブコーナー要素112が、弾性率が1.6×109Pa以上である高分子材料を含有する再帰反射シート材料が提案されている。また、1つの好ましい構成として、キューブコーナー要素112とランド層116が類似または同種類のポリマーから形成される例が記されている。
【0012】
また、後述の特許文献2には、
実質的に平坦な表面とキューブコーナー型再帰反射構造を備える裏面とを有する、光 透過性材料でなる光学構造層と;
該光学構造層の裏面上に設けられた、可視光は透過させて可視光以外の特定波長域の 光を選択的に反射する、波長選択反射層と;
該波長選択反射層の、光学構造層と反対側の面上に設けられた光透過性樹脂層と
を有する、透明波長選択性再帰反射体などが提案されている。
【0013】
上記透明波長選択性再帰反射体を作製するには、光学構造層の、キューブコーナー型再帰反射構造を備える裏面に、ポリマー材料層や、フッ化リチウムなどの無機材料層や、ITO(インジウム・スズ複合酸化物)などの透明導電層などからなる波長選択反射層を形成する。
【0014】
特許文献2などで提案されている、波長選択性を有する指向反射体を応用すれば、近赤外領域の光に対して選択的に高い反射率を有し、かつ、上方から入射した光を下方に正反射するのではなく、上方へ指向反射する反射層を形成することができると考えられる。このような反射層を窓ガラスに設ければ、窓から室内に入射する太陽光によって室内の温度が過度に上昇するのを防止しながら、反射光によって周辺環境に熱汚染が引き起こされる問題も回避できると考えられる。また、近赤外領域の光に対してその何割かを反射する半反射(ハーフミラー)特性を有する反射層を設けることでも、室内の温度上昇の防止と周辺環境への熱汚染の防止との妥協点を見出すことができると考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、波長選択性を有する指向反射体や半反射(ハーフミラー)体の製造工程では、製造工程において加えられる力や、温度変化による膨張収縮などによって、波長選択反射層が剥離してしまったり、大きな割れが生じたりして損なわれ、機能が大きく低下するという問題があることが判明した。図20は、特許文献2で提案されている透明波長選択性再帰反射体などの指向反射体において、キューブコーナー型の光学構造層から一部が剥離した波長選択反射層を、光学顕微鏡によって観察した観察像である。
【0016】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、特定の波長領域の光を選択的に指向反射又は半反射する一方、その波長領域外の光を透過させる光学機能性フィルムなどとして好適な機能性積層体であって、外力や温度変化による膨張収縮などによって損なわれにくい機能性積層体、及びその機能性積層体を備えた機能性構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
即ち、本発明は、
所定の立体的形状に形成された無機物層を含有する機能性層と、
前記機能性層の2つの主面のそれぞれに密着し、前記機能性層を狭持するように配置 された第1の樹脂層及び第2の樹脂層と、
前記第1の樹脂層の、前記機能性層と接している面とは反対側の面、及び前記第2の 樹脂層の、前記機能性層と接している面とは反対側の面にそれぞれ接して配置され、前 記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層に比べ弾性率が大きい、第1の支持体及び第2の 支持体と
を有し、前記第1の支持体及び前記第2の支持体の一方は、それと同等以上の弾性率を有する外部支持体で代替される場合には、省略可能である、機能性積層体に係わるものである。
【0018】
また、前記機能性積層体を備える、機能性構造材に係わるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の機能性積層体によれば、前記機能性層は、前記第1の支持体と前記第2の支持体との間に、前記第1の樹脂層と前記第2の樹脂層とを介して狭持されている。しかも、前記第1の支持体及び前記第2の支持体の弾性率は、前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層の弾性率に比べて大きい。前記機能性層は、いわば、クッション材にくるまれた状態で、比較的変形しにくい2つの支持体の間に納められている。従って、前記機能性積層体に外力が作用しても、外力は、まず、比較的変形しにくい前記第1の支持体及び前記第2の支持体によって受け止められるので、内部に生じる変形や応力は小さく抑えられる。それでも生じる変形や応力は、変形しやすい前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層によって緩和される。このため、前記機能性層に作用する変形や応力はさらに小さく抑えられる。温度変化による膨張収縮などによる応力も、同様に、前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層によって緩和される。以上の結果、本発明の機能性積層体では、前記機能性層が外力や温度変化による膨張収縮などによって損なわれにくい。
【0020】
本発明の機能性構造材は、前記機能性積層体を備えるので、上記と同様の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に基づく機能性積層体の構造を示す断面図である。
【図2】同、機能性積層体の作製工程のフローを示す断面図である。
【図3】同、機能性積層体の作製工程のフローを示す断面図である。
【図4】同、機能性層の形状の例を示す斜視図(a)、およびその機能を示す断面図(b)である。
【図5】同、機能性層の別の形状を示す斜視図である。
【図6】同、機能性層のさらに別の形状を示す平面図(a)、および6B−6B線の位置における拡大断面図(b)である。
【図7】同、機能性積層体に入射する入射光と、機能性積層体によって反射された反射光との関係を示す斜視図である。
【図8】同、変形例1に基づく機能性積層体の構造を示す断面図である。
【図9】同、変形例2に基づく機能性積層体の構造を示す断面図である。
【図10】同、変形例3に基づく機能性層の形状を示す斜視図(a)、およびその機能を示す断面図(b)である。
【図11】同、変形例4に基づく機能性層の形状を示す斜視図(a)、およびその機能を示す断面図(b)である。
【図12】同、変形例5に基づく機能性層の形状を示す斜視図である。
【図13】同、変形例6に基づく機能性層における二次元配列を示す平面図(a)と、平面図(a)に13B−13B線および13C−13C線で示した位置における断面図(b)および(c)である。
【図14】同、変形例7に基づく機能性層における二次元配列を示す平面図(a)と、平面図(a)に14B−14B線および14C−14C線で示した位置における断面図(b)および(c)である。
【図15】本発明の実施の形態2に基づくブラインド装置の構造を示す斜視図(a)、およびスラットの断面図(b)である。
【図16】同、ロールスクリーン装置の構成を示す斜視図(a)、およびスクリーンの断面図(b)である。
【図17】同、建具の構成を示す斜視図(a)、および光学的機能性体の断面図(b)である。
【図18】本発明の実施例および比較例における試験結果を示すグラフである。
【図19】特許文献1に示されている、キューブコーナー再帰反射シート材料の一例を示す断面図(a)、およびキューブコーナー要素の裏面(光入射面の反対側の面)を示す平面図(b)である。
【図20】特許文献2で提案されている透明波長選択性再帰反射体などの指向反射体において見出された、波長選択反射層の剥離を示す顕微鏡観察像である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の機能性積層体において、前記第1の支持体又は前記第2の支持体が省略されており、前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層に比べ弾性率が大きい前記外部支持体に、前記第1の樹脂層又は前記第2の樹脂層を接着するように構成されているのがよい。
【0023】
また、JIS 7161に基づいて測定された、前記第1の支持体及び前記第2の支持体の弾性率が、25℃において7×108〜7.2×1010Paであるのがよい。
【0024】
また、前記第1の樹脂と前記第2の樹脂とが同種の材料からなるのがよい。
【0025】
また、前記機能性積層体が、前記第1の支持体の表面を光入射面とし、入射光を反射、吸収、半透過、又は透過する光学的機能性積層体であるのがよい。
【0026】
この際、前記機能性層が、指向反射性を有する光学的機能性層であるのがよい。例えば、前記機能性層の反射面が第1の反射面群と第2の反射面群からなる多数の反射面群で構成され、前記第1の反射面及び前記第2の反射面の平面形状は細長い長方形で、長辺は互いに同じ長さであり、前記長辺は前記光入射面に対して平行であるが、前記第1の反射面および前記第2の反射面の短辺は、それぞれ、前記光入射面に対して一定の角度で傾いて形成されており、多数の前記第1の反射面及び多数の前記第2の反射面が、前記反射面の長手方向に直交する方向に向かって一次元的に交互に配列されているのがよい。
【0027】
別の例としては、前記機能性層の反射面は、多数の単位凹部又は単位凸部が規則正しく配置されて構成されており、前記単位凹部又は単位凸部の立体的形状が、角錐形、円錐形、半球形、又はシリンドリカル形であるのがよい。
【0028】
これらの指向反射性を有する光学的機能性層は、前記機能性層の反射面の対称面の面内方向又は対称軸の方向、すなわち、再帰反射率が最大又は概ね最大になる方向が、前記入射面に直交する方向から傾斜しているのがよい。
【0029】
あるいは、前記機能性層の反射面が、1種類の、個片化された、多数の反射面群で構成され、前記反射面の平面形状は細長い長方形で、その長辺は前記光入射面に対して平行であるが、その短辺は前記光入射面に対して一定の角度で傾いて形成されており、多数の前記反射面がその長手方向に直交する方向に向かって一次元的に配列されているのがよい。
【0030】
また、機能性積層体が、特定の波長領域の入射光を選択的に反射、吸収、又は透過する光学的機能性積層体であるのがよい。とくに、前記機能性層が、特定の波長領域の入射光を選択的に反射又は透過する光学的機能性層であるのがよい。この場合、前記機能性層が、高屈折率層と金属層とが積層された複数層からなるか、又は、低誘電率層と高誘電率層とが交互に積層された複数層からなるか、又は、可視光領域において透明性を有する導電性材料を主成分とする透明導電層、又は外部刺激により反射性能が可逆的に変化するクロミック材料を主成分とする機能性層であるかであるのがよい。
【0031】
また、前記機能性積層体の表面に、撥水性又は親水性を有する層を備えるのがよい。
【0032】
本発明の機能性構造材は、入射光を反射、吸収、半透過、又は透過する光学的機能性積層体を備え、窓材、日射遮蔽部材、建具として構成されているのがよい。
【0033】
次に、本発明の好ましい実施の形態を図面参照下に具体的かつ詳細に説明する。
【0034】
[実施の形態1]
実施の形態1では、請求項1〜16に記載した機能性積層体の例について説明する。
【0035】
[機能性積層体]
図1(a)は、実施の形態1に基づく機能性積層体10の構造を示す断面図である。機能性積層体10は、機能性層1と、機能性層1の2つの主面のそれぞれに密着し、機能性層1を狭持するように配置された第1の樹脂層2および第2の樹脂層3と、第1の樹脂層2の、機能性層1と接している面とは反対側の面に接して配置された第1の支持体4、第2の樹脂層3の、機能性層1と接している面とは反対側の面に接して配置された第2の支持体5とを有する。機能性層1は所定の立体的形状に形成された無機物層を含有し、その材料、層構造、および立体的形状に応じて、特定の機能を発現する層である。
【0036】
機能性層1は、第1の支持体4と第2の支持体5との間に、第1の樹脂層2と第2の樹脂層3とを介して狭持されている。しかも、第1の支持体4および第2の支持体5の弾性率は、第1の樹脂層2および第2の樹脂層3の弾性率に比べて大きい。機能性層1は、いわば、クッション材にくるまれた状態で、比較的変形しにくい2つの支持体の間に納められている。従って、機能性積層体10に外力が作用しても、外力は、まず、比較的変形しにくい第1の支持体4および第2の支持体5によって受け止められるので、内部に生じる変形や応力は小さく抑えられる。それでも生じる変形や応力は、第1の支持体4と変形しやすい第1の樹脂層2との界面、第2の支持体5と変形しやすい第2の樹脂層3との界面、並びに、第1の樹脂層2および第2の樹脂層3の内部で緩和される。このため、機能性層1に作用する変形や応力はさらに小さく抑えられる。温度変化による膨張収縮などによる応力も、同様に第1の樹脂層2および第2の樹脂層3によって緩和される。以上の結果、機能性積層体10では、機能性層1が外力や温度変化による膨張収縮などによって損なわれにくい。もし、逆に、第1の支持体4および第2の支持体5の弾性率が、第1の樹脂層2および第2の樹脂層3の弾性率に比べて小さければ、機能性層1と、第1の樹脂層2および第2の樹脂層3との間に応力が集中し、界面破壊が生じやすい。なお、必ずしも絶対に必要ということではないが、第1の支持体4および第2の支持体5は、使用温度域および製造プロセス温度域の両方で上記の条件を満たすことが望ましい。
【0037】
そして、JIS 7161に基づいて測定された、第1の支持体4および第2の支持体5の弾性率が、25℃において7×108〜7.2×1010Paであるのがよい。弾性率が7×108Pa未満である場合には、支持体が不必要に変形してしまうので、ハンドリングしにくくなる問題点がある。また、弾性率が7.2×1010Paをこえる場合には、ロール状に巻くことができず、製造上、輸送・保管上、および利用上で不便である
【0038】
また、第1の樹脂2と第2の樹脂3とは、同種の材料からなるのがよい。このようであると、第1の樹脂2と第2の樹脂3との間で力学的なバランスがとれやすく、機能性層1に加わる応力が小さくなると期待される。
【0039】
図1(b)は、実施の形態1の変形例に基づく機能性積層体11の構造を示す断面図である。機能性積層体11は、請求項2に対応し、第2の支持体5が省略されていること以外は、機能性積層体10と同様に構成されている。この場合、第2の樹脂層3は外部支持体6に貼り付けられる。外部支持体6は、第2の支持体と同等以上の弾性率を有し、弾性率が第1の樹脂層2および第2の樹脂層3の弾性率に比べて大きい物体で、例えば窓ガラスなどである。第2の樹脂層3は、(図示省略した)接着剤または粘着剤を介して外部支持体6に貼り付けられるか、または、第2の樹脂自体が接着剤または粘着剤であるのがよい。この例では第2の支持体5が省略されている例を示したが、第1の支持体5が省略されていて、これが外部支持体6で代替されるのでもよい。
【0040】
[機能性積層体の作製]
図2および図3は、実施の形態1に基づく機能性積層体10の作製工程を示す断面図である。
【0041】
機能性積層体10を作製するには、まず、図2(a)に示すように、バイトによる切削加工やレーザー加工などによって、金型41の表面に所定の立体形状を形成する。この立体形状は、作製しようとする機能性層1の立体形状と同一の形状、またはその凹凸を反転形状とする。本例では同一の形状とする。
【0042】
次に、図2(b)に示すように、この金型41の表面に塗布法などで第1の樹脂材料層42を形成する。第1の樹脂材料層42は、硬化すると第1の樹脂層2に変化する、未硬化の樹脂モノマー及び/又はオリゴマーからなる層である。さらにその上に、例えば、厚さが100μm程度のフィルム状の第1の支持体4を押し当て、金型41と第1の樹脂材料層42と第1の支持体4とを密着させる。
【0043】
次に、図2(c)に示すように、第1の支持体4の側から紫外光を第1の樹脂材料層42に照射し、樹脂モノマー及び/又はオリゴマーを硬化させ、第1の樹脂層2を形成する。
【0044】
次に、図2(d)に示すように、第1の支持体4と第1の樹脂層2との積層体を金型41から剥離させ、金型41の表面の立体形状の反転形状が転写された第1の樹脂層2を得る。この例では、第1の樹脂層2の材料として紫外線硬化性樹脂を用いる方法を示したが、第1の樹脂層2の材料として熱可塑性樹脂を用い、そのガラス転移温度より高い温度に加熱しながら第1の樹脂材料層42を金型41に押し当て、その後、ガラス転移温度より低い温度に冷却して金型41から剥離させることにより、第1の樹脂層2を形成してもよい。
【0045】
次に、図3(e)に示すように、第1の樹脂層2の表面に密着するように機能性層1を成膜する。この結果、機能性層1の、第1の樹脂層2に密着している主面は、金型41の表面の立体形状と同じ形状に形成される。機能性層1の成膜方法は、とくに限定されることはなく、蒸着法、スパッタリング法、化学気相成長法(CVD法)、塗布法、および浸漬法など、用いる材料や機能性層1の形状に応じて適宜選択する。
【0046】
次に、図3(f)に示すように、機能性層1のもう一方の主面に、塗布法などで第2の樹脂材料層43を形成する。第2の樹脂材料層43は、硬化すると第2の樹脂層3に変化する、未硬化の樹脂モノマー及び/又はオリゴマーからなる層である。第2の樹脂材料層43から気泡を押し出した後に、その上に厚さ100μm程度のフィルム状の第2の支持体5を押し当て、機能性層1と第2の樹脂材料層43と第2の支持体5とを密着させる。
【0047】
次に、図3(g)に示すように、第2の支持体5の側から紫外光を第2の樹脂材料層43に照射し、樹脂モノマー及び/又はオリゴマーを硬化させ、第2の樹脂層3を形成する。この結果、機能性積層体10を得る。この例では、第2の樹脂層3の材料として紫外線硬化性樹脂を用いる方法を示したが、第2の樹脂層3の材料として熱可塑性樹脂を用い、そのガラス転移温度より高い温度に加熱しながら第2の樹脂材料層43を機能性層1に押し当て、その後、ガラス転移温度より低い温度に冷却してもよい。
【0048】
機能性積層体11を得るには、第2の支持体5に剥離用フィルムを被せた状態で図3(f)および図3(g)に示した工程を行い、その後、剥離用フィルムのところで、硬化した樹脂層3から第2の支持体5を剥がせばよい。
【0049】
[光学的機能性積層体]
機能性積層体10または11は、機能性層1の所定の立体的形状がその機能の発現に必須のものであること以外に、とくに限定されることはない。代表的には、機能性積層体10または11は、入射光を反射、吸収、半透過、又は透過する光学的機能性積層体である。この場合、とくに、機能性層1が、指向反射性を有する光学的機能性層であるのがよい。また、機能性積層体10または11が、特定の波長領域の入射光を選択的に反射、吸収、半透過、又は透過する光学的機能性積層体であるのがよい。この場合、とくに、機能性層1が、特定の波長領域の入射光を選択的に反射又は透過する光学的機能性層であるのがよい。
【0050】
以下、機能性層1が、特定の波長領域の光を選択的に指向反射する一方、その波長領域外の光を透過させる波長選択反射層であり、機能性積層体10が特定の波長領域の光を選択的に指向反射する一方、その波長領域外の光を透過させる光学機能性フィルムとして構成されている例について、各部材等を詳述する。なお、機能性積層体10が機能性積層体11であっても同様である。
【0051】
この際、選択的に指向反射する光が近赤外光であり、透過させる光が可視光であるのがとくに好ましい。既述したように、窓から室内に入射する太陽光によって、室内の温度が過度に上昇するのを防止することを目的として、窓ガラスなどに太陽光の一部を反射する光学層が設けられる例が増加している。太陽から注がれる光エネルギーは、主として、可視領域の光のエネルギーと近赤外領域の光のエネルギーとからなる。このうち、近赤外領域の光を遮断しても人間の視覚が損なわれることはないので、高い透明性・視認性と高い熱遮断性とを両立させるためには、近赤外領域の光の透過を制限することが重要である。近赤外光を選択的に再帰反射する光学機能性フィルムを窓ガラスに貼り付けると、周囲への熱汚染を生じることなく、この目的を達成できるので好ましい。
【0052】
<機能性層の形状>
