説明

機能液タンク、液滴吐出装置の機能液置換方法および液滴吐出装置

【課題】新旧機能液の置換を効率良く行うことができる機能液タンク、液滴吐出装置の機能液置換方法および液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】機能液供給源から機能液の供給を受けると共に、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッド17に機能液を供給する機能液タンクであって、底部に、流出側ポートに臨ませて液溜り部71を窪入形成したタンク本体と、液溜り部71に臨み、液溜り部71における機能液の液位を検出する液溜り液位検出手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能液供給源から機能液の供給を受けると共に、機能液滴吐出ヘッドに機能液を供給する機能液タンク、液滴吐出装置の機能液置換方法および液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液滴吐出装置の機能液置換方法ではないが、送液と吸引とを併用して液滴吐出ヘッドのヘッド内流路に機能液の充填を行う液滴吐出ヘッドの機能液充填方法が知られている(特許文献1参照)。この機能液充填方法は、主に液滴吐出ヘッドの交換時に実施するものであり、密閉式の給液サブタンクに圧縮エアーを供給して、給液サブタンク内の機能液を液滴吐出ヘッドに送液し、液滴吐出ヘッドのヘッド内流路に機能液を充填する加圧送液工程と、加圧送液工程の後、吸引ユニットを駆動し、液滴吐出ヘッドのノズルから機能液を吸引する吸引工程と、を備えている。このように、液滴吐出ヘッドに対し、機能液の送液による充填動作と、続く機能液の吸引動作とを実施することにより、初期充填を可能とすると共にヘッド内流路に気泡が残留するのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−188410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、機能液滴吐出ヘッドに機能液を供給する機能液供給装置に異なる機能液を導入しようとする場合、上記従来の機能液充填方法に倣えば、その時点で機能液供給装置の充填流路(全流路)に充填されている旧機能液を全て液抜きし、その後、新機能液を上記の充填動作と吸引動作とを用いて充填することになる。しかし、経験則上、全流路に充填されている機能液をいったん全て液抜きしてしまうことによって、充填後の機能液滴吐出ヘッドの吐出特性が悪化することが知られている。そこで、サブタンクを空にしない程度に機能液(旧機能液)の吸引および機能液(新機能液)の充填を同時に繰り返し行うことによって、機能液を流路内において徐々に置換してゆく機能液置換方法が考えられる。
一方、上記のサブタンクには、上限となる機能液の液位を検出する上限検出センサーおよび下限となる機能液の液位を検出する下限検出センサーが設けられているため、これらを利用し、サブタンク内に貯留する旧機能液の液面が下限検出センサーにセンシングされるまで液抜きを行う抜取り工程と、サブタンク内に新機能液の送液を行う送液工程とを、交互に繰り返すことにより機能液を置換することが考えられる。しかし、このようにすると、下限検出センサ以下に残留する旧機能液とサブタンクに送液された新機能液とがサブタンク内で混合し、その混合液がサブタンクの微小間隙に行き渡り、抜取り工程と送液工程とを十分に繰り返し実施しても完全に除去することができないため、サブタンク内が新機能液に完全に置換されるまでに多くの機能液を消費することになり、置換効率が非常に悪くなるという問題があった。
【0005】
