欠陥検出光学系および欠陥検出画像処理を搭載した表面欠陥検査装置
【課題】レンズ効果により凹凸欠陥の判定をする従来技術では、欠陥の正確な大きさ、高さに関しての精度向上が図れない。
【解決手段】ステージ上に搭載されたディスクの面板表面に光ビームを照射して面板表面を走査する照射光学系と、前記ディスクに照射された光ビームによる面板からの正反射光の光量を変化させる濃淡差を有する濃淡フィルタを備え、前記濃淡フィルタを透過した正反射光を受光する受光光学系と、前記フィルタを通過して得られた正反射光の光量変化より面板表面上の欠陥を識別する処理手段とを有する検査装置を提供する。
【解決手段】ステージ上に搭載されたディスクの面板表面に光ビームを照射して面板表面を走査する照射光学系と、前記ディスクに照射された光ビームによる面板からの正反射光の光量を変化させる濃淡差を有する濃淡フィルタを備え、前記濃淡フィルタを透過した正反射光を受光する受光光学系と、前記フィルタを通過して得られた正反射光の光量変化より面板表面上の欠陥を識別する処理手段とを有する検査装置を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表面欠陥検査装置に関し、詳しくは、磁気ディスクあるいはそのアルミ基板(アルミサブストレート)やガラス基板(ガラスサブストレート)等の面板の表面欠陥検査装置において、面板表面の凹部欠陥あるいは凸部欠陥の大きさを精度よく検出することができ、さらには面板表面の凹凸欠陥の大きさと深さあるいは大きさと高さの検出が精度よく検出できるような表面欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
凹部欠陥と凸部欠陥とを精度よく検出する技術として、特許文献1では、受光器をAPD多素子からなる配列センサとし、この手前に千鳥状の縞パターンを素子対応に設けて隣接受光素子の受光量の差から凹部欠陥と凸部欠陥とを検出することが開示されている。また、特許文献1では、他の実施形態として千鳥の縞パターンを用いない技術についても開示されている。一方、特許文献2では、配列されたn個の受光素子を有し、主走査方向に対して直角な方向に沿った結像が受光素子の配列方向となる受光系を設けることで凹部欠陥あるいは凸部欠陥を検出することが提案されている。そのような凹部欠陥あるいは凸部欠陥は、それぞれのレンズ効果によりn個の受光素子の配列方向のそれぞれ受光素子の検出信号において、上限ピークと下限ピークとを発生させる。
【0003】
【特許文献1】特開2001−174415号公報
【特許文献2】特開2003−35678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の先行技術では、凹部欠陥と凸部欠陥とで異なる波形の検出信号を得るために、APD多素子からなる配列センサを2列並列して配置することが必要である。そして、2列のうちの左右どちらの受光素子が先に受光して検出信号を発生するかにより凹部欠陥と凸部欠陥とを区分している。高い精度で各種の欠陥を検出するために、受光器の素子数は十数個から数十個配列される。そのため、前記の先行技術では、幅方向に隣接素子同士からの信号を受ける回路が多数必要となる欠点がある。また特許文献2の先行技術ではレンズ効果により凹凸欠陥の判定をしており、欠陥の正確な大きさ、高さに関しては精度が良くないといった欠点がある。
【0005】
本発明は、前記のような従来技術の問題点を解決するものであって、少数の検出器および回路により、面板表面の凹部欠陥あるいは凸部欠陥の大きさ、高さを精度よく検出することができる表面欠陥検査装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の欠陥検出光学系および欠陥検出画像処理を搭載した表面欠陥検査装置は、ステージ上に搭載されたディスクの面板表面に光ビームを照射して面板表面を走査する照射光学系と、前記ディスクに照射された光ビームによる面板からの正反射光の光量を変化させる濃淡差を有する濃淡フィルタを備え、前記濃淡フィルタを透過した正反射光を受光する受光光学系と、前記フィルタを通過して得られた正反射光の光量変化より面板表面上の欠陥を識別する処理手段とを有して構成される。さらに、本発明に係る表面欠陥検査装置によれば、面板表面を検査して得られた欠陥のデータから欠陥種に応じた処理方法を行うことによって面板表面の特徴のある欠陥例えば、筋状欠陥や円弧状欠陥を検出し、そのサイズや高さを精度よく測定することが可能となる。
【0007】
本発明は、上記した濃淡差を有するフィルタを受光素子の前に配置することによって、凹部欠陥と凸部欠陥との判定を行う。フィルタの性能として透過率0%の領域から透過率100%の領域まで濃淡差を持ち、面板表面の欠陥が存在しない箇所を照射した光ビームの正反射光がフィルタの中心である透過率50%の位置を通過するように設定する。凹部欠陥あるいは凸部欠陥があると、凹部欠陥あるいは凸部欠陥の側面傾斜部からの正反射がフィルタを通過する領域が透過率の高い領域あるいは低い領域いずれか一方にシフトする。これによりフィルタ通過後、受光素子によって受光される光量が変化するため、この変化から欠陥を検出するものである。
【0008】
前記のように面板表面凹凸欠陥を濃淡差をもつフィルタを介して受光器によって受光される光量変化から読み取る場合、面板表面において反射率の異なる箇所(シミ等)も凹凸欠陥として検出してしまう恐れがある。そこで面板表面からの正反射光を濃淡フィルタを介さず、直接受光素子によって受光する系を前記の受光素子とは別に設けることによって、表面の反射率変化を測定する。濃淡差をもつフィルタを介して受光素子によって受光した光量に対して、正反射率変化の測定に用いた光量を除算することによって面板表面の反射率変化に影響されず正確な凹凸欠陥の検出が可能となる。
【0009】
ここで、表面凹凸欠陥の傾斜により濃淡差フィルタの透過率50%の領域からずれることにより発生する欠陥検出信号は、通常、凹部欠陥および凸部欠陥ともにそれぞれ正と負に2つのピークを発生する。このことから、これらのピーク間の距離により欠陥の大きさを検出することができる。なお、凹部欠陥あるいは凸部欠陥が2つのピークを発生する理由は、いずれの欠陥もR、θの走査方向において側面傾斜部が通常前後一対あるからである。この欠陥検出信号の正のピークと負のピークの発生した走査位置(座標位置)を検出すれば、これらの間の距離が得られ、これと走査位置との関係から欠陥の大きさに応じた幅や面積が容易に算出できる。さらに、本発明は、検出された多数の欠陥について欠陥検出座標位置とピーク間の距離との関係から検出した欠陥の連続性を容易に判定できる。この判定をすれば、凹部欠陥や凸部欠陥のうち多少変形した状態の欠陥についても幅や面積を容易に算出できる。さらに、本発明は、正、負の2つのピーク値の絶対値の平均値を取ることで、凹部欠陥の深さあるいは凸部欠陥の高さを精度よく検出することができる。その結果、本発明は、面板表面の凹凸欠陥の大きさを精度よく検出することもでき、欠陥の分類が容易な表面欠陥検査装置を実現することができる。
【0010】
上記した特徴を有する、あるいは、以下の実施例により明らかにされる本発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば次の通りである。
(1)ディスクの表面に光ビームを照射する照射光学系と、前記ディスクに照射された光ビームによる前記ディスクからの正反射光を、濃淡差を有する第一のフィルタに通過させて受光する第一の受光光学系と、前記第一の受光光学系により得られた光量に基づき前記ディスク上の欠陥を検出する信号処理手段と、を備えることを特徴とする欠陥検査装置である。
(2)(1)の欠陥検査装置であって、さらに、前記ディスクに照射された光ビームによる前記ディスクからの正反射光を第二のフィルタに通過させて受光する第二の受光光学系を備え、前記第一のフィルタは前記正反射光に対してXZ面において略直交する方向に濃淡差を有するフィルタであり、前記第二のフィルタは前記正反射光に対してYZ面において略直交する方向に濃淡差を有するフィルタであることを特徴とする欠陥検査装置である。
(3)(1)の欠陥検査装置であって、さらに、前記ディスクに照射された光ビームによる前記ディスクからの正反射光を受光する第三の受光光学系を備え、前記信号処理手段では、前記第一の受光光学系により得られた光量から前記第三の受光光学系により得られた光量を減算処理して前記ディスク上の欠陥を検出することを特徴とする欠陥検査装置である。
(4)ディスク表面を検査して得られた欠陥のデータから欠陥種に応じた処理方法を行うことによってディスク表面の特徴のある欠陥を検出し、GUIによってユーザが設定した欠陥の凹凸量又は幅をしきい値としてその値以上の欠陥を出力することを特徴とする欠陥データ解析方法である。