図4(a)は、機能性積層体10における機能性層1の形状の例を示す斜視図である。見やすくするため、機能性層1と第2の樹脂層3のみを示した。この例は請求項7に対応する。機能性層1の反射面は、2種類の反射面7aおよび7bからなる多数の反射面群で構成されており、多数の反射面7aおよび7bは交互に一方向に向かって一次元的に配列されている。反射面7aおよび7bの平面形状は細長い長方形で、互いに同じ大きさである。反射面7aおよび7bの長辺は、光入射面(例えば、第1の支持体4の表面;図4(b)参照。)に対して平行であるが、短辺は、それぞれ、光入射面に対して一定の角度で傾いて形成されている。隣接する反射面7aと反射面7bとがなす角を二等分する面Nは光入射面に直交し、反射面7aと反射面7bとは面Nに関して対称である。この対称に形成された反射面7aと反射面7bとの組が、多数組み、反射面7の長手方向に直交する方向に向かって一次元的に配列されて、機能性層1の反射面が構成されている。従って、機能性層1の反射面は、一次元配列方向に関して反転対称性を有する。以下、機能性層1のこの形状をV字溝形状と呼ぶことにする。反射面7aおよび7bとのなす角に特に制限はないが、代表的には90°である。この場合、配列方向に平行な面で反射面7aおよび7bを切断すると、直角二等辺三角形の直角を挟む2つの短辺に切断される。ここではV字形の溝が形成されている例を示したが、溝がU字形であってもよい。
【0053】
反射面7aおよび7bの配列のピッチは、5μm〜5mmであるのが好ましく、10〜250μmであるのがより好ましく、20〜200μmであるのがさらに好ましい。ピッチが250μm以下であると、柔軟性が向上し、ロール・ツー・ロール・プロセスで製造することが容易になり、バッチ・プロセスで製造するのに比べ、生産性が向上するので、好ましい。本実施の形態の光学機能性フィルムを窓ガラスなどの建材に適用する際には、多くの場合、数m程度の長さが必要であり、このような長尺の光学機能性フィルムの製造には、バッチ・プロセスよりもロール・ツー・ロール・プロセスの方が適している。ピッチが20〜200μmである場合には、さらに柔軟性などが向上し、生産性が向上する。
【0054】
これに対して、ピッチが5μm未満であると、機能性層1の形状を所望のものとすることが難しい上、波長選択特性を急峻にすることが困難であるため、透過波長の一部を反射することがある。このような反射が起こると、回折が生じて高次の反射まで視認されるため、透明性が悪く感じられる傾向がある。一方、ピッチが5mmを超えると、機能性層1の厚さが厚くなり、柔軟性が失われ、窓ガラスなどの剛体に貼りあわせることが困難になる。
【0055】
機能性層1の厚さは、20μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、1μm以下がさらに好ましい。平均膜厚が20μmを超えると、透過光が屈折する光路が長くなり、透過像が歪んで見える傾向がある。
【0056】
図4(b)は、機能性層1の機能を示す断面図である。見やすくするため、第1の樹脂層2および第2の樹脂層3のハッチングは省略した。第1の支持体4の表面は平坦である。また、機能性層1に接している側とは反対側の、第1の樹脂層2の表面も平坦である。機能性積層体10では、第1の支持体4の平坦な表面(第1の支持体4が省略されている場合には、第1の樹脂層2の平坦な面)が光入射面として用いられる。上記の機能性層1が近赤外光を選択的に反射する材料及び/又は層構成からなる場合、機能性層1の反射面に近赤外光が入射すると、近赤外光は、通常、反射面7bと反射面7aで各1回、合計2回正反射され、光源側へ再帰反射される。一方、可視光は機能性層1を単に透過する。機能性層1では、反射面7の対称面、すなわち二等分面Nが光入射面に直交しているので、再帰反射率が最大になる方向は、入射面に直交する方向になる。
【0057】
図5は、機能性層の別の形状を示す斜視図である。見やすくするため、図5では、機能性積層体20の機能性層21と第2の樹脂層24のみを示した。この例は請求項8に対応する。機能性層21の反射面は、多数の単位凹部23が規則正しく配置されて構成されている。1個の単位凹部23は反射面22a〜22dを有する。機能性層21の裏面側の形状は、図4(a)に示したV字溝を縦と横の直交する2方向に形成することによって得られる形状(四角錐が規則正しく配置された形状)である。以下、機能性層21のこの形状を二重V字溝形状と呼ぶことにする。機能性層21が近赤外光を選択的に反射する材料及び/又は層構成からなる場合、機能性層21の反射面に近赤外光が入射すると、近赤外光は、通常、反射面22aと22c、または22bと22dで各1回、合計2回正反射され、光源側へ再帰反射される。一方、可視光は機能性層21を単に透過する。
【0058】
上記の例では、反射面が凹部23を形成する例を説明したが、反射面が凹部23の凹凸を反転させた凸部を形成するのでもよい。この場合、近赤外光は、隣接する2つの四角錐の、対向する反射面で各1回、合計2回正反射され、光源側へ再帰反射される。
【0059】
図6は、機能性層のさらに別の形状を示す平面図(a)、および6B−6B線の位置における拡大断面図(b)である。見やすくするため、断面図では機能性層31と第2の樹脂層33のみを示した。この例も請求項8に対応する。機能性層31の反射面は、多数のコーナーキューブ形の単位凹部33が規則正しく配置されて構成されている。1個のコーナーキューブ形単位凹部33は反射面32a〜32cを有する。機能性層31の裏面側の形状は、図4(a)に示したV字溝を60°で交わる3方向に形成することによって得られる形状(三角錐が規則正しく配置された形状)である。以下、機能性層31のこの形状をコーナーキューブ形状と呼ぶことにする。機能性層31が近赤外光を選択的に反射する材料及び/又は層構成からなる場合、機能性層31の反射面に近赤外光が入射すると、図6(b)に示すように、近赤外光は、少なくとも2回、通常は反射面32a、32b、32cで各1回、合計3回正反射され、光源側へ再帰反射される。一方、可視光は機能性層31を単に透過する。
【0060】
上記の例では、反射面が凹部33を形成する例を説明したが、反射面が凹部33の凹凸を反転させた凸部を形成するのでもよい。この場合、近赤外光は、隣接する2つの三角錐の、対向する反射面で各1回、合計2回正反射され、光源側へ再帰反射される。
【0061】
<機能性層の層構造および構成材料>
図4〜図6にそれぞれ示した機能性層1、機能性層21および機能性層31は、特定の波長領域の入射光を選択的に反射又は透過する光学的機能性層である。このような層は、高屈折率層と金属層とが積層された複数層、または低誘電率層と高誘電率層とが交互に積層された複数層によって構成することができる。
【0062】
例えば、可視領域において屈折率が高く反射防止層として機能する透明層と、赤外領域において反射率の高い金属層とを交互に積層すると、可視光の透過率が高く、近赤外光の反射率が高い層を形成することができる。赤外領域において反射率の高い金属層は、例えば、金Au、銀Ag、銅Cu、アルミニウムAl、ニッケルNi、クロムCr、チタンTi、パラジウムPd、コバルトCo、ケイ素Si、タンタルTa、タングステンW、モリブデンMo、ゲルマニウムGeなどの単体、またはこれらの単体を2種以上含む合金を主成分とする層である。実用性を考慮すると、これらのうち、単体では、Ag、Cu、Al、SiまたはGeが好ましい。合金では、AlCu、AlTi、AlCr、AlCo、AlNdCu、AlMgSi、AgPdCu、AgPdTi、AgCuTi、AgPdCa、AgPdMg、AgPdFe、AgまたはSiBなどを主成分とすることが好ましい。また、金属層の腐食を抑えるために、金属層に対してTi、Ndなどの材料を添加することが好ましい。特に、金属層の材料としてAgを用いる場合には、上記材料を添加することが好ましい。透明層は、例えば、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化チタンなどの高誘電体を主成分とする。透明層の成膜時に下層の金属層が酸化されるのを防止する目的で、金属層との界面に数nm程度のTiなどからなる薄いバッファー層を設けてもよい。ここで、バッファー層とは、透明層の成膜時に、自らが酸化されることによって金属層の酸化を防止する層である。
【0063】
また、干渉フィルタとして構成された、低誘電率層と高誘電率層との交互積層膜を用いても、可視光の透過率が高く、近赤外光の反射率が高い層を形成することができる。
【0064】
<その他の機能性層>
(1)クロミック材料層
クロミック材料を主成分として機能性層1を形成すると、外部刺激によって反射性能などが可逆的に変化する光学的機能性積層体を構成することができる。クロミック材料は、例えば、熱、光、侵入分子などの外部刺激により構造を可逆的に変化させる材料である。クロミック材料としては、例えば、熱によって着色するサーモクロミック材料、電圧印加によって着色するエレクトロクロミック材料、光によって着色するフォトクロミック材料、ガスとの接触で着色するガスクロミック材料などを用いることができる。
【0065】
(2)フォトニックラティス層
コレステリック液晶などのフォトニックラティスを用いることもできる。コレステリック液晶は層間隔に応じた波長の光を選択的に反射することができ、この層間隔は温度によって変化するため、加熱により、反射率や色などの物性を可逆的に変化させることができる。この時、層間隔の異なるいくつかのコレステリック液晶層を用いて反射帯域を広げることも可能である。
【0066】
(3)半透過層
機能性層1は、入射光の何割かを指向反射し、かつ、散乱が少なく、反対側を視認できる透明性を有する半透過層であってもよい。半透過層としては、例えば、単層または複数層の金属層からなり、半透過性を有するものである。構造体上に製膜する金属層の材料としては、例えば、上述の積層膜の金属層と同様のものを用いることができる。半透過層の具体例を下記に示す。
(a)厚さ8.5nmのAgTi層(質量比 Ag:Ti=98.5:1.5)
(b)厚さ3.4nmのAgTi層(質量比 Ag:Ti=98.5:1.5)
(c)厚さ14.5nmのAgNdCu層(質量比 Ag:Nd:Cu=99.0:0.4:0.6)
半透過層の形成方法としては、例えば、スパッタ法、蒸着法、ディップコーティング法、ダイコーティング法などを用いることができる。
【0067】
<第1の樹脂2および第2の樹脂3>
第1の樹脂2および第2の樹脂3の弾性率は、機能性積層体10が可とう性を有するように、25〜60℃程度の温度領域で7.2×1010Pa以下であることが好ましい、より好ましくは3.1×109Pa以下であることが好ましい。ガラス転移温度に関しては、特に機能を限定することはないが、金属層または酸化物層をスパッタリング法や蒸着法などで成膜する際には、樹脂表面の温度が局所的に高温になるため、第1の樹脂および第2の樹脂のガラス転移温度は60℃以上であることが望ましい。
【0068】
第1の樹脂2および第2の樹脂3として好適な材料は、光透過率が高いものであればよい。例えば、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、セルロース系樹脂、スチレン系樹脂などを単体で用いても、共重合などで組み合わせて用いてもよい。また、紫外線硬化型樹脂を用いてもよく、例えば、アクリレートとしては、1個以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマー及び/又はオリゴマーを用いることが好ましい。このモノマー及び/又はオリゴマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレートなどを用いることができる。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基およびメタアクリロイル基のいずれかを意味するものである。また、オリゴマーとは、分子量500以上60000以下の分子をいう。
【0069】
また、機能性層1を構成する金属層または酸化物層と、樹脂との密着性を向上させる目的で、第1の樹脂2及び/又は第2の樹脂3に添加剤を加えてもよい。ただし、金属や酸化物層が腐食されやすい場合は、できるだけ腐食性物質(たとえば水分、ハロゲンなど)と親和性の低い材料を選定する。例えば、樹脂材料は、第1の樹脂層2または第2の樹脂層3と機能性層1との密着性を向上させるために、ホスホノ基を有する化合物、例えば、ホスホノ基を有する(メタ)アクリルモノマー誘導体またはオリゴマー誘導体を含有することが好ましい。ただし、遊離の無機リン酸が残留していると、結晶化して光を散乱させる原因になるので、樹脂中に含まれる無機リン酸濃度が1.0質量%以下になるように、原料を選択するか、原料を精製することが望ましい。
【0070】
第1の樹脂層2と第2の樹脂層3とは、可視光領域において透明性を有する同一樹脂からなることが好ましい。あるいは、両層を構成する材料の屈折率差が、好ましくは0.010以下、より好ましくは0.008以下、さらに好ましくは0.005以下である。屈折率差が0.010を超えると、透過像がぼけて見える傾向がある。0.008を超え、0.010以下の範囲であると、外の明るさにも依存するが日常生活には問題がない。0.005を超え、0.008以下の範囲であると、光源のように非常に明るい物体を見る場合のみ、回折パターンが気になるが、外の景色は鮮明に見ることができる。0.005以下であれば、回折パターンはほとんど気にならない。第1の樹脂層4および第2の樹脂層5のうち、窓材などの外部支持体6と貼り合わせる側となる樹脂層は、粘着剤を主成分としてもよい。このような構成にする場合、粘着剤の屈折率差が上記範囲内であることが好ましい。
【0071】
なお、第1の樹脂層2と第2の樹脂層3の少なくとも1つには、添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、光安定剤、難燃剤、酸化防止剤、波長選択反射膜と樹脂層との密着性を向上させるための添加剤などが挙げられる。密着性を向上させるための添加剤としては、例えば、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート(例えば、共栄社化学(株)製のライトアクリレートP−1A(商品名)、添加量:0.5〜10質量%)、2−メタクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート(例えば、共栄社化学(株)製のライトアクリレートP−2M(商品名)、添加量:2〜10質量%)、2−アクリロイロキシエチル−コハク酸(例えば、共栄社化学(株)製のHOA−MS(商品名)、添加量:20〜50質量%)、γ−ブチロラクトンメタクリレート(例えば、大阪有機化学(株)製のGBLMA(商品名)、添加量:20〜30質量%)が挙げられる。密着性を向上させるためには、それぞれ括弧内に示した添加量とするのが適しているが、第1の樹脂層2と第2の樹脂層3の一方のみに、添加剤を添加する場合には、屈折率の違いにより曇って反対側が見えにくくなることを防止するため、添加量は3質量%以下、好ましくは1質量%以下にするとよい。したがって、この場合には、リン酸系の添加剤を採用することが好ましい。これにより、透過鮮明性を高くすることができる。一方、第1の樹脂層2と第2の樹脂層3の両方に添加剤を添加する場合には、屈折率差が極力小さく(好ましくは0.010以下)となるように、添加量を調整すればよい。
【0072】
<第1の支持体4および第2の支持体5>
第1の支持体4および第2の支持体5として好適な材料は、例えば、ガラスや、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂などの樹脂が挙げられるが、これらの材料に特に限定されるものではない。また、支持体と樹脂との密着性を向上させるため、支持体に表面処理を施したり、支持体上に薄い樹脂層を形成したりしてもよい。
【0073】
<入射光の入射方向および反射光の反射方向>
以下、これから用いる入射光の入射方向および反射光の反射方向の表示方法を明らかにしておく。図7は、機能性積層体に入射する入射光の入射方向と、機能性積層体によって反射される反射光の反射方向とを整理して示すための斜視図である。機能性積層体は、入射光Lが入射する平坦な入射面S1を有する。入射光の入射方向および反射光の反射方向を示すために、下記のように2つの偏角θおよびφを定義する。すなわち、入射光Lが入射面S1に入射する点Oにおいて入射面S1に立てた垂線をOP、点Oを起点として入射光Lの光源側に引いた特定の半直線をOQとする。Oを起点とする任意の半直線の、垂線OPからの偏角をθとする。そして、入射光Lの、垂線OPからの偏角をθL(0≦θL≦90°)、垂線OPを基準として入射光Lと対称の方向の偏角を−θL(0≧−θL≧−90°)とおく。また、Oを起点とする任意の半直線を入射面S1に射影し、得られる半直線の、半直線OQからの偏角(方位角)をφとする。この際、半直線OQから時計回り方向に回転した角度を正とし、反時計回り方向に回転した角度を負とする。そして、入射光Lを入射面S1に射影し、得られる半直線OMと半直線OQとがなす角をφL(−90°≦φL≦90°)とおく。このように定めると、入射光Lの入射方向は、偏角θとφの組み(θ、φ)を用いて(θL、φL)と表され、その正反射方向は(−θL、φL+180°)と表される。
【0074】
前述した特定の半直線OQの方向は、機能性積層体10にある方向(方位)から入射した光が、同じ方向(方位)へ指向反射される反射強度が最大になる方向とする。但し、反射強度が最大となる方向が複数ある場合には、そのうちの1つを半直線OQとして選択する。例えば、機能性積層体10では、図4に矢印で示した、機能性層1における反射面7の一次元的配列方向、またはその反対方向を半直線OQの向きに定める。
【0075】
機能性積層体10は、入射光Lのうち、特定波長領域の光L1を選択的に、正反射方向以外の方向へ指向反射する一方、特定波長領域以外の光L2を透過させる。また、機能性積層体10は、入射光L2に対して透明性を有し、後述する範囲の透過像鮮明度を有することが好ましい。ここで、「反射する」とは、特定の波長領域、例えば近赤外領域における反射率が好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは80%以上であることを意味するものとする。「透過させる」とは、特定の波長領域、例えば可視領域における透過率が好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上であることを意味するものとする。
【0076】
入射光L1および入射光L2の波長領域は、機能性積層体10の用途によって異なる。例えば、高層ビルや住居などの建築用ガラスや壁材などに、太陽光の一部を吸収または反射する光学層として機能性積層体10を設ける場合には、入射光L1は近赤外光であり、入射光L2は可視光であることが好ましい。より具体的には、入射光L1が主に波長が780〜2100nmの近赤外光であることが好ましい。太陽光から注がれる光エネルギーは、主として、波長380〜780nmの可視領域の光のエネルギーと、780〜2100nmの近赤外領域の光のエネルギーとからなる。この近赤外領域の光を反射することによって、太陽から注がれる光エネルギーによって建物内の温度が過度に上昇するのを防止することができる。これにより、夏期には冷房負荷を軽減し、省エネルギー化を図ることができる。なお、要求特性によっては、機能性積層体10の入射面S1は、平坦面でなく凹凸を有していてもよい。
【0077】
入射光L1が指向反射される方向を(θR、φR)とすると、−90°≦φR≦90°(0≦θR)であることが好ましい。この範囲内であると、OQの方向が上方になるように機能性積層体10を外部支持体6に貼りつけた場合に、上方から入射してくる入射光L1を上方へ戻すことができる。周辺に高い建物がない場合には、このような特性を有する機能性積層体10が有効である。
【0078】
また、指向反射される方向(θR、φR)が、(θL、−φL)近傍、または、再帰反射方向である(θL、φL)近傍であることが好ましい。近傍とは、(θL、−φL)または(θL、φL)からのずれが、好ましくは5°以内、より好ましくは3°以内であり、さらに好ましくは2°以内の範囲内であることをいう。この範囲内であると、OQの方向が上方になるように機能性積層体10を外部支持体6に貼りつけた場合に、周辺に同程度の高さの建物が立ち並ぶ場合でも、上空から入射してくる入射光L1を他の建物の上空に効率よく戻すことができる。
【0079】
このような指向反射を実現するためには、例えば、球面や双曲面の一部、または三角錐や四角錘や円錐などの3次元構造体の側面を用いることが好ましい。方向(θL、φL;ここで、−90°<φL<90°)から入射した光は、その形状に基づいて方向(θR、φR;ここで、0°<θR<90°、−90°<φR<90°)へ反射させることができる。または、一方向に伸びた柱状体にすることが好ましい。方向(θL、φL;ここで、−90°<φL<90°)から入射した光は、柱状体の傾斜角に基づいて方向(θR、φR;ここで、0°<θR<90°、φR=−φL)に反射させることができる。
【0080】