本発明は、新旧機能液の置換を効率良く行うことができる機能液タンク、液滴吐出装置の機能液置換方法および液滴吐出装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の機能液タンクは、機能液供給源から機能液の供給を受けると共に、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに機能液を供給する機能液タンクであって、底部に、流出側ポートに臨ませて液溜り部を窪入形成したタンク本体と、液溜り部に臨み、液溜り部における機能液の液位を検出する液溜り液位検出手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、例えば、機能液タンクおよび機能液滴吐出ヘッドの交換時において、機能液滴吐出ヘッドを介して機能液タンクからの機能液の液抜き作業を行うと、機能液タンク内の機能液の液位は降下してゆく。ここで、減液した機能液の液面が液溜り部に到達し、液溜り液位検出手段によって検出されると、吸引動作が停止される。このため、機能液タンクとそれ以降の流路および機能液滴吐出ヘッドとを完全に空にすることなく、すなわち機能液タンクに僅かに機能液を残して、その1回の液抜きを行うことができる。また、機能液タンクに残った機能液は、流出側ポートに臨ませて窪入形成した液溜り部に残留するため、続く新機能液の投入に際し新機能液と適宜混ざり合い、濃度を維持したまま残留することがない。したがって、機能液タンク内に残留した旧機能液と、新たに送液された新機能液との混合を少量に抑えることができ、機能液の置換効率を高めることができる。
【0008】
この場合、タンク本体に添設した液柱パイプと、液柱パイプに臨み、タンク本体に貯留される機能液の上限液位を検出する上限液位検出手段、および下限液位を検出する下限液位検出手段と、を更に備え、液溜り部は、タンク本体に連通する液柱パイプの下部連通部より下方に配設されていることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、機能液の置換動作において、液抜き後の送液により機能液タンクを機能液で満たしたときに、上限液位検出手段を利用して送液停止を自動で実施することができる。すなわち、液溜り液位検出手段と上限液位検出手段とを用いることで、機能液の置換を効率良く行うことができる。また、新機能液と混ざり難く且つ残留し易い液柱パイプ内の機能液も、完全に抜き取ることができる。
【0010】
また、タンク本体に収容され、タンク本体の内壁に微小間隙を存して浮沈するフロートを更に備えることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、フロートにより、水頭値変動の抑制や気−液分離を促進することができる一方、機能液の置換動作において、タンク本体とフロートとの間の微小間隙に機能液が残留し易くなる。しかし、窪入形成した液溜り部により、新機能液と混ざり難く且つ残留し易い微小間隙の機能液を、完全に抜き取ることができる。
【0012】
本発明の液滴吐出装置の機能液置換方法は、上記の機能液タンクと、機能液タンクに機能液を供給する機能液供給源と、機能液タンクから機能液の供給を受けるインクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドと、を備えた液滴吐出装置に対し、機能液供給源から機能液滴吐出ヘッドに至る全流路の機能液を新旧置換する液滴吐出装置の機能液置換方法であって、全流路に機能液を充填した状態で、機能液供給源を旧機能液から新機能液のものにシフトすると共に、機能液滴吐出ヘッドの吐出ノズルから機能液を吸引し、液溜り液位検出手段が液位を検出するまで機能液タンクから機能液を抜き取る抜取り工程、および上限液位検出手段が液位を検出するまで機能液供給源から機能液タンクに機能液を送液する送液工程から成る部分置換工程を、所定回数繰り返して機能液を新旧置換することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の液滴吐出装置は、機能液供給源から機能液タンクを経てインクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに至る全流路の機能液を新旧置換するようにした液滴吐出装置であって、新機能液の機能液供給源および旧機能液の機能液供給源となる2つのメインタンクと、2つのメインタンクのタンク流路を切り替える流路切替え手段と、流路切替え手段と機能液滴吐出ヘッドとを接続する機能液流路と、機能液流路に介設した上記の機能液タンクと、機能液流路を介して、各メインタンクの機能液を機能液タンクに送液する送液手段と、機能液滴吐出ヘッドのノズル面に離接自在に密接し、機能液滴吐出ヘッドの吐出ノズルから機能液を吸引する吸引手段と、流路切替え手段、送液手段および吸引手段を制御する制御手段と、を備え、制御手段は、流路切替え手段を切り替えて、メインタンクを旧機能液のものから新機能液のものにシフトすると共に、吸引手段を駆動し、液溜り液位検出手段が液位を検出するまで機能液タンクから機能液を抜き取る抜取り動作、および上限液位検出手段が液位を検出するまで機能液供給源から機能液タンクに機能液を送液する送液動作から成る部分置換動作を、所定回数繰り返して機能液を新旧置換することを特徴とする。