(5)ディスク表面を検査して得られた欠陥のデータから欠陥種に応じた処理方法を行うことによってディスク表面の特徴のある欠陥を検出し、GUIによってユーザが設定した欠陥の凹凸量又は幅をしきい値としてその値以上の欠陥を出力することを特徴とする欠陥データ解析方法を搭載した欠陥検査装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、少数の検出器および回路により、面板表面の凹部欠陥あるいは凸部欠陥の大きさ、高さを精度よく検出することができる表面欠陥検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の欠陥検出光学系および欠陥検出画像処理を搭載した表面欠陥検査装置を示すものであり、ステージ500上に搭載されたディスク1の面板表面に光ビームを照射して面板表面を走査する照射光学系200と、前記ディスク1に照射された光ビームによる面板からの正反射光の光量を変化させる濃淡差を有する濃淡フィルタ111、114を備え、前記濃淡フィルタを透過した正反射光を受光する受光光学系300と、前記フィルタを通過して得られた正反射光の光量変化より面板表面上の欠陥を識別する処理手段400とを有して構成される。以下、各構成の詳細についてその作用と共に説明する。
【0013】
照明光学系200において、レーザ光源101より出力されたレーザビームはビームスプリッタ104によって分割され、その一部はフォトダイオード103によって受光され、その強度変動が読み取られる。読み取られた強度変動を参照信号にして帰還制御回路102によりレーザ出力が一定値となるようにレーザパワーの制御を行う。
ビームスプリッタ104を透過した光ビームは集光レンズ105によって集光され、面板上にスポットSとして投光される。本手法ではスポットSの大きさによって検出分解能が決まるため、面板表面で対象とする欠陥サイズに応じたスポットサイズとなるように集光レンズ105は設定される。また集光したときの焦点が面板表面にくるように焦点位置の調整を行う。なお、ここでは主走査方向をθ方向とし、副走査方向をr方向として、ディスク1が光ビームによりr、θステージ500により螺旋走査されるものとする。
【0014】
受光光学系300はxz面高さ測定部、yz面高さ測定部、反射強度測定部から構成されている。ディスク1の検査点Sからの正反射光はビームスプリッタ108によりその一部が光軸に対して90°の方向に反射され反射強度測定部にいき、透過光はハーフミラー115により半分は光軸に対して90°の方向に反射されyz面高さ測定部にいき、透過光はxz面高さ測定部にいく。
【0015】
まず、xz面高さ測定部に関して説明を行う。ディスク1の検査点Sからの正反射光は濃淡差を持つフィルタ114を介して、集光レンズ113により集光され、受光素子112によって受光される。濃淡差フィルタ114は正反射光に対してxz面において直交する方向に濃淡差を持つフィルタである。フィルタの性能として透過率0%の領域から透過率100%の領域まで濃淡差を持ち、面板表面の欠陥が存在しない箇所を照射した光ビームの正反射光がフィルタの中心である透過率50%の位置を通過するように設定する。凹部欠陥あるいは凸部欠陥が面板上にあると、凹部欠陥あるいは凸部欠陥の側面傾斜部からの正反射がフィルタを通過する領域が透過率の高い領域あるいは低い領域いずれか一方にシフトする。これによりフィルタ通過後、集光レンズ113によって集光され、受光素子112によって受光される光量が変化するため、この変化から欠陥を検出するものである。
【0016】
次に、yz面高さ測定部に関して説明を行う。ハーフミラー115により光軸に対して90°の方向に反射された正反射光は、濃淡差を持つフィルタ111を介して、集光レンズ110により集光され、受光素子109によって受光される。濃淡差フィルタ111は正反射光に対してyz面において直交する方向に濃淡差を持つフィルタである。フィルタの性能として前記したフィルタ114と同様の性能を持ち、透過率0%の領域から透過率100%の領域まで濃淡差を持ち、面板表面の欠陥が存在しない箇所を照射した光ビームの正反射光がフィルタの中心である透過率50%の位置を通過するように設定する。凹部欠陥あるいは凸部欠陥が面板上にあると、凹部欠陥あるいは凸部欠陥の側面傾斜部からの正反射がフィルタを通過する領域が透過率の高い領域あるいは低い領域いずれか一方にシフトする。これによりフィルタ通過後、集光レンズ110によって集光され、受光素子109によって受光される光量が変化するため、この変化から欠陥を検出するものである。
【0017】
次に、反射強度測定部に関して説明を行う。ビームスプリッタ108によりその一部が光軸に対して90°の方向に反射された正反射光は、集光レンズ107により集光され、受光素子106によって受光される。ここで反射強度測定が必要な理由について述べる。xz高さ測定部およびyz高さ測定部では表面凹凸情報を光の強度変化として読み取っている。ここで面板表面において反射率の異なる箇所が存在する場合、その箇所を凹凸欠陥として検出してしまう恐れがある。そこでxz高さ測定部およびyz高さ測定部によって測定された強度値に対して、正反射率変化の測定に用いた光量を除算することによって面板表面の反射率変化に影響されず正確な凹凸欠陥の検出が可能となる。
【0018】
xz面高さ測定部から出力されたデータ、yz面高さ測定部から出力されたデータおよび反射強度測定部から出力されたデータは演算処理および欠陥判定ユニットである処理手段400により処理される。
【0019】
図2は濃淡フィルタ114の透過特性を示す。図2(a)は一般的な可変式NDフィルタであり、幅T方向に対して光学濃度が線形な特性を示すフィルタである。このフィルタを用いた場合透過率(T)と光学濃度(D)の関係は次式のように透過率(T)の逆数の10を底とする対数の関係にあるため、
図2(a)のように幅T方向に対して透過率は対数変化する。このことから表面凹凸によって得られる強度変化は線形ではなく対数変化するため、得られる強度に対してもこれを考慮した処理が必要となる。一方、図2(b)は幅Tに対して透過率が線形となるように光学濃度を設計したNDフィルタである。この場合、表面凹凸によって得られる強度変化は線形となる。NDフィルタの製作方法としてはガラス基板上にコーティングする金属膜の厚さを設計した透過率になるよう段階的に変化させる。あるいはガラス基板の厚さを設計した透過率になるよう段階的に変化させる方法などが挙げられる。
【0020】
図3は、凹凸欠陥による正反射光の位置ずれが濃淡フィルタ上でおきる原理を示す図であり、図3(a)は凸欠陥の立ち上がりの側面傾斜部が走査されているときを示す。欠陥の傾斜角εのとき面板表面からL離れている濃淡フィルタ114上でレーザは幾何学的に透過率の低い領域にLε移動する。このとき濃淡フィルタの性能としてLε移動したときの光量変化が受光器によって読み取ることが可能なものであれば表面の傾斜を測定することが可能となる。一方、図3(b)は凸欠陥の立下りの側面傾斜部が走査されているときを示す。図3(a)のときと異なり、濃淡フィルタ114上でレーザは幾何学的に透過率の高い領域にLε移動する。このとき濃淡フィルタの性能としてLε移動したときの光量変化が受光器によって読み取ることが可能なものであれば表面の傾斜を測定することが可能となる。
【0021】
図4は、受光素子によって得られる検出波形の違いから凹凸欠陥の判定を行う手法の説明図であり、図4(a)は凸欠陥に対する欠陥検出信号を示し、図4(b)は凹欠陥に対する欠陥検出信号を示す。凹部欠陥あるいは凸部欠陥には、側面傾斜部が一対存在していて、これら側面傾斜部は、垂直線を基準として傾きが実質的に対称の関係にあるので、欠陥が走査されたときには左右の方向において受光のピークは、逆方向にシフトして中央に戻る2回のシフトを生じる。このとき、このシフトに応じて欠陥信号として正と負の2つのピークが発生する。しかも、凹部欠陥と凸部欠陥とは、側面傾斜部が逆方向の傾斜になっているのでシフトする方向の順序が左右逆転する。その結果、欠陥信号の2つのピークは、凹部欠陥と凸部欠陥とでは、それぞれ正側が先になるか、負が先になるかのいずれか一方であって互いに相違がある。以上のことから欠陥の凹凸判定が可能となる。
【0022】
図5はxz面高さ測定部における濃淡フィルタ114とyz面高さ測定部における濃淡フィルタ111との立体的な配置関係を示す図である。図5(a)はxz面高さ測定部の濃淡フィルタの配置を示しており、正反射光に対してxz面において直交する方向に濃淡差を持つよう配置されている。一方、図5(b)はyz面高さ測定部の濃淡フィルタの配置を示しており、正反射光に対してyz面において直交する方向に濃淡差を持つよう配置されている。