先にふれた写像鮮明度に関しては、0.5mmの光学くしを用いたときの値が、好ましくは50以上、より好ましくは60以上、さらに好ましくは75以上である。写像鮮明度の値が50未満であると、透過像がぼけて見える傾向がある。50以上、60未満であると、外の明るさにも依存するが、日常生活には問題がない。60以上、75未満であると、光源のように非常に明るい物体のみ回折パターンが気になるが、外の景色を鮮明に見ることができる。75以上であれば、回折パターンはほとんど気にならない。更に0.125mm、0.5mm、1.0mm、2.0mmの光学くしを用いて測定した写像鮮明度の値の合計値が、好ましくは230以上、より好ましくは270以上、さらに好ましくは350以上である。写像鮮明度の合計値が230未満であると、透過像がぼけて見える傾向がある。230以上、270未満であると、外の明るさにも依存するが、日常生活には問題がない。270以上、350未満であると、光源のように非常に明るい物体のみ、回折パターンが気になるが、外の景色を鮮明に見ることができる。350以上であれば、回折パターンはほとんど気にならない。ここで、写像鮮明度の値は、スガ試験機製ICM−1Tを用いて、JIS K7105に準じて測定したものである。ただし、透過させたい波長がD65光源波長と異なる場合には、透過させたい波長のフィルタを用いて校正した後に測定することが好ましい。
【0081】
透過性を持つ波長帯に対するヘイズが、好ましくは6%以下、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは2%以下である。ヘイズが6%を超えると、透過光が散乱され、曇って見えるためである。ここで、ヘイズは、村上色彩製HM−150を用いて、JIS K7136で規定される測定方法により測定したものである。ただし、透過させたい波長がD65光源波長と異なる場合は、透過させたい波長のフィルタを用いて校正した後に測定することが好ましい。機能性積層体10の入射面S1、好ましくは入射面S1および出射面S2は、写像鮮明度を低下させない程度の平滑性を有する。具体的には、入射面S1および出射面S2の算術平均粗さRaは、好ましくは0.08μm以下、より好ましくは0.06μm以下、さらに好ましくは0.04μm以下である。なお、上記算術平均粗さRaは、入射面の表面粗さを測定し、2次元断面曲線から粗さ曲線を取得し、粗さパラメータとして算出したものである。なお、測定条件はJIS B0601:2001に準拠している。測定装置および測定条件を下記に示す。
測定装置:全自動微細形状測定機 サーフコーダーET4000A (株式会社小坂研究所)
λc:0.8mm
評価長さ:4mm
カットオフ:×5倍
データサンプリング間隔:0.5μm
【0082】
機能性積層体10の透過色はなるべくニュートラルに近く、色付きがあるとしても涼しい印象を与える青、青緑、緑色などの薄い色調が好ましい。このような色調を得るためには、入射面S1から入射し、樹脂層及び機能性層1を透過し、出射面S2から出射される透過光の色度座標x、yは、例えばD65光源の照射に対しては、好ましくは0.20<x<0.35かつ0.20<y<0.40、より好ましくは、0.25<x<0.32かつ0.25<y<0.37、更に好ましくは0.30<x<0.32かつ0.30<y<0.35の範囲を満たすのが望ましい。さらに、色調が赤みを帯びないためには、好ましくはy>x−0.02、より好ましくはy>xの関係を満たすのが望ましい。
【0083】
また、反射光の色調が入射角度によって変化すると、例えばビルの窓に適用された場合に、場所によって色調が異なったり、歩行者からは歩くにつれて色が変化するように見えたりするので、好ましくない。このような反射光の色調の変化を抑制するためには、0°以上、60°以下の入射角度θで入射面S1または出射面S2に入射し、樹脂層または機能性層1によって反射された反射光の色座標xの差の絶対値、および色座標yの差の絶対値が、機能性積層体10の両主面のいずれにおいても、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.03以下、さらに好ましくは0.01以下である。このような反射光の色座標x、yに関する数値範囲の限定は、入射面S1、および出射面S2の両方の主面において満たされることが望ましい。
【0084】
以下、実施の形態1の変形例に基づき、光学的機能性積層体として機能する機能性積層体の例について説明する。
【0085】
<変形例1>
図8は、変形例1に基づく機能性積層体50の構造を示す断面図である。この例は請求項16に対応する。機能性積層体50が機能性積層体10と異なるのは、洗浄効果を発現する自己洗浄効果層51を入射面上に備えていることである。自己洗浄効果層51は、例えば、酸化チタンTiO2などの光触媒を含んでおり、光触媒の親水性によって、機能性積層体50の表面に付着した汚れを雨水などで均一に洗い流すことができる。なお、自己洗浄効果層51に代えて、撥水性を有する層(例えば、撥水性を有するフッ素系やシリコーン系の樹脂層)を形成してもよい。
【0086】
光学素子として構成された機能性積層体の光入射面は常に光学的に透明であることが好ましいが、機能性積層体を屋外や汚れの多い室内などに設置すると、表面に汚れ物質が付着し、この汚れ物質によって光が散乱され、光学特性が損なわれることがある。本変形例では、自己洗浄効果層51(親水性を有する層)または撥水性を有する層を設けたことにより、汚れ物質などが表面に付着するのを抑制し、光学特性の低下を防止することができる。
【0087】
<変形例2>
図9は、変形例2に基づく機能性積層体52の構造を示す断面図である。機能性積層体52が機能性積層体10と異なるのは、特定波長領域以外の光L2を透過させるのではなく、散乱させることである。本変形例によれば、赤外線などの、特定波長領域の光L1を指向反射し、かつ可視光などの、特定波長領域以外の光L2を散乱させることができる。このようにすると、機能性積層体52に曇りガラスのような意匠性を付与することができる。
【0088】
図9(a)は、機能性積層体52の一例52aの構造を示す断面図である。機能性積層体52aでは、第2の樹脂層3内に光L2を散乱させる微粒子53が配置されている。微粒子53は、第2の樹脂層3を主として構成する樹脂とは異なる屈折率を有している。微粒子53は、中空微粒子などであってもよい。微粒子53は、無機微粒子および有機微粒子の少なくとも1種であって、例えば、シリカ微粒子およびアルミナ微粒子などの無機微粒子や、スチレン樹脂微粒子、(メタ)アクリル樹脂微粒子、およびそれらの共重合体微粒子などの有機微粒子である。このうち、シリカ微粒子が特に好ましい。
【0089】
図9(b)および(c)は、それぞれ、機能性積層体52の別の例52bおよび52cの構造を示す断面図である。機能性積層体52bでは、第2の樹脂層3の光透過側に光拡散層54が配置されている。機能性積層体52cでは、機能性層1と第2の樹脂層3との間に光拡散層55が配置されている。光拡散層54および55は、それぞれ、樹脂と微粒子とを含有し、微粒子は微粒子53と同様のものである。
【0090】
機能性積層体52では、入射光を散乱する微粒子や光拡散層などの光散乱体が、機能性層1よりも光透過側にあることが望ましい。光入射面と機能性層1との間に光散乱体が存在すると、指向反射特性が損なわれるからである。機能性積層体10を窓ガラスなどに貼り合わせる場合、室内側および室外側のどちらに貼りつけてもよい。
【0091】
<変形例3>
図10は、変形例3に基づく機能性層61の形状を示す斜視図(a)、および機能性積層体60の構造を示す断面図(b)である。図10(a)では、見やすくするため、機能性層61と第2の樹脂層63のみを示した。この例は請求項9に対応する。機能性層61の反射面は、機能性層1と同様に、平面形状が細長い長方形である2種類の反射面64aおよび64bからなる多数の反射面群で構成されており、多数の反射面64aおよび64bは交互に一方向に向かって一次元的に配列されている。また、反射面64aおよび64bは、長辺は光入射面(例えば、第1の支持体4の表面;図10(b)参照。)に対して平行であるが、短辺は、それぞれ、光入射面に対し一定の角度で傾いて形成されている。しかし、機能性層1とは異なり、反射面64aと反射面64bとは、短辺の長さおよび光入射面に対する傾きが互いに異なる。隣接する反射面64aと反射面64bとがなす角を二等分する面Nは、光入射面に直交する方向からαだけ傾いている。すなわち、反射面64aと反射面64bとは二等分面Nに関して非対称であり、機能性層61の反射面は一次元配列方向に関して反転対称性を有していない。機能性層61で再帰反射率が最大になる方向は、概ね二等分面N内にある。機能性層61では二等分面Nが光入射面に直交していないので、再帰反射率が最大になる方向は入射面に直交する方向から傾斜した方向になる。
【0092】
窓ガラスなど、地面に対して略垂直に配置されている部材に機能性積層体を貼りつける場合、太陽からの直射光が下方(地面側)からくることはなく、反射光や散乱光を含めても、一般に上方(空側)から入射する光量の方が下方(地面側)から入射する光量に比べて圧倒的に多い。また、太陽からの光エネルギーの流入が多いのは昼過ぎ頃の時間帯であり、太陽の高度が45°より高いことが多い。このように入射光における入射方向の分布が非対称な場合、(一次元配列方向に関して)対称な反射面を有する機能性積層体10などを配置するより、(一次元配列方向に関して)非対称な反射面を有する機能性積層体60などを適切な向きに配置する方が、効果的に太陽からの近赤外線を上方(空側)に反射することができる場合がある。この場合、機能性層61の反射率に応じて、下記のいずれかを選択するのがよい。
【0093】
機能性層61の反射率が大きい場合、OQの方向、すなわち、再帰反射強度が最も強くなる方向が上方(空側)になるように、機能性積層体60を配置するのがよい。このようにすれば、機能性層61の再帰反射機能を生かして、上方から入射してくる入射光を上方へ戻すことができる。
【0094】
図4(b)は、機能性層1の機能を示す断面図である。見やすくするため、第1の樹脂層2および第2の樹脂層3のハッチングは省略した。第1の支持体4の表面は平坦である。また、機能性層1に接している側とは反対側の、第1の樹脂層2の表面も平坦である。機能性積層体10では、第1の支持体4の平坦な表面(第1の支持体4が省略されている場合には、第1の樹脂層2の平坦な面)が光入射面である。上記の機能性層1が近赤外光を選択的に反射する材料及び/又は層構成からなる場合、機能性層1の反射面に近赤外光が入射すると、近赤外光は、通常、反射面7bと反射面7aで各1回、合計2回正反射され、光源側へ再帰反射される。一方、可視光は機能性層1を単に透過する。機能性層1では、反射面7の対称面、すなわち二等分面Nが光入射面に直交しているので、再帰反射率が最大になる方向は、入射面に直交する方向になる。
【0095】
しかし、再帰反射は正反射を複数回行うので、機能性層61の反射率が小さい場合には、再帰反射される反射率は小さくなる。このような場合には、図10(b)に示すように、二等分面Nが傾いている方向が下方(地面側)になるように、機能性積層体60を配置するのがよい。このようにすると、上方から機能性層61に入射する光のうち、多くの光が、上方に向いた、面積の大きい反射面64aに入射して、1回の正反射で上方に戻される。
【0096】
上記のように、入射光の入射方向が一様ではなく、偏りがある場合には、対称性の高い反射面を有する機能性積層体を配置するより、対称面(例えば、上記二等分面N)または対称軸が一方向に傾斜した、非対称な反射面を有する機能性積層体を適切な向きに配置する方が、効果的である場合がある。上記の例では反射面が一次元配列体である例を示したが、これは、図5に示した二重V字溝形状の機能性層21や、図6に示したコーナーキューブ形状の機能性層31のように、単位凹部が二次元的に配列している場合でも同様である。
【0097】
例えば、機能性層31がコーナーキューブ形状である場合、稜線の曲率半径Rが大きい場合は、上空に向けて傾けた方がよく、下方反射を抑制するという目的においては、地面側に向けて傾いている方が好ましい。太陽光線は、機能性積層体30に対して斜めから入射するため、構造の奥まで光が入射しにくく、入射側の形状が重要となる。すなわち、稜線部分の曲率半径が大きい場合は、再帰反射光が減少してしまうため、上空に向けて傾けることでこの現象を抑制することができる。また、コーナーキューブ形状の機能性層31では、反射面で3回反射することで再帰反射を実現するが、一部の光が2回反射により再帰反射以外の方向に漏れることがある。コーナーキューブを地面側に向けて傾けることで、この漏れ光を上空方向に多く戻すことができる。このように、形状や目的に応じてどちらの方向に傾けてもよい。
【0098】
<変形例4>
図11は、変形例4に基づく機能性層66の形状を示す斜視図(a)、および機能性積層体65の構造を示す断面図(b)である。図11(a)では、見やすくするため、機能性層66と第2の樹脂層68のみを示した。この例は請求項10に対応する。機能性層66の反射面は、機能性層1と同様に、平面形状が細長い長方形である1種類の反射面64からなる多数の反射面群で構成されており、多数の反射面64は一方向に向かって一次元的に配列されている。また、反射面64は、長辺は光入射面(例えば、第1の支持体4の表面;図11(b)参照。)に対して平行であるが、短辺は光入射面に対し一定の角度で傾いて形成されている。
【0099】
機能性層66の反射面は、機能性層61の反射面から反射面64bが省略され、反射面64aだけが反射面69として残されたものと考えることができる。反射面64bが省略されているので、機能性層66の反射面には、指向反射の機能はない。しかし、反射面64bが省略されているので、上方から機能性層66に入射する光のすべてを、上方に向いた反射面69による1回の正反射で上方に戻すことができる。
【0100】
前述したように、再帰反射は正反射を複数回行うので、機能性層の反射率が小さい場合には、再帰反射される反射率は小さくなる。従って、入射光の大部分が上方から入射してくる場合には、上方に向いた反射面による1回の正反射で上方からくる光を上方に戻す方が有利になる。変形例4に基づく機能性層66は、このような目的に特化した光学的機能性層の例である。
【0101】
<変形例5>
図12は、変形例6に基づく機能性層71の形状を示す斜視図である。見やすくするため、図12では、機能性積層体70の機能性層71と第2の樹脂層73のみを示した。機能性層71は、図5に示した機能性層21の変形例である。機能性層71の反射面は、機能性層21の反射面と同様に、多数の単位凹部72が規則正しく配置されて構成されている。しかし、機能性層71の反射面は、機能性層21の反射面と異なり、頂部が丸みを帯びた形状(曲率半径Rを有する形状)となっている点が異なっている。
【0102】
<変形例6>
図13は、変形例6に基づく機能性層74における二次元配列を示す平面図(a)と、平面図(a)に13B−13B線および13C−13C線で示した位置における断面図(b)および(c)である。図5に示した機能性層21や、図6に示した機能性層31と同様に、機能性層74の反射面は、多数の単位凹部75が規則正しく稠密に配置されて構成されている。単位凹部75は外形の平面形状が長方形で、この長方形の内部に、滑らかな曲面からなる反射面を有する凹部が形成されている。機能性層21や機能性層31と同様に、機能性層74も再帰反射層として機能する。
【0103】
<変形例7>
図14は、変形例7に基づく機能性層における二次元配列を示す平面図(a)と、平面図(a)に14B−14B線および14C−14C線で示した位置における断面図(b)および(c)である。図13に示した機能性層74と同様に、機能性層77の反射面は、多数の単位凹部78が規則正しく稠密に配置されて構成されている。単位凹部78は外形の平面形状が六角形で、この六角形の内部に、滑らかな曲面からなる反射面を有する凹部が形成されている。機能性層74と同様に、機能性層77も再帰反射層として機能する。
【0104】
[実施の形態2]
実施の形態2では、請求項17〜20に記載した機能性構造体の例について説明する。本発明の機能性積層体は、代表的には、ガラスなどに貼りつけ、窓材などの機能性構造体を構成するようにすることができる。また、本発明の機能性積層体は、種々の内装部材や外装部材などの機能性構造体を構成するように用いることもできる。これらの機能性構造体は、壁や屋根のように固定された部材のみならず、季節や時間変動など、必要に応じて光学的機能性積層体の適用量を変更できる部材なども挙げられる。より具体的には、光学的機能性積層体を複数の要素に分割し、角度を変更するなどの手段により、光学的機能性積層体への入射光線の透過量を調整可能な部材、例えばブラインドなどが挙げられる。また、巻き取ったり、折り畳んだりすることが可能である光学的機能性積層体を適用した部材、例えばロールカーテンなどが挙げられる。更に、光学的機能性体を枠組みなどに固定し、必要に応じ枠組みごと取り外しが可能な部材、例えば障子などが挙げられる。
【0105】
光学的機能性積層体が適用された内装部材または外装部材としては、例えば、機能性積層体自体により構成されたものや、機能性積層体が貼り合わされた透明基材などにより構成されたものが挙げられる。このような内装部材または外装部材を室内の窓付近に設置することで、例えば、赤外線だけを屋外に指向反射し、可視光線を室内に取り入れることができる。したがって、内装部材または外装部材を設置した場合にも、室内照明の必要性が低減される。また、内装部材または外装部材による室内側への散乱反射もほとんどないため、周囲の温度上昇も抑えることができる。また、視認性制御や強度向上など必要な目的に応じ、透明基材以外の貼り合わせ部材を適用することもできる。
【0106】
<適用例1>
本適用例では、複数の日射遮蔽部材からなる日射遮蔽部材群の角度を変更することにより、入射光線の遮蔽量を調整可能な日射遮蔽装置の一例であるブラインド装置に機能性積層体を適用した例について説明する。
【0107】
図15(a)は、日射遮蔽装置であるブラインド装置80の構造を示す斜視図である。ブラインド装置80は、ヘッドボックス83と、複数のスラット(羽)81からなるスラット群(日射遮蔽部材群)82と、ボトムレール84とを備える。ヘッドボックス83はスラット群82の上方に設けられている。ヘッドボックス83から昇降コード85および昇降操作コード86が下方に向かって延びており、これらのコードの下端にボトムレール84が吊り下げられている。日射遮蔽部材であるスラット81は、例えば、細長い矩形状を有し、ヘッドボックス83から下方に延びるラダーコード87により所定間隔で吊り下げられ、支持される。
【0108】
ヘッドボックス81には、スラット群83の傾斜角度を調整するためのロッドなどの操作手段(図示省略)が設けられている。ヘッドボックス81は、ロッドなどの操作手段の操作に応じてスラット群83の傾斜角度を変化させ、室内などに取り込まれる光量を調節する。また、ヘッドボックス81は、昇降操作コード86などの操作手段の操作に応じて、スラット群83を昇降させる駆動手段(昇降手段)としての機能も有している。
【0109】
図15(b)は、スラット(羽)82の構成例を示す断面図である。スラット82は、基材88と機能性積層体89とを備える。機能性積層体89は、基材88の両主面のうち、スラット群83を閉じた状態において外光が入射する入射面側(例えば窓材に対向する面側)に設けることが好ましい。機能性積層体89と基材88とは、例えば、接着層などにより貼り合される。
【0110】
基材88の形状としては、例えば、シート状、フィルム状、および板状などを挙げることができる。基材88の材料としては、ガラス、樹脂材料、紙材、および布材などを用いることができ、可視光を室内などの所定の空間に取り込むことを考慮すると、透明性を有する樹脂材料を用いることが好ましい。ガラス、樹脂材料、紙材、および布材としては、従来ロールスクリーンとして公知のものを用いることができる。機能性積層体89としては、上記実施形態に係る機能性積層体のうちの1種、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0111】
スラット(羽)82の第2の構成例として、機能性積層体89本体をスラット82として用いてもよい。この場合、機能性積層体89は、ラダーコード87により支持可能であるとともに、支持した状態において形状を維持できる程度の剛性を有していることが好ましい。
【0112】
なお、本適用例では、機能性積層体89を横型ブラインド装置(ベネシアンブラインド装置)に対して適用した例について説明したが、縦型ブラインド装置(バーチカルブラインド装置)に対して適用してもよい。
【0113】
<適用例2>
本適用例では、日射遮蔽部材を巻き取る、または巻き出すことで、入射光線の遮蔽量を調整可能な日射遮蔽装置の一例であるロールスクリーン装置について説明する。
【0114】