【0014】
これらの構成によれば、機能液タンクに対する抜取り工程(抜取り動作)および送液工程(送液動作)を繰り返すと、全流路を満たしている旧機能液は、機能液滴吐出ヘッドから徐々に抜き取られる一方、新機能液は、旧機能液と界面を接した状態で機能液供給源から機能液タンクに送られてゆく。機能液タンクでは、界面が消失して新機能液と旧機能液とが混合するが、部分置換工程(部分置換動作)を繰り返すことにより、徐々に新機能液に置換されてゆく。そして、所定の繰返し回数、部分置換工程(部分置換動作)を繰り返すと、最終的に機能液タンクは元より、機能液滴吐出ヘッドのヘッド内流路においても、旧機能液が新機能液に所定の置換率(完全置換に相当する置換率)まで置換される。このように、旧機能液の液抜きと新機能液の充填とが同時進行で実施されるため、新旧機能液の置換を短時間で行うことができる。さらに、新機能液は旧機能液に接し或いは混合した状態で、新旧機能液を置換することができ、新機能液の充填に際し、新機能液がエアーに接するのを極力阻止することができる。したがって、エアーによる新機能液の変質や機能液流路内への気泡(エアー)の残留を有効に防止することができる。また、抜取り工程(抜取り動作)において、液溜り液位検出手段が液位を検出するまで機能液タンクから機能液を抜き取るため、1回の液抜き工程によって吸引される機能液量が多く、機能液滴吐出ヘッドの吐出特性に影響を与えることなく、機能液の置換を効率良く行うことができる。
【0015】
この場合、新旧機能液が、成分の異なる描画用のインク同士であること、或いは新旧機能液が、描画用のインクと洗浄液とであることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、新旧の描画インクの置換は元より、新旧描画インクの置換の間に洗浄工程を実施する場合にも、機能液タンクを空にすることなく、新描画インクをエアーに接触させずに充填することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係る液滴吐出装置の斜視図である。
【図2】ヘッドユニットの平面摸式図である。
【図3】機能液滴吐出ヘッドの外観斜視図である。
【図4】機能液供給装置の配管系統図である。
【図5】吸引ユニットの側面図である。
【図6】サブタンク廻りを模式的に表した断面図である。
【図7】機能液供給装置の簡易な配管系統図である。
【図8】機能液置換方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態に係る機能液置換方法を適用した液滴吐出装置について説明する。この液滴吐出装置は、フラットパネルディスプレイの製造ラインに組み込まれており、例えば、特殊なインクや発光性の樹脂液である機能液を導入した機能液滴吐出ヘッドを用い、液晶表示装置のカラーフィルタや有機EL装置の各画素となる発光素子等を形成するものである。
【0019】
図1に示すように、液滴吐出装置1は、石定盤に支持されたX軸支持ベース2上に配設され、主走査方向となるX軸方向に延在して、ワークをX軸方向に移動させるX軸テーブル11と、複数本の支柱4を介してX軸テーブル11を跨ぐように架け渡された1対のY軸支持ベース3上に配設され、副走査方向となるY軸方向に延在するY軸テーブル12と、複数の機能液滴吐出ヘッド17(図1では図示省略)が搭載された13個のキャリッジユニット51と、から成り、13個のキャリッジユニット51は、Y軸テーブル12に吊設されている。さらに、液滴吐出装置1は、これらの装置を温度および湿度が管理された雰囲気内に収容するチャンバー6と、チャンバー6を貫通して、チャンバー6の外部から内部の機能液滴吐出ヘッド17に機能液を供給する3組の機能液供給装置101(図4参照)を有した機能液供給ユニット7と、を備えている。X軸テーブル11およびY軸テーブル12の駆動と同期して機能液滴吐出ヘッド17を吐出駆動させることにより、機能液供給ユニット7から供給されたR・G・B3色の機能液滴を吐出させ、ワークに所定の描画パターンが描画される。