【0023】
図6は演算処理および欠陥判定ユニットである処理手段400の内部処理フローとこれに対応する信号強度を示す図である。受光素子112および受光素子109より出力されるxz面高さ測定データおよびyz面高さ測定データ(401)には表面反射率変化の影響が含まれており、受光素子106によって出力される反射強度測定データにより除算することにより表面の反射率変化の影響を排除する(402)。次にハイパスフィルタによって欠陥にはなり得ないディスクの大きなうねりを取り除く(403)。うねりを除去したアナログデータに対してAD変換を行い、デジタルデータに変換し(404)、画像処理ユニット(405)によって画像処理され欠陥検出を行う(406)。
【0024】
以下、この画像処理ユニット405の内部処理について、図7から図18を用いて説明する。図7は、画像処理の対象とする欠陥の分布形状および画像上での特徴をあらわす図である。図7(a)は線状分布欠陥を示し、この欠陥を図1に示す光学系により検出した場合、画像上の特徴として線状に分布するという特徴を持つ。一方、図7(b)は円弧状分布欠陥を示し、この欠陥を図1に示す光学系により検出した場合、画像上の特徴として円弧状に分布するという特徴を持つ。これらの画像上の特徴を抽出する処理により欠陥検出を行う。
【0025】
図8は取得データの座標変換を示す図である。図8(a)に示すように等速回転で螺旋状に面板表面を等サンプリングピッチで検査した場合、取得データは外周にいくに従い、1データあたりの面板上の距離が長くなる。このため取得データ上の欠陥形状は本来の形状とは異なる形状になると考えられる。そこで直交座標から極座標に次式により座標変換をほどこすことによって本来の欠陥形状を復元する必要がある。
ここでXは面板のr方向座標、Yは面板のθ方向座標である。u、vは極座標変換後の直交座標であり、R2は極座標変換後の最外周半径、R1は最内周半径である。ここで求まったx、yが小数のとき線形補間等を施し、対応する画素を作成する必要がある。
【0026】
図9は線状分布の特徴を持つ欠陥に対する画像処理フローである。画像データが入力され(4051)、そのデータに対して直線強調オペレータを作用させることによって直線の強調を行う(4052)。ここで、直線強調オペレータの例を図10に示す。オペレータサイズは5×5を基準とし、中心部の画素に対して作用させるものである。■の部分の係数は2であり、□の部分の係数は−1でとなっており、周囲と濃淡差の異なる直線成分の抽出を目的としたオペレータとなっている。また直線の方向性は一定していないので、各種方向に対して検出オペレータを作用させ、その最大の評価値
をとることにする。ここでそれぞれ絶対値をとっているのは直線として周囲濃度値より値が大きい直線と小さい直線の両方が存在するからである。この処理後取得データに対して強調された直線成分が残るよう2値化処理を行う。
【0027】
次に直線のように連結している成分を強調し、ノイズのように孤立している成分を除去するようなオペレータを作用させる(4053)。ここで、このオペレータの例を図11に示す。■を注目画素fijとし、W1〜W2は重みであり、例えば、W1=3、W2=2、W3=1といった具合になっている。即ち、中心部程、大きな重みが付与される。注目画素は‘0’か‘1’の何れかであるが、‘0’のときは本オペレータによる処理を行わず、‘1’のときは本オペレータによる処理を行い、強調された評価値を求めるものである。注目画素が‘1’のとき中心部に最も近いリング(重みW1部分)上での‘1’の画素数をn1、重みb部分での‘1’の画素数をn2、重みW3部分での‘1’の画素数をn3とすれば、注目画素での評価値gijは以下のように求められる。
【0028】
本処理によって直線のように連結した部分は評価値が大きくなり、ノイズのように孤立した部分は評価値が大きくならず、結果に対して2値化処理を行えば、孤立点やノイズ成分が低減された画像が得られる。
【0029】
次にHough変換を用いて、直線成分の抽出を行う(4054)。図12(a)において、例えば、3個の点P1、P2、P3が直線上にあるとすれば、その直線方程式は次式となる。
但し、ρは画像の左上隅から直線に下ろした垂線の長さであり、θはx軸と垂線とがなす角である。このとき、1つの直線は、図12(b)で示すθ−ρパラメータ空間上の1点と等価である。対象2値画像で値が‘1’である各点(x、y)において、式(2)を満足する(θ、ρ)の組を計算し、それをプロットしたのが(b)のlP1〜lP2である。はただ1点で交わっており、その点の(θ、ρ)が(a)のP1〜P3が構成する直線を表している。言い換えれば、θ−ρパラメータ空間上で、最も交差回数の多い点(頻度最大の点θm、ρm)を選べば、(θm、ρm)が決定する直線が、2値画像上で最も支配的な直線成分であることになる。
【0030】
次にHough変換の対象2値画像から、直線要素のみを抽出し、直線の長さを測長する(4055)。まず、θ−ρパラメータ空間より求めた(θm、ρm)の値から、xy平面上に直線Is・Ieを引く。次に拡大処理により、直線を太らせて直線欠陥領域Sを発生させる。この領域内に存在する点が直線の構成成分であると判断する。直線を太らせた理由としては実際の線は1本の直線上には乗っておらずある程度幅をもった直線であるからである。この処理を行った後測長処理について説明すれば、各線分の長さl1〜l4と各線分間のギャップg1〜g2を計測した上で直線の長さが決定される。つまりギャップが一定以上(しきい値gt)ある場合は、連続した直線とは見なさないものである。また線分の長さが一定以下(しきい値lt)の場合は、直線とはみなさないものである。このことは、実際の画像上でノイズ、あるいは非常に短い直線を除くのに重要である。図13ではg1<gt、g2>gtとなっており、直線の長さLは以下のように求められる。
L=l1+g1+l2
次に線分長さ判定よりL>lt、l2<ltとなっており、直線Lが最終的に直線であると判定される。
【0031】
また、致命欠陥判定(4055)には線状欠陥の高さも評価しなければならない。なぜならばディスク表面の凹凸はヘッドのクラッシュを招くため、高さ判定により欠陥の致命性を評価する必要がある。画像データから高さ判定を行う手法を図14に示す。例えば図1に示す光学系を用いて面板表面を検査した場合、高さ情報はコントラストとして画像上に現れるためこの情報を用いて高さ判定を行う。具体的に説明すると図14(a)に示すように、線分の始点Psから終点Peまでの各点に対してはその点を含むようにして線分と直交する探査領域Q1〜Q2が設定され、探査領域における点Q1から点Q2までの濃度値から線分のコントラストが求められる。これを図14(b)により説明すれば、探査領域Q1〜Q2をm1、m2、m3の3領域に分け、線分はm2の領域に存在すると考える。コントラストは周りの部分との比較なので、その部分での平均的な濃度は線分の外側であるm1とm3の部分から算出されるようになっている。この平均的な濃度値とm2の領域の濃度値との差分を求め、それを領域m2で積分したものが線分における点Pnでのコントラストとして求められる。
Cnの値を線分の始点PsからPeまで計算、累積加算してこれを線分長さLで除算すれば、平均的なコントラストCavが求められる。
致命欠陥判定としては求まったコントラスト値と実プロファイルによる高さ計測値との相関を図15のようにとることによって検出された線状欠陥のコントラストから致命欠陥判定が可能である。
【0032】
図16は円弧状分布の特徴を持つ欠陥に対する画像処理フローである。画像データが入力され(4051)、そのデータに対して図17のように平滑化処理(例えばガウシアンフィルタ、平均化フィルタ等)を行いノイズ成分の除去を行う(4057)。さらに円弧状欠陥に対しては凹欠陥、凸欠陥いずれに対しても明レベルでのピークと暗レベルでのピークを持つので、平滑化されたデータに対して図17のように明レベルでのしきい値と暗レベルでのしきい値を設定し、2値化を行うと画像上に円弧状の分布が形成される。
【0033】
次にHough変換を用いて、円弧成分の抽出を行う(4058)。図18(a)において、例えば、3個の点P1、P2、P3が半径rの同一円上にあるとすれば、その円方程式は次式となる。
但し、a、bは円の中心座標となる。中心座標(a、b)の求め方は点P1、P2、P3を中心とする半径rの円を描き、その円の交差回数の最も多い点が中心座標(a、b)となる。この処理を画像全体の‘1’画素に対して行えば、半径rとなる円の中心座標候補が挙げられる。