図16(a)は、日射遮蔽装置であるロールスクリーン装置90の構造を示す斜視図である。ロールスクリーン装置90は、ヘッドボックス91と、スクリーン92と、芯材93とを備える。ヘッドボックス91は、チェーン94などの操作部を操作することにより、スクリーン92を昇降できるように構成されている。ヘッドボックス91は、その内部にスクリーン92を巻き取り、および巻き出すための巻軸を有し、この巻軸に対してスクリーン92の一端が結合されている。また、スクリーン92の他端には芯材93が結合されている。スクリーン92は可撓性を有し、その形状は特に限定されるものではなく、ロールスクリーン装置90を適用する窓材などの形状に応じて選択することが好ましい。例えば、スクリーン92は矩形状である。
【0115】
図16(b)は、スクリーン92の構成例を示す断面図である。スクリーン92は、基材95と機能性積層体89とを備え、可撓性を有していることが好ましい。機能性積層体89は、基材95の両主面のうち、外光が入射する入射面側(例えば窓材に対向する面側)に設けることが好ましい。機能性積層体89と基材95とは、例えば、接着層などにより貼り合される。なお、スクリーン92の構成はこの例に限定されるものではなく、機能性積層体89をスクリーン92として用いるようにしてもよい。
【0116】
基材95の形状としては、例えば、シート状、フィルム状、および板状などを挙げることができる。基材95の材料としては、ガラス、樹脂材料、紙材、および布材などを用いることができ、可視光を室内などの所定の空間に取り込むことを考慮すると、透明性を有する樹脂材料を用いることが好ましい。ガラス、樹脂材料、紙材、および布材としては、従来ロールスクリーンとして公知のものを用いることができる。機能性積層体89としては、上記実施形態に係る機能性積層体のうちの1種、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0117】
なお、本適用例ではロールスクリーン装置について説明したが、本実施の形態はこの例に限定されない。例えば、日射遮蔽部材を折り畳むことで、日射遮蔽部材による入射光線の遮蔽量を調整可能な日射遮蔽装置に対しても本発明は適用可能である。このような日射遮蔽装置としては、例えば、日射遮蔽部材であるスクリーンを蛇腹状に折り畳むことで、入射光線の遮蔽量を調整するプリーツスクリーン装置を挙げることができる。
【0118】
<適用例3>
本適用例では、指向反射性能を有する光学的機能性体を採光部に備える建具(内装部材または外装部材)に対して機能性積層体を適用した例について説明する。
【0119】
図17(a)は、日射遮蔽部材である建具96の構造を示す斜視図である。建具96は、その採光部に光学体97を備え、その周縁部に支持体として枠材98を備える。建具96としては、例えば障子を挙げることができるが、本発明はこの例に限定されるものではなく、採光部を有する種々の建具に適用可能である。光学体97は枠材98により固定されるが、必要に応じて枠材98を分解して光学体97を取り外すことができるように構成してもよい。
【0120】
図17(b)は、光学体97の構成例を示す断面図である。光学体97は、基材99と、機能性積層体89とを備える。機能性積層体89は、基材99の両主面のうち、外光を入射させる入射面側に設けられる。機能性積層体89と基材99とは、接着層などにより貼り合される。なお、光学体97の構成はこの例に限定されるものではなく、機能性積層体89を光学体97として用いるようにしてもよい。
【0121】
基材99は、例えば、可撓性を有するシート、フィルム、または基板である。基材99としては、ガラス、樹脂材料、紙材、および布材などを用いることができ、可視光を室内などの所定の空間に取り込むことを考慮すると、透明性を有する樹脂材料を用いることが好ましい。ガラス、樹脂材料、紙材、および布材としては、従来建具の光学的機能性体として公知のものを用いることができる。機能性積層体89としては、上述の実施形態または変形例に係る機能性積層体のうちの1種、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0122】
なお、上述の適用例では、窓材、ブラインド装置のスラット、ロールスクリーン装置のスクリーン、および建具などの内装部材または外装部材に適用した場合を例として説明したが、本発明はこの例に限定されるものではなく、上記以外の内装部材および外装部材にも適用可能である。
【実施例】
【0123】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0124】
[実施例1〜6]
実施例1〜6では、図1(a)に示した機能性積層体10として、近赤外光を選択的に指向反射する一方、可視光を透過させる光学機能性フィルムを作製した。この際、ピッチは50μmとし、第1の樹脂と第2の樹脂、および第1の支持体と第2の支持体は、それぞれ同一材料とした。樹脂および支持体の材料として種々の弾性率を有する材料を用い、その影響を調べた。
【0125】
<光学機能性フィルムの作製>
まず、図2(a)に示したように、バイトによる切削加工によって、ニッケル・リン(Ni・P)製の金型31の表面に、機能性層1と同一の立体形状を形成した。
【0126】
次に、図2(b)に示したように、金型31の表面に塗布法で第1の樹脂材料層32を形成した。さらにその上に、厚さ100μmのフィルム状の第1の支持体4を押し当て、金型31と第1の樹脂材料層32と第1の支持体4とを密着させた。
【0127】
次に、図2(c)に示したように、第1の支持体4の側から紫外光を第1の樹脂材料層32に照射し、樹脂モノマー及び/又はオリゴマーを硬化させ、第1の樹脂層2を形成した。
【0128】
次に、第1の支持体4と第1の樹脂層2との積層体を金型31から剥がし、金型31の表面の立体形状が転写された第1の樹脂層2を得た。
【0129】
次に、図3(e)に示したように、スパッタリング法によって、立体形状が転写された第1の樹脂層2の表面に、機能性層1として酸化ニオブ(V)Nb2O5層および銀Ag層の交互多層膜を形成した。
【0130】
次に、図3(f)に示したように、機能性層1のもう一方の主面に、塗布法で第2の樹脂材料層33を形成した。第2の樹脂材料層33から気泡を押し出した後に、その上に厚さ100μmのフィルム状の第2の支持体5を押し当て、機能性層1と第2の樹脂材料層33と第2の支持体5とを密着させた。
【0131】
次に、図3(f)に示したように、第2の支持体5の側から紫外光を第2の樹脂材料層33に照射し、樹脂モノマー及び/又はオリゴマーを硬化させ、第2の樹脂層3を形成した。この結果、目的とする機能性積層体10である光学機能性フィルムを得た。
【0132】
表1は、実施例1〜6および比較例1〜3で用いた、樹脂および支持体の各材料を示す表である。樹脂材料A〜Hの構成は下記の通りである。
【0133】
樹脂材料A ポリビニルブチラール(平均分子量=90000〜120000) 70質量%
トリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサン酸) 30質量%
【0134】
樹脂材料B ウレタンアクリレート(CN991) 48.5質量%
ベンジルメタクリレート(ライトエステルBZ) 8.5質量%
光重合開始剤(イルガキュア184) 3質量%
【0135】
樹脂材料C ウレタンアクリレート(UF−8001G) 48.5質量%
ベンジルメタクリレート(ライトエステルBZ) 48.5質量%
光重合開始剤(イルガキュア184) 3質量%
【0136】
樹脂材料D ウレタンアクリレート(UF−8001G) 41質量%
ベンジルメタクリレート(ライトエステルBZ) 41質量%
架橋剤(T2325) 15質量%
光重合開始剤(イルガキュア184) 3質量%
【0137】
樹脂材料E ウレタンアクリレート(アロニックス) 97質量%
光重合開始剤(イルガキュア184) 3質量%
【0138】
樹脂材料F 環状ポリオレフィン樹脂 100質量%
【0139】
樹脂材料G ウレタンアクリレート(アロニックス) 82質量%
架橋剤(T2325) 15質量%
光重合開始剤(イルガキュア184) 3質量%
【0140】
樹脂材料H PETフィルム(コスモシャインA4300) 100質量%
【0141】
ここで、ポリビニルブチラールはシグマアルドリッチ製、CN991(商品名)はサートマー(株)製、ライトエステルBZ(商品名)は共栄社化学(株)製、イルガキュア184(商品名)は日本化薬(株)製、UF−8001G(商品名)は共栄社化学(株)製、T2325(商品名)は東京化成工業(株)製、アロニックス(商品名)は東亜合成(株)製、コスモシャインA4300(商品名)は東洋紡績(株)製である。
【0142】
【表1】
【0143】
<評価方法と判断基準>
界面での膜の欠損に関しては、ヒートサイクル前後での可視透過率測定を行った。ヒートサイクル試験はエスペック株式会社製のTSA−301L−Wを用いた。試験条件としては、−40℃で1時間保持した後、85℃で1時間保持する工程を1サイクルとし、このサイクルを100回繰り返した後、常温で取り出した。膜に欠損があると、透過率が低下するので、膜の欠損の度合いを透過率によって間接的に評価した。
【0144】
<JIS 7161に基づく弾性率の測定>
ダンベル形状に打ち抜いた厚さ0.1mmのフィルム状樹脂を、5mm/分の引っ張り速度で各5回測定を行った。ひずみ0.0005%とひずみ0.0025%での各々の引っ張り応力から、25℃における弾性率を求めた。ガラスの場合は、厚さが100μmのガラス片をガラスカッターで切り出した。
【0145】
<可視透過率測定>
V−7100(日本分光株式会社製)を用いて、波長550nmにおける透過率の測定を行った。高温高湿試験前後での透過率を比較し、550nmでの透過率の減少率が2%以上である場合を不合格、2%未満である場合を合格とした。
【0146】
図18に、実施例1〜6および比較例1〜3における透過率の減少率を示す。また、表1に、透過率の減少率および評価結果を示す。
【0147】
[実施例7]
実施例7では、図1(b)に示した機能性積層体11として、近赤外光を選択的に指向反射する一方、可視光を透過させる光学機能性フィルムを作製した。この際、ピッチは50μmとした。離型剤としてリリエース(商品名;東レダウコーニング(株)製)を用いて離型処理を施した石英板を第2の支持体として、実施例1〜6と同様にして機能性積層体を作製し、その後、石英板を剥離させて機能性積層体11である光学機能性フィルムを得た。第1の基材、および第1の樹脂と第2の樹脂として、下記の材料を用いた。
第1の基材:PET樹脂コスモシャインA4300(商品名;東洋紡績(株)製) 弾性率3.9×109Pa
第1および第2の樹脂:樹脂E 弾性率1.4×109Pa
実施例1〜6と同様にして測定した可視光の透過率の減少率は−1.3%であり、評価は良であった。
【0148】
以上、本発明を実施の形態および実施例に基づいて説明したが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0149】
1…機能性層、2…第1の樹脂層、3…第2の樹脂層、4…第1の支持体、
5…第2の支持体、6…外部支持体、7a、7b…反射面、10、11…機能性積層体、
20…機能性積層体、21…機能性層、22a〜22d…反射面、23…単位凹部、
24…第2の樹脂層、30…機能性積層体、31…機能性層、32a〜32c…反射面、
33…単位凹部、34…第2の樹脂層、41…金型、42…第1の樹脂材料層、
43…第2の樹脂材料層、50…機能性積層体、51…自己洗浄効果層、
52a〜52c…機能性積層体、53…微粒子、54、55…光拡散層、
60…機能性積層体、61…機能性層、2…第1の樹脂層、63…第2の樹脂層、
64a、64b…反射面、65…機能性積層体、66…機能性層、67…第1の樹脂層、
68…第2の樹脂層、69a、69b…反射面、70…機能性積層体、71…機能性層、
72…反射面、73…第2の樹脂層、74…機能性層、75…反射面、
76…第2の樹脂層、77…機能性層、78…反射面、79…第2の樹脂層、
80…ブラインド装置、81…スラット(羽)、82…スラット群(日射遮蔽部材群)、
83…ヘッドボックス、84…ボトムレール、85…昇降コード、
86…昇降操作コード、87…ラダーコード、88…基材、89…機能性積層体、
90…ロールスクリーン装置、91…スクリーン、92…ヘッドボックス、93…芯材、
94…チェーン、95…基材、96…建具、97…光学的機能性体、98…枠材、
99…基材、100…キューブコーナーシート材料、112…キューブコーナー要素、
114…本体部、116…ランド層、118…本体層、120…裏面、121…前面、
122a、122b、122c…キューブコーナー要素を構成する平面
【先行技術文献】
【特許文献】
【0150】
【特許文献1】特許第3623506号公報(請求項1、第5頁、図1及び2)
【特許文献2】特開2007−10893号公報(請求項2、段落0040〜0043、図1及び2)
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の波長領域の光を選択的に指向反射する一方、その波長領域外の光を透過させる光学機能性フィルムなどとして好適な機能性積層体、及びその機能性積層体を備えた機能性構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高層ビルや住居などの建築用ガラスや車窓ガラスなどに、太陽光の一部を吸収または反射する光学層が設けられる例が増加している。これは、窓から室内に入射した太陽光によって、室内の温度が過度に上昇するのを防止することを目的としている。太陽から注がれる光エネルギーは、主として、波長380〜780nmの可視領域の光のエネルギーと、780〜2100nmの近赤外領域の光のエネルギーとからなる。このうち、近赤外領域の光を遮断しても人間の視覚が損なわれることはないので、高い透明性・視認性と高い熱遮断性とを両立させるためには、近赤外領域の光の透過を制限することが重要である。
【0003】
可視領域の光に対する透明性を維持しながら、近赤外領域の光を遮断する構成として、近赤外領域の光に対して選択的に高い吸収率を有する層を設ける構成と、近赤外領域の光に対して選択的に高い反射率を有する層を設ける構成とがある。
【0004】
吸収層を設ける構成としては、有機系の色素膜を設ける構成が多数提案されている。しかし、このような色素膜を窓ガラスに貼ると、吸収された光が窓表面で熱に変わり、その一部が輻射熱として室内に伝わるので、熱遮断性が不十分になりやすいという問題がある。また、熱応力によりガラスが割れるおそれがあり、また、色素膜の耐候性が低く、頻繁に貼り換えができない高層ビルなどには適用しづらいという問題もある。
【0005】
また、反射層を設ける構成としては、光学多層膜や金属含有膜や透明導電性膜などを設ける構成が多数提案されている。しかし、反射層が平面状の窓ガラスに設けられた場合、上方から入射した太陽光は正反射され、下方に降り注ぐことになり、別の建物や地面に到達し、そこで吸収されて熱に変わり、周囲の気温を上昇させる。このため、このような反射層が窓全体に設けられたビルの周辺では、局所的な温度上昇が起こり、ヒートアイランド現象が助長されたり、反射光の照射面で芝生が生長しなくなったりするなど、熱汚染による、新たな環境問題が引き起こされる。
【0006】
一方、近年、再帰反射シートが、例えば道路標識など、多くの用途に広く用いられている。再帰反射とは、入射光をその発生源の方向に再び導くように反射することを言い、指向反射の1つである。指向反射とは、入射光を正反射(入射角と反射角が等しい反射)の方向以外のある特定の方向へ反射するとともに、その反射強度が、指向性をもたない拡散反射強度よりも十分に強い反射のことである。反射面が一定の方向を向いた1枚の平面である場合には、正反射と、表面の平滑性の乱れに起因する拡散反射とが起こる。これに対し、反射面が、ある規則性をもって異なる方向に配向している多数の小さな面からなる場合には、入射光は小さな面による正反射を複数回繰り返し、その結果、指向反射が起こることがある。
【0007】
再帰反射シート材料には、ビーズ添加シート材料とキューブコーナーシート材料との2種類がある。ビーズ添加シート材料では、複数のガラスまたはセラミックの微小球を用いて、入射光を再帰反射する。一方、キューブコーナーシート材料は、典型的には多数の硬質相互接続キューブコーナー要素を用いて入射光を再帰反射する。
【0008】
図19は、後述の特許文献1に示されているキューブコーナー再帰反射シート材料の一例100を示す断面図(a)、およびキューブコーナー要素の裏面(光入射面の反対側の面)120を示す平面図(b)である。特許文献1には、次のように説明されている。
【0009】
キューブコーナーシート材料100は、多数のキューブコーナー要素112と本体部114とを含んでなる。本体部114は、ランド層116と本体層118とを含む。本体層118は、シート材料100全体の一体性を維持する支持体に相当する。ランド層116は、キューブコーナー要素112のベースに隣接して配置されている層であり、この点で本体層118と区別される。
【0010】
キューブコーナー要素112は、本体部114の裏面120から突出して設けられている。図19(b)に示すように、多数のキューブコーナー要素112は裏面120上に規則的に対称性よく配置されている。各キューブコーナー要素112は、3つの露出平面122a、122b、および122cを有する三方プリズムの形状をもつ。多くの場合、この三方プリズムは、立方体の1つの頂点と、その頂点に最近接の3つ頂点からなる三角錐形で、平面122a、122b、および122cは互いに直交している(これは絶対に必要ということではない。)。入射光は、前面121からキューブコーナーシート材料100に入り、本体部114を通過して、キューブコーナー要素112の1つの平面122にあたる。入射光は、その後、各平面122a、122b、および122cでそれぞれ1回ずつ、合計3回反射を繰り返して、入射方向へ戻る。
【0011】
再帰反射シート材料100は、凹凸面や可撓性面に使用することがある。そこで、特許文献1では、被貼付物に追従させて屈曲させた場合にも良好な再帰反射性を有するように、本体層118が、弾性率が7×108Pa未満である高分子材料を含有し、キューブコーナー要素112が、弾性率が1.6×109Pa以上である高分子材料を含有する再帰反射シート材料が提案されている。また、1つの好ましい構成として、キューブコーナー要素112とランド層116が類似または同種類のポリマーから形成される例が記されている。
【0012】
また、後述の特許文献2には、
実質的に平坦な表面とキューブコーナー型再帰反射構造を備える裏面とを有する、光 透過性材料でなる光学構造層と;
該光学構造層の裏面上に設けられた、可視光は透過させて可視光以外の特定波長域の 光を選択的に反射する、波長選択反射層と;
該波長選択反射層の、光学構造層と反対側の面上に設けられた光透過性樹脂層と
を有する、透明波長選択性再帰反射体などが提案されている。
【0013】
上記透明波長選択性再帰反射体を作製するには、光学構造層の、キューブコーナー型再帰反射構造を備える裏面に、ポリマー材料層や、フッ化リチウムなどの無機材料層や、ITO(インジウム・スズ複合酸化物)などの透明導電層などからなる波長選択反射層を形成する。
【0014】
特許文献2などで提案されている、波長選択性を有する指向反射体を応用すれば、近赤外領域の光に対して選択的に高い反射率を有し、かつ、上方から入射した光を下方に正反射するのではなく、上方へ指向反射する反射層を形成することができると考えられる。このような反射層を窓ガラスに設ければ、窓から室内に入射する太陽光によって室内の温度が過度に上昇するのを防止しながら、反射光によって周辺環境に熱汚染が引き起こされる問題も回避できると考えられる。また、近赤外領域の光に対してその何割かを反射する半反射(ハーフミラー)特性を有する反射層を設けることでも、室内の温度上昇の防止と周辺環境への熱汚染の防止との妥協点を見出すことができると考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、波長選択性を有する指向反射体や半反射(ハーフミラー)体の製造工程では、製造工程において加えられる力や、温度変化による膨張収縮などによって、波長選択反射層が剥離してしまったり、大きな割れが生じたりして損なわれ、機能が大きく低下するという問題があることが判明した。図20は、特許文献2で提案されている透明波長選択性再帰反射体などの指向反射体において、キューブコーナー型の光学構造層から一部が剥離した波長選択反射層を、光学顕微鏡によって観察した観察像である。