【0020】
また、液滴吐出装置1は、フラッシングユニット8、吸引ユニット9、ワイピングユニット14、吐出性能検査ユニット18から成るメンテナンス装置5を備えており、これらユニットを機能液滴吐出ヘッド17の保守に供して、機能液滴吐出ヘッド17の機能維持・機能回復を図るようになっている。
【0021】
フラッシングユニット8は、機能液滴吐出ヘッド17の吐出直前や、ワークの載換え時等の描画処理休止時に行われる、機能液滴吐出ヘッド17の捨て吐出(フラッシング)を受ける。ワイピングユニット14は、ワイピングシートを有し、吸引後の機能液滴吐出ヘッド17のノズル面97を拭取る。吐出性能検査ユニット18は、機能液滴吐出ヘッド17から吐出された機能液滴を画像認識し、機能液滴吐出ヘッド17の吐出性能(吐出の有無および飛行曲り)を検査する。吸引ユニット9は、詳細は後述するが、複数の分割吸引ユニット9aを有し、各機能液滴吐出ヘッド17の吐出ノズル98から機能液を強制的に吸引すると共に、キャッピングを行う。
【0022】
各キャリッジユニット51は、12個の機能液滴吐出ヘッド17と、12個の機能液滴吐出ヘッド17を6個ずつ2群に分けて支持するキャリッジプレート53と、から成るヘッドユニット13を備えている(図2参照)。また、各キャリッジユニット51は、一対のY軸支持ベース3上に掛け渡されたブリッジプレート52に吊設されている。各キャリッジユニット51は、ブリッジプレート52上に配設されたサブタンク(機能液タンク)121から自然水頭を利用し、かつ圧力調整弁150を介して各機能液滴吐出ヘッド17に機能液が供給されるようになっている。なお、キャリッジユニット51の個数および各キャリッジユニット51に搭載される機能液滴吐出ヘッド17の個数は任意である。
【0023】
図3に示すように、機能液滴吐出ヘッド17は、いわゆる2連のインクジェットヘッドであり、2連の接続針92を有する機能液導入部91と、機能液導入部91の側方に連なる2連のヘッド基板93と、ヘッド基板93の下方に連なり、内部に機能液で満たされるヘッド本体94と、を備えている。接続針92は、機能液供給ユニット7に接続され、機能液導入部91に機能液を供給する。ヘッド本体94は、キャビティ95(ピエゾ圧電素子)と、多数の吐出ノズル98が開口したノズル面97を有するノズルプレート96と、で構成されている。機能液滴吐出ヘッド17を吐出駆動すると、キャビティ95のポンプ作用により、吐出ノズル98から機能液滴が吐出される。
【0024】
機能液供給ユニット7は、図4に示すように、R・G・B3色に対応した3組の機能液供給装置101を備えている。また、機能液供給ユニット7は、メインタンク(機能液供給源)181およびサブタンク(機能液タンク)121等に制御用の圧縮窒素ガスを供給する窒素ガス供給設備85と、各種開閉弁の制御用の圧縮エアーを供給する圧縮エアー供給設備86と、各部からガス排気を行うためのガス排気設備87と、気泡除去ユニット135と、を備えている。3組の機能液供給装置101は、それぞれR・G・B3色に対応した機能液滴吐出ヘッド17に接続されており、これにより、各色の機能液滴吐出ヘッド17には対応する色の機能液が供給される。
【0025】
各機能液供給装置101は、機能液の供給源を構成する2つのメインタンク181,181を有するタンクユニット122と、各キャリッジユニット51に対応して設けた13個のサブタンク121と、タンクユニット122および各機能液滴吐出ヘッド17とを接続する機能液流路123と、を備えている。各メインタンク181内の機能液は、これに接続して窒素ガス供給設備85からの圧縮窒素ガスにより加圧され、機能液流路123を介して13個のサブタンク121に選択的に供給される。その際、圧縮エアー供給設備86の圧縮エアーにより、各種開閉弁が開閉制御される。また同時に、各サブタンク121は、ガス排気設備87を介して大気開放され、必要量の機能液を受容する。各サブタンク121の機能液は、これに連なる機能液滴吐出ヘッド17の駆動により、所定の水頭圧を維持しながら、機能液流路123を介して機能液滴吐出ヘッド17に供給される。なお、上記のようなガス圧による送液の他、ポンプによる送液であってもよい。
【0026】