【0034】
欠陥となりうる円弧状欠陥の半径は任意の値であり、例えば、半径r1〜r2までの欠陥が致命欠陥の半径の対象範囲とする。この場合交差回数の多い点を選ぶ投票は空間(am、bm、rm)で行われ、選出された点により円弧状欠陥の半径および中心座標が求まる。
【0035】
次にHough変換の対象2値画像から、円弧要素のみを抽出し、円弧の長さを測長する(4059)。まず、a、b、rパラメータ空間より求めた(am、bm、rm)の値から、xy平面上に円を描く。次に拡大処理により、線を太らせて円弧欠陥領域Sを発生させる。この領域内に存在する点が円弧の構成成分であると判断する。線を太らせた理由としては実際の円弧欠陥は1本の線上には乗っておらずある程度幅をもった円弧であるからである。この処理を行った後、測長処理について説明すれば、各線分の長さrθl1〜rθl4と各線分間のギャップrθg1〜rθg4を計測した上で円弧の長さが決定される。つまりギャップが一定(しきい値rθgt)以上ある場合は、連続した円弧とは見なさないものである。また線分の長さが一定(しきい値rθlt)以下の場合は、直線とはみなさないものである。このことは、実際の画像上でノイズ、あるいは非常に短い直線を除くのに重要である。図19ではrθg1<rθgt、rθg2>rθgt、rθg3>rθgt、rθg4>rθgtとなっており、円弧の長さrθLは、rθL= rθl1+rθg1+rθl2のように求められる。
次に線分長さ判定よりrθL>rθlt、rθl4>rθlt、rθl5>rθlt、rθl3<rθlt、となっており、円弧rθL 、rθl4、rθl5が円弧であると判定される。
【0036】
さらに求まった円弧からそれが円弧状の欠陥であるか判定を行う。この判定は例えば、図19ではrθL 、rθl4 は同一中心座標であるため1つの円弧と判定され、rθl5は中心座標が異なるため異なる円弧と判定される。ここで円周2πに占めるθL、θl4の割合からそれが円弧状欠陥であるか判定を行う。円周に占める割合の低いrθl5は円弧状欠陥とは見なさない判定をくだす。
【0037】
また、致命欠陥判定(4059)には円弧状欠陥の高さも評価しなければならない。なぜならばディスク表面の凹凸はヘッドのクラッシュを招くため、高さ判定により欠陥の致命性を評価する必要がある。画像データから高さ判定を行う手法を図20に示す。例えば図1に示す光学系を用いて面板表面を検査した場合、高さ情報はコントラストとして画像上に現れるためこの情報を用いて高さ判定を行う。具体的に説明すると図20(a)に示すように、円弧の0°から180°までの各点に対してはその点を含むようにしてと直交する探査領域Q1〜Q2が設定され、探査領域における点Q1から点Q2までの濃度値から線分のコントラストが求められる。これを図20(b)により説明すれば、探査領域Q1〜Q2をm1、m2、m3の3領域に分け、線分はm2の領域に存在すると考える。コントラストは周りの部分との比較なので、その部分での平均的な濃度は線分の外側であるm1とm3の部分から算出されるようになっている。この平均的な濃度値とm2の領域の濃度値との差分を求め、それを領域m2で積分したものが線分における点Pnでのコントラストとして求められる。
Cnの値を円弧の0°から180°まで計算、累積加算してこれを加算回数Nで除算すれば、平均的なコントラストCavが求められる。
致命欠陥判定としては求まったコントラスト値と実プロファイルによる高さ計測値との相関を図21のようにとることによって検出された線状欠陥のコントラストから致命欠陥判定が可能である。
【0038】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る表面欠陥装置の第一の実施形態を示す図である。
【図2】本発明に用いられる可変の濃淡差をもつフィルタの性能を示した図である。
【図3】凹凸欠陥により濃淡フィルタ上の正反射光の位置ずれがおきる原理を示した図である。
【図4】受光器によって得られる検出波形の違いから凹凸判定が可能であることを示した図である。
【図5】xz面高さ測定部における濃淡フィルタとyz面高さ測定部における濃淡フィルタとの立体的な配置関係を示す図である。
【図6】演算処理および欠陥判定ユニットの内部処理フローとこれに対応する信号強度を示す図である。
【図7】本発明の欠陥検出処理が対象とする欠陥とその欠陥の画像上の特徴を示した図である。
【図8】データ処理のための取得データに対する座標変換を示した図である。
【図9】線状欠陥に対する処理フローを示した図である。
【図10】線強調のためのオペレータの例を示した図である。
【図11】弧立点除去のためのオペレータの例を示した図である。
【図12】Hough変換による線検出の原理を説明する図である。
【図13】Hough変換によって検出した直線に対する測長結果を示した図である。
【図14】線状欠陥のコントラストの算出方法を示した図である。
【図15】欠陥コントラストと実プロファイルによる高さとの相関を示した図である。
【図16】円弧状欠陥に対する処理フローを示した図である。
【図17】平滑化処理および2値化処理を示した図である。
【図18】Hough変換による円弧検出の原理を説明する図である。
【図19】Hough変換によって検出した円弧に対する測長結果を示した図である。
【図20】円弧状欠陥のコントラストの算出方法を示した図である。
【図21】欠陥コントラストと実プロファイルによる高さとの相関を示した図である。
【符号の説明】
【0040】
1 ディスク、101 レーザ光源、102 帰還回路、103 受光素子、104 ビームスプリッタ、105 集光レンズ、106 受光素子、107 集光レンズ、108 ビームスプリッタ、109 受光素子、110 集光レンズ、111 濃淡フィルタ、112 受光素子、113 集光レンズ、114 濃淡フィルタ、115 ハーフミラー、200 照射光学系、300 受光光学系、400 処理手段、500 r-θステージ
【技術分野】
【0001】
この発明は、表面欠陥検査装置に関し、詳しくは、磁気ディスクあるいはそのアルミ基板(アルミサブストレート)やガラス基板(ガラスサブストレート)等の面板の表面欠陥検査装置において、面板表面の凹部欠陥あるいは凸部欠陥の大きさを精度よく検出することができ、さらには面板表面の凹凸欠陥の大きさと深さあるいは大きさと高さの検出が精度よく検出できるような表面欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
凹部欠陥と凸部欠陥とを精度よく検出する技術として、特許文献1では、受光器をAPD多素子からなる配列センサとし、この手前に千鳥状の縞パターンを素子対応に設けて隣接受光素子の受光量の差から凹部欠陥と凸部欠陥とを検出することが開示されている。また、特許文献1では、他の実施形態として千鳥の縞パターンを用いない技術についても開示されている。一方、特許文献2では、配列されたn個の受光素子を有し、主走査方向に対して直角な方向に沿った結像が受光素子の配列方向となる受光系を設けることで凹部欠陥あるいは凸部欠陥を検出することが提案されている。そのような凹部欠陥あるいは凸部欠陥は、それぞれのレンズ効果によりn個の受光素子の配列方向のそれぞれ受光素子の検出信号において、上限ピークと下限ピークとを発生させる。
【0003】
【特許文献1】特開2001−174415号公報
【特許文献2】特開2003−35678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の先行技術では、凹部欠陥と凸部欠陥とで異なる波形の検出信号を得るために、APD多素子からなる配列センサを2列並列して配置することが必要である。そして、2列のうちの左右どちらの受光素子が先に受光して検出信号を発生するかにより凹部欠陥と凸部欠陥とを区分している。高い精度で各種の欠陥を検出するために、受光器の素子数は十数個から数十個配列される。そのため、前記の先行技術では、幅方向に隣接素子同士からの信号を受ける回路が多数必要となる欠点がある。また特許文献2の先行技術ではレンズ効果により凹凸欠陥の判定をしており、欠陥の正確な大きさ、高さに関しては精度が良くないといった欠点がある。
【0005】