【0016】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、特定の波長領域の光を選択的に指向反射又は半反射する一方、その波長領域外の光を透過させる光学機能性フィルムなどとして好適な機能性積層体であって、外力や温度変化による膨張収縮などによって損なわれにくい機能性積層体、及びその機能性積層体を備えた機能性構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
即ち、本発明は、
所定の立体的形状に形成された無機物層を含有する機能性層と、
前記機能性層の2つの主面のそれぞれに密着し、前記機能性層を狭持するように配置 された第1の樹脂層及び第2の樹脂層と、
前記第1の樹脂層の、前記機能性層と接している面とは反対側の面、及び前記第2の 樹脂層の、前記機能性層と接している面とは反対側の面にそれぞれ接して配置され、前 記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層に比べ弾性率が大きい、第1の支持体及び第2の 支持体と
を有し、前記第1の支持体及び前記第2の支持体の一方は、それと同等以上の弾性率を有する外部支持体で代替される場合には、省略可能である、機能性積層体に係わるものである。
【0018】
また、前記機能性積層体を備える、機能性構造材に係わるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の機能性積層体によれば、前記機能性層は、前記第1の支持体と前記第2の支持体との間に、前記第1の樹脂層と前記第2の樹脂層とを介して狭持されている。しかも、前記第1の支持体及び前記第2の支持体の弾性率は、前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層の弾性率に比べて大きい。前記機能性層は、いわば、クッション材にくるまれた状態で、比較的変形しにくい2つの支持体の間に納められている。従って、前記機能性積層体に外力が作用しても、外力は、まず、比較的変形しにくい前記第1の支持体及び前記第2の支持体によって受け止められるので、内部に生じる変形や応力は小さく抑えられる。それでも生じる変形や応力は、変形しやすい前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層によって緩和される。このため、前記機能性層に作用する変形や応力はさらに小さく抑えられる。温度変化による膨張収縮などによる応力も、同様に、前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層によって緩和される。以上の結果、本発明の機能性積層体では、前記機能性層が外力や温度変化による膨張収縮などによって損なわれにくい。
【0020】
本発明の機能性構造材は、前記機能性積層体を備えるので、上記と同様の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に基づく機能性積層体の構造を示す断面図である。
【図2】同、機能性積層体の作製工程のフローを示す断面図である。
【図3】同、機能性積層体の作製工程のフローを示す断面図である。
【図4】同、機能性層の形状の例を示す斜視図(a)、およびその機能を示す断面図(b)である。
【図5】同、機能性層の別の形状を示す斜視図である。
【図6】同、機能性層のさらに別の形状を示す平面図(a)、および6B−6B線の位置における拡大断面図(b)である。
【図7】同、機能性積層体に入射する入射光と、機能性積層体によって反射された反射光との関係を示す斜視図である。
【図8】同、変形例1に基づく機能性積層体の構造を示す断面図である。
【図9】同、変形例2に基づく機能性積層体の構造を示す断面図である。
【図10】同、変形例3に基づく機能性層の形状を示す斜視図(a)、およびその機能を示す断面図(b)である。
【図11】同、変形例4に基づく機能性層の形状を示す斜視図(a)、およびその機能を示す断面図(b)である。
【図12】同、変形例5に基づく機能性層の形状を示す斜視図である。
【図13】同、変形例6に基づく機能性層における二次元配列を示す平面図(a)と、平面図(a)に13B−13B線および13C−13C線で示した位置における断面図(b)および(c)である。
【図14】同、変形例7に基づく機能性層における二次元配列を示す平面図(a)と、平面図(a)に14B−14B線および14C−14C線で示した位置における断面図(b)および(c)である。
【図15】本発明の実施の形態2に基づくブラインド装置の構造を示す斜視図(a)、およびスラットの断面図(b)である。
【図16】同、ロールスクリーン装置の構成を示す斜視図(a)、およびスクリーンの断面図(b)である。
【図17】同、建具の構成を示す斜視図(a)、および光学的機能性体の断面図(b)である。
【図18】本発明の実施例および比較例における試験結果を示すグラフである。
【図19】特許文献1に示されている、キューブコーナー再帰反射シート材料の一例を示す断面図(a)、およびキューブコーナー要素の裏面(光入射面の反対側の面)を示す平面図(b)である。
【図20】特許文献2で提案されている透明波長選択性再帰反射体などの指向反射体において見出された、波長選択反射層の剥離を示す顕微鏡観察像である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の機能性積層体において、前記第1の支持体又は前記第2の支持体が省略されており、前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層に比べ弾性率が大きい前記外部支持体に、前記第1の樹脂層又は前記第2の樹脂層を接着するように構成されているのがよい。
【0023】
また、JIS 7161に基づいて測定された、前記第1の支持体及び前記第2の支持体の弾性率が、25℃において7×108〜7.2×1010Paであるのがよい。
【0024】
また、前記第1の樹脂と前記第2の樹脂とが同種の材料からなるのがよい。
【0025】
また、前記機能性積層体が、前記第1の支持体の表面を光入射面とし、入射光を反射、吸収、半透過、又は透過する光学的機能性積層体であるのがよい。
【0026】
この際、前記機能性層が、指向反射性を有する光学的機能性層であるのがよい。例えば、前記機能性層の反射面が第1の反射面群と第2の反射面群からなる多数の反射面群で構成され、前記第1の反射面及び前記第2の反射面の平面形状は細長い長方形で、長辺は互いに同じ長さであり、前記長辺は前記光入射面に対して平行であるが、前記第1の反射面および前記第2の反射面の短辺は、それぞれ、前記光入射面に対して一定の角度で傾いて形成されており、多数の前記第1の反射面及び多数の前記第2の反射面が、前記反射面の長手方向に直交する方向に向かって一次元的に交互に配列されているのがよい。
【0027】
別の例としては、前記機能性層の反射面は、多数の単位凹部又は単位凸部が規則正しく配置されて構成されており、前記単位凹部又は単位凸部の立体的形状が、角錐形、円錐形、半球形、又はシリンドリカル形であるのがよい。
【0028】
これらの指向反射性を有する光学的機能性層は、前記機能性層の反射面の対称面の面内方向又は対称軸の方向、すなわち、再帰反射率が最大又は概ね最大になる方向が、前記入射面に直交する方向から傾斜しているのがよい。
【0029】
あるいは、前記機能性層の反射面が、1種類の、個片化された、多数の反射面群で構成され、前記反射面の平面形状は細長い長方形で、その長辺は前記光入射面に対して平行であるが、その短辺は前記光入射面に対して一定の角度で傾いて形成されており、多数の前記反射面がその長手方向に直交する方向に向かって一次元的に配列されているのがよい。
【0030】
また、機能性積層体が、特定の波長領域の入射光を選択的に反射、吸収、又は透過する光学的機能性積層体であるのがよい。とくに、前記機能性層が、特定の波長領域の入射光を選択的に反射又は透過する光学的機能性層であるのがよい。この場合、前記機能性層が、高屈折率層と金属層とが積層された複数層からなるか、又は、低誘電率層と高誘電率層とが交互に積層された複数層からなるか、又は、可視光領域において透明性を有する導電性材料を主成分とする透明導電層、又は外部刺激により反射性能が可逆的に変化するクロミック材料を主成分とする機能性層であるかであるのがよい。
【0031】
また、前記機能性積層体の表面に、撥水性又は親水性を有する層を備えるのがよい。
【0032】
本発明の機能性構造材は、入射光を反射、吸収、半透過、又は透過する光学的機能性積層体を備え、窓材、日射遮蔽部材、建具として構成されているのがよい。
【0033】
次に、本発明の好ましい実施の形態を図面参照下に具体的かつ詳細に説明する。
【0034】
[実施の形態1]
実施の形態1では、請求項1〜16に記載した機能性積層体の例について説明する。
【0035】
[機能性積層体]
図1(a)は、実施の形態1に基づく機能性積層体10の構造を示す断面図である。機能性積層体10は、機能性層1と、機能性層1の2つの主面のそれぞれに密着し、機能性層1を狭持するように配置された第1の樹脂層2および第2の樹脂層3と、第1の樹脂層2の、機能性層1と接している面とは反対側の面に接して配置された第1の支持体4、第2の樹脂層3の、機能性層1と接している面とは反対側の面に接して配置された第2の支持体5とを有する。機能性層1は所定の立体的形状に形成された無機物層を含有し、その材料、層構造、および立体的形状に応じて、特定の機能を発現する層である。
【0036】
機能性層1は、第1の支持体4と第2の支持体5との間に、第1の樹脂層2と第2の樹脂層3とを介して狭持されている。しかも、第1の支持体4および第2の支持体5の弾性率は、第1の樹脂層2および第2の樹脂層3の弾性率に比べて大きい。機能性層1は、いわば、クッション材にくるまれた状態で、比較的変形しにくい2つの支持体の間に納められている。従って、機能性積層体10に外力が作用しても、外力は、まず、比較的変形しにくい第1の支持体4および第2の支持体5によって受け止められるので、内部に生じる変形や応力は小さく抑えられる。それでも生じる変形や応力は、第1の支持体4と変形しやすい第1の樹脂層2との界面、第2の支持体5と変形しやすい第2の樹脂層3との界面、並びに、第1の樹脂層2および第2の樹脂層3の内部で緩和される。このため、機能性層1に作用する変形や応力はさらに小さく抑えられる。温度変化による膨張収縮などによる応力も、同様に第1の樹脂層2および第2の樹脂層3によって緩和される。以上の結果、機能性積層体10では、機能性層1が外力や温度変化による膨張収縮などによって損なわれにくい。もし、逆に、第1の支持体4および第2の支持体5の弾性率が、第1の樹脂層2および第2の樹脂層3の弾性率に比べて小さければ、機能性層1と、第1の樹脂層2および第2の樹脂層3との間に応力が集中し、界面破壊が生じやすい。なお、必ずしも絶対に必要ということではないが、第1の支持体4および第2の支持体5は、使用温度域および製造プロセス温度域の両方で上記の条件を満たすことが望ましい。
【0037】
そして、JIS 7161に基づいて測定された、第1の支持体4および第2の支持体5の弾性率が、25℃において7×108〜7.2×1010Paであるのがよい。弾性率が7×108Pa未満である場合には、支持体が不必要に変形してしまうので、ハンドリングしにくくなる問題点がある。また、弾性率が7.2×1010Paをこえる場合には、ロール状に巻くことができず、製造上、輸送・保管上、および利用上で不便である
【0038】
また、第1の樹脂2と第2の樹脂3とは、同種の材料からなるのがよい。このようであると、第1の樹脂2と第2の樹脂3との間で力学的なバランスがとれやすく、機能性層1に加わる応力が小さくなると期待される。
【0039】
図1(b)は、実施の形態1の変形例に基づく機能性積層体11の構造を示す断面図である。機能性積層体11は、請求項2に対応し、第2の支持体5が省略されていること以外は、機能性積層体10と同様に構成されている。この場合、第2の樹脂層3は外部支持体6に貼り付けられる。外部支持体6は、第2の支持体と同等以上の弾性率を有し、弾性率が第1の樹脂層2および第2の樹脂層3の弾性率に比べて大きい物体で、例えば窓ガラスなどである。第2の樹脂層3は、(図示省略した)接着剤または粘着剤を介して外部支持体6に貼り付けられるか、または、第2の樹脂自体が接着剤または粘着剤であるのがよい。この例では第2の支持体5が省略されている例を示したが、第1の支持体5が省略されていて、これが外部支持体6で代替されるのでもよい。
【0040】
[機能性積層体の作製]
図2および図3は、実施の形態1に基づく機能性積層体10の作製工程を示す断面図である。
【0041】
機能性積層体10を作製するには、まず、図2(a)に示すように、バイトによる切削加工やレーザー加工などによって、金型41の表面に所定の立体形状を形成する。この立体形状は、作製しようとする機能性層1の立体形状と同一の形状、またはその凹凸を反転形状とする。本例では同一の形状とする。
【0042】
次に、図2(b)に示すように、この金型41の表面に塗布法などで第1の樹脂材料層42を形成する。第1の樹脂材料層42は、硬化すると第1の樹脂層2に変化する、未硬化の樹脂モノマー及び/又はオリゴマーからなる層である。さらにその上に、例えば、厚さが100μm程度のフィルム状の第1の支持体4を押し当て、金型41と第1の樹脂材料層42と第1の支持体4とを密着させる。
【0043】
次に、図2(c)に示すように、第1の支持体4の側から紫外光を第1の樹脂材料層42に照射し、樹脂モノマー及び/又はオリゴマーを硬化させ、第1の樹脂層2を形成する。
【0044】
次に、図2(d)に示すように、第1の支持体4と第1の樹脂層2との積層体を金型41から剥離させ、金型41の表面の立体形状の反転形状が転写された第1の樹脂層2を得る。この例では、第1の樹脂層2の材料として紫外線硬化性樹脂を用いる方法を示したが、第1の樹脂層2の材料として熱可塑性樹脂を用い、そのガラス転移温度より高い温度に加熱しながら第1の樹脂材料層42を金型41に押し当て、その後、ガラス転移温度より低い温度に冷却して金型41から剥離させることにより、第1の樹脂層2を形成してもよい。
【0045】
次に、図3(e)に示すように、第1の樹脂層2の表面に密着するように機能性層1を成膜する。この結果、機能性層1の、第1の樹脂層2に密着している主面は、金型41の表面の立体形状と同じ形状に形成される。機能性層1の成膜方法は、とくに限定されることはなく、蒸着法、スパッタリング法、化学気相成長法(CVD法)、塗布法、および浸漬法など、用いる材料や機能性層1の形状に応じて適宜選択する。
【0046】
次に、図3(f)に示すように、機能性層1のもう一方の主面に、塗布法などで第2の樹脂材料層43を形成する。第2の樹脂材料層43は、硬化すると第2の樹脂層3に変化する、未硬化の樹脂モノマー及び/又はオリゴマーからなる層である。第2の樹脂材料層43から気泡を押し出した後に、その上に厚さ100μm程度のフィルム状の第2の支持体5を押し当て、機能性層1と第2の樹脂材料層43と第2の支持体5とを密着させる。
【0047】
次に、図3(g)に示すように、第2の支持体5の側から紫外光を第2の樹脂材料層43に照射し、樹脂モノマー及び/又はオリゴマーを硬化させ、第2の樹脂層3を形成する。この結果、機能性積層体10を得る。この例では、第2の樹脂層3の材料として紫外線硬化性樹脂を用いる方法を示したが、第2の樹脂層3の材料として熱可塑性樹脂を用い、そのガラス転移温度より高い温度に加熱しながら第2の樹脂材料層43を機能性層1に押し当て、その後、ガラス転移温度より低い温度に冷却してもよい。
【0048】
機能性積層体11を得るには、第2の支持体5に剥離用フィルムを被せた状態で図3(f)および図3(g)に示した工程を行い、その後、剥離用フィルムのところで、硬化した樹脂層3から第2の支持体5を剥がせばよい。
【0049】
[光学的機能性積層体]
機能性積層体10または11は、機能性層1の所定の立体的形状がその機能の発現に必須のものであること以外に、とくに限定されることはない。代表的には、機能性積層体10または11は、入射光を反射、吸収、半透過、又は透過する光学的機能性積層体である。この場合、とくに、機能性層1が、指向反射性を有する光学的機能性層であるのがよい。また、機能性積層体10または11が、特定の波長領域の入射光を選択的に反射、吸収、半透過、又は透過する光学的機能性積層体であるのがよい。この場合、とくに、機能性層1が、特定の波長領域の入射光を選択的に反射又は透過する光学的機能性層であるのがよい。
【0050】
以下、機能性層1が、特定の波長領域の光を選択的に指向反射する一方、その波長領域外の光を透過させる波長選択反射層であり、機能性積層体10が特定の波長領域の光を選択的に指向反射する一方、その波長領域外の光を透過させる光学機能性フィルムとして構成されている例について、各部材等を詳述する。なお、機能性積層体10が機能性積層体11であっても同様である。
【0051】
この際、選択的に指向反射する光が近赤外光であり、透過させる光が可視光であるのがとくに好ましい。既述したように、窓から室内に入射する太陽光によって、室内の温度が過度に上昇するのを防止することを目的として、窓ガラスなどに太陽光の一部を反射する光学層が設けられる例が増加している。太陽から注がれる光エネルギーは、主として、可視領域の光のエネルギーと近赤外領域の光のエネルギーとからなる。このうち、近赤外領域の光を遮断しても人間の視覚が損なわれることはないので、高い透明性・視認性と高い熱遮断性とを両立させるためには、近赤外領域の光の透過を制限することが重要である。近赤外光を選択的に再帰反射する光学機能性フィルムを窓ガラスに貼り付けると、周囲への熱汚染を生じることなく、この目的を達成できるので好ましい。
【0052】
<機能性層の形状>
図4(a)は、機能性積層体10における機能性層1の形状の例を示す斜視図である。見やすくするため、機能性層1と第2の樹脂層3のみを示した。この例は請求項7に対応する。機能性層1の反射面は、2種類の反射面7aおよび7bからなる多数の反射面群で構成されており、多数の反射面7aおよび7bは交互に一方向に向かって一次元的に配列されている。反射面7aおよび7bの平面形状は細長い長方形で、互いに同じ大きさである。反射面7aおよび7bの長辺は、光入射面(例えば、第1の支持体4の表面;図4(b)参照。)に対して平行であるが、短辺は、それぞれ、光入射面に対して一定の角度で傾いて形成されている。隣接する反射面7aと反射面7bとがなす角を二等分する面Nは光入射面に直交し、反射面7aと反射面7bとは面Nに関して対称である。この対称に形成された反射面7aと反射面7bとの組が、多数組み、反射面7の長手方向に直交する方向に向かって一次元的に配列されて、機能性層1の反射面が構成されている。従って、機能性層1の反射面は、一次元配列方向に関して反転対称性を有する。以下、機能性層1のこの形状をV字溝形状と呼ぶことにする。反射面7aおよび7bとのなす角に特に制限はないが、代表的には90°である。この場合、配列方向に平行な面で反射面7aおよび7bを切断すると、直角二等辺三角形の直角を挟む2つの短辺に切断される。ここではV字形の溝が形成されている例を示したが、溝がU字形であってもよい。
【0053】
反射面7aおよび7bの配列のピッチは、5μm〜5mmであるのが好ましく、10〜250μmであるのがより好ましく、20〜200μmであるのがさらに好ましい。ピッチが250μm以下であると、柔軟性が向上し、ロール・ツー・ロール・プロセスで製造することが容易になり、バッチ・プロセスで製造するのに比べ、生産性が向上するので、好ましい。本実施の形態の光学機能性フィルムを窓ガラスなどの建材に適用する際には、多くの場合、数m程度の長さが必要であり、このような長尺の光学機能性フィルムの製造には、バッチ・プロセスよりもロール・ツー・ロール・プロセスの方が適している。ピッチが20〜200μmである場合には、さらに柔軟性などが向上し、生産性が向上する。
【0054】
これに対して、ピッチが5μm未満であると、機能性層1の形状を所望のものとすることが難しい上、波長選択特性を急峻にすることが困難であるため、透過波長の一部を反射することがある。このような反射が起こると、回折が生じて高次の反射まで視認されるため、透明性が悪く感じられる傾向がある。一方、ピッチが5mmを超えると、機能性層1の厚さが厚くなり、柔軟性が失われ、窓ガラスなどの剛体に貼りあわせることが困難になる。
【0055】
機能性層1の厚さは、20μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、1μm以下がさらに好ましい。平均膜厚が20μmを超えると、透過光が屈折する光路が長くなり、透過像が歪んで見える傾向がある。
【0056】