タンクユニット122は、機能液の供給源となる一対のメインタンク181,181と、一対のメインタンク181,181の重量をそれぞれ測定する一対の重量測定装置182,182と、機能液流路123への連通状態を一方のメインタンク181から他方のメインタンク181に切替える切替え機構(流路切換え手段)183と、を備えている。各メインタンク181には、機能液を圧送するための加圧制御および機能液を逆送するための負圧制御(大気開放に相当)を行うべく、窒素ガス供給設備85およびガス排気設備87に接続されている。
【0027】
切替え機構183は、一対のメインタンク181,181に接続した一対のタンク流路186,186と、上流側に一対のタンク流路186,186が接続されると共に、下流側に機能液流路123が接続されたタンク流路継手187と、各タンク流路186,186に介設されたタンク開閉弁188と、を備えている。一方のタンク開閉弁188を閉弁し、他方のタンク開閉弁188を開弁することにより、機能液流路123への接続が、一対のメインタンク181,181の間で交互に切替えが行われる。
【0028】
機能液流路123は、上流端がタンクユニット122に接続された主機能液流路124と、主機能液流路124の下流端に接続され、主機能液流路124を13分岐する13分岐流路132と、13分岐流路132および各機能液滴吐出ヘッド17を接続する個別機能液流路127と、から構成されている。主機能液流路124には、気体通過膜を介して機能液中のマイクロバルブを経時的に除去する気泡除去ユニット135が介設されている。
【0029】
個別機能液流路127は、上流端を13分岐流路132に接続したタンク側流路146と、上流側をサブタンク121に接続したヘッド側流路128と、上流側をヘッド側流路128に接続した4分岐流路147と、上流側を4分岐流路147に接続した複数の個別流路148と、により構成されている。これにより、機能液が各サブタンク121から4方に分岐して、それぞれの機能液滴吐出ヘッド17に接続されている。すなわち、機能液流路123の13分岐と、個別機能液流路127の4分岐により、13×4個の機能液滴吐出ヘッド17に機能液が供給されている。
【0030】
吸引ユニット9は、図5に示すように、12個の機能液滴吐出ヘッド17に対応する12個のヘッドキャップ21をキャッププレート22に配置した13台のキャップユニット31と、支持部材23を介して各キャップユニット31を昇降させる13台の昇降機構32と、各キャップユニット31に連なると共に機能液の吸引流路を有する13個の吸引流路系27(図7参照)と、各吸引流路系27に連なると共に2つの圧力水準に対応した2つの廃液タンクを有する吸引機構(図示省略)と、を備えている。また、図示は省略するが、吸引ユニット9は、圧力制御機構等に制御用の圧縮エアーを供給する圧縮エアー供給設備と、各部から排気を行うための排気設備と、廃液タンクに接続され、貯留された機能液を廃液する機能液廃液設備と、を備えている。
【0031】
キャップユニット31は、各色2個、計12個の機能液滴吐出ヘッド17に対応したヘッドキャップ21と、これらを搭載したキャッププレート22と、で構成されている。昇降機構32は、支持部材23を介してヘッドキャップ21を直接昇降させる昇降シリンダ24と、昇降シリンダ24による昇降をガイドする一対のリニアガイド25と、これらを支持するベース部26と、を有している。
【0032】
吸引ユニット9による吸引動作は、昇降機構32によりキャップユニット31を上昇させ、各機能液滴吐出ヘッド17に対応するヘッドキャップ21を密接させた後、エジェクター28(図7参照)を駆動させることにより、機能液滴吐出ヘッド17の吐出ノズル98から機能液を吸引して行われる。
【0033】
ここで、図6を参照して、本実施形態に係るサブタンク(機能液タンク)121について詳細に説明する。サブタンク121は、機能液を貯留するサブタンク本体171と、サブタンク本体171に落し蓋様に浮かした蓋体フロート172と、サブタンク本体171の側方に配設された透明な液柱パイプ176と、液柱パイプ176に臨み、貯留された機能液の液位を検出する液位検出機構173と、サブタンク本体171に連通する液柱パイプ176の下部連通部125より下方の位置に設けられた液溜り部71と、液溜り部71に臨み、液溜り部71における機能液の液位を検出する液溜り液位検出センサー(液溜り液位検出手段)72と、を備えている。また、サブタンク121の下方には、第3開閉弁139を介してタンク側流路146に接続される流入ジョイント(流入側ポート)163、およびヘッド側流路128に接続される流出ジョイント(流出側ポート)164が設けられている。このように、機能液は、サブタンク本体171の下方から流入し、下方から流出するように構成されている。また、サブタンク本体171の上部には、窒素ガス供給設備85およびガス排気設備87が接続されており(図4参照)、サブタンク本体171の内部を、メインタンク181からの送液の際の大気開放およびメインタンク181への加圧制御可能に構成されている。