本発明は、前記のような従来技術の問題点を解決するものであって、少数の検出器および回路により、面板表面の凹部欠陥あるいは凸部欠陥の大きさ、高さを精度よく検出することができる表面欠陥検査装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の欠陥検出光学系および欠陥検出画像処理を搭載した表面欠陥検査装置は、ステージ上に搭載されたディスクの面板表面に光ビームを照射して面板表面を走査する照射光学系と、前記ディスクに照射された光ビームによる面板からの正反射光の光量を変化させる濃淡差を有する濃淡フィルタを備え、前記濃淡フィルタを透過した正反射光を受光する受光光学系と、前記フィルタを通過して得られた正反射光の光量変化より面板表面上の欠陥を識別する処理手段とを有して構成される。さらに、本発明に係る表面欠陥検査装置によれば、面板表面を検査して得られた欠陥のデータから欠陥種に応じた処理方法を行うことによって面板表面の特徴のある欠陥例えば、筋状欠陥や円弧状欠陥を検出し、そのサイズや高さを精度よく測定することが可能となる。
【0007】
本発明は、上記した濃淡差を有するフィルタを受光素子の前に配置することによって、凹部欠陥と凸部欠陥との判定を行う。フィルタの性能として透過率0%の領域から透過率100%の領域まで濃淡差を持ち、面板表面の欠陥が存在しない箇所を照射した光ビームの正反射光がフィルタの中心である透過率50%の位置を通過するように設定する。凹部欠陥あるいは凸部欠陥があると、凹部欠陥あるいは凸部欠陥の側面傾斜部からの正反射がフィルタを通過する領域が透過率の高い領域あるいは低い領域いずれか一方にシフトする。これによりフィルタ通過後、受光素子によって受光される光量が変化するため、この変化から欠陥を検出するものである。
【0008】
前記のように面板表面凹凸欠陥を濃淡差をもつフィルタを介して受光器によって受光される光量変化から読み取る場合、面板表面において反射率の異なる箇所(シミ等)も凹凸欠陥として検出してしまう恐れがある。そこで面板表面からの正反射光を濃淡フィルタを介さず、直接受光素子によって受光する系を前記の受光素子とは別に設けることによって、表面の反射率変化を測定する。濃淡差をもつフィルタを介して受光素子によって受光した光量に対して、正反射率変化の測定に用いた光量を除算することによって面板表面の反射率変化に影響されず正確な凹凸欠陥の検出が可能となる。
【0009】
ここで、表面凹凸欠陥の傾斜により濃淡差フィルタの透過率50%の領域からずれることにより発生する欠陥検出信号は、通常、凹部欠陥および凸部欠陥ともにそれぞれ正と負に2つのピークを発生する。このことから、これらのピーク間の距離により欠陥の大きさを検出することができる。なお、凹部欠陥あるいは凸部欠陥が2つのピークを発生する理由は、いずれの欠陥もR、θの走査方向において側面傾斜部が通常前後一対あるからである。この欠陥検出信号の正のピークと負のピークの発生した走査位置(座標位置)を検出すれば、これらの間の距離が得られ、これと走査位置との関係から欠陥の大きさに応じた幅や面積が容易に算出できる。さらに、本発明は、検出された多数の欠陥について欠陥検出座標位置とピーク間の距離との関係から検出した欠陥の連続性を容易に判定できる。この判定をすれば、凹部欠陥や凸部欠陥のうち多少変形した状態の欠陥についても幅や面積を容易に算出できる。さらに、本発明は、正、負の2つのピーク値の絶対値の平均値を取ることで、凹部欠陥の深さあるいは凸部欠陥の高さを精度よく検出することができる。その結果、本発明は、面板表面の凹凸欠陥の大きさを精度よく検出することもでき、欠陥の分類が容易な表面欠陥検査装置を実現することができる。
【0010】
上記した特徴を有する、あるいは、以下の実施例により明らかにされる本発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば次の通りである。
(1)ディスクの表面に光ビームを照射する照射光学系と、前記ディスクに照射された光ビームによる前記ディスクからの正反射光を、濃淡差を有する第一のフィルタに通過させて受光する第一の受光光学系と、前記第一の受光光学系により得られた光量に基づき前記ディスク上の欠陥を検出する信号処理手段と、を備えることを特徴とする欠陥検査装置である。
(2)(1)の欠陥検査装置であって、さらに、前記ディスクに照射された光ビームによる前記ディスクからの正反射光を第二のフィルタに通過させて受光する第二の受光光学系を備え、前記第一のフィルタは前記正反射光に対してXZ面において略直交する方向に濃淡差を有するフィルタであり、前記第二のフィルタは前記正反射光に対してYZ面において略直交する方向に濃淡差を有するフィルタであることを特徴とする欠陥検査装置である。
(3)(1)の欠陥検査装置であって、さらに、前記ディスクに照射された光ビームによる前記ディスクからの正反射光を受光する第三の受光光学系を備え、前記信号処理手段では、前記第一の受光光学系により得られた光量から前記第三の受光光学系により得られた光量を減算処理して前記ディスク上の欠陥を検出することを特徴とする欠陥検査装置である。
(4)ディスク表面を検査して得られた欠陥のデータから欠陥種に応じた処理方法を行うことによってディスク表面の特徴のある欠陥を検出し、GUIによってユーザが設定した欠陥の凹凸量又は幅をしきい値としてその値以上の欠陥を出力することを特徴とする欠陥データ解析方法である。
(5)ディスク表面を検査して得られた欠陥のデータから欠陥種に応じた処理方法を行うことによってディスク表面の特徴のある欠陥を検出し、GUIによってユーザが設定した欠陥の凹凸量又は幅をしきい値としてその値以上の欠陥を出力することを特徴とする欠陥データ解析方法を搭載した欠陥検査装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、少数の検出器および回路により、面板表面の凹部欠陥あるいは凸部欠陥の大きさ、高さを精度よく検出することができる表面欠陥検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の欠陥検出光学系および欠陥検出画像処理を搭載した表面欠陥検査装置を示すものであり、ステージ500上に搭載されたディスク1の面板表面に光ビームを照射して面板表面を走査する照射光学系200と、前記ディスク1に照射された光ビームによる面板からの正反射光の光量を変化させる濃淡差を有する濃淡フィルタ111、114を備え、前記濃淡フィルタを透過した正反射光を受光する受光光学系300と、前記フィルタを通過して得られた正反射光の光量変化より面板表面上の欠陥を識別する処理手段400とを有して構成される。以下、各構成の詳細についてその作用と共に説明する。
【0013】
照明光学系200において、レーザ光源101より出力されたレーザビームはビームスプリッタ104によって分割され、その一部はフォトダイオード103によって受光され、その強度変動が読み取られる。読み取られた強度変動を参照信号にして帰還制御回路102によりレーザ出力が一定値となるようにレーザパワーの制御を行う。
ビームスプリッタ104を透過した光ビームは集光レンズ105によって集光され、面板上にスポットSとして投光される。本手法ではスポットSの大きさによって検出分解能が決まるため、面板表面で対象とする欠陥サイズに応じたスポットサイズとなるように集光レンズ105は設定される。また集光したときの焦点が面板表面にくるように焦点位置の調整を行う。なお、ここでは主走査方向をθ方向とし、副走査方向をr方向として、ディスク1が光ビームによりr、θステージ500により螺旋走査されるものとする。
【0014】
受光光学系300はxz面高さ測定部、yz面高さ測定部、反射強度測定部から構成されている。ディスク1の検査点Sからの正反射光はビームスプリッタ108によりその一部が光軸に対して90°の方向に反射され反射強度測定部にいき、透過光はハーフミラー115により半分は光軸に対して90°の方向に反射されyz面高さ測定部にいき、透過光はxz面高さ測定部にいく。
【0015】
まず、xz面高さ測定部に関して説明を行う。ディスク1の検査点Sからの正反射光は濃淡差を持つフィルタ114を介して、集光レンズ113により集光され、受光素子112によって受光される。濃淡差フィルタ114は正反射光に対してxz面において直交する方向に濃淡差を持つフィルタである。フィルタの性能として透過率0%の領域から透過率100%の領域まで濃淡差を持ち、面板表面の欠陥が存在しない箇所を照射した光ビームの正反射光がフィルタの中心である透過率50%の位置を通過するように設定する。凹部欠陥あるいは凸部欠陥が面板上にあると、凹部欠陥あるいは凸部欠陥の側面傾斜部からの正反射がフィルタを通過する領域が透過率の高い領域あるいは低い領域いずれか一方にシフトする。これによりフィルタ通過後、集光レンズ113によって集光され、受光素子112によって受光される光量が変化するため、この変化から欠陥を検出するものである。
【0016】