図4(b)は、機能性層1の機能を示す断面図である。見やすくするため、第1の樹脂層2および第2の樹脂層3のハッチングは省略した。第1の支持体4の表面は平坦である。また、機能性層1に接している側とは反対側の、第1の樹脂層2の表面も平坦である。機能性積層体10では、第1の支持体4の平坦な表面(第1の支持体4が省略されている場合には、第1の樹脂層2の平坦な面)が光入射面として用いられる。上記の機能性層1が近赤外光を選択的に反射する材料及び/又は層構成からなる場合、機能性層1の反射面に近赤外光が入射すると、近赤外光は、通常、反射面7bと反射面7aで各1回、合計2回正反射され、光源側へ再帰反射される。一方、可視光は機能性層1を単に透過する。機能性層1では、反射面7の対称面、すなわち二等分面Nが光入射面に直交しているので、再帰反射率が最大になる方向は、入射面に直交する方向になる。
【0057】
図5は、機能性層の別の形状を示す斜視図である。見やすくするため、図5では、機能性積層体20の機能性層21と第2の樹脂層24のみを示した。この例は請求項8に対応する。機能性層21の反射面は、多数の単位凹部23が規則正しく配置されて構成されている。1個の単位凹部23は反射面22a〜22dを有する。機能性層21の裏面側の形状は、図4(a)に示したV字溝を縦と横の直交する2方向に形成することによって得られる形状(四角錐が規則正しく配置された形状)である。以下、機能性層21のこの形状を二重V字溝形状と呼ぶことにする。機能性層21が近赤外光を選択的に反射する材料及び/又は層構成からなる場合、機能性層21の反射面に近赤外光が入射すると、近赤外光は、通常、反射面22aと22c、または22bと22dで各1回、合計2回正反射され、光源側へ再帰反射される。一方、可視光は機能性層21を単に透過する。
【0058】
上記の例では、反射面が凹部23を形成する例を説明したが、反射面が凹部23の凹凸を反転させた凸部を形成するのでもよい。この場合、近赤外光は、隣接する2つの四角錐の、対向する反射面で各1回、合計2回正反射され、光源側へ再帰反射される。
【0059】
図6は、機能性層のさらに別の形状を示す平面図(a)、および6B−6B線の位置における拡大断面図(b)である。見やすくするため、断面図では機能性層31と第2の樹脂層33のみを示した。この例も請求項8に対応する。機能性層31の反射面は、多数のコーナーキューブ形の単位凹部33が規則正しく配置されて構成されている。1個のコーナーキューブ形単位凹部33は反射面32a〜32cを有する。機能性層31の裏面側の形状は、図4(a)に示したV字溝を60°で交わる3方向に形成することによって得られる形状(三角錐が規則正しく配置された形状)である。以下、機能性層31のこの形状をコーナーキューブ形状と呼ぶことにする。機能性層31が近赤外光を選択的に反射する材料及び/又は層構成からなる場合、機能性層31の反射面に近赤外光が入射すると、図6(b)に示すように、近赤外光は、少なくとも2回、通常は反射面32a、32b、32cで各1回、合計3回正反射され、光源側へ再帰反射される。一方、可視光は機能性層31を単に透過する。
【0060】
上記の例では、反射面が凹部33を形成する例を説明したが、反射面が凹部33の凹凸を反転させた凸部を形成するのでもよい。この場合、近赤外光は、隣接する2つの三角錐の、対向する反射面で各1回、合計2回正反射され、光源側へ再帰反射される。
【0061】
<機能性層の層構造および構成材料>
図4〜図6にそれぞれ示した機能性層1、機能性層21および機能性層31は、特定の波長領域の入射光を選択的に反射又は透過する光学的機能性層である。このような層は、高屈折率層と金属層とが積層された複数層、または低誘電率層と高誘電率層とが交互に積層された複数層によって構成することができる。
【0062】
例えば、可視領域において屈折率が高く反射防止層として機能する透明層と、赤外領域において反射率の高い金属層とを交互に積層すると、可視光の透過率が高く、近赤外光の反射率が高い層を形成することができる。赤外領域において反射率の高い金属層は、例えば、金Au、銀Ag、銅Cu、アルミニウムAl、ニッケルNi、クロムCr、チタンTi、パラジウムPd、コバルトCo、ケイ素Si、タンタルTa、タングステンW、モリブデンMo、ゲルマニウムGeなどの単体、またはこれらの単体を2種以上含む合金を主成分とする層である。実用性を考慮すると、これらのうち、単体では、Ag、Cu、Al、SiまたはGeが好ましい。合金では、AlCu、AlTi、AlCr、AlCo、AlNdCu、AlMgSi、AgPdCu、AgPdTi、AgCuTi、AgPdCa、AgPdMg、AgPdFe、AgまたはSiBなどを主成分とすることが好ましい。また、金属層の腐食を抑えるために、金属層に対してTi、Ndなどの材料を添加することが好ましい。特に、金属層の材料としてAgを用いる場合には、上記材料を添加することが好ましい。透明層は、例えば、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化チタンなどの高誘電体を主成分とする。透明層の成膜時に下層の金属層が酸化されるのを防止する目的で、金属層との界面に数nm程度のTiなどからなる薄いバッファー層を設けてもよい。ここで、バッファー層とは、透明層の成膜時に、自らが酸化されることによって金属層の酸化を防止する層である。
【0063】
また、干渉フィルタとして構成された、低誘電率層と高誘電率層との交互積層膜を用いても、可視光の透過率が高く、近赤外光の反射率が高い層を形成することができる。
【0064】
<その他の機能性層>
(1)クロミック材料層
クロミック材料を主成分として機能性層1を形成すると、外部刺激によって反射性能などが可逆的に変化する光学的機能性積層体を構成することができる。クロミック材料は、例えば、熱、光、侵入分子などの外部刺激により構造を可逆的に変化させる材料である。クロミック材料としては、例えば、熱によって着色するサーモクロミック材料、電圧印加によって着色するエレクトロクロミック材料、光によって着色するフォトクロミック材料、ガスとの接触で着色するガスクロミック材料などを用いることができる。
【0065】
(2)フォトニックラティス層
コレステリック液晶などのフォトニックラティスを用いることもできる。コレステリック液晶は層間隔に応じた波長の光を選択的に反射することができ、この層間隔は温度によって変化するため、加熱により、反射率や色などの物性を可逆的に変化させることができる。この時、層間隔の異なるいくつかのコレステリック液晶層を用いて反射帯域を広げることも可能である。
【0066】
(3)半透過層
機能性層1は、入射光の何割かを指向反射し、かつ、散乱が少なく、反対側を視認できる透明性を有する半透過層であってもよい。半透過層としては、例えば、単層または複数層の金属層からなり、半透過性を有するものである。構造体上に製膜する金属層の材料としては、例えば、上述の積層膜の金属層と同様のものを用いることができる。半透過層の具体例を下記に示す。
(a)厚さ8.5nmのAgTi層(質量比 Ag:Ti=98.5:1.5)
(b)厚さ3.4nmのAgTi層(質量比 Ag:Ti=98.5:1.5)
(c)厚さ14.5nmのAgNdCu層(質量比 Ag:Nd:Cu=99.0:0.4:0.6)
半透過層の形成方法としては、例えば、スパッタ法、蒸着法、ディップコーティング法、ダイコーティング法などを用いることができる。
【0067】
<第1の樹脂2および第2の樹脂3>
第1の樹脂2および第2の樹脂3の弾性率は、機能性積層体10が可とう性を有するように、25〜60℃程度の温度領域で7.2×1010Pa以下であることが好ましい、より好ましくは3.1×109Pa以下であることが好ましい。ガラス転移温度に関しては、特に機能を限定することはないが、金属層または酸化物層をスパッタリング法や蒸着法などで成膜する際には、樹脂表面の温度が局所的に高温になるため、第1の樹脂および第2の樹脂のガラス転移温度は60℃以上であることが望ましい。
【0068】
第1の樹脂2および第2の樹脂3として好適な材料は、光透過率が高いものであればよい。例えば、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、セルロース系樹脂、スチレン系樹脂などを単体で用いても、共重合などで組み合わせて用いてもよい。また、紫外線硬化型樹脂を用いてもよく、例えば、アクリレートとしては、1個以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマー及び/又はオリゴマーを用いることが好ましい。このモノマー及び/又はオリゴマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレートなどを用いることができる。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基およびメタアクリロイル基のいずれかを意味するものである。また、オリゴマーとは、分子量500以上60000以下の分子をいう。
【0069】
また、機能性層1を構成する金属層または酸化物層と、樹脂との密着性を向上させる目的で、第1の樹脂2及び/又は第2の樹脂3に添加剤を加えてもよい。ただし、金属や酸化物層が腐食されやすい場合は、できるだけ腐食性物質(たとえば水分、ハロゲンなど)と親和性の低い材料を選定する。例えば、樹脂材料は、第1の樹脂層2または第2の樹脂層3と機能性層1との密着性を向上させるために、ホスホノ基を有する化合物、例えば、ホスホノ基を有する(メタ)アクリルモノマー誘導体またはオリゴマー誘導体を含有することが好ましい。ただし、遊離の無機リン酸が残留していると、結晶化して光を散乱させる原因になるので、樹脂中に含まれる無機リン酸濃度が1.0質量%以下になるように、原料を選択するか、原料を精製することが望ましい。
【0070】
第1の樹脂層2と第2の樹脂層3とは、可視光領域において透明性を有する同一樹脂からなることが好ましい。あるいは、両層を構成する材料の屈折率差が、好ましくは0.010以下、より好ましくは0.008以下、さらに好ましくは0.005以下である。屈折率差が0.010を超えると、透過像がぼけて見える傾向がある。0.008を超え、0.010以下の範囲であると、外の明るさにも依存するが日常生活には問題がない。0.005を超え、0.008以下の範囲であると、光源のように非常に明るい物体を見る場合のみ、回折パターンが気になるが、外の景色は鮮明に見ることができる。0.005以下であれば、回折パターンはほとんど気にならない。第1の樹脂層4および第2の樹脂層5のうち、窓材などの外部支持体6と貼り合わせる側となる樹脂層は、粘着剤を主成分としてもよい。このような構成にする場合、粘着剤の屈折率差が上記範囲内であることが好ましい。
【0071】
なお、第1の樹脂層2と第2の樹脂層3の少なくとも1つには、添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、光安定剤、難燃剤、酸化防止剤、波長選択反射膜と樹脂層との密着性を向上させるための添加剤などが挙げられる。密着性を向上させるための添加剤としては、例えば、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート(例えば、共栄社化学(株)製のライトアクリレートP−1A(商品名)、添加量:0.5〜10質量%)、2−メタクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート(例えば、共栄社化学(株)製のライトアクリレートP−2M(商品名)、添加量:2〜10質量%)、2−アクリロイロキシエチル−コハク酸(例えば、共栄社化学(株)製のHOA−MS(商品名)、添加量:20〜50質量%)、γ−ブチロラクトンメタクリレート(例えば、大阪有機化学(株)製のGBLMA(商品名)、添加量:20〜30質量%)が挙げられる。密着性を向上させるためには、それぞれ括弧内に示した添加量とするのが適しているが、第1の樹脂層2と第2の樹脂層3の一方のみに、添加剤を添加する場合には、屈折率の違いにより曇って反対側が見えにくくなることを防止するため、添加量は3質量%以下、好ましくは1質量%以下にするとよい。したがって、この場合には、リン酸系の添加剤を採用することが好ましい。これにより、透過鮮明性を高くすることができる。一方、第1の樹脂層2と第2の樹脂層3の両方に添加剤を添加する場合には、屈折率差が極力小さく(好ましくは0.010以下)となるように、添加量を調整すればよい。
【0072】
<第1の支持体4および第2の支持体5>
第1の支持体4および第2の支持体5として好適な材料は、例えば、ガラスや、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂などの樹脂が挙げられるが、これらの材料に特に限定されるものではない。また、支持体と樹脂との密着性を向上させるため、支持体に表面処理を施したり、支持体上に薄い樹脂層を形成したりしてもよい。
【0073】
<入射光の入射方向および反射光の反射方向>
以下、これから用いる入射光の入射方向および反射光の反射方向の表示方法を明らかにしておく。図7は、機能性積層体に入射する入射光の入射方向と、機能性積層体によって反射される反射光の反射方向とを整理して示すための斜視図である。機能性積層体は、入射光Lが入射する平坦な入射面S1を有する。入射光の入射方向および反射光の反射方向を示すために、下記のように2つの偏角θおよびφを定義する。すなわち、入射光Lが入射面S1に入射する点Oにおいて入射面S1に立てた垂線をOP、点Oを起点として入射光Lの光源側に引いた特定の半直線をOQとする。Oを起点とする任意の半直線の、垂線OPからの偏角をθとする。そして、入射光Lの、垂線OPからの偏角をθL(0≦θL≦90°)、垂線OPを基準として入射光Lと対称の方向の偏角を−θL(0≧−θL≧−90°)とおく。また、Oを起点とする任意の半直線を入射面S1に射影し、得られる半直線の、半直線OQからの偏角(方位角)をφとする。この際、半直線OQから時計回り方向に回転した角度を正とし、反時計回り方向に回転した角度を負とする。そして、入射光Lを入射面S1に射影し、得られる半直線OMと半直線OQとがなす角をφL(−90°≦φL≦90°)とおく。このように定めると、入射光Lの入射方向は、偏角θとφの組み(θ、φ)を用いて(θL、φL)と表され、その正反射方向は(−θL、φL+180°)と表される。
【0074】
前述した特定の半直線OQの方向は、機能性積層体10にある方向(方位)から入射した光が、同じ方向(方位)へ指向反射される反射強度が最大になる方向とする。但し、反射強度が最大となる方向が複数ある場合には、そのうちの1つを半直線OQとして選択する。例えば、機能性積層体10では、図4に矢印で示した、機能性層1における反射面7の一次元的配列方向、またはその反対方向を半直線OQの向きに定める。
【0075】
機能性積層体10は、入射光Lのうち、特定波長領域の光L1を選択的に、正反射方向以外の方向へ指向反射する一方、特定波長領域以外の光L2を透過させる。また、機能性積層体10は、入射光L2に対して透明性を有し、後述する範囲の透過像鮮明度を有することが好ましい。ここで、「反射する」とは、特定の波長領域、例えば近赤外領域における反射率が好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは80%以上であることを意味するものとする。「透過させる」とは、特定の波長領域、例えば可視領域における透過率が好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上であることを意味するものとする。
【0076】
入射光L1および入射光L2の波長領域は、機能性積層体10の用途によって異なる。例えば、高層ビルや住居などの建築用ガラスや壁材などに、太陽光の一部を吸収または反射する光学層として機能性積層体10を設ける場合には、入射光L1は近赤外光であり、入射光L2は可視光であることが好ましい。より具体的には、入射光L1が主に波長が780〜2100nmの近赤外光であることが好ましい。太陽光から注がれる光エネルギーは、主として、波長380〜780nmの可視領域の光のエネルギーと、780〜2100nmの近赤外領域の光のエネルギーとからなる。この近赤外領域の光を反射することによって、太陽から注がれる光エネルギーによって建物内の温度が過度に上昇するのを防止することができる。これにより、夏期には冷房負荷を軽減し、省エネルギー化を図ることができる。なお、要求特性によっては、機能性積層体10の入射面S1は、平坦面でなく凹凸を有していてもよい。
【0077】
入射光L1が指向反射される方向を(θR、φR)とすると、−90°≦φR≦90°(0≦θR)であることが好ましい。この範囲内であると、OQの方向が上方になるように機能性積層体10を外部支持体6に貼りつけた場合に、上方から入射してくる入射光L1を上方へ戻すことができる。周辺に高い建物がない場合には、このような特性を有する機能性積層体10が有効である。
【0078】
また、指向反射される方向(θR、φR)が、(θL、−φL)近傍、または、再帰反射方向である(θL、φL)近傍であることが好ましい。近傍とは、(θL、−φL)または(θL、φL)からのずれが、好ましくは5°以内、より好ましくは3°以内であり、さらに好ましくは2°以内の範囲内であることをいう。この範囲内であると、OQの方向が上方になるように機能性積層体10を外部支持体6に貼りつけた場合に、周辺に同程度の高さの建物が立ち並ぶ場合でも、上空から入射してくる入射光L1を他の建物の上空に効率よく戻すことができる。
【0079】
このような指向反射を実現するためには、例えば、球面や双曲面の一部、または三角錐や四角錘や円錐などの3次元構造体の側面を用いることが好ましい。方向(θL、φL;ここで、−90°<φL<90°)から入射した光は、その形状に基づいて方向(θR、φR;ここで、0°<θR<90°、−90°<φR<90°)へ反射させることができる。または、一方向に伸びた柱状体にすることが好ましい。方向(θL、φL;ここで、−90°<φL<90°)から入射した光は、柱状体の傾斜角に基づいて方向(θR、φR;ここで、0°<θR<90°、φR=−φL)に反射させることができる。
【0080】
先にふれた写像鮮明度に関しては、0.5mmの光学くしを用いたときの値が、好ましくは50以上、より好ましくは60以上、さらに好ましくは75以上である。写像鮮明度の値が50未満であると、透過像がぼけて見える傾向がある。50以上、60未満であると、外の明るさにも依存するが、日常生活には問題がない。60以上、75未満であると、光源のように非常に明るい物体のみ回折パターンが気になるが、外の景色を鮮明に見ることができる。75以上であれば、回折パターンはほとんど気にならない。更に0.125mm、0.5mm、1.0mm、2.0mmの光学くしを用いて測定した写像鮮明度の値の合計値が、好ましくは230以上、より好ましくは270以上、さらに好ましくは350以上である。写像鮮明度の合計値が230未満であると、透過像がぼけて見える傾向がある。230以上、270未満であると、外の明るさにも依存するが、日常生活には問題がない。270以上、350未満であると、光源のように非常に明るい物体のみ、回折パターンが気になるが、外の景色を鮮明に見ることができる。350以上であれば、回折パターンはほとんど気にならない。ここで、写像鮮明度の値は、スガ試験機製ICM−1Tを用いて、JIS K7105に準じて測定したものである。ただし、透過させたい波長がD65光源波長と異なる場合には、透過させたい波長のフィルタを用いて校正した後に測定することが好ましい。
【0081】
透過性を持つ波長帯に対するヘイズが、好ましくは6%以下、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは2%以下である。ヘイズが6%を超えると、透過光が散乱され、曇って見えるためである。ここで、ヘイズは、村上色彩製HM−150を用いて、JIS K7136で規定される測定方法により測定したものである。ただし、透過させたい波長がD65光源波長と異なる場合は、透過させたい波長のフィルタを用いて校正した後に測定することが好ましい。機能性積層体10の入射面S1、好ましくは入射面S1および出射面S2は、写像鮮明度を低下させない程度の平滑性を有する。具体的には、入射面S1および出射面S2の算術平均粗さRaは、好ましくは0.08μm以下、より好ましくは0.06μm以下、さらに好ましくは0.04μm以下である。なお、上記算術平均粗さRaは、入射面の表面粗さを測定し、2次元断面曲線から粗さ曲線を取得し、粗さパラメータとして算出したものである。なお、測定条件はJIS B0601:2001に準拠している。測定装置および測定条件を下記に示す。
測定装置:全自動微細形状測定機 サーフコーダーET4000A (株式会社小坂研究所)
λc:0.8mm