【0034】
液位検出機構173は、液柱パイプ176に臨んでおり、上限となる機能液の液位を検出する上限検出センサー(上限液位検出手段)178と、上下中間位置に配設され、補給時の機能液の液位を検出する液位検出センサー177と、下限となる機能液の液位を検出する下限検出センサー(下限液位検出手段)179と、を備えている。上限検出センサー178は、サブタンク121のオーバーフローを防止すべく設けられており、上限検出センサー178が上限液位を検出した場合には、メインタンク181からの送液を停止させる。一方、下限検出センサー179は、サブタンク121が空になるのを防止すべく設けられており、下限検出センサー179が下限液位を検出した場合には、現時点のワークの描画が終了したところで液滴吐出装置1を停止させる。
【0035】
液位検出センサー177は、機能液滴吐出ヘッド17の理想の水頭値を考慮した液位を検出するものであり、液位検出センサー177により機能液の液位が検出されると、制御部102との協働により、満液もしくは減液と判断される。すなわち、液位検出センサー177より上に液位がある状態から、吐出動作により機能液が減り、液位検出センサー177により液位が検出されることで減液と判断される。また、液位検出センサー177より下に液位がある状態から、補給動作により機能液が増え、液位検出センサー177により液位が検出された後、一定時間経過すると満液と判断される。このような液位検出センサー177により、サブタンク121内の機能液の液位が上下中間部位置に制御されている。
【0036】
ここで、機能液供給源であるメインタンク181からサブタンク121への機能液の補給動作について説明する。サブタンク121内の機能液が一定量減り、上述した液位検出機構173によって減液状態であると判断されると、第3開閉弁139を開弁すると共に、ガス排気設備87を駆動してメインタンク181からサブタンク121に機能液を補給する。メインタンク181は加圧されているため、第3開閉弁139を開弁し、サブタンク121内の大気を開放することでメインタンク181の機能液が自動的にサブタンク121に送液される。サブタンク121内の機能液が一定量貯まり、液位検出機構173によってサブタンク121内が満液状態であると判断されると、第3開閉弁139を閉弁して補給動作を終了する。
【0037】
一方、図6に示すように、液溜り部71は、サブタンク本体171の底部に連通して窪入形成されており、円形或いは角形を為している。サブタンク本体171に貯留されている機能液は、液溜り部71を介して流出経路165および流出ジョイント164を介して流出するように構成されている。そして、この液溜り部71に臨むように、液溜り部71における機能液を検出すべく、液溜り液位検出センサー72が設置されている。この液溜り液位検出センサー72は、液溜り部71において機能液を完全に空にすることなく残留させることを目的として設置され、後述する機能液置換方法における機能液抜取り工程に用いられる。この液溜り液位検出センサー72により液位が検出されると、制御部102との協働により、機能液抜取り工程における液抜き作業が停止される。すなわち、液溜り部71に旧機能液を僅かに残した状態でサブタンク121からの機能液の吸引が停止される。したがって、完全にサブタンク121内を空にすることなく、最小限の機能液を残すことによって、効率良く新旧機能液の置換を行うことができる。
【0038】