次に、yz面高さ測定部に関して説明を行う。ハーフミラー115により光軸に対して90°の方向に反射された正反射光は、濃淡差を持つフィルタ111を介して、集光レンズ110により集光され、受光素子109によって受光される。濃淡差フィルタ111は正反射光に対してyz面において直交する方向に濃淡差を持つフィルタである。フィルタの性能として前記したフィルタ114と同様の性能を持ち、透過率0%の領域から透過率100%の領域まで濃淡差を持ち、面板表面の欠陥が存在しない箇所を照射した光ビームの正反射光がフィルタの中心である透過率50%の位置を通過するように設定する。凹部欠陥あるいは凸部欠陥が面板上にあると、凹部欠陥あるいは凸部欠陥の側面傾斜部からの正反射がフィルタを通過する領域が透過率の高い領域あるいは低い領域いずれか一方にシフトする。これによりフィルタ通過後、集光レンズ110によって集光され、受光素子109によって受光される光量が変化するため、この変化から欠陥を検出するものである。
【0017】
次に、反射強度測定部に関して説明を行う。ビームスプリッタ108によりその一部が光軸に対して90°の方向に反射された正反射光は、集光レンズ107により集光され、受光素子106によって受光される。ここで反射強度測定が必要な理由について述べる。xz高さ測定部およびyz高さ測定部では表面凹凸情報を光の強度変化として読み取っている。ここで面板表面において反射率の異なる箇所が存在する場合、その箇所を凹凸欠陥として検出してしまう恐れがある。そこでxz高さ測定部およびyz高さ測定部によって測定された強度値に対して、正反射率変化の測定に用いた光量を除算することによって面板表面の反射率変化に影響されず正確な凹凸欠陥の検出が可能となる。
【0018】
xz面高さ測定部から出力されたデータ、yz面高さ測定部から出力されたデータおよび反射強度測定部から出力されたデータは演算処理および欠陥判定ユニットである処理手段400により処理される。
【0019】
図2は濃淡フィルタ114の透過特性を示す。図2(a)は一般的な可変式NDフィルタであり、幅T方向に対して光学濃度が線形な特性を示すフィルタである。このフィルタを用いた場合透過率(T)と光学濃度(D)の関係は次式のように透過率(T)の逆数の10を底とする対数の関係にあるため、
図2(a)のように幅T方向に対して透過率は対数変化する。このことから表面凹凸によって得られる強度変化は線形ではなく対数変化するため、得られる強度に対してもこれを考慮した処理が必要となる。一方、図2(b)は幅Tに対して透過率が線形となるように光学濃度を設計したNDフィルタである。この場合、表面凹凸によって得られる強度変化は線形となる。NDフィルタの製作方法としてはガラス基板上にコーティングする金属膜の厚さを設計した透過率になるよう段階的に変化させる。あるいはガラス基板の厚さを設計した透過率になるよう段階的に変化させる方法などが挙げられる。
【0020】
図3は、凹凸欠陥による正反射光の位置ずれが濃淡フィルタ上でおきる原理を示す図であり、図3(a)は凸欠陥の立ち上がりの側面傾斜部が走査されているときを示す。欠陥の傾斜角εのとき面板表面からL離れている濃淡フィルタ114上でレーザは幾何学的に透過率の低い領域にLε移動する。このとき濃淡フィルタの性能としてLε移動したときの光量変化が受光器によって読み取ることが可能なものであれば表面の傾斜を測定することが可能となる。一方、図3(b)は凸欠陥の立下りの側面傾斜部が走査されているときを示す。図3(a)のときと異なり、濃淡フィルタ114上でレーザは幾何学的に透過率の高い領域にLε移動する。このとき濃淡フィルタの性能としてLε移動したときの光量変化が受光器によって読み取ることが可能なものであれば表面の傾斜を測定することが可能となる。
【0021】
図4は、受光素子によって得られる検出波形の違いから凹凸欠陥の判定を行う手法の説明図であり、図4(a)は凸欠陥に対する欠陥検出信号を示し、図4(b)は凹欠陥に対する欠陥検出信号を示す。凹部欠陥あるいは凸部欠陥には、側面傾斜部が一対存在していて、これら側面傾斜部は、垂直線を基準として傾きが実質的に対称の関係にあるので、欠陥が走査されたときには左右の方向において受光のピークは、逆方向にシフトして中央に戻る2回のシフトを生じる。このとき、このシフトに応じて欠陥信号として正と負の2つのピークが発生する。しかも、凹部欠陥と凸部欠陥とは、側面傾斜部が逆方向の傾斜になっているのでシフトする方向の順序が左右逆転する。その結果、欠陥信号の2つのピークは、凹部欠陥と凸部欠陥とでは、それぞれ正側が先になるか、負が先になるかのいずれか一方であって互いに相違がある。以上のことから欠陥の凹凸判定が可能となる。
【0022】
図5はxz面高さ測定部における濃淡フィルタ114とyz面高さ測定部における濃淡フィルタ111との立体的な配置関係を示す図である。図5(a)はxz面高さ測定部の濃淡フィルタの配置を示しており、正反射光に対してxz面において直交する方向に濃淡差を持つよう配置されている。一方、図5(b)はyz面高さ測定部の濃淡フィルタの配置を示しており、正反射光に対してyz面において直交する方向に濃淡差を持つよう配置されている。
【0023】
図6は演算処理および欠陥判定ユニットである処理手段400の内部処理フローとこれに対応する信号強度を示す図である。受光素子112および受光素子109より出力されるxz面高さ測定データおよびyz面高さ測定データ(401)には表面反射率変化の影響が含まれており、受光素子106によって出力される反射強度測定データにより除算することにより表面の反射率変化の影響を排除する(402)。次にハイパスフィルタによって欠陥にはなり得ないディスクの大きなうねりを取り除く(403)。うねりを除去したアナログデータに対してAD変換を行い、デジタルデータに変換し(404)、画像処理ユニット(405)によって画像処理され欠陥検出を行う(406)。
【0024】
以下、この画像処理ユニット405の内部処理について、図7から図18を用いて説明する。図7は、画像処理の対象とする欠陥の分布形状および画像上での特徴をあらわす図である。図7(a)は線状分布欠陥を示し、この欠陥を図1に示す光学系により検出した場合、画像上の特徴として線状に分布するという特徴を持つ。一方、図7(b)は円弧状分布欠陥を示し、この欠陥を図1に示す光学系により検出した場合、画像上の特徴として円弧状に分布するという特徴を持つ。これらの画像上の特徴を抽出する処理により欠陥検出を行う。
【0025】
図8は取得データの座標変換を示す図である。図8(a)に示すように等速回転で螺旋状に面板表面を等サンプリングピッチで検査した場合、取得データは外周にいくに従い、1データあたりの面板上の距離が長くなる。このため取得データ上の欠陥形状は本来の形状とは異なる形状になると考えられる。そこで直交座標から極座標に次式により座標変換をほどこすことによって本来の欠陥形状を復元する必要がある。
ここでXは面板のr方向座標、Yは面板のθ方向座標である。u、vは極座標変換後の直交座標であり、R2は極座標変換後の最外周半径、R1は最内周半径である。ここで求まったx、yが小数のとき線形補間等を施し、対応する画素を作成する必要がある。
【0026】
図9は線状分布の特徴を持つ欠陥に対する画像処理フローである。画像データが入力され(4051)、そのデータに対して直線強調オペレータを作用させることによって直線の強調を行う(4052)。ここで、直線強調オペレータの例を図10に示す。オペレータサイズは5×5を基準とし、中心部の画素に対して作用させるものである。■の部分の係数は2であり、□の部分の係数は−1でとなっており、周囲と濃淡差の異なる直線成分の抽出を目的としたオペレータとなっている。また直線の方向性は一定していないので、各種方向に対して検出オペレータを作用させ、その最大の評価値
をとることにする。ここでそれぞれ絶対値をとっているのは直線として周囲濃度値より値が大きい直線と小さい直線の両方が存在するからである。この処理後取得データに対して強調された直線成分が残るよう2値化処理を行う。
【0027】
次に直線のように連結している成分を強調し、ノイズのように孤立している成分を除去するようなオペレータを作用させる(4053)。ここで、このオペレータの例を図11に示す。■を注目画素fijとし、W1〜W2は重みであり、例えば、W1=3、W2=2、W3=1といった具合になっている。即ち、中心部程、大きな重みが付与される。注目画素は‘0’か‘1’の何れかであるが、‘0’のときは本オペレータによる処理を行わず、‘1’のときは本オペレータによる処理を行い、強調された評価値を求めるものである。注目画素が‘1’のとき中心部に最も近いリング(重みW1部分)上での‘1’の画素数をn1、重みb部分での‘1’の画素数をn2、重みW3部分での‘1’の画素数をn3とすれば、注目画素での評価値gijは以下のように求められる。