評価長さ:4mm
カットオフ:×5倍
データサンプリング間隔:0.5μm
【0082】
機能性積層体10の透過色はなるべくニュートラルに近く、色付きがあるとしても涼しい印象を与える青、青緑、緑色などの薄い色調が好ましい。このような色調を得るためには、入射面S1から入射し、樹脂層及び機能性層1を透過し、出射面S2から出射される透過光の色度座標x、yは、例えばD65光源の照射に対しては、好ましくは0.20<x<0.35かつ0.20<y<0.40、より好ましくは、0.25<x<0.32かつ0.25<y<0.37、更に好ましくは0.30<x<0.32かつ0.30<y<0.35の範囲を満たすのが望ましい。さらに、色調が赤みを帯びないためには、好ましくはy>x−0.02、より好ましくはy>xの関係を満たすのが望ましい。
【0083】
また、反射光の色調が入射角度によって変化すると、例えばビルの窓に適用された場合に、場所によって色調が異なったり、歩行者からは歩くにつれて色が変化するように見えたりするので、好ましくない。このような反射光の色調の変化を抑制するためには、0°以上、60°以下の入射角度θで入射面S1または出射面S2に入射し、樹脂層または機能性層1によって反射された反射光の色座標xの差の絶対値、および色座標yの差の絶対値が、機能性積層体10の両主面のいずれにおいても、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.03以下、さらに好ましくは0.01以下である。このような反射光の色座標x、yに関する数値範囲の限定は、入射面S1、および出射面S2の両方の主面において満たされることが望ましい。
【0084】
以下、実施の形態1の変形例に基づき、光学的機能性積層体として機能する機能性積層体の例について説明する。
【0085】
<変形例1>
図8は、変形例1に基づく機能性積層体50の構造を示す断面図である。この例は請求項16に対応する。機能性積層体50が機能性積層体10と異なるのは、洗浄効果を発現する自己洗浄効果層51を入射面上に備えていることである。自己洗浄効果層51は、例えば、酸化チタンTiO2などの光触媒を含んでおり、光触媒の親水性によって、機能性積層体50の表面に付着した汚れを雨水などで均一に洗い流すことができる。なお、自己洗浄効果層51に代えて、撥水性を有する層(例えば、撥水性を有するフッ素系やシリコーン系の樹脂層)を形成してもよい。
【0086】
光学素子として構成された機能性積層体の光入射面は常に光学的に透明であることが好ましいが、機能性積層体を屋外や汚れの多い室内などに設置すると、表面に汚れ物質が付着し、この汚れ物質によって光が散乱され、光学特性が損なわれることがある。本変形例では、自己洗浄効果層51(親水性を有する層)または撥水性を有する層を設けたことにより、汚れ物質などが表面に付着するのを抑制し、光学特性の低下を防止することができる。
【0087】
<変形例2>
図9は、変形例2に基づく機能性積層体52の構造を示す断面図である。機能性積層体52が機能性積層体10と異なるのは、特定波長領域以外の光L2を透過させるのではなく、散乱させることである。本変形例によれば、赤外線などの、特定波長領域の光L1を指向反射し、かつ可視光などの、特定波長領域以外の光L2を散乱させることができる。このようにすると、機能性積層体52に曇りガラスのような意匠性を付与することができる。
【0088】
図9(a)は、機能性積層体52の一例52aの構造を示す断面図である。機能性積層体52aでは、第2の樹脂層3内に光L2を散乱させる微粒子53が配置されている。微粒子53は、第2の樹脂層3を主として構成する樹脂とは異なる屈折率を有している。微粒子53は、中空微粒子などであってもよい。微粒子53は、無機微粒子および有機微粒子の少なくとも1種であって、例えば、シリカ微粒子およびアルミナ微粒子などの無機微粒子や、スチレン樹脂微粒子、(メタ)アクリル樹脂微粒子、およびそれらの共重合体微粒子などの有機微粒子である。このうち、シリカ微粒子が特に好ましい。
【0089】
図9(b)および(c)は、それぞれ、機能性積層体52の別の例52bおよび52cの構造を示す断面図である。機能性積層体52bでは、第2の樹脂層3の光透過側に光拡散層54が配置されている。機能性積層体52cでは、機能性層1と第2の樹脂層3との間に光拡散層55が配置されている。光拡散層54および55は、それぞれ、樹脂と微粒子とを含有し、微粒子は微粒子53と同様のものである。
【0090】
機能性積層体52では、入射光を散乱する微粒子や光拡散層などの光散乱体が、機能性層1よりも光透過側にあることが望ましい。光入射面と機能性層1との間に光散乱体が存在すると、指向反射特性が損なわれるからである。機能性積層体10を窓ガラスなどに貼り合わせる場合、室内側および室外側のどちらに貼りつけてもよい。
【0091】
<変形例3>
図10は、変形例3に基づく機能性層61の形状を示す斜視図(a)、および機能性積層体60の構造を示す断面図(b)である。図10(a)では、見やすくするため、機能性層61と第2の樹脂層63のみを示した。この例は請求項9に対応する。機能性層61の反射面は、機能性層1と同様に、平面形状が細長い長方形である2種類の反射面64aおよび64bからなる多数の反射面群で構成されており、多数の反射面64aおよび64bは交互に一方向に向かって一次元的に配列されている。また、反射面64aおよび64bは、長辺は光入射面(例えば、第1の支持体4の表面;図10(b)参照。)に対して平行であるが、短辺は、それぞれ、光入射面に対し一定の角度で傾いて形成されている。しかし、機能性層1とは異なり、反射面64aと反射面64bとは、短辺の長さおよび光入射面に対する傾きが互いに異なる。隣接する反射面64aと反射面64bとがなす角を二等分する面Nは、光入射面に直交する方向からαだけ傾いている。すなわち、反射面64aと反射面64bとは二等分面Nに関して非対称であり、機能性層61の反射面は一次元配列方向に関して反転対称性を有していない。機能性層61で再帰反射率が最大になる方向は、概ね二等分面N内にある。機能性層61では二等分面Nが光入射面に直交していないので、再帰反射率が最大になる方向は入射面に直交する方向から傾斜した方向になる。
【0092】
窓ガラスなど、地面に対して略垂直に配置されている部材に機能性積層体を貼りつける場合、太陽からの直射光が下方(地面側)からくることはなく、反射光や散乱光を含めても、一般に上方(空側)から入射する光量の方が下方(地面側)から入射する光量に比べて圧倒的に多い。また、太陽からの光エネルギーの流入が多いのは昼過ぎ頃の時間帯であり、太陽の高度が45°より高いことが多い。このように入射光における入射方向の分布が非対称な場合、(一次元配列方向に関して)対称な反射面を有する機能性積層体10などを配置するより、(一次元配列方向に関して)非対称な反射面を有する機能性積層体60などを適切な向きに配置する方が、効果的に太陽からの近赤外線を上方(空側)に反射することができる場合がある。この場合、機能性層61の反射率に応じて、下記のいずれかを選択するのがよい。
【0093】
機能性層61の反射率が大きい場合、OQの方向、すなわち、再帰反射強度が最も強くなる方向が上方(空側)になるように、機能性積層体60を配置するのがよい。このようにすれば、機能性層61の再帰反射機能を生かして、上方から入射してくる入射光を上方へ戻すことができる。
【0094】
図4(b)は、機能性層1の機能を示す断面図である。見やすくするため、第1の樹脂層2および第2の樹脂層3のハッチングは省略した。第1の支持体4の表面は平坦である。また、機能性層1に接している側とは反対側の、第1の樹脂層2の表面も平坦である。機能性積層体10では、第1の支持体4の平坦な表面(第1の支持体4が省略されている場合には、第1の樹脂層2の平坦な面)が光入射面である。上記の機能性層1が近赤外光を選択的に反射する材料及び/又は層構成からなる場合、機能性層1の反射面に近赤外光が入射すると、近赤外光は、通常、反射面7bと反射面7aで各1回、合計2回正反射され、光源側へ再帰反射される。一方、可視光は機能性層1を単に透過する。機能性層1では、反射面7の対称面、すなわち二等分面Nが光入射面に直交しているので、再帰反射率が最大になる方向は、入射面に直交する方向になる。
【0095】
しかし、再帰反射は正反射を複数回行うので、機能性層61の反射率が小さい場合には、再帰反射される反射率は小さくなる。このような場合には、図10(b)に示すように、二等分面Nが傾いている方向が下方(地面側)になるように、機能性積層体60を配置するのがよい。このようにすると、上方から機能性層61に入射する光のうち、多くの光が、上方に向いた、面積の大きい反射面64aに入射して、1回の正反射で上方に戻される。
【0096】
上記のように、入射光の入射方向が一様ではなく、偏りがある場合には、対称性の高い反射面を有する機能性積層体を配置するより、対称面(例えば、上記二等分面N)または対称軸が一方向に傾斜した、非対称な反射面を有する機能性積層体を適切な向きに配置する方が、効果的である場合がある。上記の例では反射面が一次元配列体である例を示したが、これは、図5に示した二重V字溝形状の機能性層21や、図6に示したコーナーキューブ形状の機能性層31のように、単位凹部が二次元的に配列している場合でも同様である。
【0097】
例えば、機能性層31がコーナーキューブ形状である場合、稜線の曲率半径Rが大きい場合は、上空に向けて傾けた方がよく、下方反射を抑制するという目的においては、地面側に向けて傾いている方が好ましい。太陽光線は、機能性積層体30に対して斜めから入射するため、構造の奥まで光が入射しにくく、入射側の形状が重要となる。すなわち、稜線部分の曲率半径が大きい場合は、再帰反射光が減少してしまうため、上空に向けて傾けることでこの現象を抑制することができる。また、コーナーキューブ形状の機能性層31では、反射面で3回反射することで再帰反射を実現するが、一部の光が2回反射により再帰反射以外の方向に漏れることがある。コーナーキューブを地面側に向けて傾けることで、この漏れ光を上空方向に多く戻すことができる。このように、形状や目的に応じてどちらの方向に傾けてもよい。
【0098】
<変形例4>
図11は、変形例4に基づく機能性層66の形状を示す斜視図(a)、および機能性積層体65の構造を示す断面図(b)である。図11(a)では、見やすくするため、機能性層66と第2の樹脂層68のみを示した。この例は請求項10に対応する。機能性層66の反射面は、機能性層1と同様に、平面形状が細長い長方形である1種類の反射面64からなる多数の反射面群で構成されており、多数の反射面64は一方向に向かって一次元的に配列されている。また、反射面64は、長辺は光入射面(例えば、第1の支持体4の表面;図11(b)参照。)に対して平行であるが、短辺は光入射面に対し一定の角度で傾いて形成されている。
【0099】
機能性層66の反射面は、機能性層61の反射面から反射面64bが省略され、反射面64aだけが反射面69として残されたものと考えることができる。反射面64bが省略されているので、機能性層66の反射面には、指向反射の機能はない。しかし、反射面64bが省略されているので、上方から機能性層66に入射する光のすべてを、上方に向いた反射面69による1回の正反射で上方に戻すことができる。
【0100】
前述したように、再帰反射は正反射を複数回行うので、機能性層の反射率が小さい場合には、再帰反射される反射率は小さくなる。従って、入射光の大部分が上方から入射してくる場合には、上方に向いた反射面による1回の正反射で上方からくる光を上方に戻す方が有利になる。変形例4に基づく機能性層66は、このような目的に特化した光学的機能性層の例である。
【0101】
<変形例5>
図12は、変形例6に基づく機能性層71の形状を示す斜視図である。見やすくするため、図12では、機能性積層体70の機能性層71と第2の樹脂層73のみを示した。機能性層71は、図5に示した機能性層21の変形例である。機能性層71の反射面は、機能性層21の反射面と同様に、多数の単位凹部72が規則正しく配置されて構成されている。しかし、機能性層71の反射面は、機能性層21の反射面と異なり、頂部が丸みを帯びた形状(曲率半径Rを有する形状)となっている点が異なっている。
【0102】
<変形例6>
図13は、変形例6に基づく機能性層74における二次元配列を示す平面図(a)と、平面図(a)に13B−13B線および13C−13C線で示した位置における断面図(b)および(c)である。図5に示した機能性層21や、図6に示した機能性層31と同様に、機能性層74の反射面は、多数の単位凹部75が規則正しく稠密に配置されて構成されている。単位凹部75は外形の平面形状が長方形で、この長方形の内部に、滑らかな曲面からなる反射面を有する凹部が形成されている。機能性層21や機能性層31と同様に、機能性層74も再帰反射層として機能する。
【0103】
<変形例7>
図14は、変形例7に基づく機能性層における二次元配列を示す平面図(a)と、平面図(a)に14B−14B線および14C−14C線で示した位置における断面図(b)および(c)である。図13に示した機能性層74と同様に、機能性層77の反射面は、多数の単位凹部78が規則正しく稠密に配置されて構成されている。単位凹部78は外形の平面形状が六角形で、この六角形の内部に、滑らかな曲面からなる反射面を有する凹部が形成されている。機能性層74と同様に、機能性層77も再帰反射層として機能する。
【0104】
[実施の形態2]
実施の形態2では、請求項17〜20に記載した機能性構造体の例について説明する。本発明の機能性積層体は、代表的には、ガラスなどに貼りつけ、窓材などの機能性構造体を構成するようにすることができる。また、本発明の機能性積層体は、種々の内装部材や外装部材などの機能性構造体を構成するように用いることもできる。これらの機能性構造体は、壁や屋根のように固定された部材のみならず、季節や時間変動など、必要に応じて光学的機能性積層体の適用量を変更できる部材なども挙げられる。より具体的には、光学的機能性積層体を複数の要素に分割し、角度を変更するなどの手段により、光学的機能性積層体への入射光線の透過量を調整可能な部材、例えばブラインドなどが挙げられる。また、巻き取ったり、折り畳んだりすることが可能である光学的機能性積層体を適用した部材、例えばロールカーテンなどが挙げられる。更に、光学的機能性体を枠組みなどに固定し、必要に応じ枠組みごと取り外しが可能な部材、例えば障子などが挙げられる。
【0105】
光学的機能性積層体が適用された内装部材または外装部材としては、例えば、機能性積層体自体により構成されたものや、機能性積層体が貼り合わされた透明基材などにより構成されたものが挙げられる。このような内装部材または外装部材を室内の窓付近に設置することで、例えば、赤外線だけを屋外に指向反射し、可視光線を室内に取り入れることができる。したがって、内装部材または外装部材を設置した場合にも、室内照明の必要性が低減される。また、内装部材または外装部材による室内側への散乱反射もほとんどないため、周囲の温度上昇も抑えることができる。また、視認性制御や強度向上など必要な目的に応じ、透明基材以外の貼り合わせ部材を適用することもできる。
【0106】
<適用例1>
本適用例では、複数の日射遮蔽部材からなる日射遮蔽部材群の角度を変更することにより、入射光線の遮蔽量を調整可能な日射遮蔽装置の一例であるブラインド装置に機能性積層体を適用した例について説明する。
【0107】
図15(a)は、日射遮蔽装置であるブラインド装置80の構造を示す斜視図である。ブラインド装置80は、ヘッドボックス83と、複数のスラット(羽)81からなるスラット群(日射遮蔽部材群)82と、ボトムレール84とを備える。ヘッドボックス83はスラット群82の上方に設けられている。ヘッドボックス83から昇降コード85および昇降操作コード86が下方に向かって延びており、これらのコードの下端にボトムレール84が吊り下げられている。日射遮蔽部材であるスラット81は、例えば、細長い矩形状を有し、ヘッドボックス83から下方に延びるラダーコード87により所定間隔で吊り下げられ、支持される。
【0108】
ヘッドボックス81には、スラット群83の傾斜角度を調整するためのロッドなどの操作手段(図示省略)が設けられている。ヘッドボックス81は、ロッドなどの操作手段の操作に応じてスラット群83の傾斜角度を変化させ、室内などに取り込まれる光量を調節する。また、ヘッドボックス81は、昇降操作コード86などの操作手段の操作に応じて、スラット群83を昇降させる駆動手段(昇降手段)としての機能も有している。
【0109】
図15(b)は、スラット(羽)82の構成例を示す断面図である。スラット82は、基材88と機能性積層体89とを備える。機能性積層体89は、基材88の両主面のうち、スラット群83を閉じた状態において外光が入射する入射面側(例えば窓材に対向する面側)に設けることが好ましい。機能性積層体89と基材88とは、例えば、接着層などにより貼り合される。
【0110】
基材88の形状としては、例えば、シート状、フィルム状、および板状などを挙げることができる。基材88の材料としては、ガラス、樹脂材料、紙材、および布材などを用いることができ、可視光を室内などの所定の空間に取り込むことを考慮すると、透明性を有する樹脂材料を用いることが好ましい。ガラス、樹脂材料、紙材、および布材としては、従来ロールスクリーンとして公知のものを用いることができる。機能性積層体89としては、上記実施形態に係る機能性積層体のうちの1種、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0111】
スラット(羽)82の第2の構成例として、機能性積層体89本体をスラット82として用いてもよい。この場合、機能性積層体89は、ラダーコード87により支持可能であるとともに、支持した状態において形状を維持できる程度の剛性を有していることが好ましい。
【0112】
なお、本適用例では、機能性積層体89を横型ブラインド装置(ベネシアンブラインド装置)に対して適用した例について説明したが、縦型ブラインド装置(バーチカルブラインド装置)に対して適用してもよい。
【0113】
<適用例2>
本適用例では、日射遮蔽部材を巻き取る、または巻き出すことで、入射光線の遮蔽量を調整可能な日射遮蔽装置の一例であるロールスクリーン装置について説明する。
【0114】
図16(a)は、日射遮蔽装置であるロールスクリーン装置90の構造を示す斜視図である。ロールスクリーン装置90は、ヘッドボックス91と、スクリーン92と、芯材93とを備える。ヘッドボックス91は、チェーン94などの操作部を操作することにより、スクリーン92を昇降できるように構成されている。ヘッドボックス91は、その内部にスクリーン92を巻き取り、および巻き出すための巻軸を有し、この巻軸に対してスクリーン92の一端が結合されている。また、スクリーン92の他端には芯材93が結合されている。スクリーン92は可撓性を有し、その形状は特に限定されるものではなく、ロールスクリーン装置90を適用する窓材などの形状に応じて選択することが好ましい。例えば、スクリーン92は矩形状である。
【0115】
図16(b)は、スクリーン92の構成例を示す断面図である。スクリーン92は、基材95と機能性積層体89とを備え、可撓性を有していることが好ましい。機能性積層体89は、基材95の両主面のうち、外光が入射する入射面側(例えば窓材に対向する面側)に設けることが好ましい。機能性積層体89と基材95とは、例えば、接着層などにより貼り合される。なお、スクリーン92の構成はこの例に限定されるものではなく、機能性積層体89をスクリーン92として用いるようにしてもよい。
【0116】
基材95の形状としては、例えば、シート状、フィルム状、および板状などを挙げることができる。基材95の材料としては、ガラス、樹脂材料、紙材、および布材などを用いることができ、可視光を室内などの所定の空間に取り込むことを考慮すると、透明性を有する樹脂材料を用いることが好ましい。ガラス、樹脂材料、紙材、および布材としては、従来ロールスクリーンとして公知のものを用いることができる。機能性積層体89としては、上記実施形態に係る機能性積層体のうちの1種、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0117】
なお、本適用例ではロールスクリーン装置について説明したが、本実施の形態はこの例に限定されない。例えば、日射遮蔽部材を折り畳むことで、日射遮蔽部材による入射光線の遮蔽量を調整可能な日射遮蔽装置に対しても本発明は適用可能である。このような日射遮蔽装置としては、例えば、日射遮蔽部材であるスクリーンを蛇腹状に折り畳むことで、入射光線の遮蔽量を調整するプリーツスクリーン装置を挙げることができる。
【0118】
<適用例3>