次に、図7および図8を参照して、機能液供給装置101(機能液供給ユニット7)の機能液置換方法について説明する。この機能液置換方法は、機能液供給装置101(の全流路)に充填されている機能液(旧機能液)を抜き取り(不完全抜取り)、これと成分の異なる機能液(新機能液)を充填するものであり、この抜取りと充填とを繰り返すものである。言うまでもないが、一方のメインタンク181には、旧機能液が残っており、新機能液を充填した他方のメインタンク181がセットされている状態から機能液置換のシーケンスがスタートする。そして、機能液滴吐出ヘッド17の吐出ノズル98から機能液を吸引してサブタンク121から所定量の機能液を抜き取る抜取り工程(S1〜S3)と、メインタンク181からサブタンク121に機能液を圧力送液する送液工程(S4〜S6)と、を所定の回数繰り返すようにしている。
【0039】
まず、切替え機構183により、現在使用している旧機能液のメインタンク181から、新機能液が充填されているメインタンク181に流路切替えする。次に、吸引ユニット9を駆動して、サブタンク121の液抜きとなる抜取り工程(S1〜S3)を開始する。具体的には、第1のサブタンク121の液溜り液位検出センサー72が減液を検出するまで、機能液滴吐出ヘッド17を介してサブタンク121内の旧機能液を液抜きする。この抜取り工程では、サブタンク121の液位が液溜り液位検出センサー72の位置まで降下する。このため、サブタンク121の蓋体フロート172は、サブタンク121の底面まで落ち込むと共に、サブタンク121と蓋体フロート172との間隙にある機能液、および液柱パイプ176内の機能液も、抜ききれることになる。なお、メインタンク181からサブタンク121に至るまでの機能液流路123において、廃液タンクに接続された逆送配管パイプを設けることによって、流路内の旧機能液を押し出すようにメインタンク181から新機能液を送液し、逆送配管パイプを通じて旧機能液を廃液タンクに送るようにしてもよい。
【0040】
次に、第3開閉弁139を開弁して、サブタンク121への送液工程(S4〜S6)を開始する。具体的には、第1のサブタンク121の上限検出センサー178が満液を検出するまで、第3開閉弁139を開弁状態とし、第1のサブタンク121に機能液を補充する。この場合、サブタンク121と蓋体フロート172との間隙や液柱パイプ176内等の、新機能液と混ざり難い部分(微小間隙)に旧機能液が残っていないため、置換率が格段に向上する。特に、旧機能液に比して新機能液の比重が高い場合でも、高い置換率が維持される。これにより、第1のサブタンク121の1回目の部分置換工程(S1〜S6)が終了する。続いて、第2ないし第13のサブタンク121への部分置換工程を実施することで、一巡目の部分置換工程を終了する。一巡目の部分置換工程終了後、第1ないし第13のサブタンク121に対して、二巡目の部分置換工程を行う。そして、この部分置換工程を複数回(所定の回数)繰り返すことで、メインタンク181から機能液滴吐出ヘッド17までの流路全体の機能液置換を終了する。なお、この繰返し回数は、機能液滴吐出ヘッド17から吸引した機能液が、完全置換に相当する置換率(99.0%)になるための回数であり、この繰返し回数は、上記置換率になるように予め試験的に求めた回数を用いることが好ましい。
【0041】
以上の構成によれば、旧機能液の液抜きと新機能液の充填とが同時進行で実施されるだけでなく、液溜り部71を設けることによって1回の抜取り工程における液抜き量が多いため、機能液供給装置101における新旧機能液の置換を短時間に効率良く行うことができる。このため、上記の繰り返し回数を極力少なくすることができる。
【0042】
なお、本実施形態では、1のサブタンク121を置換単位として機能液置換を行っているが、2以上のサブタンク121を置換単位として機能液置換を行ってもよい。
【0043】
また、新機能液がメインタンク181から機能液滴吐出ヘッド17に至る流路全体を洗浄する洗浄液であってもよい。この場合、洗浄液として機能液の溶媒を用いれば、上記の繰返し回数を極端に少なくすることができる。
【符号の説明】
【0044】
1…液滴吐出装置 7…機能液供給ユニット 17…機能液滴吐出ヘッド 71…液溜り部 72…液溜り液位検出センサー 98…吐出ノズル 121…サブタンク 164…流出側ポート 171…サブタンク本体 172…蓋体フロート 176…液柱パイプ 178…上限検出センサー 179…下限検出センサー 181…メインタンク 183…切替え機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能液供給源から機能液の供給を受けると共に、インクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに機能液を供給する機能液タンクであって、