【0028】
本処理によって直線のように連結した部分は評価値が大きくなり、ノイズのように孤立した部分は評価値が大きくならず、結果に対して2値化処理を行えば、孤立点やノイズ成分が低減された画像が得られる。
【0029】
次にHough変換を用いて、直線成分の抽出を行う(4054)。図12(a)において、例えば、3個の点P1、P2、P3が直線上にあるとすれば、その直線方程式は次式となる。
但し、ρは画像の左上隅から直線に下ろした垂線の長さであり、θはx軸と垂線とがなす角である。このとき、1つの直線は、図12(b)で示すθ−ρパラメータ空間上の1点と等価である。対象2値画像で値が‘1’である各点(x、y)において、式(2)を満足する(θ、ρ)の組を計算し、それをプロットしたのが(b)のlP1〜lP2である。はただ1点で交わっており、その点の(θ、ρ)が(a)のP1〜P3が構成する直線を表している。言い換えれば、θ−ρパラメータ空間上で、最も交差回数の多い点(頻度最大の点θm、ρm)を選べば、(θm、ρm)が決定する直線が、2値画像上で最も支配的な直線成分であることになる。
【0030】
次にHough変換の対象2値画像から、直線要素のみを抽出し、直線の長さを測長する(4055)。まず、θ−ρパラメータ空間より求めた(θm、ρm)の値から、xy平面上に直線Is・Ieを引く。次に拡大処理により、直線を太らせて直線欠陥領域Sを発生させる。この領域内に存在する点が直線の構成成分であると判断する。直線を太らせた理由としては実際の線は1本の直線上には乗っておらずある程度幅をもった直線であるからである。この処理を行った後測長処理について説明すれば、各線分の長さl1〜l4と各線分間のギャップg1〜g2を計測した上で直線の長さが決定される。つまりギャップが一定以上(しきい値gt)ある場合は、連続した直線とは見なさないものである。また線分の長さが一定以下(しきい値lt)の場合は、直線とはみなさないものである。このことは、実際の画像上でノイズ、あるいは非常に短い直線を除くのに重要である。図13ではg1<gt、g2>gtとなっており、直線の長さLは以下のように求められる。
L=l1+g1+l2
次に線分長さ判定よりL>lt、l2<ltとなっており、直線Lが最終的に直線であると判定される。
【0031】
また、致命欠陥判定(4055)には線状欠陥の高さも評価しなければならない。なぜならばディスク表面の凹凸はヘッドのクラッシュを招くため、高さ判定により欠陥の致命性を評価する必要がある。画像データから高さ判定を行う手法を図14に示す。例えば図1に示す光学系を用いて面板表面を検査した場合、高さ情報はコントラストとして画像上に現れるためこの情報を用いて高さ判定を行う。具体的に説明すると図14(a)に示すように、線分の始点Psから終点Peまでの各点に対してはその点を含むようにして線分と直交する探査領域Q1〜Q2が設定され、探査領域における点Q1から点Q2までの濃度値から線分のコントラストが求められる。これを図14(b)により説明すれば、探査領域Q1〜Q2をm1、m2、m3の3領域に分け、線分はm2の領域に存在すると考える。コントラストは周りの部分との比較なので、その部分での平均的な濃度は線分の外側であるm1とm3の部分から算出されるようになっている。この平均的な濃度値とm2の領域の濃度値との差分を求め、それを領域m2で積分したものが線分における点Pnでのコントラストとして求められる。
Cnの値を線分の始点PsからPeまで計算、累積加算してこれを線分長さLで除算すれば、平均的なコントラストCavが求められる。
致命欠陥判定としては求まったコントラスト値と実プロファイルによる高さ計測値との相関を図15のようにとることによって検出された線状欠陥のコントラストから致命欠陥判定が可能である。
【0032】
図16は円弧状分布の特徴を持つ欠陥に対する画像処理フローである。画像データが入力され(4051)、そのデータに対して図17のように平滑化処理(例えばガウシアンフィルタ、平均化フィルタ等)を行いノイズ成分の除去を行う(4057)。さらに円弧状欠陥に対しては凹欠陥、凸欠陥いずれに対しても明レベルでのピークと暗レベルでのピークを持つので、平滑化されたデータに対して図17のように明レベルでのしきい値と暗レベルでのしきい値を設定し、2値化を行うと画像上に円弧状の分布が形成される。
【0033】
次にHough変換を用いて、円弧成分の抽出を行う(4058)。図18(a)において、例えば、3個の点P1、P2、P3が半径rの同一円上にあるとすれば、その円方程式は次式となる。
但し、a、bは円の中心座標となる。中心座標(a、b)の求め方は点P1、P2、P3を中心とする半径rの円を描き、その円の交差回数の最も多い点が中心座標(a、b)となる。この処理を画像全体の‘1’画素に対して行えば、半径rとなる円の中心座標候補が挙げられる。
【0034】
欠陥となりうる円弧状欠陥の半径は任意の値であり、例えば、半径r1〜r2までの欠陥が致命欠陥の半径の対象範囲とする。この場合交差回数の多い点を選ぶ投票は空間(am、bm、rm)で行われ、選出された点により円弧状欠陥の半径および中心座標が求まる。
【0035】
次にHough変換の対象2値画像から、円弧要素のみを抽出し、円弧の長さを測長する(4059)。まず、a、b、rパラメータ空間より求めた(am、bm、rm)の値から、xy平面上に円を描く。次に拡大処理により、線を太らせて円弧欠陥領域Sを発生させる。この領域内に存在する点が円弧の構成成分であると判断する。線を太らせた理由としては実際の円弧欠陥は1本の線上には乗っておらずある程度幅をもった円弧であるからである。この処理を行った後、測長処理について説明すれば、各線分の長さrθl1〜rθl4と各線分間のギャップrθg1〜rθg4を計測した上で円弧の長さが決定される。つまりギャップが一定(しきい値rθgt)以上ある場合は、連続した円弧とは見なさないものである。また線分の長さが一定(しきい値rθlt)以下の場合は、直線とはみなさないものである。このことは、実際の画像上でノイズ、あるいは非常に短い直線を除くのに重要である。図19ではrθg1<rθgt、rθg2>rθgt、rθg3>rθgt、rθg4>rθgtとなっており、円弧の長さrθLは、rθL= rθl1+rθg1+rθl2のように求められる。
次に線分長さ判定よりrθL>rθlt、rθl4>rθlt、rθl5>rθlt、rθl3<rθlt、となっており、円弧rθL 、rθl4、rθl5が円弧であると判定される。
【0036】
さらに求まった円弧からそれが円弧状の欠陥であるか判定を行う。この判定は例えば、図19ではrθL 、rθl4 は同一中心座標であるため1つの円弧と判定され、rθl5は中心座標が異なるため異なる円弧と判定される。ここで円周2πに占めるθL、θl4の割合からそれが円弧状欠陥であるか判定を行う。円周に占める割合の低いrθl5は円弧状欠陥とは見なさない判定をくだす。
【0037】
また、致命欠陥判定(4059)には円弧状欠陥の高さも評価しなければならない。なぜならばディスク表面の凹凸はヘッドのクラッシュを招くため、高さ判定により欠陥の致命性を評価する必要がある。画像データから高さ判定を行う手法を図20に示す。例えば図1に示す光学系を用いて面板表面を検査した場合、高さ情報はコントラストとして画像上に現れるためこの情報を用いて高さ判定を行う。具体的に説明すると図20(a)に示すように、円弧の0°から180°までの各点に対してはその点を含むようにしてと直交する探査領域Q1〜Q2が設定され、探査領域における点Q1から点Q2までの濃度値から線分のコントラストが求められる。これを図20(b)により説明すれば、探査領域Q1〜Q2をm1、m2、m3の3領域に分け、線分はm2の領域に存在すると考える。コントラストは周りの部分との比較なので、その部分での平均的な濃度は線分の外側であるm1とm3の部分から算出されるようになっている。この平均的な濃度値とm2の領域の濃度値との差分を求め、それを領域m2で積分したものが線分における点Pnでのコントラストとして求められる。
Cnの値を円弧の0°から180°まで計算、累積加算してこれを加算回数Nで除算すれば、平均的なコントラストCavが求められる。
致命欠陥判定としては求まったコントラスト値と実プロファイルによる高さ計測値との相関を図21のようにとることによって検出された線状欠陥のコントラストから致命欠陥判定が可能である。
【0038】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る表面欠陥装置の第一の実施形態を示す図である。
【図2】本発明に用いられる可変の濃淡差をもつフィルタの性能を示した図である。