本適用例では、指向反射性能を有する光学的機能性体を採光部に備える建具(内装部材または外装部材)に対して機能性積層体を適用した例について説明する。
【0119】
図17(a)は、日射遮蔽部材である建具96の構造を示す斜視図である。建具96は、その採光部に光学体97を備え、その周縁部に支持体として枠材98を備える。建具96としては、例えば障子を挙げることができるが、本発明はこの例に限定されるものではなく、採光部を有する種々の建具に適用可能である。光学体97は枠材98により固定されるが、必要に応じて枠材98を分解して光学体97を取り外すことができるように構成してもよい。
【0120】
図17(b)は、光学体97の構成例を示す断面図である。光学体97は、基材99と、機能性積層体89とを備える。機能性積層体89は、基材99の両主面のうち、外光を入射させる入射面側に設けられる。機能性積層体89と基材99とは、接着層などにより貼り合される。なお、光学体97の構成はこの例に限定されるものではなく、機能性積層体89を光学体97として用いるようにしてもよい。
【0121】
基材99は、例えば、可撓性を有するシート、フィルム、または基板である。基材99としては、ガラス、樹脂材料、紙材、および布材などを用いることができ、可視光を室内などの所定の空間に取り込むことを考慮すると、透明性を有する樹脂材料を用いることが好ましい。ガラス、樹脂材料、紙材、および布材としては、従来建具の光学的機能性体として公知のものを用いることができる。機能性積層体89としては、上述の実施形態または変形例に係る機能性積層体のうちの1種、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0122】
なお、上述の適用例では、窓材、ブラインド装置のスラット、ロールスクリーン装置のスクリーン、および建具などの内装部材または外装部材に適用した場合を例として説明したが、本発明はこの例に限定されるものではなく、上記以外の内装部材および外装部材にも適用可能である。
【実施例】
【0123】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0124】
[実施例1〜6]
実施例1〜6では、図1(a)に示した機能性積層体10として、近赤外光を選択的に指向反射する一方、可視光を透過させる光学機能性フィルムを作製した。この際、ピッチは50μmとし、第1の樹脂と第2の樹脂、および第1の支持体と第2の支持体は、それぞれ同一材料とした。樹脂および支持体の材料として種々の弾性率を有する材料を用い、その影響を調べた。
【0125】
<光学機能性フィルムの作製>
まず、図2(a)に示したように、バイトによる切削加工によって、ニッケル・リン(Ni・P)製の金型31の表面に、機能性層1と同一の立体形状を形成した。
【0126】
次に、図2(b)に示したように、金型31の表面に塗布法で第1の樹脂材料層32を形成した。さらにその上に、厚さ100μmのフィルム状の第1の支持体4を押し当て、金型31と第1の樹脂材料層32と第1の支持体4とを密着させた。
【0127】
次に、図2(c)に示したように、第1の支持体4の側から紫外光を第1の樹脂材料層32に照射し、樹脂モノマー及び/又はオリゴマーを硬化させ、第1の樹脂層2を形成した。
【0128】
次に、第1の支持体4と第1の樹脂層2との積層体を金型31から剥がし、金型31の表面の立体形状が転写された第1の樹脂層2を得た。
【0129】
次に、図3(e)に示したように、スパッタリング法によって、立体形状が転写された第1の樹脂層2の表面に、機能性層1として酸化ニオブ(V)Nb2O5層および銀Ag層の交互多層膜を形成した。
【0130】
次に、図3(f)に示したように、機能性層1のもう一方の主面に、塗布法で第2の樹脂材料層33を形成した。第2の樹脂材料層33から気泡を押し出した後に、その上に厚さ100μmのフィルム状の第2の支持体5を押し当て、機能性層1と第2の樹脂材料層33と第2の支持体5とを密着させた。
【0131】
次に、図3(f)に示したように、第2の支持体5の側から紫外光を第2の樹脂材料層33に照射し、樹脂モノマー及び/又はオリゴマーを硬化させ、第2の樹脂層3を形成した。この結果、目的とする機能性積層体10である光学機能性フィルムを得た。
【0132】
表1は、実施例1〜6および比較例1〜3で用いた、樹脂および支持体の各材料を示す表である。樹脂材料A〜Hの構成は下記の通りである。
【0133】
樹脂材料A ポリビニルブチラール(平均分子量=90000〜120000) 70質量%
トリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサン酸) 30質量%
【0134】
樹脂材料B ウレタンアクリレート(CN991) 48.5質量%
ベンジルメタクリレート(ライトエステルBZ) 8.5質量%
光重合開始剤(イルガキュア184) 3質量%
【0135】
樹脂材料C ウレタンアクリレート(UF−8001G) 48.5質量%
ベンジルメタクリレート(ライトエステルBZ) 48.5質量%
光重合開始剤(イルガキュア184) 3質量%
【0136】
樹脂材料D ウレタンアクリレート(UF−8001G) 41質量%
ベンジルメタクリレート(ライトエステルBZ) 41質量%
架橋剤(T2325) 15質量%
光重合開始剤(イルガキュア184) 3質量%
【0137】
樹脂材料E ウレタンアクリレート(アロニックス) 97質量%
光重合開始剤(イルガキュア184) 3質量%
【0138】
樹脂材料F 環状ポリオレフィン樹脂 100質量%
【0139】
樹脂材料G ウレタンアクリレート(アロニックス) 82質量%
架橋剤(T2325) 15質量%
光重合開始剤(イルガキュア184) 3質量%
【0140】
樹脂材料H PETフィルム(コスモシャインA4300) 100質量%
【0141】
ここで、ポリビニルブチラールはシグマアルドリッチ製、CN991(商品名)はサートマー(株)製、ライトエステルBZ(商品名)は共栄社化学(株)製、イルガキュア184(商品名)は日本化薬(株)製、UF−8001G(商品名)は共栄社化学(株)製、T2325(商品名)は東京化成工業(株)製、アロニックス(商品名)は東亜合成(株)製、コスモシャインA4300(商品名)は東洋紡績(株)製である。
【0142】
【表1】
【0143】
<評価方法と判断基準>
界面での膜の欠損に関しては、ヒートサイクル前後での可視透過率測定を行った。ヒートサイクル試験はエスペック株式会社製のTSA−301L−Wを用いた。試験条件としては、−40℃で1時間保持した後、85℃で1時間保持する工程を1サイクルとし、このサイクルを100回繰り返した後、常温で取り出した。膜に欠損があると、透過率が低下するので、膜の欠損の度合いを透過率によって間接的に評価した。
【0144】
<JIS 7161に基づく弾性率の測定>
ダンベル形状に打ち抜いた厚さ0.1mmのフィルム状樹脂を、5mm/分の引っ張り速度で各5回測定を行った。ひずみ0.0005%とひずみ0.0025%での各々の引っ張り応力から、25℃における弾性率を求めた。ガラスの場合は、厚さが100μmのガラス片をガラスカッターで切り出した。
【0145】
<可視透過率測定>
V−7100(日本分光株式会社製)を用いて、波長550nmにおける透過率の測定を行った。高温高湿試験前後での透過率を比較し、550nmでの透過率の減少率が2%以上である場合を不合格、2%未満である場合を合格とした。
【0146】
図18に、実施例1〜6および比較例1〜3における透過率の減少率を示す。また、表1に、透過率の減少率および評価結果を示す。
【0147】
[実施例7]
実施例7では、図1(b)に示した機能性積層体11として、近赤外光を選択的に指向反射する一方、可視光を透過させる光学機能性フィルムを作製した。この際、ピッチは50μmとした。離型剤としてリリエース(商品名;東レダウコーニング(株)製)を用いて離型処理を施した石英板を第2の支持体として、実施例1〜6と同様にして機能性積層体を作製し、その後、石英板を剥離させて機能性積層体11である光学機能性フィルムを得た。第1の基材、および第1の樹脂と第2の樹脂として、下記の材料を用いた。
第1の基材:PET樹脂コスモシャインA4300(商品名;東洋紡績(株)製) 弾性率3.9×109Pa
第1および第2の樹脂:樹脂E 弾性率1.4×109Pa
実施例1〜6と同様にして測定した可視光の透過率の減少率は−1.3%であり、評価は良であった。
【0148】
以上、本発明を実施の形態および実施例に基づいて説明したが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0149】
1…機能性層、2…第1の樹脂層、3…第2の樹脂層、4…第1の支持体、
5…第2の支持体、6…外部支持体、7a、7b…反射面、10、11…機能性積層体、
20…機能性積層体、21…機能性層、22a〜22d…反射面、23…単位凹部、
24…第2の樹脂層、30…機能性積層体、31…機能性層、32a〜32c…反射面、
33…単位凹部、34…第2の樹脂層、41…金型、42…第1の樹脂材料層、
43…第2の樹脂材料層、50…機能性積層体、51…自己洗浄効果層、
52a〜52c…機能性積層体、53…微粒子、54、55…光拡散層、
60…機能性積層体、61…機能性層、2…第1の樹脂層、63…第2の樹脂層、
64a、64b…反射面、65…機能性積層体、66…機能性層、67…第1の樹脂層、
68…第2の樹脂層、69a、69b…反射面、70…機能性積層体、71…機能性層、
72…反射面、73…第2の樹脂層、74…機能性層、75…反射面、
76…第2の樹脂層、77…機能性層、78…反射面、79…第2の樹脂層、
80…ブラインド装置、81…スラット(羽)、82…スラット群(日射遮蔽部材群)、
83…ヘッドボックス、84…ボトムレール、85…昇降コード、
86…昇降操作コード、87…ラダーコード、88…基材、89…機能性積層体、
90…ロールスクリーン装置、91…スクリーン、92…ヘッドボックス、93…芯材、
94…チェーン、95…基材、96…建具、97…光学的機能性体、98…枠材、
99…基材、100…キューブコーナーシート材料、112…キューブコーナー要素、
114…本体部、116…ランド層、118…本体層、120…裏面、121…前面、
122a、122b、122c…キューブコーナー要素を構成する平面
【先行技術文献】
【特許文献】
【0150】
【特許文献1】特許第3623506号公報(請求項1、第5頁、図1及び2)
【特許文献2】特開2007−10893号公報(請求項2、段落0040〜0043、図1及び2)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の立体的形状に形成された無機物層を含有する機能性層と、
前記機能性層の2つの主面のそれぞれに密着し、前記機能性層を狭持するように配置 された第1の樹脂層及び第2の樹脂層と、
前記第1の樹脂層の、前記機能性層と接している面とは反対側の面、及び前記第2の 樹脂層の、前記機能性層と接している面とは反対側の面にそれぞれ接して配置され、前 記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層に比べ弾性率が大きい、第1の支持体及び第2の 支持体と
を有し、前記第1の支持体及び前記第2の支持体の一方は、それと同等以上の弾性率を有する外部支持体で代替される場合には、省略可能である、機能性積層体。
【請求項2】
前記第1の支持体又は前記第2の支持体が省略されており、前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層に比べ弾性率が大きい前記外部支持体に、前記第1の樹脂層又は前記第2の樹脂層を接着するように構成されている、請求項1に記載した機能性積層体。
【請求項3】
JIS 7161に基づいて測定された、前記第1の支持体及び前記第2の支持体の弾性率が、25℃において7×108〜7.2×1010Paである、請求項1に記載した機能性積層体。
【請求項4】
前記第1の樹脂と前記第2の樹脂とが同種の材料からなる、請求項1に記載した機能性積層体。
【請求項5】
前記第1の支持体の表面を光入射面とし、入射光を反射、吸収、半透過、又は透過する光学的機能性積層体である、請求項1に記載した機能性積層体。
【請求項6】
前記機能性層が、指向反射性を有する光学的機能性層である、請求項5に記載した機能性積層体。
【請求項7】
前記機能性層の反射面が第1の反射面群と第2の反射面群からなる多数の反射面群で構成され、前記第1の反射面及び前記第2の反射面の平面形状は細長い長方形で、長辺は互いに同じ長さであり、前記長辺は前記光入射面に対して平行であるが、前記第1の反射面および前記第2の反射面の短辺は、それぞれ、前記光入射面に対して一定の角度で傾いて形成されており、多数の前記第1の反射面及び多数の前記第2の反射面が、前記反射面の長手方向に直交する方向に向かって一次元的に交互に配列されている、請求項6に記載した機能性積層体。
【請求項8】
前記機能性層の反射面は、多数の単位凹部又は単位凸部が規則正しく配置されて構成されており、前記単位凹部又は単位凸部の立体的形状が、角錐形、円錐形、半球形、又はシリンドリカル形である、請求項6に記載した機能性積層体。
【請求項9】
前記機能性層の反射面の対称面の面内方向又は対称軸の方向、すなわち、再帰反射率が最大又は概ね最大になる方向が、前記入射面に直交する方向から傾斜している、請求項6に記載した機能性積層体。
【請求項10】
前記機能性層の反射面が、1種類の、個片化された、多数の反射面群で構成され、前記反射面の平面形状は細長い長方形で、その長辺は前記光入射面に対して平行であるが、その短辺は前記光入射面に対して一定の角度で傾いて形成されており、前記反射面がその長手方向に直交する方向に向かって一次元的に配列されている、請求項5に記載した機能性積層体。
【請求項11】
特定の波長領域の入射光を選択的に反射、吸収、半透過、又は透過する光学的機能性積層体である、請求項1に記載した機能性積層体。
【請求項12】
前記機能性層が、特定の波長領域の入射光を選択的に反射又は透過する光学的機能性層である、請求項11に記載した機能性積層体。
【請求項13】
前記機能性層が、高屈折率層と金属層とが積層された複数層からなる、請求項12に記載した機能性積層体。
【請求項14】
前記機能性層が、低誘電率層と高誘電率層とが交互に積層された複数層からなる、請求項12に記載した機能性積層体。
【請求項15】
前記機能性層が、可視光領域において透明性を有する導電性材料を主成分とする透明導電層、又は外部刺激により反射性能が可逆的に変化するクロミック材料を主成分とする機能性層である、請求項12に記載した機能性積層体。
【請求項16】
前記機能性積層体の表面に、撥水性又は親水性を有する層を備える、請求項5に記載した機能性積層体。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載した機能性積層体を備える、機能性構造材。
【請求項18】
請求項5〜16のいずれか1項に記載した光学的機能性積層体を備え、窓材として構成されている、請求項17に記載した機能性構造材。
【請求項19】
請求項5〜16のいずれか1項に記載した光学的機能性積層体を備え、日射遮蔽部材として構成されている、請求項17に記載した機能性構造材。
【請求項20】
請求項5〜16のいずれか1項に記載した光学的機能性積層体を採光部に備え、建具として構成されている、請求項17に記載した機能性構造材。
【請求項1】
所定の立体的形状に形成された無機物層を含有する機能性層と、
前記機能性層の2つの主面のそれぞれに密着し、前記機能性層を狭持するように配置 された第1の樹脂層及び第2の樹脂層と、
前記第1の樹脂層の、前記機能性層と接している面とは反対側の面、及び前記第2の 樹脂層の、前記機能性層と接している面とは反対側の面にそれぞれ接して配置され、前 記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層に比べ弾性率が大きい、第1の支持体及び第2の 支持体と
を有し、前記第1の支持体及び前記第2の支持体の一方は、それと同等以上の弾性率を有する外部支持体で代替される場合には、省略可能である、機能性積層体。
【請求項2】
前記第1の支持体又は前記第2の支持体が省略されており、前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層に比べ弾性率が大きい前記外部支持体に、前記第1の樹脂層又は前記第2の樹脂層を接着するように構成されている、請求項1に記載した機能性積層体。
【請求項3】
JIS 7161に基づいて測定された、前記第1の支持体及び前記第2の支持体の弾性率が、25℃において7×108〜7.2×1010Paである、請求項1に記載した機能性積層体。
【請求項4】
前記第1の樹脂と前記第2の樹脂とが同種の材料からなる、請求項1に記載した機能性積層体。
【請求項5】
前記第1の支持体の表面を光入射面とし、入射光を反射、吸収、半透過、又は透過する光学的機能性積層体である、請求項1に記載した機能性積層体。
【請求項6】
前記機能性層が、指向反射性を有する光学的機能性層である、請求項5に記載した機能性積層体。
【請求項7】
前記機能性層の反射面が第1の反射面群と第2の反射面群からなる多数の反射面群で構成され、前記第1の反射面及び前記第2の反射面の平面形状は細長い長方形で、長辺は互いに同じ長さであり、前記長辺は前記光入射面に対して平行であるが、前記第1の反射面および前記第2の反射面の短辺は、それぞれ、前記光入射面に対して一定の角度で傾いて形成されており、多数の前記第1の反射面及び多数の前記第2の反射面が、前記反射面の長手方向に直交する方向に向かって一次元的に交互に配列されている、請求項6に記載した機能性積層体。
【請求項8】
前記機能性層の反射面は、多数の単位凹部又は単位凸部が規則正しく配置されて構成されており、前記単位凹部又は単位凸部の立体的形状が、角錐形、円錐形、半球形、又はシリンドリカル形である、請求項6に記載した機能性積層体。
【請求項9】
前記機能性層の反射面の対称面の面内方向又は対称軸の方向、すなわち、再帰反射率が最大又は概ね最大になる方向が、前記入射面に直交する方向から傾斜している、請求項6に記載した機能性積層体。
【請求項10】
前記機能性層の反射面が、1種類の、個片化された、多数の反射面群で構成され、前記反射面の平面形状は細長い長方形で、その長辺は前記光入射面に対して平行であるが、その短辺は前記光入射面に対して一定の角度で傾いて形成されており、前記反射面がその長手方向に直交する方向に向かって一次元的に配列されている、請求項5に記載した機能性積層体。
【請求項11】
特定の波長領域の入射光を選択的に反射、吸収、半透過、又は透過する光学的機能性積層体である、請求項1に記載した機能性積層体。
【請求項12】
前記機能性層が、特定の波長領域の入射光を選択的に反射又は透過する光学的機能性層である、請求項11に記載した機能性積層体。
【請求項13】
前記機能性層が、高屈折率層と金属層とが積層された複数層からなる、請求項12に記載した機能性積層体。
【請求項14】
前記機能性層が、低誘電率層と高誘電率層とが交互に積層された複数層からなる、請求項12に記載した機能性積層体。
【請求項15】
前記機能性層が、可視光領域において透明性を有する導電性材料を主成分とする透明導電層、又は外部刺激により反射性能が可逆的に変化するクロミック材料を主成分とする機能性層である、請求項12に記載した機能性積層体。
【請求項16】
前記機能性積層体の表面に、撥水性又は親水性を有する層を備える、請求項5に記載した機能性積層体。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載した機能性積層体を備える、機能性構造材。
【請求項18】
請求項5〜16のいずれか1項に記載した光学的機能性積層体を備え、窓材として構成されている、請求項17に記載した機能性構造材。
【請求項19】
請求項5〜16のいずれか1項に記載した光学的機能性積層体を備え、日射遮蔽部材として構成されている、請求項17に記載した機能性構造材。
【請求項20】
請求項5〜16のいずれか1項に記載した光学的機能性積層体を採光部に備え、建具として構成されている、請求項17に記載した機能性構造材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−212892(P2011−212892A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81465(P2010−81465)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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