底部に、流出側ポートに臨ませて液溜り部を窪入形成したタンク本体と、
前記液溜り部に臨み、前記液溜り部における機能液の液位を検出する液溜り液位検出手段と、を備えたことを特徴とする機能液タンク。
【請求項2】
前記タンク本体に添設した液柱パイプと、
前記液柱パイプに臨み、前記タンク本体に貯留される機能液の上限液位を検出する上限液位検出手段、および下限液位を検出する下限液位検出手段と、を更に備え、
前記液溜り部は、前記タンク本体に連通する前記液柱パイプの下部連通部より下方に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の機能液タンク。
【請求項3】
前記タンク本体に収容され、前記タンク本体の内壁に微小間隙を存して浮沈するフロート、を更に備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の機能液タンク。
【請求項4】
請求項3に記載の機能液タンクと、前記機能液タンクに機能液を供給する機能液供給源と、前記機能液タンクから機能液の供給を受けるインクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドと、を備えた液滴吐出装置に対し、
前記機能液供給源から前記機能液滴吐出ヘッドに至る全流路の機能液を新旧置換する液滴吐出装置の機能液置換方法であって、
前記全流路に機能液を充填した状態で、前記機能液供給源を旧機能液から新機能液のものにシフトすると共に、
前記機能液滴吐出ヘッドの吐出ノズルから機能液を吸引し、前記液溜り液位検出手段が液位を検出するまで前記機能液タンクから機能液を抜き取る抜取り工程、および前記上限液位検出手段が液位を検出するまで前記機能液供給源から前記機能液タンクに機能液を送液する送液工程から成る部分置換工程を、所定回数繰り返して機能液を新旧置換することを特徴とする液滴吐出装置の機能液置換方法。
【請求項5】
機能液供給源から機能液タンクを経てインクジェット方式の機能液滴吐出ヘッドに至る全流路の機能液を新旧置換するようにした液滴吐出装置であって、
新機能液の機能液供給源および旧機能液の機能液供給源となる2つのメインタンクと、
前記2つのメインタンクのタンク流路を切り替える流路切替え手段と、
前記流路切替え手段と前記機能液滴吐出ヘッドとを接続する機能液流路と、
前記機能液流路に介設した請求項3に記載の機能液タンクと、
前記機能液流路を介して、前記各メインタンクの機能液を前記機能液タンクに送液する送液手段と、
前記機能液滴吐出ヘッドのノズル面に離接自在に密接し、前記機能液滴吐出ヘッドの吐出ノズルから機能液を吸引する吸引手段と、
前記流路切替え手段、前記送液手段および前記吸引手段を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記流路切替え手段を切り替えて、前記メインタンクを旧機能液のものから新機能液のものにシフトすると共に、
前記吸引手段を駆動し、前記液溜り液位検出手段が液位を検出するまで前記機能液タンクから機能液を抜き取る抜取り動作、および前記上限液位検出手段が液位を検出するまで前記機能液供給源から前記機能液タンクに機能液を送液する送液動作から成る部分置換動作を、所定回数繰り返して機能液を新旧置換することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項6】
前記新旧機能液が、成分の異なる描画用のインク同士であることを特徴とする請求項5に記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
前記新旧機能液が、描画用のインクと洗浄液とであることを特徴とする請求項5に記載の液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−214293(P2010−214293A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64246(P2009−64246)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】