【図3】凹凸欠陥により濃淡フィルタ上の正反射光の位置ずれがおきる原理を示した図である。
【図4】受光器によって得られる検出波形の違いから凹凸判定が可能であることを示した図である。
【図5】xz面高さ測定部における濃淡フィルタとyz面高さ測定部における濃淡フィルタとの立体的な配置関係を示す図である。
【図6】演算処理および欠陥判定ユニットの内部処理フローとこれに対応する信号強度を示す図である。
【図7】本発明の欠陥検出処理が対象とする欠陥とその欠陥の画像上の特徴を示した図である。
【図8】データ処理のための取得データに対する座標変換を示した図である。
【図9】線状欠陥に対する処理フローを示した図である。
【図10】線強調のためのオペレータの例を示した図である。
【図11】弧立点除去のためのオペレータの例を示した図である。
【図12】Hough変換による線検出の原理を説明する図である。
【図13】Hough変換によって検出した直線に対する測長結果を示した図である。
【図14】線状欠陥のコントラストの算出方法を示した図である。
【図15】欠陥コントラストと実プロファイルによる高さとの相関を示した図である。
【図16】円弧状欠陥に対する処理フローを示した図である。
【図17】平滑化処理および2値化処理を示した図である。
【図18】Hough変換による円弧検出の原理を説明する図である。
【図19】Hough変換によって検出した円弧に対する測長結果を示した図である。
【図20】円弧状欠陥のコントラストの算出方法を示した図である。
【図21】欠陥コントラストと実プロファイルによる高さとの相関を示した図である。
【符号の説明】
【0040】
1 ディスク、101 レーザ光源、102 帰還回路、103 受光素子、104 ビームスプリッタ、105 集光レンズ、106 受光素子、107 集光レンズ、108 ビームスプリッタ、109 受光素子、110 集光レンズ、111 濃淡フィルタ、112 受光素子、113 集光レンズ、114 濃淡フィルタ、115 ハーフミラー、200 照射光学系、300 受光光学系、400 処理手段、500 r-θステージ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクの表面に光ビームを照射する照射光学系と、
前記ディスクに照射された光ビームによる前記ディスクからの正反射光を、濃淡差を有する第一のフィルタに通過させて受光する第一の受光光学系と、
前記第一の受光光学系により得られた光量に基づき前記ディスク上の欠陥を検出する信号処理手段と、
を備えることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項2】
請求項1記載の欠陥検査装置であって、
前記第一のフィルタは光学濃度が線形な特性を示すフィルタであることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の欠陥検査装置であって、
さらに、前記ディスクに照射された光ビームによる前記ディスクからの正反射光を第二のフィルタに通過させて受光する第二の受光光学系を備え、
前記第一のフィルタは前記正反射光に対してXZ面において略直交する方向に濃淡差を有するフィルタであり、
前記第二のフィルタは前記正反射光に対してYZ面において略直交する方向に濃淡差を有するフィルタであることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項4】
請求項3記載の欠陥検査装置であって、
前記第二のフィルタは光学濃度が線形な特性を示すフィルタであることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項5】
請求項1又は2記載の欠陥検査装置であって、
さらに、前記ディスクに照射された光ビームによる前記ディスクからの正反射光を受光する第三の受光光学系を備え、
前記信号処理手段では、前記第一の受光光学系により得られた光量から前記第三の受光光学系により得られた光量を減算処理して前記ディスク上の欠陥を検出する
ことを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項6】
ディスク表面を検査して得られた欠陥のデータから欠陥種に応じた処理方法を行うことによってディスク表面の特徴のある欠陥を検出し、GUIによってユーザが設定した欠陥の凹凸量又は幅をしきい値としてその値以上の欠陥を出力することを特徴とする欠陥データ解析方法。
【請求項7】
請求項6記載の欠陥データ解析方法であって、
前記欠陥は、線状欠陥と円弧状欠陥であることを特徴とする欠陥データ解析方法。
【請求項8】
ディスク表面を検査して得られた欠陥のデータから欠陥種に応じた処理方法を行うことによってディスク表面の特徴のある欠陥を検出し、GUIによってユーザが設定した欠陥の凹凸量又は幅をしきい値としてその値以上の欠陥を出力することを特徴とする欠陥データ解析方法を搭載した欠陥検査装置。
【請求項9】
請求項8記載の欠陥検査装置であって、
前記欠陥は、線状欠陥と円弧状欠陥であることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項1】
ディスクの表面に光ビームを照射する照射光学系と、
前記ディスクに照射された光ビームによる前記ディスクからの正反射光を、濃淡差を有する第一のフィルタに通過させて受光する第一の受光光学系と、
前記第一の受光光学系により得られた光量に基づき前記ディスク上の欠陥を検出する信号処理手段と、
を備えることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項2】
請求項1記載の欠陥検査装置であって、
前記第一のフィルタは光学濃度が線形な特性を示すフィルタであることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の欠陥検査装置であって、
さらに、前記ディスクに照射された光ビームによる前記ディスクからの正反射光を第二のフィルタに通過させて受光する第二の受光光学系を備え、
前記第一のフィルタは前記正反射光に対してXZ面において略直交する方向に濃淡差を有するフィルタであり、
前記第二のフィルタは前記正反射光に対してYZ面において略直交する方向に濃淡差を有するフィルタであることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項4】
請求項3記載の欠陥検査装置であって、
前記第二のフィルタは光学濃度が線形な特性を示すフィルタであることを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項5】
請求項1又は2記載の欠陥検査装置であって、
さらに、前記ディスクに照射された光ビームによる前記ディスクからの正反射光を受光する第三の受光光学系を備え、
前記信号処理手段では、前記第一の受光光学系により得られた光量から前記第三の受光光学系により得られた光量を減算処理して前記ディスク上の欠陥を検出する
ことを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項6】
ディスク表面を検査して得られた欠陥のデータから欠陥種に応じた処理方法を行うことによってディスク表面の特徴のある欠陥を検出し、GUIによってユーザが設定した欠陥の凹凸量又は幅をしきい値としてその値以上の欠陥を出力することを特徴とする欠陥データ解析方法。
【請求項7】
請求項6記載の欠陥データ解析方法であって、
前記欠陥は、線状欠陥と円弧状欠陥であることを特徴とする欠陥データ解析方法。
【請求項8】
ディスク表面を検査して得られた欠陥のデータから欠陥種に応じた処理方法を行うことによってディスク表面の特徴のある欠陥を検出し、GUIによってユーザが設定した欠陥の凹凸量又は幅をしきい値としてその値以上の欠陥を出力することを特徴とする欠陥データ解析方法を搭載した欠陥検査装置。
【請求項9】
請求項8記載の欠陥検査装置であって、
前記欠陥は、線状欠陥と円弧状欠陥であることを特徴とする欠陥検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2009−139248(P2009−139248A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316524(P2007−316524)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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